(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る端子金具1、端子付き電線およびワイヤーハーネスについて、図1〜図10を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で使用する芯線の長手方向Gとは、端子金具1に電線10をかしめた状態における芯線12の延在方向(図1参照)をいう。また、ワイヤーバレルの幅方向H(左右方向)とは、芯線の長手方向Gと直交する方向(図3参照)をいう。さらに、上下方向とは、図1の紙面上下方向をいうものとする。
端子金具1は、金属板をプレス加工することによって形成されるものであり、図1および図2に示すように、先端側(図1の紙面左側)に形成され、相手方の端子と接続される接続部2と、電線10をかしめるためのワイヤーバレル3およびインシュレーションバレル4とで構成されている。
この端子金具1の素材は、銅又は銅合金で形成されている。これらの銅又は銅合金は、導電性が良いため、芯線12および接続部2と接続される相手方端子との電気的接続に優れている。また、銅又は銅合金は、プレス加工がし易い素材である一方、延伸性が高い。そのため、かしめるときのワイヤーバレル3の延びを考慮する必要がある。
ワイヤーバレル3は、図1に示すように、電線10のアルミ芯線12部分をかしめるためのものであり、図3の展開図に示すように、幅方向にそれぞれ突出するように略矩形状に形成されている。この幅方向に突出した部分は、かしめ用の金型によって押圧されてアルミ芯線12の両側および上側を覆うように円弧状に変形し、芯線12と電気的に導通する態様で圧着される(図8参照)。また、インシュレーションバレル4は、電線10の被覆11部分をかしめるためのものであり、同様に、金型で押圧されて被覆11部分の外側全周を覆うようにしてかしめられ、電線10を保持する。
このワイヤーバレル3の上側の面であって、アルミ芯線12と接触する面(以下、圧着面3Aという)には、図2および図3に示すように、複数のセレ−ションS(以下、セレ−ション全体のことを符号Sで示し、個々のセレ−ションを符号21〜24、31〜34、41〜43、51〜53、61、62(図3参照)で示す)が形成されている。
これらのセレ−ションSは、図3に示すように、圧着面3Aの幅方向の中心線CL1を挟んで対称に形成され、かつ、圧着面の長手方向の中心線CL2を挟んで対称に形成されている。
ここで、ワイヤーバレル3をかしめたときの、ワイヤーバレル3の延伸方向について説明する。図4に示すように、アルミ芯線12がワイヤーバレル3の圧着面3Aにセットされた状態でワイヤーバレル3をかしめると、アルミ芯線12は、芯線の長手方向Gに沿って延伸する。それと同様に、ワイヤーバレル3(およびその圧着面3A)も芯線の長手方向Gに沿って延伸する。このとき、圧着面3Aは、長手方向における中央部(図4の符号Aで示す)でワイヤーバレル3が延び易く、両端部(図4の符号Bで示す)では中央部と比較して延びにくい。
同様に、ワイヤーバレル3の圧着面3Aは、ワイヤーバレルの幅方向Hに沿っても延伸する。このとき、圧着面3Aの延伸長さは、幅方向Hの中央部(図5の符号Dで示す)では長くなり(延び易い)、ワイヤーバレル3の縁部3Bに近い両端部では領域Dと比較して小さくなる(延びにくい)。
すなわち、図5に示すように、圧着面3Aは、符号Aで示す領域において長手方向Gと同一の延伸方向に延伸し易い。また、符号Dで示された領域では、幅方向Hと同一の延伸方向に延伸し易い。さらに、符号AとDで示された領域が重なる部分(以下、中央部Cという)では、長手方向Gおよび幅方向Hの両方の延伸方向に延伸し易い。これらを考慮して、上述した個々のセレ−ション21〜24、31〜34、41〜43、51〜53、61、62の配置および形状を決定している。
次に、個々のセレ−ション21〜24、31〜34、41〜43、51〜53、61、62の配置および形状について、図3および図5を用いて詳細に説明する。なお、個々のセレ−ション21〜24、31〜34、41〜43、51〜53、61、62は、上述した通りワイヤーバレル3の中心線CL1、CL2を挟んでそれぞれ対称に形成されているので、以下の説明では図3の紙面左上側の部分についてのみ説明し、他の部分については対称の形状のため詳細な説明を省略する。
中心線CL1の線上に位置するセレ−ション21〜24は、台形状に形成されており、長手方向Gに沿って間隔を空けて並べて配置されている。また、4つのセレ−ション21〜24は、中心線CL1を挟んで対称に形成されている。
4つのセレ−ション21〜24の幅方向Hの長さは、図3に示すように、中央部Cの中心側からワイヤーバレル3の長手方向Gの縁部3Bに向かうに従い、セレ−ション21、22、23、24の順に段階的に長くなっている。また、4つのセレ−ション21〜24の長手方向の長さについても、中央部Cの中心側からワイヤーバレル3の長手方向Gの縁部3Bに向かうに従い、セレ−ション21、22、23、24の順に段階的に長くなっている(図6参照)。
4つのセレ−ション21〜24の図3の紙面左側には、平行四辺形もしくはそれに近い形状(以下、略平行四辺形という)に形成された4つのセレ−ション31〜34が配置されている。これらの4つのセレ−ション31〜34は、図3に示すように、中心線CL1よりも左斜め上側に向かって間隔を空けて並べて配置されている。
4つのセレ−ション31〜34の幅方向Hの長さは、中央部Cの中心側からワイヤーバレル3の長手方向Gの縁部3Bに向かうに従い、セレ−ション31、32、33、34の順に段階的に長くなっている。また、4つのセレ−ション31〜34の長手方向の長さについても、中央部Cの中心側からワイヤーバレル3の長手方向Gの縁部3Bに向かうに従い、セレ−ション31、32、33、34の順に段階的に長くなっている。
また、4つのセレ−ション31〜34の幅方向Hの長さは、幅方向Hで隣り合うセレ−ション21〜24の長さよりも段階的に長く形成されている(図7参照)。
4つのセレ−ション31〜34の図3の紙面左側には、略平行四辺形に形成された3つのセレ−ション41〜43が配置されている。これらの3つのセレ−ション41〜43は、図3に示すように、中心線CL1よりも左斜め上側に向かって間隔を空けて並べて配置されている。
3つのセレ−ション41〜43の幅方向Hの長さは、ほぼ同じ長さに形成されている。また、3つのセレ−ション41〜43の長手方向の長さは、中央部Cの中心側からワイヤーバレル3の長手方向Gの縁部3Bに向かうに従い、セレ−ション41、42、43の順に段階的に長くなっている。
また、3つのセレ−ション41〜43の幅方向Hの長さは、幅方向Hで隣り合うセレ−ション31〜34の長さよりも段階的に長く形成されている(図7参照)。
3つのセレ−ション41〜43の図3の紙面左側には、略平行四辺形に形成された3つのセレ−ション51〜53が配置されている。これらの3つのセレ−ション51〜53は、図3に示すように、中心線CL1よりも左斜め上側(3つのセレ−ション41〜43とほぼ平行)に向かって間隔を空けて並べて配置されている。
3つのセレ−ション51〜53の幅方向Hの長さは、ほぼ同じ長さに形成されている。また、3つのセレ−ション51〜53の長手方向の長さは、中央部Cの中心側からワイヤーバレル3の長手方向Gの縁部3Bに向かうに従い、セレ−ション51、52、53の順に段階的に長くなっている。
また、3つのセレ−ション51〜53の幅方向Hの長さは、幅方向Hで隣り合うセレ−ション41〜43の長さよりも段階的に長く形成されている(図7参照)。
さらに、3つのセレ−ション51〜53の図3の紙面左側には、セレ−ション61、62が形成されている。これにより、略長方形の圧着面3Aの全面には、満遍なくセレ−ション21〜24、31〜34、41〜43、51〜53、61、62が配置される。
すなわち、これらのセレ−ション21〜24、31〜34、41〜43、51〜53は、圧着面3Aの中央部Cに形成されたセレ−ション21、22の延伸方向(長手方向Gおよび幅方向H)の長さを、他の部分に形成されたセレ−ション23、24、31〜34、41〜43、51〜53の延伸方向の長さよりも短くなるように形成している。
また、これらのセレ−ション21〜24、31〜34、41〜43、51〜53は、芯線の長手方向Gにおいて、圧着面3Aの長手方向の中心線CL2側に配置されたセレ−ションの長手方向Gの長さが、ワイヤーバレル3の縁部3B側に配置されたセレ−ションの長手方向Gの長さよりも短くなるように形成されている。
さらに、圧着面3Aの幅方向Hにおいて、圧着面3Aの幅方向の中心線CL1側に配置されたセレ−ションの幅方向Hの長さが、ワイヤーバレル3の縁部3B側に配置されたセレ−ションの幅方向Hの長さよりも短くなるように形成されている。
これらのセレ−ション21〜24、31〜34、41〜43、51〜53の幅方向Hの長さは、詳細は後述するが、ワイヤーバレル3をかしめて圧着面3Aが延伸方向へ延伸した後に、それぞれの長さがほぼ等しくなるように形成されている。同様に、セレ−ション21〜24、31〜34、41〜43、51〜53の長手方向Gの長さについても、ワイヤーバレル3をかしめた後に、それぞれの長さがほぼ等しくなるように形成されている。
これらのセレ−ション21〜24、31〜34、41〜43、51〜53、61、62の内側面は、図6および図7に示すように、各セレ−ションの底面から圧着面3Aに向かって拡開される態様で斜めに傾斜している。この傾斜は、主に、セレーションSをプレス成形する際に、金型を抜きやすくするために形成されている。
図14は、図3で示す圧着面3Aの紙面左上部を拡大して詳細に示したものである。
複数のセレーションSを圧着面3Aに形成する場合、その形状や配置(配列)を工夫することによって、より多くのセレーションSを圧着面3Aに形成することができる。また、セレーションSをプレス成形するための金型の製作を容易にすることができる。これらについて、図14を用いて詳細に説明する。
圧着面3Aには、凹状のセレーションSが形成される一方、各セレーションの外側に凸部70が形成されることになる。この凸部70は、図14に示すように、幅方向Hに沿って直線状に延在する幅方向凸部71〜74(長手方向の中心線CL2に近い順に、幅方向凸部71、72、73、74と符号を付す。また、その中心線を71A〜74Aで示す)と、幅方向の中心線CL1に対して若干の角度(詳細は後述する)を有して直線状に延在する長手方向凸部81〜85(幅方向の中心線CL1に近い順に、長手方向凸部81、82、83、84、85と符号を付す。また、その中心線を81A〜85Aで示す)とで構成されている。
これらの幅方向凸部71〜74と長手方向凸部81〜85は、図14に示すように、それぞれが交差する態様で形成されている。複数のセレーションSのそれぞれの形状は、幅方向凸部71〜74と長手方向凸部81〜85とで囲まれる態様で略平行四辺形をなすように構成される。
幅方向凸部71〜74は、長手方向Gに間隔を空けて設けられており、それぞれが平行に配置されている。また、圧着面3Aの幅方向の全長に亘って長尺に形成されている。また、これらの幅方向凸部71〜74の長手方向Gの長さL1は、それぞれ同じ長さに形成されている。さらに、これらの幅方向凸部71〜74の長手方向Gの間隔は、上述したセレーションの長手方向Gの長さに合わせて、中央部Cからワイヤーバレルの縁部3Bにゆくに従い長くなるように形成されている。
長手方向凸部81〜85は、幅方向Hに沿って間隔を空けて設けられており、圧着面の長手方向の中心線CL2からワイヤーバレルの縁部3Bまで長尺に形成されている。また、これらの長手方向凸部81〜85の中心線81A〜85Aと直交する方向の長さL2は、それぞれ同じ長さに形成されている。さらに、これらの長手方向凸部81〜85の幅方向Hの間隔は、上述したセレーションの幅方向Hの長さに合わせて、中央部Cからワイヤーバレルの縁部3Bにゆくに従い長くなるように形成されている。
長手方向凸部81は、図14に示すように、幅方向の中心線CL1に対して角度R1をなす方向へ延在している。同様に、長手方向凸部82は角度R2、長手方向凸部83は角度R3、長手方向凸部84は角度R4、長手方向凸部85は角度R5をなす方向へそれぞれ延在している。
これらの角度R1〜R5は、その角度の大きさがR1<R2<R3<R4<R5となるように形成されている。このように幅方向の中心線CL1に近い位置にある長手方向凸部の角度を小さくし、順次角度を大きくしていくことで、中央部Cに形成されたセレーションの形状を小さくすることができ、かつ、ワイヤーバレルの縁部3B側に向かうに従い段階的にセレーションの形状を大きく構成・配置することができる。
これらのR1〜R5の角度は、小さすぎると、セレーションの角部とワイヤーバレルの延伸方向とが垂直になってしまい、アルミ芯線12の酸化被膜がこのセレーションの角部に当たらなくなる。一方、角度が大きすぎると、中央部Cから縁部3Bにゆくに従い段階的にセレーションの形状を大きく形成し難くなる。より詳細には、縁部3Bの近くでセレーションの形状が大きくなり過ぎてしまいセレーションを上手く配設することができない。また、圧着面3上にセレーションの数を多く設けることができなくなる。これらの課題を解決する最適な角度としては、R1=5°、R2=10°、R3=15°、R4=20°、R5=25°である。このように、角度を順次5°ずつ増やしていくことで、セレーションの角部で酸化被膜を効率良く剥離・破壊することができると共に、圧着面3Aに複数のセレーションをより多く配設することができる。また、セレーションの延伸方向の長さを、段階的に長く構成し易くなる。
また、上述した幅方向凸部71〜74の長手方向Gの長さL1と、長手方向凸部81〜85の中心線81A〜85Aと直交する方向のそれぞれの長さL2とは、どちらも同じ長さ(L1=L2)にしている。圧着面3Aをプレス加工する金型において、これらの幅方向凸部71〜74および長手方向凸部81〜85は、金型の面に切削加工で凹状に形成される部分でプレス成形される。この金型の凹状部分は、例えば,エンドミルなどの切削工具(切削刃)で加工を行うが、L1=L2にすることで、1つの切削工具で全ての凹状部分の加工を行えるようになり、金型の製作を容易にすることができる。
また、当然に、L1≠L2で構成することもできる。例えば、長手方向凸部81〜85の長さL2のみが同じ長さで形成されていても、この長手方向凸部81〜85に対応する凹状部分の加工を1つの切削工具で行うことができ、金型の製作を容易にすることができる。
上述のように端子金具1に電線10をかしめて取り付けた端子付き電線は、1本の電線10で構成することができる。また、これらの端子付き電線を複数束ねたワイヤーハーネスとして使用することもできる。このワイヤーハーネスは、上述した端子金具1のワイヤーバレル3部分が幅方向Hで連続して形成されており、それぞれのワイヤーバレル3部分にそれぞれの電線10をかしめることで、一体に束ねて構成することもでき、それぞれの端子付き電線をクランプして束ねるようにして構成することもできる。これにより、配線時の取付作業性を向上させることができる。
次に、本発明の実施の形態に係る端子金具1および端子付き電線の作用について、図8〜図10を用いて説明する。
アルミ芯線12をワイヤーバレル3でかしめた状態では、図8(図4のZ−Z断面)に示すように、ワイヤーバレル3が幅方向Hに延伸し、アルミ芯線12の両側および上側を覆うように円弧状に変形する。このとき、ワイヤーバレル3の圧着面3Aも幅方向Hに延伸し、それぞれのセレーション21〜24、31〜34、41〜43、51〜53、61、62も延伸する。
このとき、図8で示す幅方向Hに並べられたセレーション21、31、41、51、61において、中央部Cの位置にあるセレーション21が最も延伸する。このセレーション21の次に、セレーション31、41、51、61の順に延伸するようになる。一方、セレーション21、31、41、51、61の幅方向Hの長さは、セレーション21が最も短く形成され、順に、セレーション31、41、51、61の順に段階的に大きく形成されている。そのため、かしめ後の各セレーション21、31、41、51、61の幅方向の長さ(図8において符号Lで示す)がほぼ等しくなる。
かしめ後の各セレーションの幅方向Hの長さLが等しくなることによって、図8に示すように、アルミ芯線12の幅方向Hにおける外周面は、セレーション21、31、41、51、61のエッジと満遍なく均等に当接する。これによって、アルミ芯線12に付着した酸化皮膜が幅方向Hで満遍なく均等に剥離・破壊されるようになり、アルミ芯線12が幅方向Hの全周で圧着面3Aと全体的に接触するようになる。
また、芯線の長手方向Gにおいても同様に、中央部Cに近い位置にあるセレーション21が最も延伸し易く、縁部3Bに近くなるに従いセレーション22、23、24の順に延伸しなくなる。そのため、かしめ後の各セレーション21、22、23、24の長手方向Gの長さも、幅方向Hと同様に、ほぼ等しくなる(図示せず)。その結果、アルミ芯線12の長手方向Gにおける外周面は、セレーション21、22、23、24のエッジと満遍なく均等に当接する。これによって、アルミ芯線12に付着した酸化皮膜が満遍なく均等に剥離・破壊されるようになり、アルミ芯線12が長手方向Gの全長で圧着面3Aと全体的に接触するようになる。
また、図9に示すように、中央部Cにおいては、かしめによる押圧力F(圧縮力)は、セレーション21に対してほぼ垂直方向に作用する。そのため、アルミ芯線12は、この押圧力Fでセレーション21の内部に入り込み易い。そのため、酸化皮膜がセレーション21のエッジと強く擦れあい、酸化皮膜が剥離され易い。
また、かしめの力が弱くてセレーション21が延伸方向へ必要以上に延伸しなかった場合であっても、押圧力Fが垂直方向に作用するので、大きな力でアルミ芯線12がセレーション21内に押圧されるようになる。そのため、延伸方向に十分な長さが確保できなかった場合でも、酸化皮膜を剥離することができる。
一方、図10に示すように、圧着面3Aの中央部Cから外れるような端部においては、かしめによる押圧力Fは、セレーション24に対して斜め方向から作用する。そのため、アルミ芯線12をセレーション24内に垂直に押し込む力は、押圧力Fの垂直方向への分力となり弱くなる。しかしながら、セレーション24の延伸方向の長さが長く形成されているため、垂直方向への分力であっても、アルミ芯線12がセレーション24内に入り込み易く、酸化皮膜がエッジと擦れ合うようにすることができる。また、押圧力Fが斜め方向から作用するため、アルミ芯線12がエッジに向けて斜めに押圧されて酸化皮膜がセレーション24のエッジと擦れ易く、酸化皮膜を剥離し易い。
本発明の第1実施形態に係る端子金具1、この端子金具が取り付けられた端子付き電線、およびワイヤーハーネスによれば、ワイヤーバレル3の圧着面3Aの中央部Cに形成されたセレーション21の延伸方向G、Hの長さを、他の部分に形成されたセレーションの延伸方向G、Hの長さよりも短く形成しているので、かしめによって最も延伸する圧着面3Aの中央部Cのセレーションが大きく延伸し、かしめ後の各セレーションの延伸方向の長さがほぼ同じ(均等)になる。そのため、アルミ芯線12の酸化皮膜がかしめ後の均等長さのセレーションによって満遍なく剥離・破壊されるようになり、ワイヤーバレル3の圧着面3Aの全体で良好な導電性を得られるようになる。
また、圧着面3Aの中央部Cでは、かしめによる押圧力Fが大きいため、延伸したアルミ芯線12がセレーションの中に食い込み易い。そのため、たとえセレ−ションの長さが短い形状であっても酸化皮膜を剥離させやすく、十分な導電性が確保されるようになる。
また、圧着面3Aには、圧着面3Aの幅方向Hに沿って延在する複数の幅方向凸部71〜74と、圧着面3Aの幅方向の中心線CL1に対して角度R1〜R5を有して延在する複数の長手方向凸部81〜85とが形成され、交差する幅方向凸部71〜74と長手方向凸部81〜85とで囲まれる態様でセレーションSが形成されており、長手方向凸部81〜85の幅方向の中心線CL1に対する角度R1〜R5は、幅方向の中心線CL1側に位置する長手方向凸部81(82、83、84)の角度R1(R2、R3、R4)よりも、ワイヤーバレルの縁部3B側に位置する長手方向凸部82(83、84、85)の角度R2(R3、R4、R5)を大きくしているので、中央部Cに形成されたセレーションの形状を小さくすることができ、かつ、ワイヤーバレルの縁部3B側に向かうに従い段階的にセレーションの形状を大きく構成・配置することができる。
さらに、長手方向凸部81〜85の中心線81A〜85Aと直交する方向の長さL2を、それぞれ同じ長さに形成しているので、長手方向凸部81〜85をプレス加工するための金型を製作する際に、凹状部分を切削加工するための切削工具を1つで行うことができる。また、長手方向凸部81〜85を直線状にして構成しているので、切削工具を幅方向Hおよび長手方向Gに直線的に移動させることで、切削加工を容易に行うことができる。そのため、プレス加工用の金型の製作を容易に行うことができる。
さらに、芯線12がアルミニウム又はアルミニウム合金で形成され、端子金具1が銅又は銅合金で形成されているので、どちらの素材も導電性に優れ、芯線12と端子金具1との良好な電気的接続性を実現することができる。
以上、本発明の第1実施形態に係る端子金具1、端子付き電線、ワイヤーハーネスについて述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
図11は、本第1実施形態の第1変形例であって、図3に対応するものである。
この端子金具101は、圧着面3Aに幅方向Hへ延在する四角形状のセレ−ション121〜124を形成したものである。より具体的には、芯線の長手方向Gにおいて、圧着面3Aの長手方向Gの中心線CL2側に配置されたセレ−ション121(122、123)の長手方向Gの長さを、ワイヤーバレル3の長手方向Gの縁部3B側に配置されたセレ−ション122(123、124)の長手方向Gの長さよりも短く形成したものである。なお、これらのセレーション121〜124は、中心線CL1、CL2を挟んでそれぞれ対称に形成されている。
この端子金具101は、長手方向Gのみを延伸方向とみなして形成されたものであり、かしめ後のそれぞれのセレーション121〜124の長手方向Gの長さをほぼ等しくすることができる。これによれば、長手方向Gにおいて、アルミ芯線12に付着した酸化皮膜が満遍なく剥離・破壊されるようになり、アルミ芯線12が長手方向Gの全長で圧着面3Aと接触するようになる。その結果、良好な電気的導電性が確保できるようになる。
また、端子金具101のセレーションを90度回転させて長手方向Gへ延在するように配置することもできる(図示せず)。これによれば、幅方向Hにおいて、アルミ芯線12に付着した酸化皮膜が満遍なく剥離・破壊されるようになり、アルミ芯線12が幅方向Hの全長で圧着面3Aと接触するようになる。
図12は、本第1実施形態の第2変形例であって、図3に対応するものである。
この端子金具201は、セレ−ション221〜228、231〜237の形状を、圧着面3Aの中央部Cを中心にして略扇形に形成したものである。すなわち、圧着面3Aの延伸方向は、長手方向Gと幅方向Hの2方向以外にも、中央部Cから法線方向(放射方向)に発生すると考えられる。そのとき、中央部Cを中心にして略扇形に形成することで、法線方向における各セレーション221〜228、231〜237の長さを均等に確保することができる。なお、これらのセレーション221〜228、231〜237は、中心線CL1、CL2を挟んでそれぞれ対称に形成されている。
図13は、本第1実施形態の第3変形例であって、図3に対応するものである。
この端子金具301は、セレ−ション321〜324、331、332の形状を、圧着面3Aの中央部Cを中心にして略扇形に形成し、かつ、圧着面3Aの中央部Cから放射状に延びる法線方向において、圧着面3Aの中央部C側に配置されたセレ−ションの法線方向の長さを、ワイヤーバレル3の縁部3B側に配置されたセレ−ションの法線方向の長さよりも短く形成したものである。なお、これらのセレーション321〜324、331、332は、中心線CL1、CL2を挟んでそれぞれ対称に形成されている。
この端子金具301は、法線方向を延伸方向として形成されたものであり、かしめ後のそれぞれのセレーション321〜324、331、332の法線方向の長さをほぼ等しくすることができる。これによれば、法線方向において、アルミ芯線12に付着した酸化皮膜が満遍なく剥離・破壊されるようになり、アルミ芯線12が満遍なく圧着面3Aと接触するようになる。その結果、良好な電気的導電性が確保できるようになる。
一方、本第1実施形態では、電線10の芯線としてアルミ芯線12を用いて説明したが、芯線としてその他の線材(例えば、銅、銅合金、その他外表面に酸化皮膜が付き易い素材)であっても適用することができる。また、第1実施形態では、端子金具1の素材を銅又は銅合金としたが、端子金具として一般的に使用される他の金属であっても適用することができる。
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係る端子金具401、端子付き電線およびワイヤーハーネスについて、図15〜図19を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で使用する方向は、第1実施形態で用いた方向と同じである。また、第1実施形態で説明した部材や構造が同じであり、その作用、効果が同じものについては、同一の符号を付すことでその詳細な説明を省略する。
上述した第1実施形態における端子金具1のワイヤーバレル3は、幅方向にそれぞれ突出する左右の突出部分をそれぞれ独立にかしめて圧着する(いわゆる、オープンバレルタイプ)ものであるが、クローズドバレルタイプの構造であってもよい。以下、クローズドバレルタイプのワイヤーバレル403を備えた端子金具401について説明する。
端子金具401は、図15(A)〜図15(C)で示すように、ワイヤーバレル403を筒状に形成したものである。このワイヤーバレル403の圧着面403A(図16(A)参照)には、複数のセレーションSが形成されている(詳細は後述する)。
この端子金具401は、図16(A)〜図16(C)で示すように、1枚の銅条(銅板)から複数の端子金具401が製作される。より詳細には、銅条を1次プレス加工として打ち抜き加工が行われる(図16(A)参照)。ワイヤーバレル403は、1次プレス加工の時点では、略長方形に形成されている。圧着面403AのセレーションSの加工は、この1次プレス加工の際に打ち抜き加工と同時に行われる。なお、セレーションSの加工は、1次プレス加工の後に、別工程で行うこともできる。
その後、2次プレス加工としてそれぞれの端子金具401の曲げ加工が行われる(図16(B)参照)。ワイヤーバレル403は、2次プレス加工によって、圧着面403Aが内側になるようにして湾曲するように曲げられ、ワイヤーバレル403の幅方向の両端部Eが辺の全長で突き合わせられる。これにより、ワイヤーバレル403は、長手方向Gに沿って長尺な筒形状に形成される。なお、筒形状とは、その断面形状が円形状に限られず、楕円形状、丸みを帯びた角形形状など、最適な形状に形成することができる。
また、2次プレス加工の後、3次加工としてワイヤーバレル403の突き合わされた両端部Eがレーザー溶接によって接合される(図16(C)参照)。このレーザー溶接では、突き合わされた両端部Eの長手方向Gの全長に亘って連続して接合される。これにより、この接合部Wから圧着面403A側に水が入り込まないようになる。このレーザー溶接は、高エネルギー密度ビームを用いた、ファイバーレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、或いはディスクレーザー等によるレーザービーム、または電子ビームで行うことができる。これらの溶接では、アスペクト比の高い高精度な溶接を行うことができ、端子材料の変形の少ない溶接状態を実現することができる。
ここで、クローズドタイプのワイヤーバレル403にアルミ芯線12を挿入してかしめたときのワイヤーバレルの延伸方向について、図4および図18,図19を用いて説明する。第1実施形態で説明した図4に示すように、アルミ芯線12がワイヤーバレル403の圧着面403Aにセットされた状態でワイヤーバレル403をかしめると、アルミ芯線12は、図4に示すように、芯線の長手方向Gに沿って延伸する。それと同様に、ワイヤーバレル403(およびその圧着面403A)も芯線の長手方向Gに沿って延伸する。このとき、圧着面403Aは、オープンバレルタイプのものと同様に、長手方向における中央部(図4および図17の符号Aで示す)でワイヤーバレル403が延び易く、両端部(図4の符号Bで示す)では中央部と比較して延びにくい。
また、ワイヤーバレル403の圧着面403Aは、ワイヤーバレル403の幅方向Hに沿っても延伸する。図18および図19に示すように、ワイヤーバレル403の幅方向Hの両端部Eを接合して筒状に形成したワイヤーバレル403では、かしめによる押圧力Fを上下方向に作用させた場合、幅方向Hの中央部(図17の符号Dで示す)および両端部(図17の符号D1で示す)で最も大きな延びが生じる(延びやすい)。また、領域D、D1以外の部分では、領域D、D1と比較して延びが小さくなる(延びにくい)。
すなわち、図17に示すように、圧着面403Aは、符号Aで示す領域において長手方向Gと同一の延伸方向に延伸し易い。また、符号D、D1で示された領域では、幅方向Hと同一の延伸方向に延伸し易い。さらに、符号AとD、D1で示された領域が重なる部分(以下、中央部C、C1という)では、長手方向Gおよび幅方向Hの両方の延伸方向に延伸し易い。これらを考慮して、圧着面403A上にセレーションSを形成している。
図17は、図16(A)で示す圧着面403Aに形成されたセレーションSの拡大図である。これらのセレーションSは、圧着面403Aの幅方向の中心線CL1を挟んで対称に形成され、かつ、圧着面の長手方向の中心線CL2を挟んで対称に形成されている。そのため、以下の説明では、図17の左上部分のセレーションSの配置について説明する。
これらのセレーションSの形状および配置パターンの思想は、第1実施形態の図3、図5および図14で説明したものをクローズドバレルタイプの配置に応用したものである。より詳細には、図17に示すように、圧着面403Aの中央部Cおよびワイヤーバレル403の幅方向Hの両端部Eの中央部C1に形成されたセレーションS(セレーション21、22)の延伸方向の長さを、他の部分に形成されたセレーションS(23、24、31〜34、41〜43、51〜53、61、62)の延伸方向の長さよりも短くなるように形成している。
また、セレーションSは、図17〜図19に示すように、中心線CL1よりも左側において、中心線T(または、圧着後の圧着断面(図19参照)の側面の略中心線)を挟んで左右対称に形成されている。この中心線Tは、図18に示すように、筒状に形成されたワイヤーバレル403のほぼ中心を通って略水平な線である。また、中心線Tは、図19に示すように圧着後の状態において、ワイヤーバレル403の側面の略中心線になる。
この中心線CL1と中心線Tとに挟まれた領域に形成されたセレーションは、第1実施形態の図3および図5で説明したセレーション21〜24、31〜34、41〜43、51〜53、61、62と同一である。また、ワイヤーバレル403の両端部Eを接合した状態では、両端部Eの2つの領域D1、D1は連続し、中央部の領域Dとほぼ一致するセレーションが構成されるようになる。
図18の状態からかしめによる押圧力Fを作用させると、図19に示すように、ワイヤーバレル403の断面において中央部の領域Dおよび両端部の領域D1、D1が最も大きく延びるようになる。そして、領域D、D1以外の領域では、領域D、D1よりも延びが小さく、中心線Tの部分で最小になる。これらのセレーション21〜24、31〜34、41〜43、51〜53、61、62の延伸方向(図19では、幅方向)の長さLは、ワイヤーバレル403をかしめた後に、それぞれの長さがほぼ等しくなるように形成されている。
図16(A)〜図16(C)に示すように、1枚の銅条から製作された複数の端子金具401は、キャリア406に沿って幅方向Hに連接されている。このキャリア406には、幅方向に隙間を空けて等間隔にパイロットピン挿入穴406A、406Bが形成されている。丸穴のパイロットピン挿入穴406Bには金型のパイロットピン(図示せず)が挿通され、1次〜3次加工における端子金具401の位置決めが行われる。また、四角穴のパイロットピン挿入穴406Aは、搬送装置のパイロットピンが挿通され、次工程に送るための搬送用に使用される。このキャリア406は、端子金具401の製作完了後、或いは電線10のかしめ作業が完了した後に、適宜のタイミングで切り離される。
また、筒状に形成されたワイヤーバレル403において、図15(A)〜図15(C)に示すように、電線10(アルミ芯線12)が挿入される開口部407と反対側に位置する開口部408を2次プレス加工の際に圧縮して、開口部408を封止する封止部Zを形成するようにしてもよい。そして、3次加工によってこの封止部Zの突き合わされた両端部Eの隙間を溶接で接合する。
このような端子金具401の開口部407に電線10を挿入してワイヤーバレル403をかしめると、筒状の内側であって圧着面403Aが設けられている部分には、外部からの水の侵入を完全に阻止することができる。より詳細には、封止部Z、接合部W、および電線10のかしめ部409(図15(C)参照)によって筒状内部が防水状態(水密)に形成され、ワイヤーバレル403の外側から圧着面403A側に水が入り込まないようになる。
なお、図15、図16では端子金具401の接続部2とワイヤーバレル403を1枚の銅条から打ち抜いて一体に構成しているが、それぞれを別体で構成してもよい。別体で構成された接続部2とワイヤーバレル403は、その後、ジョイント部J(図16(B)、(C)参照)で溶接によって接合されて一体に構成される。この溶接は、接続部2とワイヤーバレル403とが電気的に十分に導通する態様で行われる。
このように、ワイヤーバレル403を筒状に形成したクローズドバレルタイプの構造にすることでも、圧着面403AにセレーションSを形成することができ、かしめ時にアルミ芯線12の延伸方向およびワイヤーバレル403の延伸方向を考慮した端子金具401を得ることができる。
また、クローズドタイプの構造にすることで、筒状のワイヤーバレル403内を水密に形成することができ、外部から圧着面403A側への水の浸入を防止することができる。また、かしめ後のアルミ芯線12がワイヤーバレル403の外部に表出しないので、アルミ芯線12の酸化を防止することができる。
さらには、ワイヤーバレル403を覆うように取り付けられていた絶縁チューブ(図示せず)を取り付ける必要がなくなり、部品点数を削減することができる。
上述のように端子金具401に電線10をかしめて取り付けた端子付き電線は、1本の電線10で構成することができる。また、これらの端子付き電線を複数束ねたワイヤーハーネスとして使用することもできる。このワイヤーハーネスは、上述した端子金具401のワイヤーバレル403部分が幅方向Hで連続して形成されており、それぞれのワイヤーバレル403部分にそれぞれの電線10をかしめることで、一体に束ねて構成することもでき、それぞれの端子付き電線をクランプして束ねるようにして構成することもできる。これにより、配線時の取付作業性を向上させることができる。
本発明の第2実施形態に係る端子金具401、この端子金具が取り付けられた端子付き電線、およびワイヤーハーネスによれば、ワイヤーバレル403の圧着面403Aの中央部Cおよびワイヤーバレル403の幅方向の両端部Eの中央部C1に形成されたセレーション21の延伸方向G、Hの長さを、他の部分に形成されたセレーションの延伸方向G、Hの長さよりも短く形成しているので、筒状に形成したクローズドタイプのワイヤーバレル403であっても、かしめによって最も延伸する圧着面403Aの中央部C、C1のセレーションが大きく延伸し、かしめ後の各セレーションの延伸方向の長さがほぼ同じ(均等)になる。そのため、アルミ芯線12の酸化皮膜がかしめ後の均等長さのセレーションによって満遍なく剥離・破壊されるようになり、ワイヤーバレル403の圧着面403Aの全体で良好な導電性を得られるようになる。
また、圧着面403Aの中央部C、C1では、かしめによる押圧力Fが大きいため、延伸したアルミ芯線12がセレーションの中に食い込み易い。そのため、たとえセレ−ションの長さが短い形状であっても酸化皮膜を剥離させやすく、十分な導電性が確保されるようになる。
また、圧着面403Aが内側になるようにしてワイヤーバレル403を湾曲させ、ワイヤーバレル403の幅方向Hの両端部Eを突き合わせて溶接することでワイヤーバレル403を筒状に形成しているので、筒状のワイヤーバレル403内を水密に形成することができ、ワイヤーバレル403の外部から圧着面403A側への水の浸入を防止することができる。また、かしめ後のアルミ芯線12がワイヤーバレル403の外部に表出しないので、アルミ芯線12の酸化を防止することができる。さらに、従来においてワイヤーバレル403を覆うように取り付けられていた絶縁チューブ(図示せず)を取り付ける必要がなくなり、部品点数を削減することができる。
さらに、筒状に形成したワイヤーバレル403は、アルミ芯線12が挿入される開口部407と反対側の開口部408が封止部Zによって封止されているので、筒状内部が完全に防水状態(水密)になり、ワイヤーバレル403の外部から圧着面403A側に水が入り込まないようになる。
さらにまた、筒状に形成したワイヤーバレル403と相手側の端子に接続される接続部2とを別体で構成し、ワイヤーバレル403と接続部2とが溶接で接合されているので、接続端子401の設計および製造の自由度が増える。
以上、本発明の第2実施形態に係る端子金具401、端子付き電線、ワイヤーハーネスについて述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
図20は、本第2実施形態の変形例であって、図17に対応するものである。
この端子金具501は、圧着面403Aに幅方向Hへ延在する四角形状のセレ−ション521、522を複数形成したものである。より具体的には、圧着面403Aの幅方向Hにおいて、圧着面403Aの幅方向Hの中心線CL1側および端部E側に配置されたセレ−ション521の幅方向Hの長さを、中心線CL1側および端部E側から離れた位置(中心線T側)にあるセレ−ション522の幅方向Hの長さよりも短く形成したものである。なお、これらのセレーション521、522は、中心線CL1、CL2を挟んでそれぞれ対称に形成されており、かつ、圧着面403Aの左上部に位置するセレーション521、522は、中心線Tを挟んでそれぞれ対称に形成されている。
この端子金具501は、幅方向Hのみを延伸方向とみなして形成されたものであり、かしめ後のそれぞれのセレーション521、522の幅方向Hの長さをほぼ等しくすることができる(図19参照)。これによれば、幅方向Hにおいて、アルミ芯線12に付着した酸化皮膜が満遍なく剥離・破壊されるようになり、アルミ芯線12が幅方向Hの全長で圧着面403Aと接触するようになる。その結果、良好な電気的導電性が確保できるようになる。
また、第2実施形態では、クローズドバレルタイプの端子金具401に最適なセレーションSを設けることについて記載しているが、第1実施形態で記載したセレーションSをクローズドバレルタイプの端子金具401に用いてもよい。これによれば、ワイヤーバレル403の領域Dでかしめ後のセレーションSの延伸方向の長さLを等しくすることができる。そのため、少なくともこの部分でアルミ芯線12に付着した酸化被膜を満遍なく剥離・破壊することができる。ただし、第2実施形態で記載したように、領域Dのみならず領域D1でもかしめ後のセレーションSの延伸方向の長さLを等しくする方が好ましい。
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態に係る端子金具601、端子付き電線およびワイヤーハーネスについて、図21および図22を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で使用する方向は、第1および第2実施形態で用いた方向と同じである。また、第1および第2実施形態で説明した部材や構造が同じであり、その作用、効果が同じものについては、同一の符号を付すことでその詳細な説明を省略する。
圧着面3A上に形成された複数のセレーションSは、図21で示すように、中心線CL1、CL2を挟んでそれぞれ対称に形成されている。図22は、図21で示す圧着面3Aの紙面左上部を拡大して詳細に示したものである。以下の説明では、図22の紙面左上部分についてのみ説明し、他の部分については対称の形状のため詳細な説明を省略する。
上述した第1および第2実施形態におけるワイヤーバレルのセレーションSは、図3および図14に示すように、圧着面3Aの中央部Cから延伸方向(略放射状に延びる方向)に略直線的に並べて配置され、セレーションSの外側を構成する凸部70(71〜74、81〜85、図14参照)も同様に直線状になるように形成されている。一方、本第3実施形態における複数の凸部681〜686(図14の凸部81〜85に相当)は、図21および図22に示すように、圧着面3Aに略曲線(円弧、弦)状になるように形成されている。
圧着面3Aには、凹状のセレーションSが形成される一方、各セレーションの外側に凸部670が形成されることになる。この凸部670は、図22に示すように、幅方向Hに沿って直線状に延在する幅方向凸部671〜674(長手方向の中心線CL2に近い順に、幅方向凸部671、672、673、674と符号を付す。また、その中心線を671A〜674Aで示す)と、長手方向Gに沿って曲線状(詳細は後述する)に延在する長手方向凸部681〜686(幅方向の中心線CL1に近い順に、長手方向凸部681、682、683、684、685、686と符号を付す。また、その中心線を681A〜686Aで示す)とで構成されている。
これらの幅方向凸部671〜674と長手方向凸部681〜686は、図22に示すように、それぞれが交差する態様で形成されている。複数のセレーションSのそれぞれの形状は、幅方向凸部671〜674と長手方向凸部681〜686とで囲まれて形成されている。より詳細には、セレーションSの長手方向Gに対向する両辺が、幅方向凸部671〜674によって直線状に形成される一方、幅方向Hに対向する両辺が、長手方向凸部681〜686によって曲線状に形成されている。
幅方向凸部671〜674は、長手方向Gに間隔を空けて設けられており、それぞれが平行に配置されている。また、圧着面3Aの幅方向の全長に亘って長尺に形成されている。また、これらの幅方向凸部671〜674の長手方向Gの長さL1は、それぞれ同じ長さに形成されている。さらに、これらの幅方向凸部671〜674の長手方向Gの間隔は、第1実施形態で説明した長手方向Gの長さに合わせて、中央部Cからワイヤーバレルの縁部3Bにゆくに従い長くなるように形成されている。
長手方向凸部681〜686は、幅方向Hに沿って間隔を空けて設けられており、圧着面の長手方向の中心線CL2からワイヤーバレルの縁部3Bまで長尺に形成されている。また、これらの長手方向凸部681〜686の中心線681A〜686Aと直交する方向の長さL2は、それぞれ同じ長さに形成されている。さらに、これらの長手方向凸部681〜686の幅方向Hの間隔は、第1実施形態で説明したセレーションの幅方向Hの長さに合わせて、中央部Cからワイヤーバレルの縁部3Bにゆくに従い長くなるように形成されている。
長手方向凸部681は、図22に示すように、半径R601の曲線に沿って延在している。この長手方向凸部681の曲線の中心は、中心線CL2上に位置し、かつ、中心線CL1と反対側にある。これにより、長手方向凸部681は、中心線CL2から外側に放射状に広がる態様で形成される。同様に、長手方向凸部682の曲線は、長手方向凸部681の中心と同じ中心から半径R602の曲線に沿って延在している。同様に、長手方向凸部683は半径R603、長手方向凸部684は半径R604、長手方向凸部685は半径R605、長手方向凸部686は半径R606の曲線に沿ってそれぞれ延在している。
これらの半径R601〜R606は、その角度の大きさがR601>R602>R603>R604>R605>R606となるように形成されている。このように幅方向の中心線CL1に近い位置にある長手方向凸部の半径を大きくし、幅方向Hの中心線CL1から離れるに従い順次半径を小さくしていくことで、中央部Cに形成されたセレーションの形状を小さくすることができ、かつ、ワイヤーバレルの縁部3B側に向かうに従い段階的にセレーションの形状を大きく構成・配置することができる。
また、上述した幅方向凸部671〜674の長手方向Gの長さL1と、長手方向凸部681〜686の中心線681A〜686Aと直交する方向のそれぞれの長さL2とは、どちらも同じ長さ(L1=L2)にしている。圧着面3Aをプレス加工する金型において、これらの幅方向凸部671〜674および長手方向凸部681〜686は、金型の面に切削加工で凹状に形成される部分でプレス成形される。この金型の凹状部分は、例えば,エンドミルなどの切削工具(切削刃)で加工を行うが、L1=L2にすることで、1つの切削工具で全ての凹状部分の加工を行えるようになり、金型の製作を容易にすることができる。
また、当然に、L1≠L2で構成することもできる。例えば、長手方向凸部681〜686の長さL2のみが同じ長さで形成されていても、この長手方向凸部681〜686に対応する凹状部分の加工を1つの切削工具で行うことができ、金型の製作を容易にすることができる。
上述のように端子金具601に電線10をかしめて取り付けた端子付き電線は、1本の電線10で構成することができる。また、これらの端子付き電線を複数束ねたワイヤーハーネスとして使用することもできる。このワイヤーハーネスは、上述した端子金具1のワイヤーバレル3部分が幅方向Hで連続して形成されており、それぞれのワイヤーバレル3部分にそれぞれの電線10をかしめることで、一体に束ねて構成することもでき、それぞれの端子付き電線をクランプして束ねるようにして構成することもできる。これにより、配線時の取付作業性を向上させることができる。
本発明の第3実施形態に係る端子金具601、この端子金具が取り付けられた端子付き電線、およびワイヤーハーネスによれば、圧着面3Aの幅方向Hに沿って延在する複数の幅方向凸部671〜674と、圧着面3Aの長手方向Gに沿って曲線状に延在する複数の長手方向凸部681〜686とが形成され、交差する幅方向凸部671〜674と長手方向凸部681〜686とで囲まれる態様でセレーションSが形成されているので、それぞれのセレーションSの幅方向Hで対向する2辺を曲線状に形成することができる。そのため、これらの2辺を直線状に形成した場合と比較して、2辺を長く形成することができる。その結果、延伸方向へ延びるアルミ芯線12がこの2辺と接触し、アルミ芯線12に形成された酸化被膜がより多く剥離・破壊されるようになり、ワイヤーバレル3の圧着面3Aの全体で良好な導電性を得られるようになる。
また、2辺を曲線状に形成するという簡単な構造で、セレーションSの孔縁を長く確保することができる。
また、複数の長手方向凸部681〜686の曲線状の半径R601〜R606は、幅方向Hの中心線CL1から離れるに従い小さくなるように形成されているので、中央部Cに形成されたセレーションの形状を小さくすることができ、かつ、ワイヤーバレルの縁部3B側に(延伸方向に)向かうに従い段階的にセレーションの形状を大きく構成・配置することができる。その結果、かしめによって最も延伸する圧着面3Aの中央部Cのセレーションが大きく延伸し、かしめ後の各セレーションの延伸方向の長さがほぼ同じ(均等)になる。そのため、アルミ芯線12の酸化皮膜がかしめ後の均等長さのセレーションによって満遍なく剥離・破壊されるようになり、ワイヤーバレル3の圧着面3Aの全体で良好な導電性を得られるようになる。
さらに、長手方向凸部681〜686の中心線681A〜686Aと直交する方向の長さL2を、それぞれ同じ長さに形成しているので、長手方向凸部681〜686をプレス加工するための金型を製作する際に、凹状部分を切削加工するための切削工具を1つで行うことができる。また、長手方向凸部681〜686を曲線状にして構成しているので、切削工具を幅方向Hおよび長手方向Gに曲線的に移動させることで、切削加工を容易に行うことができる。そのため、プレス加工用の金型の製作を容易に行うことができる。
以上、本発明の第3実施形態に係る端子金具601、端子付き電線、ワイヤーハーネスについて述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
図23は、本第3実施形態の第1変形例であって、図21に対応するものである。
この端子金具701の圧着面3Aには、幅方向Hのほぼ全長に亘って延在する略四角形状の複数のセレ−ションSが形成されている。また、これらの複数のセレーションSは、長手方向Gに間隔を空けて並べて配置されており、長手方向Gに隣り合うセレーションSの間には、幅方向凸部771がそれぞれ形成されている。これらの幅方向凸部771は、セレーションSと同様に、図23の紙面上方向(接続端子601の接続部2側)に向かって膨らむ態様で曲線状に形成されている。なお、図23の紙面下方向(電線10の被覆11側)に向かって膨らむ態様で曲線状に形成することもできる。
これらの幅方向凸部771は、その長手方向Gの長さL1がそれぞれ同じに形成されており、金型を切削加工するための切削工具を1つで行うことができるようにしている。
また、セレーションSの長手方向Gの長さP1は、それぞれ同じに形成されている。なお、セレーションSの長手方向Gの長さP1は、長手方向Gの中心線CL2に近いセレーションSの長さP1を短くし、中心線CL2から離れるに従い長さP1が段階的に長くなるように形成して、セレーションSの延伸方向における長さを段階的に変えるようにしてもよい。
さらに、幅方向凸部771の曲線状にした半径R701は、それぞれ同じに形成している。なお、長手方向Gの中心線CL2に近いセレーションSの半径を大きくし、中心線CL2から離れるに従い半径が段階的に小さくなるように形成して、セレーションSの延伸方向における長さを段階的に変えるようにしてもよい。
具体的には、長さP1は、0.1mm以上にしている。また、長さL1は、0.3mm〜0.5mmにしている。さらに、半径R701は、ワイヤーバレル3の幅方向Hの長さの1倍以上が好ましい。これらの数値の範囲外の場合には、セレーションSの溝形状に鋭角な部分が生じてしまい、かしめの時にセレーションS内にアルミ芯線12が入り込み難くなってしまうことが分かった。
このように、長手方向Gのみを延伸方向とみなして、セレーションSの長手方向Gで対向する2辺を曲線状に形成することができる。これにより、これらの2辺を直線状に形成した場合と比較して、2辺を長く形成することができる。その結果、延伸方向へ延びるアルミ芯線12がこの2辺と接触し、アルミ芯線12に形成された酸化被膜がより多く剥離・破壊されるようになり、ワイヤーバレル3の圧着面3Aの全体で良好な導電性を得られるようになる。
図24は、本第3実施形態の第2変形例であって、図21に対応するものである。
この端子金具801は、上述した端子金具701のセレーションSの向きを90°回転させたものである。この端子金具801の圧着面3Aには、長手方向Gのほぼ全長に亘って延在する略四角形状の複数のセレ−ションSが形成されている。また、これらの複数のセレーションSは、幅方向Hに間隔を空けて並べて配置されており、幅方向Hに隣り合うセレーションSの間には、長手方向凸部871がそれぞれ形成されている。これらの長手方向凸部871は、セレーションSと同様に、図24の紙面左方向に向かって膨らむ態様で曲線状に形成されている。なお、図24の紙面右方向に向かって膨らむ態様で曲線状に形成することもできる。
これらの長手方向凸部871は、その長手方向Gの長さL1がそれぞれ同じに形成されており、金型を切削加工するための切削工具を1つで行うことができるようにしている。
また、セレーションSの長手方向Gの長さP1は、それぞれ同じに形成されている。なお、セレーションSの長手方向Gの長さP1は、幅方向Hの中心線CL1から離れるに従い、長さP1が段階的に長くなるようにして、セレーションSの延伸方向における長さを段階的に変えるようにしてもよい。
さらに、長手方向凸部871の曲線状にした半径R801は、それぞれ同じに形成している。なお、幅方向Hの中心線CL1に近いセレーションSの半径を大きくし、中心線CL1から離れるに従い半径が段階的に小さくなるように形成して、セレーションSの延伸方向における長さを段階的に変えるようにしてもよい。
具体的には、長さP1は、0.1mm以上にしている。また、長さL1は、0.3mm〜0.5mmにしている。さらに、半径R801は、ワイヤーバレル3の長手方向Gの長さの1/10以上が好ましい。これらの数値の範囲外の場合には、セレーションSの溝形状に鋭角な部分が生じてしまい、かしめの時にセレーションS内にアルミ芯線12が入り込み難くなってしまうことが分かった。
このように、幅方向Hのみを延伸方向とみなして、セレーションSの幅方向Hで対向する2辺を曲線状に形成することができる。これにより、これらの2辺を直線状に形成した場合と比較して、2辺を長く形成することができる。その結果、延伸方向へ延びるアルミ芯線12がこの2辺と接触し、アルミ芯線12に形成された酸化被膜がより多く剥離・破壊されるようになり、ワイヤーバレル3の圧着面3Aの全体で良好な導電性を得られるようになる。
図25は、本第3実施形態の第3変形例であって、図21に対応するものである。また、図26は、図25で示すセレーションの拡大図である。
この端子金具901の圧着面3Aには、幅方向Hに沿って直線状に延在する複数の幅方向凸部971と、長手方向Gに沿って波形の曲線状(図26において二点鎖線で示す。詳細は後述する)に延在する複数の長手方向凸部982とで構成されている。これらの幅方向凸部971と長手方向凸部981とは、それぞれが交差する態様で形成されており、複数のセレーションSのそれぞれの形状は、幅方向凸部971長手方向凸部981とで囲まれて形成されている。
幅方向凸部971の長手方向Gの長さL1は、それぞれ同じ長さに形成されている。なお、長さL1は、長手方向Gの中心線CL2に近い幅方向凸部971の長さL1を短くし、中心線CL2から離れるに従い長さL1が段階的に長くなるように形成して、セレーションSの延伸方向における長さを段階的に変えるようにしてもよい。
また、長手方向凸部981の幅方向Hの長さL2も、それぞれ同じ長さに形成されている。なお、長さL2は、幅方向Hの中心線CL1に近い長手方向凸部981の長さL2を短くし、中心線CL1から離れるに従い長さL2が段階的に長くなるようにして、セレーションSの延伸方向における長さを段階的に変えるようにしてもよい。
さらに、波形の曲線状にした長手方向凸部982の各部分の半径R901は、それぞれ同じ半径で形成されている。具体的には、半径R901の大きさは、長手方向凸部981の長さL2よりも大きくすることで、かしめの時にセレーションS内にアルミ芯線12が入り込み易くなることが分かった。
このように、長手方向凸部981を波形の曲線状に形成しても、それぞれのセレーションSの幅方向Hで対向する2辺を曲線状に形成することができる。そのため、これらの2辺を直線状に形成した場合と比較して、2辺を長く形成することができる。その結果、延伸方向へ延びるアルミ芯線12がこの2辺と接触し、アルミ芯線12に形成された酸化被膜がより多く剥離・破壊されるようになり、ワイヤーバレル3の圧着面3Aの全体で良好な導電性を得られるようになる。
なお、幅方向凸部971を波形の曲線状に形成し、長手方向凸部981を直線状に形成してもよい。また、幅方向凸部971および長手方向凸部981をそれぞれ波形の曲線状に形成することもできる。これによっても、長手方向或いは幅方向で対向する2辺或いは4辺を曲線状に形成することができ、アルミ芯線12の酸化被膜をより多く剥離・破壊することができる。
また、本第3実施形態および第3実施形態の第1〜第3変形例では、いわゆるオープンバレルタイプの端子金具601、701、801、901を用いて説明しているが、当然に、クローズドバレルタイプの端子金具(第2実施形態参照)にも適用することもできる。
(第4実施形態)
以下、本発明の第4実施形態に係る端子金具1001、端子付き電線およびワイヤーハーネスについて、図27および図28を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で使用する方向は、第1〜第3実施形態で用いた方向と同じである。また、第1〜第3実施形態で説明した部材や構造が同じであり、その作用、効果が同じものについては、同一の符号を付すことでその詳細な説明を省略する。
端子金具1001の圧着面3A上に形成された複数のセレーションS(1021〜1024)は、図27で示すように、中心線CL1、CL2を挟んでそれぞれ対称に形成されている。これらのセレーション1021〜1024は、それぞれ略四角形状に形成されており、4つのうちの1つの角部には、角部を面取りする態様で孔辺Mが形成されている。より詳細には、図27および図28に示すように、セレーション1021〜1024は、中央部Cに一番近い角部に孔辺Mが形成されている。また、これらの孔辺Mは、中央部Cから放射状に延びる延伸方向Nと交差する方向に沿って直線状に形成されている。
ここで、「交差する方向」とは、延伸方向N(かしめ時に延伸するアルミ芯線12およびワイヤーバレルの圧着面3Aに対してアルミ芯線12がセレーションS上を通過する方向)に対して、アルミ芯線12が孔辺Mと擦れ合うようになる方向をいうものである。図28に示すように、延伸方向Nは、中央部Cから放射状に延びる方向であり、無数に存在することになる。しかしながら、アルミ芯線12が通過する方向とは、そのうちの1つであり、その通過する方向と孔辺Mとが交差することをいう。なお、交差する角度としては、直交するものが最も好ましいが、セレーションSの製作を容易にするために、中心線CL2に対して約45°の角度になるように統一してある。
この孔辺Mを設けない場合、ワイヤーバレル3をかしめた時にアルミ芯線12はセレーションの角部と擦れ合うようになる。しかしながら、アルミ芯線12は角部と点で擦れるだけであり、酸化被膜を効率良く剥離することができない。また、アルミ芯線12が角部と擦れ合う場合、アルミ芯線12がセレーションSの内部へ入り込むには大きな押圧力F(図10参照)が必要になる。そのため、角部ではセレーションS内に入り込み難い。
これに対し、角部に孔辺Mを形成した場合、アルミ芯線12は、孔辺Mと交差する態様で擦れ合うので、この孔辺Mの辺全体で酸化被膜を剥離させるようになる。また、孔辺Mでは、角部と比較してアルミ芯線12をセレーションS内に入り込ませ易い。そのため、より大きな圧着強度を確保することができる。
本発明の第4実施形態に係る端子金具1001、端子付き電線およびワイヤーハーネスによれば、セレーションS(1021〜1024)には、中央部Cから放射状に延びる延伸方向Nと交差する方向に沿って孔辺Mが形成されているので、ワイヤーバレル3のかしめ時に孔辺Mで酸化被膜を効率良く剥離・破壊することができる。また、かしめ時にアルミ芯線12を孔辺MからセレーションSの内部に入り込ませ易くすることができる。
以上、本発明の第4実施形態に係る端子金具1001、端子付き電線、ワイヤーハーネスについて述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
本実施形態(特に図27)では、オープンバレルタイプの端子金具1001について、その圧着面3Aに形成されるセレーション1021〜1024の形状を説明したが、クローズドバレルタイプの端子金具についても適用することができる。図29は、クローズドバレルタイプの端子金具1101の展開図を示している。圧着面403Aには、その中央部Cから放射状に延びる延伸方向が生じると共に、圧着面403Aの幅方向Hの両端部D1の中央部C1からも延伸方向が生じる(詳細は、第2実施形態を参照)。そのため、この両端部D1では、中央部C1から放射状に延びる延伸方向に対して交差するように、孔辺Mを形成している。この構造であれば、クローズドバレルタイプの端子金具1101であっても、孔辺Mで効率良く酸化被膜を剥離・破壊することができるとともに、セレーションS内にアルミ芯線12を入り込ませ易くすることができる。
また、本実施の形態では、孔辺の角度を中心線CL2に対して約45°で形成しているが、図30(A)で示すように、セレーションSの位置によって孔辺Mの角度を変えて形成することもできる。例えば、中央部Cに近いセレーション1023の角度R1002は、約45°で形成し、その上側に位置するセレーションの角度R1001は、角度R1002よりも鋭角に形成する。すなわち、延伸方向Nとなるべく直交するようにそれぞれ小野角度を変えて形成することができる。この角度は、例えば5°〜85°の範囲でそれぞれ適用することが望ましい。
さらに、本実施の形態では、中央部Cに最も近い角部に孔辺Mを設けているが、図30(B)に示すように、最も遠い角部に孔辺Mを設けることもできる。これによっても、アルミ芯線12が孔辺Mで擦れ合うようになり、角部と点で擦れ合う場合と比較して、より効率良く酸化被膜を剥離・破壊することができる。また、当然に、近い角部と遠い角部の両方に孔辺Mを形成することもできる。
また、図31(A)、図31(B)は、延伸方向Nに対して、両側の角部に孔辺Mを形成したものである。この孔辺Mは、中央部Cから放射状に延びる延伸方向Nと略平行な方向に沿って形成されている。なお、略平行とは、厳密に平行であることを意味するものではなく、ある程度の角度を含んで平行であればよい。
この形状では、かしめ時にアルミ芯線12が延伸方向Nに延びていく際に、アルミ芯線12がより長く孔辺Mと擦れ合うようになるため、酸化被膜をより効率良くかつ確実に剥離・破壊するようになる。なお、図31(A)、図31(B)では、両側の角部のそれぞれ一方に孔辺Mを形成しているが、両側に孔辺Mを形成することもできる。
さらに、図32で示す端子金具1201は、セレーションSの角部のうち2つの角部に孔辺Mを形成したものである。2つの角部のうち、1つの角部は、中央部Cから放射状に延びる延伸方向Nと交差する方向に沿って直線状に形成されており、もう1つの角部は、中央部Cから放射状に延びる延伸方向Nと略平行な方向に沿って形成されている。この構造では、上述した2つの孔辺Mの効果をそれぞれ得ることができるものであり、酸化被膜をより効率良くかつ確実に剥離・破壊するようになる。
他方、図33で示す端子金具1301は、図33の紙面上側(中心線CL2よりも紙面上側)に位置するセレーションSには、中央部Cから放射状に延びる延伸方向Nと交差する方向に沿って直線状に孔辺Mが形成されており、図33の紙面下側(中心線CL2よりも紙面下側)に位置するセレーションには、中央部Cから放射状に延びる延伸方向Nと略平行な方向に沿って孔辺Mが形成されたものである。このように、アルミ芯線12の延びによって、それぞれ孔辺Mの位置を変えて形成することもできる。
また、図34で示す端子金具1401は、セレーションSの形状を円形にしたものであり、その円形の一部を直線状に切断する態様で孔辺Mが形成されている。図34の紙面上側(中心線CL2よりも紙面上側)に位置するセレーションSには、中央部Cから放射状に延びる延伸方向Nと交差する方向に沿って直線状に孔辺Mが形成されており、図34の紙面下側(中心線CL2よりも紙面下側)に位置するセレーションには、中央部Cから放射状に延びる延伸方向Nと略平行な方向に沿って孔辺Mが形成されている。このように、セレーションSの外形状(丸形、四角、多角形など)によらず孔辺Mを形成することもできる。
(第5実施形態)
以下、本発明の第4実施形態に係る端子金具1501、端子付き電線およびワイヤーハーネスについて、図35、図36を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で使用する方向は、第1〜第4実施形態で用いた方向と同じである。また、第1〜第4実施形態で説明した部材や構造が同じであり、その作用、効果が同じものについては、同一の符号を付すことでその詳細な説明を省略する。
セレーションS(1521)は、図35(A)〜図35(C)に示すように、圧着面3A側から見て四角形状に形成されている。このセレーション1521は、第1実施形態(図6、図7参照)でも説明したように凹状に形成されたものであり、その内側に4つの内側面Qを有している。これらの内側面Qは、底面1521Aから圧着面3Aの開口1530に向かって拡開される態様で斜めに傾斜して形成されている。
また、セレーション1521の四角形状の1つの角部には、傾斜面1521Bが形成されている。この傾斜面1521Bは、この1つの角部に対応する底面1521Aの角部と、
1つの角部に対応する開口1530の角部を面取りした面取部1530Bを繋ぐ態様で形成されている。
ここで、面取部1530Bとは、開口1530の角部を面取りして形成された孔縁をいうものとする。この面取部1530Bは、セレーションSを上側から見て、底面1521Aの角部よりも外側に位置するようにし(図36(A)参照)、底面1521Aの角部から面取部1530へセレーションが拡開するように傾斜面1521Bが形成されたものである。
この面取部1530Bおよび傾斜面1521Bは、上述した第4実施形態の孔辺Mと同様に、かしめ時にセレーションSの孔縁部とアルミ芯線12とがより長く擦れ合うようにして酸化被膜を除去させるという作用・効果を奏するものである。そのため、面取部1530Bは、孔辺Mと同様に、放射状に延びる延伸方向Nと略平行な方向、または略直交する方向(交差する方向)に沿って設けられている。
この傾斜面1521Bの傾斜角度R1501は、急角度の方が好ましい。ワイヤーバレル3のかしめ時に、アルミ芯線12が面取部1530Bを介してセレーションS内に食い込み易くなるためである。また、セレーション1521の凹内の容積は大きい方がよい。ワイヤーバレル3のかしめ時にアルミ芯線12がセレーション1521内に大きく入り込むため、圧着強度が大きくなるためである。
図36(A)は、図35(A)〜(C)で示したセレーション1521であり、このセレーション1521をN−N断面で描いたものが右下の断面図である。この断面図で示す傾斜面1521Bの傾斜角度R1501は、面取部1530Bを設けることにより、急角度になる。なお、面取部1530Bの面取りを大きくした方が、さらに傾斜角度R1501を急角度にすることができるが、セレーション1521内の容積は減少してしまう。
一方、図36(B)は、図36(A)で示すセレーション1521の底面1521Aの角部にも面取り(面取部2021C)を施して、セレーションS(2021)にしたものである(底面を符号2021Aで示す)。また、このセレーション2021をN’−N’断面で描いたものが右下の断面図である。このセレーション2021では、面取部1530Bの大きさは変えていない。
このセレーション2021では、面取部2021Cを設けた分だけ、傾斜面2021Bの傾斜角度R2001は、R1601よりも緩やかになってしまう。また、面取部2021Cによって底面2021Aの面積が減少することもあり、セレーション2021内の容積はセレーション1521よりも小さくなってしまう。
これらのセレーション1521、2021の構造を比較・検討した結果、セレーション1521のように底面1521Aに面取部2021Cを設けない構造が最も適していることが分かった。
本発明の第5実施形態に係る端子金具1501、端子付き電線およびワイヤーハーネスによれば、セレーションS(1521)は、圧着面3Aから見て四角形状に形成され、セレーション1521の内側面Qが底面1521Aから圧着面3Aの開口1530に向かって拡開される態様で斜めに傾斜しており、セレーション1521の開口1530の角部に面取部1530Bを形成し、セレーション1521の底面1521Aの角部と面取部1530Bを繋ぐ態様で傾斜面1521Bを形成しているので、面取部1530Bを設けた構造で、傾斜面1521Bの傾斜角度R1501を最も急角度にすることができる。そのため、ワイヤーバレル3のかしめ時に、アルミ芯線12が面取部1530Bを介してセレーションS内に食い込み易くなる。また、底面1521Aの面積を変えないことで、セレーション1521内の容積を最も大きく確保できる。その結果、ワイヤーバレル3のかしめ時にアルミ芯線12がセレーション1521内に大きく入り込むようになり、圧着強度が大きくなる。
以上、本発明の第5実施形態に係る端子金具1501、端子付き電線、ワイヤーハーネスについて述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
本第5実施形態では、セレーション1521の形状を四角形状にしているが、多角形状(例えば、三角形状、5角形状など)でも適用することができる。すなわち、これらの多角形状の角部に傾斜面1521Bを形成することにより、同様の効果を得ることができる。
また、本第5実施形態におけるセレーションSの構造は、オープンバレルタイプ、およびクローズドバレルタイプのいずれの端子金具(例えば、第1〜第3実施形態の端子金具、端子付き電線およびワイヤーハーネス)に適用することができる。また、1つのセレーションSに、第4実施形態と本第5実施形態の構造を併用して適用することもできる。
さらに、図37に示すように、四角形(或いは、多角形)の複数の角部のうち、2つの角部に傾斜面1521Bを設けるようにしてもよい。例えば、第4実施形態で示したように、放射状に延びる延伸方向Nと略平行な方向、または略直交(交差)する方向に沿って面取部1530Bおよび傾斜面1521Bを形成することで、第4実施形態で記載したものと同等の作用・効果を奏するようになる。なお、当然に、2つ以上の角部に面取部1530Bおよび傾斜面1521Bを形成してもよい。