JP5934422B1 - 加熱処理液卵及び加熱処理液卵の製造方法 - Google Patents

加熱処理液卵及び加熱処理液卵の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 無添加未殺菌全卵の特性を極力維持することができ、なおかつ工業プロセスでの菌数抑制に適した加熱処理液卵の製造方法、並びに、無添加未殺菌全卵の状態に近い特性を保持した加熱処理液卵を提供する。【解決手段】 水溶性カルシウム塩を添加する工程と、60.6℃を超え74℃以下の温度範囲に達する加熱をする工程とを含む、加熱処理液卵の製造方法、及び、実質的に液卵と水溶性カルシウム塩とからなる加熱処理液卵である。【選択図】 図3

Description

本発明は、加熱処理液卵及び加熱処理液卵の製造方法に関するものである。
食品鶏卵においてサルモネラ属菌の増殖抑制は戦前から今日まで続く長年の課題である。このことは、牛丼店で夏期の殻付き生卵の持ち帰り販売が自粛されること等からも明白ではあるが、菌抑制の問題は、殻付き卵に限らず、割卵してパックした状態で主に業務用途に販売される液卵においても避けて通ることはできない(例えば、非特許文献1)。
従来液卵業界で標準的な全液卵の殺菌法は、連続式の加熱装置を採用する場合、60℃で3.5分間以上、バッチ式の加熱装置を採用する場合、58℃で10分以上維持することであり、この手法は、厚生労働省の液卵製造基準としても採用され(非特許文献2)、業界内で踏襲されている(非特許文献3)。
例えば、液状全卵に塩化カルシウムとナトリウムヘキサメタホスフェートとを添加し、さらに水酸化ナトリウムの添加によってpHを9.0としたのち、3分30秒間約60.6℃で加熱する手法が提案されている(例えば、特許文献1)。この文献では、これより高めの温度を使用することによる蛋白質の沈殿や液状全卵の変色といった液卵の特性変化を懸念している。他にも液全卵に乳酸カルシウム0.5%と氷酢酸とを加え、pHを6.5に調整したのち、品温60℃3.5分間の殺菌条件で加熱殺菌することが提案されている(特許文献2)。
これらの文献ではいずれも、上記液卵製造基準に準拠した60℃付近での加熱殺菌により、凝固変性等を生じない状態を保ちつつサルモネラ属菌の充分な殺菌がなされていると主張してはいるが、あくまで実験室レベルの理想的な環境か実証プラントレベルでの検証にすぎない。本格的な工業プロセス、特にバッチプロセスでは、一般にコスト上の要請で、割卵を殺菌工程に投入するまでに、菌増殖に適した30℃近い品温を保った状態で投入を待つ時間が比較的長くあり、その後60℃に到るまでの温度上昇過程でも菌が増殖するため、初菌数が多くなり、液卵製造基準に準拠した加熱を行ったとしても、絶対的な菌数でみると充分な低減には到っていないものと推察される。
特公昭46−36183号公報、例3 特開2015−23828号公報、実施例1
Y.Kudo et al., Microbial Quality of Liquid Egg and Salmonella Infection Status in Japan, J.Food Hyg.Soc.Japan, 50(1), (284), 2009, pp.34-40 厚生労働省ウェブサイト「食品、添加物等の規格基準」食鳥卵(昭和34年厚生省告示第370号)、インターネット〈URL:http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/jigyousya/shokuhin_kikaku/dl/07.pdf〉 (社)日本卵業協会、「液卵製造施設及び液卵製造等に係わる衛生管理マニュアル」、32(15)、(1191)、2002年8月、182〜189頁 食品安全委員会、「食品健康影響評価のためのリスクプロファイル〜鶏肉におけるサルモネラ属菌〜」、2012年1月、4頁、インターネット〈URL:http://www.fsc.go.jp/sonota/risk_profile/genussalmonella.pdf〉
本発明の目的は、上記現状に鑑み、無添加未殺菌全卵の特性を極力維持することができ、なおかつ工業プロセスでの菌数抑制に適した加熱処理液卵の製造方法、並びに、未殺菌全卵の状態に近い特性を保持した加熱処理液卵を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた本発明の1つの側面は、液卵に対して実質的に乳酸カルシウムのみを添加する工程と、60.6℃を超え74℃以下の温度範囲に達する加熱をする工程とを含む、加熱処理液卵の製造方法である。即ち、乳酸カルシウムの添加とより高温での加熱によって伝熱速度が若干高まり、蛋白質の変性は多少あるが、未殺菌全卵の状態に近い加熱処理液卵を得ることができる。
上記60.6℃を超え74℃以下の範囲に達する加熱をバッチ式で行う場合、58℃以上での加熱時間を合計10分以下にすることが可能になり、連続式で行う場合、60℃以上での加熱時間を合計3分30秒以下にすることが可能になる。上述のような加熱処理液卵製造時の加熱殺菌時間の短縮に加えて、得られた加熱処理液卵の調理時間の短縮を考慮すれば、トータルのエネルギーコスト低減効果が達成できる。
上記製造方法においては、60.6℃を超え74℃以下の温度範囲で加熱する工程に先立ち、割卵を一時的に7℃以下に冷却する工程を含むことが好ましい。上記冷却工程を含むことにより、60.6℃を超え74℃以下の温度範囲に達するまでの過程において原液卵の初菌数の増加を抑制することができ、結果として加熱処理後の残存菌の絶対量も低減することができる。
上記製造方法においては、乳酸カルシウムの添加量が0.5%を超え1%以下であることが好ましい。
前記液卵は、前記加熱をする工程に先立ち、ストレーナを用いた濾過工程を経ているが、卵白と卵黄とを均一化するための機械的処理を経ていないものであってもよい。
上記目的を達成するためになされた本発明の他の側面は、実質的に液卵と乳酸カルシウムのみからなり、乳酸カルシウムの含有量が、該液卵の正味重量に対して0.5%以上1%以下である加熱処理液卵である。斯かる加熱処理液卵は、伝熱性に優れており、短時間での調理に好適なうえ、無添加未殺菌全卵の乳化性といった特性を保持していることから、スポンジケーキのような膨らみが重要な菓子パン類をはじめとして広範な用途に利用することができる。
前記加熱処理液卵は、pHが、7.0〜8.5であってよい。上記範囲内であれば、添加された水溶性カルシウム塩は食味や乳化性といった特性に殆ど影響を与えないことから、トレハロース等の二糖類を添加するような食味に影響を与える従来手法等に比べて広範な用途に利用することができる点で優れたものとなる。
本発明の製造方法によれば、従来凝固変性への懸念やエネルギーコスト上の問題から試されることのなかったより高温域での加熱によっても、乳化性といった無添加未殺菌全卵の特性や食味を極力維持した加熱処理液卵が製造できる。また、本発明の加熱処理液卵は、火の通りがよく、茶碗蒸し、卵焼き等の料理が早くできるため調理者に利点があるうえ、栄養価的にもカルシウム添加によって消費者に有益なものとなる。さらに驚くべきことに、得られた加熱処理液卵をスポンジケーキ等に使用した場合、離型性が良く歩留まりが高いうえ、従来の未殺菌液卵や低温殺菌液卵に比べて膨らんだ後のスポンジの沈みを少なく抑えることができる。
スポンジケーキの焼成直後の膨らみを示す側面写真。 スポンジケーキの焼成直後の上面写真。 スポンジケーキの焼成1時間後の離型後の側面写真。 スポンジケーキの焼成1時間後の離型後の断面写真。 一定調理時間後の食塩無添加茶碗蒸しの状態を示す写真。 一定調理時間後の食塩無添加茶碗蒸しの状態を示す写真。 図5の茶碗蒸しの中身を取り出したものの状態を示す写真。 図5の茶碗蒸しの中身を取り出したものの状態を示す写真。
本発明の加熱処理液卵は、実質的に液卵と水溶性カルシウム塩とからなるものである。本明細書において「液卵」とは、鶏卵または鶉卵を原料とする卵黄成分及び卵白成分を含む全液卵を意味し、割卵し卵殻を取り除いたもののみならず、卵黄成分及び/または卵白成分を適宜加減したものも含まれるが、加塩または加糖したものは含まれない。
本明細書において「水溶性カルシウム塩」とは、pH7.0〜8.5の液卵中で、有意量(乳酸カルシウムに置き換えると0.01%以上に相当する量)溶解するあらゆるカルシウム塩を意味する。水溶性カルシウム塩としては、特に限定されないが、コスト上も比較的安価であることから、乳酸カルシウムが好適に使用される。水溶性カルシウム塩の含有量は、液卵の正味重量に対して0.5%以上1%以下であることが好ましい。水溶性カルシウム塩の含有量が0.5%未満であると、調理時の熱の通り易さの観点で不十分であり、結果的に加熱時間を長くせざるを得ないことからトータルのエネルギー削減効果が期待できず、栄養補助の観点でも不十分となりやすい。水溶性カルシウム塩の含有量が1%を超えると、食味にえぐみが感じられやすい。水溶性カルシウム塩の含有量のより好ましい下限は、0.5%を超え、更に好ましい下限は、0.6%、好ましい上限は、0.9%である。加熱処理液卵は、水溶性カルシウム塩以外に、液卵のpH環境等を大きく変動させない範囲で微量(液卵正味重量に対して0.001%〜0.1%)の添加剤(ミネラル、ビタミン等の栄養補助成分。食塩または糖類以外のもの。)を含んでいてもよい。なお、ポータブル型pHメータで測定した加熱処理液卵の好ましいpH域は、7.0〜8.5である。
本明細書において「加熱処理液卵」とは、加熱処理を経た全液卵を意味する。ここでの加熱処理には、後述する本発明の加熱処理液卵の製造方法における加熱処理を含むあらゆる加熱処理が含まれる。加熱処理液卵には、いずれかの調理用途における利用が可能である限り、液卵内に凝固変性がないもののみならず微視的または巨視的に一部凝固変性が生じたものも包含される。得られた加熱処理液卵は、大腸菌群数が10個/g未満、サルモネラエンテリティディスをはじめとしたサルモネラ属菌の初発菌数がサンプル重量25gあたり陰性であるものとなる。
本発明の加熱処理液卵の製造方法は、液卵に水溶性カルシウム塩を添加する工程と、60.6℃を超え74℃以下の温度範囲に達する加熱をする工程(以下、「本加熱工程」という)とを含む。
水溶性カルシウム塩を添加する工程は通常、殻付き卵の検卵、洗浄工程、卵殻殺菌工程、割卵工程、ストレーナを用いた濾過工程を順に経て得られた原液卵に対して、本加熱工程に投入する前までに行われる。具体的には、攪拌機がついたタンク内に原液卵を貯留した状態で攪拌しつつ行うことが好ましいが、水溶性カルシウム塩は一般に優れた水溶性を有していることから、添加のタイミングについては特に限定されない。水溶性カルシウム塩の添加量は、0.5%を超え1%以下であることが好ましい。水溶性カルシウム塩の添加量が0.5%以下であると、加熱処理液卵製造時の熱伝導の観点で不十分であり、結果的に加熱時間を長くせざるを得ないことからトータルのエネルギー削減効果が期待できず、栄養補助の観点でも不十分となりやすい。水溶性カルシウム塩の添加量が1%を超えると、加熱処理の液卵食味にえぐみが感じられるうえ、添加量の増加になりコスト的にもメリットが少ない。なお、ポータブル型pHメータで測定した水溶性カルシウム塩を添加した原液卵の好ましいpH域は、7.0〜8.5である。
本加熱工程には、加熱対象となる全液卵が上記温度範囲の温度となるようなあらゆる加熱手法が包含される。したがって例えば、通常時に上記温度範囲未満の温度での加熱を定常的に保った状態で、任意のタイミングで上記温度範囲に達するようにマイクロ波を使用して瞬間的に昇温する加熱手法、上記温度範囲を超える温度まで昇温した後、加熱を止めて徐冷する過程で上記温度範囲を通過するような加熱手法等も含まれる。好ましくは、62℃以上、62℃を超える温度、63℃以上、63℃を超える温度、64℃以上、64℃を超える温度、65℃以上、または65℃を超える温度である。なお、本明細書において、本加熱工程の温度は、白金測温抵抗体Pt100を用いて測定された液卵自体の温度指示値である。
本加熱工程は、従来公知のパストライザー(pasteurizer)と呼ばれる装置を使用して行われる。パストライザーとしては、バッチ式、チューブラー式、プレート式またはこれらの組み合わせのうちのいずれを採用することもできるが、仕様上、上記温度範囲内の加熱が許容されることを要し、かつ全液卵の処理能力として、バッチ式では1ユニットあたり50〜2000L/h程度のもの、チューブラー式では1ユニットあたり1000〜6000L/h程度のものが使用される。
本加熱工程をバッチ式で行う場合、58℃以上での加熱時間を合計10分以下にすることができる。従来全液卵の殺菌条件は、バッチ式の場合58℃で10分間が標準として定められているが、本加熱工程はこれより短時間での殺菌工程とすることが可能である。上記加熱時間は、最終的には求められる液卵の特性との妥協点になるが、好ましい上限は、9分30秒、より好ましい上限は、9分、更に好ましい上限は、8分30秒である。なお、バッチ式においては通常攪拌しつつ加熱されるが、当該攪拌は、攪拌による物理的作用で液卵の均一化が生じずなおかつ伝熱が促進され焦げ付きが生じないように行うことが好ましい。
本加熱工程を上記連続式で行う場合、60℃以上での加熱時間を合計3分30秒以下にすることができる。従来全液卵の殺菌条件は、連続式の場合60℃で3分30秒が標準として定められているが、本加熱工程はこれより短時間での殺菌工程とすることが可能である。上記加熱時間は、最終的には求められる液卵の特性との妥協点になるが、好ましい上限は、3分15秒、より好ましい上限は、3分、更に好ましい上限は、2分30秒である。通常、連続式でチューブラー熱交換器を用いる場合は、殺菌機の処理能力に関係なく、約108秒程度で行うことができる。
本発明の製造方法においては、本加熱工程に先立ち、40℃〜55℃の範囲での予備加熱工程を経てもよい。予備加熱工程は、40℃〜55℃の範囲内の一定温度に所定時間保持する加熱工程であってもよいし、投入された液卵ができる限り早く本加熱工程に達することができるようにするための単なる昇温過程であってもよい。予備加熱工程は、例えば、プレート式熱交換器を用いて、本加熱工程を経た比較的高温の加熱処理液卵とのプレートを隔てた直接的な熱交換又は水層を間に挟んだ間接的な熱交換によって行うことができる。予備加熱工程の時間は、この温度域がサルモネラ属菌の増殖に適していることに鑑みて短時間であることが好ましく、通常、連続式でプレート式熱交換器を用いる場合は、殺菌機の処理能力に関係なく、約35秒程度で行うことができる。
上記製造方法においては、本加熱工程または予備加熱工程に先立ち、割卵を一時的に7℃以下に冷却する工程を含むことが好ましい。斯かる冷却工程を含むことにより、60.6℃を超え74℃以下の温度範囲に達するまでの過程での原液卵の初菌数の増加を抑制することができ、結果として加熱処理後の残存菌の絶対量も低減することができる。7℃の品温で投入されてから上記温度範囲に達するまでの時間は、菌増殖の抑制の観点では短いことが好ましく、例えば、3℃〜7℃で投入し、30分〜120分以内に処理することが望ましい。
上記製造方法においては、液卵の濾過工程の後、加熱凝固に耐性を持たせるために卵白と卵黄とを均一化するための機械的処理(ホモジナイズ処理)工程を含めることもできるが、含めなくてもよい。
本加熱工程を経た加熱処理液卵は、加熱に費やしたエネルギーの再利用のため適宜、上述したプレート式熱交換器において、本加熱処理を経ていない液卵との熱交換による1段階又は多段階の冷却を行う。加熱処理液卵が熱交換を行う時間は、例えば、一次冷却を20秒〜50秒(例えば、約35秒)、二次冷却を20秒〜50秒(例えば、約39秒)に設定することができる。
熱交換冷却を経た加熱処理液卵は、冷却タンクにて直ちに3℃〜7℃以下に冷却され、充填機によってビニール包装に定量パック詰めした後、密封し、冷蔵形態または冷凍形態のいずれかで出荷することができる。冷凍形態は流水で1晩解凍して翌日すぐに使用することが望ましいが、殺菌が充分なされていることから、解凍後開封しなければ5℃冷蔵で製造日から1週間は保存可能である。
上述した本発明の製造方法において、乳酸カルシウムのみを添加した場合に未殺菌無添加液卵の特性を保持することができる理由は必ずしも明らかではなく、その原因についての考察は本発明の技術的範囲を限定するものではないが、乳酸カルシウムの水溶液は中性から弱アルカリ性であるので、元々弱アルカリ性環境である全液卵の蛋白質の構造(コンフォメーション)に影響を与えにくいこと、乳酸カルシウムにおける乳酸の対イオンが液卵の蛋白質組織に見られるカルボキシラートアニオン同士を結びつける働きを害さないことが原因の一部と推測される。なお、従来積極的にpH調整剤を添加し酸性環境下で加熱殺菌をしてきた理由は必ずしも明らかではないが、サルモネラ属菌の生育至適pHが7〜8付近であるため、このpH域を外して加熱時の制菌効果を狙っているものと推測される(非特許文献4の4頁)。本発明は、乳酸カルシウム添加によって熱伝導率の向上を図ると同時に、従来の液卵製造基準温度を超える加熱をする工程を採用したことにより、実施例に示すように至適pH域でも充分な殺菌効果を達成できているものと考えられる。
(実施例1:スポンジケーキ焼成試験)
直径25cmのボウルに乳酸Ca0.5%添加+65℃加熱(バッチ式)により得られた加熱処理液卵(丸鳥鶏卵製)50gを常温に戻した状態のものを入れ、ミキサー(PREP’LINE、(株)グループセブジャパン製)を1,080rpmで動作させながら上白糖23.3gを徐々に投入し、50℃で温めながら8分間泡立てた。得られた泡状物に対して薄力粉を23.3g(3回ふるいにかけたもの)を入れ、40回前後木ベラで混合した。得られたスポンジ生地を、内壁面に油を塗った直径7cm、深さ3.8cmのシリコーンカップに約40g投入し、2〜3回型ごと落として中の空気を抜き、予熱しておいた170℃のオーブン(ADVANTEC DRY STERILIZER、(株)東洋製作所製で代用)で20分加熱し焼成した。焼成直後の高さと、1時間室温に静置した後で離型したものの高さ及び重量を測定するとともに、それぞれの写真を撮影し、最後に離型した各ケーキを2等分し断面を写真撮影した。結果を表1及び図1〜図4に示す。
(比較例1〜3:スポンジケーキ焼成試験)
加熱処理液卵に代えて、無添加加熱処理液卵(60℃加熱、バッチ式)、無添加加熱処理液卵(65℃加熱)、無添加非加熱液卵を使用したほかは実施例1の手順と同様にしてスポンジケーキを焼成し、高さ断面を観察した結果もあわせて表1及び図1〜図4に示す。
表1から、未殺菌全卵、殺菌全卵(60℃)、殺菌全卵(65℃)は加熱直後の高さが乳酸Ca0.5%と比べて高くなるが、その後の沈みが大きく、1時間後の高さとしては乳酸Ca0.5%よりだいぶ低くなった。また、容器から取り出す際に、容器へのこびり付きもあり、歩留まりも悪いことがわかった。一方、乳酸Ca0.5%は膨らみとしては他のものと比べて大きくはないが、その後の沈みが少ないため、図1に示すように真ん中の凹みがなく、離型時の容器へのこびり付きも少ないため、見た目がきれいに仕上がった。断面に関しても、図2に示すように乳酸Ca0.5%添加のものは、気泡が細かく均一に入っており、きめが細かく潰れのない状態であることが分かった。味に関しても、0.5%ではCaのえぐみは感じられず、影響はなかった。
(実施例2:茶わん蒸し蒸成試験)
200mLビーカー(HARIO製)に乳酸Ca0.5%添加+65℃加熱(バッチ式)により得られた加熱処理液卵(丸鳥鶏卵製)40gと市水120gを静かに注ぎいれ、撹拌した。上面に残った気泡はバーナーで消失させた。ビーカーにアルミホイルで蓋をし、蒸し器(フードスチーマー、TWINBIRD製)に入れ、12分加熱し、10分蒸らした。蒸成後、室温に達するまで徐冷して写真を撮影し(図5A,図5B)、中身を別容器に移して固まり具合を写真撮影した(図6A,図6B)。
(比較例4)
加熱処理液卵に代えて、乳酸Caを0.6%、0.8%、1.0%添加+65℃加熱(バッチ式)または無添加加熱処理液卵(65℃加熱)、無添加非加熱液卵(ストレーナーで濾したもの)、無添加非加熱液卵(ストレーナで濾していない殻付卵)を使用したほかは実施例2の手順と同様にして茶わん蒸しを蒸成し、写真撮影した。
図5A、図5B、図6A、図6Bから、乳酸Caを添加したものは、全て固まっていることが確認されたが、殻付卵、未殺菌全卵、殺菌全卵は固まらなかった。また、乳酸Caを添加したものは、添加量によらずどれも加熱後の状態に違いはなかったため、味への影響が最も少ない0.5%が適切と思われる。
(実施例3:加熱処理液卵の温度と細菌の増殖の相関性とサルモネラ属菌の有無)
殻付卵の検卵、洗浄工程、卵殻殺菌工程、割卵工程、ストレーナを用いた濾過工程を順に経て、プレート式パストライザー(SANOVO製)にて加熱処理温度を3分30秒保持し、冷却した。加熱処理温度は、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃に設定した。採取したサンプルを8℃(表2)と5℃(表3)に保管し、細菌検査(一般生菌数、大腸菌群)及び、サンプル重量25gあたりのサルモネラ属菌(初発のみ)について評価した。結果を表2及び表3に示す。
表2の結果から、8℃で保存した場合、60℃、61℃と65℃、66℃を比較すると初発菌数に差があることがわかった。また、60℃、61℃は6日目で100万以上/gになったが、65℃、66℃は8日目で100万以上/gになったことから、日持ちに関しても60℃、61℃より65℃、66℃の方が良いことがわかった。なお、サンプル重量25gあたりのサルモネラ属菌の初発菌数は全て陰性であった。
表3の結果から、5℃で保存した場合、60℃〜64℃は8日目から菌数の増加が起き始めたのに対して、65℃、66℃は12日目の検査でもまだ増加傾向は見られなかった。そのため、60〜64℃よりも65℃、66℃の方が、日持ちが良いことがわかった。なお、サンプル重量25gあたりのサルモネラ属菌の初発菌数は全て陰性であった。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内においてさらに種々の形態で実施することができる。
本発明は、菓子・パン工場におけるスポンジケーキ、ブッセケーキ、カステラ、どら焼き類の製造のみならず、老人保健施設の給食でカルシウム分が不足しがちな老人に対して提供する目的で、茶碗蒸し等の蒸し物、卵焼き等の焼成卵加工品、卵スープ等の汁物等の様々な形態での調理に好適に利用できる。そのほか、製造してから長時間放置されるスーパーの惣菜売り場における親子丼、卵とじカツ丼等の惣菜類の製造にも利用することができる。

Claims (8)

  1. 実質的に液卵と乳酸カルシウムのみからなり、乳酸カルシウムの含有量が、該液卵の正味重量に対して0.5%以上1%以下である加熱処理液卵。
  2. pHが、7.0〜8.5である請求項1に記載の加熱処理液卵。
  3. 液卵に対して実質的に乳酸カルシウムのみを添加する工程と、60.6℃を超え74℃以下の温度範囲に達する加熱をする工程とを含む、加熱処理液卵の製造方法。
  4. 加熱は、バッチ式で行い、58℃以上での加熱時間が合計10分以下である請求項3に記載の加熱処理液卵の製造方法。
  5. 加熱は、連続式で行い、60℃以上での加熱時間が合計3分30秒以下である請求項3に記載の加熱処理液卵の製造方法。
  6. 60.6℃を超え74℃以下の温度範囲で加熱する工程に先立ち、液卵を一時的に7℃以下に冷却する工程を含む請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の加熱処理液卵の製造方法。
  7. 乳酸カルシウムの添加量が0.5%を超え1%以下である請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の加熱処理液卵の製造方法。
  8. 前記液卵は、前記加熱をする工程に先立ち、ストレーナを用いた濾過工程を経ており、卵白と卵黄とを均一化するための機械的処理を経ていない請求項3乃至請求項7のいずれかに記載の加熱処理液卵の製造方法。
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