JP5932760B2 - 偏光子及びそれを含む偏光板 - Google Patents
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Description
[1] ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光子であって、
厚みが10μm以下であり、
ポリビニルアルコールの位相差に対するヨウ素の位相差の比が0.38以上である、偏光子。
[3] 偏光子の少なくとも一方の面に貼合される保護フィルムをさらに含む、上記[2]の偏光板。
(1)偏光板の基本的構成
図1は、本発明に係る偏光板の層構成の一例を示す概略断面図である。図1に示される偏光板1のように、本発明の偏光板は、厚み10μm以下の偏光子5と、その一方の面に第1接着剤層15を介して積層される第1保護フィルム10と、他方の面に第2接着剤層25を介して積層される第2保護フィルム20とを備えるものであることができる。偏光板1は、第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20上に積層される他の光学機能層や粘着剤層等をさらに有していてもよい。
第1の実施形態において本発明の偏光板は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる厚みが10μm以下の偏光子を含み、該偏光子のポリビニルアルコールの位相差(Rpva)に対するヨウ素の位相差(Ri)の比(Ri/Rpva)が0.38以上である。Ri/Rpvaは、好ましくは0.40以上であり、より好ましくは0.44以上である。かかる位相差特性を示す本発明の偏光板は、偏光子5の厚みが10μm以下と小さいために比較的厚みの大きい従来の偏光子(35μm程度)に比べて偏光子5への水分の出入が格段に速く、赤変を生じやすいにもかかわらず、耐熱試験(通常、80〜85℃で500〜750時間)に供しても赤変が生じにくく、ニュートラルな表示を保つことができ、耐熱性に優れている。このような高耐熱性(赤変のしにくさ)は、偏光板を液晶表示装置のような表示装置などに適用し、実使用に供される場合においても長期にわたって持続する。
R(λ)= A+B/(λ2−6002)
このとき、この位相差値R(λ)は、波長依存性のないポリビニルアルコールの位相差(Rpva)と、波長依存性の強いヨウ素の位相差値(Ri)とに下記のように分離することができる。
Rpva= A
Ri = B/(λ2−6002)
この分離式に基づいて、波長λ=1000nmにおけるポリビニルアルコールの位相差値、および、ヨウ素の位相差値を計算することができる。
偏光板又は偏光子の偏光性能は、主に単体透過率及び偏光度と呼ばれる数値で表すことができ、それぞれ下記式:
単体透過率(λ)=0.5×(Tp(λ)+Tc(λ))
偏光度(λ)=100×(Tp(λ)−Tc(λ))/(Tp(λ)+Tc(λ))
で定義される。
偏光子5は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させたものであることができる。本発明において偏光子5の厚みは10μm以下であり、好ましくは7μm以下である。偏光子5の厚みを10μm以下とすることにより偏光板1,2の薄膜化を実現できる一方、本発明によれば、このような薄膜の偏光子5を用いる場合であっても耐熱試験下での赤変を効果的に抑制することができる。
ケン化度(モル%)=100×(水酸基の数)÷(水酸基の数+酢酸基の数)
で定義される。ケン化度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。ケン化度が高いほど、水酸基の割合が高いことを示しており、従って結晶化を阻害する酢酸基の割合が低いことを示している。
第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20はそれぞれ、熱可塑性樹脂、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;セルローストリアセテート、セルロースジアセテートのようなセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;又はこれらの混合物、共重合物等からなる透明樹脂フィルムであることができる。第1保護フィルム10と第2保護フィルム20は、互いに同種の保護フィルムであってもよいし、異種の保護フィルムであってもよい。
第1及び第2接着剤層15,25を形成する接着剤としては、水系接着剤又は光硬化性接着剤を用いることができる。第1接着剤層15を形成する接着剤と第2接着剤層25を形成する接着剤とは同種であってもよいし、異種であってもよい。
図1に示される偏光板1における第1保護フィルム10又は第2保護フィルム20上、図2に示される偏光板2における偏光子5上に、偏光板を他の部材(例えば液晶表示装置に適用する場合における液晶セル)に貼合するための粘着剤層を積層してもよい。粘着剤層を形成する粘着剤は通常、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂などをベースポリマーとし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物のような架橋剤を加えた粘着剤組成物からなる。さらに微粒子を含有して光散乱性を示す粘着剤層とすることもできる。
本発明の偏光子及び偏光板は、図3に示される方法によって好適に製造することができる。図3に示される偏光板の製造方法は、下記工程:
(1)基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を塗工した後、乾燥させることによりポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る樹脂層形成工程S10、
(2)積層フィルムを延伸して延伸フィルムを得る延伸工程S20、
(3)延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層をヨウ素で染色して偏光子を形成することにより偏光性積層フィルムを得る染色工程S30、
(4)偏光性積層フィルムの偏光子上に第1保護フィルムを貼合して貼合フィルムを得る第1貼合工程S40、
(5)貼合フィルムから基材フィルムを剥離除去して片面保護フィルム付の偏光板を得る剥離工程S50、
をこの順で含む。
(6)片面保護フィルム付偏光板の偏光子面に第2保護フィルムを貼合する第2貼合工程S60、
を含む。以下、図4〜図7を参照しながら各工程について説明する。
図4を参照して、本工程は、基材フィルム30の少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層6を形成して積層フィルム100を得る工程である。このポリビニルアルコール系樹脂層6は、延伸工程S20及び染色工程S30を経て偏光子5となる層である。ポリビニルアルコール系樹脂層6は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を基材フィルム30の片面又は両面に塗工し、塗工層を乾燥させることにより形成することができる。このような塗工によりポリビニルアルコール系樹脂層を形成する方法は、薄膜の偏光子5を得やすい点で有利である。
基材フィルム30は熱可塑性樹脂から構成することができ、中でも透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性等に優れる熱可塑性樹脂から構成することが好ましい。このような熱可塑性樹脂の具体例は、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;セルローストリアセテート、セルロースジアセテートのようなセルロースエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;及びこれらの混合物、共重合物を含む。
塗工液は、好ましくはポリビニルアルコール系樹脂の粉末を良溶媒(例えば水)に溶解させて得られるポリビニルアルコール系樹脂溶液である。ポリビニルアルコール系樹脂の詳細は、上述のとおりである。
上記塗工液を基材フィルム30に塗工する方法は、ワイヤーバーコーティング法;リバースコーティング、グラビアコーティングのようなロールコーティング法;ダイコート法;カンマコート法;リップコート法;スピンコーティング法;スクリーンコーティング法;ファウンテンコーティング法;ディッピング法;スプレー法等の方法から適宜選択することができる。
プライマー層は、プライマー層形成用塗工液を基材フィルム30の表面に塗工した後、乾燥させることにより形成することができる。プライマー層形成用塗工液は、基材フィルム30とポリビニルアルコール系樹脂層6との両方にある程度強い密着力を発揮する成分を含む。プライマー層形成用塗工液は通常、このような密着力を付与する樹脂成分と溶媒とを含有する。樹脂成分としては、好ましくは透明性、熱安定性、延伸性等に優れる熱可塑樹脂が用いられ、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。中でも、良好な密着力を与えるポリビニルアルコール系樹脂が好ましく用いられる。
図5を参照して、本工程は、基材フィルム30及びポリビニルアルコール系樹脂層6からなる積層フィルム100を延伸して、延伸された基材フィルム30’及びポリビニルアルコール系樹脂層6’からなる延伸フィルム200を得る工程である。延伸処理は通常、一軸延伸である。
図6を参照して、本工程は、延伸フィルム200のポリビニルアルコール系樹脂層6’をヨウ素で染色してこれを吸着配向させ、偏光子5とする工程である。本工程を経て基材フィルム30’の片面又は両面に偏光子5が積層された偏光性積層フィルム300が得られる。
図7を参照して、本工程は、偏光性積層フィルム300の偏光子5上、すなわち、偏光子5の基材フィルム30’側とは反対側の面に第1保護フィルム10を貼合して貼合フィルム400を得る工程である。偏光性積層フィルム300が基材フィルム30’の両面に偏光子5を有する場合は通常、両面の偏光子5上にそれぞれ第1保護フィルム10が貼合される。この場合、これらの第1保護フィルム10は同種の保護フィルムであってもよいし、異種の保護フィルムであってもよい。
本工程は、第1保護フィルム10を貼合して得られた貼合フィルム400から基材フィルム30’を剥離除去する工程である。この工程を経て、偏光子5の片面に第1保護フィルム10が積層された図2に示される片面保護フィルム付偏光板2が得られる。偏光性積層フィルム300が基材フィルム30’の両面に偏光子5を有し、これら両方の偏光子5に第1保護フィルム10を貼合した場合には、この剥離工程S50により、1枚の偏光性積層フィルム300から2枚の片面保護フィルム付偏光板2が得られる。
本工程は、片面保護フィルム付き偏光板2の偏光子5上、すなわち第1貼合工程S40にて貼合した第1保護フィルム10とは反対側の面に、第2保護フィルム20を貼合し、図1に示されるような両面保護フィルム付の偏光板1を得る工程である。
以上のような製造方法おいて、本発明で規定する位相差特性を有する偏光子を作製する方法は、特に制約されるものではないが、例えば、延伸工程における延伸条件および染色工程における染色条件をコントロールする方法が挙げられる。
(1)プライマー層形成工程
ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製の「Z−200」、平均重合度1100、ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(田岡化学工業(株)製の「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部の割合で混合して、プライマー層形成用塗工液を得た。
ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製の「PVA124」、平均重合度2400、ケン化度98.0〜99.0モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製し、これをポリビニルアルコール系樹脂層形成用塗工液とした。
上記(2)で作製した積層フィルムに対して、フローティングの縦一軸延伸装置を用いて100℃で2.0倍まで延伸し、ついで、140℃で5.8倍まで自由端一軸延伸を実施し、最後に160℃で10秒熱処理して延伸フィルムを得た。延伸後のポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは6.5μmであった。
上記(3)で作製した延伸フィルムを、ヨウ素とヨウ化カリウムとを含む30℃の染色水溶液(水100重量部あたりヨウ素を0.6重量部、ヨウ化カリウムを10重量部含む。)に約180秒間浸漬してポリビニルアルコール系樹脂層の染色処理を行った。この間、延伸方向への張力を1m巾あたり600Nに保った。
ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製の「KL−318」、平均重合度1800)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(田岡化学工業(株)製の「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末2重量部に対して1重量部の割合で混合し、接着剤水溶液とした。
染色処理での張力を300Nに、架橋処理での張力を600Nに変えたこと以外は、実施例1と同様にして両面保護フィルム付偏光板を作製した。
第1架橋水溶液(水100重量部あたりホウ酸を9.5重量部含む。)の代わりに、水100重量部あたりホウ酸9.5重量部およびヨウ化カリウム2重量部を含む架橋水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして両面保護フィルム付偏光板を作製した。
延伸工程において、140℃で2.0倍まで延伸し、ついで、150℃で5.8倍まで自由端一軸延伸を実施し、最後に160℃で10秒熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして両面保護フィルム付偏光板を作製した。
延伸工程において、140℃で2.0倍まで延伸し、ついで、160℃で5.8倍まで自由端一軸延伸を実施し、最後に160℃で10秒熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして両面保護フィルム付偏光板を作製した。
延伸工程において、170℃で2.0倍まで延伸し、ついで、同じ170℃で5.8倍まで自由端一軸延伸を実施し、最後に160℃で10秒熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして両面保護フィルム付偏光板を作製した。
延伸工程において、170℃で2.0倍まで延伸し、ついで、同じ160℃で5.8倍まで自由端一軸延伸を実施し、最後に160℃で10秒熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして両面保護フィルム付偏光板を作製した。
染色処理での張力を50Nに、架橋処理での張力を80Nに変えたこと以外は、実施例1と同様にして両面保護フィルム付偏光板を作製した。染色後の偏光子は一部溶解した部分も見られ、染色工程中で配向緩和していることが目視でみても分かった。
第1架橋水溶液(水100重量部あたりホウ酸を9.5重量部含む。)の代わりに、水100重量部あたりホウ酸9.5重量部およびヨウ化カリウム10重量部を含む架橋水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして両面保護フィルム付偏光板を作製した。
(1)偏光子の位相差の測定
実施例および比較例で得られた偏光板について、第1保護フィルム(トリアセチルセルロース)を塩化メチレンで溶解させ、第2保護フィルム(環状ポリオレフィン系樹脂)をシクロヘキサンで溶解させることにより、偏光子を取り出した。この偏光子について、波長1000nmにおけるRpvaとRiの値を位相差測定装置(王子計測機器(株)製:KOBRA−WPR/IR)を用いて測定した。
実施例及び比較例で得られた偏光子(保護フィルムを貼合する前の偏光性積層フィルムの状態)について、吸光光度計(日本分光(株)製の「V7100」)を用いて、視感度補正単体透過率(Ty)及び視感度補正偏光度(Py)を測定した。結果を表1に示す。測定の際、偏光性積層フィルムは、その偏光子側に入射光が入射されるようにセットした。
実施例及び比較例で得られた両面保護フィルム付偏光板を長さ10cmの短冊状試料を2つ切り出し、これらの試料をガラス板の両面に粘着剤を用いて貼合した。この際、第2保護フィルム「ZF14」側がガラス板側になるようにし、かつ、両面に配置した試料はクロスニコルの位置関係となるようにした。試料を貼合したガラス板を85℃のオーブンに500時間投入した後、オーブンから取り出し、暗室にてバックライト上で赤変の目視評価を行った。赤変のレベルの指標は、下記に示すとおりである。Lv3までを合格とした。結果を表1に示す。
Lv2:真っ黒の状態を保ち、目視で赤変が認識できないレベル、
Lv3:耐熱試験前のものと並べてみるとやや色が薄くなったように見えるが赤変はほとんどないレベル、
Lv4:全体的に赤っぽく変色してしまっているレベル、
Lv5:完全に赤に変色してしまっているレベル。
Claims (6)
- ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光子であって、
厚みが10μm以下であり、
ポリビニルアルコールの位相差に対するヨウ素の位相差の比が波長1000nmにおいて0.38以上であり、前記ポリビニルアルコールの位相差及び前記ヨウ素の位相差は、850nm以上の波長の位相差値をセルマイヤー式で最小二乗法によりフィッティングしたときのフィッティングパラメータから決定される値であり、
視感度補正単体透過率が40.0%以上であり、
視感度補正偏光度が99.9942%以上である、偏光子。 - 前記視感度補正単体透過率が41.4%以上である、請求項1に記載の偏光子。
- 前記ポリビニルアルコールの位相差が341.5nm以上である、請求項1または2に記載の偏光子。
- 前記ヨウ素の位相差が136.3nm以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光子。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光子を含む偏光板。
- 偏光子の少なくとも一方の面に貼合される保護フィルムをさらに含む、請求項5に記載の偏光板。
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