JP6151479B2 - 偏光性積層フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、偏光性積層フィルムの製造方法に関する。
偏光板は、液晶表示装置などの表示装置における偏光の供給素子等として広く用いられている。かかる偏光板として、従来より、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子層とトリアセチルセルロースなどの保護フィルムが積層されたものが使用されている。偏光子層(偏光フィルム)においては、高い光学性能が求められるとともに、近年、液晶表示装置のノート型パーソナルコンピュータや携帯電話などモバイル機器への展開などに伴い、薄肉軽量化が求められている。
薄型の偏光板の製造方法の一例として、基材フィルムの表面にポリビニルアルコール系樹脂を含む溶液を塗布して樹脂層を設けた後、基材フィルムと樹脂層からなる積層フィルムを延伸し、次いで染色、架橋(固定)、乾燥し、樹脂層から偏光子層を形成することにより、偏光子層を有する偏光性積層フィルムを得る方法が提案されている。これをそのまま偏光板として利用したり、該フィルムに保護フィルムを貼合した後、基材フィルムを剥離して、偏光板として利用したりする方法が知られている。
積層フィルムを延伸する工程においては、一方向に延伸しながらそれと垂直な方向を収縮させることで、一軸配向した偏光フィルムが得られるが、通常、前記延伸としては自由端縦一軸延伸が採用される。しかしながら、自由端縦一軸延伸を実施すると、幅方向が自然にネックインするために原反幅が著しく狭くなる場合がある。一方、このような問題を避ける方法として、特許文献1には、幅方向に延伸(横延伸)して偏光フィルムを製造する方法が記載されている。
特開2003−43257号公報
特許文献1には、横一軸延伸の際、延伸方向と直交する方向の長さを2%以上収縮することにより、偏光フィルムの偏光性能を向上させることが記載されているが、さらなる偏光性能の向上が求められている。
本発明は、幅方向に延伸するとともに縦方向に収縮して偏光性積層フィルムを製造する方法において、さらに優れた偏光性能を有する偏光性積層フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究の結果、最終的な幅方向の延伸倍率および縦方向の収縮倍率が同じであっても、延伸過程における幅方向の延伸速度および縦方向の収縮速度によって偏光性能に違いが生じること見出し本発明に至った。本発明は以下を含む。
[1]長尺状の基材フィルムと、ポリビニルアルコール系樹脂層とが積層された長尺状の積層フィルムを幅方向に延伸するとともに縦方向に収縮して延伸フィルムを得る延伸工程と、延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色する染色工程と、を含む偏光性積層フィルムの製造方法であって、延伸工程において、ポリビニルアルコール系樹脂層の幅方向における延伸工程開始時の長さに対する延伸時の長さの倍率であるTD倍率と、縦方向における延伸工程開始時の長さに対する収縮時の長さの倍率であるMD倍率とが、1.0<TD倍率≦3.0である第1期間では下記式(1)の関係を満たし、TD倍率>3.0である第2期間では下記式(2)の関係を満たしながら、上記延伸および上記収縮を行なう、偏光性積層フィルムの製造方法。
MD倍率≦(−0.2)×TD倍率+1.2 式(1)
MD倍率≦(−0.1/3)×TD倍率+0.7 式(2)
[2]延伸工程において、最終的なTD倍率が4.0以上である、[1]に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
[3]延伸工程において、最終的なMD倍率が0.5以下である、[1]または[2]に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
[4]延伸工程において、最終的なMD倍率が0.2以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
[5]延伸工程後のポリビニルアルコール系樹脂層の厚みが10μm以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
本発明の製造方法によると、幅方向に延伸するとともに縦方向に収縮する方法において、より優れた偏光特性を有する偏光性積層フィルムを製造することができる。
本発明の偏光性積層フィルムの製造方法に好適に用いられる装置を模式的に示す図である。 本発明の製造方法に用いられるテンターの内部構成の一例を模式的に示す平面図である。 テンターのクリップの構成を模式的に示す図である。 実施例1〜8および比較例1〜5の偏光性積層フィルムの製造方法おける延伸工程のTD倍率およびMD倍率の経路を示す図である。 実施例1〜8および比較例1〜5の偏光性積層フィルムの偏光性能を示す図である。
本発明の偏光性積層フィルムの製造方法は、長尺状の基材フィルムと、ポリビニルアルコール系樹脂層とが積層された長尺状の積層フィルムを幅方向に延伸するとともに縦方向に収縮して延伸フィルムを得る延伸工程と、延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色する染色工程と、を含む偏光性積層フィルムの製造方法である。
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
図1は、本発明の偏光性積層フィルムの製造方法に好適に用いられる装置を模式的に示す図である。図1に示す例では、原反ロール2から繰り出された積層フィルム1が、延伸工程を行なうための延伸装置10、染色工程を行なうための染色槽20を順次通過し、偏光性積層フィルム3が得られるように構成されている。図1には示していないが、延伸装置10を通過した後、一旦積層フィルムを取り出し、次いでその積層フィルムを染色槽20に通過させてもよい。延伸装置10においては、走行する積層フィルム1の幅方向の両端部を走行方向に配列された複数のクリップで把持し、延伸ゾーンにおいて、クリップを積層フィルムとともに走行させながら幅方向のクリップ間隔を広げることによって積層フィルム1を幅方向に延伸するとともに、走行方向(縦方向)のクリップ間隔を狭めることによって積層フィルム1を縦方向に収縮する延伸工程が行なわれる。
なお、図1においては、膨潤処理を行なうための膨潤槽、架橋処理を行なうための架橋槽、乾燥処理を行なうための乾燥炉を示していないが、必要に応じてこれらを適宜設けることができる。
[積層フィルム]
本発明の製造方法では、長尺状の基材フィルムと、ポリビニルアルコール系樹脂層とが積層された長尺状の積層フィルムを用いる。
(基材フィルム)
基材フィルムに用いられる樹脂としては、たとえば、透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられ、それらのガラス転移温度Tgまたは融点Tmに応じて適切な樹脂を選択できる。基材フィルムは、その上に積層するポリビニルアルコール系樹脂層の延伸に適した温度範囲で延伸できるようなものを用いることが好ましい。
熱可塑性樹脂の具体例としては、鎖状ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、(メタ)アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、およびこれらの混合物、共重合物などが挙げられる。
基材フィルムは、上述の樹脂1種類のみからなるフィルムであっても構わないし、樹脂を2種類以上をブレンドしてなるフィルムであっても構わない。該基材フィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられ、安定的に高倍率に延伸しやすく好ましい。また、プロピレンにエチレンを共重合することで得られるエチレン−ポリプロピレン共重合体なども用いることもできる。共重合は他の種類のモノマーでも可能であり、プロピレンに共重合可能な他種のモノマーとしては、たとえば、エチレン、α−オレフィンを挙げることができる。α−オレフィンとしては、炭素数4以上のα−オレフィンが好ましく用いられ、より好ましくは、炭素数4〜10のα−オレフィンである。炭素数4〜10のα−オレフィンの具体例を挙げれば、たとえば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の直鎖状モノオレフィン類;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の分岐状モノオレフィン類;ビニルシクロヘキサンなどである。プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。共重合体中の当該他のモノマー由来の構成単位の含有率は、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法にしたがい、赤外線(IR)スペクトル測定を行なうことにより求めることができる。
上記のなかでも、プロピレン系樹脂フィルムを構成するプロピレン系樹脂として、プロピレンの単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、および、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体が好ましく用いられる。
また、プロピレン系樹脂フィルムを構成するプロピレン系樹脂の立体規則性は、実質的にアイソタクチックまたはシンジオタクチックであることが好ましい。実質的にアイソタクチックまたはシンジオタクチックの立体規則性を有するプロピレン系樹脂からなるプロピレン系樹脂フィルムは、その取扱い性が比較的良好であるとともに、高温環境下における機械的強度に優れている。
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有するポリマーであり、主に、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合体である。用いられる多価カルボン酸は、主に2価のジカルボン酸が用いられ、たとえば、イソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチルなどがある。また、用いられる多価アルコールも主に2価のジオールが用いられ、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。具体的な樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレート、などが挙げられる。これらのブレンド樹脂や、共重合体も好適に用いることができる。
環状ポリオレフィン系樹脂としては、好ましくはノルボルネン系樹脂が用いられる。環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、たとえば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、およびこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびにそれらの水素化物などが挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
環状ポリオレフィン系樹脂としては種々の製品が市販されている。具体例としては、Topas(登録商標)(Ticona社製)、アートン(登録商標)(JSR(株)製)、ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、アペル(登録商標)(三井化学(株)製)が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。たとえば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(たとえば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂として、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートなどが挙げられる。また、これらの共重合物や、水酸基の一部を他種の置換基などで修飾された物なども挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテートが特に好ましい。セルローストリアセテートは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。セルローストリアセテートの市販品の例としては、フジタック(登録商標)TD80(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UF(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UZ(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD40UZ(富士フィルム(株)製)、KC8UX2M(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)などが挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合されたポリマーからなるエンジニアリングプラスチックであり、高い耐衝撃性、耐熱性、難燃性を有する樹脂である。また、高い透明性を有することから光学用途でも好適に用いられる。光学用途では光弾性係数を下げるためにポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、波長依存性を改良した共重合ポリカーボネートなども市販されており、好適に用いることが出来る。このようなポリカーボネート樹脂は広く市販されており、たとえば、パンライト(登録商標)(帝人化成(株))、ユーピロン(登録商標)(三菱エンジニアリングプラスチック(株))、SDポリカ(登録商標)(住友ダウ(株))、カリバー(登録商標)(ダウケミカル(株))などが挙げられる。
基材フィルムには、上記の熱可塑性樹脂の他に、任意の適切な添加剤が添加されていてもよい。このような添加剤としては、たとえば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、および着色剤などが挙げられる。基材フィルム中の上記にて例示した熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。基材フィルム中の熱可塑性樹脂の含有量が50重量%未満の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現されないおそれがあるからである。
延伸前の基材フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性の点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは1〜300μm、さらに好ましくは5〜200μm、最も好ましくは5〜150μmである。
基材フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層との密着性を向上させるために、少なくともポリビニルアルコール系樹脂層が形成される側の表面に、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等を行ってもよい。また密着性を向上させるために、基材フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層が形成される側の表面に、プライマー層等の薄層を形成してもよい。
(プライマー層)
プライマー層としては、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂層との両方にある程度強い密着力を発揮する材料であれば特に限定されない。たとえば、透明性、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑樹脂が用いられる。具体的にはアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂が挙げられるがこれに限定されるものではない。
プライマー層を構成する樹脂は、溶媒に溶解した状態で用いてもよい。樹脂の溶解性により、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル類、塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルムの如き塩素化炭化水素類、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類など、一般的な有機溶媒を用いることもできる。ただ、有機溶媒を含む溶液を用いてプライマー層を形成すると基材を溶解させてしまうこともあるので、基材の溶解性も考慮して溶媒を選択するのが好ましい。環境への影響を考慮すると水を溶媒とする塗工液からプライマー層を形成するのが好ましい。中でも、密着性がよいポリビニルアルコール系樹脂は好ましく用いられる。
プライマー層として使用されるポリビニルアルコール系樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール樹脂およびその誘導体が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールなどの他、ポリビニルアルコール樹脂をエチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで変性したものが挙げられる。上述のポリビニルアルコール系樹脂材料の中でも、ポリビニルアルコール樹脂を用いるのが好ましい。
プライマー層の強度を上げるために上記の熱可塑性樹脂に架橋剤を添加してもよい。樹脂に添加する架橋剤は、有機系、無機系など公知のものを使用することができる。使用する熱可塑性樹脂に対して、より適切なものを適宜選択すればよい。たとえば、エポキシ系、イソシアネート系、ジアルデヒド系、金属系の架橋剤を選択することができる。エポキシ系の架橋剤としては、一液硬化型のものや二液硬化型のもののいずれも用いることができる。エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類が挙げられる。
イソシアネート系の架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン−トリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類が挙げられる。
ジアルデヒド系の架橋剤としては、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等が挙げられる。
金属系の架橋剤としては、例えば、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物が挙げられ、金属の種類は特に限定されず適宜選択すればよい。金属塩、金属酸化物、金属水酸化物としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル、ジルコニウム、チタン、珪素、ホウ素、亜鉛、銅、バナジウム、クロム、スズ等の二価以上の原子価を有する金属の塩及びその酸化物、水酸化物が挙げられる。
有機金属化合物とは金属原子に、直接有機基が結合しているか、または、酸素原子や窒素原子などを介して有機基が結合している構造を、分子内に少なくとも1個有する化合物である。有機基とは、少なくとも炭素元素を含む官能基を意味し、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アシル基などであることができる。また、結合とは共有結合だけを意味するものではなく、キレート状化合物などの配位による配位結合であってもよい。
上記金属有機化合物の好適な例としては、チタン有機化合物、ジルコニウム有機化合物、アルミニウム有機化合物、および珪素有機化合物が挙げられる。これら金属有機化合物は、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
上記チタン有機化合物の具体例としては、例えば、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート等のチタンオルソエステル類;チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンエチルアセトアセテート等のチタンキレート類;ポリヒドロキシチタンステアレート等のチタンアシレート類等が挙げられる。
上記ジルコニウム有機化合物の具体例としては、例えば、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート等が挙げられる。
上記アルミニウム有機化合物の具体例としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウム有機酸キレート等が挙げられる。上記珪素有機化合物の具体例としては、例えば、上述したチタン有機化合物およびジルコニウム有機化合物で例示した配位子を有する化合物が挙げられる。
上記の低分子架橋剤の他にも、メチロール化メラミン樹脂やポリアミドエポキシ樹脂などの高分子系の架橋剤なども用いることができる。かかるポリアミドエポキシ樹脂の市販品としては、住化ケムテックス(株)から販売されている「スミレーズ(登録商標)レジン650(30)」や「スミレーズ(登録商標)レジン675」(いずれも商品名)などがある。
熱可塑性樹脂としてポリビニルアルコール系樹脂を使用する場合は、ポリアミドエポキシ樹脂、メチロール化メラミン、ジアルデヒド、金属キレート架橋剤などが特に好ましい。
プライマー層を形成するために用いる熱可塑性樹脂と架橋剤の割合は、樹脂100重量部に対して、架橋剤0.1〜100重量部程度の範囲から、樹脂の種類や架橋剤の種類などに応じて適宜決定すればよく、とりわけ0.1〜50重量部程度の範囲から選択するのが好ましい。また、プライマー層用塗工液は、その固形分濃度が1〜25重量%程度となるようにするのが好ましい。
プライマー層の厚みは、0.05〜1μmが好ましい。さらに好ましくは0.1〜0.4μmである。0.05μmより薄くなると基材フィルムとポリビニルアルコール層との密着力向上の効果が小さく、1μmより厚くなると、偏光板が厚くなるため好ましくない。
プライマー層の形成にあたり、使用する塗工方式は特に制限されるものでなく、ワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法、などを公知の方法から適宜選択して採用できる。
(ポリビニルアルコール系樹脂層)
ポリビニルアルコール系樹脂層に用いられるポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をけん化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、たとえば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂は、完全けん化品であることが好ましい。けん化度の範囲は、80.0モル%〜100.0モル%であるものが好ましく、90.0モル%〜99.5モル%の範囲であるものがより好ましく、さらには94.0モル%〜99.0モル%の範囲であるものが最も好ましい。けん化度が80.0モル%未満であると偏光子層を形成した後の耐水性・耐湿熱性に著しく劣る不具合がある。
本明細書における「けん化度」とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基がけん化工程により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式:
けん化度(モル%)=(水酸基の数)÷(水酸基の数+酢酸基の数)×100
で定義される数値である。JIS K 6726(1994)で規定されている方法で求めることができる。けん化度が高いほど、水酸基の割合が高いことを示しており、すなわち結晶化を阻害する酢酸基の割合が低いことを示している。
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、一部が変性されている変性ポリビニルアルコールでもよい。たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂をエチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで変性したものなどが挙げられる。変性の割合は30モル%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましい。30モル%を超える変性を行った場合には、二色性色素を吸着しにくくなり、偏光性能が低くなってしまう不具合を生じる。
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度も特に限定されるものではないが、100〜10000が好ましく、1500〜8000がより好ましく、さらには2000〜5000であることが最も好ましい。ここでいう平均重合度もJIS K 6726(1994)によって定められた方法によって求められる数値である。
このような特性を有するポリビニルアルコール系樹脂としては、たとえば(株)クラレ製のPVA124(けん化度:98.0〜99.0モル%)、PVA117(けん化度:98.0〜99.0モル%)、PVA624(けん化度:95.0〜96.0モル%)およびPVA617(けん化度:94.5〜95.5モル%);たとえば日本合成化学工業(株)製のAH−26(けん化度:97.0〜98.8モル%)、AH−22(けん化度:97.5〜98.5モル%)、NH−18(けん化度:98.0〜99.0モル%)、およびN−300(けん化度:98.0〜99.0モル%);たとえば日本酢ビ・ポバール(株)のJC−33(けん化度:99.0モル%以上)、JM−33(けん化度:93.5〜95.5モル%)、JM−26(けん化度:95.5〜97.5モル%)、JP−45(けん化度:86.5〜89.5モル%)、JF−17(けん化度:98.0〜99.0モル%)、JF−17L(けん化度:98.0〜99.0モル%)、および、JF−20(けん化度:98.0〜99.0モル%)などが挙げられ、これらは本発明のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの形成において好適に用いることができる。
上述のポリビニルアルコール系樹脂中には、必要に応じて、可塑剤、界面活性剤等の添加剤が添加されていてもよい。可塑剤としては、ポリオールおよびその縮合物などを用いることができ、たとえばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどが例示される。添加剤の配合量は、特に制限されないがポリビニルアルコール系樹脂中20重量%以下とするのが好適である。ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは、好ましくは、3〜30μmである。ポリビニルアルコール系樹脂層の厚さが3μm未満であると延伸後に薄くなりすぎて染色性が著しく悪化してしまう。30μmを超えると、最終的に得られる偏光子層の厚みが10μmを超えてしまうことがあり好ましくない。
本発明における樹脂層は、好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂の粉末を良溶媒に溶解させて得たポリビニルアルコール系樹脂溶液を基材フィルムの一方の表面上に塗工し、溶剤を蒸発させることにより形成される。樹脂層をこのように形成することにより、薄く形成することが可能となる。ポリビニルアルコール系樹脂溶液を基材フィルムに塗工する方法としては、ワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを公知の方法から適宜選択して採用できる。乾燥温度は、たとえば50〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。乾燥時間は、たとえば2〜20分である。
なお、本発明における樹脂層は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムを基材フィルムの一方の表面上に貼着することにより形成することも可能である。また、樹脂層は、基材フィルムの一方の表面のみ形成してもよいし、両方の表面にそれぞれ形成してもよい。
(延伸工程)
本発明における延伸工程では、積層フィルムを幅方向に延伸するとともに、縦方向に収縮する。延伸工程においては、ポリビニルアルコール系樹脂層の幅方向における延伸工程開始時の長さに対する延伸時の長さの倍率であるTD倍率と、縦方向における延伸工程開始時の長さに対する収縮時の長さの倍率であるMD倍率とが、1.0<TD倍率≦3.0である第1期間では下記式(1)の関係を満たし、TD倍率>3.0である第2期間では下記式(2)の関係を満たしながら、前記延伸および前記収縮を行なう。
MD倍率≦(−0.2)×TD倍率+1.2 式(1)
MD倍率≦(−0.1/3)×TD倍率+0.7 式(2)
なお、延伸工程において、積層フィルムは幅方向に延伸されるので、TD倍率は1.0より大きい値となり、積層フィルムは縦方向に収縮されるので、MD倍率は1.0未満の値となる。
上記式(1),(2)によって、延伸工程のある時点におけるMD倍率の上限値がTD倍率によって規定されることになる。MD倍率の上限値は、延伸工程のある時点で最低限満たすべき縦方向の収縮の程度を表わし、したがって、たとえばMD倍率が式(1)または式(2)の上限値をとるような最も収縮程度が少ない状態で延伸工程が進行する場合、1.0<TD倍率≦3.0である第1期間の方が、TD倍率>3.0である第2期間よりTD倍率の変化量に対するMD倍率の変化量が大きく、より急速に収縮が進むことになる。
延伸方向に対して垂直な方向の自然発生的な収縮は特に延伸の初期段階で大きく生じる。このため、幅方向の延伸に対して、縦方向の収縮の程度が初期の段階で小さい場合、フィルムの自然な収縮量に追い付かず延伸方向の配向性が低いものとなる。本発明では、延伸工程におけるMD倍率が式(1)または式(2)の関係を満たすことにより、特に1.0<TD倍率≦3.0である初期の段階(第1期間)において式(1)を満たすことにより、第1期間において縦方向の収縮が十分に進行し、ポリビニルアルコール系樹脂層において高い配向性が得られ、高い偏光性能の偏光性積層フィルムを得ることができる。
延伸の程度は、上記関係を満たすものであればさらなる制限はなく、TD倍率が変化してもMD倍率が変化しない期間があってもよい。また、TD倍率が変化しなくてもMD倍率が変化する期間があってもよい。
本発明の延伸工程においては、最終的なTD倍率は、好ましくは、4.0以上かつ17.0以下である。さらに好ましくは5.0以上かつ8.0以下である。最終的なTD倍率が4.0未満であると、ポリビニルアルコール系樹脂層が十分に配向しないため、結果として、偏光子層の偏光度が十分に高くならない不具合を生じることがある。一方、最終的なTD倍率が17.0を超えると延伸時に積層フィルムの破断が生じ易くなると同時に、延伸フィルムの厚みが必要以上に薄くなり、後工程での加工性・ハンドリング性が低下するおそれがある。
本発明の延伸工程においては、最終的なMD倍率は、0.5以下が好ましく、0.45以下とするのがさらに好ましい。最終的なMD倍率が0.5を超える場合、縦方向の収縮応力によって幅方向の配向が妨げられて、結果として、偏光子層の偏光度が十分に高くならない不具合を生じることがある。一方、最終的なMD倍率が小さくなると得られる延伸フィルムが短くなり、後の工程で頻繁に巻回ロールを交換しなければならないなどの理由から生産性が低下する。よって、最終的なMD倍率は0.2以上が好ましく、0.3以上がさらに好ましい。また、最終的なMD倍率を小さくしすぎると、延伸工程において積層フィルムがたるんでシワになり巻取時に不具合を生じることがある。この不具合を生じさせないような最終的なMD倍率は、最終的なTD倍率が大きくなるほど小さくなる。最終的なMD倍率は、最終的なTD倍率に合わせて延伸工程で積層フィルムにたるみが生じない範囲で好適に選択することが望ましい。
延伸工程における延伸処理は、一段での延伸に限定されることはなく多段で行うこともできる。多段で行われる場合であっても、式(1)または式(2)の関係を満たすように延伸が行なわれる。延伸処理は、たとえば染色処理や架橋処理と同時に行なわれてもよい。この場合、染色工程での延伸は延伸程度の少ない補助的なものとすることが好ましく、走行方向への収縮は行なわなくてもよい。多段で行なう場合は、延伸処理の全段を合わせて好ましくは、TD倍率が4.0倍以上となるように延伸処理を行なう。
本発明における延伸工程は、たとえば、図1に示す延伸装置10で行なわれる。延伸装置10は、積層フィルムを幅方向に延伸するとともに、縦方向に収縮することができる装置である。延伸装置10としては、たとえばテンターを用いることができる。以下、本発明で用いることができるテンターの一形態について説明する。テンターは、走行する積層フィルムの幅方向の両端部を走行方向に配列された複数のクリップで把持し、延伸ゾーンにおいて、クリップを積層フィルムとともに走行させながら幅方向のクリップ間隔を広げることによって積層フィルムを幅方向に延伸するとともに、走行方向のクリップ間隔を狭めることによって積層フィルムを走行方向(縦方向)に収縮する。
図2は、本発明の製造方法に用いられるテンターの内部構成の一例を模式的に示す平面図である。図2に示すように、テンターは、積層フィルム1の幅方向の両端部を把持する多数のクリップ11を備え、クリップ11は無端チェーン12に所定の間隔で取り付けられている。無端チェーン12は、積層フィルム1を挟んで両側に配置されており、それぞれが入口側の原動スプロケット13と出口側の従動スプロケット14との間に掛け渡されている。原動スプロケット13は不図示のモータに接続されており、このモータが駆動することによって原動スプロケット13が回転される。これにより、無端チェーン12が原動スプロケット13と従動スプロケット14との間を周回走行するので、無端チェーン12に取り付けたクリップ11が周回走行する。
無端チェーン12の走行路は、幅方向のクリップ間隔が延伸ゾーンにおいて徐々に広がるように構成され、延伸ゾーンに入る時点のクリップ11の幅方向の間隔Dより、延伸ゾーンから出る時点のクリップ11の幅方向の間隔Dが広くなるように構成されている。
テンターは、さらに、無端チェーン12上に取り付けられたクリップ11の間隔、すなわち走行方向のクリップ11の間隔を所望の間隔に調節する不図示の位置調節機構を備えており、延伸ゾーンの走行路A1においてクリップ11の間隔を式(1)または式(2)の関係を満たすように狭め、また、従動スプロケット14から原動スプロケット13との間の走行路A2において、延伸ゾーンに入る時点のクリップ11の間隔Gが所望の値となるように調節する。
図3は、クリップ11の構成を模式的に示す図であり、(a)はクリップ11を上から見た図を示し、(b)はクリップ11の断面図を示す。図3に示されるように、クリップ11は、フレーム111、レバー113、フラッパ112で構成される。フレーム111はコの字形状に形成されており、下台がフィルム載置台となる。フレーム111の上台にはレバー113が回動自在に取り付けられ、このレバー113の下端にフラッパ112が取り付けられている。フラッパ112の自重によりレバー113が回動してフラッパ112とフレーム111の下台とが最近接し、両者の間に積層フィルムの端部が把持される。一方、積層フィルムを把持した状態から、レバー113が回動してフラッパ112がフレーム111の下台から離れると、把持した積層フィルムが開放される。図2に示すテンターにおいては、原動スプロケット13の位置でクリップ11による積層フィルムの把持動作が行なわれ、従動スプロケット14の位置でクリップ11の開放動作が行なわれる。
走行方向のクリップの間隔を調節する位置調節機構の制御方法は特に限定されるものではなく、様々な方法を採用することができる。たとえば、クリップを独立駆動するタイプのものであっても良いし、複数のクリップが連結されており、一つの駆動系で複数のクリップを制御するタイプのものであっても良い。クリップを独立駆動できるタイプの具体的な例としては、リニアモーター駆動方式に代表されるように磁力を用いた制御方法や、あるいは、各クリップに回転駆動モータが付いているようなものなどが挙げられる。これらの場合、全てのクリップを独立に駆動させて制御しても良いが、一部のクリップだけを制御して残りはフリーにする方法を採用することもできる。また、一つの駆動系で複数のクリップを制御するタイプの具体的な例としては、パンタグラフ方式に代表されるようなものが挙げられる。このパンタグラフ方式とは、2本のレールの間の距離を制御することでパンタグラフを開閉してクリップ間距離を制御するような方式である。
図2に示すテンターは一例であって、本発明の製造方法で用いられるテンターは、周回走行するチェーン12を有さずに、上記したような位置調節機構により、クリップの位置を制御することにより、クリップを積層フィルムとともに走行させ、クリップの幅方向の間隔を徐々に広げるとともに、クリップの走行方向の間隔を式(1)または式(2)を満たすように狭めることができる構成であってもよい。
延伸ゾーンでの温度は、基材フィルムが伸ばせる温度である必要があり、80〜180℃の範囲から適時選択すればよいが、ポリビニルアルコール系樹脂の延伸時の応力を低減するために、好ましくは120℃以上で実施する。延伸ゾーンでの温度が低すぎるとポリビニルアルコール系樹脂の延伸時の応力が強くなりすぎて積層フィルムが破断しやすくなり、逆に延伸温度が高すぎるとポリビニルアルコール系樹脂が脱水劣化して黄変する不具合を生じやすい。もちろん、延伸ゾーンにおいて異なる温度を複数設定してもよい。延伸ゾーンは、たとえば、積層フィルムに対して上方または下方、もしくはその両方から熱風を給気して、所定の温度に管理することができる。
さらに、延伸ゾーンより上流に予熱ゾーンを設け、延伸ゾーンより下流に、熱固定ゾーンおよび熱緩和ゾーンを順に設けてもよい。予熱ゾーンは、積層フィルムを予熱処理するゾーンであり、クリップの間隔を広げることなく、積層フィルムを加熱する。予熱ゾーンで予熱された積層フィルムは、延伸ゾーンに移動する。延伸ゾーンは、上述の通りクリップの間隔を広げることによって積層フィルムを幅方向に延伸するゾーンである。本発明においては、延伸ゾーンで積層フィルムの走行方向の収縮も行なう。延伸ゾーンで延伸された積層フィルムは、熱固定ゾーンに移動する。熱固定ゾーンは、積層フィルムの端部をクリップにより把持した状態で緊張状態に維持しながら、結晶化温度以上で熱処理を行なうゾーンである。この熱固定ゾーンで熱処理されることによって、ポリビニルアルコール系樹脂層の結晶化が促進される。熱固定ゾーンで熱処理された積層フィルムは、熱緩和ゾーンに移動する。熱緩和ゾーンは、積層フィルムを弛緩した状態で熱処理する工程であり、この熱緩和ゾーンによって、積層フィルムの内部の残留応力や歪み成分が除去される。各ゾーンにおける温度は、基材フィルム、ポリビニルアルコール系樹脂層の材料の特性に応じて適宜選択することができる。
(染色工程)
ここでは、延伸した積層フィルムの樹脂層を、二色性色素で染色する。二色性色素としては、たとえば、ヨウ素や有機染料などが挙げられる。有機染料としては、たとえば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックなどが使用できる。これらの二色性物質は、一種類でも良いし、二種類以上を併用して用いても良い。
染色工程は、たとえば、染色槽20において、上記二色性色素を含有する溶液(染色溶液)に積層フィルム全体を浸漬することにより行う。染色溶液としては、上記二色性色素を溶媒に溶解した溶液を使用できる。染色溶液の溶媒としては、一般的には水が使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒がさらに添加されても良い。二色性色素の濃度としては、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.02〜7重量%であることがより好ましく、0.025〜5重量%であることが特に好ましい。
二色性色素としてヨウ素を使用する場合、染色効率をより一層向上できることから、さらにヨウ化物を添加することが好ましい。このヨウ化物としては、たとえば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどが挙げられる。これらヨウ化物の添加割合は、染色溶液において、0.01〜20重量%であることが好ましい。ヨウ化物の中でも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましい。ヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ素とヨウ化カリウムの割合は重量比で、1:5〜1:100の範囲にあることが好ましく、1:6〜1:80の範囲にあることがより好ましく、1:7〜1:70の範囲にあることが特に好ましい。
染色溶液への延伸フィルムの浸漬時間は、特に限定されないが、通常は15秒〜15分間の範囲であることが好ましく、30秒〜3分間であることがより好ましい。また、染色溶液の温度は、10〜60℃の範囲にあることが好ましく、20〜40℃の範囲にあることがより好ましい。
染色工程において、染色に次いで架橋処理を行うことが出来る。架橋処理は、たとえば架橋剤を含む溶液(架橋溶液)中に積層フィルムを浸漬することにより行なうことができる。架橋剤としては、従来公知の物質を使用することができる。たとえば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらは一種類でも良いし、二種類以上を併用しても良い。
架橋溶液として、架橋剤を溶媒に溶解した溶液を使用できる。溶媒としては、たとえば水が使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒を含んでも良い。架橋溶液における架橋剤の濃度は、これに限定されるものではないが、1〜20重量%の範囲にあることが好ましく、6〜15重量%であることがより好ましい。
架橋溶液中には、ヨウ化物を添加してもよい。ヨウ化物の添加により、樹脂層の面内における偏光特性をより均一化させることができる。ヨウ化物としては、たとえば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが挙げられる。ヨウ化物の含有量は、0.05〜15重量%、より好ましくは0.5〜8重量%である。
架橋溶液への積層フィルムの浸漬時間は、通常、15秒〜20分間であることが好ましく、30秒〜15分間であることがより好ましい。また、架橋溶液の温度は、10〜90℃の範囲にあることが好ましい。
最後に洗浄工程および乾燥工程を行なうことが好ましい。洗浄工程としては、水洗浄処理を施すことができる。水洗浄処理は、通常、イオン交換水、蒸留水などの純水に延伸フィルムを浸漬することにより行なうことができる。水洗浄温度は、通常3〜50℃、好ましくは4℃〜20℃の範囲である。浸漬時間は通常2〜300秒間、好ましくは3秒〜240秒間である。
洗浄工程は、ヨウ化物溶液による洗浄処理と水洗浄処理を組み合わせてもよく、適宜にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノール等の液体アルコールを配合した溶液を用いることもできる。
洗浄工程の後に、乾燥工程を施すことが好ましい。乾燥工程として、任意の適切な方法(たとえば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)を採用しうる。たとえば、加熱乾燥の場合の乾燥温度は、通常、20〜95℃であり、乾燥時間は、通常、1〜15分間程度である。以上の染色工程を経て、樹脂層が偏光子としての機能を有することになる。本明細書においては、偏光子としての機能を有する樹脂層を偏光子層といい、基材フィルム上に偏光子層を備えた積層体を偏光性積層フィルムという。
(偏光子層)
偏光子層は、具体的には、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂層に二色性色素を吸着配向させたものである。
本発明の製造方法により製造される偏光性積層フィルムの偏光子層の厚さ(延伸後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚さ)は好ましくは10μm以下、さらに好ましくは7μm以下である。偏光子層の厚さを10μm以下とすることにより、薄型の偏光性積層フィルムを構成することができる。
本発明の製造方法により作製された偏光性積層フィルムは、そのまま偏光板とて用いることもできるし、偏光子層の表面に保護フィルムを貼合して、さらに基材フィルムを剥離して、偏光子層と保護フィルムとからなる偏光板として用いることもできる。
実施例1〜8および比較例1〜5の偏光性積層フィルムを以下のようにして作製した。
[実施例1〜8]
(1)基材フィルムの作製
エチレンユニットを5重量%含むプロピレン/エチレンのランダム共重合体(住友化学(株)製「住友ノーブレン W151」、融点Tm=138℃)からなる樹脂層の両側にプロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレン(住友化学(株)製「住友ノーブレンFLX80E4」、融点Tm=163℃)からなる樹脂層を配置した3層構造の基材フィルムを、多層押出成形機を用いた共押出成形により作製した。得られた基材フィルムの合計厚みは100μmであり、各層の厚み比(FLX80E4/W151/FLX80E4)は3/4/3であった。
(2)プライマー層の形成
ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製「Z−200」、平均重合度1100、平均ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部混合した。得られた混合水溶液を、コロナ処理を施した上記基材フィルムのコロナ処理面上にグラビアコーターを用いて連続で塗工し、80℃で10分間乾燥させることにより、厚み0.2μmのプライマー層を形成し、プライマー層/基材フィルムの構成からなるフィルムを作成した。さらに、基材フィルムの反対側に同様の処理を施し、0.2μmのプライマー層を形成してプライマー層/基材フィルム/プライマー層の構成からなるフィルムを得た。
(3)ポリビニルアルコール系樹脂層の形成
ポリビニルアルコール粉末(クラレ(株)製「PVA124」、平均重合度2400、平均けん化度98.0〜99.0モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を、上記プライマー層上にカンマコーターを用いて連続で塗工し、80℃で5分間乾燥させることにより、基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層からなる3層構造の積層フィルムを作製した。ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは10.6μmであった。さらに、基材フィルムの反対側の面にも同様の処理を施し、10.3μmのポリビニルアルコール系樹脂層を形成して、樹脂層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/樹脂層の構成からなる積層フィルムを得た。
(4)延伸工程
上記の積層フィルムを160℃の熱風下でMD方向に収縮させながらTD方向に延伸した。延伸工程途中のMD倍率およびTD倍率を制御しながら、最終的なMD倍率が0.40、最終的なTD倍率が5.8の延伸フィルムを得た。なお、延伸工程途中において、TD倍率1.6の時MD倍率0.71、TD倍率2.0の時MD倍率0.63、TD倍率3.0のときMD倍率0.52、TD倍率4.0の時MD倍率0.45、TD倍率5.0の時MD倍率0.41となるように延伸を行ない、最終的にTD倍率5.8、MD倍率0.40の延伸フィルムを作製した。図4に、延伸工程の開始点(MD倍率1.0、TD倍率1.0)から最終点(MD倍率0.40、TD倍率5.8)に至るまでに経たTD倍率およびMD倍率の経路を示す。なお、図4中には、式(1)で規定される上限値と、式(2)で規定される上限値についても示す。図4より、実施例1〜8では、式(1)で規定される上限値と、式(2)で規定される上限値を下回るMD倍率となる経路を経たことがわかる。
(5)染色工程
延伸した積層フィルムについて、次の手順で偏光性延伸フィルムを作製した。まず、延伸フィルムをヨウ素とヨウ化カリウムとを含む水溶液である30℃の染色溶液に下記の表1に示す時間浸漬して、ポリビニルアルコール系樹脂層の染色を行ない、ついで10℃の純水で余分なヨウ素液を洗い流した。次に、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液である72℃の架橋溶液に600秒間浸漬させた。その後、10℃の純水で4秒間洗浄し、最後に80℃で300秒間乾燥させることにより、偏光性積層フィルムを得た。
(6)偏光板の作製
偏光性積層フィルムを用いて、次の手順で偏光板を作製した。まず、ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製「KL−318」、平均重合度1800)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末2重量部に対して1重量部混合し、接着剤溶液とした。
次に、得られた偏光性積層フィルムの両面に、トリアセチルセルロース(コニカミノルタオプト(株)製「KC4UY」)をけん化処理した透明保護フィルムを、上述の接着剤水溶液を用いて貼り合わせた。その後、80℃で5分間乾燥させて、透明保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/透明保護フィルムの9層からなる積層フィルムを得た。
この積層フィルムから、基材フィルムを剥離除去し、基材フィルムの両側に存在していた「保護フィルム/接着剤層/偏光子/プライマー層」の構成の偏光板を得た。
[比較例1〜5]
延伸工程での、開始点(MD倍率1.0、TD倍率1.0)から最終点(MD倍率0.40、TD倍率5.8)に至るまでに経たMD倍率およびTD倍率の経路が異なる点、および染色溶液への浸漬時間を下記の表2に示す時間とした点以外は、実施例1〜8と同様にして比較例1〜5の偏光板を作製した。延伸工程での経路は、具体的には、TD倍率1.6の時MD倍率0.92、TD倍率2.0の時MD倍率0.88、TD倍率3.0のときMD倍率0.75、TD倍率4.0の時MD倍率0.63、TD倍率5.0の時MD倍率0.50となるように延伸を行ない、最終的にTD倍率5.8、MD倍率0.40の延伸フィルムを作製した。図4に、延伸工程の開始点(MD倍率1.0、TD倍率1.0)から最終点(MD倍率0.4、TD倍率5.8)に至るまでに経たMD倍率およびTD倍率の経路を示す。図4より、比較例1〜5ではMD倍率の変化量に対してTD倍率の変化量が一定となるような経路を経て延伸されており、MD倍率について式(1)で規定される上限値と、式(2)で規定される上限値を上回る値となった場合があることがわかる。
(7)評価
実施例1〜8および比較例1〜5の偏光板について、紫外可視分光光度計V−7100(日本分光(株)製)を用いて、単体透過率および偏光度を測定した。表1および表2に結果を示す。図5は、実施例1〜8および比較例1〜5の偏光板の偏光度と単体透過率をプロットしたグラフである。
Figure 0006151479
Figure 0006151479
表1、表2および図5より、実施例1〜8の偏光板は、比較例1〜5の偏光板と比較して優れた偏光性能を有することがわかる。なお、図5において、実施例1〜8の偏光板と同じ条件で延伸工程を行なった場合は、曲線B1で表わされる偏光性能を示し、比較例1〜5の偏光板と同じ条件で延伸工程を行なった場合は、曲線B2で表わされる偏光性能を示すことを予想される。
本発明の製造方法により作製される偏光性積層フィルムは、液晶表示装置をはじめとする各種表示装置に有効に適用することができる偏光板の作製に用いることができる。
1 積層フィルム、2 原反ロール、3 偏光性積層フィルム、4 基材フィルム、10 延伸装置、11 クリップ、12 無端チェーン、13 原動スプロケット、14 従動スプロケット、20 染色槽、111 フレーム、112 フラッパ、113 レバー。

Claims (4)

  1. 長尺状の基材フィルムと、ポリビニルアルコール系樹脂層とが積層された長尺状の積層フィルムを幅方向に延伸するとともに縦方向に収縮して延伸フィルムを得る延伸工程と、
    前記延伸フィルムの前記ポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色する染色工程と、を含む偏光性積層フィルムの製造方法であって、
    前記延伸工程において、前記ポリビニルアルコール系樹脂層の幅方向における延伸工程開始時の長さに対する延伸時の長さの倍率であるTD倍率と、縦方向における延伸工程開始時の長さに対する収縮時の長さの倍率であるMD倍率とについて、1.0<TD倍率≦3.0である第1期間では、MD倍率がMD方向に自然発生的に生ずる収縮以上に収縮するように設定し、TD倍率>3.0である第2期間では、MD倍率が下記式(2)の関係を満たすように設定し、前記延伸および前記収縮を行ない、
    前記延伸工程において、最終的なTD倍率が5.0以上でかつ最終的なMD倍率が0.5以下である、偏光性積層フィルムの製造方法。
    MD倍率≦(−0.1/3)×TD倍率+0.7 式(2)
  2. 前記延伸工程において、最終的なTD倍率が8.0以下である、請求項1に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
  3. 前記延伸工程において、最終的なMD倍率が0.2以上である、請求項1または2に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
  4. 前記延伸工程後の前記ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みが10μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
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