JP5932277B2 - 植物の鮮度保持剤および植物の鮮度保持方法 - Google Patents

植物の鮮度保持剤および植物の鮮度保持方法 Download PDF

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Description

本発明は、植物の鮮度保持剤および植物の鮮度保持方法に関する。
現在、世界各地において生鮮植物の生産が盛んとなり、大量消費地までの搬送(輸出)の際の鮮度保持方法(保存方法)の開発、改良が求められている。
従来、植物の鮮度を保持させる場合、切断部分を水中に浸す方法、糖類等の栄養源を水に添加する方法、細菌・カビの繁殖を防止する防腐剤・殺菌剤を添加して吸い上げる水の腐敗などによる劣化を防止する方法、チオ硫酸銀を水に添加してエチレンガスの発生を抑制する方法、植物ホルモン剤を水に添加する方法等、各種の方法が行なわれている(例えば、特許文献1,2参照)。上記以外にも植物を保持剤に浸漬して保持剤を吸収させることにより自然状態のまま保存しようとする手法が種々開発されている。例えば保持剤として、フィチン酸(例えば、特許文献3参照)、コウジ酸(例えば、特許文献4参照)を用いることが挙げられる。またグリセリン等の保湿剤の添加は非常に効果があるが、これらは植物が吸収するのに時間がかかるという難点がある。この現象を克服するために、加速剤としてアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の塩を併用する組成物が多く提案されている(例えば、特許文献1参照)。近年、安全・安心志向の高まりから、そのまま食しても安全であり、尚かつ鮮度保持効果を発揮する野菜、果物、花の鮮度保持剤が求められている。例えばサプリメントとして摂取されるような成分によって、野菜、果物、花の鮮度保持効果が発揮される場合、安全な鮮度保持剤としてのみならず、摂取することによる健康増進作用という付加価値も期待できる。
ヒアルロン酸は、N−アセチル−D−グルコサミンおよびD−グルクロン酸の2糖による繰り返し構造からなる直鎖の多糖であり、高保湿性、高粘弾性、高潤滑性等を示す素材である。それらの特徴を生かして、保湿剤としての化粧品への利用や、関節症治療剤や眼科手術補助剤等の医療分野への利用が広がっている。また、近年は、ヒアルロン酸の健康機能への関心の高まりから、ヒアルロン酸が配合されたサプリメントや嗜好食品(例えば飲料やハム等)が多数販売されている。さらに最近では、食品科学的機能の応用例として、ドレッシングやソースに配合して野菜や果物にかけることで、離水防止効果が働いて喫食時の食感が向上するという報告もある(例えば、特許文献5,6参照)。また、ヒアルロン酸を切り花の鮮度保持剤の支持体として利用することについても記載されている(例えば、特許文献7,8参照)。しかしながら、ヒアルロン酸を野菜、果物、花の保湿剤、すなわち鮮度保持剤として利用された例は報告されていない。
特開2009−167149号公報 特開2008−81511号公報 特開昭59−204112号公報 特開平2−42001号公報 特開2010−45978号公報 特開2010−45979号公報 特開2004−315449号公報 特開2004−315450号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、そのまま食しても安全であり、尚かつ鮮度保持効果を発揮する野菜類や花等の植物の鮮度保持剤および植物の鮮度保持方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ヒアルロン酸が植物の鮮度保持効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)ヒアルロン酸を含有する、植物の鮮度保持剤。
(2)ヒアルロン酸を含有しない植物に、上記(1)記載の植物の鮮度保持剤を接触させることを特徴とする、植物の鮮度保持方法。
(3)上記(2)記載の植物の鮮度保持方法によって得られるヒアルロン酸含有植物。
に関する。
本発明によれば、ヒアルロン酸を含有する植物の鮮度保持剤および該鮮度保持剤を用いた植物の鮮度保持方法を提供することができる。本発明によって得られる良好に鮮度が保持された植物(特に、ヒアルロン酸を含有する野菜や果物)は、直接摂取することができ、栄養・健康的な機能を高める効果も期待できる。
パセリを用いてヒアルロン酸の鮮度保持効果と濃度依存性を示した写真である。 パセリを用いてヒアルロン酸の分子量による鮮度保持効果の比較およびでんぷんとの効果の比較を示した写真である。 パセリを用いてヒアルロン酸の分子量による鮮度保持効果の比較を示した写真である。 チューリップを用いてヒアルロン酸の鮮度保持効果を示した写真である。 豆芽を用いてヒアルロン酸の鮮度保持効果を示した写真である。 空心菜の新芽を用いてヒアルロン酸の鮮度保持効果を示した写真である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、「ヒアルロン酸」とは、N−アセチル−D−グルコサミンおよびD−グルクロン酸の2糖による繰り返し構造からなる直鎖の多糖であればよく、由来は特に制限されないが、例えばストレプトコッカス・ズーエピデミカス等の乳酸菌由来や鶏冠由来等が挙げられる。その特性、分子量、分子量分布等は特に制限されないが、一態様において、ヒアルロン酸の分子量が、植物によって吸収されやすい程度にまで分解され、かつ保水効果を有する分子量であることが好ましく、例えば、平均分子量390〜1,500,000であることが望ましく、平均分子量700〜1,100,000がさらに望ましく、平均分子量1,000〜700,000が特に望ましい。平均分子量が異なる市販のヒアルロン酸を2種以上混合して用いることもできる。平均分子量は、例えばサイズ排除クロマトグラフィーと多角度光散乱検出器を組み合わせる方法(SEC/MALS,例えば「国立医薬品食品衛生研究所報告」,2003年,121巻,p.30−33)やMorgan−Elson法とCarbazol硫酸法の組み合わせ等により求めることができる(特開2009−155486号公報参照)。低分子化されたヒアルロン酸の製造方法については特に限定されないが、例えば酸分解法(特開2009−155486号公報参照)や酵素分解法(特開2009−60888号公報参照)が挙げられる。ヒアルロン酸のカウンターイオンの有無については特に限定されず、例えば遊離型、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。
本発明は、ヒアルロン酸を含有しない植物にヒアルロン酸を含有する植物の鮮度保持剤を接触させることによって行う。「ヒアルロン酸を含有する、植物の鮮度保持剤」の調製方法については特に限定されないが、例えば粉末状のヒアルロン酸を水等の溶液に添加して撹拌する方法が用いられる。このときpHをアルカリや酸で適宜調整してもよい。ヒアルロン酸の濃度については、ヒアルロン酸が溶解し、かつ鮮度保持効果が確認できるものであればいかなる濃度でもよいが、例えば0.00001%〜1%(w/v)、好ましくは0.0001%〜0.5%(w/v)、さらに好ましくは0.001%〜0.1%(w/v)で用いることができる。なお、ヒアルロン酸の濃度については、例えば競合法(固相に結合させたヒアルロン酸、検体ヒアルロン酸、およびビオチン等で標識したヒアルロン酸結合性タンパク質を競合反応させて、固相に結合させたヒアルロン酸と該標識したヒアルロン酸結合性タンパク質の複合体を形成させ、該結合体の標識物質を測定する方法、例えば、「Bioscience, Biotechnology and Biochemistry」,1999年,63巻,p.892−895参照)を利用したヒアルロン酸測定キットが販売されており、このようなキットを用いて測定することができる。またはセチルトリメチルアンモニウムブロミドを用いる濁度法(「Journal of Biological Chemistry」,(米国),1956年,220巻,p.303−306参照)やヒアルロン酸分解酵素で分解して得られるオリゴ糖をHPLCで定量する方法(「Analytical Biochemistry」,(米国),2002年,302巻,p.169−174参照)等も挙げられる。この溶液に、その他の物質が添加されてもよく、例えば、コラーゲン等のタンパク類、アルコール類、ビタミン類、塩類、有機酸類、多糖類、エキス類を1種類以上含有してもよい。
本発明において、「ヒアルロン酸を含有しない植物」は、特に限定されないが、例えば野菜、果物、花卉等が挙げられ、異なる種の植物を複数種混合して使用することもできる。野菜としては、葉、茎、実、根、花のいずれか1種類あるいは複数種類の部位が含まれていればすべて使用できる。乱切り、千切り、みじん切り等でカットされていてもよく、例えばミックスサラダ、コールスローサラダ、スティックサラダ等の形態でも使用できる。種子の状態から発芽させたり、新芽(スプラウト)の形態で使用してもよい。野菜の種類については特に限定されないが、例えば、パセリ、ほうれん草、豆(豆芽、もやし等)、空心菜、小松菜、レタス、サラダ菜、チンゲン菜、ブロッコリー、オクラ、大根(カイワレ大根等)、ニンジン、そば、キャベツ、アルファルファ、ルッコラ、クレス、マスタード(からし菜)、バジル、ミント、オレガノ、トマト、ナス、キュウリ、菜の花、春菊、みつば、ラディッシュ、ささげ菜、ひまわり、ガーデンクレス、オニオン、ガーリック、クレソン、シソ、ゴマ等が挙げられる。果物としては、収穫物そのものでよく、脱皮したものやカットしたものを使用することもできる。果物の種類については特に限定されないが、例えば、イチゴ、スイカ、メロン、ブドウ、ミカン、リンゴ、ナシ、モモ等が挙げられる。花卉としては、花もしくはつぼみのいずれかがあれば特に限定されず、茎、葉、根(球根も含む)、実のいずれか1種類あるいは複数種類の部位が含まれていてもよい。花卉の種類については特に限定されないが、例えば、チューリップ、カーネーション、バラ、菊、ガーベラ、ひまわり、リンドウ、マーガレット、ユリ等が挙げられる。
本発明において、ヒアルロン酸を含有しない植物とヒアルロン酸を含有する植物の鮮度保持剤を接触させる方法としては特に限定されないが、植物の鮮度保持剤に含まれているヒアルロン酸が植物体内に吸収される方法が好ましい。例えば、植物全体もしくは一部を植物の鮮度保持剤(ヒアルロン酸溶液)に浸漬する方法が挙げられ、さらに好ましくは切断面の一部や根から、植物の鮮度保持剤に含まれるヒアルロン酸を吸収させる方法が挙げられる。特に、根から吸収させる場合においては、土壌での栽培のみならず、例えば植物工場での水耕栽培のような形態や、スプラウトを栽培するような形態で実施して、ヒアルロン酸含有植物を収穫することもできる。
接触時間については、鮮度保持効果が確認できるものであればいかなる時間でもよいが、例えば10秒間〜3ヶ月間、好ましくは1分間〜1ヶ月間、さらに好ましくは10分間〜1週間である。なお、接触時間については、最大の鮮度保持効果だけでなく、植物中に含まれている栄養分の切断面からの溶出も考慮して決定することがさらに好ましい。この間、ヒアルロン酸を含有する植物の鮮度保持剤(ヒアルロン酸溶液)は新鮮なものに適宜交換してもよい。接触条件については、鮮度保持効果が確認できる条件であれば限定されない。例えば、温度は4〜35℃であり、鮮度保持剤のpHは2〜9である。
本発明においては、ヒアルロン酸を含有しない植物とヒアルロン酸を含有する植物の鮮度保持剤を接触させることにより、植物にヒアルロン酸が含有されたかどうかを確かめることができる。ヒアルロン酸の含有量については、サンプルの一部を採取、破砕し、前記のヒアルロン酸の測定方法で定量することができる。
本発明での鮮度保持機能の評価方法については、鮮度を判定できる方法であれば特に限定されないが、例えば数日間保存した後に、容器や平面等に置いたり、直接触ることによって、葉、茎、花のしなびた様子を観察する方法が挙げられる。もしくはサンプルの一部を採取して、水分量を測定する方法が挙げられる。保存の条件については特に限定されず、保存の温度については、例えば冷蔵庫内(2〜15℃前後)や室温(15〜35℃程度)で行うことができ、保存の期間については、例えば0.5日〜1ヶ月程度で行うことができる。
本発明で得られるヒアルロン酸含有植物は、如何なる形態で流通・保存・加工されてもよい。必要に応じて各種包装がなされていてもよく、2〜10℃程度の低温状態で流通・保存されることが好ましい。本発明で得られたヒアルロン酸含有植物は、食用としても観賞用としても用いることができるが、特に食用としての利用については、安全面や鮮度保持機能のみならず、栄養・健康的な機能の向上も期待できる。
本発明で得られるヒアルロン酸含有植物は、ヒアルロン酸の保水、保湿効果を視覚的に示すアイテムとして用いることができる。媒体については特に限定されず、写真や映像を利用することができる。このような媒体により、保水、保湿効果がわかりやすく示されたヒアルロン酸は、例えば化粧品や健康食品等に配合することができる。
以下、実施例および比較例(単に「実施例等」という場合がある)により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。
〔パセリを用いたヒアルロン酸による鮮度保持機能1〕
ヒアルロン酸(FCH−A、食品添加物グレード、平均分子量23,700、キッコーマンバイオケミファ社製)を0.1%(w/v)、0.05%(w/v)、0.01%(w/v)となるように水道水(対照品1)に溶解し、試験品1〜3を作製した。
試験品1〜3および対照品1について、市販のパセリを26℃にて30分間浸漬した後、水分を切って冷蔵庫内(4℃)に寝かせて4日間保存した。保存後のパセリをビーカーに立てかけたときの様子を図1に示す。
保存2日後に対照品1に浸漬したパセリはしなびていたが、試験品1〜3は鮮度を保持していた。保存4日後には、鮮度保持効果が濃度依存的に現れ、試験品1については若干しなび始めてきたが、試験品2、3については茎がしっかりしており、依然として鮮度を保持していた。
〔パセリを用いたヒアルロン酸による鮮度保持機能2〕
N−アセチル−D−グルコサミン(ナカライテスク社製)とグルクロン酸(Alfa Aesar社製、98%)を各0.025%(w/v)ずつとなるように水道水(対照品2)に溶解し、対照品3を作製した。
ヒアルロン酸(FCH−200、平均分子量2,000,000、キッコーマンバイオケミファ社製)を0.05%(w/v)となるように水道水(対照品2)に溶解し、対照品4を作製した。
デンプン(和光純薬工業社製、1級)を0.05%(w/v)となるように水道水(対照品2)に溶解し、対照品5を作製した。
ヒアルロン酸(FCH−A、食品添加物グレード、平均分子量23,700、キッコーマンバイオケミファ社製)を0.05%(w/v)となるように水道水(対照品2)に溶解し、試験品4を作製した。
対照品2〜5および試験品4について、市販のパセリを26℃にて30分間浸漬した後、水分を切って冷蔵庫内(4℃)に寝かせて3日間保存した。保存後のパセリをビーカーに立てかけたときの様子を図2に示す。
対照品2に浸漬したパセリは茎が細くなり、しなびて、葉が垂れて床についていた。一方で、試験品4では茎の太さや硬さがかなり保持されてしなびた具合も低減され、葉も床についていない状態が保たれており、実施例1で示されたヒアルロン酸(平均分子量23,700)の鮮度保持機能を再現していた。
一方で、ヒアルロン酸の構成である2種の単糖を混合した対照品3や、分子量200万の高分子ヒアルロン酸を添加した対照品4では、試験品4のような鮮度保持機能は確認されなかった。
さらに、多糖類の一種であるデンプンを添加した対照品5についても、試験品4のような鮮度保持機能は確認されなかった。
〔パセリを用いたヒアルロン酸による鮮度保持機能3〕
特開2009−155486号公報記載の方法にて作製した低分子化ヒアルロン酸(平均分子量2,000)、ヒアルロン酸 FCH−A(平均分子量23,700、キッコーマンバイオケミファ社製)、FCH−80(平均分子量800,000、キッコーマンバイオケミファ社製)およびFCH−120(平均分子量1,200,000、キッコーマンバイオケミファ社製)をそれぞれ0.1%(w/v)となるように水道水(対照品6)に溶解し、2N 水酸化ナトリウム溶液にてpHを7.5に調整して、試験品5〜8を作製した。
対照品6および試験品5〜8の中に、市販のパセリの茎の切り口部分を浸漬し、26℃にて2時間放置した後に、冷蔵庫内(4℃)に寝かせて2日間保存した。保存後のパセリをビーカーに立てかけたときの様子を図3に示す。
試験品5(平均分子量2,000)および試験品6(平均分子量23,700)について、高い鮮度保持機能が確認された。
対照品6および試験品5〜8を吸収させたパセリの組織中のヒアルロン酸量を以下の方法で測定した。まず茎および葉を含む組織を2gずつ採取して、乳鉢ですりつぶし、水分を回収するとともに、残渣を水2mlで洗浄して合わせて回収した。トリクロロ酢酸を10%添加、混合した後、遠心処理して上清を回収した。得られた上清の体積の2倍量のエタノールを添加、混合した後、遠心処理して上清を廃棄した。沈殿を200μlの水に溶解した後、適宜希釈してヒアルロン酸測定キット(生化学バイオビジネス社製)を用いて、ヒアルロン酸量を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005932277
パセリの茎からヒアルロン酸溶液が吸収され、組織内にヒアルロン酸が存在していることが確認された。(用いたヒアルロン酸測定キットは競合法の原理に基づいており、分子量が小さいヒアルロン酸については低値となる。)
〔チューリップを用いたヒアルロン酸による鮮度保持機能〕
ヒアルロン酸(FCH−A、食品添加物グレード、平均分子量23,700、フードケミファ社製)を0.05%(w/v)となるように水道水(対照品7)に溶解し、試験品9を作製した。
試験品9及び対照品7について、市販のチューリップの茎の切断部分を26℃にて30分間浸漬した後、冷蔵庫内(4℃)に寝かせて1日間保存した。保存後のチューリップをメスシリンダーに立てかけたときの様子を図4に示す。
保存1日後に対照品7で処理したチューリップは、葉はしなびて垂れ下がり、花びらもつやを失い、茎も柔らかくなって花の重みで著しく曲がっていた。一方で試験品9については、花の重みで茎はたわんでいたが、対照品7のように垂れて曲がっておらず、茎そのものも水分が保持されて硬さを保っていた。葉も鮮度を保って伸びており、花びらにもつやがあり、鮮度保持効果が確認された。
〔豆芽を用いたヒアルロン酸による鮮度保持機能〕
試験品9および対照品7について、市販の豆芽(とうみょう、えんどう豆由来、村上農園社製)を包装から丁寧に取り出して、根が絡まったスポンジごと、そのまま3lのポリビーカーに入れ、葉や茎の上部に触れないようにそれぞれ200mlずつ添加し、26℃にて16時間放置した。一部について、茎をカットして十分に水洗して水分をペーパータオルで除去した後、26℃にて3時間放置した。保存後の豆芽をビーカーに立てかけたときの様子を図5に示す。
対照品7を吸収させた豆芽は茎がしおれていたが、試験品9を吸収させた豆芽は鮮度を保持していた。
対照品7および試験品9を根から吸収させた豆芽の組織中のヒアルロン酸量を以下の方法で測定した。まず茎および葉を含む組織を2gずつ採取して、乳鉢ですりつぶし、水分を回収するとともに、残渣を水1mlで洗浄して合わせて回収した。トリクロロ酢酸を10%添加、混合した後、遠心処理して上清を回収した。得られた上清の体積の4倍量のエタノールを添加、混合した後、遠心処理して上清を廃棄した。沈殿を500μlの水に溶解した後、適宜希釈してヒアルロン酸測定キット(生化学バイオビジネス社製)を用いて、ヒアルロン酸量を測定した。結果、対照品7を吸収させた豆芽ではヒアルロン酸は検出限界以下であったが、試験品9を吸収させた豆芽からは0.4μg/gのヒアルロン酸を検出することができ、ヒアルロン酸が根から吸収されることを確認した。
〔空心菜の新芽を用いたヒアルロン酸による鮮度保持機能〕
試験品9および対照品7について、市販の空心菜の新芽(中津川サラダ農園社製)を包装から丁寧に取り出して、根が絡まったスポンジごと、そのまま1lのポリビーカーに入れ、葉や茎の上部に触れないようにそれぞれ150mlずつ添加し、26℃にて16時間放置した。一部について、茎をカットして十分に水洗して水分をペーパータオルで除去した後、26℃にて3時間放置した。保存後の様子を図6に示す。
対照品7を吸収させたサンプルは葉がしなびていたが、試験品9を吸収させたサンプルは鮮度を保持していた。
対照品7および試験品9を根から吸収させた空心菜の新芽の組織中のヒアルロン酸量を先の豆芽と同様の方法で測定した。結果、対照品7を吸収させた豆芽ではヒアルロン酸は検出限界以下であったが、試験品9を吸収させた豆芽からは0.02μg/gのヒアルロン酸を検出することができ、ヒアルロン酸が根から吸収されることを確認した。
本発明の植物の鮮度保持剤を用いると、野菜、果物、花などの植物の鮮度を良好に保持することができる。特に、ヒアルロン酸を含有する野菜や果物は、直接摂取することができ、栄養・健康的な機能を高める効果も期待できるため、産業上極めて有用である。

Claims (3)

  1. ヒアルロン酸を含有し、かつ、2〜15℃又は室温下では溶液である、植物の鮮度保持剤であって、
    前記ヒアルロン酸は、平均分子量が390〜1,500,000であるヒアルロン酸である、前記植物の鮮度保持剤。
  2. ヒアルロン酸を含有しない植物に、含まれているヒアルロン酸が植物体内に吸収されるように請求項1記載の植物の鮮度保持剤を接触させることを特徴とする、植物の鮮度保持方法。
  3. 請求項2記載の植物の鮮度保持方法によって得られるヒアルロン酸含有植物。
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