JP4776749B2 - 植物鮮度保持剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、切り花、野菜等の植物鮮度保持剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、切り花の寿命を延ばし鮮度を維持する方法としては、新鮮な水中で水切りする方法、切り口を破砕又は焼き、水あげを良くする方法、糖類などの栄養源を水に添加する方法、細菌・カビの繁殖を防止する防腐剤・殺菌剤、植物から漏出する物質、菌の発生による代謝物等のコロイド粒子を凝集させる目的で硫酸アルミニウム等のコロイド粒子凝集沈殿剤、等の様々な手法、工夫がなされており、各種の切り花延命剤が市販されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の公知方法では十分な切り花や野菜類の鮮度保持効果が得られず、また効果を発揮する切り花・野菜の種類が限定されていたり、使用法が煩雑であったり、環境や人畜への安全性が懸念されるものであったりと種々の問題点を抱えている。
【0004】
本発明は、上記問題点を鑑み、様々な切り花・野菜類の種類にかかわらず、鮮度保持効果を発揮し、尚かつ安全性の高い、切り花及び野菜類の鮮度保持剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、1種類以上の糖類(A)、エチレン生合成阻害能及びエチレン作用抑制能の少なくとも1方を有する1種以上の老化防止剤(B)並びにコロイド粒子凝集沈殿剤(C)を含有する植物鮮度保持剤に関する。
【0006】
本発明の植物鮮度保持剤は、採取植物に好適である。採取植物として切り花、野菜類、切り葉、花木等が挙げられ、本発明の植物鮮度保持剤は切り花及び野菜類の鮮度保持に好適に用いられる。また、採取されていない、例えば根付きの植物体も本発明の植物鮮度保持剤により鮮度が保持される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される糖類(A)としては、切り花・野菜類の栄養源又はエネルギー源となる糖類であれば限定されないが、例えば、グルコース、キシロース、アラビノース、リボース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、ラムノース、イノシトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、グリセロール、エリスリトール、グルコサミン、ガラクトサミン等の単糖類;スクロース、トレハロース、トレハルロース、マルトース、セロビオース、ラクトース等の二糖類;パラチノース、ラフィノース、シクロデキストリン、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イヌロオリゴ糖、乳果オリゴ糖等のオリゴ糖類;アガロース、アミロース、グリコーゲン、セルロース、デキストリン、イヌリン、マンナン、キチン等の多糖類などが挙げられる。中でも単糖類、二糖類及びオリゴ糖類からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、更に単糖類又は二糖類、特に単糖類が好ましい。これらの糖類は、植物鮮度保持剤中に1種類以上配合されるが、2種以上配合されることが好ましい。
【0008】
また、老化防止剤(B)は、エチレンの生成又は作用を阻害する働きを持ち、植物の老化を防止する成分であり、PACME(イソプロピリジンーアミノオキシ酢酸−2−メトキシ−2−オキソエチルエステル)、STS(チオ硫酸銀又はチオスルファト銀錯塩)、AIB(アミノイソ酪酸)、DPSS(1,1−ジメチル−4−(フェニルスルホニル)セミカルバジド)、PPOH(シスプロペニルホスホン酸)、STB(四ホウ酸ナトリウム)、アロコロナミン酸、アミノトリアゾール、フェナントロリン、DACP(ジアゾシクロペンタジエン)、AITC(アリルイソチアシアネート)、NBD(2,5−ノルボルナジエン)及びMCP(1−メチルシクロプロペン)、エチオニンからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。エチレン生合成阻害能を有する好適なものとしてAIB、MCPが挙げられる。またエチレン作用抑制能を有する好適なものとしてSTSが挙げられる。これらの中でもSTS、STB、AIB、MCPが好ましく、更にSTS、STB、AIBが好ましく、特にSTSが好ましい。また、エチレン生合成阻害能を有するものとエチレン作用抑制能を有するものの併用が好ましい。
【0009】
本発明の植物鮮度保持剤では、糖類(A)と老化防止剤(B)の重量比(A)/(B)は0.01〜10000が好ましく、更に1〜10000、特に20〜5000が好ましい。
【0010】
また、コロイド粒子凝集沈殿剤(C)は、植物から漏出する物質、菌の発生による代謝物等のコロイド粒子を凝集させる目的で使用され、例えば硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、アルミン酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム、アンモニウムミョウバン、乳酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム等のアルミニウム化合物、塩化カルシウム、塩化カルシウムとリン酸の併用等が挙げられ、また高分子凝集体としては、ジメチルアミノエチルメタクリレートの中和塩、ポリアクリルアミドのマンニッヒ反応物、ポリアクリルアミドのホフマン転位反応物、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、ポリビニルアミン、キトサン等が挙げられる。本発明の植物鮮度保持剤では、糖類(A)とコロイド粒子凝集沈殿剤(C)の重量比(A)/(C)は0.01〜10000が好ましく、更に1〜1000、特に10〜500が好ましい。
【0011】
また、本発明の植物鮮度保持剤には、糖系以外の界面活性剤(D)を1種以上配合しても良い。本発明に用いられる糖系以外の界面活性剤(D)として以下のものが挙げられる。
【0012】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、樹脂酸エステル、ポリオキシアルキレン樹脂酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、シリコン系界面活性剤等が挙げられる。
【0013】
陰イオン性界面活性剤としては、カルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系及びリン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
【0014】
カルボン酸系界面活性剤としては、例えば炭素数6〜30の脂肪酸又はその塩、多価カルボン酸又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルアミドエーテルカルボン酸又はその塩、ロジン酸又はその塩、ダイマー酸又はその塩、ポリマー酸又はその塩、トール油脂肪酸又はその塩等が挙げられる。
【0015】
スルホン酸系界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、アルキルスルホン酸又はその塩、アルキルナフタレンスルホン酸又はその塩、ナフタレンスルホン酸又はその塩、ジフェニルエーテルスルホン酸又はその塩、アルキルナフタレンスルホン酸の縮合物又はその塩、ナフタレンスルホン酸の縮合物又はその塩等が挙げられる。
【0016】
硫酸エステル系界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸又はその塩、トリスチレン化フェノール硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェノール硫酸エステル又はその塩等が挙げられる。
【0017】
リン酸エステル系界面活性剤として、例えばアルキルリン酸エステル又はその塩、アルキルフェニルリン酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル又はその塩等が挙げられる。
【0018】
これらの化合物の塩として、例えば金属塩(Na,K,Ca,Mg,Zn等)、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩、脂肪族アミン塩等が挙げられる。
【0019】
両性界面活性剤としては、アミノ酸系、ベタイン系、イミダゾリン系、アミンオキサイド系が挙げられる。
【0020】
アミノ酸系としては、例えばアシルアミノ酸塩、アシルサルコシン酸塩、アシロイルメチルアミノプロピオン酸塩、アルキルアミノプロピオン酸塩、アシルアミドエチルヒドロキシエチルメチルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0021】
ベタイン系としては、アルキルジメチルベタイン、アルキルヒドロキシエチルベタイン、アシルアミドプロピルヒドロキシプロピルアンモニアスルホベタイン、アシルアミドプロピルヒドロキシプロピルアンモニアスルホベタイン、リシノレイン酸アミドプロピルジメチルカルボキシメチルアンモニアベタイン等が挙げられる。
【0022】
イミダゾリン系としては、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルエトキシカルボキシメチルイミダゾリウムベタイン等が挙げられる。
【0023】
アミンオキサイド系としては、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルジエタノールアミンオキサイド、アルキルアミドプロピルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0024】
また、本発明の植物鮮度保持剤には、殺菌剤又は防腐剤、オーキシン類、サイトカイニン類、ジベレリン類等の植物ホルモンを添加してもよい。更に植物の栄養源となりうるアミノ酸類、無機栄養分を添加しても良い。
【0025】
本発明の植物鮮度保持剤は、糖類(A)と、老化防止剤(B)と、コロイド凝集沈殿剤(C)、更に糖類以外の界面活性剤(D)等を含有する粉末製剤や、(A)成分と(B)成分と(C)成分と更に(D)成分とを高濃度に含む濃縮型水性液体製剤や、或いはそのまま用いる水性液体製剤とすることができる。
【0026】
粉末製剤や濃縮型液体製剤とする場合、これらを水と混合して使用する際、糖類(A)が0.05〜10重量%、特に0.5〜5重量%となるように、老化防止剤(B)が0.0001〜0.5重量%となるように、コロイド粒子凝集剤(C)が0.0001〜0.5重量%となるように、また糖系以外の界面活性剤(D)が0.0001〜0.5重量%となるように、各成分を単一又は複合して配合するのが好ましい。そのまま用いる水性液体製剤とする場合は、上記濃度となるように各成分を水に溶解又は分散させる。
【0027】
また、従来より使用されている市販の植物鮮度保持剤および延命剤に、本発明の植物鮮度保持剤を添加することも有効である。添加方法としては、本発明の植物鮮度保持剤を水溶液の形でも、粉末の形でも添加することが可能である。
【0028】
本発明の植物鮮度保持剤の使用方法としては、切り花や野菜の切断部(切り口部分)もしくは全体を本発明の植物鮮度保持剤水溶液に浸漬する方法、本発明の植物鮮度保持剤水溶液を切り花や野菜へ噴霧する方法、本発明の植物鮮度保持剤水溶液を不織布、繊維、紙製品、ウレタン又はフェノール樹脂等の発砲体、綿、吸水性ポリマー等の適当な吸収体へ吸収させ、切り花や野菜類を包み込む又は突き刺す方法等がある。
【0029】
本発明の植物鮮度保持剤の適応できる切り花、野菜類はその種類を問わないが、切り花であれば例えば、バラ、カーネーション、ユリ、ラン、カスミソウ、トルコキキョウ、ガーベラ、キク、ソリダスター、サクラ、モモ、マキ、アルストロメリア、アジサイ、デルフィニウム、スターチス、ストックなどが挙げられる。野菜類であれば、例えばハクサイ、キャベツ、ホウレンソウ、レタス、コマツナ、シュンギクなどの葉菜類、キュウリ、トマト、ナス、ピーマン、イチゴなどの果菜類、ダイコン、ゴボウ、ニンジンなどの根菜類等が挙げられる。
【0030】
【実施例】
<植物鮮度保持剤の調製>
表1、2に示す組成の鮮度保持剤を調製した(本発明品1〜13及び比較品1〜10)。表1、2中の残部は水道水である。
【0031】
<切り花の鮮度保持試験>
本発明品1〜13及び比較品1〜10の鮮度保持剤を用い、それぞれについて市販の切り花〔カーネーション(品種:ジュリエット)、バラ(品種バレリー)〕の鮮度保持試験を行った。切り花はできるだけ生長状態及び鮮度状態が同じものを選び、水中で茎を鋭利なハサミにより切断して使用した。生育条件は鮮度保持剤200mlに切り花を差し、気温23℃、湿度60、照度5000luxの条件下で行った。鮮度保持評価は、目視により行い、花弁の枯れ具合、ベントネックの発生、茎葉の枯れ具合等から、観賞に耐えられない程度になるまでの日数を日持ち日数とした。その結果を表1、2に示すが、比較品と比べ本発明品は全ての試験系において、花の日持ち効果が確認され、糖、老化防止剤及びコロイド粒子凝集沈殿剤の鮮度保持効果が認められた。
【0032】
【表1】
Figure 0004776749
【0033】
【表2】
Figure 0004776749
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、種々の採取植物に対して優れた鮮度保持効果を発揮し、尚かつ安全性の高い、採取植物等植物の鮮度保持剤が得られる。

Claims (2)

  1. 1種類以上の糖類(A)、エチレン生合成阻害能及びエチレン作用抑制能の少なくとも1方を有する1種以上の老化防止剤(B)、コロイド粒子凝集沈殿剤(C)、並びに糖系以外の界面活性剤(D)を含有する植物鮮度保持剤であって、
    糖類(A)が、スクロースであり、
    老化防止剤(B)が、STS(チオ硫酸銀又はチオスルファト銀錯塩)及びAIB(アミノイソ酪酸)であり、
    コロイド粒子凝集沈殿剤(C)が、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウムから選ばれる化合物であり、
    糖系以外の界面活性剤(D)が、下記(D1)からなる群から選ばれる界面活性剤である、植物鮮度保持剤。
    (D1)ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数12)モノラウレート、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数20)ラウリルエーテルから選ばれる非イオン性界面活性剤
  2. 糖類(A)を0.5〜5重量%、老化防止剤(B)を0.0001〜0.5重量%、コロイド粒子凝集剤(C)を0.0001〜0.5重量%、糖系以外の界面活性剤(D)を0.0001〜0.5重量%、及び水を含有する請求項1記載の植物鮮度保持剤。
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