JP5931727B2 - リチウム二次電池負極用黒鉛材料およびその製造方法、およびそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
特許文献2によれば、原料炭組成物を粉砕・分級した後、メカノケミカル処理を施すことにより、粒子表層の結晶構造を乱すことができると記載されている(特許文献2の段落[0024])。このような結晶構造の乱れは、最終工程となる黒鉛化後にも未組織炭素として残存するため、負極の初期充放電効率を向上させることは可能(特許文献2の段落[0024])であるが、その後の電池の信頼性まで向上させることはできないという欠点があった。
一般的に、結晶子のエッジ部には、多数のダングリングボンド、即ち価電子結合が飽和せず結合の相手無しに存在する局在電子の状態が多く存在する。充電過程での負極炭素材料の表面、即ち電解液と炭素材料が接触している界面では、リチウムが黒鉛結晶に挿入する本来の充電反応の他に、この局在電子が触媒的に作用し、電解液が還元分解されることに起因した副反応・競争反応が生じることによって、負極の充放電効率が低下すると考えられる。つまり、粒子表面に結晶化度の低い領域を導入することにより、溶媒共挿入による電解液の分解は抑制できたとしても、導入された結晶化度の低い領域における結晶子が等方的な状態であるためにエッジ部が表面に露出することにより、電解液の還元分解が増大し容量劣化が起こるという課題が残る。
本発明者らは、高度に発達した結晶構造中に結晶化度の低い領域が導入された構造を有し、且つ粒子表面に結晶子エッジの露出が少ない黒鉛材料を提供することにより、負極の充放電効率が改善され、リチウムイオン二次電池の保存特性を向上させることが可能となると考え、鋭意検討した結果、本発明に到達した。
本発明に係る第一の形態は、粉砕及び分級された原料炭組成物に、圧縮応力と剪断応力を付与した黒鉛前駆体を黒鉛化して得られ、X線広角回折法によって測定される(112)回折線の結晶子の大きさLc(112)が4nm以上であるリチウムイオン二次電池負極用の黒鉛材料であって、上記原料炭組成物が、重質油組成物をディレードコーキングプロセスによってコーキング処理されたものであり、且つ水素原子Hと炭素原子Cの比率、H/C原子比0.30〜0.50を有し、且つマイクロ強度7〜17質量%を有するリチウムイオン二次電池負極用の黒鉛材料を提供する。
本発明に係る第二の形態は、重質油組成物をディレードコーキングプロセスによってコーキング処理して得られる原料炭組成物を粉砕及び分級する工程と、上記粉砕及び分級された原料炭組成物に圧縮応力と剪断応力を付与して黒鉛前駆体を得る工程と、上記黒鉛前駆体を加熱して黒鉛化し、X線広角回折法によって測定される(112)回折線の結晶子の大きさLc(112)が4nm以上となる黒鉛材料を得る工程とを少なくとも含むリチウムイオン二次電池負極用の黒鉛材料の製造方法であって、上記粉砕及び分級される原料炭組成物が、水素原子Hと炭素原子Cの比率、H/C原子比0.30〜0.50を有し、且つマイクロ強度7〜17質量%を有するリチウムイオン二次電池負極用の黒鉛材料の製造方法を提供する。
本発明に係る第三の形態は、この製造方法によって得られた黒鉛材料を負極材料として使用したリチウムイオン二次電池を提供する。
本発明に係る第五の形態は、この製造方法によって得られた黒鉛材料を負極材料として使用したリチウムイオン二次電池を提供する。
本発明に係る第七の形態は、上記第六の形態の製造方法により製造された黒鉛材料を負極材料として含むリチウムイオン二次電池である。
本発明に係る第九の形態は、上記第八の形態の製造方法により製造された黒鉛材料を負極材料として含むリチウムイオン二次電池である。
そして、本発明の製造方法によって得られる黒鉛材料は、リチウムイオン二次電池の容量維持率の低下を抑制でき、保存特性に優れたリチウムイオン二次電池の負極材料として好適である。
本発明の黒鉛材料は、X線広角回折法によって測定される(112)回折線の結晶子の大きさLc(112)を4nm以上とする。4nm以上とする理由は、このように高度に結晶が発達した黒鉛材料は、可逆容量として340mAh/g以上の確保が可能だからであるが、この理由は、この種の電池に使用される負極材料として、高度に結晶が発達した材料が好ましく用いられている理由と全く同じである。結晶が高度に発達するほど高容量が得られる点は公知の事実で、例えば前述の特許文献1の段落[0005]にも記載されている事項である。X線広角回折法によって測定される(112)回折線の結晶子の大きさLc(112)が4nm未満の場合は、結晶発達が不十分で小さな可逆容量しか得られないため好ましくない。
全水素の測定は、試料を酸素気流中750℃で完全燃焼させ、燃焼ガスより生成した水分量を電量滴定法(カール・フィッシャー法)で求められる。電量滴定式のカール・フィッシャー法では、予め滴定セルにヨウ化物イオン、二酸化硫黄、塩基(RN)及びアルコールを主成分とする電解液を入れておき、滴定セルに試料を入れることで試料中の水分は、下式(4)の通り反応する。なお、試料は、例えばコーキング処理後、乾燥雰囲気下で冷却した後に測定される。
ヨウ素の発生に要した電気量を測定することで、水分量が求められる。さらに得られた水分量から、水素量に換算し、これを測定に供した試料質量で除することにより、全水素分(TH(質量%))が算出される。
全炭素の測定は、試料を1150℃の酸素気流中で燃焼させ、二酸化炭素(一部一酸化炭素)に変換され過剰の酸素気流に搬送されてCO2+CO赤外線検出器により、全炭素分(TC(質量%))が算出される。
なお、従来、リチウムイオン電池の負極材料として、脱硫脱瀝油を原料として製造された黒鉛材料を使用した例は無い。本発明は、原料油組成の好ましい態様として脱硫脱瀝油を混合し、所定のH/C原子比及びマイクロ強度を有する原料炭組成物を得た後、所望の黒鉛材料を提供できる。
重質油組成物の成分としては、流動接触分解装置のボトム油(流動接触分解残油、FCC DO)、流動接触分解残油から抽出した芳香族分、重質油に高度な水添脱硫処理を施した水素化脱硫油、減圧残油(VR)、脱硫脱瀝油、石炭液化油、石炭の溶剤抽出油、常圧残浚油、シェルオイル、タールサンドビチューメン、ナフサタールピッチ、エチレンボトム油、コールタールピッチ及びこれらを水素化精製した重質油等が挙げられる。これらの重質油を二種類以上ブレンドして重質油組成物を調製する場合、ディレードコーキングプロセスによってコーキング処理した後に得られる原料炭組成物の物性として、H/C原子比が0.30〜0.50、且つマイクロ強度が7〜17質量%となるように、使用する原料油の性状に応じて配合比率を適宜調整すればよい。なお、原料油の性状は、原油の種類、原油から原料油が得られるまでの処理条件等によって変化する。
流動接触分解残油から抽出した芳香族分は、ジメチルホルムアミド等を用いて選択抽出し、芳香族分と飽和分に分離させたときの芳香族分である。
重質油に高度な水添脱硫処理を施した水素化脱硫油は、例えば、硫黄分1質量%以上の重質油を水素分圧10MPa以上で水素化脱硫処理して得られる硫黄分1.0質量%以下、窒素分0.5質量%以下、芳香族炭素分率(fa)0.1以上の重質油である。水素化脱硫油は、好ましくは、常圧蒸留残油を触媒存在下、水素化分解率が25%以下となるように水素化脱硫して得られる水素化脱硫油である。
減圧残油(VR)は、原油を常圧蒸留装置にかけて、ガス・軽質油・常圧残油を得た後、この常圧残浚油を、例えば、10〜30Torrの減圧下、加熱炉出口温度320〜360℃の範囲で変化させて得られる減圧蒸留装置のボトム油である。
脱硫脱瀝油は、例えば、減圧蒸留残渣油等の油を、プロパン、ブタン、ペンタン、又はこれらの混合物等を溶剤として使用する溶剤脱瀝装置で処理し、そのアスファルテン分を除去し、得られた脱瀝油(DAO)を、間接脱硫装置(Isomax)等を用いて、好ましくは硫黄分0.05〜0.40質量%の範囲までに脱硫したものである。
常圧残浚油は、原油を常圧蒸留装置にかけて、例えば、常圧下、加熱して、含まれる留分の沸点により、ガス・LPGやガソリン留分、灯油留分、軽質油留分、常圧残浚油に分けられる際に得られる留分の一つで、最も沸点高い留分である。加熱温度は、原油の産地等により変動し、これらの留分に分留できるものであれば限定されないが、例えば原油を320℃に加熱する。
重質油は高温処理されることによって、熱分解及び重縮合反応が起こり、メソフェーズと呼ばれる大きな液晶が中間生成物として生成する過程を経て生コークスが製造される。
このとき、(1)良好なバルクメソフェーズを生成する重質油成分と、(2)このバルクメソフェーズが重縮合して炭化及び固化する際に、メソフェーズを構成する六角網平面積層体の大きさを小さく制限する機能を有したガスを生じ得る重質油成分と、更に(3)その切断された六角網平面積層体どうしを結合させる成分が全て含有された原料油組成物を用いることが特に好ましい。(1)良好なバルクメソフェーズを生成する重質油成分が、芳香族指数faとして0.3〜0.65を与える成分であり、(2)ガスを生じ得る重質油成分が、ノルマルパラフィン含有率の5〜20質量%に相当する成分であり、(3)六角網平面積層体どうしを結合させる成分が7〜15質量%の範囲で含有された脱硫脱瀝油である。
このような重質油組成物が本発明の原料炭組成物の原料として好ましく使用される理由は、良好なバルクメソフェーズを生成する重質油成分により形成された六角網平面が、相対的に小さなサイズに制限されることで、コーキング後に形成される六角網平面積層体の隣接網面間の並行度を高く維持できることに加え、脱硫脱瀝油が、隣接する六角網平面積層体を適度に結合させるからである。
また原料油組成物のノルマルパラフィンの含有率は、キャピラリーカラムが装着されたガスクロマトグラフによって測定した値を意味する。具体的には、ノルマルパラフィンの標準物質によって検定した後、上記溶出クロマトグラフィー法によって分離された非芳香族成分の試料をキャピラリーカラムに通して測定する。この測定値から原料油組成物の全質量を基準とした含有率が算出可能である。
このように重質油組成物の芳香族指数faは0.3〜0.65の範囲が特に好ましい。faは重質油組成物の密度Dと粘度Vから算出可能であるが、密度Dは0.91〜1.02g/cm3、粘度Vは10〜220mm2/sec.の範囲の重質油組成物で、faが0.3〜0.65となるようなものが特に好ましい。
なお、生コークスの製造に際して、脱硫脱瀝油を添加した例はなく、脱硫脱瀝油の含有が有効であることは驚きである。
コーカーの運転圧力に好ましい範囲が設定されている理由は、ノルマルパラフィン含有成分より発生するガスの系外への放出速度を、圧力で制限することができるからである。前述の通り、メソフェーズを構成する炭素六角網平面のサイズは、発生するガスで制御するため、発生ガスの系内への滞留時間は、前記六角網平面の大きさを決定するための重要な制御パラメータとなる。また、コーカーの運転温度に好ましい範囲が設定されている理由は、本発明の効果を得るために調整された重質油から、メソフェーズを成長させるために必要な温度だからである。
黒鉛化処理の方法は、特に限定されないが、通常は、窒素、アルゴン又はヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で最高到達温度900〜1500℃、最高到達温度の保持時間0〜10時間で炭化(予備焼成)され、次いで同様な不活性ガス雰囲気下、最高到達温度2500〜3200℃、最高到達温度保持時間0〜100時間の加熱処理する方法を挙げることができる。黒鉛化後はリチウムイオン二次電池の負極として利用することができる。
導電助剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、又は導電性を示すインジウム−錫酸化物、又は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン等の導電性高分子を挙げることができる。導電助剤の使用量は、炭素材料100質量部に対して1〜15質量部が好ましい。
有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、イソプロパノール、トルエン等を挙げることができる。
また、シート状、ペレット状等の形状に成形された負極材スラリーと集電体との一体化は、例えば、ロール、プレス、もしくはこれらの組み合わせ等、公知の方法により行うことができる。
正極に用いる活物質としては、特に制限はなく、例えば、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、又は導電性高分子材料を用いればよく、例示するのであれば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、及び複酸化物(LiCoXNiYMnZO2、X+Y+Z=1)、リチウムバナジウム化合物、V2O5、V6O13、VO2、MnO2、TiO2、MoV2O8、TiS2、V2S5、VS2、MoS2、MoS3、Cr3O8、Cr2O5、オリビン型LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Fe)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン等の導電性ポリマー、多孔質炭素等及びこれらの混合物を挙げることができる。
有機電解液としては、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル等のエーテル、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄化合物、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のジアルキルケトン、テトラヒドロフラン、2−メトキシテトラヒドロフラン等の環状エーテル、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状炭酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の鎖状炭酸エステル、N−メチル2−ピロリジノン、アセトニトリル、ニトロメタン等の有機溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの溶媒の溶質としては、各種リチウム塩を使用することができる。一般的に知られているリチウム塩にはLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等がある。
なお、上記以外の電池構成上必要な部材の選択についてはなんら制約を受けるものではない。
本発明の黒鉛材料を形成するために用いる原料炭組成物は、水素原子Hと炭素原子Cの比率、H/C原子比が0.30〜0.50であり、且つマイクロ強度が7〜17質量%である。このような物性を有した原料炭組成物を粉砕・分級して得られた原料炭組成物の粉末を、炭化・黒鉛化して得られた黒鉛粒子は、内部に適度なボイド体積を有し、適度な結晶子間結合強さを有するものを得ることができる。ここでいうボイドとは、黒鉛粒子中において、隣接する結晶子間に形成される隙間のことであり、これらの隙間は粒子内部に均一に分散されている。このような黒鉛粒子に圧縮剪断応力を付与した場合、粒子表面近傍に存在するボイドにより圧縮剪断応力による力学的エネルギーが吸収され、ボイドを介して結晶子にエネルギーが伝播することにより、隣接する結晶子間の相対的位置が変化し、黒鉛粒子表面の結晶組織に乱れが導入される。
ボイド中には、六角網平面の構成単位となるベンゼン環以外の構造を有した未組織炭素が存在する。ボイドにより吸収された力学的エネルギーは、ボイド中に存在する未組織炭素の炭素-炭素結合を切断することなく、結晶子に伝播される。ボイドが吸収し得る最大のエネルギーよりも大きな圧縮剪断応力が付与された場合には、ボイド中の炭素-炭素結合が切断され、その切断面にダングリングボンドを有したエッジ面が露出するため、好ましくない。即ち、ボイドが吸収し得る範囲の大きさの力学的エネルギーが付与された場合、ボイド中の炭素-炭素結合が切断されることなく、隣接する結晶子間の相対位置の変化を誘発することができる。結果として、粒子表面に結晶組織の乱れが導入され、且つ粒子表面に露出する結晶子エッジが極めて少ない黒鉛材料を得ることができる。
全水素の測定は、試料を酸素気流中750℃で完全燃焼させ、燃焼ガスより生成した水分量を電量滴定法(カール・フィッシャー法)で求められる。電量滴定式のカール・フィッシャー法では、予め滴定セルにヨウ化物イオン、二酸化硫黄、塩基(RN)及びアルコールを主成分とする電解液を入れておき、滴定セルに試料を入れることで試料中の水分は、下式(4)の通り反応する。なお、試料は、例えばコーキング処理後、乾燥雰囲気下で冷却した後に測定される。
ヨウ素の発生に要した電気量を測定することで、水分量が求められる。さらに得られた水分量から、水素量に換算し、これを測定に供した試料質量で除することにより、全水素分(TH(質量%))が算出される。
全炭素の測定は、試料を1150℃の酸素気流中で燃焼させ、二酸化炭素(一部一酸化炭素)に変換され過剰の酸素気流に搬送されてCO2+CO赤外線検出器により、全炭素分(TC(質量%))が算出される。
重質油組成物の成分としては、流動接触分解装置のボトム油(流動接触分解残油、FCC DO)、流動接触分解残油から抽出した芳香族分、重質油に高度な水添脱硫処理を施した水素化脱硫油、減圧残油(VR)、脱硫脱瀝油、石炭液化油、石炭の溶剤抽出油、常圧残浚油、シェルオイル、タールサンドビチューメン、ナフサタールピッチ、エチレンボトム油、コールタールピッチ及びこれらを水素化精製した重質油等が挙げられる。これらの重質油を二種類以上ブレンドして重質油組成物を調製する場合、ディレードコーキングプロセスによってコーキング処理した後に得られる原料炭組成物の物性として、H/C原子比が0.30〜0.50、且つマイクロ強度が7〜17質量%となるように、使用する原料油の性状に応じて配合比率を適宜調整すればよい。なお、原料油の性状は、原油の種類、原油から原料油が得られるまでの処理条件等によって変化する。
流動接触分解残油から抽出した芳香族分は、ジメチルホルムアミド等を用いて選択抽出し、芳香族分と飽和分に分離させたときの芳香族分である。
重質油に高度な水添脱硫処理を施した水素化脱硫油は、例えば、硫黄分1質量%以上の重質油を水素分圧10MPa以上で水素化脱硫処理して得られる硫黄分1.0質量%以下、窒素分0.5質量%以下、芳香族炭素分率(fa)0.1以上の重質油である。水素化脱硫油は、好ましくは、常圧蒸留残油を触媒存在下、水素化分解率が25%以下となるように水素化脱硫して得られる水素化脱硫油である。
減圧残油(VR)は、原油を常圧蒸留装置にかけて、ガス・軽質油・常圧残油を得た後、この常圧残浚油を、例えば、10〜30Torrの減圧下、加熱炉出口温度320〜360℃の範囲で変化させて得られる減圧蒸留装置のボトム油である。
脱硫脱瀝油は、例えば、減圧蒸留残渣油等の油を、プロパン、ブタン、ペンタン、又はこれらの混合物等を溶剤として使用する溶剤脱瀝装置で処理し、そのアスファルテン分を除去し、得られた脱瀝油(DAO)を、間接脱硫装置(Isomax)等を用いて、好ましくは硫黄分0.05〜0.40質量%の範囲までに脱硫したものである。
常圧残浚油は、原油を常圧蒸留装置にかけて、例えば、常圧下、加熱して、含まれる留分の沸点により、ガス・LPGやガソリン留分、灯油留分、軽質油留分、常圧残浚油に分けられる際に得られる留分の一つで、最も沸点高い留分である。加熱温度は、原油の産地等により変動し、これらの留分に分留できるものであれば限定されないが、例えば原油を320℃に加熱する。
重質油は高温処理されることによって、熱分解及び重縮合反応が起こり、メソフェーズと呼ばれる大きな液晶が中間生成物として生成する過程を経て生コークスが製造される。
このとき、(1)良好なバルクメソフェーズを生成する重質油成分と、(2)このバルクメソフェーズが重縮合して炭化及び固化する際に、メソフェーズを構成する六角網平面積層体の大きさを小さく制限する機能を有したガスを生じ得る重質油成分と、更に(3)その切断された六角網平面積層体どうしを結合させる成分が全て含有された重質油組成物を用いることが特に好ましい。(1)良好なバルクメソフェーズを生成する重質油成分が、芳香族指数faとして0.3〜0.65を与える成分であり、(2)ガスを生じ得る重質油成分が、ノルマルパラフィン含有率の5〜20質量%に相当する成分であり、(3)六角網平面積層体どうしを結合させる成分が7〜15質量%の範囲で含有された脱硫脱瀝油である。
なお、生コークスの製造に際して、脱硫脱瀝油を添加した例はなく、脱硫脱瀝油の含有が有効であることは驚きである。
コーカーの運転圧力に好ましい範囲が設定されている理由は、ノルマルパラフィン含有成分より発生するガスの系外への放出速度を、圧力で制限することができるからである。前述の通り、メソフェーズを構成する炭素六角網平面のサイズは、発生するガスで制御するため、発生ガスの系内への滞留時間は、前記六角網平面の大きさを決定するための重要な制御パラメータとなる。また、コーカーの運転温度に好ましい範囲が設定されている理由は、本発明の効果を得るために調整された重質油から、メソフェーズを成長させるために必要な温度だからである。
炭化および黒鉛化処理の方法は、特に限定されないが、通常は、窒素、アルゴン又はヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で最高到達温度900〜1500℃、最高到達温度の保持時間0〜10時間で炭化(予備焼成)され、次いで同様な不活性ガス雰囲気下、最高到達温度2500〜3200℃、最高到達温度保持時間0〜100時間の加熱処理する方法を挙げることができる。
炭化の後、一旦冷却して再度黒鉛化のために上記熱処理を施してもよい。
導電助剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、又は導電性を示すインジウム−錫酸化物、又は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン等の導電性高分子を挙げることができる。導電助剤の使用量は、黒鉛材料100質量部に対して1〜15質量部が好ましい。
有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ピロリドン、N−メチルチオピロリドン、ヘキサメチルホスホアミド、ジメチルアセトアミド、イソプロパノール、トルエン等を挙げることができる。
また、シート状、ペレット状等の形状に成形された負極材スラリーと集電体との一体化は、例えば、ロール、プレス、もしくはこれらの組み合わせ等、公知の方法により行うことができる。
正極に用いる活物質としては、特に制限はなく、例えば、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、又は導電性高分子材料を用いればよく、例示するのであれば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リチウム複合複酸化物(LiCoXNiYMZO2、X+Y+Z=1、MはMn、Al等を示す)、及びこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの、リチウムバナジウム化合物、V2O5、V6O13、VO2、MnO2、TiO2、MoV2O8、TiS2、V2S5、VS2、MoS2、MoS3、Cr3O8、Cr2O5、オリビン型LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Fe)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン等の導電性ポリマー、多孔質炭素等及びこれらの混合物を挙げることができる。
有機電解液としては、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル等のエーテル、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄化合物、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のジアルキルケトン、テトラヒドロフラン、2−メトキシテトラヒドロフラン等の環状エーテル、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状炭酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の鎖状炭酸エステル、N−メチル2−ピロリジノン、アセトニトリル、ニトロメタン等の有機溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの溶媒の溶質としては、各種リチウム塩を使用することができる。一般的に知られているリチウム塩にはLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等がある。
なお、上記以外の電池構成上必要な部材の選択についてはなんら制約を受けるものではない。
本発明者らは、水素原子Hと炭素原子Cとの原子比であるH/Cが0.30〜0.50であり、且つマイクロ強度が7質量%〜17質量%である原料炭組成物の粒子表面にカルサインコークスが埋め込まれた複合粉体を炭化及び黒鉛化する工程と、高度に発達した結晶構造に結晶化度の低い領域が部分的に導入された構造を有し、且つ粒子表面に露出するエッジ部が少ない黒鉛材料が得られることの関係を、次のように考えている。
たとえば、重質油組成物の成分として、流動接触分解装置のボトム油(流動接触分解残油、FCC DO)、流動接触分解残油から抽出した芳香族分、重質油に高度な水添脱硫処理を施した水素化脱硫油、減圧残油(VR)、脱硫脱瀝油、石炭液化油、石炭の溶剤抽出油、常圧残浚油、シェルオイル、タールサンドビチューメン、ナフサタールピッチ、エチレンボトム油、コールタールピッチ及びこれらを水素化精製した重質油等を、単独もしくは二種類以上をブレンドして得られた重質油組成物を熱処理した後、ハンマーミルなどで粗粉砕し、その後、1300℃〜1400℃で炭化することによりカルサインコークスを得ることができる。得られたカルサインコークスを機械式粉砕機(例えば、スーパーローターミル/日清エンジニアリング製)等で粉砕し、精密空気分級機(例えば、ターボクラシファイヤー/日清エンジニアリング製)等で分級することにより、カルサインコークスが得られる。
カルサインコークスを粉砕及び分級する際には、カルサインコークスの粒子表面には強い力学的エネルギーが付与される。そのため、粒子表面に存在する六角網平面中の炭素−炭素結合が切断され、表面には六角網平面に属さない未組織炭素が多数露出した状態となる。ここで言う未組織炭素とは、六角網平面積層体と化学的に連結した、主に六角網平面の構成単位となるベンゼン環以外の構造を有したものであり、隣接する他の未組織炭素と炭素−炭素結合を形成することができるという特徴を有する。
炭素−炭素結合によりカルサインコークスと原料炭組成物が化学的に連結される場合、カルサインコークス中の六角網平面と原料炭組成物中の六角網平面とは、完全に同一平面上で連結されるわけではない。その理由は、カルサインコークスが原料炭組成物の粉体に埋め込まれた複合粉体において、カルサインコークス中の六角網平面と原料炭組成物中の六角網平面が非平行な状態で複合化されているためである。このような複合粉体を炭化及び黒鉛化した場合、両者の六角網平面の非平行な状態が維持されながら、両者の界面に炭素−炭素結合が形成される。従って、黒鉛化後の黒鉛材料においても、隣接する六角網平面が非平行な状態で連結された結晶構造が残存すると言える。
非平行な関係にある2つの六角網平面が連結された場合、これらは必然的に六角網平面の平行度が低い、すなわち結晶化度の低い領域を介して連結される。これら非平行な関係にある2つの六角網平面の界面領域は、他の結晶構造が高度に発達した領域に比べて、結晶化度の低い領域であると言える。つまり、カルサインコークスが原料炭組成物の粒子表面に埋め込まれた複合粉体を炭化及び黒鉛化することにより得られた黒鉛材料は、結晶構造が高度に発達した黒鉛材料中に、結晶化度の低い領域が導入された結晶構造を有する。導入された結晶化度の低い領域は、黒鉛層間への電解液の共挿入を立体的に阻害する効果を有する。
一つ目の理由は、原料炭組成物の粒子表面にカルサインコークスが埋め込まれた複合粉体を炭化及び黒鉛化することにより、黒鉛化後の粒子の比表面積増大を抑制するためである。
原料炭組成物の粒子表面にカルサインコークスが埋め込まれた複合粉体の場合、原料炭組成物の粒子表面から突出しているカルサインコークスが少ないため、このような複合粉体を炭化及び黒鉛化して得られた黒鉛材料の表面の凹凸は極めて小さく、比表面積の小さい状態となる。このようにして得られた黒鉛材料を負極として用いたリチウムイオン二次電池では、電解液と黒鉛材料の粒子表面との接触面積が小さいために、負極における電解液の分解が起こりにくい。この場合、正・負極の容量の作動領域が変化しにくいため、寿命特性に優れる。
一方、カルサインコークスが原料炭組成物の粒子表面に埋め込まれておらず表面に付着しただけの複合粉体を炭化及び黒鉛化した場合、黒鉛材料の粒子表面にカルサインコークスが突出しているため、表面に凹凸を有する比表面積の大きな黒鉛材料が得られる。これらの黒鉛材料を負極として用いたリチウムイオン二次電池では、電解液と黒鉛材料の粒子表面との接触面積が大きいために、負極における電解液の分解が起こりやすくなる。この場合、負極の漏れ電流と正極の漏れ電流との差が増大するため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下するため好ましくない。
本発明において、複合粉体を原料炭組成物の粒子表面にカルサインコークスが埋め込まれている状態とする二つ目の理由は、高度に発達した結晶構造と結晶化度の低い領域との界面で化学結合が形成されることにより、両者の界面に亀裂が生じるのを防ぐためである。
圧縮剪断応力により、カルサインコークスが原料炭組成物の粒子表面に埋め込まれる過程において、カルサインコークスは、原料炭組成物を構成する六角網平面積層体と隣接する六角網平面積層体との隙間(ボイド領域)に埋め込まれやすい。これは、カルサインコークスが原料炭組成物中の六角網平面積層体を破壊して、粒子内部に埋め込まれるのに必要なエネルギーよりも、隣接する六角網平面積層体間のボイド領域に埋め込まれるのに必要なエネルギーの方が小さいからである。このボイド領域には、主に六角網平面の構成単位となるベンゼン環以外の構造を有した未組織炭素が存在する。これらの未組織炭素は、原料炭組成物の粉体中の六角網平面積層体と化学的に連結しており、隣接する他の未組織炭素と炭素−炭素結合を形成することができる。
このようなボイド領域にカルサインコークスが埋め込まれた場合、カルサインコークスの粒子表面に存在する未組織炭素が、原料炭組成物中の未組織炭素と十分に接触することができるため、その後の炭化及び黒鉛化の過程において、接触する未組織炭素間に強固な炭素−炭素結合が形成される。そのため、黒鉛化後に得られる黒鉛材料においても、カルサインコークス中の六角網平面積層体と黒鉛中の六角網平面積層体の界面には亀裂が生じることなく、両者は化学的に連結される。このようにして、高度に発達した結晶構造に、結晶化度の低い領域が導入された構造を有する黒鉛材料を得ることができる。
一方、カルサインコークスが原料炭組成物の粒子表面に埋め込まれておらず、表面に付着しただけの複合粉体を炭化及び黒鉛化した場合、カルサインコークスの粒子表面に存在する未組織炭素と原料炭組成物中の未組織炭素の接触面積が極めて小さいために、カルサインコークスと原料炭組成物中の未組織炭素間に強固な炭素−炭素結合を形成することは不可能である。このような場合、得られた黒鉛材料においては、カルサインコークス中の六角網平面積層体と黒鉛中の六角網平面積層体との界面に亀裂が生じやすく、その亀裂部には結晶子のエッジ部が露出する。このような黒鉛材料を負極として用いたリチウムイオン二次電池では、黒鉛材料中の亀裂部に露出した結晶子のエッジ部において、電解液が分解されやすくなる。この場合、負極の漏れ電流と正極の漏れ電流との差が増大するため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下するため好ましくない。
まず、0.1μmを下限としたのは、平均粒径0.1μm未満のカルサインコークスを得ることが非常に困難であり、実状に即さないからである。また、原料炭組成物の粉体と、平均粒径3.0μmより大きなカルサインコークスとを混合した場合、原料炭組成物の六角網平面積層体間のボイド領域に対して、混合したカルサインコークスの大きさが極端に大きくなるため、混合したカルサインコークスが原料炭組成物に埋め込まれず、原料炭組成物の粒子表面に付着するに留まり、粒子表面の凹凸の大きな複合粉体が得られる。この複合粉体を炭化及び黒鉛化して得られた黒鉛材料の比表面積は極端に大きくなり、この黒鉛材料を負極として使用したリチウムイオン二次電池では、電解液と負極の黒鉛材料との接触面積が増大し電解液が分解されやすくなるため、負極の漏れ電流が増大し、正極との漏れ電流との差が大きくなるため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下するため好ましくない。より好ましい平均粒径は、0.5μm〜2μmである。
原料炭組成物の粉体と、原料炭組成物に対して0.5質量%未満のカルサインコークスとを混合し、圧縮剪断応力を付与して得られる複合粉体を炭化及び黒鉛化して得られた黒鉛材料の場合、複合粉体に含まれるカルサインコークスの含有量が極端に小さいために、カルサインコークスと原料炭組成物との接触面積を十分に確保することができず、両者の界面領域は極端に小さくなる。この場合、黒鉛材料に導入される結晶化度の低い領域が極端に小さくなる。そのため、溶媒共挿入による電解液の分解を抑制することができない。このような黒鉛材料を負極として用いたリチウムイオン二次電池では、負極における電解液の分解が生じ易いため、負極の漏れ電流が増大し、正極との漏れ電流との差が増大するため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下するため好ましくない。
一方、原料炭組成物の粉体と、原料炭組成物に対して10質量%を超えるカルサインコークスとを混合した場合、原料炭組成物の六角網平面積層体間のボイド領域に対して、混合したカルサインコークスの量が極端に多い状態となる。このとき、混合した全てのカルサインコークスが原料炭組成物の粉体に埋め込まれるために必要なボイド領域が極端に不足しているため、多くのカルサインコークスが原料炭組成物に埋め込まれず、原料炭組成物の粒子表面に付着するに留まり、粒子表面の凹凸の大きな複合粉体が得られる。この複合粉体を炭化及び黒鉛化して得られた黒鉛材料の比表面積は極端に大きくなり、この黒鉛材料を負極として使用したリチウムイオン二次電池では、電解液と負極の黒鉛材料との接触面積が増大し電解液が分解されやすくなるため、負極の漏れ電流が増大し、正極との漏れ電流との差が大きくなるため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下する。より好ましいカルサインコークスの量は、1質量%〜5質量%である。
このようなパラメータを有した原料炭組成物は、適度な六角網平面積層体間のボイド領域を有するため、カルサインコークスが原料炭組成物の粒子表面に埋め込まれた複合粉体を得ることが可能である。また、当該原料炭組成物は、適度な六角網平面積層体間の結合力を有するため、複合粉体を黒鉛化した後に得られる黒鉛材料において、カルサインコークスと黒鉛中の六角網平面積層体間に強固な炭素−炭素結合を形成することが可能となる。
全水素の測定は、試料を酸素気流中750℃で完全燃焼させ、燃焼ガスより生成した水分量を電量滴定法(カール・フィッシャー法)で求められる。電量滴定式のカール・フィッシャー法では、予め滴定セルにヨウ化物イオン、二酸化硫黄、塩基(RN)及びアルコールを主成分とする電解液を入れておき、滴定セルに試料を入れることで試料中の水分は、下式(4)の通り反応する。なお、試料は、例えばコーキング処理後、乾燥雰囲気下で冷却した後に測定される。
ヨウ素の発生に要した電気量を測定することで、水分量が求められる。さらに得られた水分量から、水素量に換算し、これを測定に供した試料質量で除することにより、全水素分(TH(質量%))が算出される。
このような場合、得られた黒鉛材料においては、カルサインコークスと黒鉛中の六角網平面積層体との界面に亀裂が生じ、その亀裂部には結晶子のエッジ部が露出する。このような黒鉛材料を負極として用いたリチウムイオン二次電池では、黒鉛材料の亀裂部に露出した結晶子のエッジ部において、電解液が分解されやすくなる。この場合、負極の漏れ電流と正極の漏れ電流との差が増大するため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下する。
重質油組成物の成分としては、流動接触分解装置のボトム油(流動接触分解残油、FCC DO)、流動接触分解残油から抽出した芳香族分、重質油に高度な水添脱硫処理を施した水素化脱硫油、減圧残油(VR)、脱硫脱瀝油、石炭液化油、石炭の溶剤抽出油、常圧残浚油、シェルオイル、タールサンドビチューメン、ナフサタールピッチ、エチレンボトム油、コールタールピッチ及びこれらを水素化精製した重質油等が挙げられる。これらの重質油は単独で用いても良く、二種類以上をブレンドして用いても良い。
ディレードコーキングプロセスによってコーキング処理した後に得られる原料炭組成物の物性として、H/C原子比が0.30〜0.50であり、且つマイクロ強度が7質量%〜17質量%のものを得る場合には、使用する重質油の性状に応じて二種類以上の重質油の配合比率を適宜調整すればよい。なお、重質油の性状は、原油の種類、原油から重質油が得られるまでの処理条件等によって変化する。
流動接触分解残油から抽出した芳香族分は、ジメチルホルムアミド等を用いて選択抽出し、芳香族分と飽和分に分離させたときの芳香族分である。
重質油に高度な水添脱硫処理を施した水素化脱硫油は、例えば、硫黄分1質量%以上の重質油を水素分圧10MPa以上で水素化脱硫処理して得られる硫黄分1.0質量%以下、窒素分0.5質量%以下、芳香族炭素分率(fa)0.1以上の重質油である。水素化脱硫油は、好ましくは、常圧蒸留残油を触媒存在下、水素化分解率が25%以下となるように水素化脱硫して得られる水素化脱硫油である。
減圧残油(VR)は、原油を常圧蒸留装置にかけて、ガス・軽質油・常圧残油を得た後、この常圧残油を、例えば、10Torr〜30Torrの減圧下、加熱炉出口温度320℃〜360℃の範囲で変化させて得られる減圧蒸留装置のボトム油である。
脱硫脱瀝油は、例えば、減圧蒸留残渣油等の油を、プロパン、ブタン、ペンタン、又はこれらの混合物等を溶剤として使用する溶剤脱瀝装置で処理し、そのアスファルテン分を除去し、得られた脱瀝油(DAO)を、間接脱硫装置(Isomax)等を用いて、好ましくは硫黄分0.05質量%〜0.40質量%の範囲までに脱硫したものである。
常圧残浚油は、原油を常圧蒸留装置にかけて、例えば、常圧下、加熱して、含まれる留分の沸点により、ガス・LPGやガソリン留分、灯油留分、軽質油留分、常圧残浚油に分けられる際に得られる留分の一つで、最も沸点の高い留分である。加熱温度は、原油の産地等により変動し、これらの留分に分留できるものであれば限定されないが、例えば原油を320℃に加熱する。
重質油は高温処理されることによって、熱分解及び重縮合反応が起こり、メソフェーズと呼ばれる大きな液晶が中間生成物として生成する過程を経て生コークスが製造される。
このとき、(1)良好なバルクメソフェーズを生成する重質油成分と、(2)このバルクメソフェーズが重縮合して炭化及び固化する際に、メソフェーズを構成する六角網平面積層体の大きさを小さく制限する機能を有したガスを生じ得る重質油成分と、更に(3)その切断された六角網平面積層体どうしを結合させる成分が全て含有された原料油組成物を用いることが特に好ましい。(1)良好なバルクメソフェーズを生成する重質油成分が、芳香族指数faとして0.3〜0.65を与える成分であり、(2)ガスを生じ得る重質油成分が、ノルマルパラフィン含有率の5質量%〜20質量%に相当する成分であり、(3)六角網平面積層体どうしを結合させる成分が7質量%〜15質量%の範囲で含有された脱硫脱瀝油である。
なお、原料炭組成物の製造に際して、脱硫脱瀝油を添加した例はなく、脱硫脱瀝油の含有が有効であることは驚きである。
また重質油組成物のノルマルパラフィンの含有率は、キャピラリーカラムが装着されたガスクロマトグラフによって測定した値を意味する。具体的には、ノルマルパラフィンの標準物質によって検定した後、上記溶出クロマトグラフィー法によって分離された非芳香族成分の試料をキャピラリーカラムに通して測定する。この測定値から重質油組成物の全質量を基準とした含有率が算出可能である。
このように重質油組成物の芳香族指数faは0.3〜0.65の範囲が特に好ましい。faは重質油組成物の密度Dと粘度Vから算出可能であるが、密度Dは0.91g/cm3〜1.02g/cm3、粘度Vは10mm2/sec.〜220mm2/sec.の範囲の重質油組成物で、faが0.3〜0.65となるようなものが特に好ましい。
コーカーの運転圧力に好ましい範囲が設定されている理由は、ノルマルパラフィン含有成分より発生するガスの系外への放出速度を、圧力で制限することができるからである。前述の通り、メソフェーズを構成する炭素六角網平面のサイズは、発生するガスで制御するため、発生ガスの系内への滞留時間は、前記六角網平面の大きさを決定するための重要な制御パラメータとなる。また、コーカーの運転温度に好ましい範囲が設定されている理由は、本発明の効果を得るために調整された重質油から、メソフェーズを成長させるために必要な温度だからである。
まず、Lc(112)が4nm未満の黒鉛材料は結晶組織の発達が不十分であり、このような黒鉛材料を用いたリチウムイオン二次電池では容量が小さくなるため好ましくない。また、本発明における原料炭組成物を高温で長時間黒鉛化した場合においても、Lc(112)が30nmを超える大きさになることはなかったため、上限を30nmとした。
導電助剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、又は導電性を示すインジウム−錫酸化物、又は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン等の導電性高分子を挙げることができる。導電助剤の使用量は、黒鉛材料100質量部に対して1質量部〜15質量部が好ましい。
有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ピロリドン、N−メチルチオピロリドン、ヘキサメチルホスホアミド、ジメチルアセトアミド、イソプロパノール、トルエン等を挙げることができる。
また、シート状、ペレット状等の形状に成形された負極材スラリーと集電体との一体化は、例えば、ロール、プレス、もしくはこれらの組み合わせ等、公知の方法により行うことができる。
正極に用いる活物質としては、特に制限はなく、例えば、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、又は導電性高分子材料を用いればよく、例示するのであれば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リチウム複合複酸化物(LiCoXNiYMZO2、ここで、X+Y+Z=1であり、MはMn、Al等を示す)、及びこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの、リチウムバナジウム化合物、V2O5、V6O13、VO2、MnO2、TiO2、MoV2O8、TiS2、V2S5、VS2、MoS2、MoS3、Cr3O8、Cr2O5、オリビン型LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Fe)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン等の導電性ポリマー、多孔質炭素等及びこれらの混合物を挙げることができる。
有機電解液としては、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル等のエーテル、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄化合物、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のジアルキルケトン、テトラヒドロフラン、2−メトキシテトラヒドロフラン等の環状エーテル、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状炭酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の鎖状炭酸エステル、N−メチル2−ピロリジノン、アセトニトリル、ニトロメタン等の有機溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの溶媒の溶質としては、各種リチウム塩を使用することができる。一般的に知られているリチウム塩にはLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等がある。
なお、上記以外の電池構成上必要な部材の選択についてはなんら制約を受けるものではない。
本発明者らは、水素原子Hと炭素原子Cとの原子比であるH/Cが0.30〜0.50であり、且つマイクロ強度が7質量%〜17質量%である原料炭組成物の粒子表面にアセチレンブラックが埋め込まれた複合粉体を炭化及び黒鉛化する工程と、高度に発達した結晶構造に結晶化度の低い領域が部分的に導入された構造を有し、且つ粒子表面に露出するエッジ部が少ない黒鉛材料が得られることの関係を、次のように考えている。
このような難黒鉛化性のアセチレンブラックを加熱し黒鉛化した場合、基本粒子中の結晶子の成長は、易黒鉛化性炭素材料を黒鉛化した場合の結晶子の成長と比べて、極端に小さい。そのため、黒鉛化後のアセチレンブラックの結晶化度は、黒鉛材料に比べて極めて低いといえる。
また、アセチレンブラックの基本粒子中の結晶子は、c軸が球状粒子の表面に垂直になるように異方的に配向している。そのため、粒子表面のどの領域においても結晶子エッジの露出が非常に少ないという特徴を有する。この結晶子の異方的な配向は、黒鉛化後にも同様の状態で残存する。
また、前述した複合粉体を炭化及び黒鉛化する工程において、原料炭組成物とアセチレンブラックとの界面には炭素−炭素結合が形成される。一方、炭素−炭素結合が形成されない場合には、原料炭組成物とアセチレンブラックとの界面に亀裂が生じるため、その亀裂部分には結晶子のエッジ部が露出し、電解液の還元分解が増大するため好ましくない。
このようにして、高度に発達した結晶構造中に、炭素−炭素結合により連結された結晶化度の低い領域を有する黒鉛材料が得られる。導入された結晶化度の低い領域は、黒鉛層間への電解液の共挿入を立体的に阻害する効果を有する。
一つ目の理由は、原料炭組成物の粒子表面にアセチレンブラックが埋め込まれた複合粉体を炭化及び黒鉛化することにより、黒鉛化後の粒子の比表面積増大を抑制するためである。
原料炭組成物の粒子表面にアセチレンブラックが埋め込まれた複合粉体の場合、原料炭組成物の粒子表面から突出しているアセチレンブラックが少ないため、このような複合粉体を炭化及び黒鉛化して得られた黒鉛材料の表面の凹凸は極めて小さいく、比表面積の小さい状態となる。このようにして得られた黒鉛材料を負極として用いたリチウムイオン二次電池では、電解液と黒鉛材料の粒子表面との接触面積が小さいために、負極における電解液の分解が起こりにくい。この場合、正・負極の容量の作動領域が変化しにくいため、寿命特性に優れる。
一方、アセチレンブラックが原料炭組成物の粒子表面に埋め込まれておらず表面に付着しただけの複合粉体を炭化及び黒鉛化した場合、黒鉛材料の粒子表面にアセチレンブラックが突出しているため、表面に凹凸を有する比表面積の大きな黒鉛材料が得られる。これらの黒鉛材料を負極として用いたリチウムイオン二次電池では、電解液と黒鉛材料の粒子表面との接触面積が大きいために、負極における電解液の分解が起こりやすくなる。この場合、負極の漏れ電流と正極の漏れ電流との差が増大するため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下するため好ましくない。
本発明において、複合粉体を原料炭組成物の粒子表面にアセチレンブラックが埋め込まれている状態とする二つ目の理由は、高度に発達した結晶構造と結晶化度の低い領域との界面で化学結合が形成されることにより、両者の界面に亀裂が生じるのを防ぐためである。
圧縮剪断応力により、アセチレンブラックが原料炭組成物の粒子表面に埋め込まれる過程において、アセチレンブラックは、原料炭組成物を構成する六角網平面積層体と隣接する六角網平面積層体との隙間(ボイド領域)に埋め込まれやすい。これは、アセチレンブラックが原料炭組成物中の六角網平面積層体を破壊して、粒子内部に埋め込まれるのに必要なエネルギーよりも、隣接する六角網平面積層体間のボイド領域に埋め込まれるのに必要なエネルギーの方が小さいからである。このボイド領域には、六角網平面の構成単位となるベンゼン環以外の構造を有した未組織炭素が存在し、これらの未組織炭素は六角網平面積層体と化学的に連結している。この未組織炭素は、原料炭組成物が炭化及び/又は黒鉛化された後も残存し、同様な役割を演じている。
このようなボイド領域にアセチレンブラックが埋め込まれた場合、アセチレンブラックが原料炭組成物中の未組織炭素と十分に接触することができるため、その後の黒鉛化の過程において、接触する未組織炭素と強固な炭素−炭素結合を形成することができる。そのため、黒鉛化後に得られる黒鉛材料においても、アセチレンブラックと黒鉛中の結晶子間は亀裂が生じることなく化学的に連結される。このようにして、高度に発達した結晶構造に、結晶化度の低い領域が導入された構造を有する黒鉛材料を得ることができる。
一方、アセチレンブラックが原料炭組成物の粒子表面に埋め込まれておらず、表面に付着しただけの複合粉体を炭化及び黒鉛化した場合、原料炭組成物中の未組織炭素とアセチレンブラックとの接触面積が極めて小さいために、炭化及び黒鉛化過程において、アセチレンブラックと原料炭組成物中の未組織炭素間に強固な炭素−炭素結合を形成することは不可能である。このような場合、得られた黒鉛材料においては、アセチレンブラックと黒鉛中の結晶子との界面に亀裂が生じやすく、その亀裂部には結晶子のエッジ部が露出する。このような黒鉛材料を負極として用いたリチウムイオン二次電池では、黒鉛材料の亀裂部に露出した結晶子のエッジ部において、電解液が分解されやすくなる。この場合、負極の漏れ電流と正極の漏れ電流との差が増大するため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下する。
原料炭組成物の粉体と原料炭組成物に対して0.5質量%未満のアセチレンブラックとを混合し、圧縮剪断応力を付与して得られる複合粉体を炭化及び黒鉛化して得られた黒鉛材料の場合、複合粉体に含まれるアセチレンブラックの含有量が極端に小さいために、黒鉛材料に導入される結晶化度の低い領域が極端に少なくなる。そのため、溶媒共挿入による電解液の分解を抑制することができない。このような黒鉛材料を負極として用いたリチウムイオン二次電池では、負極における電解液の分解が生じ易いため、負極の漏れ電流が増大し、正極との漏れ電流との差が増大するため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下するため好ましくない。
一方、原料炭組成物の粉体と原料炭組成物に対して10質量%を越えるアセチレンブラックとを混合した場合、原料炭組成物の六角網平面積層体間のボイド領域に対して、混合したアセチレンブラックの量が極端に多い状態となる。このとき、混合した全てのアセチレンブラックが原料炭組成物の粒子表面に埋め込まれるために必要なボイド領域が極端に不足しているため、多くのアセチレンブラックが原料炭組成物に埋め込まれず、原料炭組成物の粒子表面に付着するに留まり、粒子表面の凹凸の大きな複合粉体が得られる。この複合粉体を炭化及び黒鉛化して得られた黒鉛材料の比表面積は極端に大きくなり、この黒鉛材料を負極として使用したリチウムイオン二次電池では、電解液と負極の黒鉛材料との接触面積が増大し電解液が分解されやすくなるため、負極の漏れ電流が増大し、正極との漏れ電流との差が大きくなるため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下する。より好ましいアセチレンブラックの量は、1質量%〜5質量%である。
また、比表面積が300m2/gを超えるアセチレンブラックを添加した場合、たとえアセチレンブラックが原料炭組成物に埋め込まれた状態の複合粉体を黒鉛化したとしても、黒鉛化後の黒鉛材料の比表面積が大幅に増大するために、電解液と黒鉛との接触面積が増大し、容量劣化につながるため好ましくない。
DBP吸油量は、アブソープトメーターを使用し、アセチレンブラックにDBPを添加したときの最大トルクの70%から求めた100g当たりの吸油量とした。
DBP吸油量が50ml/100g未満のアセチレンブラックでは、ストラクチャーが発達しておらず、比表面積が小さい。このようなアセチレンブラックと原料炭組成物の粉体とを混合し圧縮剪断応力を付与した場合、原料炭組成物中のボイド領域に埋め込まれたアセチレンブラックと、ボイド領域に存在する未組織炭素との接触面積が極端に小さい複合粉体が得られる。このような複合粉体を炭化及び黒鉛化した場合、炭化及び黒鉛化の過程で両者の界面に強固な炭素−炭素結合が形成されないため、好ましくない。
また、DBP吸油量が200ml/100gを超えるアセチレンブラックでは、ストラクチャーが高度に発達している。このようなアセチレンブラックと原料炭組成物の粉体とを混合し、圧縮剪断応力を付与した場合、原料炭組成物のボイド領域の体積よりも、アセチレンブラックのストラクチャーが大きく発達しているために、アセチレンブラックを原料炭組成物中のボイド領域に埋め込むことができない。この場合、アセチレンブラックが原料炭組成物の粒子表面に付着するに留まった複合粉体が得られ、このような複合粉体を炭化及び黒鉛化した場合、黒鉛化後の黒鉛粒子表面の比表面積が大幅に増大するために、黒鉛粒子表面での電解液の分解が増大し、負極の漏れ電流が増大し、正極との漏れ電流との差が大きくなるため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下するため好ましくない。
このようなパラメータを有した原料炭組成物は、適度な六角網平面積層体間のボイド領域を有するため、アセチレンブラックが原料炭組成物の粒子表面に埋め込まれた複合粉体を得ることが可能である。また、当該原料炭組成物は、適度な六角網平面積層体間の結合力を有するため、複合粉体を黒鉛化した後に得られる黒鉛材料において、アセチレンブラックと黒鉛中の結晶子間に強固な炭素−炭素結合を形成することが可能となる。
全水素の測定は、試料を酸素気流中750℃で完全燃焼させ、燃焼ガスより生成した水分量を電量滴定法(カール・フィッシャー法)で求められる。電量滴定式のカール・フィッシャー法では、予め滴定セルにヨウ化物イオン、二酸化硫黄、塩基(RN)及びアルコールを主成分とする電解液を入れておき、滴定セルに試料を入れることで試料中の水分は、下式(4)の通り反応する。なお、試料は、例えばコーキング処理後、乾燥雰囲気下で冷却した後に測定される。
ヨウ素の発生に要した電気量を測定することで、水分量が求められる。さらに得られた水分量から、水素量に換算し、これを測定に供した試料質量で除することにより、全水素分(TH(質量%))が算出される。
そのため、アセチレンブラックがボイド領域に埋め込まれた複合粉体において、アセチレンブラックと未組織炭素間に炭素−炭素結合が形成されにくい。このような複合粉体を炭化及び黒鉛化して得られた黒鉛材料中では、アセチレンブラックと黒鉛中の結晶子との界面に亀裂が生じやすく、その亀裂部には結晶子のエッジ部が露出する。これらの黒鉛材料を負極として用いたリチウムイオン二次電池では、粒子表面のエッジ部における電解液の分解が起こりやすいため、負極の漏れ電流が増大し、正極との漏れ電流との差が大きくなるため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下するため好ましくない。
重質油組成物の成分としては、流動接触分解装置のボトム油(流動接触分解残油、FCC DO)、流動接触分解残油から抽出した芳香族分、重質油に高度な水添脱硫処理を施した水素化脱硫油、減圧残油(VR)、脱硫脱瀝油、石炭液化油、石炭の溶剤抽出油、常圧残浚油、シェルオイル、タールサンドビチューメン、ナフサタールピッチ、エチレンボトム油、コールタールピッチ及びこれらを水素化精製した重質油等が挙げられる。これらの重質油は単独で用いても良く、二種類以上をブレンドして用いても良い。
ディレードコーキングプロセスによってコーキング処理した後に得られる原料炭組成物の物性として、H/C原子比が0.30〜0.50であり、且つマイクロ強度が7質量%〜17質量%のものを得る場合には、使用する重質油の性状に応じて二種類以上の重質油の配合比率を適宜調整すればよい。なお、重質油の性状は、原油の種類、原油から重質油が得られるまでの処理条件等によって変化する。
流動接触分解残油から抽出した芳香族分は、ジメチルホルムアミド等を用いて選択抽出し、芳香族分と飽和分に分離させたときの芳香族分である。
重質油に高度な水添脱硫処理を施した水素化脱硫油は、例えば、硫黄分1質量%以上の重質油を水素分圧10MPa以上で水素化脱硫処理して得られる硫黄分1.0質量%以下、窒素分0.5質量%以下、芳香族炭素分率(fa)0.1以上の重質油である。水素化脱硫油は、好ましくは、常圧蒸留残油を触媒存在下、水素化分解率が25%以下となるように水素化脱硫して得られる水素化脱硫油である。
減圧残油(VR)は、原油を常圧蒸留装置にかけて、ガス・軽質油・常圧残油を得た後、この常圧残油を、例えば、10Torr〜30Torrの減圧下、加熱炉出口温度320℃〜360℃の範囲で変化させて得られる減圧蒸留装置のボトム油である。
脱硫脱瀝油は、例えば、減圧蒸留残渣油等の油を、プロパン、ブタン、ペンタン、又はこれらの混合物等を溶剤として使用する溶剤脱瀝装置で処理し、そのアスファルテン分を除去し、得られた脱瀝油(DAO)を、間接脱硫装置(Isomax)等を用いて、好ましくは硫黄分0.05質量%〜0.40質量%の範囲までに脱硫したものである。
常圧残浚油は、原油を常圧蒸留装置にかけて、例えば、常圧下、加熱して、含まれる留分の沸点により、ガス・LPGやガソリン留分、灯油留分、軽質油留分、常圧残浚油に分けられる際に得られる留分の一つで、最も沸点の高い留分である。加熱温度は、原油の産地等により変動し、これらの留分に分留できるものであれば限定されないが、例えば原油を320℃に加熱する。
重質油は高温処理されることによって、熱分解及び重縮合反応が起こり、メソフェーズと呼ばれる大きな液晶が中間生成物として生成する過程を経て生コークスが製造される。
このとき、(1)良好なバルクメソフェーズを生成する重質油成分と、(2)このバルクメソフェーズが重縮合して炭化及び固化する際に、メソフェーズを構成する六角網平面積層体の大きさを小さく制限する機能を有したガスを生じ得る重質油成分と、更に(3)その切断された六角網平面積層体どうしを結合させる成分が全て含有された原料油組成物を用いることが特に好ましい。(1)良好なバルクメソフェーズを生成する重質油成分が、芳香族指数faとして0.3〜0.65を与える成分であり、(2)ガスを生じ得る重質油成分が、ノルマルパラフィン含有率の5質量%〜20質量%に相当する成分であり、(3)六角網平面積層体どうしを結合させる成分が7質量%〜15質量%の範囲で含有された脱硫脱瀝油である。
なお、原料炭組成物の製造に際して、脱硫脱瀝油を添加した例はなく、脱硫脱瀝油の含有が有効であることは驚きである。
また重質油組成物のノルマルパラフィンの含有率は、キャピラリーカラムが装着されたガスクロマトグラフによって測定した値を意味する。具体的には、ノルマルパラフィンの標準物質によって検定した後、上記溶出クロマトグラフィー法によって分離された非芳香族成分の試料をキャピラリーカラムに通して測定する。この測定値から重質油組成物の全質量を基準とした含有率が算出可能である。
このように重質油組成物の芳香族指数faは0.3〜0.65の範囲が特に好ましい。faは重質油組成物の密度Dと粘度Vから算出可能であるが、密度Dは0.91g/cm3〜1.02g/cm3、粘度Vは10mm2/sec.〜220mm2/sec.の範囲の重質油組成物で、faが0.3〜0.65となるようなものが特に好ましい。
コーカーの運転圧力に好ましい範囲が設定されている理由は、ノルマルパラフィン含有成分より発生するガスの系外への放出速度を、圧力で制限することができるからである。前述の通り、メソフェーズを構成する炭素六角網平面のサイズは、発生するガスで制御するため、発生ガスの系内への滞留時間は、前記六角網平面の大きさを決定するための重要な制御パラメータとなる。また、コーカーの運転温度に好ましい範囲が設定されている理由は、本発明の効果を得るために調整された重質油から、メソフェーズを成長させるために必要な温度だからである。
Lc(112)が4nm未満の黒鉛粒子では結晶組織が発達し難く、このような黒鉛材料を用いたリチウムイオン二次電池では容量が小さくなるため好ましくない。また、本発明における原料炭組成物を高温で長時間黒鉛化した場合においても、Lc(112)が30nmを超える大きさになることはなかったため、上限を30nmとした。
導電助剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、又は導電性を示すインジウム−錫酸化物、又は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン等の導電性高分子を挙げることができる。導電助剤の使用量は、黒鉛材料100質量部に対して1質量部〜15質量部が好ましい。
有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ピロリドン、N−メチルチオピロリドン、ヘキサメチルホスホアミド、ジメチルアセトアミド、イソプロパノール、トルエン等を挙げることができる。
また、シート状、ペレット状等の形状に成形された負極材スラリーと集電体との一体化は、例えば、ロール、プレス、もしくはこれらの組み合わせ等、公知の方法により行うことができる。
正極に用いる活物質としては、特に制限はなく、例えば、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、又は導電性高分子材料を用いればよく、例示するのであれば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リチウム複合複酸化物(LiCoXNiYMZO2、ここで、X+Y+Z=1であり、MはMn、Al等を示す)、及びこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの、リチウムバナジウム化合物、V2O5、V6O13、VO2、MnO2、TiO2、MoV2O8、TiS2、V2S5、VS2、MoS2、MoS3、Cr3O8、Cr2O5、オリビン型LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Fe)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン等の導電性ポリマー、多孔質炭素等及びこれらの混合物を挙げることができる。
有機電解液としては、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル等のエーテル、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄化合物、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のジアルキルケトン、テトラヒドロフラン、2−メトキシテトラヒドロフラン等の環状エーテル、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状炭酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の鎖状炭酸エステル、N−メチル2−ピロリジノン、アセトニトリル、ニトロメタン等の有機溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの溶媒の溶質としては、各種リチウム塩を使用することができる。一般的に知られているリチウム塩にはLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等がある。
なお、上記以外の電池構成上必要な部材の選択についてはなんら制約を受けるものではない。
(1)原料炭組成物A−1
硫黄分3.1質量%の常圧蒸留残油を、触媒存在下、水素化分解率が25%以下となるように水素化脱硫し、水素化脱硫油を得た。水素化脱硫条件は、全圧180MPa、水素分圧160MPa、温度380℃である。また、脱硫減圧軽油(硫黄分500質量ppm、15℃における密度0.88g/cm3)を流動接触分解し、流動接触分解残油を得た。この流動接触分解残油を、ジメチルホルムアミドで選択抽出し、芳香族分と飽和分に分離させ、このうちの芳香族分を抽出した。この抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比8:1で混合したものに、19質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、コークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物A−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物が、抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比8:1で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物B−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物が、抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比8:1で混合したものに、4質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物C−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物が、抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比6:1で混合したものに、17質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物D−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物が、抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比6:1で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物E−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物が、抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比6:1で混合したものに、6質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物F−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物の原料となった水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:5で混合したものに、15質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物G−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物の原料となった水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:5で混合したものに、7質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物H−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物の原料となった水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、19質量%となるように脱硫脱瀝油を加えークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物I−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物の原料となった水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、16質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物J−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物の原料となった水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物K−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物の原料となった水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、5質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物L−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物の原料となった水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、3質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物M−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物の原料となった水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:3で混合したものに、14質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物N−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物の原料となった水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:3で混合したものに、7質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物O−1を得た。
原料炭組成物A−1の原料油組成物の原料となった流動接触分解残油に、同体積のn−ヘプタンを加え混合した後、ジメチルホルムアミドで選択抽出し、芳香族分と飽和分に分離させ、このうちの飽和分を選択抽出した。流動接触分解残油と、この抽出飽和分とを質量比1:1で混合したものに、16質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物P−1を得た。
原料炭組成物P−1の原料油組成物の原料となった流動接触分解残油と、抽出飽和分とを質量比1:1で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物Q−1を得た。
原料炭組成物P−1の原料油組成物の原料となった流動接触分解残油と、抽出飽和分とを質量比1:1で混合したものに、6質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物R−1を得た。
原料炭組成物P−1の原料油組成物の原料となった流動接触分解残油と、抽出飽和分とを質量比1:2で混合したものに、19質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物S−1を得た。
原料炭組成物P−1の原料油組成物の原料となった流動接触分解残油と、抽出飽和分とを質量比1:2で混合したものに、10質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物T−1を得た。
原料炭組成物P−1の原料油組成物の原料となった流動接触分解残油と、抽出飽和分とを質量比1:2で混合したものに、4質量%となるように脱硫脱瀝油を加えコークスの原料油組成物を得た。この原料油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物U−1を得た。
(1)原料炭組成物のH/C原子比の測定方法
原料炭組成物の全水素の測定は、試料を酸素気流中750℃で完全燃焼させ、燃焼ガスより生成した水分量を電量滴定法(カール・フィッシャー法)で測定した。また原料炭組成物試料を1150℃の酸素気流中で燃焼させ、二酸化炭素(一部一酸化炭素)に変換され過剰の酸素気流に搬送されてCO2+CO赤外線検出器により、全炭素分を測定した。原料炭組成物のH/Cは、全水素分(TH(質量%))を水素の原子量を除した値と、全炭素分(TC(質量%))を炭素の原子量を除した値の比率で算出した。原料炭組成物A−1〜U−1のH/C値は表1に示された通りである。
鋼製シリンダー(内径25.4mm、長さ304.8mm)に20〜30メッシュの試料2gと直径5/16inch(7.9mm)の鋼球12個を入れ、鉛直面を管と直角方向に25rpmで800回転させたのち(すなわち、シリンダーを立てた状態から上下が入れ替わるように、回転軸を水平にして、あたかもプロペラが回転するように回転させる)、48メッシュでふるい分け、試料に対するふるい上の質量の割合を、パーセントで算出した。原料炭組成物A−1〜U−1のマイクロ強度は表1に示された通りである。
得られた原料炭組成物を、機械式粉砕機(スーパーローターミル/日清エンジニアリング社製)で粉砕し、精密空気分級機(ターボクラシファイヤー/日清エンジニアリング社製)で分級することにより、平均粒子径12μmの微粒子材料を得た。次に、この微粒子を、ホソカワミクロン社製の「ノビルタ130型」へ、充填体積が500ccになるように投入し、ブレードの周速度30m/s、両者間の間隙5mm、処理温度は130℃程度にコントロールして、処理時間50分の条件で運転して圧縮応力と剪断応力を付与した黒鉛前駆体を得た。圧縮応力と剪断応力が付与された微粒子を、高砂工業社製のローラーハースキルンで、窒素ガス気流下、最高到達温度が1200℃、最高到達温度保持時間が5時間となるように炭素化した。得られた炭素材料を坩堝に投入し、電気炉に設置して、80L/分の窒素ガス気流中、最高到達温度2800℃で黒鉛化した。このとき昇温速度は200℃/時間、最高到達温度の保持時間は3時間、降温速度は1000℃までが100℃/時間とし、その後窒素気流を保持させた状態で室温まで放冷させた。得られた黒鉛材料は、原料炭組成物A−1〜U−1に対応させて、黒鉛A−1〜U−1と呼称する。
原料炭組成物H−1、K−1、N−1を各々機械式粉砕機(スーパーローターミル/日清エンジニアリング社製)で粉砕し、精密空気分級機(ターボクラシファイヤー/日清エンジニアリング社製)で分級することにより、平均粒子径12μmの微粒子材料を得た。この微粒子を、圧縮応力と剪断応力を付加すること無しに、高砂工業社製のローラーハースキルンで、窒素ガス気流下、最高到達温度が1200℃、最高到達温度保持時間が5時間となるように炭素化した。得られた炭素材料を坩堝に投入し、電気炉に設置して、80L/分の窒素ガス気流中、最高到達温度2800℃で黒鉛化した。このとき昇温速度は200℃/時間、最高到達温度の保持時間は3時間、降温速度は1000℃までが100℃/時間とし、その後窒素気流を保持させた状態で室温まで放冷させた。得られた黒鉛材料は、原料炭組成物H−1、K−1、N−1に対応させて、黒鉛V−1、W−1、X−1と呼称する。
原料炭組成物K−1を、「3.原料炭組成物A−1〜U−1の炭素化及び黒鉛化」に記載された方法と同様に黒鉛化した。ただし黒鉛化の最高到達温度を2600℃としたものを黒鉛Y−1、2300℃としたものを黒鉛Z−1と呼称する。
得られた黒鉛粉末に、内部標準としてSi標準試料を10質量%混合し、ガラス製回転試料ホルダー(25mmφ×0.2mmt)に詰め、日本学術振興会117委員会が定めた方法(炭素2006,No.221,P52−60)に基づき、広角X線回折法で測定を行い、黒鉛粉末の結晶子の大きさLc(112)を算出した。X線回折装置は、Bruker−AXS社製 D8 ADVANCE(封入管型)、X線源はCuKα線(Kβフ
ィルターNiを使用)、X線管球への印可電圧及び電流は40kV及び40mAとした。
得られた回折図形についても、日本学術振興会117委員会が定めた方法に準拠した方法(炭素2006,No.221,P52−60)で解析を行った。具体的には、測定データにスムージング処理、バックグラウンド除去の後、吸収補正、偏光補正、Lorentz補正を施し、Si標準試料の(422)回折線のピーク位置、及び値幅を用いて、黒鉛粉末の(112)回折線に対して補正を行い、結晶子サイズを算出した。なお、結晶子サイズは、補正ピークの半値幅から以下のScherrerの式を用いて計算した。測定・解析は3回ずつ実施し、その平均値をLc(112)とした。黒鉛粉末のLc(112)が測定された結果は、表1に示された通りである。
(1)電池の作製方法
図1に作製した電池の断面図を示す。正極は、正極材料である平均粒子径6μmのニッケル酸リチウム(戸田工業社製LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)と結着剤のポリフッ化ビニリデン(クレハ社製KF#1320)、アセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)を質量比で89:6:5に混合し、N−メチル−2−ピロリジノンを加えて混練した後、ペースト状にして、厚さ30μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、乾燥及び圧延操作を行い、塗布部のサイズが、幅30mm、長さ50mmとなるように切断されたシート電極である。このとき単位面積当たりの塗布量は、ニッケル酸リチウムの質量として、10mg/cm2となるように設定した。
このシート電極の一部はシートの長手方向に対して垂直に正極合剤が掻き取られ、その露出したアルミニウム箔が塗布部の集電体(アルミニウム箔)と一体化して繋がっており、正極リード板としての役割を担っている。
負極は、負極材料である黒鉛A−1〜W−1の黒鉛粉末と結着剤のポリフッ化ビニリデン(クレハ社製KF#9310)、アセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)を質量比で91:2:8に混合し、N−メチル−2−ピロリジノンを加えて混練した後、ペースト状にして、厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥及び圧延操作を行い、塗布部のサイズが、幅32mm、長さ52mmとなるように切断されたシート電極である。このとき単位面積当たりの塗布量は、黒鉛粉末の質量として、6mg/cm2となるように設定した。
このシート電極の一部はシートの長手方向に対して垂直に負極合剤が掻き取られ、その露出した銅箔が塗布部の集電体(銅箔)と一体化して繋がっており、負極リード板としての役割を担っている。
このようにして乾燥された正極及び負極を、正極の塗布部と負極の塗布部とが、ポリポロピレン製のマイクロポーラスフィルム(セルガード社製#2400)を介して対向させる状態で積層し、ポリイミドテープで固定した。なお、正極及び負極の積層位置関係は、負極の塗布部に投影される正極塗布部の周縁部が、負極塗布部の周縁部の内側で囲まれるように対向させた。得られた単層電極体を、アルミラミネートフィルムで包埋させ、電解液を注入し、前述の正・負極リード板がはみ出した状態で、ラミネートフィルムを熱融着することにより、密閉型の単層ラミネート電池を作製した。使用した電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートが体積比で3:7に混合された溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)が1mol/Lの濃度となるように溶解されたものである。
得られた電池を25℃の恒温室内に設置し、以下に示す充放電試験を行った。先ず1.5mAの電流で、電池電圧が4.2Vとなるまで定電流で充電した。10分間休止の後、同じ電流で電池電圧が3.0Vとなるまで定電流で放電する充放電サイクルを10回繰り返した。この充放電サイクルは、電池の異常を検地するためのものであるため、充放電サイクル試験のサイクル数には含まなかった。本実施例で作製された電池は、全て異常がないことを確認した。
次に、充電電流を15mA、充電電圧を4.2V、充電時間を3時間とした定電流/定電圧充電を行い、1分間休止の後、同じ電流(15mA)で電池電圧が3.0Vとなるまで定電流で放電させた。このとき得られた放電容量を、第1サイクル目の放電容量とする。同様な条件の充放電サイクルを3000回繰り返し、第1サイクル目の放電容量に対する第3000サイクル目の放電容量の割合(%)を算出し、「3000サイクル後の容量維持率(%)」とした。第1サイクル目の放電容量、第3000サイクル目の放電容量、及び3000サイクル後の容量維持率(%)を表1中に示す。
表1に原料炭組成物A−1〜U−1のH/C値、及びマイクロ強度と、その原料炭組成物A−1〜U−1に対応した黒鉛A−1〜Z−1の結晶子の大きさLc(112)、及びこれらを負極として使用したリチウムイオン二次電池の第1サイクル目の放電容量(mAh)、第3000サイクル目の放電容量(mAh)、3000サイクル後の容量維持率(%)を示す。
図2及び図3より、原料炭組成物が本発明の範囲内、即ちH/C値が0.3〜0.5であり、且つマイクロ強度が7〜17であるものに対し、圧縮応力と剪断応力を付与したあと黒鉛化したもの(G−1,H−1,K−1,N−1,O−1,Y−1,Z−1)は、3000サイクル後の放電容量維持率が85%以上となり、サイクル劣化が小さな信頼性の高いリチウムイオン二次電池を実現できることが分かった。なお、図2のグラフ中のX軸に垂直な破線は、X=0.3とX=0.5であり、図3のグラフ中のX軸に垂直な破線は、X=7とX=17である。
また原料炭組成物(H−1,K−1,N−1)を原料とした黒鉛化物の製造方法として、圧縮応力と剪断応力を付与しないで黒鉛化処理したもの(黒鉛V−1,W−1,X−1)を負極に使用した電池は、3000サイクル後の容量維持率が各々70.1%、74.3%、68.4%となり、圧縮応力と剪断応力を付与した対応する黒鉛化物(H−1,K−1,N−1)の場合(85%以上)と比較して、サイクル劣化が著しく大きくなった。原料炭組成物の物性は本出願の範囲内であっても、圧縮応力と剪断応力を付与しないで黒鉛化したものを負極に使用した電池はサイクル劣化が大きかったことから、原料炭組成物の物性が本出願の範囲内であることと、圧縮応力と剪断応力を付与することは、3000サイクル後の容量維持率として85%以上を確保するための必要条件であることが分かった。
(1)原料炭組成物A−2
硫黄分3.1質量%の常圧蒸留残油を、触媒存在下、水素化分解率が25%以下となるように水素化脱硫し、水素化脱硫油を得た。水素化脱硫条件は、全圧180MPa、水素分圧160MPa、温度380℃である。また、脱硫減圧軽油(硫黄分500質量ppm、15℃における密度0.88g/cm3)を流動接触分解し、流動接触分解残油を得た。この流動接触分解残油を、ジメチルホルムアミドで選択抽出し、芳香族分と飽和分に分離させ、このうちの芳香族分を抽出した。この抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比8:1で混合したものに、19質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物A−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比8:1で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物B−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比8:1で混合したものに、4質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物C−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比6:1で混合したものに、17質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物D−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比6:1で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物E−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比6:1で混合したものに、6質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物F−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:5で混合したものに、15質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物G−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:5で混合したものに、7質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物H−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、19質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物I−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、16質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物J−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物K−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、5質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物L−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、3質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物M−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:3で混合したものに、14質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物N−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:3で混合したものに、7質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物O−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油に同体積のn−ヘプタンを加え混合した後、ジメチルホルムアミドで選択抽出し、芳香族分と飽和分に分離させ、このうちの飽和分を選択抽出した。流動接触分解残油と、この抽出飽和分とを質量比1:1で混合したものに、16質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物P−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:1で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物Q−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:1で混合したものに、6質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物R−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:2で混合したものに、19質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物S−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:2で混合したものに、10質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物T−2を得た。
原料炭組成物A−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−2の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:2で混合したものに、4質量%となるように脱硫脱瀝油を加え重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物U−2を得た。
(1)原料炭組成物のH/C原子比の測定方法
原料炭組成物の全水素の測定は、試料を酸素気流中750℃で完全燃焼させ、燃焼ガスより生成した水分量を電量滴定法(カール・フィッシャー法)で測定した。また原料炭組成物試料を1150℃の酸素気流中で燃焼させ、二酸化炭素(一部一酸化炭素)に変換され過剰の酸素気流に搬送されてCO2+CO赤外線検出器により、全炭素分を測定した。原料炭組成物のH/Cは、全水素分(TH(質量%))を水素の原子量を除した値と、全炭素分(TC(質量%))を炭素の原子量を除した値の比率で算出した。原料炭組成物A−2〜U−2のH/C値は表2に示された通りである。
鋼製シリンダー(内径25.4mm、長さ304.8mm)に20〜30メッシュの試料2gと直径5/16inch(7.9mm)の鋼球12個を入れ、鉛直面を管と直角方向に25rpmで800回転させたのち(すなわち、シリンダーを立てた状態から上下が入れ替わるように、回転軸を水平にして、あたかもプロペラが回転するように回転させる)、48メッシュでふるい分け、試料に対するふるい上の質量の割合を、パーセントで算出した。原料炭組成物A−2〜U−2のマイクロ強度は表2に示された通りである。
得られた原料炭組成物G−2を、機械式粉砕機(スーパーローターミル/日清エンジニアリング社製)で粉砕し、精密空気分級機(ターボクラシファイヤー/日清エンジニアリング社製)で分級することにより、平均粒径10μmの原料炭組成物の粉末を得た。次に、この粉末を、高砂工業社製のローラーハースキルンで、窒素ガス気流下、最高到達温度が1200℃、最高到達温度保持時間が5時間となるように炭化した。得られた炭素材料を坩堝に投入し、電気炉に設置して、80L/分の窒素ガス気流中、最高到達温度2800℃で黒鉛化した。このとき昇温速度は200℃/時間、最高到達温度の保持時間は3時間、降温速度は1000℃までが100℃/時間とし、その後窒素気流を保持させた状態で室温まで放冷させることにより黒鉛粒子を得た。得られた黒鉛粒子のX線広角回折法によって測定される(112)回折線の結晶子の大きさLc(112)は10.9nmであった。得られた黒鉛粒子を、ホソカワミクロン社製の「ノビルタ130型」へ、充填体積が500ccになるように投入し、ブレードの回転数を1300rpm、処理温度は130℃程度にコントロールして、処理時間15分の条件で運転して圧縮剪断応力を付与した黒鉛材料を得た。
表2に記載された原料炭組成物を、同表に記載された平均粒径に粉砕・分級し、実施例1に記載したものと同じ条件で炭化・黒鉛化し黒鉛粒子を得た。粉砕・分級および炭化・黒鉛化の装置は、実施例1と同じ装置を用いた。得られた黒鉛粒子に、同表に記載された装置および条件(回転数または周速度、処理時間)で表面処理を施した。
原料炭組成物H−2、K−2、N−2を、同表に記載された平均粒径に粉砕・分級し、実施例1に記載したものと同じ条件で炭化・黒鉛化し黒鉛粒子を得た。粉砕・分級および炭化・黒鉛化の装置は、実施例1と同じ装置を用いた。得られた黒鉛粒子に、同表に記載された装置および条件(回転数または周速度、処理時間)で表面処理を施した。その後、高砂工業社製のローラーハースキルンで、窒素ガス気流下、最高到達温度が1200℃、最高到達温度保持時間が3時間となるように熱処理した。
原料炭組成物K−2を、同表に記載された平均粒径に粉砕・分級し、実施例1に記載したものと同じ条件で炭化・黒鉛化し黒鉛粒子を得た。比較例17では、黒鉛化の最高到達温度を2600℃、比較例18では、2300℃とした。粉砕・分級および炭化・黒鉛化の装置は、実施例1と同じ装置を用いた。得られた黒鉛粒子に、同表に記載された装置および条件(回転数または周速度、処理時間)で表面処理を施した。
得られた黒鉛粒子に、内部標準としてSi標準試料を10質量%混合し、ガラス製回転試料ホルダー(25mmφ×0.2mmt)に詰め、日本学術振興会117委員会が定めた方法(炭素2006,No.221,P52−60)に基づき、広角X線回折法で測定を行い、黒鉛粒子の結晶子の大きさLc(112)を算出した。X線回折装置は、Bruker−AXS社製 D8 ADVANCE(封入管型)、X線源はCuKα線(Kβフ
ィルターNiを使用)、X線管球への印可電圧及び電流は40kV及び40mAとした。
得られた回折図形についても、日本学術振興会117委員会が定めた方法に準拠した方法(炭素2006,No.221,P52−60)で解析を行った。具体的には、測定データにスムージング処理、バックグラウンド除去の後、吸収補正、偏光補正、Lorentz補正を施し、Si標準試料の(422)回折線のピーク位置、及び値幅を用いて、黒鉛粒子の(112)回折線に対して補正を行い、結晶子サイズを算出した。なお、結晶子サイズは、補正ピークの半値幅から以下のScherrerの式を用いて計算した。測定・解析は3回ずつ実施し、その平均値をLc(112)とした。黒鉛粒子のLc(112)が測定された結果は、表2に示された通りである。
(1)電池の作製方法
図1に作製した電池10の断面図を示す。図1には、負極11、負極集電体12、正極13、正極集電体14、セパレータ15、アルミラミネート外装16が示されている。
正極は、正極材料である平均粒子径6μmのニッケル酸リチウム(戸田工業社製LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)と結着剤のポリフッ化ビニリデン(クレハ社製KF#1320)、アセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)を質量比で89:6:5に混合し、N−メチル−2−ピロリジノンを加えて混練した後、ペースト状にして、厚さ30μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、乾燥及び圧延操作を行い、塗布部のサイズが、幅30mm、長さ50mmとなるように切断されたシート電極である。このとき単位面積当たりの塗布量は、ニッケル酸リチウムの質量として、10mg/cm2となるように設定した。
このシート電極の一部はシートの長手方向に対して垂直に正極合剤が掻き取られ、その露出したアルミニウム箔が塗布部の集電体(アルミニウム箔)と一体化して繋がっており、正極リード板としての役割を担っている。
負極は、負極材料である前記実施例及び比較例で得られた黒鉛材料と結着剤のポリフッ化ビニリデン(クレハ社製KF#9310)、アセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)を質量比で91:2:8に混合し、N−メチル−2−ピロリジノンを加えて混練した後、ペースト状にして、厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥及び圧延操作を行い、塗布部のサイズが、幅32mm、長さ52mmとなるように切断されたシート電極である。このとき単位面積当たりの塗布量は、黒鉛材料の質量として、6mg/cm2となるように設定した。
このシート電極の一部はシートの長手方向に対して垂直に負極合剤が掻き取られ、その露出した銅箔が塗布部の集電体(銅箔)と一体化して繋がっており、負極リード板としての役割を担っている。
このようにして乾燥された正極及び負極を、正極の塗布部と負極の塗布部とが、ポリポロピレン製のマイクロポーラスフィルム(セルガード社製#2400)を介して対向させる状態で積層し、ポリイミドテープで固定した。なお、正極及び負極の積層位置関係は、負極の塗布部に投影される正極塗布部の周縁部が、負極塗布部の周縁部の内側で囲まれるように対向させた。得られた単層電極体を、アルミラミネートフィルムで包埋させ、電解液を注入し、前述の正・負極リード板がはみ出した状態で、ラミネートフィルムを熱融着することにより、密閉型の単層ラミネート電池を作製した。使用した電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートが体積比で3:7に混合された溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)が1mol/Lの濃度となるように溶解されたものである。
得られた電池を25℃の恒温室内に設置し、以下に示す充放電試験を行った。まず充電電流を15mA、充電電圧を4.2V、充電時間を3時間とした定電流/定電圧充電を行い、1分間休止の後、同じ電流(15mA)で電池電圧が3.0Vとなるまで定電流で放電させた。同様の条件の充放電を5サイクル繰り返し、第5サイクル目の放電容量を「初期の放電容量」とした。第6サイクル目は、同様な条件で充電を行った状態で60℃の恒温室内に設置し30日間放置した。その後恒温室内を25℃に設定し、電池を5時間放置したのち放電した。その後前述した条件と同様な条件の充放電サイクルを5回繰り返し、第5サイクル目の放電容量を「60℃30日保持後の放電容量」とした。保存特性を表す指標として、「初期の放電容量」に対する「60℃30日間保持後の放電容量」の割合(%)を算出し、「60℃30日間保持後の容量維持率(%)」とした。初期の放電容量、60℃30日間保持後の放電容量、及び、60℃30日間保持後の容量維持率(%)を表2中に示す。
表2に実施例及び比較例における原料炭組成物のH/C値、及びマイクロ強度と、原料炭組成物の平均粒径、黒鉛粒子のLc(112)、表面処理条件、及び実施例及び比較例において得られた黒鉛材料を負極材料として使用したリチウムイオン二次電池の初期の放電容量(mAh)、60℃30日間保持後の放電容量(mAh)、60℃30日間保持後の容量維持率(%)を示す。
比較例17、18とも、原料炭組成物の物性は本発明の範囲内であるため、容量維持率は90%以上となり、極めてサイクル安定性の高い電池を実現できる負極黒鉛材料と見なすことができる。しかし、その結晶子の大きさが小さいため小さな容量の電池しか実現できないため好ましくないと判断できる。
(1)原料炭組成物A−3
硫黄分3.1質量%の常圧蒸留残油を、触媒存在下、水素化分解率が25%以下となるように水素化脱硫し、水素化脱硫油を得た。水素化脱硫条件は、全圧180MPa、水素分圧160MPa、温度380℃である。また、脱硫減圧軽油(硫黄分500質量ppm、15℃における密度0.88g/cm3)を流動接触分解し、流動接触分解残油を得た。この流動接触分解残油を、ジメチルホルムアミドで選択抽出し、芳香族分と飽和分に分離させ、このうちの芳香族分を抽出した。この抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比8:1で混合したものに、19質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物A−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比8:1で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物B−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比8:1で混合したものに、4質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物C−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比6:1で混合したものに、17質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物D−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比6:1で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物E−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比6:1で混合したものに、6質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物F−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:5で混合したものに、15質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物G−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:5で混合したものに、7質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物H−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、19質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物I−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、16質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物J−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物K−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、5質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物L−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、3質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物M−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:3で混合したものに、14質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物N−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:3で混合したものに、7質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物O−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油に同体積のn−ヘプタンを加え混合した後、ジメチルホルムアミドで選択抽出し、芳香族分と飽和分に分離させ、このうちの飽和分を選択抽出した。流動接触分解残油と、この抽出飽和分とを質量比1:1で混合したものに、16質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物P−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:1で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物Q−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:1で混合したものに、6質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物R−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:2で混合したものに、19質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物S−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:2で混合したものに、10質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物T−3を得た。
原料炭組成物A−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−3の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:2で混合したものに、4質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物U−3を得た。
(1)原料炭組成物のH/C原子比の測定方法
原料炭組成物の全水素の測定は、試料を酸素気流中750℃で完全燃焼させ、燃焼ガスより生成した水分量を電量滴定法(カール・フィッシャー法)で測定した。また原料炭組成物試料を1150℃の酸素気流中で燃焼させ、二酸化炭素(一部一酸化炭素)に変換され過剰の酸素気流に搬送されてCO2+CO赤外線検出器により、全炭素分を測定した。原料炭組成物のH/Cは、全水素分(TH(質量%))を水素の原子量を除した値と、全炭素分(TC(質量%))を炭素の原子量を除した値の比率で算出した。原料炭組成物A−3〜U−3のH/C値は表3に示された通りである。
鋼製シリンダー(内径25.4mm、長さ304.8mm)に20メッシュ〜30メッシュの試料2gと直径5/16inch(7.9mm)の鋼球12個を入れ、鉛直面を管と直角方向に25rpmで800回転させたのち(すなわち、シリンダーを立てた状態から上下が入れ替わるように、回転軸を水平にして、あたかもプロペラが回転するように回転させる)、48メッシュでふるい分け、試料に対するふるい上の質量の割合を、パーセントで算出した。原料炭組成物A−3〜U−3のマイクロ強度は表13に示された通りである。
次に、カルサインコークスの製造方法を説明する。硫黄分3.1質量%の常圧蒸留残油を、触媒存在下、水素化分解率が25%以下となるように水素化脱硫し、水素化脱硫油を得た。水素化脱硫条件は、全圧180MPa、水素分圧160MPa、温度380℃である。また、脱硫減圧軽油(硫黄分500質量ppm、15℃における密度0.88g/cm3)を流動接触分解し、流動接触分解残油を得た。この流動接触分解残油を、ジメチルホルムアミドで選択抽出し、芳香族分と飽和分に分離させ、このうちの芳香族分を抽出した。この抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比8:1で混合して重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理した後、SUS304製のハンマーミル(ハンマー直径500mm)を用いて粒径2mm以上の粒子が0.1質量%となるように粗粉砕した後、ロータリーキルンを用い1400℃で炭化することによりカルサインコークスを得た。
得られたカルサインコークスを機械式粉砕機(スーパーローターミル/日清エンジニアリング社製)で粉砕し、精密空気分級機(ターボクラシファイヤー/日清エンジニアリング社製)で分級することにより、表3に記載の平均粒径を有するカルサインコークスの粉体を得た。ここで、カルサインコークスの平均粒径は、堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA950を用いて測定した。
得られた原料炭組成物K−3の粉体と、平均粒径2.0μmのカルサインコークスとを、原料炭組成物K−3に対してカルサインコークスが0.5質量%となる比率で予め混合し、ホソカワミクロン社製の「ノビルタ130型」へ、充填体積が500ccになるように投入し、ブレードの回転数を3500rpm、処理温度は130℃程度にコントロールして、処理時間60分の条件で運転して圧縮剪断応力を付与することにより複合粉体を得た。
この複合粉体を、高砂工業社製のローラーハースキルンで、窒素ガス気流下、最高到達温度が1200℃、最高到達温度保持時間が5時間となるように炭化した。得られた炭素材料を坩堝に投入し、電気炉に設置して、80L/分の窒素ガス気流中、最高到達温度2800℃で黒鉛化した。このとき昇温速度は200℃/時間、最高到達温度の保持時間は3時間、降温速度は1000℃までが100℃/時間とし、その後窒素気流を保持させた状態で室温まで放冷させることにより黒鉛材料を得た。得られた黒鉛材料のX線広角回折法によって測定される(112)回折線の結晶子の大きさLc(112)は7.9nmであった。
実施例16〜31、および比較例19〜46では、原料炭組成物A−3〜U−3の粉体と、カルサインコークスとを混合し、圧縮剪断応力を付与して複合粉体を得た後、実施例1と同様の条件により炭化及び黒鉛化して黒鉛材料を得た。カルサインコークスの平均粒径や混合量、圧縮剪断応力を付与する条件は、表3に示すとおりである。ここで、実施例16〜28、および比較例19〜46については、圧縮剪断応力を付与する装置として、ホソカワミクロン社製の「ノビルタ130型」を使用し、実施例29、30では、日本コークス工業社製の「COMPOSI CP−15」、そして、実施例31では、ホソカワミクロン社製の「メカノフュージョンAMS−Lab」を使用した。尚、表3において、「ノビルタ130型」を「N」と、「COMPOSI CP−15」を「C」、「メカノフュージョンAMS−Lab」を「M」と簡略化して表記した。圧縮剪断応力を付与する装置以外の装置は、全て実施例15に記載したものと同じ装置を使用した。
得られた黒鉛材料に、内部標準としてSi標準試料を5質量%混合し、ガラス製試料ホルダー(25mmφ×0.2mmt)に詰め、日本学術振興会117委員会が定めた方法(炭素2006,No.221,P52−60)に基づき、広角X線回折法で測定を行い、炭素材料の結晶子の大きさLc(112)を算出した。X線回折装置は(株)リガク社製ULTIMA IV、X線源はCuKα線(KβフィルターNiを使用)、X線管球への印可電圧及び電流は40kV及び40mAとした。
得られた回折図形についても、日本学術振興会117委員会が定めた方法(炭素2006,No.221,P52−60)に準拠した方法で解析を行った。具体的には、測定データにスムージング処理、バックグラウンド除去の後、吸収補正、偏光補正、Lorentz補正を施し、Si標準試料の(422)回折線のピーク位置、及び値幅を用いて、黒鉛粉末の(112)回折線に対して補正を行い、結晶子サイズを算出した。なお、結晶子サイズは、補正ピークの半値幅から以下のScherrerの式を用いて計算した。測定・解析は3回ずつ実施し、その平均値をLc(112)とした。黒鉛材料のLc(112)が測定された結果は、表3に示された通りである。
(1)電池の作製方法
図1に作製した電池10の断面図を示す。図1には、負極11、負極集電体12、正極13、正極集電体14、セパレータ15、アルミラミネート外装16が示されている。
正極13は、正極材料である平均粒子径6μmのニッケル酸リチウム(戸田工業社製LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)と、結着剤のポリフッ化ビニリデン(クレハ社製KF#1320)、およびアセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)とを質量比で89:6:5に混合し、N−メチル−2−ピロリジノンを加えて混練した後、ペースト状にして、厚さ30μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、乾燥及び圧延操作を行い、塗布部のサイズが、幅30mm、長さ50mmとなるように切断されたシート電極である。このとき単位面積当たりの塗布量は、ニッケル酸リチウムの質量として、10mg/cm2となるように設定した。
このシート電極の一部は、シートの長手方向に対して垂直に正極合剤が掻き取られ、その露出したアルミニウム箔が塗布部の正極集電体14(アルミニウム箔)と一体化して繋がっており、正極リード板としての役割を担っている。
負極11は、負極材料である前記実施例15〜31及び比較例19〜46で得られた黒鉛材料と、結着剤のポリフッ化ビニリデン(クレハ社製KF#9310)、およびアセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)とを質量比で91:2:8に混合し、N−メチル−2−ピロリジノンを加えて混練した後、ペースト状にして、厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥及び圧延操作を行い、塗布部のサイズが、幅32mm、長さ52mmとなるように切断されたシート電極である。このとき単位面積当たりの塗布量は、黒鉛材料の質量として、6mg/cm2となるように設定した。
このシート電極の一部はシートの長手方向に対して垂直に負極合剤が掻き取られ、その露出した銅箔が塗布部の負極集電体12(銅箔)と一体化して繋がっており、負極リード板としての役割を担っている。
このようにして乾燥された正極13及び負極11を、正極13の塗布部と負極11の塗布部とが、ポリプロピレン製のマイクロポーラスフィルム(セルガード社製#2400)を介して対向させる状態で積層し、ポリイミドテープで固定した。なお、正極13及び負極11の積層位置関係は、負極11の塗布部に投影される正極塗布部の周縁部が、負極塗布部の周縁部の内側で囲まれるように対向させた。得られた単層電極体を、アルミラミネートフィルムで包埋させ、電解液を注入し、前述の正・負極リード板がはみ出した状態で、ラミネートフィルムを熱融着することにより、密閉型の単層ラミネート電池10を作製した。使用した電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートが体積比で3:7に混合された溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)が1mol/Lの濃度となるように溶解されたものである。
得られた電池を25℃の恒温室内に設置し、以下に示す充放電試験を行った。
先ず1.5mAの電流で、電池電圧が4.2Vとなるまで定電流で充電した。10分間休止の後、同じ電流で電池電圧が3.0Vとなるまで定電流で放電する充放電サイクルを10回繰り返した。この充放電サイクルは、電池の異常を検知するための予備試験であるため、本実施例および比較例における充放電サイクル試験のサイクル数には含まれない。この予備試験により、本実施例および比較例で作製された電池は、全て異常がないことを確認した上で、以下の本試験を実施した。
本試験として、充電電流を15mA、充電電圧を4.2V、充電時間を3時間とした定電流/定電圧充電を行い、1分間休止の後、同じ電流(15mA)で電池電圧が3.0Vとなるまで定電流で放電させた。同様の条件の充放電を5サイクル繰り返し、第5サイクル目の放電容量を「初期放電容量」とした。第6サイクル目は、同様な条件で充電を行った状態で60℃の恒温室内に設置し60日間放置した。その後恒温室内を25℃に設定し、電池を5時間放置したのち放電した。その後前述した条件と同様な条件の充放電サイクルを5回繰り返し、第5サイクル目の放電容量を「60日間保持後の放電容量」とした。
保存特性を表す指標として、「初期放電容量」に対する「60℃保持後の放電容量」の
割合(%)を算出し、「60日間保持後の容量維持率」(%)とした。
表4に実施例および比較例に記載した黒鉛材料を用いて負極材料評価用セルおよび電池を作製し、電池特性を評価した際の「初期放電容量」(mAh)、「60日間保持後の放電容量」(mAh)、および「60日間保持後の容量維持率」(%)を示す。
この理由として、原料炭組成物の粉体に混合するカルサインコークスの量が原料炭組成物に対して0.5質量%未満の場合、得られた黒鉛材料は、導入された結晶化度の低い領域が極わずかである。そのために、このような黒鉛材料を用いたリチウムイオン二次電池では、電解液の黒鉛層間への共挿入を抑制することができず、負極の漏れ電流が増大する結果、正極との漏れ電流との差が大きくなるため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下するものと考えられる。
この理由として、原料炭組成物の粉体と混合するカルサインコークスの量が原料炭組成物に対して10質量%より多い場合、圧縮剪断応力を付与して得られる複合粉体は、原料炭組成物の粒子表面にカルサインコークスが付着した、表面の凹凸が非常に大きな複合粉体となり、この複合粉体を炭化及び黒鉛化して得られた黒鉛材料の比表面積が極端に大きくなる。そのため、このような黒鉛材料を用いたリチウムイオン二次電池では、負極における電解液の分解が増大し、負極の漏れ電流が増大する結果、正極との漏れ電流との差が大きくなるため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下するものと考えられる。
この理由としては、以下のとおりと考えられる。すなわち、カルサインコークスの平均粒径が3.0μmより大きな場合、圧縮剪断応力を付与してもカルサインコークスが原料炭組成物の粒子表面に埋め込まれない。そのために、複合粉体としては、原料炭組成物の粒子表面にカルサインコークスが付着した、表面の凹凸が非常に大きなものが得られてしまい、この複合粉体を炭化及び黒鉛化すると、得られた黒鉛材料の比表面積が極端に大きくなる。そのため、これらの黒鉛材料を用いたリチウムイオン二次電池では、負極における電解液の分解が増大し、負極の漏れ電流が増大する結果、正極との漏れ電流との差が大きくなるため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下するものと考えられる。
(1)原料炭組成物A−4
硫黄分3.1質量%の常圧蒸留残油を、触媒存在下、水素化分解率が25%以下となるように水素化脱硫し、水素化脱硫油を得た。水素化脱硫条件は、全圧180MPa、水素分圧160MPa、温度380℃である。また、脱硫減圧軽油(硫黄分500質量ppm、15℃における密度0.88g/cm3)を流動接触分解し、流動接触分解残油を得た。この流動接触分解残油を、ジメチルホルムアミドで選択抽出し、芳香族分と飽和分に分離させ、このうちの芳香族分を抽出した。この抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比8:1で混合したものに、19質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物A−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比8:1で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物B−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比8:1で混合したものに、4質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物C−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比6:1で混合したものに、17質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物D−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比6:1で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物E−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油の抽出芳香族分と水素化脱硫油とを質量比6:1で混合したものに、6質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物F−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:5で混合したものに、15質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物G−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:5で混合したものに、7質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物H−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、19質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物I−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、16質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物J−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物K−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、5質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物L−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:4で混合したものに、3質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物M−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:3で混合したものに、14質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物N−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた水素化脱硫油と流動接触分解残油とを質量比1:3で混合したものに、7質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物O−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油に同体積のn−ヘプタンを加え混合した後、ジメチルホルムアミドで選択抽出し、芳香族分と飽和分に分離させ、このうちの飽和分を選択抽出した。流動接触分解残油と、この抽出飽和分とを質量比1:1で混合したものに、16質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物P−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:1で混合したものに、11質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物Q−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:1で混合したものに、6質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物R−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:2で混合したものに、19質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物S−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:2で混合したものに、10質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物T−4を得た。
原料炭組成物A−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油と、原料炭組成物P−4の製造方法と同様にして得られた流動接触分解残油とn−ヘプタンの混合物の抽出飽和分とを質量比1:2で混合したものに、4質量%となるように脱硫脱瀝油を加え(脱硫脱瀝油を含めた混合物全体で100質量%)、重質油組成物を得た。この重質油組成物をディレードコーカー装置に導入して、不活性ガス雰囲気下、550℃でコーキング処理し、原料炭組成物U−4を得た。
(1)原料炭組成物のH/C原子比の測定方法
原料炭組成物の全水素の測定は、試料を酸素気流中750℃で完全燃焼させ、燃焼ガスより生成した水分量を電量滴定法(カール・フィッシャー法)で測定した。また原料炭組成物試料を1150℃の酸素気流中で燃焼させ、二酸化炭素(一部一酸化炭素)に変換され過剰の酸素気流に搬送されてCO2+CO赤外線検出器により、全炭素分を測定した。原料炭組成物のH/Cは、全水素分(TH(質量%))を水素の原子量を除した値と、全炭素分(TC(質量%))を炭素の原子量を除した値の比率で算出した。原料炭組成物A−4〜U−4のH/C値は表5に示された通りである。
鋼製シリンダー(内径25.4mm、長さ304.8mm)に20メッシュ〜30メッシュの試料2gと直径5/16inch(7.9mm)の鋼球12個を入れ、鉛直面を管と直角方向に25rpmで800回転させたのち(すなわち、シリンダーを立てた状態から上下が入れ替わるように、回転軸を水平にして、あたかもプロペラが回転するように回転させる)、48メッシュでふるい分け、試料に対するふるい上の質量の割合を、パーセントで算出した。原料炭組成物A−4〜U−4のマイクロ強度は表5に示された通りである。
得られた原料炭組成物K−4の粉体と、原料炭組成物K−4に対して0.5質量%のアセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)とを予め混合し、ホソカワミクロン社製の「ノビルタ130型」へ、充填体積が500ccになるように投入し、ブレードの回転数を3500rpm、処理温度は130℃程度にコントロールして、処理時間60分の条件で運転して圧縮剪断応力を付与することにより複合粉体を得た。
この複合粉体を、高砂工業社製のローラーハースキルンで、窒素ガス気流下、最高到達温度が1200℃、最高到達温度保持時間が5時間となるように炭化した。得られた炭素材料を坩堝に投入し、電気炉に設置して、80L/分の窒素ガス気流中、最高到達温度2800℃で黒鉛化した。このとき昇温速度は200℃/時間、最高到達温度の保持時間は3時間、降温速度は1000℃までが100℃/時間とし、その後窒素気流を保持させた状態で室温まで放冷させることにより黒鉛材料を得た。得られた黒鉛材料のX線広角回折法によって測定される(112)回折線の結晶子の大きさLc(112)は7.2nmであった。
実施例33〜44、および比較例47〜70では、原料炭組成物A−4〜U−4の粉体と、アセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)とを混合し、圧縮剪断応力を付与して複合粉体を得た後、実施例32と同様の条件により炭化及び黒鉛化し黒鉛材料を得た。アセチレンブラックの混合量、圧縮剪断応力を付与する条件は、表5に示すとおりである。ここで、実施例33〜41、および比較例47〜70については、圧縮剪断応力を付与する装置として、ホソカワミクロン社製の「ノビルタ130型」を使用し、実施例42、43では、日本コークス工業社製の「COMPOSI CP−15」、そして、実施例44では、ホソカワミクロン社製の「メカノフュージョンAMS−Lab」を使用した。尚、表5において、「ノビルタ130型」を「N」と、「COMPOSI CP−15」を「C」、「メカノフュージョンAMS−Lab」を「M」と簡略化して表記した。圧縮剪断応力を付与する装置以外の装置は、全て実施例32に記載したものと同じ装置を使用した。
得られた黒鉛材料に、内部標準としてSi標準試料を10質量%混合し、ガラス製試料ホルダー(25mmφ×0.2mmt)に詰め、日本学術振興会117委員会が定めた方法(炭素2006,No.221,P52−60)に基づき、広角X線回折法で測定を行い、炭素材料の結晶子の大きさLc(112)を算出した。X線回折装置は(株)リガク社製ULTIMA IV、X線源はCuKα線(KβフィルターNiを使用)、X線管球への印可電圧及び電流は40kV及び40mAとした。
得られた回折図形についても、日本学術振興会117委員会が定めた方法(炭素2006,No.221,P52−60)に準拠した方法で解析を行った。具体的には、測定データにスムージング処理、バックグラウンド除去の後、吸収補正、偏光補正、Lorentz補正を施し、Si標準試料の(422)回折線のピーク位置、及び値幅を用いて、黒鉛粉末の(112)回折線に対して補正を行い、結晶子サイズを算出した。なお、結晶子サイズは、補正ピークの半値幅から以下のScherrerの式を用いて計算した。測定・解析は3回ずつ実施し、その平均値をLc(112)とした。黒鉛材料のLc(112)が測定された結果は、表5に示された通りである。
(1)電池の作製方法
図1に作製した電池10の断面図を示す。図1には、負極11、負極集電体12、正極13、正極集電体14、セパレータ15、アルミラミネート外装16が示されている。
正極13は、正極材料である平均粒子径6μmのニッケル酸リチウム(戸田工業社製LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)と、結着剤のポリフッ化ビニリデン(クレハ社製KF#1320)、およびアセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)とを質量比で89:6:5に混合し、N−メチル−2−ピロリジノンを加えて混練した後、ペースト状にして、厚さ30μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、乾燥及び圧延操作を行い、塗布部のサイズが、幅30mm、長さ50mmとなるように切断されたシート電極である。このとき単位面積当たりの塗布量は、ニッケル酸リチウムの質量として、10mg/cm2となるように設定した。
このシート電極の一部は、シートの長手方向に対して垂直に正極合剤が掻き取られ、その露出したアルミニウム箔が塗布部の正極集電体14(アルミニウム箔)と一体化して繋がっており、正極リード板としての役割を担っている。
負極11は、負極材料である前記実施例32〜44及び比較例47〜70で得られた黒鉛材料と、結着剤のポリフッ化ビニリデン(クレハ社製KF#9310)、およびアセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)とを質量比で91:2:8に混合し、N−メチル−2−ピロリジノンを加えて混練した後、ペースト状にして、厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥及び圧延操作を行い、塗布部のサイズが、幅32mm、長さ52mmとなるように切断されたシート電極である。このとき単位面積当たりの塗布量は、黒鉛材料の質量として、6mg/cm2となるように設定した。
このシート電極の一部はシートの長手方向に対して垂直に負極合剤が掻き取られ、その露出した銅箔が塗布部の負極集電体12(銅箔)と一体化して繋がっており、負極リード板としての役割を担っている。
このようにして乾燥された正極13及び負極11を、正極13の塗布部と負極11の塗布部とが、ポリプロピレン製のマイクロポーラスフィルム(セルガード社製#2400)を介して対向させる状態で積層し、ポリイミドテープで固定した。なお、正極13及び負極11の積層位置関係は、負極11の塗布部に投影される正極塗布部の周縁部が、負極塗布部の周縁部の内側で囲まれるように対向させた。得られた単層電極体を、アルミラミネートフィルムで包埋させ、電解液を注入し、前述の正・負極リード板がはみ出した状態で、ラミネートフィルムを熱融着することにより、密閉型の単層ラミネート電池10を作製した。使用した電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートが体積比で3:7に混合された溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)が1mol/Lの濃度となるように溶解されたものである。
得られた電池を25℃の恒温室内に設置し、以下に示す充放電試験を行った。
先ず1.5mAの電流で、電池電圧が4.2Vとなるまで定電流で充電した。10分間休止の後、同じ電流で電池電圧が3.0Vとなるまで定電流で放電する充放電サイクルを10回繰り返した。この充放電サイクルは、電池の異常を検知するための予備試験であるため、本実施例および比較例における充放電サイクル試験のサイクル数には含まれない。この予備試験により、本実施例および比較例で作製された電池は、全て異常がないことを確認した上で、以下の本試験を実施した。
本試験としては、上記予備試験後の電池を60℃の恒温室内に設置し5時間放置し、充放電試験を開始した。開始後第1サイクル目の放電容量を「初期放電容量」とした。75mAの電流で、電池電圧が4.2Vとなるまで定電流で充電し、1分間休止の後、同じ電流で電池電圧が3.0Vとなるまで定電流で放電する充放電サイクルを設定し、このサイクルを2000回繰り返した。充放電サイクルの容量維持率として、「初期放電容量」に対する「第2000サイクル目の放電容量」の割合(%)を算出し、「2000サイクル後の容量維持率」(%)とした。
表6に実施例および比較例に記載した黒鉛材料を用いて負極材料評価用セルおよび電池を作製し、電池特性を評価した際の「初期放電容量」(mAh)、「第2000サイクル目の放電容量」(mAh)、「2000サイクル後の容量維持率」(%)を示す。
この理由として、原料炭組成物の粉体と混合するアセチレンブラックの量を原料炭組成物に対して0.5質量%未満の場合、得られた黒鉛材料では、導入された結晶化度の低い領域が極わずかである。そのために、このような黒鉛材料を用いたリチウムイオン二次電池では、電解液の黒鉛層間への共挿入を抑制することができず、負極の漏れ電流が増大する結果、正極との漏れ電流との差が大きくなるため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下するものと考えられる。
この理由として、原料炭組成物の粉体と混合するアセチレンブラックの量が原料炭組成物に対して10質量%より多い場合、圧縮剪断応力を付与して得られる複合粉体は、原料炭組成物の粒子表面にアセチレンブラックが付着した、表面の凹凸が非常に大きな複合粉体となり、この複合粉体を炭化及び黒鉛化して得られた黒鉛材料の比表面積が極端に大きくなる。そのため、このような黒鉛材料を用いたリチウムイオン二次電池では、負極における電解液の分解が増大し、負極の漏れ電流が増大する結果、正極との漏れ電流との差が大きくなるため、正・負極の容量の作動領域が変化し、寿命特性が低下するものと考えられる。
11 正極
12 正極集電体
13 負極
14 負極集電体
15 セパレータ
16 アルミラミネート外装
17 外装
30 装置
31 羽根
32 ハウジング
33 間隙
R1 回転方向
R2 回転方向
P 粉体
Claims (6)
- 重質油組成物をディレードコーキングプロセスによってコーキング処理して得られる原料炭組成物を粉砕及び分級する工程と、
上記粉砕及び分級された原料炭組成物に圧縮応力と剪断応力を付与して黒鉛前駆体を得る工程と、
上記黒鉛前駆体を加熱して黒鉛化し、X線広角回折法によって測定される(112)回折線の結晶子の大きさLc(112)が4nm以上となる黒鉛材料を得る工程と
を少なくとも含むリチウムイオン二次電池負極用の黒鉛材料の製造方法であって、
上記粉砕及び分級される原料炭組成物が、水素原子Hと炭素原子Cの比率、H/C原子比0.30〜0.50を有し、且つマイクロ強度7〜17質量%を有するリチウムイオン二次電池負極用の黒鉛材料の製造方法。 - 重質油組成物をディレードコーキングプロセスによってコーキング処理して得られる原料炭組成物を粉砕及び分級して原料炭組成物の粉体を得る工程と、
上記粉砕及び分級された原料炭組成物の粉体を加熱して炭化物を得る工程と、
上記炭化物を加熱して黒鉛化し、X線広角回折法によって測定される(112)回折線の結晶子の大きさLc(112)が4nm以上となる黒鉛粒子を得る工程と、
上記黒鉛粒子に圧縮剪断応力を付与し黒鉛材料を得る工程と
を少なくとも含むリチウムイオン二次電池負極用の黒鉛材料の製造方法であって、
上記粉砕及び分級される原料炭組成物が、水素原子Hと炭素原子Cの比率、H/C原子比0.30〜0.50を有し、且つマイクロ強度7〜17質量%を有するリチウムイオン二次電池負極用の黒鉛材料の製造方法。 - 重質油組成物をディレードコーキングプロセスによってコーキング処理して得られる原料炭組成物を粉砕及び分級して原料炭組成物の粉体を得る工程と、
上記粉砕及び分級された原料炭組成物の粉体を加熱して炭化物を得る工程と、
上記炭化物を加熱して黒鉛化し、X線広角回折法によって測定される(112)回折線の結晶子の大きさLc(112)が4nm以上となる黒鉛粒子を得る工程と、上記黒鉛粒子に圧縮剪断応力を付与し黒鉛材料を得る工程と、
黒鉛材料に加熱処理を施す工程と
を少なくとも含むリチウムイオン二次電池負極用の黒鉛材料の製造方法であって、
上記粉砕及び分級される原料炭組成物が、水素原子Hと炭素原子Cの比率、H/C原子比0.30〜0.50を有し、且つマイクロ強度7〜17質量%を有するリチウムイオン二次電池負極用の黒鉛材料の製造方法。 - 重質油組成物をディレードコーキングプロセスによりコーキング処理して得られ、水素原子Hと炭素原子Cとの原子比であるH/Cが0.30〜0.50であり、且つマイクロ強度が7質量%〜17質量%である原料炭組成物と、当該原料炭組成物に対して0.5質量%〜10質量%の平均粒径0.1μm〜3.0μmのカルサインコークスとの混合物に、圧縮剪断応力を付与して、当該原料炭組成物の粒子表面に当該カルサインコークスを埋め込んだ複合粉体を得る工程と、
前記複合粉体を加熱して炭化物を得る工程と、
前記炭化物を加熱して黒鉛化し、X線広角回折法によって測定される(112)回折線の結晶子の大きさであるLc(112)が4nm〜30nmである黒鉛材料とする工程と、
を少なくとも含むリチウムイオン二次電池負極用の黒鉛材料の製造方法。 - 重質油組成物をディレードコーキングプロセスによりコーキング処理して得られ、水素原子Hと炭素原子Cとの原子比であるH/Cが0.30〜0.50であり、且つマイクロ強度が7質量%〜17質量%である原料炭組成物と、当該原料炭組成物に対して0.5質量%〜10質量%のアセチレンブラックとの混合物に、圧縮剪断応力を付与して、当該原料炭組成物の粒子表面に当該アセチレンブラックを埋め込んだ複合粉体を得る工程と、
前記複合粉体を加熱して炭化物を得る工程と、
前記炭化物を加熱して黒鉛化し、X線広角回折法によって測定される(112)回折線の結晶子の大きさであるLc(112)が4nm〜30nmである黒鉛材料とする工程と、
を少なくとも含むリチウムイオン二次電池負極用の黒鉛材料の製造方法。 - 上記重質油組成物が、水素化脱硫油、流動接触分解残油、及び脱硫脱瀝油からなる群から選ばれる2種類以上を含む請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池負極用の黒鉛材料の製造方法。
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