JP7178269B2 - 人造黒鉛材料、人造黒鉛材料の製造方法、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
リチウムイオン二次電池の負極材料として、人造黒鉛材料などの黒鉛が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
また、本発明は、上記の人造黒鉛材料の製造方法、上記の人造黒鉛材料を含むリチウムイオン二次電池用負極、およびこの負極を用いた0℃以下の低温で充放電が繰り返されても放電容量が劣化しにくいリチウムイオン二次電池を提供することを課題とする。
レーザー回折式粒度分布測定装置により算出される体積基準表面積が0.22~1.70m2/cm3であり、
吸油量が67~147mL/100gであり、
窒素吸着比表面積が3.1~8.2m2/g
であることを特徴とする人造黒鉛材料。
原料油組成物をディレードコーキングプロセスによってコーキング処理して原料炭組成物を生成する工程と、
前記原料炭組成物を粉砕して原料炭粉体を得る工程と、
前記原料炭粉体を熱処理して黒鉛粉体を得る工程と、
前記黒鉛粉体を粉砕する工程とを、少なくとも含む人造黒鉛材料の製造方法。
[3]前記原料油組成物は、ノルマルパラフィン含有率が5~20質量%であり、
Knight法により求められた芳香族指数faが0.3~0.65である[2]に記載の人造黒鉛材料の製造方法。
[5][4]に記載の負極を有するリチウムイオン二次電池。
本実施形態の人造黒鉛材料は、下記(1)~(4)の条件を全て満たすものである。
(1)X線広角回折法によって得られた(112)回折線から算出されるc軸方向の結晶子の大きさL(112)が4~30nmである。
(2)レーザー回折式粒度分布測定装置により算出される体積基準表面積が0.22~1.70m2/cm3である。
(3)吸油量が67~147mL/100gである。
(4)窒素吸着比表面積が3.1~8.2m2/gである。
L(112)が4nm未満の人造黒鉛材料は、結晶組織の発達が不十分である。このため、L(112)が4nm未満の人造黒鉛材料を含む負極を有するリチウムイオン二次電池は、容量が小さく、好ましくない(例えば、非特許文献2参照)。
粒度分布は、粒子径(μm)と頻度(%)のヒストグラムとして表現するが、頻度には単位重量当たりの粒子数の情報は全く含まれていない。同様に粒度分布から求められる体積基準表面積にも、単位重量当たりの粒子数の情報は全く含まれていない。
また、黒鉛粉体の剥離的な粉砕とは、黒鉛の化学結合の切断を伴わない粉砕であり、黒鉛の面方向に対して略平行な剥離が生じる粉砕であることを意味する。
すなわち、窒素吸着比表面積が8.2g/m2を超える人造黒鉛材料では、上述したように、比表面積のうち、割断的な粉砕で生じたエッヂが占める面積の割合が高すぎる。このため、この人造黒鉛材料を含む負極を有するリチウムイオン電池では、負極の充放電効率が急速に低下しやすく、正極の充放電効率との差が急速に拡大する。その結果、0℃以下の低温で充放電が繰り返されることによって、リチウムイオン二次電池の負極にリチウム金属の析出が起こらなくても、放電容量の劣化が非常に大きくなってしまう。
本実施形態の人造黒鉛材料は、例えば、以下に示す製造方法により製造できる。
すなわち、原料油組成物をディレードコーキングプロセスによってコーキング処理して原料炭組成物を生成する工程と、原料炭組成物を粉砕して原料炭粉体を得る工程と、原料炭粉体を熱処理して黒鉛粉体を得る工程と、黒鉛粉体を粉砕する工程とを行う。
本実施形態の人造黒鉛材料の製造方法において用いられる原料油組成物としては、例えば、流動接触分解油のボトム油(FCC DO)、高度な水添脱硫処理を施した重質油、減圧蒸留残油(VR)、石炭液化油、石炭の溶剤抽出油、常圧蒸留残油、シェールオイル、タールサンドビチューメン、ナフサタールピッチ、コールタールピッチ、エチレンボトム油などの重質油が挙げられる。また、原料油組成物としては、上記のいずれかの重質油に、水素化精製などの各種の処理を施したものなどを用いてもよい。
原料油組成物としては、単独の重質油を用いてもよいし、二種類以上の重質油を混合して用いてもよい。原料油組成物として、二種類以上の重質油を混合して用いる場合、各重質油の配合比率は各重質油の性状に応じて適宜調整できる。なお、各重質油の性状は、原油の種類、原油から重質油が得られるまでの処理条件等によって異なる。
原料油組成物としては、ノルマルパラフィン含有率および芳香族指数faが上記の範囲であって、密度Dが0.91~1.02g/cm3であるものがより好ましく、さらに粘度Vが10~220mm2/sec.であるものが特に好ましい。
原料油組成物をディレードコーキングプロセスによってコーキング処理する方法は、高品質の人造黒鉛材料の原料を大量生産するために大変適している。
コーキング処理としては、例えば、ディレードコーカーを用いて原料油組成物を熱分解して原料炭組成物を得る処理を用いることができる。ディレードコーカーの条件としては、例えば、圧力0.1~0.8MPa、温度400~600℃の範囲とすることが好ましい。コーキング処理における圧力は、0.1~0.6MPaであることがより好ましい。コーキング処理における温度は490~540℃であることがより好ましい。
また、コーキング処理における温度が400~600℃であると、原料油組成物から良好なメソフェーズを成長させることができる。
次に、コーキング処理して生成した原料炭組成物を粉砕して原料炭粉体を得る工程を行う。原料炭組成物を粉砕して原料炭粉体を得る方法としては、ハンマー式ミルを用いる方法など公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
次に、原料炭粉体を熱処理して黒鉛粉体を得る工程を行う。
本実施形態の人造黒鉛材料の製造方法における原料炭粉体の熱処理は、原料炭粉体から揮発成分を除去し、脱水、熱分解して、固相黒鉛化反応させるために行う。この熱処理を行うことにより、安定な品質の人造黒鉛材料が得られる。
炭化処理としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下、最高到達温度500~1500℃、好ましくは900~1500℃で、最高到達温度の保持時間0~10時間の加熱処理を行う方法が挙げられる。
本実施形態の人造黒鉛材料の製造方法において、原料炭粉体を熱処理して得た黒鉛粉体を粉砕する方法としては、気流式ジェットミルを用いる方法など公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
以上の工程を行うことにより、本実施形態の人造黒鉛材料が得られる。
(a)原料油組成物のノルマルパラフィン含有率および芳香族指数fa(原料油組成物の性状)を制御する。
(b)原料炭組成物の粉砕後の体積基準表面積(以下、「原料体積基準表面積」と略記する場合がある)と、熱処理後の黒鉛粉体を粉砕した後の体積基準表面積(以下、「黒鉛体積基準表面積」と略記する場合がある)の差を制御する。
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極について説明する。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極は、本実施形態の人造黒鉛材料を含む黒鉛材料と、バインダー(結着剤)と、必要に応じて含有される導電助剤とを含む。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極は、本実施形態の人造黒鉛材料を含むものであればよく、必要に応じて、黒鉛材料として、本実施形態の人造黒鉛材料だけでなく、公知の黒鉛材料を1種または2種以上含んでいてもよい。
天然黒鉛系材料としては、天然から産出される黒鉛状物、前記黒鉛状物を高純度化したもの、その後、球状にしたもの(メカノケミカル処理を含む)、高純度品や球状品の表面を別の炭素で被覆したもの(例えば、ピッチコート品、CVDコート品等)、プラズマ処理をしたものなどが挙げられる。
本実施形態の人造黒鉛材料以外の人造黒鉛材料および天然黒鉛系材料の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、鱗片状であってもよいし、球状であってもよい。
負極合剤の中のバインダーの含有率は、黒鉛材料100質量部に対して1~30質量部程度とすることが好ましく、リチウムイオン二次電池の設計上、必要に応じて適宜設定すればよい。
導電助剤の使用量は、黒鉛材料100質量部に対して1~15質量部とすることが好ましく、リチウムイオン二次電池の設計上、必要に応じて適宜設定すればよい。
例えば、本実施形態の人造黒鉛材料を含む黒鉛材料と、バインダー(結着剤)と、必要に応じて含有される導電助剤と、溶媒とを含む混合物である負極合剤を製造する。その後、負極合剤を所定の寸法に加圧成形する方法が挙げられる。
負極合剤の加圧成形は、例えば、ロール加圧、プレス加圧などの方法を用いて行うことができる。負極合剤の加圧成形は、100~300MPa程度の圧力で行うことが好ましい。
負極集電体上に形成した乾燥した負極合剤からなる層は、例えば、ロール、プレス、もしくはこれらの組み合わせで用いる方法など公知の方法により、負極集電体と一体化することができる。
負極集電体の形状についても、特に制限なく利用可能である。具体的には、負極集電体の形状として、例えば、箔状、穴開け箔状、メッシュ状であって、全体形状が帯状であるものなどが挙げられる。
また、負極集電体としては、例えば、ポーラスメタル(発泡メタル)、カーボンペーパーなどの多孔性材料を使用してもよい。
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池について説明する。
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池の一例を示した概略断面図である。図1に示すのリチウムイオン二次電池10は、負極集電体12と一体化された負極11と、正極集電体14と一体化された正極13とを有している。図1に示すリチウムイオン二次電池10では、負極11として本実施形態の負極が用いられている。負極11と正極13とは、セパレータ15を介して対向配置されている。図1において、符号16は、アルミラミネート外装を示している。アルミラミネート外装16内には、電解液が注入されている。
活物質としては、リチウムイオン二次電池用正極に用いられる公知のものを用いることができ、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、又は導電性高分子材料を用いることができる。具体的には、活物質として、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、及び複酸化物(LiCoXNiYMnZO2、X+Y+Z=1)、リチウムバナジウム化合物、V2O5、V6O13、VO2、MnO2、TiO2、MoV2O8、TiS2、V2S5、VS2、MoS2、MoS3、Cr3O8、Cr2O5、オリビン型LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Fe)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン等の導電性ポリマー、多孔質炭素等及びこれらの混合物などを挙げることができる。
導電助剤としては、上述した負極11に用いられる導電助剤と同様のものを用いることができる。
正極集電体14としては、上述した負極集電体と同様のものを用いることができる。
なお、リチウムイオン二次電池が、正極と負極とが直接接触しない構造である場合には、セパレータは不要である。
電解液としては、電気伝導性の観点から有機電解液を用いることが好ましい。
例えば、リチウム塩として、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等が挙げられる。
具体的には、本発明のリチウムイオン二次電池の構造は、図1に示すリチウムイオン二次電池10に限定されるものではない。
リチウムイオン二次電池の構造は、例えば、帯状に成型された正極と負極とが、セパレータを介して渦巻状に巻回された巻回電極群を、電池ケースに挿入し、封口した構造であってもよい。また、リチウムイオン二次電池の構造は、平板状に成型された正極と負極とが、セパレータを介して順次積層された積層式極板群を外装体中に封入した構造であってもよい。
(実施例1)
硫黄分3.1質量%の常圧蒸留残油を、触媒存在下、水素化分解率が25%以下となるように水素化脱硫し、水素化脱硫油(A)を得た。水素化脱硫条件は、全圧18MPa、水素分圧16MPa、温度380℃とした。
また、常圧蒸留残油を減圧蒸留し、更に水素化脱硫したもの(硫黄分380質量ppm、15℃における密度0.83g/cm3)を、反応温度530℃、全圧0.23MPa、触媒/油比13、接触時間7秒で流動接触分解し、流動接触分解残油(A)を得た。触媒としては、シリカ・アルミナ触媒に白金が担持されたものを使用した。
得られた実施例1の原料油組成物中におけるノルマルパラフィン含有率および芳香族指数faを、以下に示す方法により求めた。その結果を表1に示す。
原料油組成物中のノルマルパラフィン含有率を、キャピラリーカラムが装着されたガスクロマトグラフによって測定した。具体的には、ノルマルパラフィンの標準物質によって検定した後、溶出クロマトグラフィー法によって分離された非芳香族成分の試料をキャピラリーカラムに通して測定した。この測定値から原料油組成物の全質量を基準とした含有率(質量%)を算出した。
原料油組成物の芳香族指数faを、Knight法により求めた。具体的には、炭素の分布を13CNMR法による芳香族炭素のスペクトルとして3つの成分(A1,A2,A3)に分割した。ここで、A1は芳香族環内部炭素数(置換されている芳香族炭素と置換していない芳香族炭素の半分(13C-NMRの約40~60ppmのピークに相当))、A2は置換していない残りの半分の芳香族炭素(13C-NMRの約60~80ppmのピークに相当)、A3は脂肪族炭素数(13C-NMRの約130~190ppmのピークに相当)である。芳香族指数faは、A1,A2,A3を用いてfa=(A1+A2)/(A1+A2+A3)により求めた。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が24.5μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、後述する人造黒鉛材料の体積基準表面積と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を窒素ガス気流下1000℃で焼成(か焼)し、か焼コークスを得た。か焼としては、室温から1000℃までの昇温時間を4時間、1000℃の保持時間を4時間、1000℃から400℃までの降温時間を2時間とし、400℃以降は窒素ガスの気流を継続しながら4時間放冷する処理を行った。
得られた黒鉛粉体を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が5.2μmとなるように気流式ジェットミルで粉砕し、実施例1の人造黒鉛材料を得た。
得られた実施例1の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、窒素吸着比表面積を、以下に示す方法により求めた。また、原料体積基準表面積と人造黒鉛材料の体積基準表面積(黒鉛体積基準表面積)の測定結果から、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を算出した。それらの結果を表1に示す。
人造黒鉛材料に、内部標準としてSi標準試料を10質量%混合し、ガラス製試料ホルダー(窓枠の大きさが16mm×20mm、深さ0.2mm)に詰め、JIS R7651(2007)準拠して広角X線回折法で測定を行い、結晶子の大きさL(112)を算出した。
X線回折装置としては(株)リガク社製のULTIMA IVを用い、X線源としてはCuKα線(KβフィルターNiを使用)を用いた。また、X線管球への印可電圧及び電流を40kV及び40mAとした。
ここで、L:結晶サイズ(nm)
K:形状因子定数(=1.0)
λ:X線の波長(=0.15406nm)
θ:ブラッグ角(補正された回折角度)
β:真の半値幅(補正値)
マイクロトラック・ベル株式会社製のレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(MT3300EXII)を使用して、人造黒鉛材料の粒度分布を測定した。測定に使用した分散液は、約0.5gの人造黒鉛材料に、0.1質量%のヘキサメタ燐酸ナトリウム水溶液(数滴)と界面活性剤(数滴)とを加え、乳鉢で均質となるように十分混ぜ合わせた後、更に0.1質量%のヘキサメタ燐酸ナトリウム水溶液を40mL加え、超音波ホモジナイザーで分散させることにより作製した。得られた粒度分布の測定結果を、JIS Z 8819-2(2001)の「粒子径測定結果の表現-第2部:粒子径分布からの平均粒子径又は平均粒子直径及びモーメントの計算」のうち「5.5体積基準表面積の計算」に準拠して算出した。
JIS K 5101-13-1(2004)の「吸油量-第一節:精製あまに油法」に準拠して測定し、算出した。具体的には、精秤した人造黒鉛材料を測定板に置き、容量10mLのビュレットから、精製あまに油を滴下し、パレットナイフで精製あまに油を練り込み、完全に混錬するようにして、滴下と練りこみを繰り返した。次に、ペーストが滑らかな硬さになったところを終点とし、最後に以下の式で吸油量を算出した。
O1=100×V/m
ここでO1:吸油量(mL00g)
V:滴下したあまに油の容量(mL)
m:測定板に置いた人造黒鉛材料の質量(g)
マイクロトラック・ベル株式会社製の比表面積測定装置(BELSORP miniII)を使用し、JIS Z 8830(2013)の「ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に準拠して測定し、算出した。なお、人造黒鉛材料の予備乾燥は、減圧下300℃で3時間行った。その後、ガス流動法による窒素吸着BET多点法で比表面積を算出した。
実施例1で得た流動接触分解残油(A)に、同体積のn-ヘプタンを加え混合した後、ジメチルホルムアミドで選択抽出し、芳香族分と飽和分に分離した。このうちの飽和分を実施例2の原料油組成物として用いた。実施例2の原料油組成物中におけるノルマルパラフィン含有率および芳香族指数faを、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が30.2μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を、実施例1と同様にして焼成し、か焼コークスを得た。
得られた黒鉛粉体を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が23.4μmとなるように気流式ジェットミルで粉砕し、実施例2の人造黒鉛材料を得た。
得られた実施例2の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、窒素吸着比表面積、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
実施例1で得た水素化脱硫油(A)と、実施例2で得た流動接触分解残油(A)の芳香族分とを、質量比で45:55の割合で混合し、実施例3の原料油組成物として用いた。実施例3の原料油組成物中におけるノルマルパラフィン含有率および芳香族指数faを、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が21.4μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を、実施例1と同様にして焼成し、か焼コークスを得た。
得られた黒鉛粉体を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が11.8μmとなるように気流式ジェットミルで粉砕し、実施例3の人造黒鉛材料を得た。
得られた実施例3の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、窒素吸着比表面積、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
実施例2で得た流動接触分解残油(A)の芳香族分と、実施例1で得た減圧蒸留残油(B)の飽和分とを質量比で70:30の割合で混合し、実施例4の原料油組成物として用いた。実施例4の原料油組成物中におけるノルマルパラフィン含有率および芳香族指数faを、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が38.7μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を、グラファイトからなる坩堝に投入し、アチソン炉のブリーズに埋め込んだ後、2950℃で黒鉛化した。黒鉛化処理としては、室温から2950℃までの昇温時間を130時間、2950℃の保持時間を8時間とし、25日間放冷した後に取り出す処理を行った。
得られた実施例4の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、窒素吸着比表面積、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
実施例1で得た水素化脱硫油(A)と流動接触分解残油(A)とを質量比で25:75の割合で混合し、実施例5の原料油組成物として用いた。実施例5の原料油組成物中におけるノルマルパラフィン含有率および芳香族指数faを、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が42.6μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を、グラファイトからなる坩堝に投入し、アチソン炉のブリーズに埋め込んだ後、3150℃で黒鉛化した。黒鉛化処理としては、室温から3150℃までの昇温時間を130時間、3150℃の保持時間を19時間とし、25日間放冷した後に取り出す処理を行った。
得られた実施例5の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、窒素吸着比表面積、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
実施例2で得た流動接触分解残油(A)の芳香族分と、実施例1で得た減圧蒸留残油(B)の飽和分とを質量比で40:60の割合で混合し、比較例1の原料油組成物として用いた。比較例1の原料油組成物中におけるノルマルパラフィン含有率および芳香族指数faを、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が22.3μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を、実施例1と同様にして焼成し、か焼コークスを得た。
得られた黒鉛粉体を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が5.6μmとなるように気流式ジェットミルで粉砕し、比較例1の人造黒鉛材料を得た。
得られた比較例1の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、窒素吸着比表面積、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
実施例1で得た水素化脱硫油(A)と、実施例2で得た流動接触分解残油(A)の飽和分とを質量比で30:70の割合で混合し、比較例2の原料油組成物として用いた。比較例2の原料油組成物中におけるノルマルパラフィン含有率および芳香族指数faを、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が20.3μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を、実施例1と同様にして焼成し、か焼コークスを得た。
得られた黒鉛粉体を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が15.8μmとなるように気流式ジェットミルで粉砕し、比較例2の人造黒鉛材料を得た。
得られた比較例2の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、窒素吸着比表面積、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
実施例2で得た流動接触分解残油(A)の芳香族分と飽和分を、質量比で50:50の割合で混合し、比較例3の原料油組成物として用いた。比較例3の原料油組成物中におけるノルマルパラフィン含有率および芳香族指数faを、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が31.5μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を、実施例1と同様にして焼成し、か焼コークスを得た。
得られた黒鉛粉体を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が24.8μmとなるように気流式ジェットミルで粉砕し、比較例3の人造黒鉛材料を得た。
得られた比較例3の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、窒素吸着比表面積、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
実施例1で得た水素化脱硫油(A)と、実施例2で得た流動接触分解残油(A)の芳香族分とを質量比で7:93の割合で混合し、比較例4の原料油組成物として用いた。比較例4の原料油組成物中におけるノルマルパラフィン含有率および芳香族指数faを、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が58.5μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を、グラファイトからなる坩堝に投入し、アチソン炉のブリーズに埋め込んだ後、3050℃で黒鉛化した。黒鉛化処理としては、室温から3050℃までの昇温時間を130時間、3050℃の保持時間を20時間とし、25日間放冷した後に取り出す処理を行った。
得られた比較例4の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、窒素吸着比表面積、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
実施例2で得た流動接触分解残油(A)の芳香族分と、実施例1で得た減圧蒸留残油(B)の飽和分とを質量比で60:40の割合で混合し、比較例5の原料油組成物として用いた。比較例5の原料油組成物中におけるノルマルパラフィン含有率および芳香族指数faを、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が41.2μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を、グラファイトからなる坩堝に投入し、アチソン炉のブリーズに埋め込んだ後、3150℃で黒鉛化した。黒鉛化処理としては、室温から3150℃までの昇温時間を130時間、3150℃の保持時間を20時間とし、25日間放冷した後に取り出す処理を行った。
得られた比較例5の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、窒素吸着比表面積、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
実施例3で得た人造黒鉛材料と、比較例2で得た人造黒鉛材料とを、質量比で50:50の割合で混合した混合物からなる実施例6の人造黒鉛材料を得た。
(実施例7)
実施例3で得た人造黒鉛材料と、比較例2で得た人造黒鉛材料とを、質量比で30:70の割合で混合した混合物からなる実施例7の人造黒鉛材料を得た。
(実施例8)
実施例3で得た人造黒鉛材料と、比較例2で得た人造黒鉛材料とを、質量比で20:80の割合で混合した混合物からなる実施例8の人造黒鉛材料を得た。
以下に示す方法により、評価用電池として図1に示すリチウムイオン二次電池10を作製した。負極11、負極集電体12、正極13、正極集電体14、セパレータ15としては、それぞれ以下に示すものを用いた。
実施例1~8、比較例1~5で得た何れかの人造黒鉛材料と、1.5質量%の濃度に調整された結着剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC(第一工業製薬株式会社製のBSH-6))水溶液と、48質量%の濃度で結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)が分散した水溶液とを、固形分の質量比で98:1:1の割合で混合し、ペースト状の負極合剤を得た。得られた負極合剤を、負極集電体12としての厚さ18μmの銅箔の片面全面に塗布し、乾燥及び圧延操作を行い、負極合剤からなる層である負極11が負極集電体12上に形成された負極シートを得た。負極シートにおける負極合剤の単位面積当たりの塗布量は、黒鉛材料の質量として約10mg/cm2となるように調整した。
正極材料である平均粒子径10μmのコバルト酸リチウムLiCoO2(日本化学工業社製のセルシードC10N)と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製KF#1120)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)とを質量比で89:6:5に混合し、溶媒としてのN-メチル-2-ピロリジノンを加えて混練し、ペースト状の正極合剤を得た。得られた正極合剤を、正極集電体14としての厚さ30μmのアルミニウム箔の片面全面に塗布し、乾燥及び圧延操作を行い、正極合剤からなる層である正極13が正極集電体14上に形成された正極シートを得た。正極シートにおける正極合剤の単位面積当たりの塗布量は、コバルト酸リチウムの質量として、約20mg/cm2となるように調整した。
セパレータ15としては、セルロース系不織布(日本高度紙(株)製のTF40-50)を用いた。
その後、正極リード板および負極リード板がはみ出した状態で、アルミラミネート外装16を熱融着した。
以上の工程により、実施例1~8、比較例1~5の密閉型のリチウムイオン二次電池10を得た。
実施例1~8、比較例1~5のリチウムイオン二次電池10について、それぞれ以下に示す充放電試験を行った。
先ず、電池の異常を検知するための予備試験を行った。すなわち、電池を25℃の恒温室内に設置し、4mAの電流で、電池電圧が4.2Vとなるまで定電流で充電し、10分間休止した後、同じ電流で電池電圧が3.0Vとなるまで定電流で放電した。これらの充電、休止、および放電を1つの充放電サイクルとし、同様の条件で充放電サイクルを3回繰り返し、予備試験とした。
この予備試験により、実施例1~8、比較例1~5の電池は、全て異常がないことを確認した。その上で、以下の本試験を実施した。なお、予備試験は、本試験のサイクル数には含まない。
次に、電池を0℃に設定された恒温槽の中に設置し、5時間放置した後、初期放電容量を求めた充放電サイクルと同じ条件で、充放電サイクルを100回繰り返した。その後、電池を再度25℃の恒温槽内に設置し、5時間放置した後、初期放電容量を求めた充放電サイクルと同じ条件で、充放電サイクルを3回繰り返し、第3サイクル目の放電容量を「0℃の充放電を繰り返した後の放電容量」とした。
その結果を表1に示す。
このことから、本発明の人造黒鉛材料を含む負極を用いたリチウムイオン二次電池は、0℃以下の温度で充放電サイクルが繰り返されても放電容量が劣化しにくいことが確認された。
Claims (4)
- X線広角回折法によって得られた(112)回折線から算出されるc軸方向の結晶子の大きさL(112)が4~30nmであり、
レーザー回折式粒度分布測定装置により算出される体積基準表面積が0.22~1.70m2/cm3であり、
吸油量が67~147mL/100gであり、
窒素吸着比表面積が3.1~8.2m2/g
であることを特徴とする人造黒鉛材料。 - 請求項1に記載の人造黒鉛材料の製造方法であって、
原料油組成物をディレードコーキングプロセスによってコーキング処理して原料炭組成物を生成する工程と、
前記原料炭組成物を粉砕して原料炭粉体を得る工程と、
前記原料炭粉体を熱処理して黒鉛粉体を得る工程と、
前記黒鉛粉体を粉砕する工程とを、少なくとも含み、
前記原料油組成物は、ノルマルパラフィン含有率が5~20質量%であり、
Knight法により求められた芳香族指数faが0.3~0.65である、人造黒鉛材料の製造方法。 - 請求項1に記載の人造黒鉛材料を含むリチウムイオン二次電池用負極。
- 請求項3に記載の負極を有するリチウムイオン二次電池。
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