JP5931711B2 - 感光体ドラム、画像形成装置および防振構造 - Google Patents

感光体ドラム、画像形成装置および防振構造 Download PDF

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Description

本発明は、静電潜像にトナーを付着させて形成したトナー像を担持する感光体ドラム、画像形成装置および防振構造に関する。
一般的に、電子写真技術による画像形成装置において、感光体ドラムの表面に形成された静電潜像をトナーによって現像し、その現像されたトナー像を記録媒体上に転写した後、定着処理を行うという手順で画像形成が行われている。また、感光体ドラムの表面に残留したトナーは、クリーニングブレードで掻き取ることで除去される。この場合、残留トナーのクリーニングを行う際に、所謂スティックスリップ振動と呼ばれるクリーニングブレードの微小振動が起こり、この振動が感光体ドラム等と共振して振動音を発生させることがあった。
このような振動音の発生を低減するため、従来から種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、感光体ドラムの振動を抑制する目的で、比重の大きな(1g/cm以上)振動抑制材料(防振部材)を弾性変形させて感光体ドラムの円筒状基体(ドラム素管)の内部に挿入し、自らの復元力により振動抑制材料を円筒状基体に密着させる技術が開示されている。
また、特許文献2には、振動低減効果を発揮させるため、比較的分厚い(3〜10mm)合成樹脂製または合成ゴム製の円筒状の防振部材を弾性変形させて感光体ドラム内に挿入し、自らの復元力により防振部材を感光体ドラム内に密着させると共に、強度を増加させたブレードホルダーにクリーニングブレードを保持させる技術が開示されている。
特開2002−149006号公報 特開2004−287360号公報
ところで、スティックスリップ振動の振動数(周波数)に対する振幅のスペクトルは、図6に示すように、基準振動数×n[Hz](nは自然数)に振幅のピーク値を持ち、且つnが大きくなるほどピーク値が指数関数的に減衰するという特徴を有している。一方、感光体ドラムの固有振動数(数kHz)は、通常、クリーニングブレードのスティックスリップ振動の基準振動数よりも大きな振動数を有している。スティックスリップ振動の基準振動数は、感光体ドラムに対するクリーニングブレードの押圧力等、使用条件によって変化するため、スティックスリップ振動の基準振動数と、感光体ドラムの固有振動数とが一致することで共振による振動音が発生する。従って、振動音を抑制するにはスティックスリップ振動の基準振動数と感光体ドラムの固有振動数とをずらすようにすることが有効である。しかしながら、上記したようにスティックスリップ振動では、振幅がピーク値となる振動数が等間隔に並んでいるため、意図的に感光体ドラムの振動数とずらすことは困難であるという問題があった。
また、上記した従来の技術では、いずれも十分な防振効果が得られないという問題があった。すなわち、特許文献1および2に記載の技術では、重い防振部材を感光体ドラム内に設けているため、感光体ドラムの固有振動数が大きく下がることとなる(図6において左方向に移動)。このため、より高い振幅をピーク値に有する振動数のスティックスリップ振動と共振し、より大きな振動音を発する虞がある。また、特許文献2に記載の技術では、クリーニングブレードが高強度のブレードホルダーに保持されているため、スティックスリップ振動の基準振動数が上昇することとなる(図6において右方向に移動)。このため、感光体ドラムと共振した場合に非常に大きな振動音が生じるという問題があった。さらに、特許文献1および2に記載の技術では、防振部材自体が弾性変形するために必要なコシを有する材料(重い材料)で防振部材を構成しているため、振動音の原因となる共振を避けるために防振部材を軽量化することが困難であった。
本発明は上記した課題を解決すべくなされたものであり、振動音の原因となる共振を避けるために防振部材の軽量化を図ることができる感光体ドラム、画像形成装置および防振構造を提供することを目的とするものである。
上記した目的を達成するため、本発明の感光体ドラムは、静電潜像にトナーを付着させて形成したトナー像を担持すると共に外周面に残留したトナーを除去するクリーニングブレードが接触する感光体ドラムであって、外周面に感光層が形成されるドラム素管と、前記ドラム素管の内周面に接する繊維質のシートからなる防振部材と、を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、繊維質のシートからなる防振部材は、比重が小さく数kHz帯の振動数での減衰が大きくなるため、感光体ドラムの固有振動数(数kHz)の低下を防止することができる。このように防振部材の軽量化を図ることで、より高い振幅を有する振動数のスティックスリップ振動との共振を避けることができるため、より大きな振動音の発生を抑制することができる。
この場合、前記防振部材は、フェルトからなることが好ましい。
この構成によれば、フェルトは、その表面が起毛状になっており自由端が多い構造であるため、ドラム素管の内周面との間に摩擦を生じさせ易くなっている。したがって、クリーニングブレードから伝搬した振動エネルギーを、熱エネルギーへと効率良く変換することができる。これにより、感光体ドラムの振動(振動音の発生)を抑制することができる。
また、この場合、前記防振部材を前記ドラム素管の内周面に押し付ける押付部材を備えたことが好ましい。
この構成によれば、押付部材によって、軽量化した防振部材をドラム素管の内周面に所望の押圧力で押し付けることができる。これにより、感光体ドラムの防振効果を担保することができる。
この場合、前記防振部材の密度は、0.4g/cm以下であり、前記防振部材と前記押付部材との合計重量が、前記ドラム素管の重量の10%以下であることが好ましい。
この構成によれば、防振部材の適度な軽量化を図ることができる。これにより、感光体ドラムの固有振動数の低下を防止することができると共に感光体ドラムの振動を抑制することができる。
また、この場合、前記押付部材は、前記防振部材の厚みが非圧縮時の厚みの30%以上70%未満になるように、前記防振部材を前記ドラム素管の内周面に押し付けることが好ましい。
この構成によれば、防振部材とドラム素管の内周面との間に、防振のために有効な摩擦を作用させることができる。これにより、振動音の発生を抑制することができる。
この場合、前記押付部材は、板状の弾性材料からなり、円筒状に丸めて前記防振部材の内側に挿入されていることが好ましい。
この構成によれば、ドラム素管の内部に設けた防振部材の内側に、円筒状に丸めた板状の押付部材を挿入すると、押付部材自らの弾性力(復元力)によって防振部材をドラム素管の内周面に押し付けることができる。この押付部材は、板状の単純な形状であるため、低コストで製造することができる。
この場合、前記押付部材は、前記防振部材の内径よりも大きな外径を有する円筒状の弾性材料からなり、軸方向にスリットが形成されていることが好ましい。
この構成によれば、押付部材は、弾性材料であるため、スリットの幅を縮めることで縮径され、ドラム素管の内部に設けた防振部材の内径より小さくすることができる。また、防振部材の内部に挿入された押付部材は、自らの弾性力(復元力)によって防振部材をドラム素管の内周面に押し付けることができる。この押付部材は、予め円筒状に形成されており、容易に縮径させることができるため、防振部材の内部に挿入する作業を円滑に行うことができる。
この場合、前記押付部材は、収縮した状態で前記防振部材の内径よりも大きな外径に形成されたコイルバネであり、前記防振部材は、前記コイルバネの外側に巻装されていることが好ましい。
この構成によれば、押付部材は、コイルバネであるため、引き延ばすことによって縮径し、ドラム素管の内部に設けた防振部材の内径より小さくすることができる。このため、押付部材を容易に防振部材の内側に挿入することができる。また、防振部材の内側に挿入された押付部材は、収縮して拡径するため、防振部材をドラム素管の内周面に押し付けることができる。
上記した目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、上記いずれかに記載の感光体ドラムを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、比重が小さく、数kHz帯の振動数での減衰が大きい防振部材により、感光体ドラムの固有振動数の低下を防止することができる。このように防振部材の軽量化を図ることで、より高い振幅を有する振動数のスティックスリップ振動との共振を避けることができるため、振動音の発生が抑制された画像形成装置を構成することができる。
また、上記した目的を達成するため、本発明の防振構造は、静電潜像にトナーを付着させて形成したトナー像を担持する感光層がドラム素管の外周面に形成され、前記感光層の外周面に残留したトナーを除去するクリーニングブレードが接触する感光体ドラムの防振構造であって、前記ドラム素管の内周面に接する繊維質のシートからなる防振部材と、前記防振部材を前記ドラム素管の内周面に押し付ける押付部材と、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、押付部材によって、軽量化した防振部材をドラム素管の内周面に所望の押圧力で押し付けることができる。これにより、スティックスリップ振動との共振を避けることができ、感光体ドラムの防振効果を担保することができる。
本発明によれば、繊維質のシートからなる防振部材を感光体ドラムの内部に設けることにより、感光体ドラムの固有振動数の低下を防止すると共に振動の発生を抑制することができる。
本発明の第1実施形態に係る画像形成装置を模式的に示す断面図である。 本発明の第1実施形態に係る感光体ドラムおよびクリーニング装置を模式的に示す断面図である。 本発明の第1実施形態に係る感光体ドラムを模式的に示す軸方向側面図であり、(a)はドラム素管および感光層を示し、(b)は(a)に加えて防振部材を示し、(c)は(b)に加えて押付部材を示している。 本発明の第2実施形態に係る押付部材を模式的に示しており、(a)は斜視図であり、(b)は軸方向側面図である。 本発明の第3実施形態に係る押付部材を模式的に示す平面図であり、(a)は収縮した状態を示し、(b)は引っ張った状態を示している。 スティックスリップ振動の振動数に対する振幅のスペクトルおよび感光体ドラムの固有振動数を示す説明図である。
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る感光体ドラムを備えた画像形成装置について説明する。
(第1実施形態)
図1および図2を参照して、本発明の画像形成装置1の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1を模式的に示す断面図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る感光体ドラム21およびクリーニング装置26を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、画像形成装置1は、用紙(図示せず)を収納した用紙収容部10と、用紙収容部10にセットされた用紙を搬送経路11に供給する給紙部12と、給紙された用紙に感光体ドラム21上のトナー像を転写する画像形成部13と、用紙に転写したトナー像を定着させる定着装置14と、トナー像を定着させた用紙の排出先となる用紙排出部15と、を備えている。
画像形成部13は、例えばモノクロの画像形成処理を行うものであり、補給用トナー(ブラック(K))を収納したトナーコンテナ20と、パーソナルコンピューター(図示せず)から送信された印刷データに含まれる画像データに基づいてトナー像を担持する感光体としての感光体ドラム21と、感光体ドラム21の表面を所定の電圧に帯電させる帯電器22と、感光体ドラム21の表面に光束(図1において矢印Pで示す)を出射して所定の静電潜像を形成する露光器23と、露光器23が形成した静電潜像をトナーによりトナー像に現像する現像器24と、そのトナー像を感光体ドラム21と協働して用紙に転写する転写ローラー25と、転写後の感光体ドラム21の表面に残留したトナーを除去させるクリーニング装置26と、感光体ドラム21の電荷を除去する除電デバイス(図示せず)と、を有している。帯電器22、露光器23、現像器24、転写ローラー25およびクリーニング装置26は、感光体ドラム21の回転方向に沿って転写のプロセス順に配置されている。
図2(図3(a)も参照)に示すように、感光体ドラム21は、アルミニウム等の導電性材料で円筒状に形成されるドラム素管30と、ドラム素管30の外側(外周面)に形成された感光層31と、を含んで構成されている。なお、感光層31は、ドラム素管30の外周面に無機光導電性材料であるアモルファスシリコンや有機光導電性材料が形成されている。
感光体ドラム21は、画像形成装置1内の用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向、すなわち図2の紙面奥行き方向(軸方向)に延び、その軸方向を水平にして配置されている。また、感光体ドラム21は、図示しない駆動装置によって、その周速度が用紙の搬送速度(例えば、150mm/s)と略同一となるように回転駆動される。
帯電器22は、感光体ドラム21の表面を所定の極性および電位で一様に帯電(例えば、帯電電位200〜1000V程度)させる。
露光器23は、光源(図示せず)から放射された各光束を、ポリゴンミラー等の偏光器(図示せず)で偏光走査しつつ、感光体ドラム21に光束を結像する。これにより、感光体ドラム21の表面に静電潜像が形成される。
現像器24は、感光体ドラム21の表面に形成された静電潜像にトナーコンテナ20から供給され、現像器24に収容されているトナーを付着させてトナー像を現像する。
転写ローラー25は、感光体ドラム21の下方に対向配置されており、搬送されてくる用紙を感光体ドラム21に圧接させ、用紙に感光体ドラム21上のトナー像を転写する。
図2に示すように、クリーニング装置26は、回転自在に軸支されたクリーニングローラー40と、感光体ドラム21の表面(感光層31の外周面)に接するクリーニングブレード41と、クリーニングブレード41により感光体ドラム21の表面から除去されたトナーを受けるトナー受け部材42と、除去されたトナー(廃トナー)を排出する排出スクリュー43と、をハウジング44の内部に備えている。
クリーニングローラー40は、感光体ドラム21と略同一の軸方向長さを有し、ハウジング44内の下部に設けられている。また、クリーニングローラー40は、その軸部の両端に配設された図示しない付勢手段により感光体ドラム21に対して押圧されており、図示しない駆動装置によって回転駆動される。なお、クリーニングローラー40の周速度は、感光体ドラム21表面の研磨を効率良く実施できるように設定されている。
クリーニングブレード41は、例えばウレタンゴム製で、感光体ドラム21の軸方向に延びる板状に形成されている。クリーニングブレード41は、その上端側をL字状のブレードホルダー45に固定され、その下端を感光体ドラム21の外周面に接触させている。なお、ブレードホルダー45は、ハウジング44内のホルダーフレーム46に固定されている。クリーニングブレード41は、図示しない付勢手段により感光体ドラム21に対して所定の圧力で押圧されており、感光体ドラム21の外周面に残留したトナー等の付着物を掻き取るようにして除去する役割を果たす。
トナー受け部材42は、クリーニングローラー40と略同一の軸方向長さを有するステンレス(SUS)製でトレイ状に形成され、クリーニングローラー40の直下に配置されている。
排出スクリュー43は、クリーニングローラー40よりハウジング44の内部側で、且つクリーニングローラー40のやや下方に設けられている。排出スクリュー43の軸方向の一端には、廃トナー回収容器(図示せず)が接続されている。排出スクリュー43は、図示しない駆動手段により回転駆動されることで、廃トナーを廃トナー回収容器に排出する役割を果たす。
図1に示すように、定着装置14は、用紙のトナー像が形成された側に配設され回転駆動される加熱ローラー47と、加熱ローラー47に対向する位置に配設され従動回転する加圧ローラー48と、を有している。用紙の表面に形成されたトナー像は、加熱ローラー47に接触することにより溶融し、用紙の裏面側から加圧ローラー48により加圧することにより、用紙に定着する。
次に、本実施形態の画像形成装置1による画像形成動作について説明する。上記の構成において、画像形成装置1に電源が投入されると、各種パラメータが初期化され、定着装置14の温度設定を行うなどの初期設定が実行される。そして、画像形成装置1に接続されたパーソナルコンピューター等から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
まず、帯電器22によって感光体ドラム21(感光層31)の表面が帯電された後、露光器23により感光体ドラム21に対して画像データに対応した露光が行われ、感光体ドラム21に静電潜像が形成される。次に、この静電潜像は、現像器24によってトナー像に現像される。そして、転写ローラー25に対し、トナー像を形成するトナーの極性と逆極性(−)の電圧(転写バイアス)が印加されることにより、用紙収容部10から搬送経路11を通って搬送されてきた用紙にトナー像が転写される。用紙に転写されたトナー像は、定着装置14により用紙に定着される。トナー像が定着した用紙は、排出ローラー対16により搬送されて用紙排出部15に排出される。また、転写の完了後、感光体ドラム21の感光層31表面に残留したトナーは、クリーニング装置26によって除去される。
ところで、上記したように、クリーニング装置26のクリーニングブレード41は、感光体ドラム21の外周面に接している。このため、クリーニングブレード41は、回転する感光体ドラム21に摺接し、微小振動(所謂スティックスリップ振動)することとなる。この微小振動は、感光体ドラム21の回転開始時および停止時に特に大きくなり、感光体ドラム21を共振させ振動音を発生させる。
そこで、第1実施形態に係る感光体ドラム21では、ドラム素管30の内部に防振部材32等を設けている。以下、図2および図3を参照して、第1実施形態に係る感光体ドラム21の防振構造について詳細に説明する。図3は、本発明の第1実施形態に係る感光体ドラム21を模式的に示す軸方向側面図であり、(a)はドラム素管30および感光層31を示し、(b)は(a)に加えて防振部材32を示し、(c)は(b)に加えて押付部材33を示している。
上記したように感光体ドラム21は、ドラム素管30および感光層31を有していると共に、ドラム素管30の内周面34に接する防振部材32と、防振部材32をドラム素管30の内周面34に押し付ける押付部材33と、を有している。
ドラム素管30は、肉厚の薄い(0.5〜1.5mm程度)円筒状に形成され、その内側軸方向には、円柱形状の内部開口35が貫通形成されている(図3(a)参照)。
防振部材32は、平面視で略長方形状に形成された繊維質のシートから構成されている。使用される繊維としては、植物性繊維、動物性繊維または合成繊維のいずれでもよい。また、繊維質のシートとしては、繊維を撚って糸にしたものを織ったものでもよいが、表面が起毛状になっている不織布等(例えば、ウール製フェルトシート等)が好ましい。
また、防振部材32の長辺の長さは、ドラム素管30の軸方向の長さ以下に形成されている。防振部材32の短辺の長さは、防振部材32を短辺方向に円筒状に丸めた状態でドラム素管30の内周面34に接触することができる長さ、すなわちドラム素管30の内径の周長程度の長さとなるように形成されている。
押付部材33は、防振部材32と略同一形状(平面視で略長方形状)に形成された板状(またはシート状)の弾性材料により構成されている。使用される弾性材料としては、ゴムや合成樹脂等の任意の弾性材料(例えば、PETシート等)を用いることができる。
また、防振部材32と同様に、押付部材33の長辺の長さは、ドラム素管30の軸方向の長さ以下に形成されている。押付部材33の短辺の長さは、押付部材33を短辺方向に円筒状に丸めた状態で、ドラム素管30の内周面34に接するように円筒状に丸められた防振部材32の内周面36に接触することができる長さ、すなわち円筒状に丸めた押付部材33の内径の周長程度の長さとなるように形成されている。
次に、図3を参照して、ドラム素管30の内部(内部開口35)に対する防振部材32および押付部材33の取付方法について説明する。
まず、作業者は、短辺方向に丸めた状態の防振部材32を、ドラム素管30の一端から内部開口35に挿入する。内部開口35に挿入された防振部材32は、自らのコシにより僅かに広がり(拡径し)、ドラム素管30の内周面34に軽く接した状態となる(図3(b)参照)。
続いて、作業者は、防振部材32の挿入と同様に、短辺方向に丸めた状態の押付部材33を、ドラム素管30の内部開口35内で円筒状を成す防振部材32の内部(内部開口37)に挿入する。すると、弾性材料で形成された押付部材33は、自らの弾性力(復元力)によって広がり(拡径し)、防振部材32の内周面36に接して防振部材32をドラム素管30の内周面34に押し付ける(図3(c)参照)。これにより、防振部材32は、所定の圧力でドラム素管30の内周面34に押し付けられた状態で取り付けられる。
なお、防振部材32と押付部材33とを個別に挿入せずに、防振部材32を押付部材33上に重ねた状態で、防振部材32が外側に向くように丸めてドラム素管30の内部開口35内に挿入してもよい。
次に、本発明の効果を確認するために行った検証実験について説明する。本検証実験は、京セラミタ株式会社製のレーザープリンター(FS−4020DN)の感光体ドラム21に、上記した防振部材32および押付部材33を導入して行った。
本検証実験は、感光体ドラム21を水平な台に載置し、感光体ドラム21の軸方向略中央に、30gのABS樹脂製の球体を高さ5cmから落下させて衝突させた時の衝撃音を測定することにより行った。詳細には、この衝撃音の4.7kHz周辺に発生する振動数のピーク値および音圧を測定した。まず、比較例1として、防振部材32および押付部材33を設けていない感光体ドラム21について測定し、次に、実験1〜8として、様々な防振部材32および押付部材33を設けた感光体ドラム21について測定を行った。なお、検証実験に使用した感光体ドラム21の寸法は、軸方向長さ256mm、15mm、内径13.5mmである。
実験1〜8における防振部材32および押付部材33について以下に示す。なお、実験2〜8において、示した条件以外の条件は(実験1)と同一である。
(実験1)
防振部材32として、平面視寸法200mm×81mm、厚み2.0mm、密度0.30g/cmのウール製フェルトシートを用い、押付部材33として、平面視寸法200mm×81mm、厚み0.125mm、密度1.00g/cm、ヤング率3200MPa1.00g/cmのPET(Poly Ethylene Terephthalate)製シートを用いた。
(実験2)
防振部材32(フェルト)の密度を0.40g/cmとした。
(実験3)
防振部材32(フェルト)の密度を0.50g/cmとした。
(実験4)
防振部材32として、平面視寸法200mm×81mm、厚み5.0mm、密度0.025g/cmのウレタン製スポンジシートを用いた。
(実験5)
押付部材33の厚みを0.050mmとした。
(実験6)
押付部材33の厚みを0.075mmとした。
(実験7)
押付部材33の厚みを0.200mmとした。
(実験8)
押付部材33の厚みを0.250mmとした。
そして、本検証実験において本発明の効果を検証するために、各実験(1〜8)の測定値(振動数および音圧)から、比較例1の測定値を差し引いた値を、振動数差および音圧差として算出した。本検証実験の検証では、振動数差が−500Hz以上で、且つ音圧差が−15dB以下であれば、良好な防振効果があるものとする。また、音圧差が−20dB以下の場合には、更に良好な防振効果があるものとする。なお、このような基準を設けた理由は、温度32.5℃、湿度80%という環境下で、感光体ドラム21の固有振動由来の騒音を起こさない条件となるためである。この振動数差および音圧差の算出結果を表1に示す。なお、表1において圧縮率とは、非圧縮時の防振部材32の厚みに対する、圧縮時の防振部材32の厚みの減少量の割合であり、防振部材32の元の厚みを「D」とし、押付部材33によりドラム素管30の内周面34に押し付けられた時の防振部材32の厚みの減少量を「Δd」とした場合、以下に示す式(1)により算出される値である。
Δd/D×100・・・(1)
Figure 0005931711
表1が示すように、実験1および2では、振動数差が−500Hz以上、且つ音圧差が−15dB以下となっており、良好な防振効果があることを示している。また、実験1〜3の各振動数差を比較すると、より低密度の防振部材32(フェルト)を用いた方が有効な防振性能を発揮している。実験1および2では、音圧差が−20dB以下(振動数差−500Hz以上)となり、より優れた防振性能を発揮している。
以上より、防振部材32(フェルト)は、その密度が0.4g/cm以下で、防振部材32と押付部材33との合計重量が、ドラム素管30の重量の10%以下である場合に、振動数差が−500Hz以上となり、感光体ドラム21の振動を有効に抑制することができるという結果となった。これにより、防振部材32の適度な軽量化を図ることができるため、感光体ドラム21の固有振動数の低下を防止することもできる。
また、防振部材32を軽量なスポンジシートとした実験4では、振動数差および音圧差は、ともに比較例1と大きな差が表れなかった。スポンジシートの防振部材32よりも、フェルトシートの防振部材32の方が良好な結果となった理由としては、フェルトのような不織布は、その表面が起毛状になっており自由端が多い構造を有しているためであると考えられる。すなわち、表面に自由端が多いフェルトシートは、ドラム素管30の内周面34との間に摩擦を生じさせ易く、クリーニングブレード41から伝搬した振動エネルギーを、効率良く熱エネルギーに変換することができると解される。従って、振動音の発生原因である感光体ドラム21の振動を有効に抑制するためには、フェルトのような不織布を防振部材32として用いることが好ましい。
また、表1が示すように、実験5〜8では、振動数差が−500Hz以上、且つ音圧差が−15dB以下となっており、良好な防振効果があることを示している。さらに、圧縮率が30%以上60%以下の場合に、音圧差が−20dB以下となり、より優れた防振性能を発揮している。
以上の結果から、押付部材33は、防振部材32の厚みが非圧縮時の厚みの30%以上70%未満(すなわち防振部材32の圧縮率30%以上70%未満)になるように、防振部材32をドラム素管30の内周面34に押し付けることで、防振のために有効な摩擦を、防振部材32とドラム素管30の内周面34との間に作用させることができる。これにより、感光体ドラム21の振動を有効に抑制することができる。さらに好ましくは、圧縮率が30%以上60%以下になるように、押付部材33が、防振部材32をドラム素管30の内周面34に押し付けることで、感光体ドラム21の振動をより有効に抑制することができる。
第1実施形態に係る感光体ドラム21によれば、フェルト等の繊維質のシートからなる防振部材32は、比重が小さく数kHz帯の振動数での減衰が大きくなるため、感光体ドラム21の固有振動数(一般的に数kHz)の低下を防止することができる。このように防振部材32の軽量化を図ることで、より高い振幅を有する振動数のスティックスリップ振動(クリーニングブレード41の微小振動)との共振を避けることができるため、より大きな振動音の発生を抑制することができる。特に、自由端が多い(表面が起毛状)構造であるフェルトのような不織布を防振部材32として用いることにより、振動音の発生原因である感光体ドラム21の振動を有効に抑制することができる。
また、第1実施形態に係る感光体ドラム21によれば、押付部材33によって、軽量化な繊維質の防振部材32を、ドラム素管30の内周面34に所望の押圧力で押し付けることができる。これにより、感光体ドラム21の防振効果を担保することができる。さらに、押付部材33は、板状の単純な形状であるため、低コストで製造することができる。
(第2実施形態)
次に、図4を参照して、第2実施形態に係る画像形成装置1の感光体ドラム21について説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る押付部材50を模式的に示しており、(a)は斜視図であり、(b)は軸方向側面図である。なお、第1実施形態に係るものと同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
図4(a)に示すように、第2実施形態に係る感光体ドラム21では、押付部材50が弾性材料(ゴムや合成樹脂等)により円筒状に形成されていると共に、軸方向に延びてスリット51が切り込まれている。この押付部材50は、ドラム素管30の内部開口35への挿入前にはスリット51の幅Lが広がった状態(図4(b)の実線参照)であり、ドラム素管30の内部開口35内で円筒状を成す防振部材32の内径(内部開口37の直径)よりも大きな外径を有する円筒状に形成されている。弾性材料から成る押付部材50は、スリット51の幅Lを狭くするように押しつぶして全体を縮径させることができるようになっている(図4(b)の二点鎖線参照)。
この押付部材50をドラム素管30の内部開口35内で円筒状を成す防振部材32の内部開口37に挿入する時は、作業者は、上記のように押付部材50を縮径させることで、防振部材32の内部開口37の内径よりも押付部材50の外径を小さくする。そして、縮径した押付部材50を防振部材32の内部開口37に挿入する。すると、押付部材50は、自らの弾性力によって拡径し、防振部材32の内周面36に接して防振部材32をドラム素管30の内周面34に押し付ける。
なお、防振部材32と押付部材50とを個別に挿入せずに、円筒状の押付部材50の外側(外周面)に、防振部材32を巻き付けた状態でドラム素管30の内部開口35内に挿入してもよい。
第2実施形態に係る感光体ドラム21によれば、押付部材50は、予め円筒状に形成されており、容易に縮径させることができるため、防振部材32の内部開口37に挿入する作業を円滑に行うことができる。
なお、押しつぶす前の押付部材50の外径やスリット51の幅Lは、少なくとも、スリット51の内側に対向する一対の端面52が当接した状態(スリット51の幅Lがゼロ)で、防振部材32の内部開口37に挿入可能な外径となるように設定されている。また、防振部材32の内部開口37に挿入した状態で、押付部材50のスリット51の幅Lが狭すぎるとドラム素管30が変形し印刷性能を悪化させる虞があり、一方、幅Lが広すぎると防振効果が不十分となると共に、ドラム素管30(感光体ドラム21)の重心がぶれて、回転ムラが生じ印刷性能を悪化させる虞がある。このため、スリットの幅Lは、防振部材32の内部開口37に挿入した状態で、0mm〜1.0mm程度となることが好ましい。
(第3実施形態)
次に、図5を参照して、第3実施形態に係る画像形成装置1の感光体ドラム21について説明する。図5は、本発明の第3実施形態に係る押付部材60を模式的に示す平面図であり、(a)は収縮した状態を示し、(b)は引っ張った状態を示している。なお、第1実施形態に係るものと同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
図5に示すように、第3実施形態に係る感光体ドラム21では、押付部材60が、コイルバネ(金属製や樹脂製等)により形成されている。この押付部材60(コイルバネ)は、収縮した状態(図5(a)参照)で、ドラム素管30の内部開口35内で円筒状を成す防振部材32の内部開口37の直径よりも大きな外径を有している。この押付部材60は、コイルバネであるため、軸方向に引き延ばすことによって全体を縮径させることができるようになっている(図5(b)参照)。
この押付部材60を防振部材32の内部開口37に挿入する時は、作業者は、上記のようにコイルバネを引き延ばして縮径させることで、防振部材32の内部開口37の内径よりも押付部材60の外径を小さくする。そして、縮径した押付部材60を防振部材32の内部開口37に挿入する。その後、押付部材60(コイルバネ)は、自身の収縮力により縮むことで拡径し、防振部材32の内周面36に接して防振部材32をドラム素管30の内周面34に押し付ける。
なお、防振部材32と押付部材60とを個別に挿入せずに、コイルバネから成る押付部材60の外側(外周)に、防振部材32を巻き付けた状態でドラム素管30の内部開口35内に挿入してもよい。
第3実施形態に係る感光体ドラム21によれば、押付部材60は、既存のコイルバネで構成することができるため、低コストで製造することができる。また、押付部材60は、軸方向に引き延ばすことで縮径し、収縮することで拡径するため、押付部材60を容易に防振部材32の内部開口37に挿入可能であると共に、防振部材32を適切にドラム素管30の内周面34に押し付けることができる。
なお、上記した各実施形態において、押付部材33,50,60の外側に防振部材32を重ねた(巻き付けた)状態でドラム素管30の内部開口35内に挿入する場合、防振部材32と押付部材33,50,60とは、接着剤等で全面を固定するのではなく、押付部材33,50,60の縮径および拡径を阻害しないように部分的に固定することが好ましい。
なお、上記した本発明の各実施形態の説明は、本発明に係る感光体ドラム21、画像形成装置1および感光体ドラム21の防振構造における好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。さらに、上記した本発明の各実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、且つ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の各実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
1 画像形成装置
21 感光体ドラム
30 ドラム素管
31 感光層
32 防振部材
33 押付部材
41 クリーニングブレード

Claims (4)

  1. 静電潜像にトナーを付着させて形成したトナー像を担持すると共に外周面に残留したトナーを除去するクリーニングブレードが接触する感光体ドラムであって、
    外周面に感光層が形成されるドラム素管と、
    前記ドラム素管の内周面に接する繊維質のシートからなる防振部材と、
    前記防振部材を前記ドラム素管の内周面に押し付ける押付部材と、を備え
    前記防振部材は、フェルトからなり、
    前記防振部材の密度は、0.3g/cm 以上0.4g/cm 以下であり、
    前記押付部材は、ポリエチレンテレフタラートからなり、前記防振部材の厚みが非圧縮時の厚みの30%以上60%以下になるように、前記防振部材を前記ドラム素管の内周面に押し付け、
    前記押付部材の厚みは、0.075mm以上0.200mm以下であることを特徴とする感光体ドラム。
  2. 前記押付部材は、板状の弾性材料からなり、円筒状に丸めて前記防振部材の内側に挿入されていることを特徴とする請求項に記載の感光体ドラム。
  3. 請求項1または2に記載の感光体ドラムを備えたことを特徴とする画像形成装置。
  4. 静電潜像にトナーを付着させて形成したトナー像を担持する感光層がドラム素管の外周面に形成され、前記感光層の外周面に残留したトナーを除去するクリーニングブレードが接触する感光体ドラムの防振構造であって、
    前記ドラム素管の内周面に接する繊維質のシートからなる防振部材と、
    前記防振部材を前記ドラム素管の内周面に押し付ける押付部材と、を備え
    前記防振部材は、フェルトからなり、
    前記防振部材の密度は、0.3g/cm 以上0.4g/cm 以下であり、
    前記押付部材は、ポリエチレンテレフタラートからなり、前記防振部材の厚みが非圧縮時の厚みの30%以上60%以下になるように、前記防振部材を前記ドラム素管の内周面に押し付け、
    前記押付部材の厚みは、0.075mm以上0.200mm以下であることを特徴とする防振構造。
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