JP5931420B2 - 固体酸化物型燃料電池、固体酸化物型燃料電池カートリッジ、固体酸化物型燃料電池モジュール、固体酸化物型燃料電池の製造方法 - Google Patents
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Description
固体酸化物型燃料電池は、発電効率等の点などから有望視されており、今後、さらなる性能や発電効率の向上が要請されている。
請求項1に記載の発明は、酸化物材料からなる多孔質である基体部材と、前記基体部材に配置され、燃料極、固体電解質、空気極とが積層されて成る発電セルと、前記基体部材と前記発電セルの間に形成された絶縁層とを有し、前記絶縁層がSrZrO 3 を含むことを特徴とする。
ここで、本発明の一態様において、絶縁層を構成するSrZrO 3 に無機酸化物を混合する組成とし熱膨張係数を好適化することで、絶縁層に起因する基体部材からの剥離が抑制される。前記無機酸化物としては、代表的にはMgOが挙げられるがこれに限定されない。
また、絶縁層とは、基体部材を構成する金属酸化物の一部が還元されて金属化された状態よりも発電セルと基体部材間の電気抵抗を大きくする機能層であり、例えば、高電圧における絶縁を要するものではない。
図1は、第1の実施形態に係る固体酸化物型燃料電池モジュール及び固体酸化物型燃料電池カートリッジの概略構成を説明する図であり、符号1は固体酸化物型燃料電池モジュールを、符号2は固体酸化物型燃料電池カートリッジ集合体を、符号3は固体酸化物型燃料電池カートリッジを示している。
また、固体酸化物型燃料電池カートリッジ3の下部には、固体酸化物型燃料電池10の他端側を保持するとともに電気的に接続される下部接続体32Aと燃料排出路6Aに燃料を排出する燃料流排出部32Bが設けられている。
また、固体酸化物型燃料電池10は、例えば、全長1.5m、外径φ28mmに形成されている。
また、保持部10B、10Cには、保持を確実にするための円筒形状部10D、10E及び10F、G0Eがそれぞれ形成されている。
ここで、絶縁層12を構成する組成物は、少なくとも固体酸化物型燃料電池10の運転温度である800〜900℃に温度上昇し又は運転温度から温度が下がっても絶縁層12が割れることが抑制され、さらに、製造工程において、基体管11、燃料極21、電解質22とともに加熱、焼結した場合に一体に収縮して基体管11から剥離しないことが必要である。
図4に示すように、上記検証項目をすべて満足するのはSrZrO3、MgAl2O4のみであり、SrZrO3、MgAl2O4以外の組成物は、いずれもすべての検証項目を満足しないことが判明した。
図5に示すように、SrZrO3に関しては、SrZrO3:MgO=10:0の場合、基体管11の塗布した後、1400℃×3hでの焼きつけは良好であったが、SrZrO3:MgO=9:1の場合、焼きつけは良好とではなかった。
一方、MgAl2O4に関しては、MgAl2O4:MgO=10:0〜6:4の範囲で基体管11の塗布した後、1400℃×3hでの焼きつけが良好であった。
SrZrO3とMgOについては、図6に示すように、SrZrO3に対するMgOの配合量が5%以下の範囲が好適とされ、MgAl2O4とMgOについては、図7に示すように、MgAl2O4に対するMgOの配合量が0〜38%の範囲が好適である。
図8は、絶縁層12、絶縁被覆層12Aを、ペーストを印刷、焼結することにより形成する固体酸化物型燃料電池10の製造方法(第1の製造方法)の一例を示す図である。
(1)まず、酸化ニッケルとイットリウム安定化ジルコニウムを含む混合物を成形して基体管11の素材を成形する(S1)。
(2)基体管11の発電部10Aに、例えば、絶縁層を構成するSrZrO3 (又はMgAl 2 O 4 )を含むペーストを印刷する(S2)。基体管表面へのペーストの印刷は、例えば、スクリーンプリント法により行うことができる。また、ペーストを印刷した後に、印刷範囲をずらして複数回印刷すると、基体管表面に厚い絶縁層を安定的に形成するうえで好適である。
(3)ペーストを乾燥させて、絶縁層形成膜を形成する(S3)。
(4)ペーストが乾燥して形成された絶縁層形成膜の表面に、燃料極を構成する燃料極形成層を印刷する(S4)。
(5)燃料極形成層の表面に、電解質形成層を印刷する(S5)。
(6)インターコネクタを形成する場合には、電解質形成層の表面にインターコネクタ形成層を印刷する(S6)。
(7)基体管の素材、ペーストが乾燥して形成された絶縁層形成膜、燃料極形成層、電解質形成層を、例えば、約1400℃で一体に加熱して焼結体を焼結する(S7)。
(8)焼結体の所定領域に、空気極形成層を塗布する(S8)。
(9)焼結体の基体管が露出する領域に、絶縁被覆層を構成するためのSrZrO3 (又はMgAl 2 O 4 )を含むペーストを印刷して絶縁被覆層形成膜を形成する(S9)。
(10)ペーストを乾燥させて絶縁被覆層形成膜を形成する(S10)。
(11)空気極形成層、絶縁被覆層形成膜を焼結体とともに、例えば、約1200℃まで加熱して、空気極形成層、絶縁被覆層形成膜を凝結体に焼き付ける(S11)。
(12)固体酸化物型燃料電池が完成する(S12)。
(1)原料粉末として、SrZrO3、又はMgAl2O4とMgOの混合物を用意する(S21)。
原料粉末としては、SrZrO3、MgAl2O4と又はSrZrO3、MgAl2O4とMgOの混合物(例えば、MgAl2O4:MgO=70:30)を用いる。
(2)原料粉末にブチルカルビトール(溶剤)を混合する(S22)。
原料粉末100に対して、例えば、ブチルカルビトール30の割合で混合する。
(3)ロールミルを用いて、精密分散する(S23)。
(4)ペーストが生成される(S24)。
図10は、絶縁層12、絶縁被覆層12Aを、シートを貼着することにより形成する固体酸化物型燃料電池10の製造方法(第2の製造方法)の一例を示す図である。
(1)酸化ニッケルとイットリウム安定化ジルコニウムを含む混合物を成形して基体管11の素材を成形する(S31)。
(2)基体管11の発電部10Aに、例えば、絶縁層12を構成するSrZrO3 (又はMgAl 2 O 4 )を含むシートを貼着する(S32)。このとき、基体管11側に位置する面にエタノールを塗布し、表面が溶解して柔らかくなった状態で空気が入りこまないように貼り付けることが好適である。
(3)シートの表面に、燃料極21を構成する燃料極形成層を印刷する(S33)。
(4)燃料極形成層の表面に、電解質形成層を印刷する(S34)。
(5)次に、電解質形成層の表面から燃料極形成層の一部にわたって、インターコネクタ形成層を印刷する(S35)。
(6)基体管の素材、貼着したシート、燃料極形成層、電解質形成層、インターコネクタ形成層を、例えば、約1400℃で一体に加熱して焼結体を焼結する(S36)。
(7)焼結体の所定領域に、空気極形成層を塗布する(S37)。
(8)焼結体の基体管11が露出する領域に、絶縁被覆層12Aを構成するためのSrZrO3 (又はMgAl 2 O 4 )を含むシートを貼着する(S38)。
(9)焼結体に塗布した空気極形成層、露出部分に貼着したシートを、焼結体とともに、例えば、約1200℃まで加熱して空気極形成層、絶縁被覆層を焼き付ける(S39)。
(10)固体酸化物型燃料電池が完成する(S40)。
(1)原料粉末を用意する(S41)。
原料粉末としては、SrZrO3、MgAl2O4と又はSrZrO3、MgAl2O4とMgOの混合物(例えば、MgAl2O4:MgO=70:30)を用いる。
(2)原料粉末に溶剤と分散剤を混合する(S42)。このとき、原料粉末100に対して、エタノール(溶剤)30、ポリエチレンイミン(分散剤)1の割合で混合する。
(3)原料粉末と溶剤と分散剤の混合物を、ボールミルで24時間、分散処理する(S43)。
(4)分散処理して生成したスラリーに、ポリビニルブチラール(バインダー)15、ジブチルフタレート(可塑剤)12を加える(S44)。
(5)ポリビニルブチラール、ジブチルフタレートを加えたスラリーを、例えば、1時間攪拌する(S45)。
(6)攪拌したスラリーを、ロータリーエバポレータを用いて脱泡すると同時に、溶媒(エタノール)を減量(又は除去)して、粘度12000mPasのスラリーとする(S46)。
(7)ドクターブレード成形装置を使用して刃厚さ0.5mmのスラリーを引いてシート体を形成する(S47)。
(8)シート体を乾燥する(S48)。
(9)厚さ約170μmのシートが完成する(S49)。なお、シートは、厚さ約100〜300μmに形成されることが、溶剤による溶解時の千切れ及び焼結時の割れ発生を抑制するうえで好適である。
固体酸化物型燃料電池10は、基体管11に形成された燃料供給流路11Aに、燃料ガスGとしてH2、COが供給されるとともに、空気極23の外側に圧縮空気が供給されると、導電イオン(O2−)が電解質22を空気極23から燃料極21に移動して導電イオン(O2−)がH2、COと反応して発電する。また、反応により生成したH2O及びCO2は、燃料供給流路11Aに流入する。
第2の実施形態が第1の実施形態と異なるのは、固体酸化物型燃料電池50が基体管11に代えて平板状に形成された基体部材51を用いた構成とされ、基体部材51の一方側の面に燃料極61、電解質62、空気極63からなる発電セル60を複数配列し、複数の発電セル60をインターコネクタ64により電気的に直列に接続した点である。
固体酸化物型燃料電池50によれば、発電セル60の大きさを任意に設定することができる。
例えば、第1の実施の形態においては、基体部材が基体管11とされ、基体管11外周面の全周にわたって帯状に複数の発電セル20が形成される場合について説明したが、例えば、基体管11の外周の周方向の一部分に発電セル20を形成してもよいし、基体管11に発電セル20がひとつのみ形成された構成としてもよい。
また、第2の実施形態等に係る固体酸化物型燃料電池50において、発電セル60をひとつだけ配置する構成としてもよい。
また、例えば、絶縁層12、絶縁被覆層12Aを基体管11の一部の特定領域に限定して形成し、又は網目状の絶縁層12、絶縁被覆層12Aを形成することにより、絶縁層12又は絶縁被覆層12Aがリーク電流を完全に絶縁するのではなく、リーク電流を減少させるように構成してもよい。
また、絶縁層12、52、被覆絶縁層12Aを形成するためのペースト、シートを製造する場合の、原料粉末、溶剤、分散剤、バインダー、可塑剤の組成、成分、混合比率等、混合、分散処理、脱泡、減溶媒に用いる装置等は、上記実施形態に限られることなく、実用可能な範囲内で任意に設定することができる。
3 固体酸化物型燃料電池カートリッジ
4 圧力容器(収納容器)
10、50 固体酸化物型燃料電池
11 基体管(基体部材)
11A 燃料供給流路
51 基体部材
20、60 発電セル
12、52 絶縁層
12S 絶縁被覆層
21、61 燃料極
22、62 電解質
23、63 空気極
24、64 インターコネクタ
31B 燃料流入部(燃料供給手段)
71 燃料供給流路
Claims (11)
- 酸化物材料からなる多孔質である基体部材と、
前記基体部材に配置され、燃料極、固体電解質、空気極とが積層されて成る発電セルと、
前記基体部材と前記発電セルの間に形成された絶縁層とを有し、
前記絶縁層がSrZrO3を含むことを特徴とする固体酸化物型燃料電池。 - 請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池であって、
前記基体部材に前記発電セルが複数配置され、前記複数の発電セルはインターコネクタにより電気的に直列に接続されていることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。 - 請求項1又は請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池であって、
前記基体部材は、筒状に形成され内方の孔が燃料供給流路とされた基体管とされていることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の固体酸化物型燃料電池であって、
前記基体部材の発電部の端部に位置する保持部の少なくとも一方にSrZrO3を含み前記基体部材の電気的露出を抑制する絶縁被覆層が形成されていることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。 - 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の固体酸化物型燃料電池を複数配置して構成され、前記固体酸化物型燃料電池のそれぞれの発電セルに燃料を供給する燃料供給手段を備えることを特徴とする固体酸化物型燃料電池カートリッジ。
- 請求項5に記載の固体酸化物型燃料電池カートリッジと、
収納された前記固体酸化物型燃料電池カートリッジを構成するそれぞれの発電セルに酸素含有ガスを供給する収納容器と、を備えることを特徴とする固体酸化物型燃料電池モジュール。 - 酸化物材料からなる多孔質である基体部材と、
前記基体部材に配置され、燃料極、固体電解質、空気極とが積層されて成る発電セルと、
前記基体部材と前記発電セルの間に形成された絶縁層とを有する固体酸化物型燃料電池の製造方法において、
酸化ニッケルとイットリア安定化ジルコニアを含む混合物により形成された前記基体部材の素材に、SrZrO3を含み前記絶縁層を構成するペーストを印刷する工程と、
前記ペーストが乾燥して形成された被膜に、前記燃料極を構成する燃料極形成層、前記電解質を構成する電解質形成層をこの順に形成する工程と、
前記基体部材の素材、前記ペーストが乾燥して形成された被膜、前記燃料極形成層、前記電解質形成層を一体に加熱して焼結体を焼結する工程と、
前記焼結体に、空気極形成層を形成する工程と、
前記空気極形成層が形成された焼結体を加熱して前記空気極を焼付ける工程とを有することを特徴とする固体酸化物型燃料電池の製造方法。 - 請求項7に記載の固体酸化物型燃料電池の製造方法において、
前記基体部材の発電部の端部に位置する保持部の少なくとも一方に電気的露出を抑制する絶縁被覆層が形成される場合に、
前記空気極を焼付ける前に、前記焼結体の前記基体部材が露出する領域にSrZrO3を含み前記絶縁被覆層を構成するペーストを印刷する工程を有することを特徴とする固体酸化物型燃料電池の製造方法。 - 酸化物材料からなる多孔質である基体部材と、
前記基体部材に配置され、燃料極、固体電解質、空気極とが積層されて成る発電セルと、
前記基体部材と前記発電セルの間に形成された絶縁層とを有する固体酸化物型燃料電池の製造方法において、
酸化ニッケルとイットリア安定化ジルコニアを含む混合物により形成された前記基体部材の素材に、SrZrO3を含み前記絶縁層を構成するシートを貼着する工程と、
前記貼着したシートに、前記燃料極を構成する燃料極形成層、前記電解質を構成する電解質形成層をこの順に形成する工程と、
前記基体部材の素材、前記貼着したシート、前記燃料極形成層、前記電解質形成層を一体に加熱して焼結体を焼結する工程と、
前記焼結体に、空気極形成層を形成する工程と、
前記空気極形成層が形成された焼結体を加熱して前記空気極を焼付けることを特徴とする固体酸化物型燃料電池の製造方法。 - 請求項9に記載の固体酸化物型燃料電池の製造方法において、
前記基体部材の発電部の端部に位置する保持部の少なくとも一方に電気的露出を抑制する絶縁被覆層が形成される場合に、
前記空気極を焼付ける前に、前記焼結体の前記基体部材が露出する領域にSrZrO 3 を含み前記絶縁被覆層を構成するシートを貼着する工程を有することを特徴とする固体酸化物型燃料電池の製造方法。 - 請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の固体酸化物型燃料電池の製造方法であって、
前記基体部材に前記発電セルが複数配置されて、前記複数の発電セルがインターコネクタにより電気的に直列に接続される場合に、
前記電解質形成層を形成した後に、インターコネクタを構成するインターコネクタ形成層を形成する工程を有することを特徴とする固体酸化物型燃料電池の製造方法。
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