JP5924965B2 - 成形品取出機及び吸着ノズル - Google Patents

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本発明は、成形機の金型から樹脂成形品を取り出す成形品取出機及び該成形品取出機等で使用される吸着ノズルに関するものである。
樹脂成形品は、金型から成形品取出機の吸着ノズルを用いて取り出される際には、まだ完全な硬化状態にはなっていない。そのため取り出し作業の際に、樹脂成形品の変形を防止する技術が提案されている。例えば、特開2011−177854号公報(特許文献1)には、吸着板に設けられ樹脂成形品の外形に沿って額縁状に形成された多孔質の多孔質吸着部と、多孔質吸着部に連通された負圧発生部とを備えた吸着ノズルを採用することが開示されている。特許文献1には、この吸着ノズルを採用すると、樹脂成形品を吸着する部分が樹脂成形品の外形付近であり、吸着する面積が広いため樹脂成形品5に反りや局部的な変形を与えることなく吸着ができて、樹脂成形品の割れを防止できると記載されている。
特開2011−177854号公報
特許文献1に示された吸着ノズルは、樹脂成形品の形状寸法が額縁状に形成された多孔質の多孔質吸着部で吸着できるような比較的大きな樹脂成形品には適用が可能である。この吸着ノズルは、吸着面を大きくするために、多孔質吸着部を採用する。すなわち吸着時には、多孔質吸着部が圧縮変形して多孔質吸着部が樹脂成形品と密着状態となって、多孔質吸着部全体が吸着面となる。そして多孔質吸着部が額縁状に形成されているので、吸着面積が広がって、局部的な吸着力が樹脂成形品に加わることがないため、樹脂成形品5に反りや局部的な変形を与えることがない。しかしながら例えば、樹脂成形品が、横幅1cm以下、長さが1.5cm以下のような小さい樹脂成形品の場合には、樹脂成形品の形状寸法が小さすぎて、特許文献1に示されるような構造の吸着ノズルを使用することはできない。
本発明の目的は、従来の構造の吸着ノズルでは、吸着ができたとしても変形してしまうほどに形状寸法が小さい樹脂成形品を吸着して金型から取り出すことができる成形品取出機及び吸着ノズルを提供することにある。
本発明が対象とする成形品取出機は、成形機の金型から完全に硬化していない横幅1cm以下、長さが1.5cm以下の樹脂成形品を吸着ノズルを用いて取り出す成形品取出機である。本発明で用いる吸着ノズルは、樹脂成形品を吸着している際に、空気漏れを生じさせながら樹脂成形品を吸着するように構成されている。本願明細書において「空気漏れ」とは、吸着時に吸着ノズルが樹脂成形品と密着しておらず、吸着ノズルと樹脂成形品との間から、漏れ空気が吸引され続ける状態を意味する。このような空気漏れがあると、吸着ノズルが樹脂成形品に密着することはなく、吸着ノズルの吸引力から空気漏れが原因となって生じる吸引力の低減分を差し引いた吸引力が、吸着ノズルと樹脂成形品との間に全体的に作用することになる。その結果、まだ完全に硬化していない幅1cm以下、長さが1.5cm以下の樹脂成形品を金型から取り出す際に、樹脂成形品に局部的に大きな力を加えることなく、樹脂成形品を取り出すことができる。
本発明で用いることができる吸着ノズルは、1以上の吸引口を備えた吸着ヘッドと、吸着ヘッドの吸着面に装着されて樹脂成形品と接触し、吸着ノズルが樹脂成形品を吸着しているときに圧縮変形するスペーサとを具備した構造とすることができる。このスペーサは、吸着ノズルが樹脂成形品を吸着しているときに、吸着ヘッドと樹脂成形品の表面との間に、1以上の吸引口に向かう漏れ空気の流れを形成する空気漏れ通路を備えている。このようなスペーサを用いると、空気漏れ通路を通して確実に漏れ空気を吸引口から吸引することができる。そしてスペーサに設ける空気漏れ通路の大きさを調整することにより、樹脂成形品に作用する吸引力を調整することができる。
なお1以上の吸引口の位置は、樹脂成形品の1以上の無孔部分と対向するように定めるのが好ましい。このようにすると吸引口からの吸引力を大きくすることなく、空気漏れとの併用バランスを簡単に実現することができる。1以上の吸引口からの吸引力と空気漏れ通路を通して吸引される漏れ空気の量とは、吸着時に成形品に加わる吸着力で、完全に硬化していない樹脂成形品が変形しないように定められる。このようにすることによって樹脂成形品の変形を確実に防止することができる。
なおスペーサの材質は任意であるが、スペーサを静電気が帯電しない材質で形成するのが好ましい。このような材質でスペーサを形成すれば、吸着ノズルに樹脂成形品が静電気で付着することを防止できる。
(A)は吸着ノズルで樹脂成形品を吸着しているときの側面図、(B)は吸着ノズルの底面図、(C)は吸着ノズルにより吸着する樹脂成形品の一例を示す図である。 吸引口と樹脂成形品との間に働く吸引力と、スペーサによって吸着ノズルと樹脂成形品の表面との間に形成されるギャップとの関係を概念的に示す図である。 (A)は樹脂成形品の平面図を示しており、(B)はこの樹脂成形品を吸着する吸着ヘッドとスペーサとを備えた吸着ノズルの関係を示す図である。 (A)は樹脂成形品の平面図を示しており、(B)はこの樹脂成形品を吸着する吸着ヘッドとスペーサとを備えた吸着ノズルの関係を示す図である。 (A)は樹脂成形品の平面図を示しており、(B)はこの樹脂成形品を吸着する吸着ヘッドとスペーサとを備えた吸着ノズルの関係を示す図である。
以下図面を参照して本発明の成形品取出機の実施の形態の一例で用いる吸着ノズルについて説明する。図1(A)は吸着ノズル1で樹脂成形品を吸着しているときの側面図を示しており、図1(B)は吸着ノズル1の底面図を示しており、図1(C)は吸着ノズル1により吸着する樹脂成形品WPの一例を示している。実際の樹脂成形品WPの幅寸法Wは1cm以下で、長さ寸法は2cm以下である。本実施の形態の吸着ノズル1は、2つの吸引口1Aを備えた吸着ヘッド2と、吸着ヘッド2の吸着面に装着されて樹脂成形品WPと接触し、吸着ノズル1が樹脂成形品WPを吸着しているときに圧縮変形するスペーサ3とを具備している。吸着ヘッド2は金属製の本体に吸引口1Aに繋がる流路1Bが形成された構造を有している。流路1Bは図示しないエアーポンプ装置に接続されている。なお吸着ヘッド2は、アースに接続されている。
スペーサ3は、吸着ノズル1が樹脂成形品WPを吸着しているときに、吸着ヘッド2と樹脂成形品WPの表面との間に、吸引口1Aに向かう漏れ空気の流れ(点線矢印)を形成する空気漏れ通路4の少なくとも一部を形成する構造を備えている。なお本実施の形態のように、樹脂成形品WPに形成される貫通孔部H1乃至H5がスペーサ3によって塞がれていない場合には、これらの貫通孔部H1乃至H5を通しても空気漏れが発生する。したがって貫通孔部H1乃至H5が空気漏れ通路4の一部を構成する場合には、スペーサ3はこれらの貫通孔部H1乃至H5を適宜に塞いで、吸引力を調整するように形状が定められる場合もある。
スペーサ3の材質は任意であるが、本実施の形態ではスペーサ3を静電気が帯電しない材質(例えば導電性繊維により形成された織布または不織布、導電性ゴム等)で形成してある。本実施の形態で用いるスペーサ3は、吸着ノズル1が樹脂成形品WPを吸着しているときに圧縮変形するものの、スペーサ3を通しては、実質的に空気が流通することはない。なお圧縮変形するものの、スペーサ3を通して僅かに空気が流通する連続気泡構造を有するいわゆるスポンジゴム等を用いることもできる。このような材質でスペーサ3を形成すれば、吸着ノズル1に樹脂成形品WPが静電気で付着することを防止でき、樹脂成形品WPの分離が容易になる。
本実施の形態のように空気漏れ通路4を形成できるスペーサ3を用いると、空気漏れ通路4を通して確実に漏れ空気を吸引口1Aから吸引することができる。そしてスペーサ3に設ける空気漏れ通路4の大きさを調整することにより、樹脂成形品WPに作用する吸引力を調整することができる。別の見方をすると、吸引口1Aからの吸引力と空気漏れ通路を通して吸引される漏れ空気の量とは、吸着時に成形品に加わる吸着力で、完全に硬化していない樹脂成形品が変形しないように定められる。
図2は、吸引口1Aと樹脂成形品WPとの間に働く吸引力と、スペーサ3によって吸着ノズル1と樹脂成形品WPの表面との間に形成されるギャップとの関係を概念的に示す図である。例えば、図2中のギャップ寸法Aのようにスペーサ3の厚みがある程度厚く、空気漏れ通路4の断面積が大きくなると、吸引力は樹脂成形品WPを吸着するのに必要な最低吸引力に相当する閾値SH以下となって、吸着ができない。これに対して図2中のギャップ寸法Cのようにスペーサ3の厚みを薄くして、空気漏れ通路4の断面積が小さくなり過ぎると、樹脂成形品WPに作用する吸引力は大きくなりすぎて、まだ完全に硬化してない樹脂成形品WPが変形する。そこでスペーサ3の厚みまたは空気漏れ通路4の断面積は、図2中のギャップBのように、吸引力が閾値SHより僅かに大きくなるように定める。
このようにすると樹脂成形品WPを吸着している際に、スペーサ3が圧縮変形し且つ空気漏れを生じさせながら樹脂成形品WPを吸着するので、樹脂成形品WPが変形することを防止することができる。すなわち吸着ノズル1と樹脂成形品WPとの間にこのような空気漏れがあると、吸着ノズル1が樹脂成形品WPに密着することはなく、吸着ノズル1の吸引力から空気漏れが原因となって生じる吸引力の低減分を差し引いた吸引力が、吸着ノズル1と樹脂成形品WPとの間に作用することになる。その結果、まだ完全に硬化していない小さな樹脂成形品WPを金型から取り出す際に、樹脂成形品WPに局部的に大きな力を加えることなく、樹脂成形品WPを取り出すことができる。
なお本実施の形態では、2つの吸引口1Aの位置を、樹脂成形品WPの2つの無孔部分NHと対向するように定めている。このようにすると吸引口1Aからの吸引力を大きくすることなく、空気漏れとの併用バランスを簡単に実現することができる。
図3(A)は中央に大きな孔Hを有する樹脂成形品WP1の平面図を示しており、図3(B)はこの樹脂成形品WP1を吸着する吸着ヘッド2とスペーサ3とを備えた吸着ノズル1の関係を示している。この例では、スペーサ3が、樹脂成形品WP1の中央の孔Hを塞いで、且つ吸引口1Aと樹脂成形品WP1との間に空気漏れ通路を形成している。吸引口1Aは、樹脂成形品の無孔部分とギャップを介して対向している。
図4(A)は中央に小さい多数の孔Hを有する樹脂成形品WP2の平面図を示しており、図4(B)はこの樹脂成形品WP1を吸着する吸着ヘッド2とスペーサ3とを備えた吸着ノズル1の関係を示している。この例では、スペーサ3が、樹脂成形品WP2の中央部に形成された多数の孔Hを塞いで、且つ吸引口1Aと樹脂成形品WP1との間に空気漏れ通路を形成している。吸引口1Aは、樹脂成形品の無孔部分とギャップを介して対向している。
図5(A)は中央に細長い孔Hを有する樹脂成形品WP3の平面図を示しており、図5(B)はこの樹脂成形品WP3を吸着する吸着ヘッド2とスペーサ3とを備えた吸着ノズル1の関係を示している。この例では、スペーサ3が、樹脂成形品WP3の中央部に形成された孔Hを塞いで、且つ細長い吸引口1Aと樹脂成形品WP3との間に空気漏れ通路を形成している。吸引口1Aは、樹脂成形品の無孔部分とギャップを介して対向している。
本発明によれば、まだ完全に硬化していない横幅1cm以下、長さが1.5cm以下の樹脂成形品を金型から取り出す際に、樹脂成形品に局部的に大きな力を加えることなく、樹脂成形品を取り出すことができる。
1 吸着ノズル
1A 吸引口
1B 流路
2 吸着ヘッド
3 スペーサ
4 空気漏れ通路
WP 樹脂成形品
W 幅寸法
H1乃至H5 貫通孔部
A ギャップ寸法
C ギャップ寸法
B ギャップ
SH 閾値
NH 無孔部分
WP1 樹脂成形品
WP2 樹脂成形品
WP3 樹脂成形品

Claims (6)

  1. 成形機の金型から完全に硬化していない横幅1cm以下、長さが1.5cm以下の樹脂成形品を吸着ノズルを用いて取り出す成形品取出機であって、
    前記吸着ノズルは、1以上の吸引口を備えた吸着ヘッドと、
    前記吸着ヘッドの吸着面に装着されて前記樹脂成形品と接触し、前記吸着ノズルが前記樹脂成形品を吸着しているときに圧縮変形するスペーサとを具備し、
    前記スペーサは前記吸着ノズルが前記樹脂成形品を吸着しているときに、前記吸着ヘッドと前記樹脂成形品の表面との間に、前記1以上の吸引口に向かう漏れ空気の流れを形成する空気漏れ通路を形成する構造を有していることを特徴とする成形品取出機。
  2. 前記1以上の吸引口の位置が、前記樹脂成形品の1以上の無孔部分と対向するように定められている請求項に記載の成形品取出機。
  3. 前記1以上の吸引口からの吸引力と前記空気漏れ通路を通して吸引される漏れ空気の量とは、吸着時に前記樹脂成形品に加わる吸着力で、完全に硬化していない前記樹脂成形品が変形しないように定められている請求項またはに記載の成形品取出機。
  4. 前記スペーサは、静電気が帯電しない材質により形成されている請求項に記載の成形品取出機。
  5. 完全に硬化していない横幅1cm以下、長さが1.5cm以下の樹脂成形品を吸着する吸着ノズルであって、
    1以上の吸引口を備えた吸着ヘッドと、
    前記吸着ヘッドの吸着面に装着されて樹脂成形品と接触し、前記吸着ノズルが前記樹脂成形品を吸着しているときに圧縮変形するスペーサとを具備し、
    前記スペーサが、前記吸着ヘッドと前記樹脂成形品の表面との間に、前記1以上の吸引口に向かう漏れ空気の流れを形成する空気漏れ通路を備えていることを特徴とする吸着ノズル。
  6. 前記1以上の吸引口の位置が、前記樹脂成形品の1以上の無孔部分と対向するように定められている請求項に記載の吸着ノズル。
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