JP5921930B2 - 二次電池用電極材料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、二次電池の電極材料として用いることができ、金属化合物に導電助剤として繊維状炭素を複合化した二次電極用電極材料と其の製造方法に関する。
近年、デジタルカメラやスマートフォンや携帯型PCの急速な普及により、更には燃料の高騰や環境負荷に対する意識の高まりを受けた自動車の動力用又はスマートグリッドの蓄電用への応用も期待により二次電池の開発が活発になっている。
二次電池の電極としては、リチウムイオンを含む正極材料と導電助剤とを金属箔の表面に固着させた正極、及びリチウムイオンの脱挿入可能な負極材料と導電助剤とを金属箔の表面に固着させた負極が使用されている。
このリチウム二次電池の電極の製造方法としては、錯形成反応において金属化合物前駆体を形成してから焼成することによって形成する方法がある。この錯形成反応としては、ゾル・ゲル法が代表的である。
ここで、現在、正極材料としては、遷移金属複合酸化物であるコバルト酸リチウム(LiCoO)やリン酸鉄リチウム(LiFePO)が主に用いられている。しかしながら、コバルトは資源確保や安全性確保が難しいという欠点がある。リン酸鉄リチウムは、オリビン構造を有しているために非常に安定的であるが、コバルト酸リチウムの作動電圧が3.7〜4.1Vに対して、リン酸鉄リチウムの作動電圧が3.4Vと低いため、電気自動車やハイブリッドカーの動力に向かないといった問題を抱えている。
そこで、これらの代替物質として、リン酸鉄リチウムと同じオリビン構造を有するリン酸マンガンリチウムが注目を集めている。171mAh/gという高い理論容量を有する上に、作動電圧も4.1Vと高いためである。但し、リン酸マンガンリチウムは、リン酸鉄リチウムよりも更に電子導電性及びイオン導電性が低い。そのため、如何にして導電性を補償するかが開発の焦点となっている。
リン酸マンガンリチウムに導電性を付与する手法としては、リン酸マンガンリチウムをナノ粒子化し、更にカーボンと複合化することが提案されている。この複合材料は、ゾル・ゲル法、ポリオールプロセス、水熱合成、固相反応法等の様々なプロセスによる合成が試みられている。
例えば、リン酸源、マンガン源、及びリチウム源を一度に全て混合してゾル・ゲル反応を一定程度進行させることでリン酸マンガンリチウム前駆体(LMP前駆体)を得た後、その混合物にシングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)を混合し、更にゾル・ゲル反応を進行させることでLMP/CNT複合体(リン酸マンガンリチウムとカーボンナノチューブとの複合体)を得て、その後の焼成によって結晶性を向上させている(例えば、非特許文献1参照。)。
S.カイマクシズ(S.Kaymaksiz)ら、他4名、「リチウムイオンバッテリーに用いられる炭素質添加剤を有する高純度LiMnPO4複合体の合成経路に関する評価(Evaluation of synthesis routes for pure and composite LiMnPO4 with carbonaceous additives for Li−ion battery)」、ECS(The Electrochemical Society、電気化学学会)Transactions、25巻、36号、180〜197頁、2010年
しかしながら、非特許文献1の手法においては、ゾル・ゲル反応を用いた場合、マルチウォールカーボンナノチューブと比べてリン酸マンガンリチウム結晶粒子を高分散担持し易いといわれているシングルウォールカーボンナノチューブを導電助剤として複合化しているにも関わらず、Cレートが0.1Cで電気容量が35mAh/g程度しか得られていない。
これは、一部のカーボンナノチューブがネットワークを構築できていないこと、100nm以下の粒径を有するリン酸マンガンリチウム粒子も存在するが、同時に数百nmのものも存在すること、リン酸マンガンリチウム粒子の結晶性が低いこと等の単一又は複合的な要因が推測される。
また、二次電池用電極材料として実効性に富むLMP/CNT複合体を実現するには、リン酸マンガンリチウム結晶粒子を高分散担持し難いが比較的安価で導電性能の高いマルチウォールカーボンナノチューブを導電助剤として実現することも望まれている。
以上の要求は、二次電池用電極に対する全般的な要求であり、繊維状炭素に金属化合物活物質のナノ結晶粒子を高分散担持した、容量、出力特性の良好な複合体電極が望まれている。
従って、本発明は、繊維状炭素と金属化合物の複合体と用いた二次電池用電極材料において、電気容量又はこれに加えて導電性を高めた二次電極用電極材料の製造方法を実現し、優れた二次電極用電極材料を提供することを目的とする。
上記目的を達成する二次電池用電極材料は、繊維状炭素と金属化合物の各構成元素源の混合溶液を撹拌し、ゾル・ゲル反応させた後に焼成することで得られる。すなわち、ゾル・ゲル反応を促進させ、その後の焼成によって構成元素同士を結合させることで金属化合物の粒子を形成する。そして、この金属化合物の粒子を繊維状炭素によって担持させる。
リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)と繊維状炭素の複合体を製造する場合には、構成元素源であるリン酸源、リチウム源、反応開始剤であるマンガン源、及びキレート化剤を撹拌し、ゾル・ゲル反応を進行させた後に焼成する。反応開始剤とは、キレート化剤との錯形成反応を開始する構成元素源である。
また、キレート化剤は、キレート化剤と錯形成する金属イオン対して合計配座数比で1倍を越え、4倍以下となるように混合することが望ましい。より望ましくは、2〜3倍である。合計配座数比とは、金属イオンの総配位数に対するキレート化剤の総配座数の比であり、(キレート化剤の総配座数)/(金属イオンの総配位数)である。この比率で混合することにより、金属化合物の結晶性が向上して、二次電池の容量が増大する。
この混合工程においては、まず、繊維状炭素と、及び焼成工程で反応開始剤と反応して金属化合物を形成する構成元素源を溶解した第1溶液を調製して撹拌しておき、次に、反応開始剤を含む構成元素源を溶解した第2溶液を調製し、第1溶液と第2溶液とを混合してから更に撹拌することが望ましい。そして、その後にゾル・ゲル反応工程及び焼成工程を行う。
繊維状炭素とリン酸マンガンリチウムの複合体を得る場合には、繊維状炭素、リン酸源、及びキレート化剤を溶解して第1溶液を調製し、撹拌する。次に、リチウム源及びマンガン源を溶解して第2溶液を調製する。そして、第1溶液と第2溶液とを混合してから更に撹拌する。そして、その後にゾル・ゲル反応工程及び焼成工程を行う。
これにより、リン酸マンガンリチウム粒子の粒径が小さくなり、またリン酸マンガンリチウム粒子が繊維状炭素のネットワークに広く分散し、それによりリン酸マンガンリチウム粒子の結晶性が向上する。そのため、電気容量が向上したLMP/CNT複合体を得ることができる。
また、繊維状炭素のネットワークを予め形成させておく当該製法により、マルチウォールカーボンナノチューブにもリン酸マンガンリチウム粒子が精度よく担持される。そのため、導電性及び電気容量が高いLMP/CNT複合体を得られる。
尚、第1溶液及び第2溶液の調製において、溶媒はアルコール類、水、これらの混合溶媒を用いることができる。例えば、蒸留水を溶媒としたり、イソプロパノールと水の混合液を溶媒としたりしてもよい。
また、各撹拌過程においては、一番目に混合を目的とした撹拌を行い、次に均一な微細分散化を目的とした撹拌を行うのがよい。混合を目的とした撹拌は溶液を大きくかき混ぜるホモジナイザーを用い、また微細分散化を目的とした撹拌は超音波ホモジナイザーを用いた超音波分散処理を用いることができる。
ここで、繊維状炭素としては、カーボンナノファイバーやシングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)の他、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)も実効的である。リン酸源はリン酸二水素アンモニウム、リチウム源は酢酸リチウム、マンガン源は酢酸マンガンがそれぞれ挙げられる。キレート化剤はグリコール酸を用いることができる。
その他、リン酸源としてはリン酸やリン酸二水素リチウムを用いることもでき、リチウム源としては硝酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、又はリン酸二水素リチウムを用いることもでき、マンガン源としては硝酸マンガンや硫酸マンガンを用いることもできる。また、キレート化剤はクエン酸やアスコルビン酸を用いることもできる。
また、キレート化剤は、キレート化剤と錯形成するマンガンイオン対して合計配座数比で1倍を越え、4倍以下となるように混合することが望ましい。より望ましくは、2〜3倍である。合計配座数比とは、マンガンイオンの総配位数に対するキレート化剤の総配座数の比であり、(キレート化剤の総配座数)/(マンガンイオンの総配位数)である。この比率で混合することにより、リン酸マンガンリチウムの結晶性が向上して、二次電池の容量が増大する。
この理由は以下のようであると考えられる。マンガンイオンとキレート化剤が錯形成するためには、マンガンイオンの配座数の合計と、キレート化剤の配座数の合計が同じとなるように配合する。ところが、マンガンイオンをキレート化剤と錯形成させるために、マンガンイオンがリン酸と錯形成しないように酸性状態にすると、この酸性状態によって、キレート化剤が損傷し、マンガンイオンとキレート化剤の合計配座数が同じではキレート化剤が不足して、不完全な錯体となって、その後の焼成で生成するリン酸マンガンリチウムの結晶の結晶性が低下することによるものと推察される。
そこで、リン酸マンガンリチウムと繊維状炭素の複合体を得る場合、マンガンイオンの配座数は6、キレート化剤であるグリコール酸の配座数は1であるので、マンガンイオンとキレート化剤の導入比率は、モル比で1:6を超え、1:24以下とすると好適である。より望ましくは、モル比で1:12〜18である。モル比で1:6の場合、マンガンイオンの合計配座数は6×1=6、キレート化剤の配座数は1×6=6であり、合計配座数は同じである。また、1:24の場合、マンガンイオンの合計配座数は6×1=6、キレート化剤の配座数は1×24=24で、合計配座数は4倍である。この範囲においてリン酸マンガンリチウム粒子の結晶性は向上する。そのため、電気容量が向上したLMP/CNT複合体を得ることができる。
更に、金属化合物中の金属とキレート化剤と錯形成しない金属のモル比に一致する重量よりも10〜20wt%過剰になるように混合液に混合されるのが望ましい。
例えば、リン酸マンガンリチウムと繊維状炭素の複合体の製造方法において、リン酸源とリチウム源は、理論的な必要量よりも10〜20wt%だけ過剰に導入することが好適である。理論的な必要量は、リン酸とマンガンとリチウムとがモル比で1:1:1となる個々の重量であり、化学量論比に一致するモル比に対する重量である。マンガンに対するリン酸源とリチウム源の不足を補うためである。
焼成過程、換言するとゾル・ゲル反応後の加熱過程では、キレート化剤が炭化し、その炭化物にリン酸とリチウムが取り込まれる現象が発生する。そのため、リン酸及びリチウムの材料源の過剰量が10wt%未満であると、マンガンと反応するべきリン酸及びリチウムが不足してしまい、反応余剰の遊離マンガンイオンが発生してしまう。
一方、リン酸とリチウムの材料源を理論的な必要量よりも30wt%過剰に投入してしまうと、遊離マンガンイオンは減少していると思われるが、リン酸とリチウムの材料源が不純物質となる。リン酸マンガンリチウムと繊維状炭素の複合体の場合、リン酸二水素アンモニウムと酢酸リチウムとが不純物質として作用し、この複合体を2次電池用電極材料として用いた場合、充放電特性を悪化させてしまう。
また、投入したマンガンが過不足なくリン酸マンガンリチウムを構成すれば、リン酸マンガンリチウムの粒子はより広範に均一に分散することとなり、また、個々の結晶性も向上するため、電気容量が向上したリン酸マンガンリチウムと繊維状炭素の複合体を得ることができる。
この製造方法により作成された二次電池用電極材料は以下の特徴を有する。
(1)繊維状炭素とリン酸源とキレート化剤が溶解した第1溶液を調製して撹拌し、リチウム源とマンガン源が溶解した第2溶液を調製し、第1溶液に第2溶液を加えて、この混合液を撹拌し、ゾル・ゲル反応させ、反応物を焼成した場合、粒径が30〜70nmの範囲に分布するリン酸マンガンリチウム粒子が繊維状炭素のネットワークに担持されている二次電池用電極材料が得られる。
(2)モル比でリン酸対マンガン対リチウムが1対1対1となる重量よりも10〜20wt%過剰になるように、リン酸源とリチウム源を混合液に混合した場合、熱重量分析において観察される繊維状炭素の熱分解温度が600〜700℃となる二次電池用電極材料が得られる。
(3)更に、この繊維状炭素はマルチウォールカーボンナノチューブを適用可能である。
本発明によれば、電気容量を高めた金属化合物と繊維状炭素の複合体を組成でき、優れた二次電極用電極材料を実用化できる。また、マルチウォールカーボンナノチューブも実効的であるので、導電性を高めることもできる。
各実施例におけるリン酸マンガンリチウムの各材料源の投入方法、グリコール酸の導入量、及びリン酸二水素アンモニウムと酢酸リチウムの導入量を示す表である。 各実施例に共通する製造方法を示すフローチャートである。 実施例1と実施例2のLMP/CNT複合体を走査型電子顕微鏡を用いて撮影した写真である。 実施例1と実施例2のLMP/CNT複合体を二次電池用電極材料として用いた電池の充放電特性を示すグラフである。 実施例1と3乃至6のLMP/CNT複合体をX線回折分析して得られた結果を示すグラフである。 実施例1と3乃至6のLMP/CNT複合体を二次電池用電極材料として用いた電池の充放電特性を示すグラフである。 実施例1と7乃至9のLMP/CNT複合体を熱重量分析して得られた結果を示すグラフである。 実施例1と7乃至9のLMP/CNT複合体を二次電池用電極材料として用いた電池の充放電特性を示すグラフである。
各種の二次電池用電極材料の製造方法を示し、更にその結果得られた二次電池用電極材料の作用効果を示す。各種の二次電池用電極材料は、第一に、材料源の2段階導入法による影響、第二に、キレート化剤と当該キレート化剤と錯形成する金属イオンとの導入比率による影響、第三に、リン酸とリチウムの導入量による影響を、個々に確認するために作成された。
すなわち、各実施例は、図1に示す製法、キレート化剤と当該キレート化剤と錯形成する金属イオンとの導入比率、及びリン酸とリチウムの導入量で生成された。
まず、実施例2を除く各実施例に共通する製造方法について説明する。図2は、実施例2を除く各実施例に係る製造方法を示すフローチャートである。
最初にリン酸二水素アンモニウム(NHPO)とグリコール酸(GA)を蒸留水に溶解させ、この水溶液に繊維状炭素としてマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)を加えた(ステップS01)。この結果得られる溶液を第1溶液と呼ぶ。
リン酸二水素アンモニウムとグリコール酸の導入量は各実施例で変えている。蒸留水は約20〜30mlである。マルチウォールカーボンナノチューブは、0.28gを導入した。このマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)の量によって、重量比率でLMP:MWCNT=81.1:18.9となる。
次に、第1溶液のpHを濃硝酸を用いて1未満に調製した(ステップS02)。そして、ホモジナイザーによって撹拌し(ステップS03)、更に超音波処理装置によって撹拌した(ステップS04)。
ホモジナイザーによる第1回目の撹拌では、第1溶液中のマルチウォールカーボンナノチューブをある程度分散させることに主眼を置き、24m/sの速度で10分間の撹拌を行った。次に超音波処理装置による第2回目の撹拌では、導入された各材料を更に均一に細かく分散することを主眼に置き、45〜49kHzの周波数で10分間の撹拌を実施した。
次に、第1溶液とは別に、酢酸リチウム(Li(CHCOO)2HO)と酢酸マンガン(Mn((CHCOO)・4HO)を約20〜30mlの蒸留水に溶解させ(ステップS05)、この第2溶液も濃硝酸を用いてpHを1未満に調製した(ステップS06)。
第2溶液を第1溶液に加え(ステップS07)、ホモジナイザーによって撹拌し(ステップS08)、更に超音波処理装置によって撹拌した(ステップS09)。マルチウォールカーボンナノチューブを更に再度均一に分散させるためである。ホモジナイザーと超音波処理装置による撹拌条件はステップS03及びS04と同じである。
そして、撹拌後の溶液を加熱してゾル・ゲル反応を促進した(ステップS10)。加熱過程では、最初に70℃の雰囲気中に12時間静置し、次に100℃の雰囲気中に5時間静置し、最後に150℃の雰囲気中に12時間静置した。
ゾル・ゲル反応させた後、得られた固体を乳棒と乳鉢とを用いて粉砕した後(ステップS11)、LMP/CNT複合体の粉末を焼成した(ステップS12)。焼成条件は、5%H/95%Arの還元雰囲気下であり、最初に昇温速度4℃/minで室温から150℃まで上げ、次に昇温速度1℃/minで430℃まで上げてから1時間放置し、更に昇温速度1℃/minで550℃まで上げて6時間放置した。
(各実施例)
(実施例1)
金属イオンであるマンガンイオンとキレート化剤であるグリコール酸の導入比率がモル比で1:12となり、且つ、リン酸二水素アンモニウムと酢酸リチウムが理論的な必要量に過不足ないように導入した。モル比が1:12とは、リン酸マンガンリチウムにおいて、マンガンイオンの合計配座数が6×1=6、キレート化剤の配座数は1×12=12であり、合計配座数は2倍である。
すなわち、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)は、7.63ミリmol導入されるように第1溶液に0.878g投入された。酢酸リチウム(Li(CHCOO)2HO)も7.63ミリmol導入されるように第2溶液に0.778g投入された。酢酸マンガン(Mn((CHCOO)・4HO)も7.63ミリmol導入されるように第2溶液に1.87g投入された。グリコール酸(GA)は、91.6ミリmol(≒7.63×12)導入されるように第1溶液に6.96g投入された。
(実施例2)
実施例1のように2段階でマルチウォールカーボンナノチューブとリン酸マンガンリチウムの材料源を投入することによる影響を確認すべく、実施例2では、マルチウォールカーボンナノチューブとリン酸マンガンリチウムの全ての材料源とキレート化剤を一度に投入した。投入量は実施例1と同じである。
すなわち、ステップS01において、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)と酢酸リチウム(Li(CHCOO)2HO)と酢酸マンガン(Mn((CHCOO)・4HO)とグリコール酸(GA)を蒸留水に溶解させ、この水溶液にマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)を加える。そして、ステップS07以降の撹拌、ゾル・ゲル反応、及び焼成を実施した。
(実施例3乃至6)
次に、実施例1と比較してキレート化剤と当該キレート化剤と錯形成する金属イオンとの導入比率による影響を観察すべく、実施例3乃至6では、グリコール酸とマンガンイオンと導入比率を変化させた。その他は実施例1と同様である。
実施例3では、マンガンイオンとグリコール酸の導入比率がモル比で1:2となるように、グリコール酸を第1溶液に1.16g投入した。モル比が1:12とは、リン酸マンガンリチウムにおいて、合計配座数は6:2=3:1である。
実施例4では、マンガンイオンとグリコール酸の導入比率がモル比で1:6となるように、グリコール酸を第1溶液に3.48g投入した。モル比が1:12とは、リン酸マンガンリチウムにおいて、合計配座数は6:6=1:1である。
実施例5では、マンガンイオンとグリコール酸の導入比率がモル比で1:18となるように、グリコール酸を第1溶液に10.44g投入した。モル比が1:12とは、リン酸マンガンリチウムにおいて、合計配座数は6:18=1:3である。
実施例6では、マンガンイオンとグリコール酸の導入比率がモル比で1:24となるように、グリコール酸を第1溶液に13.92g投入した。モル比が1:12とは、リン酸マンガンリチウムにおいて、合計配座数は6:24=1:4である。
(実施例7乃至9)
実施例1と比較してリン酸とリチウムの導入量による影響を観察すべく、実施例7乃至9では、リン酸二水素アンモニウムと酢酸リチウムを過剰に投入した。その他は実施例1と同様である。
実施例7では、理論的な必要量よりも10wt%だけ過剰に導入すべく、リン酸二水素アンモニウムを0.966g(=0.878×1.1)、酢酸リチウムを0.856g(=0.778×1.1)加えた。
実施例8では、理論的な必要量よりも20wt%だけ過剰に導入すべく、リン酸二水素アンモニウムを1.053g(=0.878×1.2)、酢酸リチウムを0.934g(=0.778×1.2)加えた。
実施例9では、理論的な必要量よりも30wt%だけ過剰に導入すべく、リン酸二水素アンモニウムを1.141g(=0.878×1.3)、酢酸リチウムを1.011g(=0.778×1.3)加えた。
(結果:2段階投入による影響)
図3は、実施例1と実施例2のLMP/CNT複合体を走査型電子顕微鏡を用いて撮影した写真である。リン酸マンガンリチウムの全ての材料源とキレート化剤とを一度に投入した実施例2と比べて、リン酸源とキレート化剤とを先に投入して撹拌し、その後にマンガン源とリチウム源とを投入した実施例1のリン酸マンガンリチウム粒子は、小粒子となってマルチウォールカーボンナノチューブのネットワークに広く分散していることがわかる。
すなわち、実施例1のリン酸マンガンリチウム粒子は、粒径の範囲が30〜70nmで最多粒子の粒径が50nmの正規分布で存在していた。一方、実施例2のリン酸マンガンリチウム粒子は、粒径の範囲が30〜300nmで最多粒子の粒径が100nmの正規分布で存在していた。
図4は、この実施例1と実施例2のLMP/CNT複合体を二次電池用電極材料として用いた電池の充放電特性を示すグラフであり、横軸は電気容量、縦軸は電位である。この充放電特性の評価において、電極は、LMP/CNT複合体とポリフッ化ビニリデン(PVdF)とピロリドン(NMP)を用いて作成した。正極はLMP/CNT複合体とPVdFとの重量比が95:5となるように作成した。電解液は、1モルLiBF/(EC+DMC)を用い、体積比を1:1とした。参照極及び対極としてLi箔を用いた。そして、この電池を用いてCレートが0.1Cにおける充放電特性をC.Cモード(定電流モード)で評価した。尚、Cレートは理論容量171mAh/gを用いて計算した。
図4に示すように、実施例1のLMP/CNT複合体を二次電池用電極材料として用いた電池は、電気容量が92mAh/gとなった。一方、実施例2のLMP/CNT複合体を二次電池用電極材料として用いた電池は、電気容量が80mAh/gであった。
このように、カーボンナノチューブとリン酸源とキレート化剤が溶解した第1溶液を調製して撹拌し、リチウム源とマンガン源が溶解した第2溶液を調製し、第1溶液に第2溶液を加えて撹拌し、混合液をゾル・ゲル反応させ、得られた固体を焼成することで、二次電池用電極材料となるLMP/CNT複合体を生成することで、粒径が30〜70nmの範囲に分布するリン酸マンガンリチウム粒子がカーボンナノチューブのネットワークに担持され、マルチウォールカーボンナノチューブを用いても92mAh/gのLMP/CNT複合体を得ることができた。
(結果:金属イオンとキレート化剤との導入比率による影響)
実施例1と3乃至6の結果を比較することにより、キレート化剤の導入量によるLMP/CNT複合体に対する影響が図5及び6に示すように確認できる。図5は、実施例1と3乃至6のLMP/CNT複合体をX線回折分析(X−ray Diffraction)して得られた結果を示すグラフであり、横軸は2θ(θは入射角)、縦軸は回折強度である。また、図6は、実施例1と3乃至6のLMP/CNT複合体を二次電池用電極材料として用いた電池の充放電特性を示すグラフであり、横軸は電気容量、縦軸は電位である。
X線回折はBruker社製のHI−STAR(商標)検知器を装備したAXS D8 Discover回折装置とCu Kα放射線を用いて測定した。4つの2θ領域(0−40°、20−60°、40−80°、60−100°)で1200秒間、回折X線を測定(検出)した。
充放電特性の評価において、電極は、LMP/CNT複合体とアクリル系バインダーとCMC(カルボキシメチルセルロース)を用いて作成した。正極はLMP/CNT複合体とCMCとアクリル系バインダーとの重量比が94.5:2.5:3.0となるように作成した。電解液は、1モルLiBF/(EC+DMC)を用い、体積比を1:1とした。参照極及び対極としてLi箔を用いた。そして、この電池を用いてCレートが0.1Cにおける充放電特性をC.Cモード(定電流モード)で評価した。尚、Cレートは理論容量171mAh/gを用いて計算した。
図5に示すように、リン酸マンガンリチウム粒子の結晶性を示している2θ=35°においては、モル比が1:12の実施例1及び1:18の実施例5の場合は、回折強度を示すカウントが飛び抜けて高くなっている。また、1:24の実施例6の場合においても、モル比を1:2とした実施例3やモル比が1:6の実施例4と比べてカウントの向上が見られた。一方、モル比が1:2の実施例3の場合、カウントが飛び抜けて低くなり、かつ不純物も散見される。
このように、キレート化剤と金属イオンと導入比率に応じて、金属化合物粒子の結晶性が向上していることがわかる。図6は、この結晶性の向上を顕著に現している。
図6に示すように、モル比が1:6超〜24とした実施例1、4乃至6の場合、モル比が1:2や1:6の場合と比べて優れた充放電特性を示すことが確認された。モル比が1:6超〜24の場合には充電容量が81超〜161mAh/gであり、放電容量は63超〜85mAh/gであり、理論値の37〜50%を達成している。
特に、モル比が1:12とした実施例1及びモル比が1:18とした実施例5の場合、充電容量がそれぞれ157、161mAh/gであり、放電容量がそれぞれ84、85mAh/gであり、理論値の49〜50%を達成している。
このように、金属イオンに対してキレート化剤がモル比で6超〜24倍となるように、望ましくは12〜18倍となるように、混合液にキレート化剤とマンガン源とリチウム源を混合させるようにすることで、X線回折によるリン酸マンガンリチウム粒子に対応する回折強度も高くなり、マルチウォールカーボンナノチューブを用いても85mAh/gのLMP/CNT複合体を得ることができる。
(結果:リン酸とリチウムの導入量による影響)
実施例1と7乃至9の結果を比較することにより、リン酸二水素アンモニウムと酢酸リチウムの導入量によるLMP/CNT複合体に対する影響が図7及び8に示すように確認できる。図7の(a)は、実施例1と7乃至9のLMP/CNT複合体を熱重量分析(TG)して得られた結果を示すグラフであり、横軸は温度、縦軸は質量である。図7の(b)は、示差熱分析(DTA)して得られた結果を示すグラフであり、横軸が温度、縦軸が基準物質との起電力差である。また、図8は、実施例1と7乃至9のLMP/CNT複合体を二次電池用電極材料として用いた電池の充放電特性を示すグラフである。
熱重量分析及び示差熱分析は、LMP/CNT複合体を10℃/分の昇温速度で25−1000℃の温度で空気(Air)中で行った。
充放電特性の評価において、電極は、LMP/CNT複合体とポリフッ化ビニリデン(PVdF)とピロリドン(NMP)を用いて作成した。正極はLMP/CNT複合体とPVdFとの重量比が95:5となるように作成した。電解液は、1モルLiBF/(EC+DMC)を用い、体積比を1:1とした。参照極及び対極としてLi箔を用いた。そして、この電池を用いてCレートが0.1Cにおける充放電特性をC.Cモード(定電流モード)で評価した。尚、Cレートは理論容量171mAh/gを用いて計算した。
図7に示すように、リン酸二水素アンモニウムと酢酸リチウムを理論的な必要量だけ投入した実施例1の場合、LMP/CNT複合体の熱分解温度が、カーボンナノチューブの熱分解温度よりも低くなってしまった。一方、リン酸二水素アンモニウムと酢酸リチウムを理論的な必要量よりも10〜20wt%過剰に投入した実施例7及び8の場合、LMP/CNT複合体の熱分解温度が、カーボンナノチューブの熱分解温度に近づいた。
実施例1のように、LMP/CNT複合体の熱分解温度が、マルチウォールカーボンナノチューブ単体の熱分解温度よりも低いのは、遊離Mn2+の存在に起因すると考えられる。遊離Mn2+の酸化により生じる酸化マンガン(MnO)がマルチウォールカーボンナノチューブを分解する触媒作用を有するためである。従って、リン酸二水素アンモニウムと酢酸リチウムを理論的な必要量よりも10〜20wt%過剰に投入すると、金属錯体の構成に関与しないMn2+が減少していることがわかる。
図8に示すように、リン酸二水素アンモニウムと酢酸リチウムを理論的な必要量よりも10〜20wt%過剰に投入した実施例7及び8は、より多くのマンガンが金属錯体の構成に関与し、優れた充放電特性を示していることがわかる。すなわち、充電容量が実施例1の122mAh/gと比べて、充電容量が124〜132mAh/gとなり、放電容量が実施例1の92mAh/gと比べて、放電容量は100〜102mAh/gとなり、理論値の58〜60%を達成している。
尚、リン酸二水素アンモニウムと酢酸リチウムを理論的な必要量よりも30wt%過剰に投入した実施例9は、図7に示すように遊離Mn2+が減少していると思われるが、図8に示すように、充放電特性において実施例1と顕著な差異は見られなかった。これは、30wt%過剰の条件は遊離Mn2+減少させるには十分な量であるが、遊離Mn2+と反応しないものが現れてしまい、それが不純物となりLiMnPOの結晶性を下げているものと思われる。
このように、モル比でリン酸対マンガン対リチウムが1対1対1となる重量よりも10〜20wt%過剰になるように、リン酸源とリチウム源を混合液に混合することで、熱重量分析によるLMP/CNT複合体中のカーボンナノチューブの熱分解温度ピークが600〜700℃となり、マルチウォールカーボンナノチューブを用いても102mAh/gのLMP/CNT複合体を得ることができる。
以上のように、本明細書においては、本発明に係る実施形態を例として提示したが、発明の範囲を限定することを意図したものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。そして、本実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
すなわち、実施例1乃至9に示すように、リン酸マンガンリチウムの各材料源を2段階に分けて投入にした場合、キレート化剤の導入量を変化させた場合、及びリン酸二水素アンモニウムと酢酸リチウムの導入量を変化させた場合のそれぞれにおいて、個別的に電気容量の向上が示されている。従って、これらの一つを適用してLMP/CNT複合体を製造しても、これらの複数又は全てを適用してLMP/CNT複合体を製造しても、電気容量の向上を図ることができる。

Claims (5)

  1. 繊維状炭素と、リン酸源とキレート化剤ならびにリチウム源とマンガン源を構成元素源とし、前記繊維状炭素と前記構成元素源の混合溶液を撹拌し、ゾル・ゲル反応させ、焼成することで得られる二次電池用電極材料の製造方法であって、
    前記キレート化剤と錯形成する金属イオンに対して前記キレート化剤が合計配座数比で1倍を超え、4倍以下となるように、前記混合溶液に前記キレート化剤と前記マンガン源を混合させ、
    モル比でリン酸対マンガン対リチウムが1対1対1となる重量よりも10〜20wt%過剰になるように、前記リン酸源と前記リチウム源を前記混合溶液に混合させること、
    を特徴とする二次電池用電極材料の製造方法。
  2. 記金属イオンであるマンガンイオンに対して前記キレート化剤がモル比で6〜24倍となるように、前記混合液に前記キレート化剤と前記マンガン源を混合させること、
    を特徴とする請求項1記載の二次電池用電極材料の製造方法。
  3. 記金属イオンであるマンガンイオンに対して前記キレート化剤がモル比で12〜18倍となるように、前記混合液に前記キレート化剤と前記マンガン源を混合させること、
    を特徴とする請求項1記載の二次電池用電極材料の製造方法。
  4. 前記繊維状炭素は、カーボンナノチューブ及び/またはカーボンナノファイバであること、
    を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の二次電池用電極材料の製造方法。
  5. 前記繊維状炭素は、マルチウォールカーボンナノチューブであること、
    を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の二次電池用電極材料の製造方法。
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