JP5921855B2 - 偏光性積層フィルムおよび偏光板の製造方法 - Google Patents

偏光性積層フィルムおよび偏光板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、偏光性積層フィルムおよび偏光板の製造方法に関する。
偏光板は、液晶表示装置などの表示装置における偏光の供給素子等として広く用いられている。かかる偏光板として、従来より、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子層とトリアセチルセルロースなどの保護フィルムが積層されたものが使用されている。偏光子層(偏光フィルム)においては、高い光学性能が求められるとともに、近年、液晶表示装置のノート型パーソナルコンピュータや携帯電話などモバイル機器への展開などに伴い、薄肉軽量化が求められている。
偏光板の製造方法の一例として、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムを単独で延伸してから、あるいは延伸しながら、染色処理や架橋処理を施して偏光フィルムを作製し、これを保護フィルム等に積層することで偏光板を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
偏光板の製造方法の他の一例として、基材フィルムの表面にポリビニルアルコール系樹脂を含む溶液を塗布して樹脂層を設けた後、基材フィルムと樹脂層からなる積層フィルムを延伸し、次いで染色して、樹脂層から偏光子層を形成し、偏光子層を有する偏光性積層フィルムを得る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。これをそのまま偏光板として利用したり、該フィルムに保護フィルムを貼合した後、基材フィルムを剥離したものを偏光板として利用したりする方法が開示されている。
偏光板の製造方法の他の一例として、保護フィルム用樹脂とポリビニルアルコール系樹脂を共押出して積層フィルムを作製し、この積層フィルムを延伸し、次いで染色することにより、偏光子層と保護フィルムとからなる偏光板を得る方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開平11−49878号公報 特開2000−338329号公報 特開2009−258218号公報
しかしながら、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムを単独で延伸・染色・架橋処理を施して偏光フィルムを製造する方法においては、破断やシワなどが生じ易いため、50μm以下の薄型のフィルムを扱うのが難しく、したがって偏光フィルムの薄型化の実現が困難である。
基材フィルムの表面にポリビニルアルコール系樹脂を含む溶液を塗布して樹脂層を設ける方法においては、ポリビニルアルコール系樹脂を含む溶液の乾燥収縮により樹脂層が縮み易く、その結果基材フィルムの両端が樹脂層側に反り返る現象が生じることがあり、この状態のまま連続で樹脂層を備えた基材フィルムを流し続けると、乾燥炉内や乾燥炉出口で基材フィルムの端部が折れ込んでしまう不具合を引き起こすことがある。
保護フィルム用樹脂とポリビニルアルコール系樹脂を共押出して積層フィルムを製造する方法においては、通常ポリビニルアルコール系樹脂を溶媒とともに溶融して押出を行なうため、上述と同様に乾燥収縮により基材フィルムの端部が折れ込んでしまう不具合を招く場合がある。
そこで、本発明の目的は、基材フィルムの端部が折れ込んでしまう不具合を招くことなく、薄型の偏光子層を有する偏光性積層フィルムおよび偏光板を製造する方法を提供することにある。
本発明は、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された偏光子層とを備える偏光性積層フィルムの製造方法であって、
厚さが50μm以下のポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂フィルムを基材フィルムの一方の面に貼合して積層フィルムを得る樹脂フィルム貼合工程と、
上記積層フィルムを一軸延伸する延伸工程と、
一軸延伸されたフィルムの前記樹脂フィルムを二色性色素で染色して偏光子層を形成する染色工程と、をこの順で含む、偏光性積層フィルムの製造方法である。
上記樹脂フィルム貼合工程においては、たとえば、粘着剤層または接着剤層を介して前記樹脂フィルムを前記基材フィルムの一方の面に貼合する。
上記樹脂フィルム貼合工程において、上記樹脂フィルムの厚さは、15μm以上であることが好ましい。
上記樹脂フィルム貼合工程で用いられる上記樹脂フィルムは、好ましくは、
ポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を支持体上に形成する樹脂層形成工程と、
支持体上に形成された樹脂層を乾燥する第1乾燥工程と、
乾燥された樹脂層を該支持体から剥離して該樹脂層を取得する樹脂層分離工程と、
剥離された樹脂層を第1の乾燥工程における温度より高い乾燥温度で乾燥する第2乾燥工程と、をこの順で含む製造方法により製造された樹脂フィルムである。
また、本発明は、偏光子層と、該偏光子層の一方の面に形成された保護フィルムとを備える偏光板の製造方法であって、
上記本発明の製造方法により偏光性積層フィルムを製造した後、
当該偏光性積層フィルムにおける上記偏光子層の上記基材フィルム側の面とは反対側の面に保護フィルムを貼合する保護フィルム貼合工程と、
当該偏光性積層フィルムから上記基材フィルムを剥離する基材フィルム剥離工程と、をこの順で含む。
本発明によると、製造工程において基材フィルムの端部が折れ込むことなく、薄型の偏光子層を有する偏光性積層フィルムおよび偏光板を製造することができる。
本発明の偏光性積層フィルムの製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。 本発明の偏光板の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。 ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る偏光性積層フィルムの製造方法および偏光板の製造方法の好ましい実施形態を詳細に説明する。
[偏光性積層フィルムの製造方法]
図1は、本発明に係る偏光性積層フィルムの製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。本実施形態で製造する偏光性積層フィルムは、基材フィルムと、基材フィルムの一方の面に形成された偏光子層とを備える。本実施形態の偏光性積層フィルムの製造方法では、ポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂フィルムを基材フィルムの一方の面に貼合して積層フィルムを得る樹脂フィルム貼合工程(S10)と、当該積層フィルムを一軸延伸する延伸工程(S20)と、当該積層フィルムの樹脂フィルムを二色性色素で染色して偏光子層を形成する染色工程(S30)を順に実施する。
本明細書においては、基材フィルムの一方の面にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂フィルム(以下、「ポリビニルアルコール系樹脂フィルム」ともいう)が貼合された積層体を「積層フィルム」、偏光子としての機能を有するポリビニルアルコール系樹脂フィルムを「偏光子層」、基材フィルムの一方の面に偏光子層を備えた積層体を「偏光性積層フィルム」という。そして、偏光子層の一方の面に保護フィルムを備えた積層体を「偏光板」という。
上記の製造方法により、基材フィルム上に、十分な偏光性能を有する、たとえば厚さ25μm以下の偏光子層を備えた偏光性積層フィルムを得ることができる。上記の製造方法により得る偏光性積層フィルムの偏光子層の厚さは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。この偏光性積層フィルムは、後述するように、偏光子層を保護フィルムへ転写するための中間体製品として用いることもでき、また、基材フィルムが保護フィルムの機能を有する場合は、この偏光性積層フィルムをそのまま偏光板として用いることもできる。
[偏光板の製造方法]
図2は、本発明に係る偏光板の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。本実施形態で製造する偏光板は、偏光子層と、偏光子層の一方の面に形成された保護フィルムとを備える。本実施形態の偏光板の製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを基材フィルムの一方の面に貼合して積層フィルムを得る樹脂フィルム貼合工程(S10)と、当該積層フィルムを一軸延伸する延伸工程(S20)と、当該積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色して偏光子層を形成する染色工程(S30)とを順に実施して偏光性積層フィルムを得た後、偏光性積層フィルムにおける偏光子層の基材フィルム側の面とは反対側の面に保護フィルムを貼合する保護フィルム貼合工程(S40)と、偏光性積層フィルムから基材フィルムを剥離する基材フィルム剥離工程(S50)と、をこの順で有する。
上記の製造方法により、保護フィルム上に十分な偏光性能を有する、たとえば厚さ25μm以下の偏光子層を備えた偏光板を得ることができる。上記の製造方法により得る偏光板の偏光子層の厚さは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。この偏光板は、たとえば、感圧式接着剤を介して他の光学フィルムや液晶セルに貼り合せるなどして用いることができる。
以下、図1および図2におけるS10〜S50の各工程について詳細に説明する。なお、図1および図2のS10〜S30の各工程は同様の工程である。
<樹脂フィルム貼合工程(S10)>
基材フィルムの一方の面にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを貼合する。基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂フィルムの貼合方法は、後の延伸工程(S20)、染色工程(S30)を経ても剥がれない方法であれば特に限定されない。たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムおよび/または基材フィルムの貼合面に粘着剤層または接着剤層を形成し、粘着剤層または接着剤層を介して両者を貼合する。
(ポリビニルアルコール系樹脂フィルム)
樹脂フィルム貼合工程において用いるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚さは50μm以下とする。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、後の延伸工程および染色工程を経て偏光子層を形成することになるが、樹脂フィルム貼合工程(S10)におけるポリビニルアルコール系樹脂フィルム、すなわち延伸前のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚さが50μmを超える場合、本発明のように基材フィルムと貼合しなくても延伸工程・染色工程のハンドリングができるため、本発明によるメリットが小さい。また、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚さが50μmを超える場合、偏光子層の厚さを25μm以下の薄膜に形成するのが難しい場合がある。さらに、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム(延伸前)の厚さは、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上とする。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚さが10μm未満の場合は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを単独で得ることが難しい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚さは、15〜45μmであることがより好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを形成するポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂は、完全けん化品であることが好ましい。けん化度の範囲は、80.0モル%〜100.0モル%であるものが好ましく、90.0モル%〜100モル%の範囲であるものがより好ましく、さらには94.0モル%〜100モル%の範囲であるものが最も好ましい。けん化度が80.0モル%未満であると偏光子層を形成した後の耐水性・耐湿熱性に著しく劣る不具合がある。
ここでいうケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基がケン化工程により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式で定義される数値である。JIS K 6726(1994)で規定されている方法で求めることができる。
ケン化度(モル%)=(水酸基の数)÷(水酸基の数+酢酸基の数)×100
ケン化度が高いほど、水酸基の割合が高いことを示しており、すなわち結晶化を阻害する酢酸基の割合が低いことを示している。
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、一部が変性されている変性ポリビニルアルコールでもよい。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂をエチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで変性したものなどが挙げられる。変性の割合は30モル%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましい。30モル%を超える変性を行った場合には、二色性色素を吸着しにくくなり、偏光性能が低くなってしまう不具合を生じる。
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度も特に限定されるものではないが、100〜10000が好ましく、1500〜8000がより好ましく、さらには2000〜5000であることが最も好ましい。ここでいう平均重合度もJIS K 6726(1994)によって定められた方法によって求められる数値である。
このような特性を有するポリビニルアルコール系樹脂としては、たとえば(株)クラレ製のPVA124(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、PVA117(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、PVA624(ケン化度:95.0〜96.0モル%)およびPVA617(ケン化度:94.5〜95.5モル%);たとえば日本合成化学工業(株)製のAH−26(ケン化度:97.0〜98.8モル%)、AH−22(ケン化度:97.5〜98.5モル%)、NH−18(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、およびN−300(ケン化度:98.0〜99.0モル%);たとえば日本酢ビ・ポバール(株)のJC−33(ケン化度:99.0モル%以上)、JM−33(ケン化度:93.5〜95.5モル%)、JM−26(ケン化度:95.5〜97.5モル%)、JP−45(ケン化度:86.5〜89.5モル%)、JF−17(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、JF−17L(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、および、JF−20(ケン化度:98.0〜99.0モル%)などが挙げられ、これらは本発明のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの形成において好適に用いることができる。
上記のようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜することで、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが形成される。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの製膜の方法としては、特に限定されるものではない。たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂溶液を支持体上に塗布して乾燥させる溶剤キャスト法、あるいは、水を含むポリビニルアルコール系樹脂を溶融混練して押出機で支持体上に押出す溶融押出法、さらには、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を貧溶媒中に吐出するゲル製膜法などが挙げられる。これらの中でも、より透明なフィルムが得られることから、キャスト法または溶融押出法が好ましい。
以下、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの製造方法の好ましい実施形態を説明する。図3は、本実施形態のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの製造方法のフローチャートを示す。本実施形態においては、ポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を支持体上に形成する樹脂層形成工程(S110)と、当該樹脂層を乾燥する第1乾燥工程(S120)と、前記樹脂層を前記支持体から剥離して前記樹脂層を取得する樹脂層分離工程(S130)と、当該樹脂層を第1乾燥工程における温度より高い温度で乾燥する第2乾燥工程(S140)と、をこの順で実施する。
ここでいう支持体としては、たとえば、離型フィルム、ステンレスベルト、チルロールが挙げられる。樹脂層形成工程(S110)における樹脂層を支持体上に形成する方法として、上述の溶剤キャスト法、溶融押出法が例示される。たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂の粉末を良溶媒に溶解させて得たポリビニルアルコール系樹脂溶液を支持体の一方の表面上に塗工し、溶剤を蒸発させて乾燥することにより形成する溶剤キャスト法が好適である。ポリビニルアルコール系樹脂層をこのようにして形成することにより、厚さが10〜50μmのポリビニルアルコール系樹脂層を形成することが可能となる。
ポリビニルアルコール系樹脂溶液を支持体上に塗工する方法としては、ワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング法およびグラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコーター法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法等の公知の方法を適宜選択して採用できる。
これらの方法において用いるポリビニルアルコール系樹脂溶液は、たとえば、80〜90℃に加温した水にポリビニルアルコール系樹脂を溶解させることで得ることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の固形分濃度は6wt%〜50wt%の範囲であることが好ましい。固形分の濃度が6wt%未満の場合、粘度が低くなりすぎて樹脂層形成時の流動性が高くなりすぎ、均一なフィルムを得ることが難しくなる。一方、固形分の濃度が50wt%を超えると、粘度が高くなりすぎて樹脂層形成時の流動性が低くなるため、製膜が困難になる。
ポリビニルアルコール系樹脂溶液には、可塑剤を添加することができる。中でも多価アルコールは好適に用いられ、たとえば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。複数を組み合わせてもよい。特に、エチレングリコールやグリセリンは好適に用いられる。また、必要に応じて、界面活性剤などのブロッキン防止剤なども併用することも出来る。
樹脂層形成工程(S110)の後、第1乾燥工程(S120)において、低温、通常は60℃以下の乾燥温度で、支持体上に形成された樹脂層を支持体から剥離できる程度に乾燥させる。支持体から剥離できる程度とは、塗液がある程度固体状となり、フィルムとして剥離できるような状態である。水分率を通常、30重量%以下まで乾燥させた状態とすれば、フィルム全体を安定的に剥離することができる。20重量%以下まで乾燥させればより容易に剥離することができるので好ましい。ここで言う水分率とは、乾燥重量法で求められる水分量を示し、以下の方法で求めることができる。
・剥離後のPVAフィルムを常温下(およそ25℃、55%RH)に30分以上放置した後、フィルム重量を測定する。
・その後、105℃で60分間乾燥処理をしてから取りだした後、フィルム温度が常温に戻るまで数分間放置する。
・数分間放置後、フィルムの重量を再測定する。
・得られた値を下記の式に代入して算出する。
水分率=(乾燥前の重量−乾燥後の重量)/乾燥前の重量×100(重量/重量%)
支持体上に形成された樹脂層を支持体から剥離できる程度に乾燥させる具体的なやり方として、例えば実際の製造においては、この剥離可能な状態に達する乾燥条件を、あらかじめ予備実験で見極めておき、その条件にて行なうことが好ましい。例えば40〜60℃の温度範囲で1〜30分間乾燥させるのが好ましく、50℃で3〜20分程度の乾燥がより好ましい。第1乾燥工程(S120)においては、低温で乾燥させることにより、また樹脂層を完全に乾燥させるのではなく支持体から剥離できる程度に乾燥させることにより、樹脂層における乾燥収縮が生じにくく、支持体における端部のカールの発生も防ぐことができる。
次に樹脂層分離工程(S130)において、第1乾燥工程において製造された樹脂層を支持体から剥離して樹脂層を取得する。そして、第2乾燥工程(S140)において、支持体から剥離された樹脂層を乾燥させる。第2乾燥工程(S140)においては、樹脂層を十分に乾燥させる。したがって、第1乾燥工程と比較して高温の乾燥温度で乾燥させる。ここでいう高温とは、通常は150℃以下であり、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは100℃以下であり、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上である。乾燥方法は、熱風を吹き付ける方法、熱ロールに接触させる方法、IRヒーターで加熱する方法など、種々の方法があるが、いずれも好適に用いることができる。なお、第1乾燥工程および第2乾燥工程でいう乾燥温度とは、熱風を吹き付ける方法やIRヒーターなどのように乾燥炉を設ける乾燥設備の場合には乾燥炉内の雰囲気温度を意味し、熱ロールのような接触型の乾燥設備の場合には、熱ロールの表面温度を意味する。以上の工程を経て、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを製造する。
本実施形態の方法で作製したポリビニルアルコール系樹脂フィルムはカールが抑制された良好なものとなる。
(基材フィルム)
基材フィルムに用いる樹脂としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられ、それらのガラス転移温度Tgまたは融点Tmに応じて適切な樹脂を選択できる。基材フィルムは、その上に積層するポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸に適した温度範囲で延伸できるようなものを用いることが好ましい。
熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、(メタ)アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、およびこれらの混合物、共重合物などが挙げられる。
基材フィルムは、上述の樹脂1種類のみからなるフィルムであっても構わないし、樹脂を2種類以上をブレンドしてなるフィルムであっても構わない。該基材フィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられ、安定的に高倍率に延伸しやすく好ましい。また、プロピレンにエチレンを共重合することで得られるエチレン−ポリプロピレン共重合体なども用いることもできる。共重合は他の種類のモノマーでも可能であり、プロピレンに共重合可能な他種のモノマーとしては、たとえば、エチレン、α−オレフィンを挙げることができる。α−オレフィンとしては、炭素数4以上のα−オレフィンが好ましく用いられ、より好ましくは、炭素数4〜10のα−オレフィンである。炭素数4〜10のα−オレフィンの具体例を挙げれば、たとえば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の直鎖状モノオレフィン類;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の分岐状モノオレフィン類;ビニルシクロヘキサンなどである。プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。共重合体中の当該他のモノマー由来の構成単位の含有率は、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法に従い、赤外線(IR)スペクトル測定を行なうことにより求めることができる。
上記のなかでも、プロピレン系樹脂フィルムを構成するプロピレン系樹脂として、プロピレンの単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、および、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体が好ましく用いられる。
また、プロピレン系樹脂フィルムを構成するプロピレン系樹脂の立体規則性は、実質的にアイソタクチックまたはシンジオタクチックであることが好ましい。実質的にアイソタクチックまたはシンジオタクチックの立体規則性を有するプロピレン系樹脂からなるプロピレン系樹脂フィルムは、その取扱い性が比較的良好であるとともに、高温環境下における機械的強度に優れている。
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有するポリマーであり、主に、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合体である。用いられる多価カルボン酸は、主に2価のジカルボン酸が用いられ、たとえば、イソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチルなどがある。また、用いられる多価アルコールも主に2価のジオールが用いられ、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。具体的な樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレート、などが挙げられる。これらのブレンド樹脂や、共重合体も好適に用いることができる。
環状ポリオレフィン系樹脂としては、好ましくはノルボルネン系樹脂が用いられる。環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、たとえば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、およびこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびにそれらの水素化物などが挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
環状ポリオレフィン系樹脂としては種々の製品が市販されている。具体例としては、Topas(登録商標)(Ticona社製)、アートン(登録商標)(JSR(株)製)、ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、アペル(登録商標)(三井化学(株)製)が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。たとえば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(たとえば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂として、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートなどが挙げられる。また、これらの共重合物や、水酸基の一部を他種の置換基などで修飾された物なども挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテートが特に好ましい。セルローストリアセテートは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。セルローストリアセテートの市販品の例としては、フジタック(登録商標)TD80(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UF(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UZ(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD40UZ(富士フィルム(株)製)、KC8UX2M(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)などが挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合されたポリマーからなるエンジニアリングプラスチックであり、高い耐衝撃性、耐熱性、難燃性を有する樹脂である。また、高い透明性を有することから光学用途でも好適に用いられる。光学用途では光弾性係数を下げるためにポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、波長依存性を改良した共重合ポリカーボネートなども市販されており、好適に用いることが出来る。このようなポリカーボネート樹脂は広く市販されており、たとえば、パンライト(登録商標)(帝人化成(株))、ユーピロン(登録商標)(三菱エンジニアリングプラスチック(株))、SDポリカ(登録商標)(住友ダウ(株))、カリバー(登録商標)(ダウケミカル(株))などが挙げられる。
基材フィルムには、上記の熱可塑性樹脂の他に、任意の適切な添加剤が添加されていてもよい。このような添加剤としては、たとえば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、および着色剤などが挙げられる。基材フィルム中の上記にて例示した熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。基材フィルム中の熱可塑性樹脂の含有量が50重量%未満の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現されないおそれがあるからである。
延伸前の基材フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性の点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは1〜300μm、さらに好ましくは5〜200μm、最も好ましくは5〜150μmである。
基材フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムとの密着性を向上させるために、少なくともポリビニルアルコール系樹脂フィルムが貼合される側の表面に、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等を行ってもよい。また密着性を向上させるために、基材フィルムのポリビニルアルコール系樹脂フィルムが形成される側の表面に、プライマー層等の薄層を形成してもよい。
(プライマー層)
基材フィルムのポリビニルアルコール系樹脂フィルムが貼合される側の表面にプライマー層が形成されていてもよい。プライマー層としては、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂フィルムとの両方にある程度強い密着力を発揮する材料であれば特に限定されない。たとえば、透明性、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。具体的には、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも、密着性がよいポリビニルアルコール系樹脂は好ましく用いられる。
プライマー層として使用されるポリビニルアルコール系樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール樹脂およびその誘導体が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールなどの他、ポリビニルアルコール樹脂をエチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで変性したものが挙げられる。上述のポリビニルアルコール系樹脂材料の中でも、ポリビニルアルコール樹脂を用いるのが好ましい。
プライマー層の強度を上げるために上記の熱可塑性樹脂に架橋剤を添加してもよい。熱可塑性樹脂に添加する架橋剤は、有機系、無機系など公知のものを使用することができる。使用する熱可塑性樹脂に対して、より適切なものを適宜選択すればよい。たとえば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、ジアルデヒド系の架橋剤、金属キレート系の架橋剤などの低分子架橋剤の他にも、メチロール化メラミン樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂などの高分子系の架橋剤なども用いることができる。熱可塑性樹脂としてポリビニルアルコール系樹脂を使用する場合は、架橋剤として、ポリアミドエポキシ樹脂、メチロール化メラミン、ジアルデヒド、金属キレート架橋剤などを用いることが特に好ましい。
プライマー層の厚さは、好ましくは0.05〜1μmであり、さらに好ましくは0.1〜0.4μmである。0.05μmより薄くなると基材フィルムとポリビニルアルコールフィルムとの密着力が低下してしまい、1μmより厚くなると、偏光板が厚くなるため好ましくない。
(粘着剤層)
粘着剤層を構成する粘着剤は、通常、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂などをベースポリマーとし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物などの架橋剤を加えた組成物からなる。さらに、粘着剤中に微粒子を配合して、光散乱性を示す粘着剤層を形成することもできる。
粘着剤層の厚さは1〜40μmであることが好ましいが、加工性、耐久性の特性を損なわない範囲で、薄く塗るのが好ましく、より好ましくは3〜25μmである。3〜25μmであると良好な加工性を有し、かつ偏光フィルムの寸法変化を押さえる上でも好適な厚みである。粘着剤層が1μm未満であると粘着性が低下し、40μmを超えると粘着剤がはみ出すなどの不具合を生じ易くなる。
基材フィルムやポリビニルアルコール系樹脂フィルム上に粘着剤層を形成する方法は特に限定されるものではなく、基材フィルム面、もしくはポリビニルアルコール系樹脂フィルム面に、上記したベースポリマーをはじめとする各成分を含む溶液を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した後、セパレーターや他種のフィルムと貼り合わせてもよいし、セパレータ上に粘着剤層を形成した後、基材フィルム面もしくはポリビニルアルコール系樹脂フィルム面に貼り付けて積層してもよい。また、粘着剤層を基材フィルムもしくはポリビニルアルコール系樹脂フィルム面に形成する際には必要に応じて基材フィルム面もしくはポリビニルアルコール系樹脂フィルム面、または粘着剤層の片方若しくは両方に密着処理、たとえば、コロナ処理等を施してもよい。
(接着剤層)
接着剤層を構成する接着剤としては、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤などを用いた水系接着剤が挙げられる。中でもポリビニルアルコール系樹脂水溶液が好適に用いられる。接着剤として用いるポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにはそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などがある。水系接着剤には、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物などが添加剤として添加されてもよい。このような水系の接着剤を用いた場合、それから得られる接着剤層は、通常1μmよりもはるかに薄く、通常の光学顕微鏡で断面を観察しても、その接着剤層は事実上観察されない。
水系接着剤を用いたフィルムの貼合方法は特に限定されるものではなく、基材フィルムまたはポリビニルアルコール系樹脂フィルムの表面に接着剤を均一に塗布、または、流し込み、塗布面にもう一方のフィルムを重ねてロールなどにより貼合し、乾燥する方法などが挙げられる。通常、接着剤は、その調製後、15〜40℃の温度下で塗布され、貼合温度は、通常15〜30℃の範囲である。
水系接着剤を使用する場合は、フィルムを貼合した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するため、乾燥させる。乾燥炉の温度は、30℃〜90℃が好ましい。30℃未満であると接着面が剥離しやすくなる傾向がある。90℃以上であると熱によって偏光子などが光学性能が劣化するおそれがある。乾燥時間は10〜1000秒とすることができる。
乾燥後はさらに、室温またはそれよりやや高い温度、たとえば、20〜45℃程度の温度で12〜600時間程度養生しても良い。養生のときの温度は、乾燥時に採用した温度よりも低く設定されるのが一般的である。
また、非水系の接着剤として、光硬化性接着剤を用いることもできる。光硬化性接着剤としては、たとえば、光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤との混合物などを挙げることができる。
光硬化性接着剤にてフィルム貼合する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、たとえば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクタープレート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などにより、フィルムの接着面に接着剤を塗布し、2枚のフィルムを重ね合わせる方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物である2枚のフィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、または両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。
フィルムの表面に接着剤を塗布した後、ニップロールなどで挟んでフィルム貼り合わせることにより接着される。また、この積層体をロール等で加圧して均一に押し広げる方法も好適に使用することができる。この場合、ロールの材質としては金属やゴム等を用いることが可能である。さらに、この積層体をロールとロールとの間に通し、加圧して押し広げる方法も好ましく採用される。この場合、これらロールは同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。上記ニップロール等を用いて貼り合わされた後の接着剤層の、乾燥または硬化前の厚さは、5μm以下かつ0.01μm以上であることが好ましい。
フィルムの接着表面には、接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
接着剤として光硬化性樹脂を用いた場合は、フィルムを積層後、活性エネルギー線を照射することによって光硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好ましく用いられる。
光硬化性接着剤への光照射強度は、光硬化性接着剤の組成によって適宜決定され、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜6000mW/cm2であることが好ましい。照射強度が0.1mW/cm2以上である場合、反応時間が長くなりすぎず、6000mW/cm2以下である場合、光源から輻射される熱および光硬化性接着剤の硬化時の発熱によるエポキシ樹脂の黄変や偏光フィルムの劣化を生じるおそれが少ない。光硬化性接着剤への光照射時間は、硬化させる光硬化性接着剤に応じて適用されるものであって特に限定されないが、上記の照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜10000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。光硬化性接着剤への積算光量が10mJ/cm2以上である場合、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、10000mJ/cm2以下である場合、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。なお、活性エネルギー線照射後の接着剤層の厚さは、通常0.001〜5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上でかつ2μm以下、さらに好ましくは0.01μm以上でかつ1μm以下である。
活性エネルギー線の照射によって基材フィルムやポリビニルアルコール系樹脂フィルム上の光硬化性接着剤を硬化させる場合、これらフィルムの透過率、色相、透明性など、全工程を経た後の偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化を行うことが好ましい。
<延伸工程(S20)>
ここでは、基材フィルムおよびポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる積層フィルムを一軸延伸する。好ましくは、5倍超かつ17倍以下の延伸倍率となるように一軸延伸する。さらに好ましくは5倍超かつ8倍以下の延伸倍率となるように一軸延伸する。延伸倍率が5倍以下だと、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが十分に配向しないため、結果として、偏光子層の偏光度が十分に高くならない不具合を生じることがある。一方、延伸倍率が17倍を超える場合、延伸時の積層フィルムの破断が生じ易くなるため、後工程での加工性・ハンドリング性が低下するおそれがある。延伸工程(S20)における延伸処理は、一段での延伸に限定されることはなく多段で行うこともできる。多段で行う場合は、延伸処理の全段を合わせて5倍超の延伸倍率となるように延伸処理を行うことが好ましい。
本発明における延伸工程(S20)においては、積層フィルムの長手方向に対して行なう縦延伸処理や、幅方向に対して延伸する横延伸処理などを実施することができる。縦延伸方式としては、ロール間延伸方法、圧縮延伸方法などが挙げられ、横延伸方式としてはテンター法などが挙げられる。
<染色工程(S30)>
ここでは、積層フィルムの樹脂層を、二色性色素で染色する。二色性色素としては、たとえば、ヨウ素や有機染料が挙げられる。有機染料としては、たとえば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックなどが使用できる。これらの二色性物質は、一種類でも良いし、二種類以上を併用して用いても良い。
染色工程は、たとえば、二色性色素を含有する水溶液(染色溶液)に、延伸フィルム全体を浸漬することにより行う。染色溶液としては、上記二色性色素を溶媒に溶解した溶液を使用できる。染色溶液の溶媒としては、一般的には水が使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒がさらに添加されても良い。二色性色素の濃度は、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.02〜7重量%であることがより好ましく、0.025〜5重量%であることが特に好ましい。
二色性色素としてヨウ素を使用する場合、染色効率をより一層向上できることから、さらにヨウ化物を添加することが好ましい。このヨウ化物としては、たとえば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどが挙げられる。これらヨウ化物の添加割合は、染色溶液において、0.01〜20重量%であることが好ましい。ヨウ化物の中でも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましい。ヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ素とヨウ化カリウムの割合は重量比で、1:5〜1:100の範囲にあることが好ましく、1:6〜1:80の範囲にあることがより好ましく、1:7〜1:70の範囲にあることが特に好ましい。
染色溶液への延伸フィルムの浸漬時間は、特に限定されないが、通常は15秒〜15分間の範囲であることが好ましく、1分〜3分間であることがより好ましい。また、染色溶液の温度は、10〜60℃の範囲にあることが好ましく、20〜40℃の範囲にあることがより好ましい。
<架橋工程>
染色工程に次いで架橋処理を行うことができる。架橋処理は、たとえば、架橋剤を含む溶液(架橋溶液)中に延伸フィルムを浸漬することにより行われる。架橋剤としては、従来公知の物質を使用することができる。たとえば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらは一種類でも良いし、二種類以上を併用しても良い。
架橋溶液として、架橋剤を溶媒に溶解した溶液を使用できる。溶媒としては、たとえば水が使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒を含んでも良い。架橋溶液における架橋剤の濃度は、これに限定されるものではないが、1〜20重量%の範囲にあることが好ましく、6〜15重量%であることがより好ましい。
架橋溶液中には、ヨウ化物を添加してもよい。ヨウ化物の添加により、樹脂層の面内における偏光特性をより均一化させることができる。ヨウ化物としては、たとえば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが挙げられる。ヨウ化物の含有量は、0.05〜15重量%、より好ましくは0.5〜8重量%である。
架橋溶液への積層フィルムの浸漬時間は、通常、15秒〜20分間であることが好ましく、30秒〜15分間であることがより好ましい。また、架橋溶液の温度は、10〜80℃の範囲にあることが好ましい。
<洗浄工程>
架橋工程の後には、洗浄工程を行なうことが好ましい。洗浄工程としては、水洗浄処理を施すことができる。水洗浄処理は、通常、イオン交換水、蒸留水などの純水に積層フィルムを浸漬することにより行なうことができる。水洗浄温度は、通常3〜50℃、好ましくは4℃〜20℃の範囲である。浸漬時間は通常2〜300秒間、好ましくは3秒〜240秒間である。
洗浄工程は、ヨウ化物溶液による洗浄処理と水洗浄処理を組み合わせてもよく、適宜にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノール等の液体アルコールを配合した溶液を用いることもできる。
<乾燥工程>
洗浄工程の後には、乾燥工程を施してもよい。乾燥工程としては、任意の適切な方法(たとえば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)を採用しうる。たとえば、加熱乾燥の場合の乾燥温度は、通常、20〜95℃であり、乾燥時間は、通常、1〜15分間程度である。以上の工程を経て、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが偏光子層としての機能を有することになり、基材フィルムの一方の面に偏光子層を備えた偏光性積層フィルムが製造される。
(偏光子層)
偏光子層は、具体的には、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものである。延伸倍率は、好ましくは5倍超、さらに好ましくは5倍超でかつ17倍以下である。
偏光子層の厚さ(延伸後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚さ)は好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、好ましくは2μm以上である。偏光子層の厚さを25μm以下とすることにより、薄型の偏光性積層フィルムを構成することができる。
<保護フィルム貼合工程(S40)>
偏光性積層フィルムにおける偏光子層の基材フィルム側の面とは反対側の面に保護フィルムを貼合する。偏光子層と保護フィルムの貼合方法は、特に限定されない。たとえば、偏光子層および/または保護フィルムの貼合面に粘着剤層または接着剤層を形成し、粘着剤層または接着剤層を介して両者を貼合する。粘着剤層や接着剤層として適した材料は、上述の樹脂フィルム貼合工程(S10)の欄で述べた粘着剤層や接着剤層と同様である。
(保護フィルム)
保護フィルムは、光学機能を有さない単なる保護フィルムであってもよく、位相差フィルムや輝度向上フィルムといった光学機能を併せ持つ保護フィルムであってもよい。
保護フィルムの材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのような樹脂からなる酢酸セルロース系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのような樹脂からなるポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルムなど、当分野において従来より広く用いられてきているフィルムを挙げることができる。
環状ポリオレフィン系樹脂としては、適宜の市販品、例えば、Topas(登録商標)(Ticona社製)、アートン(登録商標)(JSR(株)製)、ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(登録商標)(ZEONEX)(日本ゼオン(株)製)、アペル(登録商標)(三井化学(株)製)を好適に用いることができる。このような環状ポリオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際には、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜用いられる。また、エスシーナ(登録商標)(積水化学工業(株)製)、SCA40(積水化学工業(株)製)、ゼオノア(登録商標)フィルム((株)オプテス製)などの予め製膜された環状ポリオレフィン系樹脂製のフィルムの市販品を用いてもよい。
環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸されたものであってもよい。延伸することで、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに任意の位相差値を付与することができる。延伸は、通常、フィルムロールを巻き出しながら連続的に行われ、加熱炉にて、ロールの進行方向、その進行方向と垂直の方向、またはその両方へ延伸される。加熱炉の温度は、通常、環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度近傍からガラス転移温度+100℃までの範囲である。延伸の倍率は、一つの方向につき通常1.1〜6倍、好ましくは1.1〜3.5倍である。
環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、一般に表面活性が劣るため、偏光子層と接着させる表面には、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を行うのが好ましい。中でも、比較的容易に実施可能なプラズマ処理、コロナ処理が好適である。
酢酸セルロース系樹脂フィルムとしては、適宜の市販品、たとえば、フジタック(登録商標)TD80(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UF(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UZ(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD40UZ(富士フィルム(株)製)、KC8UX2M(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)を好適に用いることができる。
酢酸セルロース系樹脂フィルムの表面には、視野角特性を改良するために液晶層などを形成してもよい。また、位相差を付与するため酢酸セルロース系樹脂フィルムを延伸させたものでもよい。酢酸セルロース系樹脂フィルムは、偏光フィルムとの接着性を高めるため、通常はケン化処理が施される。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が採用できる。
上述したような保護フィルムの表面には、ハードコート層、防眩層、反射防止層などの光学層を形成することもできる。保護フィルム表面にこれらの光学層を形成する方法はとくに限定されず、公知の方法を用いることができる。
保護フィルムの厚さは、薄型化の要求から、できるだけ薄いものが好ましく、90μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。逆に薄すぎると強度が低下して加工性に劣るため、5μm以上であることが好ましい。
<基材フィルム剥離工程(S50)>
本実施形態の偏光板の製造方法では、図2に示すように、保護フィルムを偏光子層に貼合する保護フィルム貼合工程(S40)の後、基材フィルム剥離工程(S50)を行なう。基材フィルム剥離工程(S50)では、基材フィルムを偏光性積層フィルムから剥離する。基材フィルムの剥離方法は特に限定されるものでなく、通常の粘着剤付偏光板で行われる剥離フィルムの剥離工程と同様の方法を採用できる。保護フィルム貼合工程(S40)の後、そのまますぐに剥離してもよいし、一度ロール状に巻き取った後、別に剥離工程を設けて剥離してもよい。以上の工程を経て、偏光子層の一方の面に保護フィルムを備えた偏光板が製造される。
(他の光学層)
上記偏光板は、実用に際して他の光学層を積層した偏光板として用いることができる。また、上記保護フィルムがこれらの光学層の機能を有していてもよい。
他の光学層の例としては、ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルム、表面に凹凸形状を有する防眩機能付きフィルム、表面反射防止機能付きフィルム、表面に反射機能を有する反射フィルム、反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルム、視野角補償フィルムが挙げられる。
ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルムに相当する市販品としては、例えばDBEF(3M社製、住友スリーエム(株)から入手可能)、APF(3M社製、住友スリーエム(株)から入手可能)が挙げられる。視野角補償フィルムとしては基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなる位相差フィルム、環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムが挙げられる。基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルムに相当する市販品としては、WVフィルム(富士フィルム(株)製)、NHフィルム(新日本石油(株)製)、NRフィルム(新日本石油(株)製)などが挙げられる。また、環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムに相当する市販品としては、アートン(登録商標)フィルム(JSR(株)製)、エスシーナ(登録商標)(積水化学工業(株)製)、ゼオノア(登録商標)フィルム((株)オプテス製)などが挙げられる。
[実施例1]
<ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの作製>
クラレ(株)より販売されている完全けん化ポリビニルアルコール樹脂(商品名:PVA124)の粉末を90℃の温水に溶解させて、固形分濃度10wt%のポリビニルアルコール樹脂水溶液を作製した。得られたポリビニルアルコール樹脂水溶液を離型処理が施されたPET基材上にリップコート法によって、およそ400μm厚で塗布した。50℃で10分乾燥した後、PET基材からポリビニルアルコール系樹脂フィルムを剥がし取り、さらに80℃で5分乾燥させてカールの無いポリビニルアルコール系樹脂フィルムを得た。乾燥後の厚みは41μmであった。
<樹脂フィルム貼合工程>
熱水にポリビニルアルコール粉末と架橋剤を溶解させて以下の組成の接着剤水溶液を準備した。そして、ポリプロピレン樹脂(商品名:FLX80E4、住友化学(株)製)からなる110μm厚の基材フィルム上にコロナ放電処理を施し、上述の接着剤水溶液をグラビアコーターを用いて乾燥後の厚みが0.2μm程度になるように塗布した。その後、上述のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを貼り合わせた後、50℃で3分乾燥させて、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムはフラットであり、ハンドリングが容易であった。
(接着剤水溶液)
水:100重量部、ポリビニルアルコール樹脂粉末((株)クラレ製、平均重合度18000、商品名:KL−318):3重量部、ポリアミドエポキシ樹脂(架橋剤、住化ケムテックス(株)製、商品名:SR650(30)):1.5重量部。
<延伸工程>
上記積層フィルムをテンター装置を用いて160℃で5.8倍の自由端一軸延伸を実施した。延伸後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚みは18μmであった。
<染色工程>
その後、積層フィルムをヨウ素とヨウ化カリウムの混合水溶液である30℃の染色溶液に180秒ほど浸漬してポリビニルアルコール系樹脂フィルムを染色した後、10℃の純水で余分なヨウ素液を洗い流した。次いで76℃のホウ酸とヨウ化カリウムの混合水溶液である架橋溶液に300秒浸漬させた。その後10℃の純水で4秒間洗浄し、最後にニップロールで表面の余分な水分を除去した。各層の薬液の配合比率は以下の通りである。染色後の積層フィルムを80℃で5分乾燥させて偏光性積層フィルムを得た。
(染色溶液)
水:100重量部、ヨウ素:0.6重量部、ヨウ化カリウム:10重量部。
(架橋溶液)
水:100重量部、ホウ酸:9.5重量部、ヨウ化カリウム:5重量部。
<保護フィルム貼合工程>
樹脂フィルム貼合工程と同様の接着剤水溶液を調製した。上記偏光性積層フィルムの偏光子層の基材フィルム側の面とは反対側の面に上述の接着剤水溶液を塗布した後に保護フィルム(コニカミノルタオプト(株)製のTAC:KC4UY)を貼合し、基材フィルム、接着剤層、偏光子層、接着剤層、保護フィルムの5層からなる偏光板を得た。
<基材フィルム剥離工程>
上術の偏光板を80℃で5分乾燥させ、偏光板を得た。得られた偏光板から基材フィルムを剥離した。基材フィルムは容易に剥離され、接着剤層、偏光子層、接着剤層、保護フィルムの4層からなる偏光板を得た。偏光子層の厚みは18μmであった。得られた偏光板の偏光性能を日本分光(株)製の分光光度計(V7100)で測定した。光の入射方向は偏光子層側からとした。視感度補正単体透過率は41.8%、視感度補正偏光度は99.997%と非常に偏光性能に優れるものであり、偏光板として十分使用できる性能であった。
[比較例1]
実施例1と同じ基材フィルム上にコロナ放電処理を施した後、実施例1でポリビニルアルコール系樹脂フィルムの作製に用いたポリビニルアルコール樹脂水溶液を、ギャップコート法によって直接塗布した。その後、50℃で10分、80℃で5分の乾燥を連続して実施したが、ポリビニルアルコール樹脂層の乾燥収縮によって著しいカールが発生し、乾燥炉の出口での端部の折れ込みが発生した。得られたポリビニルアルコール樹脂層の乾燥後の厚みは約39μmであった。

Claims (4)

  1. 基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面に形成された偏光子層とを備える偏光性積層フィルムの製造方法であって、
    厚さが50μm以下のポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂フィルムを基材フィルムの一方の面に貼合して積層フィルムを得る樹脂フィルム貼合工程と、
    前記積層フィルムを一軸延伸する延伸工程と、
    一軸延伸された積層フィルムの前記樹脂フィルムを二色性色素で染色して偏光子層を形成する染色工程と、をこの順で含み、
    前記樹脂フィルム貼合工程で用いられる前記樹脂フィルムは、
    ポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を支持体上に形成する樹脂層形成工程と、
    支持体上に形成された樹脂層を乾燥する第1乾燥工程と、
    乾燥された樹脂層を前記支持体から剥離して前記樹脂層を取得する樹脂層分離工程と、
    剥離された樹脂層を前記第1乾燥工程における温度より高い乾燥温度で乾燥する第2乾燥工程と、をこの順で含む製造方法により製造された樹脂フィルムである、偏光性積層フィルムの製造方法。
  2. 前記樹脂フィルム貼合工程において、粘着剤層または接着剤層を介して前記樹脂フィルムを前記基材フィルムの一方の面に貼合する、請求項1に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
  3. 前記樹脂フィルム貼合工程において、前記樹脂フィルムの厚さが15μm以上である、請求項1または2に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
  4. 偏光子層と、前記偏光子層の一方の面に形成された保護フィルムとを備える偏光板の製造方法であって、
    請求項1に記載の製造方法により偏光性積層フィルムを製造した後、
    前記偏光性積層フィルムにおける前記偏光子層の前記基材フィルム側の面とは反対側の面に保護フィルムを貼合する保護フィルム貼合工程と、
    前記偏光性積層フィルムから前記基材フィルムを剥離する基材フィルム剥離工程と、をこの順で含む、偏光板の製造方法。
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