以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
以下に示す各実施形態に係る制御装置は、リレーのオフ故障をアイドリングストップの前に検出する。リレーのオフ故障とは、リレーのオフ状態での故障であり、リレーを導通状態(オン)させたいのにオンにならない故障である。
≪第1実施形態≫
図1は、本発明の第1の実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
制御装置1はリレー群側10とマイクロコンピュータ周辺側20とで構成される。リレー群側10とマイクロコンピュータ周辺側20とは、線材(図示せず)を介してコネクタで接続されている。
[リレー群側の構成]
まず、リレー群側10を説明する。
リレー群側10には電圧として、バッテリ電圧+Bと、接地電圧と、イグニッション電圧IGと、が供給される。
バッテリ電圧+Bと、接地電圧とはバッテリから供給される。
イグニッション電圧IGは、バッテリ電圧+Bから生成されて供給される。
リレー群側10を構成する個々のリレーは、コイル部分とスイッチ部分により構成されており、コイル部分に電流が流れることでスイッチ部分の接点が短絡(オン)がされるように構成されている。
リレー群側10は、ST1リレー30と、ST2リレー32、スタータモータリレー34と、スタータモータ(starter motor)36と、を備える。
ST1リレー30と、ST2リレー32とは、スタータモータ36を制御するためのリレーである。ST1リレー30と、ST2リレー32とにより、電源とスタータモータ36間の導通、非導通を切り替えるスタータリレーと呼ぶことができる。
ST1リレー30のコイルの一方の端子30aは、イグニッション電圧IGと接続されている。ST1リレー30のコイルの他方の端子30bは、コネクタ端子ST1RLYと接続されている。ST1リレー30のスイッチの一方の端子30cは、バッテリ電圧+Bと接続されている。ST1リレー30のスイッチの他方の端子30dは、ST2リレー32のスイッチの端子32cと接続されている。
ST1リレー30のスイッチは、コネクタ端子ST1RLYからの駆動信号のレベルがローになると、コイルに電流が流れてオンになる。その結果、ST1リレー30はオンとなる。ST1リレー30のスイッチは、コネクタ端子ST1RLYからの駆動信号のレベルがハイになると、コイルに電流が流れずオフになる。その結果、ST1リレー30はオフとなる。
ST2リレー32のコイルの一方の端子32aは、イグニッション電圧IGと接続されている。ST2リレー32のコイルの他方の端子32bは、コネクタ端子ST2RLYと接続されている。ST2リレー32のスイッチの一方の端子32cは、ST1リレー30のスイッチの端子30dと接続されている。すなわち、ST1リレー30とST2リレー32とは直接に接続されている。ST2リレー32のスイッチの他方の端子32dは、スタータモータリレー34のコイルの端子34aと接続されている。
ST2リレー32のスイッチは、コネクタ端子ST2RLYからの駆動信号のレベルがローになると、コイルに電流が流れてオンになる。その結果、ST2リレー32はオンとなる。ST2リレー32のスイッチは、コネクタ端子ST2RLYからの駆動信号のレベルがハイになるとコイルに電流が流れずオフになる。その結果ST2リレー32はオフとなる。
なお、スタータリレーを1つで構成しないのは、フェイルセーフの観点からである。そのため、スタータリレーは2つに限らず、3つ以上のリレーを用い、直列に接続して構成してもよい。
スタータモータリレー32は、スタータモータ36を回転させるためのリレーである。
スタータモータリレー34のコイルの一方の端子34aは、ST2リレー32のスイッチの端子32dと接続されている。スタータモータリレー34のコイルの他方の端子34bは、接地電圧と接続されている。スタータモータリレー34のスイッチの一方の端子34cは、バッテリ電圧+Bと接続されている。スタータモータリレー34のスイッチの他方の端子34dは、スタータモータ36の端子36aと接続されている。
スタータモータリレー34のスイッチは、ST1リレー30とST2リレー32の両方がオンとなることで、コイルの一方の端子の電圧がバッテリ電圧+Bとなり、コイルに電流が流れ、スイッチがオンになる。その結果、スタータモータリレー34はオンとなる。
スタータモータリレー34のスイッチは、ST1リレー30とST2リレー32のどちらか一方がオフとなると、コイルの一方の端子の電圧が不定となり、コイルに電流が流れず、スイッチがオフになる。その結果、スタータモータリレー34はオフとなる。
以上より、スタータモータリレー34は、コネクタ端子ST1RLYからの駆動信号と、コネクタ端子ST2LYからの駆動信号の、両方のレベルがローになるとオンとなり、コネクタ端子ST1RLYからの駆動信号と、コネクタ端子ST2RLYからの駆動信号の、一方のレベルがハイになるとオフとなる。
従って、エンジンを始動するためのスタータモータ36と電源との導通、非導通の切り替えは、スタータリレーを構成するST1リレー30とST2リレー32によって制御される。
スタータモータ36はエンジンを始動させるためのモータである。スタータモータ36がエンジンの初期的な回転を発生させ、その回転をもとに、エンジンが燃焼による自力での回転を開始する。
スタータモータ36の一方の端子36aはスタータモータリレー34のスイッチの端子34dと接続されている。スタータモータ36の他方の端子36bは、接地電圧と接続されている。
スタータモータ36は、スタータモータリレー34がオンとなると、スタータモータ36の一方の端子がバッテリ電圧+Bとなることにより、電流が流れ、回転をする。スタータモータ36は、スタータモータリレー34がオフとなると、スタータモータ36の一方の端子が不定電圧となることにより、電流が流れず、回転をしない。
すなわちスタータモータ36は、コネクタ端子ST1RLYからの駆動信号と、コネクタ端子ST2RLYからの駆動信号との、全てのレベルがローになった場合に回転し、どれか一つのレベルがハイになると回転しない。
ST1リレー30のスイッチとST2リレー32のスイッチとを接続する場所の信号STRLDの電圧は、コネクタ端子STRLDを介してマイクロコンピュータ周辺側20へ伝達される。
信号STRLDの電圧は、ST1リレー30がオンでST2リレー32がオフの場合、バッテリ電圧+Bとなる。信号STRLDの電圧は、ST1リレー30がオンでST2リレー32がオンの場合、スタータモータ36のコイルに電流が流れるため、スタータモータ36のコイルが有する抵抗分により、バッテリ電圧+Bとなる。
すなわち信号STRLDの電圧は、ST1リレー30がオンであればバッテリ電圧+Bとなる。
信号STRLDの電圧は、ST1リレー30がオフでST2リレー32がオンの場合、接地電圧となる。信号STRLDの電圧は、ST1リレー30とST2リレー32とが共にオフの場合、不定電圧となる。
[マイクロコンピュータ周辺側の構成]
次に、マイクロコンピュータ周辺側20を説明する。
マイクロコンピュータ周辺側20には電圧として、+VCCと接地電圧が供給される。
+VCCは、バッテリ電圧+Bから生成されて供給される。
マイクロコンピュータ周辺側20は、マイクロコンピュータ40と、ST1リレー駆動回路50と、ST2リレー駆動回路52と、出力監視回路56と、フィルタ58と、抵抗R1、R2、R3と、を備える。
ST1リレー駆動回路50は、マイクロコンピュータ40からのST1リレー制御信号を入力し、ST1リレー30を駆動するST1リレー駆動信号を出力する回路である。STリレー1駆動回路50の出力は、コネクタ端子ST1RLYを介してST1リレー30のコイルの一方の端子に接続されている。
ST1リレー駆動回路50の出力は、オープンコレクタまたはオープンドレインとなっている。そのため、ST1リレー制御信号がST1リレー30をオンさせる指令の場合、ST1リレー駆動回路50の出力は接地電圧レベルとなり、ST1リレー30の端子30bを接地電圧レベルにしてST1リレー30がオンするように駆動する。一方、ST1リレー制御信号がST1リレー30をオフさせる指令の場合、ST1リレー駆動回路50の出力はハイレベルとなり、ST1リレー30がオフするように駆動する。
ST2リレー駆動回路52は、マイクロコンピュータ40からのST2リレー制御信号を入力し、ST2リレー32を駆動するST2リレー駆動信号を出力する回路である。ST2リレー駆動回路52の出力は、コネクタ端子ST2RLYを介してST2リレー32のコイルの一方の端子に接続されている。
ST2リレー駆動回路52の出力は、オープンコレクタまたはオープンドレインとなっている。そのため、ST2リレー制御信号がST2リレー32をオンさせる指令の場合、ST2リレー駆動回路52の出力は接地電圧レベルとなり、ST2リレー32の端子32bを接地電圧レベルにしてST2リレー32がオンするように駆動する。一方、ST2リレー制御信号がST2リレー32をオフさせる指令の場合、ST2リレー駆動回路52の出力はハイレベルとなり、ST2リレー32がオフするように駆動する。
出力監視回路56は、STリレー1駆動回路50の出力とST1RLYコネクタとを接続する場所の信号STCNT1Rの電圧を、マイクロコンピュータ40が備えるAD変換器の入力範囲の電圧に変換する回路である。出力監視回路56の出力は、マイクロコンピュータ40のAD変換器の入力であるSTCNT1RAD端子に入力される。
フィルタ58は、信号STRLDのノイズを除去するための回路である。フィルタ58の出力は、マイクロコンピュータ40のAD変換器の入力であるSTRLDAD端子に入力される。
抵抗R1、R2、R3は、フィルタ58の入力に接続されている。
抵抗R1は一方の端子が+VCC電圧と接続され、他方の端子がフィルタ58の入力と接続されている。
抵抗R2は一方の端子が接地電圧と接続され、他方の端子がフィルタ58の入力と接続されている。抵抗R2の抵抗値は、抵抗R1と同一の抵抗値とするが、同一に限るものではなく、異なる抵抗値であってもよい。
抵抗R3は一方の端子がコネクタ端子STRLDと接続され、他方の端子がフィルタ58の入力と接続されている。
抵抗R1と抵抗R2とにより、コネクタ端子STRLDが接続されていない場合など信号STRLDが不定レベルの電圧となったときにフィルタ58の入力を中間レベルの電圧に変換する役割を果たす。なお、抵抗R1と抵抗R2の抵抗値が異なる場合は抵抗値に応じて中間レベルの電圧が適宜設定される。
抵抗R3は抵抗R1、R2と共に、信号STRLDの電圧を分圧する役割とを果たす。
次に、マイクロコンピュータを説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る制御装置の、マイクロコンピュータの構成を示すブロック図である。
マイクロコンピュータ40は、Oポート60と、AD変換器70と、メモリ80と、処理ユニット90と、を備える。
Oポート60は、処理ユニット90と接続されており、ハイ、ローで表す論理信号の出力部である。Oポート60は、STC1OUT端子と、STC2OUT端子と、を備える。
STC1OUT端子からは、ST1リレー30を制御するためのST1リレー制御信号が出力される。ST1リレー制御信号は、ST1リレー駆動回路50を介してST1リレー30を制御する。
STC2OUT端子からは、ST2リレー32を制御するためのST2リレー制御信号が出力される。ST2リレー制御信号は、ST2リレー駆動回路52を介してST2リレー32を制御する。
AD変換器70は入力信号の電圧レベルをデジタル信号に変換する。AD変換器70は入力端子として、STCNT1RAD端子と、STRLDAD端子とを備える。
STCNT1RAD端子は信号STCNT1Rの電圧を監視するために、出力監視回路56の出力電圧を入力する端子である。
STRLDAD端子は信号STRLDを監視するために、フィルタ58の出力電圧を入力する端子である。
処理ユニット90は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、プログラムが書き込まれたROM(Read Only Memory)、データの一時記憶のためのRAM(Random Access Memory)等のメモリ80を有するコンピュータであり、スタータ制御部92と、点火制御部94と、燃料供給制御部96と、エンジン制御統括部98と、を備える。処理ユニット90が備える上記各部は、コンピュータである処理ユニット90がプログラムを実行することにより実現され、当該コンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。
なお、処理ユニット90が備える上記各部は、プログラムの実行により実現されるほか、それぞれ一つ以上の電気部品を含む専用のハードウェアとして構成することもできる。
エンジン制御統括部98は、スタータ制御部92と、点火制御部94と、燃料供給制御部96と、を統括してエンジンの制御をし、所定のエンジン停止条件の成立によりエンジンを停止し、所定の再始動条件の成立によりエンジンを再始動させる役割も果たす。
また、エンジン制御統括部98は、エンジン回転数、車速など、各種制御に必要な情報を計算するために各種センサから情報を入力する。計算された回転数データ、車速データはメモリ80に記憶される。
点火制御部94は、エンジンの点火を制御する。
燃料供給制御部96は、エンジンへの燃料供給を制御する。
スタータ制御部92は、スタータモータ36を制御するためにリレー群を制御する。スタータ制御部92は、スタータモータ36を制御するために各種動作モードを備え、各動作モードにおいて、スタータリレーなどを制御すると共に、スタータ制御に関する信号の監視を実行する。
[スタータ制御部の動作モード]
次に、スタータ制御部92の動作モードを説明する。
スタータ制御部92は、待機モードと、オートスタートモードと、ストップモードと、オフ故障診断モードと、I/S復帰モードと、の動作モードを備える。
待機モードは、エンジン停止の状態である。たとえば、運転者が車のキーをエンジンキーの穴に差し込み、エンジンスタート操作をする前の状態のとき、あるいはアイドリングストップの状態である。
オートスタートモードは、運転者が車のキーをエンジンキーの穴に差し込み、エンジンスタート操作をする状態である。スタータ制御部92は、スタータモータ36を回転させるようにリレーを制御する。
ストップモードは、エンジンが動作中であり、スタータ制御部92がスタータモータ36の作動を停止している状態である。通常の自動車走行状態は、ストップモードとなる。
オフ故障診断モードは、ストップモードから待機モードへ移行する前の状態である。オフ故障診断モードは、制御ユニット90からエンジンの停止指令がされたとき、実際にエンジン停止状態となる前に、スタータリレーを診断する状態である。エンジンの停止指令は、運転者がキー操作によるエンジン停止要求、または、運転者が車両の走行中に車速が所定速度以下となるまでブレーキの作動を継続することによるエンジンの停止要求を検知したこと、などを条件として出力される。
I/S復帰モードは、待機モードでのエンジン停止状態からエンジン回転をさせ、復帰させる状態である。スタータ制御部92は、スタータモータ36を回転させる制御をする。
[動作手順]
次に、制御装置の動作手順について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る制御装置の、スタータリレーのオフ故障が生じていない場合の動作を示すタイミング図である。
まず図3の各信号を説明する。
スタータ制御モードはスタータ制御部92の動作モードを示す。
スタータ信号は、車両の運転者がエンジンスタート操作をしたときに発生するスタート信号である。スタータ信号はオンでスタート信号発生を示し、オフでスタート信号不発生(停止)を示すものとする。
ST1リレー制御信号は、マイクロコンピュータ40から出力される、ST1リレー30の指令信号を示す。ST1リレー制御信号がオンでST1リレー30を作動させる(オンにする)指令を示し、オフでST1リレー30を作動させない(オフにする)指令を示すものとする。
ST2リレー制御信号は、マイクロコンピュータ40から出力される、ST2リレー32の指令信号を示す。ST2リレー制御信号がオンでST2リレー32をオンにする指令を示し、オフでST2リレー32をオフにする指令を示すものとする。
STCNT1RADは、信号STCNT1Rの電圧に基づいた出力監視回路56の出力信号の電圧レベルを示す。正常状態では、ハイレベルであればST1リレー30はオフとなり、ローレベルであればST1リレー30はオンとなる。
STRLDADは、コネクタ端子STRLDの電圧に基づいたフィルタ58の出力信号の電圧レベルを示す。
正常状態では、ST1リレー30とST2リレー32が共にオフの場合、信号STRLDの電圧は不定となるので、フィルタ56入力では抵抗R1、R2により中間電圧となり、STRLDADも中間電圧となる。ST1リレー30がオンの場合、信号STRLDの電圧はバッテリ電圧+Bとなり、抵抗R3、R1、R2により分圧されることでSTRLDADはハイレベルとなる。ST1リレー30がオフ、ST2リレー32がオンの場合、信号STRLDの電圧は接地電圧となり、抵抗R3、R1、R2により分圧されてSTRLDADはローレベルとなる。
異常状態である場合のSTCNT1RADとSTRLDADとは後述する。
[正常状態の動作手順]
次に、スタータリレーが正常状態の動作手順を説明する。
図3のtで示す矢印の方向に時間が経過するものとする。
スタータ制御モードが、待機モード、オートスタートモード、ストップモード、オフ故障診断モード、待機モード、I/S復帰モード、ストップモードへ順に移行する例を示す。
まず、最初の待機モードについて説明する。
運転者が車のキーをエンジンキーの穴に差し込み、エンジンスタート操作をする前の状態のとき、スタータ制御は、エンジン停止状態である待機モードになる。
スタータ信号と、ST1リレー制御信号と、STリレー2制御信号とは、全てオフである。
STCNT1RADは、ST1リレー駆動回路50がST1リレー30をオフに制御する駆動信号を出力しているので、信号STCNT1Rがイグニッション電圧IGとなり、ハイレベルの電圧となる。
STRLDADは、STリレー1駆動回路50がST1リレー30をオフに制御する駆動信号を出力し、STリレー2駆動回路52がST2リレー32をオフに制御する駆動信号を出力しているので、ST1リレー30とST2リレー32の両方がオフとなり、信号STRLDが不定電圧となるので、抵抗R1と抵抗R2とにより、中間レベルの電圧となる。
車両の運転者がエンジンスタート操作をすると、スタータ制御部92は、オートスタートモードへ移行する。
次に、オートスタートモードについて説明する。
スタータ信号は、車両の運転者がエンジンスタート操作をしたあと、所定時間だけオンとなる。
スタータ制御部92は、ST1リレー制御信号と、ST2リレー制御信号とを、オンに制御する。その結果、ST1リレー30と、ST2リレー32とは、オンになり、スタータモータリレー34もオンになる。
STCN1RADは、ST1リレー駆動回路50からST1リレー30をオンにする駆動信号が出力されるので、ローレベルの電圧となる。
STRLDADは、ST1リレー30がオンとなるので、ハイレベルの電圧となる。STRLDADのハイレベル検出により、スタータモータ36に電流が流れていることが検知できる。
以上の制御により、スタータモータリレー34がオンとなるから、スタータモータ36の端子36aがバッテリ電圧+Bとなり、スタータモータ36に電流が流れ、スタータモータ36が回転する。スタータモータ36が回転することにより、エンジンが始動する。
エンジンが始動すると、スタータ制御部92は、ストップモードへ移行する。
次に、ストップモードについて説明する。
スタータ制御部92は、ST1リレー制御信号をオフに制御する。その結果、ST1リレー30はオフになり、スタータモータリレー34もオフになる。
スタータ制御部92は、ST2リレー制御信号を、所定時間TLだけオンに制御した状態を保ち、その後オフに制御する。スタータモータリレー34を確実にオフに制御するためである。
スタータモータリレー34がオフとなるから、スタータモータ36の端子36aが不定電圧となりスタータモータ36に電流が流れず、スタータモータ36が停止する。
STCN1RADは、ST1リレー駆動回路50からST1リレー30をオフにする駆動信号が出力されるので、信号STCN1Rがイグニッション電圧IGとなり、ハイレベルの電圧となる。
STRLDADは、所定時間TLのときはST1リレー30がオフ、ST2リレー32がオンとなるので、ローレベルの電圧となる。その後はST1リレー30とST2リレー32とが共にオフとなるので、中間レベルの電圧となる。
運転者が車両の走行中に車速が所定速度以下となるまでブレーキの作動を継続した場合など運転者によるエンジン停止要求があった場合、または所定条件の成立の場合などにより、エンジンの停止指令がされたならば、スタータ制御部92は、アイドリングストップ状態になる待機モードに移行する前に、オフ故障診断モードへ移行する。
次に、オフ故障診断モードについて説明する。
オフ故障診断モードは、スタータリレーのオフ故障を診断する状態である。
スタータ制御部92は、ST1リレー制御信号をオフに制御したまま、ST2リレー制御信号をオンに制御する。すなわち、2つのスタータリレーのうち、ST2リレー32を作動させる。
その結果、ST2リレー32はオンとなる。ST1リレー30はオフのままであり、スタータモータリレー34もオフのままである。
正常状態であれば、STCN1RADは、STリレー1駆動回路50からST1リレー30をオフにする駆動信号が出力されるので、信号STCN1Rがイグニッション電圧IGとなり、ハイレベルの電圧のままとなる。これによりスタータ制御部92は、ST1リレー30が断線などのオフ故障ではない正常状態である、と判断する。なお、ST1リレー30のオフ故障検出は、オフ故障検出モードに限らずST1リレー30をオフに制御するストップモードでも可能である。
また正常状態であれば、STRLDADは、ST1リレー30がオフ、ST2リレー32がオンとなるので、ローレベルの電圧となる。スタータ制御部92は、STRLDADがストップモードでの中間レベルからローレベルの電圧に変化があったことを確認することで、ST2リレー32がオフ故障ではない正常状態である、と判断する。
このように、スタータ制御部92は、スタータモータ36を回転させない状態で、スタータリレーを構成するST1リレー30とST2リレー32との、それぞれが正常に作動可能かを、分離して判断できる。
エンジン制御統括部98は、ST1リレー30とST2リレー32とが正常状態であり、正常に作動可能であると判断されるまで、点火制御部94または燃料供給制御部96で、エンジンの停止を禁止する。
エンジン制御統括部98は、ST1リレー30とST2リレー32とが正常に作動可能であると判断された後にアイドリングストップ制御であるエンジンの停止の実行を開始する。
スタータ制御部92は、エンジン停止状態となると待機モードに移行する。
次に、オフ故障診断モード後の待機モードについて説明する。
スタータ制御部92は、ST1リレー制御信号をオフに制御したままにする。またスタータ制御部92は、ST2リレー制御信号をオンに制御したままにする。
STCN1RADは、ST1リレー駆動回路50からSTリレー30をオフにする駆動信号が出力されるのでハイレベルの電圧を保つ。
STRLDADは、ST1リレー30がオフ、ST2リレー32がオンとなるので、ローレベルの電圧となる。
スタータ制御部92は、オフ故障診断モードから待機モードに移行すれば、ST2リレー32をオンさせる必要なない。しかし、後述するI/S復帰モードではスタータモータ36を回転させるために、ST2リレー32をオンさせる必要がある。スタータ制御部92が、オフ故障診断モードからI/S復帰モードまで、ST2リレー32をオンさせる制御を継続し、作動させ続けるのは、リレーの動作回数を増やさないためである。一般に、リレーは動作回数が増えるほど寿命が短くなるので、リレーの動作回数を増やさないことによりリレーの寿命を延ばすことができる。その結果、信頼性が向上する。
スタータ制御部92は、運転者の発信操作を検知するなど、所定のエンジン再始動条件が成立すると、アイドリングストップ状態から復帰させるI/S復帰モードに移行する。
次に、I/S復帰モードを説明する。
スタータ制御部92は、ST1リレー30と、ST2リレー32とを、オンに制御する。その結果、ST1リレー30と、ST2リレー32と、はオンになり、スタータモータリレー34もオンになる。
以上の制御により、スタータモータリレー34がオンとなるから、スタータモータ36の端子36aがバッテリ電圧+Bとなり、スタータモータ36に電流が流れ、スタータモータ36が回転する。スタータモータ36が回転することにより、エンジンが始動する。
STCN1RADは、ST1リレー駆動回路50からST1リレー30をオンにする駆動信号が出力されるのでローレベルの電圧となる。
STRLDADは、ST1リレー30がオンとなるので、ハイレベルの電圧となる。
エンジンが始動すると、スタータ制御部92は、ストップモードへ移行する。
[スタータリレー故障発生時の動作手順]
次に、アイドリングストップ状態に移行する前であるストップモード中にスタータリレーにオフ故障が発生した場合の検出に関して説明する。
図4は。本発明の第1の実施形態に係る制御装置の、スタータリレーのオフ故障が生じた場合の動作を示すタイミング図である。図4は、図3でオートスタートモード後のストップモードからを示す。
スタータ制御部92は、ストップモードから待機モードに移行する前にオフ故障診断モードに移行する。
オフ故障診断モードでは、スタータ制御部92は、ST1リレー制御信号をオフに制御したまま、ST2リレー制御信号をオンに制御する。その結果、ST2リレー32はオンとなる。ST1リレー30はオフのままであり、スタータモータリレー34もオフのままである。
ST2リレー32が断線した状態になると、ST2リレー32をオンに制御するようにST2リレー駆動回路52から駆動信号が供給されるが、ST2リレー32はオンにならずオフ状態を継続する。ST1リレー30もオフ状態を継続する。その結果、信号STRLDの電圧は不定電圧となり、STRLDADは中間レベルを継続する。
すなわちSTRLDADは、ST2リレー32の断線がなければローレベル電圧になるはずが、中間レベルとなる。これによりスタータ制御部92は、ST2リレー32がオフ故障状態であると判断する。
一方、ST1リレー30が断線した状態になると、信号STCN1Rの電圧は、イグニッション電圧IGが供給されないため不定電圧となり、STCN1RADはローレベルとなる。すなわちSTCN1RADは、ST1リレー30の断線がなければハイレベルになるはずが、ローレベルとなる。これによりスタータ制御部92は、ST1リレー30がオフ故障状態であると判断する。図4ではストップモードでST1リレー30が断線した状態となった例を示している。
このように、スタータ制御部92は、スタータモータ36を回転させない状態で、スタータリレーを構成するST1リレー30とST2リレー32との、それぞれがオフ故障状態であるかを、分離して判断できる。
スタータ制御部92がST1リレー30またはST2リレー32がオフ故障と判断すれば、制御ユニット90はただちにアイドリングストップ制御を禁止する指令を、点火制御部94と燃料供給制御部96とへ出力する。アイドリングストップ制御をすればオフ故障のために、アイドリングストップから復帰できないためである。
スタータ制御部92は、スタータリレーのオフ故障であることの判断を約200〜400msの時間をかけて慎重に行う。たとえば、一度STRLDADの中間レベルを検知したならば、さらに数100ms後に再びSTRLDADを判定し、それでも中間レベルであったときに初めてST2リレー32のオフ故障であると判断する。オフ故障と判断されればアイドリングストップ制御を禁止するので、ゆっくりでも支障がないためである。
逆に、オフ故障ではない判断は100ms以内に早く行う。たとえば、一度STRLDADのローレベルを検知したならば、ST2リレー32はオフ故障ではないと判断する。これによりアイドリングストップへ早く移行し、アイドリングストップ時間を少しでも長く確保できる。
エンジン制御統括部98は、オフ故障診断モード中はアイドリングストップをさせないように、点火制御部94または燃料供給制御部96で、エンジンの点火または燃料供給を制御する。これにより、アイドリングストップ状態から復帰できない故障を未然に防止することができる。
なお、オフ故障診断モードは、アイドリングストップへの移行のときだけに限らず、前述したように、運転者のキー操作によるエンジン停止操作のときに行われてもよい。スタータリレーがオフ故障となれば、エンジンが始動できなくなることはアイドリングストップへの移行と同じであるからである。
≪第2実施形態≫
第1実施形態では、オフ故障診断モードで、スタータ制御部92が、一度STRLDADのローレベルを検知したならばST2リレー32はオフ故障ではないと判断した後に、エンジン制御統括部98は、アイドリングストップ制御を開始したが、本実施形態では、オフ故障診断モードの開始とともにアイドリングストップ制御を開始する。
アイドリングストップ制御の開始は、点火制御部94によるエンジンの点火の停止または燃料供給制御部96によるエンジンの燃料供給を停止することで開始する。
アイドリングストップ制御を開始すると、エンジンの回転数は900rpmから降下していくが、500rpm以上であればスタータを作動させることなく、燃料供給の再開と点火の再開でアイドル回転数まで復帰させることができる。
そのため、エンジン回転数が500rpm以上の状態でスタータリレーのオフ故障が検知されれば、エンジン制御統括部98は、アイドリングストップ制御を中止し、ただちにアイドリング制御へ復帰させる。エンジン制御統括部98は、点火制御部94によるエンジンの点火を再開、または燃料供給制御部96によるエンジンの燃料供給の再開をすることで、エンジンの回転をアイドリング状態に制御する。
本実施形態によれば、オフ故障診断モードが終了するまで待たない時間分だけ、アイドリングストップ状態へ早く移行することができる。
≪第3実施形態≫
第2実施形態では、オフ故障診断モードで、エンジン回転数が500rpm以上の状態でスタータリレーのオフ故障が検知されれば、エンジン制御統括部98は、アイドリングストップ制御を中止し、ただちにアイドリング制御へ復帰させたが、エンジン回転数が500rpm以下になる前にオフ故障診断が終了しなかった場合が生じうる。
そのため本実施形態では、エンジン制御統括部98は、エンジン回転数が500rpm以下になる前にオフ故障診断が終了したか否か判定し、オフ故障診断が終了していない場合は、アイドリングストップ制御を中止し、ただちにアイドリング制御へ復帰させる。エンジン制御統括部98は、点火制御部94によるエンジンの点火を再開、または燃料供給制御部96によるエンジンの燃料供給の再開をすることで、エンジンの回転をアイドリング状態に制御する。
本実施形態によれば、オフ故障診断が終了するまで待たない時間分だけアイドリングストップ状態へ早く移行することができると共に、フェイルセーフの観点からオフ故障ではないという判断ができない場合はアイドリング制御へ復帰させ、オフ故障に伴うアイドルストップ再始動不良を未然に防止することができる。
≪第4実施形態≫
第1実施形態で、オフ故障診断モード中はST1リレー30をオフ、ST2リレー32をオンに制御したが、ST1リレー30がオフにならずオンになってしまう故障が生じた場合には、スタータモータ36が動作し、エンジンが停止できない故障となってしまう。
エンジンが停止できない故障は重大な故障であるので、制御ユニット90は、スタータリレーのオン故障をオフ故障よりも優先して対策をすることが好ましい。
オフ故障診断モードで、ST1リレー30がオフにならずオンになっている場合、信号STRLDはバッテリ電圧+Bとなるため、STRLDADはハイレベルとなるのでオン故障を検知できる。
そのため本実施形態では、スタータ制御部92が、オフ故障診断モード中にSTRLDADがハイレベルであることを検知したならば、エンジン制御統括部98は、エンジンストップ制御を行う。エンジン制御統括部98は、点火制御部94によるエンジンの点火を停止、または燃料供給制御部96によるエンジンの燃料供給の停止をすることで、エンジンストップ制御を実行する。
本実施形態によれば、スタータリレーのオン故障を検知すれば早期にエンジン回転を停止することができる。
なお、スタータリレーのオン故障は、オフ故障診断モードに限らず検出できる。ST1リレー30をオフかつST2リレー32をオフ制御に制御中で、ST1リレー30がオフにならずオンになっている場合は、信号STRLDはバッテリ電圧+Bとなるため、STRLDADはハイレベルとなるのでST1リレー30のオン故障を検知できる。また、ST2リレー32をオフに制御中で、ST2リレー32がオフにならずオンになっている場合は、信号STRLDは接地電圧となるため、STRLDADはローレベルとなるのでST2リレー32のオン故障を検知できる。
また、スタータ制御部92は、ST1リレー30またはST2リレー32に対して作動させる指令を出力していないにも関わらず、ST1リレー30またはST2リレー32が導通状態となるスタータリレーのオン故障を診断して検知した場合には、オフ故障診断をしないように制御することができる。
以上説明したように、第1ないし第4の実施形態に係る制御装置によれば、所定の停止条件の成立によるエンジンの停止指令時から所定の再始動条件の成立までに、少なくとも1つのリレーを作動させ続けてスタータリレーの故障の診断をする。
これにより、エンジンが停止状態から始動しない故障を未然に防止することができると共に、故障の診断によるリレーの動作回数をなるべく少なくさせて、リレーの長寿命化を実現することができる。また、運転者にスタータリレーにオフ故障している旨をインジケータなどで通知し、エンジンを停止する前に整備してもらうように警告することができる。
また、エンジン動作中に定期的に検査する場合と比べて、アイドリングストップ制御をする直前に検査をするので、定期的に検査した後で且つアイドリングストップ制御をする直前にスタータリレーのオフ故障が発生してもオフ故障が発見され、エンジンが作動しない状態を未然に防止することができる。
なお本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。