なお、以下では、本発明に係るエンジン制御手法の概要について図1を用いて説明した後に、本発明に係るエンジン制御手法を適用したエンジン制御装置についての実施例を図2〜図10を用いて説明することとする。
まず、実施例の詳細な説明に先立ち、本発明に係るエンジン制御手法の概要について図1を用いて説明する。図1は、本発明に係るエンジン制御手法の概要を示す図である。
本発明に係るエンジン制御手法(以下、「制御手法」という)は、所定の停止条件が成立した場合にエンジンを自動停止させ、所定の始動条件が成立した場合にエンジンを自動始動させるものである。
例えば、本発明に係る始動制御手法は、運転者による停車操作が行われ、車両が停車した場合にエンジンを自動停止させ、運転者による発車操作が行われた場合にエンジンを自動始動させる所謂アイドリングストップを行う。なお、エンジンの停止条件および始動条件の詳細については、図4を用いて後述する。
特に、本発明に係る制御手法では、エンジンを始動する際にバッテリの負荷となるエンジン始動装置(以下、「エンジン始動負荷」という)の状態によって変化するバッテリの電圧(以下、「電源電圧」という)に基づいて、次回、車両が停車した場合に、エンジンの自動停止を禁止するか否かを判定する。
具体的には、本発明に係る制御手法では、エンジン始動負荷を第1の負荷状態で駆動している第1の期間の電源電圧(以下、「第1電圧」という)を検出する(図1の(1)参照)。続いて、本発明に係る制御手法では、第1の期間で検出した第1電圧と所定の閾値とを比較する(図1の(2)参照)。
その後、本発明に係る制御手法では、エンジン始動負荷の消費電力が第1の負荷状態とは異なる第2の負荷状態へエンジン始動負荷の駆動制御を切り替えると、エンジン始動負荷を第2の負荷状態で駆動している第2の期間の電源電圧(以下、「第2電圧」という)を検出する(図1の(3)参照)。
続いて、本発明に係る制御手法では、第2の期間に検出した第2電圧と所定の閾値とを比較する(図1の(4)参照)。このとき、第1電圧と比較する所定の閾値と、第2電圧と比較する所定の閾値とは、それぞれ異なる値に設定している。
かかる所定の閾値を設定する場合、例えば、予めエンジンの自動始動の試験を繰り返し行い、自動始動に成功する毎に、前回の自動始動時に検出された第1電圧および第2電圧を記録しておき、記録した第1電圧および第2電圧の最低電圧を取得する。
そして、本発明に係る制御手法では、第1電圧が第1電圧用の所定の閾値以上であり且つ第2電圧が第2電圧用の所定の閾値以上の場合(図1の(5)参照)、次回のエンジンの自動停止を許可する(図1の(6)参照)。
一方、本願発明に係る制御手法では、第1電圧および第2電圧のうち、いずれか一方でも対応する所定の閾値未満であった場合には、次回のエンジンの自動停止を禁止する。
上述したように、本発明に係る制御手法では、エンジン始動負荷を第1の負荷状態で駆動している期間に検出した電圧と、第2の負荷状態で駆動している期間に検出した電圧とを、それぞれ異なる閾値と比較した結果に基づいて、エンジンの自動停止を禁止する。
このため、本発明に係る制御手法によれば、エンジンの始動期間中にスタータ等のエンジン始動負荷の駆動状態を切り替えるような始動制御を行う場合であっても、エンジンの自動停止に関する禁止判定を適切に行うことができる。
これにより、本発明に係る制御手法では、バッテリの状態がエンジンを再始動可能な状態にもかかわらずエンジンの自動停止を禁止してしまい、車両が無駄に燃料を消費してしまうことを抑制することができる。
また、本発明に係る制御手法では、バッテリの状態がエンジンを再始動不可能な状態にもかかわらずエンジンの自動停止を許可してしまい、車両が再始動不能な故障状態になることを抑制することができる。
また、上記したエンジン始動負荷がエンジンを始動するモータを備えたスタータの場合、本発明に係る制御手法では、スタータ駆動時のバッテリの電圧に基づいてバッテリの状態を判定する。
かかる場合、スタータ駆動開始直後に電圧が一番落ち込むので、基本的にこのスタータ駆動開始直後の電圧(最低電圧)に基づいてバッテリの状態を判定すると良い。ただし、同じバッテリ状態であっても、例えば、スタータ駆動開始時のエンジンのクランク角位置による駆動負荷の変化によっても、バッテリの落ち込み状態に変化が生じる。
このため、本発明に係る制御手法では、スタータが駆動状態にあるときの、スタータ駆動開始直後の所定時間における電圧と、この所定時間経過後の電圧とをそれぞれ検出し、それぞれの電圧を予め設定された電圧と比較することで、バッテリ状態の判定精度を向上させることもできる。なお、かかる点については、図9を用いて後述する。
以下では、図1を用いて説明した制御手法を適用したエンジン制御装置の実施例について図2〜図10を用いて詳細に説明する。本実施例に係るエンジン制御装置は、所定の停止条件が成立した場合にエンジンを自動停止させ、所定の始動条件が成立した場合にエンジンを自動始動させる装置である。
特に、本実施例に係るエンジン制御装置は、上記背景技術で説明した特許文献1〜3に記載の装置のように、エンジンを自動始動する期間内にスタータの動作状態を変更するエンジン始動装置に対してエンジンの自動停止に関する許可および禁止を行う。
また、本実施例に係るエンジン制御装置は、単独で上記特許文献1〜3に記載の装置と同様なエンジンの自動停止および自動始動を行い、さらに、自装置で行うエンジンの自動停止に関する許可および禁止を行うように構成してもよい。
ここで、本実施例に係るエンジン制御装置の説明に先立って、図2および図3を用いて特許文献1〜3に記載の装置の構成について説明する。図2は、特許文献1に記載の装置の構成概要を示す図であり、図3は、特許文献3に記載の装置の構成概要を示す図である。
なお、特許文献2に記載の装置の構成は、特許文献3に記載の装置に類似するものである。このため、特許文献2に記載の装置については、特許文献3に記載の装置を説明した後に、図3を用いて説明する。
図2に示すように、特許文献1に記載の装置100は、エンジンを始動するスタータのモータ102へ電力を供給するバッテリ101とモータ102との間に、2つのスイッチ103、104が直列に接続されている。
これら2つのスイッチ103、104のうち、バッテリ101側に設けられているスイッチ103は、イグニッションキーによってON/OFFが切り替えられるスイッチ(以下、「キースイッチ103」という)である。
一方、モータ102側に設けられているスイッチ104は、ECU(Engine Control Unit)によってON/OFFが切り替えられるスイッチ(以下、「状態切替スイッチ104」という)である。また、特許文献1に記載の装置100は、バッテリBからモータ102へ供給する電力を低減する抵抗106を備えている。
そして、特許文献1に記載の装置100は、キースイッチ103がONされると、まず、モータ102を第1の状態で駆動した後、第1の状態とは消費電力が異なる第2の状態に駆動制御を切り替えてモータ102を駆動させ、エンジンの始動を行う。
具体的には、特許文献1に記載の装置100では、キースイッチ103がONされた後、ECU105が状態切替スイッチ104を制御してバッテリ101と抵抗106とを接続させることで、抵抗106を経由してバッテリ101からモータ102へ電力が供給される。
これにより、モータ102は、切替スイッチ104がONされているときよりも低い回転速度で回転してエンジンを助走させる。続いて、特許文献1に記載の装置100では、ECU105が状態切替スイッチ104を制御してバッテリ101とモータ102とを直接接続させることで、抵抗106を経由させずにバッテリ101からモータ102へ電力が供給される。
これにより、モータ102は、エンジンを助走させているときよりも高い回転速度で回転してエンジンを始動させる。このように、特許文献1に記載の装置100は、エンジンを始動させる期間に、スタータ(ここでは、モータ102)の駆動状態を切り替えるように構成されている。
なお、特許文献1に記載の装置100では、エンジンを自動始動する場合、所定の始動条件が成立すると、ECU105が自動的にスイッチ104を制御してバッテリ101と抵抗106とを接続し、その後、バッテリ101とモータ102とを直接接続させてエンジンの自動始動を行う。
そして、本実施例に係るエンジン制御装置は、エンジンを自動始動する装置が特許文献1に記載の装置の場合、モータ102がバッテリ101から抵抗106を経由して供給される電力によって駆動されている第1の期間のバッテリ101の電圧を検出する。
続いて、本実施例に係るエンジン制御装置は、モータ102がバッテリ101から抵抗106を経由せずに供給される電力によって駆動されている第2の期間のバッテリ101の電圧を検出する。
そして、本実施例に係るエンジン制御装置は、第1の期間に検出した電圧と第2の期間に検出した電圧とを、それぞれ異なる閾値と比較した比較結果に基づいて、エンジンの自動停止に関する許可および禁止を判定する。
次に、図3を用いて特許文献3に記載の装置について説明する。図3に示すように、特許文献3に記載の装置200は、スタータ201の動作を制御することによってエンジン220を始動させる装置である。
スタータ201は、エンジン220を始動するモータ202と、モータ202によって駆動されるピニオンギア203をエンジン220のクランクシャフトに連動するリングギア221へ噛み合わせるソレノイドスイッチ210とを備えている。
ソレノイドスイッチ210は、ソレノイド211と、ソレノイド211へ通電することによって動作する可動部材212とを備えている。可動部材212は、連動部材213を介してピニオンギア203の回転軸と連結されている。
かかるスタータ201では、ソレノイド211へ通電されていない場合、ピニオンギア203がリングギア221と噛み合わない位置に保持され、ソレノイド211へ通電された場合に、ピニオンギア203がリングギア221と噛み合う位置まで移動する。
かかるスタータ201の動作を制御する特許文献3に記載の装置200は、ソレノイド211への通電のON/OFFを切り替える第1スイッチ231と、モータ202への通電のON/OFFを切り替える第2スイッチ232とを備えている。
また、特許文献3に記載の装置200は、イグニッションキーの操作によって第1スイッチ231および第2スイッチ232のON/OFFを切り替えるキースイッチ233を備えている。
また、特許文献3に記載の装置200は、キースイッチ233がONされた場合に、第1スイッチ231がONされた後、所定時間経過後に第2スイッチ232をONさせる遅延回路234、キースイッチ233に代わって第1スイッチ231および第2スイッチ232を順次ONさせるECU235を備えている。
そして、かかる装置200は、エンジン220が完全に停止する前に所定の始動条件が成立すると、まず、スタータ201を第1の状態で駆動した後、第1の状態とは消費電力が異なる第2の状態に駆動制御を切り替えてモータ202を駆動させ、エンジン220の始動を行う。
具体的には、特許文献3に記載の装置200では、所定の始動条件が成立した場合、エンジン220の回転数がピニオンギア203をリングギア221へ噛み合わせることが可能な回転数まで低下すると、ECU235が第1スイッチ231をONする。
これにより、ソレノイドスイッチ210が駆動され、ピニオンギア203がリングギア221と噛み合う位置まで移動してスタータ201が第1の状態となる。続いて、特許文献3に記載の装置200では、所定時間経過後にECU235が第2スイッチ232をONする。これにより、モータ202が駆動されてスタータ201が第2の状態となり、エンジン220が始動される。
そして、本実施例に係るエンジン制御装置は、エンジン220を自動始動する装置が特許文献3に記載の装置の場合、スタータ201が第1の状態で駆動されている第1の期間のバッテリ230の電圧を検出する。続いて、本実施例に係るエンジン制御装置は、スタータ201が第2の状態で駆動されている第2の期間のバッテリ230の電圧を検出する。
そして、本実施例に係るエンジン制御装置は、第1の期間に検出した電圧と第2の期間に検出した電圧とを、それぞれ異なる閾値と比較した比較結果に基づいて、エンジン220の自動停止に関する許可および禁止を判定する。
次に、特許文献2に記載の装置について説明する。特許文献2に記載の装置は、遅延回路234を備えていない点と、ECU235による第1スイッチ231および第2スイッチ232の制御手順が異なる点とを除けば、特許文献3に記載の装置200と同様の構成である。
そして、特許文献2に記載の装置は、エンジン220が完全に停止する前に所定の始動条件が成立すると、まず、スタータ201を第1の状態で駆動した後、第1の状態とは消費電力が異なる第2の状態に駆動制御を切り替えてモータ202を駆動させ、エンジン220の始動を行う。
具体的には、特許文献2に記載の装置は、所定の始動条件が成立した場合、まず、ECU235が第2スイッチ232をONする。これにより、ピニオンギア203が空転を開始し、スタータ201が第1の状態となる。
続いて、特許文献2に記載の装置では、ECU235がピニオンギア203の回転とエンジン220の回転とが同期したと判定した場合に、第1スイッチ231をONする。これにより、ソレノイドスイッチ210が駆動され、ピニオンギア203がリングギア221と噛み合う位置まで移動してスタータ201が第2の状態となり、エンジン220が始動される。
そして、本実施例に係るエンジン制御装置は、エンジン220を自動始動する装置が特許文献2に記載の装置の場合、スタータ201が第1の状態で駆動されている第1の期間のバッテリ230の電圧を検出する。続いて、本実施例に係るエンジン制御装置は、スタータ201が第2の状態で駆動されている第2の期間のバッテリ230の電圧を検出する。
そして、本実施例に係るエンジン制御装置は、第1の期間に検出した電圧と第2の期間に検出した電圧とを、それぞれ異なる閾値と比較した比較結果に基づいて、エンジン220の自動停止に関する許可および禁止を判定する。
次に、図4を用いて、本実施例に係るエンジン制御装置の構成について説明する。図4は、本実施例に係るエンジン制御装置1の構成を示すブロック図である。なお、図4には、エンジン制御装置1の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
以下では、前述した特許文献1〜3に記載の装置を、エンジンの自動停止および自動始動を行うエンジン始動装置として説明する。図4に示すエンジン制御装置1は、所定の停止条件が成立した場合に、エンジン始動装置にエンジンの自動停止を行わせ、その後、所定の始動条件が成立した場合に、エンジン始動装置にエンジンの自動始動を行わせる装置である。
図4に示すように、エンジン制御装置1は、センサSE、エンジンE、エンジン始動負荷(以下、「スタータST」という)、バッテリBと接続されている。なお、スタータSTは、エンジン始動装置が特許文献1に記載の装置の場合、図2に示すモータ102に相当し、エンジン始動装置が特許文献2または3に記載の装置の場合、スタータ201に相当する。
図4では、説明を簡単にするため、スタータSTとエンジン制御装置1とが直接接続されているように図示しているが、実際には、スタータSTとエンジン制御装置1とはエンジン始動装置のECU105、235を介して接続される。
すなわち、エンジン制御装置1は、エンジン始動装置のECU105、235へエンジンを始動させる制御信号を出力することにより、ECU105、235にスタータSTの動作を制御させ、エンジンEを始動させる。
センサSEは、車両の状態を検知する複数の検知装置を含むものである。具体的には、センサSEは、エンジンEの回転数、車両の速度、車両の加速度、シフトレバーのポジション、アクセルの操作状態、ブレーキの操作状態等をそれぞれ検知し、各検知結果をエンジン制御装置1へ出力する。
また、エンジンEは、車両を駆動する内燃機関であり、バッテリBは、スタータSTをはじめ、車両に搭載されている各種電子機器へ電力を供給する電源である。
また、エンジン制御装置1は、エンジンEの自動停止および自動始動を行う制御部2と、エンジンEの自動停止および自動始動に用いる始動/停止条件情報31、自動停止許可情報32、閾値情報33を記憶した記憶部3とを備えている。
始動/停止条件情報31は、エンジンEの停止条件および始動条件を示す情報である。具体的には、記憶部3は、停止条件として、エンジンEの回転数がアイドリング状態、車両の速度および加速度が0、アクセルがOFF、ブレーキがON、シフトポジションがニュートラルまたはパーキング等の条件を記憶している。
そして、制御部2は、エンジンEの自動停止が許可されている状態で、かかる停止条件の全てが成立した場合に、エンジンEを自動停止させる。
また、記憶部3は、始動条件として、ブレーキがONの状態でシフトポジションがニュートラルまたはパーキングからドライブへシフトしたこと等の条件を記憶している。そして、制御部2は、エンジンEを自動停止させた後に始動条件が成立した場合、エンジンEを自動的に再始動させる。
自動停止許可情報32は、エンジンEの自動停止が許可されているか、若しくは、禁止されているかを示す情報である。かかる自動停止許可情報32は、エンジンの停止条件が成立した場合に、制御部2によって参照される。
閾値情報33は、スタータSTを駆動している期間のバッテリBの電圧と比較する閾値を示す情報である。具体的には、記憶部3は、閾値情報として、回転が停止しているエンジンを始動する場合に用いられる閾値(以下、「閾値Th」という)と、回転が完全には停止していないエンジンEを始動する場合に用いられる閾値とを記憶している。
特に、記憶部3は、回転が停止していないエンジンを始動する場合に用いられる閾値として、上記第1の状態でスタータSTを駆動している第1の期間に用いられる閾値(以下、「閾値Th1a」という)と、上記第2の状態でスタータSTを駆動している第2の期間に用いられる閾値(以下、「Th2a」という)とを記憶している。
なお、記憶部3は、スタータSTを第1の状態で駆動開始後に経過した時間、スタータSTを第2の状態で駆動開始後に経過した時間、自動始動する際のエンジンEの回転数等に応じてそれぞれ異なる閾値を記憶しておくこともできる。
制御部2は、エンジン制御装置1全体の動作を統括制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とを有する情報処理装置を備えている。
そして、制御部2は、CPUがROMから各種プログラムを読出し、RAMを作業領域として使用して実行することにより機能する複数の処理部を備えている。具体的には、制御部2は、始動/停止判定部21と、停止制御部22と、始動制御部23と、電圧検出部24と、自動停止禁止部25とを備えている。
始動/停止判定部21は、センサSEから入力される各検出結果と、記憶部2に記憶されている始動/停止条件情報31とに基づいて、エンジンEの停止条件または始動条件が成立したか否かを判定する処理部である。
そして、始動/停止判定部21は、エンジンの停止条件が成立したと判定した場合に、判定結果を停止制御部22へ出力する。一方、始動/停止判定部21は、エンジンの始動条件が成立したと判定した場合、判定結果を始動制御部23へ出力する。
停止制御部22は、エンジンEを自動的に停止させる処理部である。かかる停止制御部22は、始動/停止判定部21から停止条件が成立したことを示す判定結果が入力されると、記憶部3に記憶されている自動停止許可情報32を参照し、自動停止が許可されている場合に、エンジンEを自動停止させる。
始動制御部23は、エンジンEを自動的に始動させる処理部である。かかる始動制御部23は、始動/停止判定部21から始動条件が成立したことを示す判定結果入力された場合に、エンジンEを自動始動させる。
電圧検出部24は、スタータSTを駆動中の期間におけるバッテリBの電圧を検出する電圧モニタ手段として機能し、検出結果を自動停止禁止部25へ出力する処理部である。
自動停止禁止部25は、エンジンの自動停止を禁止するか否かを判定する処理部である。かかる自動停止禁止部25は、電圧検出部24から入力されるバッテリBの電圧、記憶部3に記憶されている閾値Th1a、Th2aに基づいて自動停止を禁止するか否かを判定する。なお、自動停止禁止部25の動作については、図6を用いて後述する。
次に、図5を用いて回転が完全には停止していないエンジンEを始動する場合におけるバッテリBの電圧変化について説明する。図5は、回転が完全には停止していないエンジンEを始動する場合におけるバッテリBの電圧変化を示す図である。
図5(A)に示すように、時刻T1でエンジンEが自動停止された後、図5(B)に示すように、時刻T2でエンジンEの回転が停止する前に始動条件が成立すると、スタータSTが第1の状態で駆動(ON)され、バッテリBの電圧は、図5(D)に示すように、時刻T2で低下する。
その後、図5(C)に示すように、時刻T3でスタータSTの負荷状態が切替(ON)られ、スタータSTが第2の状態で駆動されるとバッテリBの電圧は、図5(D)に示すように、時刻T3で低下する。
その後、図5(A)に示すように、時刻T4でエンジンEの始動に成功し、図5(B)、(C)に示すように、時刻T4でスタータSTの駆動が停止されると、バッテリBの電圧は、図5(D)に示すように、スタータSTを駆動する前の電圧まで復帰する。
このように、回転が完全には停止していないエンジンEを始動する場合、バッテリBの電圧は、スタータSTが第1の状態で駆動開始される時刻T2、およびスタータSTが第2の状態で駆動開始される時刻T3で大きく低下する(図5の(D)参照)。
また、図5(D)に示すように、スタータSTが第1の状態で駆動されている期間T2〜T3(以下、「第1の期間」という)と、スタータSTが第2の状態で駆動されている期間T3〜T4(以下、「第2の期間」という)とでは、バッテリBの電圧の変動状態が異なる。
そこで、エンジン制御装置1は、第1の期間におけるバッテリBの電圧低下と、第2の期間におけるバッテリBの電圧降下とを考慮して自動停止の許可および禁止を行うように構成している。
次に、図6を用いて自動停止禁止部25の動作について説明する。図6は、本実施例に係る自動停止禁止部25の動作の一例を示す図である。なお、図6に示すバッテリBの電圧変化は、図5(D)に対応するものである。
自動停止禁止部25は、まず、スタータSTが第1の状態で駆動されている第1の期間T2〜T3に電圧検出部24から入力されるバッテリBの電圧の最低値(以下、「第1最低電圧V1a」という)を取得する(図6の(1)参照)。
続いて、自動停止禁止部25は、スタータSTが第2の状態で駆動されている第2の期間T3〜T4に電圧検出部24から入力されるバッテリBの電圧の最低値(以下、「第2最低電圧V2a」という)を取得する(図6の(2)参照)。
続いて、自動停止禁止部25は、第1最低電圧V1aが記憶部3に記憶されている閾値Th1a以上であり、且つ、第2最低電圧V2aが記憶部3に記憶されている閾値Th2a以上であった場合に(図6の(3)参照)、次回の自動停止を許可することを示す自動停止許可情報32を記憶部3へ記憶させる(図6の(4)参照)。
一方、自動停止禁止部25は、第1最低電圧V1aが閾値Th1a以上、第2最低電圧V2aが閾値Th2a以上という2つの条件のうちいずれか一方でも成立しなかった場合、次回の自動停止を禁止することを示す自動停止許可情報32を記憶部3へ記憶させる。
また、エンジン制御装置1では、第1最低電圧V1aと比較する閾値Th1aと、第2最低電圧V2aと比較する閾値Th2aとを異なる値としている(図6の(5)参照)。
かかる閾値Th1a、Th2aは、事前にシミュレーションを行い、その結果に基づいてそれぞれ決定する。例えば、閾値Th1a、Th2aの値をそれぞれ変更しながら自動停止禁止部25によって自動停止の許可判定を行い、判定結果に従ってエンジンEを自動停止させた後、エンジンEを始動させるシミュレーションを事前に行う。
かかるシミュレーションの結果、エンジンEの始動に成功したときに設定されている閾値Th1a、Th2aの組合せのうち、最も値の低い閾値Th1a、Th2aの組合せを閾値情報33として記憶部3へ記憶させる。
このように、エンジン制御装置1では、閾値Th1a、Th2aとして、それぞれ最適な異なる値を閾値情報33として記憶部3へ記憶させることにより、自動停止の許可および禁止を適切に行うことができる。
次に、図7および図8を用いて、エンジン制御装置1の制御部2が実行する処理について説明する。図7および図8は、本実施例に係る制御部2が実行する処理を示すフローチャートである。なお、図7および図8には、エンジン制御装置1の特徴を説明するために必要な処理のみを示しており、一般的な処理については、図示を省略している。
図7に示すように、制御部2は、車両の走行中に停止条件が成立したか否かを判定し(ステップS101)、停止条件が成立していないと判定した場合(ステップS101,No)、処理を終了する。
一方、制御部2は、停止条件が成立したと判定した場合(ステップS101,Yes)、自動停止が許可されているか否かを判定する(ステップS102)。そして、制御部2は、自動停止が許可されていないと判定した場合(ステップS102,No)、処理を終了する。
一方、制御部2は、自動停止が許可されていると判定した場合(ステップS102,Yes)、エンジンEを自動停止させ(ステップS103)、エンジンEの始動条件が成立したか否かを判定する(ステップS104)。
そして、制御部2は、始動条件が成立していないと判定した場合(ステップS104,No)、処理をステップS104へ移し、始動条件が成立したと判定した場合(ステップS104,Yes)、エンジンEを自動始動し(ステップS105)、処理を終了する。
また、制御部2は、ステップS105においてエンジンEを自動始動する場合、図8に示す処理を実行する。すなわち、制御部2は、エンジンEの自動始動を開始する場合、図8に示すように、まず、第1始動制御が選択されているか否かを判定する(ステップS201)。
ここで、第1始動制御とは、スタータSTを前述した第1の状態で駆動させた後に第2の状態で駆動させる駆動制御である。具体的には、第1始動制御は、エンジン始動装置が特許文献1に記載の装置100であった場合、エンジンを助走させるようにモータ102を通常よりも低速で回転駆動させた後に、モータ102の回転数を上昇させてエンジンEを始動させる駆動制御である。
また、第1始動制御は、エンジン始動装置が特許文献2に記載の装置であった場合、スタータSTを空転させた後に、空転中のピニオンギア203をエンジン220(ここでは、エンジンE)のリングギア221と噛み合う位置まで移動させ、エンジンを始動させる駆動制御である。
また、第1始動制御は、エンジン始動装置が特許文献3に記載の装置200であった場合、スタータSTのピニオンギア203をエンジン220(ここでは、エンジンE)のリングギア221と噛み合う位置まで移動させた後に、モータ202を駆動してエンジン220(ここでは、エンジンE)を始動させる駆動制御である。
そして、制御部2は、第1始動制御が選択されていると判定した場合(ステップS201,Yes)、スタータSTの第1の状態による駆動(第1始動制御)を開始し(ステップS202)、第1最低電圧V1aを取得する(ステップS203)。
続いて、制御部2は、スタータSTを異なる負荷状態である第2の負荷状態に切り替えて駆動させ(ステップS204)、第2最低電圧V2aを取得する(ステップS205)。
その後、制御部2は、エンジンEの始動が完了したと判断するとスタータSTの駆動を停止させ、始動制御を終了させる(ステップS206)。
続いて、制御部2は、第1最低電圧V1aが閾値Th1a以上であり、且つ、第2最低電圧V2aが閾値Th2a以上であるか否かを判定する(ステップS207)。
そして、制御部2は、第1最低電圧V1aが閾値Th1a以上であり、且つ、第2最低電圧V2aが閾値Th2a以上であると判定した場合(ステップS207,Yes)、エンジンEの自動停止を許可し(ステップS208)、処理を終了する。
一方、制御部2は、第1最低電圧V1aが閾値Th1a以上、第2最低電圧V2aが閾値Th2a以上という条件のうち、いずれか一方でも成立していなかった場合(ステップS207,No)、エンジンEの自動停止を禁止し(ステップS209)、処理を終了する。
また、制御部2は、ステップS201において第1始動制御が選択されていないと判定した場合(ステップS201,No)、第2始動制御を開始する(ステップS210)。
なお、ステップS201で第1始動制御が選択されないのは、例えば、エンジン始動装置が特許文献1に記載の装置100であれば、始動時におけるエンジンの始動温度が高く、スタータを助走させる必要がない場合である。
また、ステップS201で第1始動制御が選択されないのは、エンジン始動装置が特許文献2に記載の装置または特許文献3に記載の装置200であれば、始動するエンジン220(ここでは、エンジンE)の回転が完全に停止していた場合である。
そして、制御部2は、ステップS210において以下のような第2始動制御を行う。すなわち、エンジン始動装置が特許文献1に記載の装置の場合、制御部2は、最初から抵抗106を介さない経路でスタータへの通電を行ってエンジンEを始動させる。
もしくは、制御部2は、第1の状態における抵抗106の抵抗値を小さくし(抵抗106を可変抵抗等で構成することで実現する)、第1の状態と第2の状態とで、スタータへの通電経路の抵抗値にほとんど違いがない状態でエンジンEを始動させる。
また、エンジン始動装置が特許文献2に記載の装置の場合、制御部2は、ピニオンギア203を空転させずにリングギア221へ噛み合わせた後に、モータ202の駆動を開始し、エンジン220(ここでは、エンジンE)を始動させる。
また、エンジン始動装置が特許文献3に記載の装置200の場合、制御部2は、エンジンが完全に停止した状態で、スタータSTのピニオンギア203をエンジン220(ここでは、エンジンE)のリングギア221と噛み合う位置まで移動させた後に、モータ202を駆動してエンジン220(E)を始動させる。
続いて、制御部2は、バッテリBの最低電圧を取得し(ステップS211)、エンジンの始動が完了したと判断するとスタータSTの駆動を停止させ、始動制御を終了させる(ステップS212)。そして、制御部2は、取得した最低電圧が所定の閾値Th以上であるか否かの判定を行う(ステップS213)。
このとき、電圧と比較する閾値Thは、前述の閾値Th1a、Th2aとは異なる値であり、回転が完全に停止したエンジンEを始動するために最低限必要なバッテリBの電圧の値である。
そして、制御部2は、バッテリBの電圧が閾値Th以上であると判定した場合(ステップS213,Yes)、エンジンEの自動停止を許可し(ステップS214)、処理を終了する。一方、制御部2は、バッテリBの電圧が閾値Th未満であると判定した場合(ステップS213,No)、エンジンEの自動停止を禁止し(ステップS215)、処理を終了する。
このように、エンジン制御装置1では、スタータSTが第1、第2、第3の各始動制御で駆動されている期間毎にバッテリBの電圧を検出し、検出した各電圧と対応する閾値とを比較した結果に基づいて自動停止の許可および禁止を行う。
このため、エンジン制御装置1によれば、エンジンEの始動中にスタータSTの駆動状態(負荷状態)が切り替えられるような場合であっても、エンジンの自動停止に関する許可および禁止を適切に行うことができる。
ところで、自動停止禁止部25は、スタータSTが第1の状態で駆動されている第1の期間、および、スタータSTが第2の状態で駆動されている第2の期間をさらに複数の分割期間へ分割し、各分割期間におけるバッテリBの電圧を用いて自動停止の許可および禁止を行うように構成することもできる。
以下では、図9を用いて自動停止禁止部25の変形例について説明する。図9は、変形例に係る自動停止禁止部25の動作を示す図である。なお、図9に示すバッテリBの電圧変化は、図5(D)に対応するものである。
図9に示すように、本変形例に係る自動停止禁止部25は、時刻T2にスタータSTが第1の状態で駆動開始されると、時刻T2から所定時間経過後の時刻T21までの期間(第1突入期間)におけるバッテリBの電圧(第1突入時電圧V1b)を取得する(図9の(1)参照)。なお、ここでの所定時間は、例えば100msとする。
続いて、本変形例に係る自動停止禁止部25は、時刻T21からスタータSTが第2の状態で駆動開始される時刻T3までの期間(第1突入後期間)におけるバッテリBの電圧(第1突入後電圧V1c)を取得する(図9の(2)参照)。
続いて、本変形例に係る自動停止禁止部25は、時刻T3から所定時間経過後の時刻T31までの期間(第2突入期間)におけるバッテリBの電圧(第2突入時電圧V2b)を取得する(図9の(3)参照)。なお、ここでの所定時間も100msとする。
続いて、本変形例に係る自動停止禁止部25は、時刻T31からスタータSTの駆動が停止される時刻T4までの期間(第2突入後期間)におけるバッテリBの電圧(第2突入後電圧V2c)を取得する(図9の(4)参照)。
続いて、本変形例に係る自動停止禁止部25は、第1突入時電圧V1bと第2突入時電圧V2bとを比較し(図9の(5)参照)、第1突入時電圧V1bおよび第2突入時電圧V2bで最も低かった電圧(最低突入時電圧V3b)を決定する(図9の(6)参照)。
続いて、本変形例に係る自動停止禁止部25は、第1突入後電圧V1cと第2突入後電圧V2cとを比較し(図9の(7)参照)、第1突入後電圧V1cおよび第2突入後電圧V2cで最も低かった電圧(最低突入後V3c)を決定する(図9の(8)参照)。
続いて、本変形例に係る自動停止禁止部25は、最低突入時電圧V3bが予め設定した閾値Thb以上であり、且つ、最低突入後電圧V3cが予め設定した閾値Thc以上であった場合(図9の(9)参照)、エンジンEの自動停止を許可する(図9の(10)参照)。
なお、本変形例では、閾値Thb、Thcとして、それぞれ異なる最適な値を予め設定する(図9の(11)参照)。かかる閾値Thb、Thcは、事前に行うシミュレーションによって決定する。
例えば、閾値Thb、Thcの値をそれぞれ変更しながら自動停止禁止部25によって自動停止の許可判定を行い、判定結果に従ってエンジンEを自動停止させた後、エンジンEを始動させるシミュレーションを事前に繰り返し行う。
かかるシミュレーションの結果、エンジンEの始動に成功したときに設定されている閾値Thb、Thcの組合せのうち、最も値の低い閾値Thb、Thcの組合せを閾値Thb、Thbとして決定する。
このように、エンジン制御装置1では、閾値Thb、Thcとして、それぞれ異なる最適な閾値と最低突入時電圧V3bおよび最低突入後電圧V3cとを比較した結果に基づいて自動停止の許可および禁止を行うため、自動停止の許可および禁止をより正確に行うことができる。
ところで、エンジン制御装置1は、第1突入時電圧V1b、第1突入後電圧V1c、第2突入時電圧V2b、第2突入後電圧V2cを検出する場合、以下のようにエンジンEの自動停止に関する許可および禁止を行うように構成することもできる。
例えば、エンジン始動装置1は、第1突入時電圧V1bと第2突入時電圧V2bとを平均化して平均突入時電圧を決定するとともに、第1突入後電圧V1cと第2突入後電圧V2cとを平均化して平均突入後電圧を決定する。
そして、平均突入時電圧と平均突入後電圧とを、それぞれ異なる最適な閾値と比較し、平均突入時電圧が閾値以上であり、且つ、平均突入後電圧が閾値以上であった場合に、エンジンEの自動停止を許可する。
一方、エンジン制御装置1は、平均突入時電圧が閾値以上、平均突入後電圧が閾値以上という条件のうち、いずれか一方でも成立しなかった場合に、エンジンEの自動停止を禁止する。
なお、平均突入時電圧、平均突入後電圧と比較する閾値についても、閾値Thb、Thcと同様に、事前にシミュレーションを繰り返し行うことで決定することができる。かかる構成とすることによってもエンジン制御装置1は、自動停止の許可および禁止を適切に行うことができる。
また、例えば、エンジン始動装置1は、第1突入時電圧V1b、第1突入後電圧V1c、第2突入時電圧V2b、第2突入後電圧V2cと、それぞれ異なる最適な閾値とを比較し、各電圧が全て対応する閾値以上であった場合に、エンジンEの自動停止を許可するように構成することもできる。
かかる構成とした場合、エンジン制御装置1は、第1突入時電圧V1b、第1突入後電圧V1c、第2突入時電圧V2b、第2突入後電圧V2cのうち、いずれか一つの電圧でも対応する閾値未満であった場合、エンジンEの自動停止を禁止する。
かかる構成とすることにより、エンジン制御装置1は、自動停止の許可および禁止をより正確、且つ細やかに判定することができる。
ところで、上記した実施例および変形例では、自動停止禁止部25が電圧検出部24によって検出された電圧の実測値に基づいて自動停止の許可および禁止を行っているが、始動するエンジンEの回転数に応じて補正した電圧に基づいて自動停止の許可および禁止を行ってもよい。
以下では、図10を用いて自動停止禁止部25がバッテリBから検出された電圧を、始動するエンジンEの回転数に応じて補正し、補正後の電圧に基づいてエンジンEの自動停止の許可および禁止を行う場合について説明する。
図10は、エンジンEの回転数と電圧の補正係数との対応関係を示す図である。補正した電圧に基づいて自動停止の許可および禁止を行う場合、エンジン制御装置1は、例えば、図10(A−1)に示す電圧補正用のテーブルを記憶部3へ記憶させておく。
なお、図10(A−1)に示す電圧補正用のテーブルは、回転が完全に停止しているエンジンEを始動する場合に用いるテーブルである。図10(A−1)に示すように、電圧補正用テーブルでは、スタータSTとエンジンEとが連動連結されている期間におけるエンジンEの回転数(rpm)と、検出されたバッテリBの電圧へ乗ずる補正係数とが対応付けられている。
かかる電圧補正用テーブルを設定する場合、図10(A−1)に示すように、エンジンEの回転数が0(rpm)に対して補正係数1を対応付け、エンジンEの回転数が高くなるほど補正係数の値が小さくなるように設定する。
そして、自動停止禁止部25は、スタータSTによってエンジンEを始動させる場合に、電圧補正用テーブルに基づき、電圧検出部24によって検出された電圧に対してエンジンEの回転数に応じた補正係数を乗じて補正した電圧を算出する。
続いて、自動停止禁止部25は、補正した電圧と予め設定された1種類の閾値とを比較し、補正した電圧が閾値以上であった場合に、エンジンEの自動停止を許可する。このように、電圧補正テーブルを用いれば、電圧と比較する閾値を予め複数種類記憶しておく必要がない。
すなわち、スタータSTによってエンジンEを始動する場合、バッテリの電圧の低下量は、始動中のエンジンの回転数によって変動する。したがって、始動途中のエンジンEの回転数毎にバッテリBの電圧がエンジンEを始動するのに十分であるか否かを判定するためには、エンジンEの回転数毎に電圧と比較する最適な閾値を記憶しておくことが望ましい。
しかし、エンジンEの回転数毎に電圧と比較する最適な閾値を全て記憶させようとすると、その分、記憶容量の増大が必要となるため、回路規模や製造コストの増大につながり好ましくない。
これに対し、図10(A−1)に示す電圧補正用テーブルを用いれば、自動停止禁止部25は、電圧補正テーブルに基づいて補正した電圧と予め設定した1種類の閾値とを比較するだけでエンジンEの回転数に応じた自動停止の許可および禁止を適切に判定することができる。
また、エンジン制御装置1は、図10(A−1)に示す電圧補正用テーブルに替えて、図10(A―2)に示すように、エンジンEの回転数と電圧の補正係数との対応関係を示す関数情報を記憶することもできる。
なお、図10(A−2)に示す■は、図10(A−1)に示す電圧補正用テーブルに記載の各回転数に対応する補正係数の値を示している。かかる関数情報を記憶しておけば、エンジン制御装置1は、関数情報を用いて任意の回転数に対応する補正係数を算出できるため、エンジンEの回転数毎にそれぞれ補正係数を記憶しておく必要がない。
また、エンジン制御装置1は、空転させたスタータSTと回転が停止していないエンジンEとを連動連結した後に用いる電圧補正用テーブルとして、図10(B−1)に示す電圧補正用テーブルを記憶することもできる。
なお、図10(B−1)に示す電圧補正用テーブルについても、エンジンEの回転数が高いほど補正係数の値が小さくなるように設定する。ただし、かかる電圧補正テーブルを設定する場合、図10(A−1)に示す電圧補正テーブルよりも同一回転数における補正係数の値を小さく設定する。
例えば、図10(A−1)に示すように、回転が停止しているエンジンEの始動に用いる電圧補正テーブルで回転数が200の場合の補正係数を0.97と設定した場合、図10(B−1)に示す電圧補正用テーブルでは、回転数が200の場合の補正係数として0.97よりも小さい0.92を設定する。
これは、エンジンEの回転数を0から200(rpm)まで上昇させた場合における電圧の低下量よりも、回転中のエンジンEの回転数を200(rpm)まで上昇させた場合における電圧の低下量の方が小さいと予測できるためである。
かかる図10(B−1)に示す電圧補正テーブルを用いることにより、自動停止禁止部25は、電圧と比較する閾値を予め複数種類設定しておかなくとも、スタータSTによってエンジンEを始動中に、自動停止の許可および禁止を適切に行うことができる。
また、エンジン制御装置1は、図10(B−1)に示す電圧補正テーブルに替えて、図10(B−2)に示す関数情報を記憶しておくこともできる。なお、図10(B−2)に示す□は、図10(B−1)に示す電圧補正用テーブルに記載の各回転数に対応する補正係数の値を示している。
かかる関数情報を記憶しておけば、エンジン制御装置1は、スタータSTによってエンジンEを始動中に、任意の回転数に対応する補正係数を算出することができる。したがって、エンジン制御装置1は、スタータSTによってエンジンEを始動中の期間についてもエンジンEの自動停止の許可および禁止を適切に行うことができる。
なお、ここでは、電圧検出部24によって検出された電圧を始動中のエンジンEの回転数が高いほど低くなるように補正する場合について説明したが、電圧を補正せずにエンジンの回転数に応じて電圧と比較する閾値を補正してもよい。
かかる場合、始動中のエンジンEの回転数が高くなるほど、閾値の値が高くなるように閾値を補正する。これによっても、エンジン制御装置1は、始動するエンジンEの回転数毎に複数種類の閾値を記憶しておかなくて済み、しかも、電圧を補正する場合と同様に、自動停止の許可および禁止を適切に行うことができる。