以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるプリント基板設計における配線パターン幅の計算方法、配線パターン幅の計算装置、プログラムおよびコンピューター読み取り可能な記録媒体の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
なお、本実施の形態においては、配線パターンは面データとして構築されているものとする。
まず、図1には、本発明によるプリント基板設計における配線パターン幅の計算装置の実施の形態の一例のハードウェア構成を表すブロック構成図が示されている。
即ち、この本発明によるプリント基板設計における配線パターン幅の計算装置(以下、単に「パターン幅計算装置」と適宜に称する。)10は、例えば、プリント基板設計用などのCADシステム上に構築されるものであり、そのハードウェア構成は、公知のパーソナルコンピューターシステムや汎用コンピューターシステムなどで実現されており、その全体の動作を中央処理装置(CPU)12を用いて制御するように構成されている。
そして、このCPU12には、バス14を介して、CPU12の制御のためのプログラムや後述する各種のデータなどを記憶するリードオンリメモリ(ROM)やCPU12のワーキングエリアとして用いられる記憶領域などを備えたランダムアクセスメモリ(RAM)などから構成される内部記憶装置(メモリー)16と、CPU12の制御に基づいて各種の表示を行うCRT(Cathode Ray Tube:ブラウン管)や液晶パネルなどの画面を備えた表示装置18と、表示装置18の表示画面上における任意の位置を指定する入力デバイスたるマウスなどのポインティングデバイス20と、任意の文字を入力するためのキーボードなどの文字入力デバイス22と、CPU12の制御により各種の情報を記憶させることができるとともに記憶した各種の情報を読み出して内部記憶装置16に転送可能とされたハードディスクなどの外部記憶装置24とが接続されている。
そして、このパターン幅計算装置10においては、ポインティングデバイス20ならびに文字入力デバイス22により入力部10A(図2を参照する。)が構成されており、表示装置18により出力部10E(図2を参照する。)が構成されている。
なお、上記したように外部記憶装置24は各種の情報を記憶しているものであるが、本発明の実施に関連する情報としては、各種の部品に関する情報である部品情報や各種の部品間の配線状態を示す配線情報などから構成されているプリント基板の設計データたるレイアウト設計データ、部品ピン間の接続情報であるネット情報とプリント基板の構成である端子情報とを含む配線情報、目標幅情報などを含むルール情報、部品の配置位置を示す配置位置情報と部品の端子に関する情報である端子情報とを含む部品情報、ビアの位置やビアの径などのビアに関する情報を含むビア情報などが記憶されている。
ここで、図2には、上記したパターン幅計算装置10の機能的特徴をブロック化した機能ブロック図が示されており、パターン幅計算装置10においては、CPU12の制御によりパターン幅の計算に関する処理として、対象パターンのピンペアの確定処理10Bと、配線パターン幅を満足する領域の計算処理10Cと、配線パターン幅を満足する接続経路の検出処理10Dとが実行される。
以上の構成において、図3に示すフローチャートを参照しながら、この配線パターン幅計算装置10によって実行される処理の内容について詳細に説明する。
はじめに、配線パターン計算装置10の入力部10Aにおいて検出されたユーザーよりのレイアウト設計データ入力指示の検出によって、図3に示されるフローチャートに従って処理が開始される。
なお、この配線パターン幅計算装置10においては、入力部10Aたるポインティングデバイス20や文字入力デバイス22をユーザーが操作することにより、所望の指示を入力することができるようになされている。
例えば、ユーザーは、入力部10Aたるポインティングデバイス20や文字入力デバイス22を操作することにより、外部記憶装置24からレイアウト設計データの読み出しを指示したり、あるいは、配線情報、ルール情報、部品情報などを設定したり、その読み出しを指示したりすることができる。
この際、ユーザーが入力部10Aたるポインティングデバイス20や文字入力デバイス22を操作して、外部記憶装置24から上記したレイアウト設計データなどの読み出しを指示すると、レイアウト設計データなどが外部記憶装置24から読み出されて内部記憶装置16へ転送される。
そして、本実施の形態においては、CPU12は、内部記憶装置16へ転送されて記憶されたレイアウト設計データなどから所定の情報を読み出して、対象パターンのピンペアの確定処理10B、配線パターン幅を満足する領域の計算処理10Cと、配線パターン幅を満足する接続経路の検出処理10Dとを実行することになる。
これら対象パターンのピンペアの確定処理10B、配線パターン幅を満足する領域の計算処理10Cと、配線パターン幅を満足する接続経路の検出処理10Dとを実行することにより、後述するように配線パターン幅を検出する対象となるユーザーにより選定された対象ネットのピンペアを確定する処理や端子付近除外処理が行われる。
なお、上記した各処理の途中結果や最終結果は、出力部10Eたる表示装置18に適宜に表示される。
より詳細には、CPU12は、レイアウト設計データ30から配線情報を読み込み(ステップS302)、上記配線情報から配線レイアウト情報(パターン図形)を取得する(ステップS304)。
また、CPU12は、レイアウト設計データ30からルール情報を読み込み(ステップS306)、ルール情報からパターン幅の目標の値(目標幅)についての情報や厚み考慮幅情報(後述する。)を取得する(ステップS308)。
さらにまた、CPU12は、レイアウト設計データ30から部品情報を読み込む(ステップS310)。そして、こうした部品情報からは配置位置情報(ステップS312)および端子情報(ステップS314)をそれぞれ取得する。
次に、ステップS304で取得した配線レイアウト情報(パターン図形)と、ステップS308で取得したパターン幅の目標の値(目標幅)の情報と、ステップS312で取得した配置位置情報と、ステップS314で取得した端子情報とを、ステップS316の処理へ送る。
そして、ステップS316の処理においては、ユーザーによって選定されたパターン図形上のピンペアの確定処理が行われる。
ここで、図4(a)(b)には、ユーザーによって選定されたプリント基板上のネット(パターン図形)の形状を示したパターン図形32のピンペアの確定処理の方法を図示した説明図が示されている。
本実施の形態によるパターン幅の計算装置10においては、パターン幅の計算装置10を使用するユーザーが、計測を希望する配線パターンが存在するパターン図形において2つの部品端子(ピンペア)を任意に選定するものである。
そして、こうしてユーザーに選定されたピンペア間の配線パターンについて、配線パターン幅を確定する処理を行うことになる。
図4(a)には、プリント基板におけるパターン図形32の形状を表す図形が示されており、図4(a)に示すパターン図形は、部品Aと部品Bと部品Cとがそれぞれ端子34、端子38、端子42を介して接続されている。
本発明による配線パターン幅の計算装置においては、1つの端子と1つの端子との間、所謂、ピンペアの間の配線パターンの配線パターン幅を計算するものである。
はじめに、ステップS316において、ユーザーによってパターン図形32上で選択されたピンペアについて、選定されたピンペアを確定する処理を行う必要がある。
図4(a)に示すパターン図形32の場合、選定されるピンペアの組み合わせとしては、図4(b)の図表に示した3通りの組み合わせが考えられる。
本実施の形態においては、組み合わせ1として示された部品Aの端子1と部品Bの端子2との端子間における配線パターン幅の計算を行うものとする。
こうして、ステップS316においては、配線パターン幅を計算するピンペアが選定される。
次に、ステップS318において、ピンペアにつながるパターン図形、および2点間で目標幅を決定する処理が行われる。
ここでは、上記で決定されたピンペアの配線パターン幅の目標値が決定され、以下、この目標値に従ってパターン図形に対して満足する領域が得られるか否かの計算が行われる。
なお、本実施の形態においては、目標とするピンペアの配線パターン幅である目標値を1.0mmに決定するものとし、ここで決定した「配線パターン幅=1.0mm」を上記図4(b)の属性(ピンペア間の配線パターン幅)の欄に、属性設定として入力する。
なお、本発明による配線パターン幅の計算装置10においては、厚み考慮幅の計算を用いて、厚みを考慮した配線パターン幅になるように設定することが可能であるが、本実施の形態においては、厚み考慮幅を用いずに配線パターン幅の計算を行うようにユーザーが選択したものとする。
次に、ステップS320において、パターンの配線パターン幅を満足する領域の計算処理を行うものであるが、この際、ステップS316において選択されたピンペアの部品の端子付近に対して、端子付近除外処理を行う必要があるため、このステップS320の処理においては、ステップS322の部品端子付近の除外方法情報が読み込まれる。
ここで、部品端子付近除外処理を行う目的について、図5を参照しながら、詳細に説明する。
配線パターン幅に関して、ピンの端子付近のサーマルパットや、ビアのサーマルパターンについては、もともと配線パターン幅の目標値よりも幅が小さい場合が多く、端子付近の幅が細い領域については無視しても問題がないものであるにも関わらず、十分な幅を確保できないことを理由にNG(No Good:不良)であるものと判断されることがある。
また、上記した状況を回避するために端子付近に対して配線パターン幅の計算領域に入れないように設定する端子付近除外処理を行うようにしたが、この場合においても、端子付近除外は設定幅の1/2で膨らました範囲までは除外するようにすると、サーマルパットのクリアランスが設定幅1/2よりも広い場合、サーマル部のラインの幅がNG対象となり、端子付近を除外した場合であっても、チェック結果がNGとなってしまう。
そのため、本実施の形態においては、上記現象を回避するための対応として、端子付近除外のためのユーザーパラメータ化を行うことと、ビアとサーマル付近で発生したライン図形を無視するように処理するという対応方法をとるようにする。
そして、図5に示す端子付近除外領域設定画面26を用いて、ユーザーによって値が設定され、この値の領域については、除外するようにする。
そのため、図6に示す部品の端子付近の端子付近除外領域46、48は、部品端子サイズやプリント基板製造ルールなどの制約のため、ユーザーが選定したパターンの配線パターン幅のルール以外のルールを適用するルール箇所となる場合が多い。
そして、部品端子周辺の任意の領域に対してはパターン幅ルールを適用させずに除外して計算を行うように、選定されたパターン幅の領域から除外する部品端子付近除外処理を行うものである。
上記端子付近除外領域に関するルールは、実際に、ステップS320以降において行われるパターン幅の領域の計算処理を行う際に適用されるものである。
上記したような部品端子付近除外処理を行うことで、不要なエラーを除外できるようになる。
なお、上記端子付近除外領域については、設定の省力化を目的にピンペア幅に係数をかけた値を算出したものを用いてもよいものとする。
こうした部品端子付近の除外方法情報(ステップS322)をもとに、ステップS320で行われる計算処理について、図7を参照しながら以下に説明する。
ステップS320では、パターン図形において、配線パターン幅を満足する領域についての計算処理が行われる。ここでは、選定されたパターン図形において、目標幅とした配線パターン幅を確保できるかを計算する処理を行う。
具体的には、パターン図形32の外周について、端子付近除外領域46、48を除くすべての領域から、配線パターン幅の目標値の分量を痩せさせることにより、所望の配線パターン幅を確保できるか否かを調べるものである。
こうした処理は、配線パターン幅の目標値の分だけパターン図形を全体的に痩せさせる処理を行うことにより、痩せ処理後に、パターン図形の領域が残っていればパターン図形に対して配線パターン幅の領域が十分に確保できることを意味し、また、痩せ処理後に、パターン図形の領域が残っていなければ配線パターン幅の領域が十分に確保できないということを意味することから、配線パターン幅を確保できるか否かの判断に用いることができるものである。
なお、ここでは、配線パターン幅の目標値を1.0mmであるので、パターン図形32の全外周から1.0mmの1/2の幅である0.5mmの幅を確保できるだけの領域があれば、所望の配線パターン幅を確保できると判断できるため、本実施の形態においては、パターン図形32の全外周に対して0.5mmの痩せ処理を行う。
即ち、ステップS320においては、0.5mmほど、パターン図形32全体を痩せさせる処理が行われる。
次に、ステップS324において、パターン図形32の配線パターン幅の目標値を確保できたか否かの判断処理が行われる。
ここでは、まず、目標幅を確保できたものとして、ステップS324においてYesと判断し、ステップS326に進むこととする。
ステップS326においては、配線パターン幅の太らせ処理が行われる。ここでは、ステップS320において痩せ処理されたパターン図形の外周を太らせる処理が行われる。
図8を参照しながら詳細に説明すると、ステップS320において痩せ処理を行ったパターン図形32に対して、痩せ処理で用いた値と同じ幅だけ外側に太らせる処理を行う。
このとき、ステップS320で行った痩せ処理の場合と同様に、端子付近除外領域46、48については除外し、太らせる処理を適用しないものとする。
こうして、ステップS326による太らせ処理により、パターン図形32に対して0.5mmの幅を確保できるものであることが確定される。即ち、パターン図形32上に目標値である1.0mmの配線パターン幅を確保できるものであることが確定される。
次に、ステップS328に進み、配線パターン幅を満足する接続経路の検出処理が行われる。この処理について、図9(a)(b)(c)を参照しながら詳細に説明すると、はじめに、パターン図形32上に存在するビアに関する処理が行われる。
ここでは、配線パターン幅を確保できることが確定されたパターン同士の重なりに係るビアを検出し、こうしたビアが複数個存在する場合、近いものを組み合わせてビアグループとする。
この際、配線パターン幅の領域に指定されたビア係数となるようにビアが存在するように選択する必要がある。
ここで、電気的な設計障害を回避するため、配線パターン幅内のビアはなるべく多く存在することが望まれるため、ビアの集まりをビアグループとして作成し、配線パターン幅内に収まるように計算されるが、決められた範囲内にビアの個数が足りない場合やビアが1つのみしか存在しない場合など、配線パターン上に電気的な障害が発生する可能性がある場合は、警告としてその旨がユーザーに対して表示される。
そのため、ユーザーにより指定されたビア係数(配線パターン幅に対するビアの個数を表したもの)を満足するように、ビアグループを作るものとする。
なお、こうしたユーザーにより指定されたビア係数は、ステップS330に示すビア処理情報として、ステップS328に読み込まれる。
本実施の形態においては、図9(a)に示すように、パターン図形32上に4つのビア50、52、54、56があるものとする。そして、指定されたビア係数=0.5とした場合、配線パターン幅の目標値=1.0mmであるので、1.0mm/0.5=2個となり、配線パターン幅1.0mm上に2個のビアが必要となる。
そのため、2個のビアをグループ化したビアグループを作成することとなるが、この際、グループとして選択するビアは、上記のように距離が近いもの同士を選択するものとするため、本実施の形態においては、ビア50とビア52とを1つのビアグループとして設定する。
上記のとおりに、ビアグループを作成して、パターン図形32の配線パターン幅内に存在させるビアグループが決定したら、パターン図形32の格子分割を行う(図9(b)を参照する)。
次に、図9(c)に示すように、ダイクストラ法を用いて、格子分割が連なる2点間の最短経路を検出する。この際、配線パターン幅が1.0mmで、かつ、上記において決定されたビアグループが含まれる経路であるようにする。そして、ステップS332の幅検出の処理方法情報が用いられるものであるが、この幅検出の処理方法情報には後述するダイクストラ法における格子分割に用いるグリッドサイズやパターン幅を確保できる箇所について強調表示するための情報が含まれており、対象のパターンが、上記処理方法情報より設定された方法でパターン幅を満足した強調表示をするために利用されるものである。
なお、上記最短経路を検出する方法としては、従来のダイクストラ法を用いることが可能である。こうした従来のダイクストラ法は、公知の技術であるため、その説明は省略することとする。
こうしてステップS328において決定された配線パターンの最短経路は、検出された最短配線パターンとして提案するため、ステップS334において表示する処理が行われ、配線パターン幅の計算のためのアルゴリズムが終了する。
一方、上記ステップS324の、目標幅を確保できたか否かの判断処理において、目標幅が確保できずにNoと判断された場合について、図10(a)を参照しながら以下に説明する。
例えば、図10(a)に示す、図7に示すパターン図形32とは異なる形状を持つパターン図形132に対して、配線パターン幅の目標値を1.0mmとして痩せ処理を行うものとする(ステップS320)。
ここでは、図7に示すパターン図形32の場合と同様に、パターン図形132の全外周を1.0mmに1/2を掛けた値である0.5mmずつ内側に痩せ処理を行うようにするものであるが、パターン図形132では、十分に幅を取れずに目標値を確保できない箇所が存在する。
このように、配線パターン幅の目標値を確保できない場合、ステップS324において目標値を確保することができないものと判断してステップS336に進む。
図10(b)を参照しながら、ステップS336について詳細に説明すると、ステップS336おいては、端子付近除外図形46、48との接線箇所がある領域のみを太らせる処理が行われる。
まず、太らせ処理を行う対象として、痩せ処理後の領域のうち、端子付近除外図形との接線箇所がある領域のみを対象とすることとする。
図10(b)に示すパターン図形132には、領域132a、132b、132c、132dの4つの領域が存在するが、そのうち、領域132aは部品Aの端子付近除外図形46と接しており、領域132dは部品Bの端子付近除外図形48と接していることから、領域132aおよび領域132dについては太らせる処理を行うものである。
一方、領域132bおよび132cに関しては、いずれも端子付近除外図形46、48と接している箇所が存在しないため、太らせる処理は行わないようにする。
即ち、ステップS336においては、領域132aおよび領域132dについてのみ、外周を0.5mmずつ外側に太らせるようにする。
次に、ステップS338において、計算結果が不合格であった旨を表示する処理が行われる。
図10(c)を参照しながら、詳細に説明すると、ステップS336において太らせ処理を行った領域132aおよび領域132dを含む領域については、幅を確保できたことがわかるように「幅OK領域」として強調表示する。
一方、ステップS336において太らせ処理を行わなかった領域132bおよび132cを含む領域および、幅が確保できずに痩せ処理をできなかった領域については、幅を確保できなかったことがわかるように「幅NG領域」として、同一の色を用いて表示する。
さらに、幅NG領域に対しては、不合格であった旨をわかりやすくするため、選定されたピンペアである部品Aの端子34と部品Bの端子38とを破線で結んだ直線を表示し、選定されたピンペア間が未接続である旨を表し、配線パターン幅の計算に関するアルゴリズムが終了する。
このように、本発明によるパターン幅計算装置10によれば、効率的にパターン図形上に配線パターン幅を確保できるか否かの確認を行うことが可能となる。
以上が、本発明による配線パターン幅の計算装置の第1の実施の形態である。
次に、本発明による配線パターン幅の計算装置の第2の実施の形態について説明する。
なお、本発明の第1の実施の形態に記載の配線パターン幅の計算装置と同一の構成については、第1の実施の形態において用いた符号と同一の符号を用いるもののとする。
まず、本発明の第2の実施の形態によるパターン幅計算装置100のハードウェア構成は、第1の実施の形態によるパターン幅計算装置10と同様であるので、上記した第1の実施の形態によるパターン幅計算装置10の説明を援用することにより、その詳細な説明は省略する。
ここで、図11には、配線パターン幅の計算装置100の機能的特徴をブロック化した機能ブロック図が示されており、配線パターン幅の計算装置100においては、CPU12の制御により配線パターン幅の計算に関する処理として、パターン図形上のピンペアの確定処理100Bと、配線パターン幅を満足する領域の計算処理100Cと、配線パターン幅を満足する接続経路の検出処理100Dと、並列経路の検出とパターン幅の計算処理100Eと、許容値の計算処理100Fと、配線パターン幅の改善手法のガイダンスの表示処理100Gとが実行される。
以上の構成において、図12に示すフローチャートを参照しながら、この配線パターン幅の計算装置100によって実行される処理について詳細に説明する。
はじめに、CPU12は、レイアウト設計データ(ステップS1200)からの配線情報を読み込み(ステップS1202)、配線情報から配線レイアウト情報(パターン図形)を取得する(ステップS1204)。
また、CPU12は、レイアウト設計データ(ステップS1200)からルール情報を読み込み(ステップS1206)、ルール情報から配線パターン幅の目標値(目標幅)の情報を取得する(ステップS1208)。
さらにまた、CPU12は、レイアウト設計データ(ステップS1200)から部品情報を読み込み(ステップS1210)、部品情報から配置位置情報を取得するとともに(ステップS1212)、部品情報から端子情報を取得する(ステップS1214)。
次に、ステップS1216では、ステップS1204で取得した配線レイアウト情報(パターン図形)と、ステップS1208で取得した目標幅の情報と、ステップS1212で取得した配置位置情報と、ステップS1214で取得した端子情報とを用いてピンペアの確定処理が行われる。
より詳細には、ステップS1216の処理においては、ユーザーによって選定されたパターン図形上のピンペアの確定処理が行われる。
そして、ピンペアの確定後、ステップS1218において選定されたピンペアにつながるパターン図形および2点間で目標幅を決定する処理が行われる。
こうしたパターン図形上のピンペアの選定に係る処理は、本発明の第1の実施の形態に記載した方法と同様であるため、その説明は省略することとする。
また、本実施の形態においては、ピンペアの配線パターン幅を1.0mmとすることとし、ステップS1218において配線パターン幅の目標値は1.0mmと確定される。
なお、ステップS1216およびS1218においては、第1の実施の形態に記載の方法と同様の方法でピンペアの確定および目標幅の決定を行うため、その説明は省略するものとする。
次に、ステップS1220において、配線パターン幅を満足する領域の検出処理を行う。ここで、検出処理を行う際に必要となる、部品端子付近の除外方法情報(ステップS1222)を読み込むものであるが、こうした部品端子付近の除外方法情報は、第1の実施の形態に記載の方法と同様の方法で作成するため、その説明は省略するものとする。
部品端子付近の除外方法情報としてステップS1222よりの部品端子付近の除外方法情報を読み込まれ、図14(a)に示されるように、パターン図形200における端子34および端子38周辺をそれぞれ端子付近除外領域46および端子付近除外領域48であるものと設定される。
そして、ステップS1220においては、はじめに、所望の配線パターン幅を確保できるか否かを確認する処理を行う。
本実施の形態においては所望の配線パターン幅を1.0mmとするため、ここでは、パターン図形200の全外周で、かつ、部品端子付近領域を除外した部分に対して、所望の配線パターン幅に対して1/2を掛けた値である0.5mmずつ内側に痩せさせる処理を行うことで、配線パターン幅1.0mmを確保できるか否かを確認する。
このときの様子を図14(b)に示している。図14(b)より、本実施の形態においては、全体に対して0.5mmの痩せ処理をすることにより、1.0mmの配線パターン幅を確保できない箇所が存在することがわかる。
こうして、パターン図形200において、配線パターン幅を確保できる領域(以下、幅合格領域と適宜に称する。)と配線パターン幅を確保できない領域(以下、幅不足断片図形と適宜に称する。)とが確定される。
次に、ステップS1224において、幅を満足する接続経路の検出処理が行われる。
ここでは、配線パターン幅を満足するような経路の検出が行われるものであるが、はじめに、上記ステップS1220において痩せ処理を行ったパターン図形200に対して、太らせ処理を行う。
このステップS1224における太らせ処理の際に、まず、痩せ処理の際に配線パターン幅を確保できないことが確認された領域(幅不足断片図形)について、太らせ処理から除外することとする。
即ち、図14(c)に示すように、符号202a、202b、202c、202d、202e、202f、202g、202hで示したハッチングを施した幅不足断片図形については、太らせ処理を行わないものとし、配線パターン幅を確保するのに十分であった領域たる幅合格領域204a、204b、204c、204dについては太らせ処理を行うようにし、配線パターン幅を確保するのに十分であった領域を幅合格領域204a、204b、204c、204dとし、配線パターン幅を確保するのに十分でなかった領域を幅不足断片図形202a、202b、202c、202d、202e、202f、202gとして決定する処理がなされる。
次に、ステップS1226において、幅合格領域ネットワーク間にある幅不足断片図形の最短経路長を計測する処理が行われる。
ここでは、幅合格領域と幅合格領域との間(以下、幅合格領域ネットワークと適宜に称する。)に存在する幅不足断片図形を通る経路について、その最短距離を測定する処理が行われるものである。
なお、ここでは、幅合格領域であっても、その面積が指定サイズより小さいものは幅合格領域から除外するものとし、また、幅不足断片図形の条件として、複数の幅合格領域と繋がることのできる図形のみを用いるものとし、ひとつの幅合格領域のみとしか繋がりを持たないものは幅不足断片図形から除外するものとする。そのため、ここでは、図15(a)に示す領域202fおよび202gについては除外するものとする。
はじめに、幅合格領域ネットワークにおける最短距離について説明すると、図15(a)において示す、符号206a、206b、206c、206dおよび206eが最短距離を示す経路の例である。
ここで、上記最短距離を算出するためにステップS1226において行われる処理は、図16に示すサブルーチンのフローチャートに沿って行われるため、図16に示すフローチャートを参照しながら説明する。
なお、本実施の形態においては、第1の実施の形態と同様にビア係数=0.5とし、1.0mmあたりのビアの個数を2個であるように計算するものとする。そして、こうしたビアにより形成されるビアグループやビアグループを含む配線パターン幅の計算方法については、第1の実施の形態と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
より詳細には、ステップS1226においては、パターン図形200における並列経路の検出と配線パターン幅の計算にかかる処理が行われるものである。
ここでの処理においては、ステップS1228のビア処理情報およびステップS1230の幅検出の処理方法情報より得られる各情報が用いて行われる。
ビア処理情報ステップS1228によって得られるビア処理情報とは、ビアの直径や大きさに関する情報などが含まれる。
また、幅検出の処理方法情報(ステップS1230)によって得られる幅検出の処理方法情報とは、ピンペア間の配線パターン幅を計算するにあたり、幅を探索する処理の際に用いる幅探索係数(後述する。)のことである。
本実施の形態においては、ステップS1230による幅検出の処理方法情報より、幅探索係数=4が得られるものとする。
こうした幅検出の処理方法情報については、ユーザーが任意の値を設定できるものとする。
はじめに、ステップS1226−2において、幅合格領域ネットワーク間にある幅不足断片図形の最短経路長を計測する処理が行われる。
ここでは、例えば、図17(a)に示すように、パターン図形を格子分割し、幅合格領域と幅合格領域とを結ぶ経路について、幅合格領域と幅不足断片図形との境界となる、幅合格領域と経路との交点210aともう一方の幅合格領域と経路との交点210bとの間の距離で最短になる値を計測する。
この方法により、図15(a)に示すパターン図形200における幅不足断片図形上に存在する経路206a、206b、206c、206d、206eについてそれぞれ距離を測定した場合、本実施の形態においては、例えば、図15(b)に示すように、経路206aの長さL=10mm、経路206bの長さL=3mm、経路206cの長さL=3mm、経路206dの長さL=1mm、経路206eの長さL=30mmであったものとする。
次に、ステップS1226−4においては、計測した経路長を短い順に並べ替え、短い順で任意の個数(n)(「n」は、正の整数である。)までの幅不足断片を選定する処理が行われる。
ここでは、ステップS1226−2において計測された経路長について、短い方から順に、任意に選択した数だけ選択される。
次に、ステップS1226−6において、ステップS1226−4において選定された断片が連なるネットワークに、断線があるか否かの判断処理が行われる。
ここでは、ステップS1226−4において選定された断片について、断片が結ぶネットワーク中に、断線箇所があるか否かが判断される。
なお、こうした断線箇所の判断について説明すると、断片箇所の判断は、図15に示す幅合格領域204aと204bとの間に存在する幅不足断片図形上に存在する経路206aの有無から判断される。
より詳細には、幅合格領域が存在する場合は、経路206aのような接続線は表示されない処理となるため、断片箇所の判断対象とならない。
一方、幅不足断片には、経路206aのような接続線が表示される処理となり、断片箇所の判断対象となり、不足断片として認識されるものである。
ここでの判断処理において、断線箇所があった場合、Yesと判断されてステップS1226−8に進み、処理が終了となる。
ここでは、ステップS1226−6において、断線箇所がない場合、Noと判断されてステップS1226−10に進むこととなる。
次に、ステップS1226−10においては、幅不足断片図形の幅計測をする処理が行われる。
即ち、経路206a、206b、206c、206d、206eが存在する幅不足断片図形202a、202b、202c、202d、202eについて、痩せ処理させることにより、配線パターンが確保できるか否かの計測を行う。
ここで、上記痩せ処理に用いる値である幅探索係数について、以下に説明することとする。
上記幅探索係数とは、パターン図形上で所望の配線パターン幅を確保できるか否かを調べる際の条件を表すものであり、本実施の形態においては、配線パターン幅=1.0mmに対して幅探索係数=4で処理を行うこととする。
こうした幅探索計数とは、1.0mmの配線パターン幅に対して、幅の計測を4回行うという意味を有するものである。
この場合、4種類の幅を用いて、幅の値の降順で4回痩せ処理を行うものであるが、ここで用いる4種類の幅とは、所望の配線パターン幅1.0mmに対して4/4を掛けた値、3/4を掛けた値、2/4を掛けた値、1/4を掛けた値の4種類であり、具体的には、本実施の形態においては、1.0mm、0.75mm、0.5mm、0.25mmを用いるものである。
しかしながら、本実施の形態においては、図14(b)において、既に0.5mmの幅での痩せ処理を行っているため、ステップS1226−10において用いられる痩せ処理の値としては、0.25mmを用いる。
従って、ステップS1226−10における処理では、図17(b)に示すように、それぞれの幅不足断片図形の外周に対して、それぞれ内側に0.25mm痩せさせる処理を行う。
なお、ここでは、すべての幅不足断片図形に対して、0.5mmの配線パターン幅を確保できたものとする。
次に、ステップS1226−12においては、幅不足断片図形の太らせ処理が行われる。
ここでは、上記ステップS1226−10において痩せ処理を行った幅不足断片図形202a、202b、202c、202d、202eについて、太らせる処理を行い(図18(a)を参照する。)、幅不足断片図形の幅が確保できたとし、確保できた領域に対して配線パターン幅を取るのに十分な面積を有するものであることを確定する。
次に、ステップS1226−14において、並列経路の配線パターン幅を計算する処理として、ステップS1226−10の計測結果で幅を満たしていた幅不足断片図形のうち、幅合格領域204a、204b、204c、204dと並列で繋がっているネットワークを探し、並列の幅不足断片がいずれも幅が十分である場合、両者の幅を合算する処理が行われる。
図18(b)を参照しながら詳細に説明すると、まず、計測結果の幅の値がOKと判断された幅不足断片のうち、幅合格領域と並列で繋がっているネットワークを探し出される。
ここでは、すべての幅不足断片の幅の値がOKであると判断されたものであるとすると、幅合格領域204a、204b、204c、204dのいずれかと並列で繋がっている幅不足断片は符号202bおよび202cであり、この202b、204c、202c、204bで形成されるネットワークZが、幅合格領域と幅不足断片とが並列で繋がっているネットワークとなるものである。
さらに、上記ネットワークZにおいて、並列である幅不足断片がいずれも幅に問題がない場合、両者である幅不足断片202bおよび202cの幅の値を合算する。
ここでは、ステップS1226−10の痩せ処理において用いられた幅の値より、それぞれの幅が0.5mmであるので、202bの幅+202cの幅=0.5mm+0.5mm=1.0mmとなる。
次に、ステップS1226−16において、幅合格領域ネットワークで端子と接する領域同士に挟まれて存在する不足断片図形の集団のうちの合格のものが直列に連なるネットワークについて、幅を計算する処理を行う。
図19(a)に示すように、幅合格領域ネットワーク中に存在する端子34に接する幅合格領域204aと端子38に接する幅合格領域204dとの間にある幅不足断片図形の集団について、すべての幅が合格であるものとすると、合格のものが直列に連なるネットワークYについて幅の計算を行うものである。
本実施の形態においては、ネットワークYにおける幅不足断片202aの幅=0.5mm、ネットワークYにおける並列で繋がっているネットワークZ=0.5mm、ネットワークYにおける幅不足断片202d=0.5mmである。
そのため、ネットワークYの領域内における経路は、最大0.5mmの幅で連なっていることが計算される。
また、端子34に接する幅合格領域204aと端子38に接する幅合格領域204dとの間にある幅不足断片202eは0.5mmであるものとする。
そのため、幅不足断片202eにおける経路は、最大0.5mmの幅であることが計算される。
そして、ネットワークYを含む領域では最大0.5mmの配線パターン幅であること、また、領域202eでは最大0.5mmの配線パターン幅であることが計算されたことにより、所望の配線パターン幅1.0mmの範囲内であることが判断され、次の処理に進むことになる。
次に、ステップS1226−18において、幅合格領域ネットワークで端子と接する領域間にある幅断片図形の集団が並列に連なるネットワークについて、幅を計算し、判断する処理が行われる。
図19(b)を参照しながら説明すると、合格の領域が直列に連なるネットワークYと領域202eとが並列に連なっている。この並列に連なるネットワークをXとし、このネットワークXについて配線パターン幅を計算する処理が行われる。
ステップS1226−16において計算されたように、ネットワークYにおける最大配線パターン幅は0.5mmであった(図19(a)を参照する。)。
一方、領域202eの最大配線パターン幅は0.5mmである。
こうしたネットワークYと領域202eとの配線パターン幅を合わせると、0.5+0.5mm=1.0mmであると計算される。
そして、幅合格領域204aと204dとを並列で結ぶ配線パターン幅の合計が1.0mmとなり、所望の配線パターン幅を満足させるものであることが判断され、次の処理に進むことになる。
上記したステップS1226−2からステップS1226−18までの処理が、メインルーチンのステップ1226の並列経路の検出とパターン幅の計算にかかる処理であり、再びメインルーチンのステップS1232に戻る。
次に、ステップS1232においては、許容値の計算処理が行われる。
この許容値の計算処理においては、配線パターン幅の計算結果について、準拠度が「警告」に該当するか、「注意」に該当するか、あるいは「合格」に該当するかを判定するために、準拠度と閾値との比較を行う処理が行われる。
ここで、上記準拠度は「準拠度(%)<警告設定値(%)」の場合には「警告」に該当し、「警告設定値(%)≦準拠度(%)<注意設定値(%)」の場合には「注意」に該当し、「注意設定値(%)≦準拠度(%)」の場合には「合格(許容値内)」に該当するものとする。
こうした許容値判定閾値の指定値に関する情報は、ステップS1234より読み込まれる。
ここで使用する準拠度については、痩せ処理および太らせ処理の回数(幅探索係数)に依存するものであり、痩せ処理および太らせ回数の回数がn回(「n」は、2以上の正の整数である。)であったものとすると、その際の準拠度=100/nにより算出される。
例えば、所望の配線パターン幅を1.0mm、幅探索係数=4で計測を4回繰り返した場合、1.0mmの確保ができた場合には準拠度=100%、0.75mmの確保ができた場合には準拠度=75%、0.5mmの確保ができた場合には準拠度=50%、0.25mmの確保ができた場合には準拠度=25%、確保できずに0.00mmであった場合には準拠度=0%となり、こうした準拠度の結果が計算結果の情報となる。
なお、ここでの許容値に対して、準拠度が合格であった場合、ステップS1236の判断処理に進むものである。一方、準拠度が不合格である値であった場合、後述するステップS1246の処理へ進むものである。
上記のようにして、ステップS1232における準拠度の計算処理が終了すると、次に、準拠度と閾値との比較処理の結果が警告範囲であるか否かの判断が行われる(ステップS1236)。
ここでの判断処理において、警告であると判断された場合には、Yesと判断され、ステップS1242に進み、強調表示する処理が行われる。一方、警告でないと判断された場合には、Noと判断され、ステップS1238に進み、さらに、準拠度と閾値との比較処理の結果が注意範囲であるか否かの判断が行われる。
そして、ステップS1238の判断処理において、上記した比較処理の結果が注意範囲であると判断された場合には、Yesと判断され、ステップS1242に進み、強調表示する処理が行われる。一方、注意でないと判断された場合には、Noと判断され、ステップS1240に進む。
ステップS1240に進むと、比較処理の結果が許容値内にあり合格であるものと処理され、ステップS1242に進む。
そして、ステップS1242では、結果の強調表示処理がなされる。
次に、ステップS1244に進み、結果を配線パターン幅の経路として提案し、画面に表示される処理が行われる。
ここで、図20を参照しながら、強調表示の方法について説明すると、警告設定値ならびに注意設定値の設定と連動して、「警告」、「注意」ならびに「合格」の場合に表示装置の画面に表示する際の表示色を任意設定することが可能である。
例えば、閾値として、警告の場合70%に設定し、表示色を赤色とし、また、注意の場合80%に設定し、表示色を黄色とし、また、合格の場合、表示色を緑色とするように設定しておくとする。
この場合、例えば、対象であるLine1が、準拠度結果が50%であった場合、警告の閾値に満たないため「警告」として判定され、図20のイメージ例として示しているLine1のように、他の対象と区別可能であるように、赤色の太線で表示される(ここでは、塗りつぶした線で示している。)。
また、対象であるLine2が、準拠度結果が75%であった場合、警告の閾値を超えているため、「注意」として判定され、図20のイメージ例として示しているLine2のように、他の対象と区別可能であるように、黄色の太線で表示される(ここでは、ハッチング線で示している。)。
また、対象であるLine3が、準拠度結果が85%であった場合、注意の閾値を超えているため、「合格」として判定され、図20のイメージ例として示しているLine3のように、他の対象と区別可能であるように、緑色の太線で表示される(ここでは、白抜き線で示している。)。
なお、こうした許容値の計算処理による結果は、パターンの表示のみならず、図20に示すように、項目設定の画面においても表示することが可能である。
一方、ステップS1232において準拠度が不合格の値であった場合、図13に示すフローチャートにおいて、ステップS1232の許容値の計算処理から、ステップS1246の幅の改善手法のガイダンス処理に進むものである。
ここでは、ステップS1248の幅の改善手法のガイダンスの読み込み情報を読み込み、ガイダンスを画面に表示する処理が行われる(ステップS1244)。
ここで、図21には、改善手法のガイダンスの表示例を示している。
こうした改善手法のガイダンス表示においては、不合格であったピンペアの配線パターン幅に対して改善のための対策案が表示される。
以上において説明したように、本発明によるパターン幅計算装置100によれば、効率的にパターン図形において配線パターン幅を確保できるか否かの確認を行うだけでなく、並列に配線パターン幅をとることが可能であるため、これまで配線パターン幅をとることができないと判断されてあきらめていたパターン図形に対しても可能な経路の提案をすることが可能となる。
また、本発明によるパターン幅計算装置100によれば、配線パターン幅の細い箇所に過大な電流を流すことにより引き起こされるパターン導体損失による電圧降下や熱が発生することなく、この配線パターンに起因した導体損失が低減するように、配線パターン幅を確保することが可能となる。
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(8)に示すように変形するようにしてもよい。
(1)上記した実施の形態においては、第1の実施の形態においては、ピンペアの配線パターン幅を1.0mm、かつ、幅探索係数を2とし、また、第2の実施の形態においては、ピンペアの配線パターン幅を1.0mm、かつ、幅探索係数を4として計算するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
図22、図23および図24を用いて他の幅探索係数における計算方法を説明すると、図22には、ピンペアの配線パターン幅=3.0mm、幅探索係数=3の場合における、パターン幅の計算装置による計算結果の表示例が示されている。
例えば、配線パターン幅=3.0mm、かつ、幅探索係数=3の場合、1回目は、3/3である3.0mm探索、2回目は、2/3である2.0mm探索、3回目は、1/3である1.0mm探索で計算するものである。
まず、図22(a)(b)(c)(d)には、4種類のパターン図形において計算する際の計算結果の例を示している。
はじめに、図22(a)においては、3回の計測で、1.0mmの経路が4本並列で確保できている。所望の配線パターン幅=3.0mmであり、合計4.0mmの経路が確保できることが計算されたため、準拠度が100%で「合格」と判断され、パターンの色が合格であるように表示される。
図22(b)においては、1回目の3.0mm探索では確保できる箇所がなく、2回目の2.0mm探索および3回目の1.0mm探索では、それぞれ2.0mmが2箇所、1.0mmが1箇所確保できている。また、図22(b)に示すように、3回目の1.0mm探索で確保できなかった領域については、ハッチングなどを施し、幅を確保できずに結果がNGであったことがわかるように表示する。
こうした図22(b)の場合は、1.0mmの経路と2.0mmの経路が並列しており、合計3.0mm確保できているため、準拠度が100%で「合格」と判断され、パターンの色が合格であるように表示される。
図22(c)においては、3回目の1.0mm探索で、1.0mmが2箇所確保できており、1箇所はNG領域となっている。
1.0mmの経路が2本並列で2.0mm確保なので、準拠度が66%で「注意」と判断され、パターンの色が注意であるように表示される(図22(c)においてはハッチングを施して示している)。
図22(d)においては、3回目の1.0mm探索で、1.0mmが3箇所確保しているが、1.0mmの経路が1本のみの箇所があるため、準拠度が33%で「警告」と判断され、パターンの色が警告であるように表示される。
次に、図23(a)(b)(c)(d)には、ピンペアの配線パターン幅=3.0mm、幅探索係数=2の場合における、配線パターン幅の計算装置による計算結果の表示例を示している。
配線パターン幅=3.0mm、かつ、幅探索係数=2の場合、1回目は、2/2である3.0mm探索、2回目は1/2である1.5mm探索で計算するものである。
はじめに、図23(a)においては、2回の計測で、1.5mmの経路を2本確保しており、かつ、NG領域が2箇所ある。ここでは、1.5mmの経路が2本並列で存在し、3.0mmの配線パターン幅を確保できているので、準拠度が100%となり「合格」と判断され、パターンの色が合格であるように表示される。
また、図23(b)には、2回の計測で、1.5mmの経路を2本確保しており、NG領域が2箇所ある状態を示している。ここでは、1.5mmの経路が並列ではなく1本ずつ存在しているため、準拠度が50%となり「警告」と判断され、パターンの色が警告であるように表示される。
また、図23(c)には、2回の計測で、1.5mmの経路を1本確保しており、NG領域が2箇所ある状態を示している。ここでは、1.5mmの経路が1本のみ存在しており、並列で確保できている経路も存在しないため、準拠度が50%となり「警告」と判断され、パターンの色が警告であるように表示される。
また、図23(d)には、2回の計測で、1.5mmの経路を一本確保しており、NG領域が2箇所存在する。ここでも、1.5mmの経路に並列する経路は存在しないため、準拠度は50%となり「警告」と判断され、パターンの色が合格であるように表示される。
図24においては、ピンペアの配線パターン幅=3.0mm、幅探索係数=1の場合における、パターン幅の計算装置による計算結果の表示例が示されている。1回のみ、3.0mm探索を行う。
図24(a)(b)(c)(d)において、3.0mm探索を行った場合を示しているが、すべての表示において、3.0mmの配線パターン幅はとれていないため、準拠度は0%となり、「警告」と判断され、パターンの色が警告であるように表示される。
このように、配線パターン幅の設定および幅探索係数の設定は、ユーザーが任意に設定できるものである。
(2)上記した実施の形態においては、配線パターン幅=1.0mm、ビア係数=0.5とし、経路中に2個のビアが存在するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
以下に、図25を用いて、ビア処理に関して詳細に説明すると、図25には、ビア並列係数について示している。ビア並列係数とは、配線パターン幅あたりの並列ビアの数についての係数であり、配線パターン幅に応じたビア並列数を決定する係数となる。即ち、1mmあたりのビアの個数を示すものである。
例えば、図25の例1に示すように、1.0mmの配線パターン幅で、係数=0.3であるとすると、幅1.0mm/0.3=3.33(個)となる。さらにこの場合、繰り上げになるため、1.0mmあたりに存在させるビアの個数は4個となる。配線パターン幅内に4個のビアが存在するように経路が取られる(図25(b)を参照する。)。
図25(a)には、その他に例2から例6までを示している。こうしたビア並列係数は、ユーザーによって任意に設定されるものである。
なお、並列のビアグループの処理においては、所望の配線パターン幅1.0mmとして幅探索係数=3で探索する場合、1回目=1.0mm探索、2回目=0.66mm探索、3回目=0.33mm探索と3回の探索が行われるものであるが、ビア係数に関しても、幅探索係数に合わせてビアの個数を減じるように処理できるものである。
例えば、ビア係数=0.5であった場合、幅探索係数3に合わせて、1回目2個、2回目1.32=2個、3回目0.66=1個となるように、内部処理で痩せ処理および太らせ処理のパラメーターに追従し、ビア数を減じて判断してもよいものである。
(3)上記した実施の形態においては、ビアの直径について考慮せずに処理を行ったが、これに限られるものではないことは勿論である。
ここで、図26を用いて、ビア直径係数について詳細に説明すると、ビア直径係数とは、ビアの直径(サイズ)を考慮して処理を行う際に用いる係数である。こうしたビア直径係数を定める際に、ビアの直径の値が必要になるが、こうしたビア直径は、2点間の配線パターン上に存在する全ビアの中から、最も数の多いビア直径の値を用いることや、ユーザーが任意に標準サイズを決定することのどちらを採用してもいいものである。
また、ビア直径係数は、基準サイズからの比率を表すものであり、標準サイズ径をもとに、用いるビアの大きさから配線パターン幅に対して必要なビアの個数を算出することができる係数である。
例えば、図26の例1を参照しながら説明すると、ビア個数の換算としては、基準サイズ径=0.3mmであった場合、用いるビアの径=0.3mmであるとすると、0.3mm/0.3mm=1(個)となり、用いる0.3mmのビアの必要な個数は1個となる。
また、図26の例2では、標準サイズ径=0.3mm、用いるビアの径=0.5mmであるとすると、0.5mm/0.3mm=1.67(個)となり、層移動ビアを1.67個分であるものとみなすことができる。
このように、用いるビア径より、配線パターン幅内に存在させる必要のあるビアの個数を算出することができる。
また、図26に示すInterstitial Via Hole(IVH)を有するIVH多層基板の場合、内層のビア径と表層のビア径とが異なる場合があるが、こうした場合においても、上記ビア直径を考慮する方法を用いることができる。
(4)上記した実施の形態においては、パターン図形が2層のものの場合について計算するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
図27には、2つの層間におけるビアグループの決め方が記載されている。
例えば、1層パターンと3層パターンとの間のビアグループを決める場合、はじめに、手順1として、1層のパターンと3層のパターンとの間にあるビアについて、ビアグループ外接長方形で包囲する。
ここで、ビアグループ外形長方形とは、所属するビア全てを含む最小の長方形である。即ち、1層パターンと3層パターンとの間にあるすべてのビアを最小の長方形で包囲したものをビアグループ外接長方形という。
次に、手順2は、ビアグループの外接長方形の中心点から、最も近い配線パターン領域(各層)の点を層切り替えの位置とする。
そして、こうした外接長方形中心点から最も近い配線パターン領域の点を通るように層間において経路が決定されるものである。
(5)上記した実施の形態においては、厚みを考慮せずに厚み考慮幅の計算を用いることなく、2層の配線パターンについて計算を行ったが、これに限られるものではないことは勿論である。
ここで、厚みが多い配線パターンについて厚み考慮幅の計算を用いて計算を行う場合について、図28を用いて説明する。
本発明によるパターン幅の計算装置によれば、ユーザーが設定した配線パターン幅で、基板の内層ごとに導体の厚さが変わる場合であっても、導体の厚みに応じて計算された厚みを考慮した幅(厚み考慮幅)を用いることにより、配線パターン幅を算出する際にパターンの厚みを考慮することができる。
計算の例としては、図28に示す参考計算式を用いることができる。参考計算式とは、厚み考慮幅の値を算出するものであり、
厚み考慮幅=ユーザー設定幅×(各層の中の最薄層の厚さ)/(対象導体層の厚さ)・・・式1
により導かれる。
例えば、表層のパターンの導体厚=0.018mm、かつ、ユーザーが設定した幅(ユーザー設定幅)=3.5mmであり、内層のパターンの導体厚=0.108mmであった場合、上記式1により、厚み考慮幅=0.583mmとなる。
こうした厚み考慮幅と基板断面とのイメージ図を図29(a)に示している。各層の導体厚さに合わせて、算出した厚み考慮幅を用いている。
上記図29(a)においては、基板の各層の厚みが異なる場合、痩せ処理を行う幅の程度が変わるため、算出した厚み考慮幅を用いることを説明しているものである。
図29(a)に示す1層の導体厚さ(銅箔)および4層の導体厚さは、0.018mmであり、また、2層の導体厚さおよび3層の導体厚さは、0.108mmで示されている。
パターンに電流を流す場合、導体厚さが厚い銅箔に比べて導体厚さが薄い銅箔は銅箔における電流の損失が大きいため、痩せ処理を行う幅の値が大きくなる。
そのため、図29(a)に示す0.018mmの導体厚さを有する1層目および4層目では、0.108mmの導体厚さを有する2層目および3層目よりも電流の損失が大きいため、必要となるパターン幅の値は大きくなり、厚み考慮幅はそれぞれ3.5mmとなる。
また、0.108mmの導体厚さを有する2層目および3層目では、0.018mmの導体厚さを有する1層目および4層目よりも電流の損失が少ないため、厚み考慮幅は0.583mmとなる。
また、上記厚み考慮幅を考慮した場合の、パターン幅の計算装置による痩せ処理および太らせ処理について、図29(b)(c)(d)を参照しながら説明すると、表層厚さ=0.018mm、ピンペアの配線パターン幅=1.0mmであり、1層目および4層目に関しては、厚み考慮幅=(1.0mm×0.018mm)/0.018mm=1.0mmとなるため、パターン図形において1.0mmの配線パターン幅を確保できるか否かを計算する。
また、3層目に関しては、厚み考慮幅=(1.0mm×0.018mm)/0.072mm=0.25mmとなるため、パターン図形において0.25mmの配線パターン幅を確保できるか否かを計算する。
そのため、上記結果を踏まえて、図29(b)には、痩せ処理の様子を示しているが、1層目および4層目は、1.0mmを確保できるか否かを確認するために外周を0.5mmずつ痩せさせる処理を行い、3層目に関しては、0.25mmを確保できるか否かを確認するために外周を0.125mmずつ痩せさせる処理を行う。
また、図29(c)においては、上記痩せ処理において痩せさせた領域を太らせて、領域を確保できたことを確定する処理が行われる。
こうして、本発明によるパターン幅の計算装置は、上記式1により算出される厚み考慮幅を用いて、パターンが有する厚みに合わせた配線パターン幅が得られるようになされている。
なお、こうした厚み考慮幅の情報については、図3のステップS306や図12のステップS1206におけるルール情報の読み込みにおいて読み込まれる。
(6)上記した実施の形態においては、2層からなるパターン図形について計算するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、さらに複数の層を有するパターン図形を計算することも可能であり、また、実際にパターン形状がない層に対しても幅を満足しているとみなす処理を行うことも可能である。
より詳細には、図30に示すように、基板パターン設計を行う場合の設計手法として、電気的属性である電源(POWER)やグランド(GROUND)として設定された層については、実形状(アートワーク形状)がない場合があるものである。
そのため、本発明によるパターン幅の計算装置においては、内層に入力するパターンを分類的に予約する方法を用いることができる。
なお、ビアの形状(パッドスタック)はみなす処理の場合は無視する。
例えば、1層目は配線層であるものとし、2層目はGND層であるものとした場合、1層は部品の引き出しがある配線層なので、パターン形状の入力を設計の最初から行うものである。
しかし、2層目のGND層に関しては、実形状がないため、内層に入力するパターンを予約するようにし、GNDネットに関係する形状を後から入力するようにすることができる。
このとき、設計途中において、パターン幅をチェックする目的で、上記2層目のように図形がなくても予約層の場合はパターンがあるとみなし、パターン幅を満足しているとみなす処理をしている。
このように、設計途中でチェックを行えるということは、途中の状態でもパターン幅の目安を付けながら設計を進められるメリットになる。
つまり、すべての層のパターン図形入力が完了するまでは配線パターン幅が満足するかどうかわからないという状況を避けるため、設計の途中で、電気的属性の層に関して、実形状を検出できる場合は、実形状を検出するようにし、一方、実形状を検出できない場合は、パターン幅を満足するものとみなすようにすることが可能である。
(7)上記した実施の形態においては、許容値内であるかの合格判定の表示を図20に示すものとし、改善手法のガイダンスの表示画面の例を図21に示すものとしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
配線パターン幅が十分に取れないなどのエラー図形に関しての警告表示ついては、幅不足断片図形をハイライトするようにしてもよいものであり、また、その際に、幅合格領域ネットワーク間にある幅不足断片図形の最短経路を表示してもよいものである。
また、合格経路は、並列することが可能であるか否かがわかるように、痩せ処理および太らせ処理ごとに、検出した配線パターン幅の探索経路図形を表示するようにしてもよいものである。
さらにまた、参照層を同期するように対応させてもよいものである。
(8)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(7)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。