まず、図1〜図7を用いて、実施例1の加熱調理器の構成について説明する。
図1は、本実施例の加熱調理器を示す斜視図であり、前面の開閉扉3を開いて加熱室2内部にパン焼成容器28と具材容器29を備えたベーカリー手段30を装着した状態を示す。図2は、加熱室2底面から底面蓋36を取り外す状態を示す分解斜視図である。図3は、加熱室2底面から底面蓋36を取り外し、さらにベーカリー手段30を装着する状態を示す分解斜視図である。図4は、図1におけるA−A断面図、図5は、B−B断面図である。図6は、本実施例の加熱調理器を上方から見た部分断面図である。図7は、本実施例のパン焼成容器28と具材容器29とを示す分解斜視図である。
<全体構成・マイクロ波加熱>
図1に示すように、本体1の加熱室2の前面には前面開口42が設けられており、この前面開口42は、上部に把手4を設けた開閉扉3で開閉される。また、本体1の前面には開閉扉3の開閉状態を検知する扉スイッチ14が設けられ、開閉扉3が開いている間は電源を投入しないよう構成されている。加熱室2の内部には、ベーカリー手段30が着脱自在に設置され、ベーカリー手段30を用いることで、パンを焼成することができる。なお、ここでは、開閉扉3の回転支点が前面開口42の下方にある例を示したが、開閉扉3の回転支点が前面開口42の側方にある構成としても良い。
また、図4に示すように、加熱室2の外側には、加熱室2側に吐出口を向けたボイラ13が設けられ、図示しない水タンクから供給された水をヒータで加熱して発生させた蒸気を加熱室2に供給できる。また、加熱室2の外壁には、加熱室2内部の温度を測定する温度センサ12が設けられる。
加熱室2の下方には機械室5が設けられており、その略中央には回転アンテナ6と、それを駆動するアンテナ駆動モータ7が設けられている。機械室5の回転アンテナ6に隣接して一方の側にはマイクロ波を生成するマグネトロン8が設けられ、マグネトロン8と回転アンテナ6とは導波管9により接続され、マグネトロン8で生じたマイクロ波は、回転アンテナ6から放射され加熱室2内部に供給されることで、加熱室2内部にセットされた食品(図示せず)をマイクロ波加熱できる。また、機械室5には制御装置15が設けられ、加熱調理器の動作制御やスイッチやセンサ類の制御を行う。
<オーブン加熱>
図4に示すように、加熱室2上面には上ヒータ17が配置され、加熱室2内部を輻射熱で加熱する。また、図5に示すように、加熱室2背面には、熱風モータ18によって回転する熱風ファン19と、吸気口20から吸気される空気を加熱する熱風ヒータ21で構成される熱風ユニット22が設けられている。この熱風ユニット22を用いて、加熱室2内の空気を吸気口20から吸引して加熱した後、加熱室2背面に設けられた熱風噴出口23から加熱室2内に噴出させることで対流により加熱し、オーブン加熱を行う。
<ベーカリー手段の取り付け>
図3に示すように、ベーカリー手段30は、パン生地57を入れるパン焼成容器28(調理容器)と、その上方に載置され、加熱室2上端近傍に配置されることになる具材容器29とを備えている。
また、図4に示すように、機械室5のうち、マグネトロン8、回転アンテナ6が存在しない位置に、加熱室2の底面を貫通する撹拌駆動軸24と、撹拌駆動軸24に動力を与える撹拌モータ25と、撹拌駆動軸24と撹拌モータ25を減速しながら接続する減速手段26が設けられている。減速手段26としては、撹拌モータ25の軸に設けられた小プーリ32と、撹拌駆動軸24に設けられた大プーリ33と、両プーリ間に巻き回されたベルト34の組み合わせを用いても良いし、撹拌モータ25の軸に設けられた小歯車と撹拌駆動軸24に設けられた大歯車の組み合わせを用いても良い。このような減速手段26を用いることで、撹拌モータ25の回転を減速して撹拌駆動軸24に伝達する。
ベーカリー手段30は、パン焼成容器28底面に設けられた駆動連結部31を介して加熱室2底面の撹拌駆動軸24に着脱自在に取り付けられる。また、撹拌駆動軸24の近傍には、パン焼成容器28の底面に設けられた凸部によって操作されるマイクロスイッチ35が設けられており、マイクロスイッチ35の出力によって、ベーカリー手段30が装着されたことを検知できる。
以上で説明したように、ベーカリー手段30を撹拌駆動軸24に装着することで、撹拌羽根27が撹拌駆動軸24と連動して回転駆動し、パン焼成容器28内のパン生地57などを撹拌することができる。
次に、ベーカリー手段30の取り付けの手順の概略を図1〜図3及び図28を用いて説明する。
図2は本体1の斜視図であって、底面蓋36を破線で示す位置から取り外し、加熱室2底面の撹拌駆動軸24を目視できるように露出させた状態を示す。図2において、加熱室2の底面に固定された底板11はガラスやセラミック等の低損失の誘電体素材で構成されており、撹拌駆動軸24を貫通するための貫通穴37が穿設されている。その貫通穴37はそれを通して駆動連結部31を撹拌駆動軸24に着脱可能な大きさとしている。貫通穴37は、丸穴であってもよいし、角穴であってもよいし、あるいはまた加熱室2の側面壁側に開口したU字状の溝であってもよい。
底面蓋36は、底板11の貫通穴37に着脱自在に設けられ、ベーカリー手段30を装着しないときには、加熱室2の底板11の一部となり貫通穴37と撹拌駆動軸24を覆っている。この底面蓋36を、貫通穴37よりも大であり、底面蓋36を装着した際に貫通穴37を覆う寸法とすれば、貫通穴37内部への食品片等の侵入を防止できる。
なお、底面蓋36を着脱自在に設ける方法としては、撹拌駆動軸24と軽く嵌合する構成とする方法や、ツメと溝とを噛み合わせて係止あるいは解除可能な構成とする方法がある。また、図28に示すように、一辺を回動可能なヒンジとして加熱室2の図示右側の内側壁に沿って開く構成の底面蓋36bであってもよいし、逆に図示左側の一辺を回動可能なヒンジとして加熱室2の図示左側の底板11に沿って開放する構成の底面蓋36cであってもよいし、あるいは図示奥側に向けてスライド移動する構成であってもよい。
次に図3と図1に示すように、加熱室2底面の撹拌駆動軸24にベーカリー手段30を装着する。なお、図3に示すように、パン焼成容器28には、前面開口42の側(ユーザ側)にハンドル40を設けており、パン焼成容器28に具材容器29を載置した状態であっても、ユーザはハンドル40を保持して加熱室2内部にベーカリー手段30を簡単にセットすることができる。
また、ベーカリー手段30を加熱室2底面に固定ないし解除するためのロックレバー41を備え、ロックレバー41をロック方向(例えば、加熱室2の奥側方向)に回動させることでベーカリー手段30を加熱室2底面に固定できる。その構成と動作の詳細は後述する。
<ベーカリー手段の取り外し>
ベーカリー手段30を取り外す際には、開閉扉3を開放した後、ロックレバー41を解除方向(例えば、加熱室2の手前方向)に回動してロックを解除し、しかる後にベーカリー手段30を持ち上げてから手前に移動することによって、前面開口42からベーカリー手段30を取出すことができる。その後、具材容器29を持ち上げてパン焼成容器28から取り外した後、焼成されたパンをパン焼成容器28から取出す。
なお、本実施例では、具材容器29はパン焼成容器28の上面に載置された構成であるため、具材容器29を持ち上げるだけで、具材容器29を簡単に取り外すことができる。このため、耐熱手袋をした状態であっても容易に具材容器29を取り外すことができ、焼成直後のパンを簡単に取り出すことができる。
<具材投入駆動手段>
図4に示すように、パン焼成容器28の上方に載置される具材容器29は、第一の具材投入手段43と、第二の具材投入手段44を備えている。第一の具材投入手段43は、パン生地57を発酵させる酵母である粉体あるいは顆粒のドライイースト133等をパン焼成容器28に保持し、外部からの操作によってこれらをパン焼成容器28に投入するものであり、第二の具材投入手段44は、レーズンやナッツ等の具材135をパン焼成容器28に保持し、外部からの操作によってこれらをパン焼成容器28に投入するものである。なお、これらの具材投入手段は、後述する具材投入駆動手段47からの操作によってその底面が開放され、ドライイースト133や具材135をパン焼成容器28に投入できる。
ここで、加熱室2内部は300℃程度に加熱されるため、具材投入駆動手段47を加熱室2内部に設置するのは好ましくない。そこで、本実施例では、具材投入駆動手段47のアクチュエータとして機能する電磁アクチュエータ(第一のソレノイド91と第二のソレノイド101)を加熱室2より低温となる機械室5に配置し、ここで発生させた駆動力を加熱室2の外側に設けたプッシュロッド73を介して、加熱室2の略天井高さに設けた駆動レバー45に伝達する構成とした。また、駆動レバー45に対向する加熱室2の側壁面には、駆動レバー45を通す貫通穴74が設けられており、加熱室2の外側に設けた駆動レバー45は貫通穴74を通して加熱室2の内側に設けた第一の具材投入手段43や第二の具材投入手段44を操作し、ドライイースト133や具材135をパン焼成容器28に投入することができる。
<ベーカリー手段>
図7の分解斜視図を用いて、ベーカリー手段30の構成をさらに詳細に説明する。
具材容器29には、具材投入駆動手段47の駆動レバー45と嵌合する複数の作用穴46が設けられている。この作用穴46は、具材投入駆動手段47に近接して設けられることが望ましく、加熱室2の壁面に近接して互いに対向した位置に設けるのが好適である。
また、具材容器29の第一の具材投入手段43は具材容器29の作用穴46側に設けられ、第二の具材投入手段44は作用穴46とは反対側に設けられる。
具材容器29がパン焼成容器28に正しい向きにセットされず、具材投入駆動手段47と作用穴46が対向しない場合には、具材投入駆動手段47の駆動レバー45で具材容器29の作用穴46を操作できず、具材135等の投入ができないという問題が生じる。そこで、パン焼成容器28の図示左上端に第一の突起48を設け、図示右上端に第一の凹部49を設けた。
また、具材容器29の図示左端には第二の凹部50を設け、図示右端には第二の突起51を設けた。そして、第一の突起48と第二の凹部50とを対応させ、第一の凹部49と第二の突起51とを対応させることで、具材容器29をパン焼成容器28に誤った向きで載置できないようにした。
また、パン焼成容器28内に熱風53を導入できるよう、具材容器29下端の前後方向には熱風53の流通が可能な通風路52を設けた。なお、本実施例では、第二の具材投入手段44を通風路52に沿った向きに(前後方向に長く)設けたが、この理由は後述する。
ここで、駆動連結部31を含むパン焼成容器28の高さ寸法をH1、具材容器29の高さ寸法をH2、前面開口42の高さ寸法をH3としたとき、本実施例では、H3 > H1+H2 を満たすように、パン焼成容器28、具材容器29、前面開口42の高さ寸法を設定した。これにより、パン焼成容器28に具材容器29を載置したベーカリー手段30の状態で、前面開口42から加熱室2の内部にベーカリー手段30を挿入できる。なお、H3 > H1+H2 + 25mmを満たすように各高さ寸法を設定すると、余裕を持って、ベーカリー手段を着脱できるため、さらに好適である。
<具材容器の後端部とパン焼成容器の後端部の位置関係>
次に、図5と図27を用いて、具材容器29と、パン焼成容器28との好適な位置関係について説明する。
図5はパン焼成時の本体1の断面図であり、ここに示すように、熱風ヒータ21で熱せられた熱風53は、加熱室2の背面に設けられた熱風噴出口23から吹出し、パン焼成容器28を側面から加熱するとともに、通風路52を通ってパン焼成容器28内のパン生地57の上面に吹き付けられることでパンの焼成が進む。
図27は、具材容器29の後端部54と、パン焼成容器28の後端部55の位置関係を示す縦断面図である。図5でも説明したように、ベーカリー手段30の通風路52を通ってパン焼成容器28内に流入する熱風53によって、パン生地57の表面が加熱され、パンの焼成が促進される。ところが、パン生地表面56が部分的に高温になり過ぎると、焼成が均一でなくなり、部分的に焼き色が付き過ぎたり、部分的に焼成が早期に完了しすぎたりして、パンのふくらみが不均一になる、といった問題点がある。
例えば、図27(a)に示すように、具材容器29の後端部54が、パン焼成容器28の後端部55よりも前方にある場合、後側の通風路52が上向きになるため、上方の熱風噴出口23から供給される熱風53が通風路52に流れ込み易く、特に、熱風53の上流側となるパン生地表面56では、熱風53が直接パン生地57表面に当るために温度が局部的に上昇しすぎて、焼成が早期に終了するためにふくらみが十分でなく、かつ表面の焼き色が他の部分よりも強すぎる場合が発生する。
そこで、本実施例では、図27(b)に示すように、具材容器29の後端部54の前後位置を、パン焼成容器28の後端部55と一致または後方とすることで、後側の通風路52が上方向きにならないようにし、ベーカリー手段30内部への熱風53の流入を適度に阻害する。この構成によって、特にパン生地表面56の局部的な温度上昇を防止し、焼き色も膨らみもより均一に焼成されたパンを得ることができる。
<ベーカリー手段30のロック機構>
ベーカリー手段30を加熱室2の底面にロックする方法としては、ベーカリー手段30全体を鉛直軸まわりに捻ってロックする構成も考えられる。しかしながら、こうすると、パン焼成容器28に載置された具材容器29も鉛直軸まわりに回転するので、ロック完了時の具材容器29の向きが一様に定まらず、具材容器29の作用穴46と具材投入駆動手段47の相対位置がずれ、具材投入駆動手段47の駆動レバー45では作用穴46を操作できない状況が生じうる。
そこで、本実施例では、具材容器29を回転させずにベーカリー手段30をロックできるように、パン焼成容器28の駆動連結部31にロックレバー41を設けた。以下では、図8と図9を用いて、パン焼成容器28の駆動連結部31に設けられたロックレバー41について説明する。なお、図8は、図7のパン焼成容器28をC方向から見た斜視図である。また、図9は、図8のパン焼成容器28をD方向から見た底面図であり、ロックレバー41の動作を示す図である。
図8に示すように、パン焼成容器28の底面には下方に突出した円筒状の駆動連結部31が設けられ、その中央部には、加熱室2底面にセットされた際に撹拌駆動軸24と接続して撹拌羽根27に駆動力を伝達するカップリング59が設けられている。このカップリング59は、インボリュートスプラインであってもよく、撹拌駆動軸24に直角に貫通したピンを介して回転トルクを伝達する構成であってもよい。
駆動連結部31の下端には略台形状の固定ツメ58が複数突出しており、ベーカリー手段30を加熱室2にセットした際には、固定ツメ58が加熱室2底面に設けられた穴に嵌合する。なお、固定ツメ58は、パン焼成容器28をテーブルなどの平面に載置した際の脚にもなる。
固定ツメ58の内周側には、先端に鉤状部を有した回動ツメ60が設けられており、この回動ツメ60はロックレバー41と連動して回転する。
図9(a)に示すように、ロックレバー41を回転させる前は、回動ツメ60の全体が固定ツメ58で覆われている。図3に示したように装着ガイド36に従ってベーカリー手段30を加熱室2の底面に装着すると、固定ツメ58に嵌合するように設けられた加熱室2底面の穴に、固定ツメ58と回動ツメ60が着脱自在に挿入される。
その後、図9(b)に示すように、ロックレバー41を回転させると、回動ツメ60がロックレバー41に連動して回転移動し、回動ツメ60の鉤状部が固定ツメ58から突出する。そして、回動ツメ60の鉤状部が加熱室2底面の穴に引っかかり、ベーカリー手段30が加熱室2の底面に固定される。
このようなロック機構を利用することにより、ベーカリー手段30の向きを維持したままベーカリー手段30を固定することができるので、具材容器29の作用穴46と具材投入駆動手段47が対向する位置関係を正常に保つことができ、具材投入駆動手段47の駆動レバー45で作用穴46を確実に操作することができる。
なお、本実施例では、ロックレバー41の高さをパン焼成容器28の1/3から1/4程度とした。これにより、必要十分な大きさのロックレバー41とすることができ、耐熱手袋をしたままであっても、ロックレバー41を容易に掴むことができる。また、ロックレバー41周囲に十分な空間があるので、耐熱手袋をしたままであっても、ロックレバー41を容易に回転させることができる。
<パン焼成容器28の転倒防止>
次に、図10を用いて、ロックレバー41による倒れ防止効果を説明する。図10は、ベーカリー手段30の正面図であり、加熱室2内にセットする途中状態を示している。
上述したように、ベーカリー手段30を加熱室2の底面に取り付けるときには、パン焼成容器28の駆動連結部31を加熱室2底面の撹拌駆動軸24に連結するようセットするが、両者が多少ずれている場合などにはスムーズに嵌合できないことがある。
図1から明らかなように、パン焼成容器28は加熱室2の右側壁に近接して配置されているので、パン焼成容器28の左側には空間がある。仮にロックレバー41を設けなかった場合には、パン焼成容器28を誤って左側に傾けてしまうと、その方向には何も支えが無いため、パン焼成容器28がそのまま転倒し、パン焼成容器28内にセットされたパン生地材料(水、小麦粉など)が加熱室2底面にこぼれ、撹拌駆動軸24の周囲に入り込んだりすることも考えられる。
そこで、本実施例では、図10に示すように、パン焼成容器28の両側面のうち加熱室2の壁面に対向しない側にロックレバー41を突出させ、パン焼成容器28を傾斜させた際にはロックレバー41でパン焼成容器28を支持できるようにした。このように構成することで、パン焼成容器28を誤って壁と反対側に傾けた場合であっても、パン焼成容器28の転倒を防止できる。
<具材投入駆動機構>
次に、図11〜図14を用いて、具材投入駆動手段47が具材容器29を操作する動作について説明する。
図11は、本体1内における具材容器29と具材投入駆動手段47の位置関係を示す斜視図である。また、図12は、具材容器29と具材投入駆動手段47との構成を示す斜視図であり、具材容器29の内部構成は一部省略し、具材容器29の外観と具材投入駆動手段47の駆動レバー45の関係を主に示している。また、図13は、図12と同一部分の斜視図であるが、具材容器29の外観は一部省略し、具材容器29の内部構成と具材投入駆動手段47の駆動レバー45の関係を主に示す図である。さらに、図14は具材容器29の平面図である。
先に述べたように、具材容器29には、ドライイースト133をパン焼成容器28内に投入するための第一の具材投入手段43と、レーズンやナッツなどの具材135を投入するために第二の具材投入手段44が設けられている。第一の具材投入手段43は、円錐形状、あるいは、すり鉢状の凹部であって、その底面の円形開口は下側から第一の具材底板67が当接して閉鎖される。また、第二の具材投入手段44は、矩形状の凹部であって、その底面の矩形開口は下側から第二の具材底板70が当接して閉鎖される。
図11に示すように、加熱室2の外側には、具材投入駆動手段47が設けられる。また、図12に示すように、具材投入駆動手段47の上端には、略へ字状の第一の駆動レバー45aと第二の駆動レバー45bが設けられている。
第一の駆動レバー45aは、第一の駆動支点72a周りを揺動自在に軸支されており、下端には第一のプッシュロッド73aが接続されている。他方、第一の駆動レバー45aの先端は、第一のプッシュロッド73aが下降した位置で略鉛直上方を向き、第一のプッシュロッド73aが上昇すると反時計方向に略90゜回動し、略水平向きとなる。
また、第二の駆動レバー45bは、第二の駆動支点72b周りを揺動自在に軸支されており、下端には第二のプッシュロッド73bが接続されている。他方、第二の駆動レバー45bの先端は、第二のプッシュロッド73bが下降した位置で略鉛直上方を向き、第二のプッシュロッド73bが上昇すると反時計方向に略90゜回動し、略水平向きとなる。
一方、具材容器29の右上辺には、第一の作用穴46a、第二の作用穴46bが開口している。そして、各開口に対向するように、第一の駆動レバー45a、第二の駆動レバー45bが配置される。
そして、図13、図14に示すように、第一の解除レバー62aは、第一の回動軸63a周りを揺動自在に軸支されており、第一の回動軸63aと同軸に設けられたねじりスプリング64aによって、第一の解除レバー62aの先端が上昇する方向のトルクが付与され、第一の作用穴46aを内側から封鎖するように具材容器29に当接される。なお、第一の解除レバー62aの下面には略垂直な連動突起65が突出している。
同様に、第二の解除レバー62bは、第二の回動軸63b周りを揺動自在に軸支されており、第二の回動軸63bに同軸に設けられたねじりスプリング64bによって、第二の解除レバー62bの先端が上昇する方向のトルクが付与され、第二の作用穴46bを内側から封鎖するように具材容器29に当接される。
また、第三の解除レバー62cは、第三の回動軸63c周りを揺動自在に軸支されており、第三の回動軸63cに同軸に設けられたねじりスプリング64cによって、第三の解除レバー62cの先端が上昇する方向のトルクが付与され、第一の解除レバー62aの連動突起65に向けて付勢されている。第三の回動軸63cの一部は第一の具材投入手段43の円形開口に向かって第三の突起66が延伸しており、その先端には球体の一部をなす第一の具材底板67が設けられており、ねじりスプリング64cが与えるトルクによって第一の具材底板67が第一の具材投入手段43の円形開口を下方から閉鎖される。
さらに、図14に示すように、略L字状の第四の解除レバー62dは、鉛直に配置された第四の回動軸63d周りを揺動自在に軸支されている。第四の解除レバー62dの一辺は第二の解除レバー62bに設けられた押し突起68に対向する位置にあり、他辺(底面ロック69)は第二の具材投入手段44の第二の具材底板70が開かぬように下方から支持する。
本実施例においては、ねじりスプリング64によって解除レバー62にトルクを与える構成としたが、ねじりスプリング64に限定されるものではなく、引っ張りスプリング、あるいは圧縮スプリングによって解除レバー62に所定のトルクを与える構成であってもよい。
<具材投入動作>
次に、図14〜図16を用いて、第一の駆動レバー45aが第一の具材投入手段43からドライイースト133を落下させる動作と、第二の駆動レバー45bが第二の具材投入手段44から具材135を落下させる動作を詳細に説明する。
まず、図15の部分断面図を用いて、第一の具材投入手段43からドライイースト133を落下させる動作を説明する。なお、図15において、図15(a)は、第三の回動軸63cから延伸した第一の具材底板67の位置(図14のE−E)での断面図、図15(b)(c)は、第1の解除レバー62cの連動突起65と第3の解除レバー62cの位置(図14のF−F)での断面図であり、パン焼成容器28を省略して説明することとする。
図15(a)(b)は、具材投入駆動手段47が第一の具材投入手段43に作用しない状態、すなわち、第一のプッシュロッド73aが下降し、第一の駆動レバー45aが加熱室2の外側で略垂直となっている状態である。このとき、第一の解除レバー62aには、ねじりスプリング64aによって反時計回りのトルクが与えられているが、第一の解除レバー62aは具材容器29の上面によって回動が規制される。また、第三の解除レバー62cには、ねじりスプリング64cによって時計回りのトルクが与えられ、第三の解除レバー62cに連動して回動する第一の具材底板67にも時計回りのトルクが与えられる。なお、このとき、第一の駆動レバー45aの連動突起65は第三の解除レバー62cに接触しない位置にある。これらの構成によって、第一の具材底板67が、第一の具材投入手段43の底面の円形開口を下方から封鎖し、ドライイースト133を第一の具材投入手段43内に保持できる。
一方、図15(c)は、具材投入駆動手段47が第一の具材投入手段43に作用した状態、すなわち、第一のプッシュロッド73aが上昇し、第一の駆動レバー45aが略水平となり、加熱室2の側壁面の貫通穴74と具材容器29の作用穴46aを通して、第一の解除レバー62aを操作している状態である。このとき、第一の解除レバー62aには、第一の駆動レバー45aによって時計回りのトルクが与えられ、第一の解除レバー62cの下面に設けられた連動突起65にも時計回りのトルクが与えられる。この連動突起65に押し下げられることで、第三の解除レバー62cに反時計回りのトルクが与えられ、第三の解除レバー62cに連動して回動する第一の具材底板67にも反時計回りのトルクが与えられる。これによって、第一の具材底板67が、第一の具材投入手段43の円形開口の下方に移動し、開放された円形開口から、ドライイースト133がパン焼成容器28に投入される。なお、図14に示すように、本実施例では、第一の具材底板67に隣接する第三の突起66に穴132を設けることで、ドライイースト133が第三の突起66や第一の具材底板67の上から速やかに落下するようにした。
次に、図16の部分断面図を用いて、第二の具材投入手段44から具材135を落下させる動作を説明する。なお、図16(a)、(b)は何れも、第二の解除レバー62bの押し突起68の位置(図14のG−G)での断面図であり、図16(a)では、パン焼成容器28を省略して説明することとする。
図16(a)は、具材投入駆動手段47が第二の具材投入手段44に作用しない状態、すなわち、第二のプッシュロッド73bが下降し、第二の駆動レバー45bが加熱室2の外側で略垂直となっている状態である。このとき、第二の解除レバー62bには、ねじりスプリング64bによって反時計回りのトルクが与えられているが、第二の解除レバー62bは具材容器29の上面によって回動が規制される。なお、このとき、第二の駆動レバー45bの押し突起68は第四の解除レバー62dに接触しない位置にある。これらの構成によって、回動支点71周りを揺動自在に軸支された第二の具材底板70が、第二の具材投入手段44の底面の矩形開口を下方から封鎖するとともに、第四の解除レバー62dの底面ロック69が第二の具材底板70が開かぬように支持することで、具材135を第二の具材投入手段44内に保持できる。
一方、図16(b)は、具材投入駆動手段47が第二の具材投入手段44に作用した状態、すなわち、第二のプッシュロッド73bが上昇し、第二の駆動レバー45bが略水平となり、加熱室2の側壁面の貫通穴74と具材容器29の作用穴46bを通して、第二の解除レバー62bを操作している状態である。このとき、第二の解除レバー62bには、第二の駆動レバー45bによって時計回りのトルクが与えられ、第二の解除レバー62bの先端の押し突起68にも時計回りのトルクが与えられる。この押し突起68によって、第四の解除レバー62dを回動させるトルクが与えられる。第四の解除レバー62dが回動し図14の点線で示した向きになり、底面ロック69が第二の具材底板70の下方から移動すると、底面ロック69による支持を失った第二の具材底板70が自重で開放され、第二の具材底板70に載置されていた具材135がパン焼成容器28に投入される。
次に、図16(b)を用いて、第二の具材底板70の形状について更に詳細に説明する。前述したように、具材容器29には前後に貫通する通風路52が設けられている。そして、第二の具材底板70の回動支点71の軸方向を、熱風53の流れる方向(本実施例では前後方向)と同方向としたので、具材135の投入後に第二の具材底板70が下方に開いた状態となっても通風路52は閉鎖されず、第二の具材底板70が熱風53の流れを妨げることがない。また、第二の具材底板70が下方に開いた状態となったとき、第二の具材底板70の底面が具材容器29の側壁面に近接する構成となっているため、パンの焼成が進み、実線で示したパン生地57の上面が破線で示したパン上面134に膨張しても、パン上面134と第二の具材底板70を遠ざけることができ、パンの上面に傷がつくことを抑制できる。
<レバー方式の利点>
次に、駆動レバー45を用いて第一の具材投入手段43や第二の具材投入手段44を操作する方式の利点を説明する。
図15(c)に示すように、加熱室2の側壁面と具材容器29の距離をL1とし、加熱室2の側壁面からの第1の駆動レバー45aの突出距離をL2としたとき、L1<L2とすることで、加熱室2の外部から具材容器29を操作することができる。すなわち、熱に弱い第一のソレノイド91、第二のソレノイド101等のアクチュエータや動力伝達機構を加熱室2の外部に設置することで、加熱室2内の具材容器29を所望のタイミングで操作し、ドライイースト133や具材135を適切なタイミングで投入する制御が実現できる。
また、図15(a)(b)や図16(a)から明らかなように、通常、駆動レバー45は加熱室2の外部に配置されているため、ベーカリー手段30を用いない調理を行なうときに、駆動レバー45が、食品や食器の出し入れの邪魔となることがなく、また、加熱室2の清掃時にも邪魔となることはない。
なお、本実施例では、第一の第一のソレノイド91や第二のソレノイド101の動力を駆動レバー45の先端部を介して解除レバー62に伝達するが、解除レバー62が伝達する力は加熱室2内に突出する駆動レバー45の長さに反比例するので、駆動レバー45を短くことで伝達力を大きくすることができる。つまり、伝達力を大きくするには、突出距離L2を小さくすること、同義的に、距離L1を小さくすることが望ましい。一方、距離L1を小さくしすぎると、ベーカリー手段30をセットする際に、加熱室2の側壁面を擦る可能性が高まるため、距離L1はある程度大きいことが望ましい。そこで、本実施例では、距離L1を10〜15mmとし、適切な伝達力の確保と、ベーカリー手段30の装着容易性の両立を図った。
<電波シールド手段>
本実施例の加熱調理器は、マグネトロン8を用いたマイクロ波加熱にも対応している。従って、マイクロ波加熱時には、具材投入駆動手段47近傍からのマイクロ波漏洩を防止する必要がある。本実施例におけるマイクロ波漏洩防止のための電波シールド手段を以下で詳細に説明する。
図17は、加熱室2の外側に設けられた電波シールド手段の構成を説明する斜視図であり、第一の駆動レバー45aと第二の駆動レバー45bの近傍を電波遮断する構成を例示している。本実施例では、駆動レバー45が加熱室2側壁面の貫通穴74を介して加熱室2内の具材容器29を操作する構成としており、駆動レバー45の揺動の軸となる駆動支点72を水平としたので、駆動レバー45の先端を通す貫通穴74形状は縦長のスリット形状となる。
マイクロ波加熱時にマグネトロン8から加熱室2に供給されたマイクロ波は、貫通穴74を通って具材投入駆動手段47側に漏洩する。本実施例では、貫通穴74及び駆動レバー45を電波遮蔽手段である金属ケース79で覆い、マイクロ波が本体1の外部に漏洩しないようにした。
また、金属ケース79の下面には、プッシュロッド73を貫通させる下面開口が必要となるが、そこからのマイクロ波漏洩を抑制するため、金属ケース79の下面開口の下方には金属製で円筒状のスリーブ80を設けた。電波が管の内部を伝搬する場合、管の断面が小さくなると伝搬しにくくなり、また、管の寸法がある一定寸法以下になると進行しないという性質があるため、金属ケース79の下面開口に適切なスリーブ80を設けることで、金属ケース79下方からのマイクロ波漏洩を効果的に抑制できる。
なお、図17では、スリーブ80を円筒形状としたが、プッシュロッド73の上下移動を妨げない形状であれば、四角柱や多角形柱など他の形状であっても良い。この場合、スリーブ80の断面寸法を、形状に対応した遮断波長(電波の進行を抑制できる限界波長)以下の断面寸法とすればよいが、この遮断波長は断面形状によって異なり、例えば、矩形断面の管では、一辺の寸法を1/2波長以下とすることで、電波の進行を抑制できる。同様に、円筒断面の管でも、直径の寸法を1/2波長以下とすることで、電波の進行を抑制できる。さらに、スリーブ80を長くすることで(例えば15mm以上)、電波の進行を更に抑制でき、金属ケース79下方からのマイクロ波漏洩をさらに効果的に抑制できる。
さらに、プッシュロッド73の上端部(少なくともスリーブ80の内側部分)を誘電体である樹脂製とすれば、プッシュロッド73を介したマイクロ波漏洩を抑制できるので、本体1外部へのマイクロ波の漏洩を更に抑制できる。
<インボリュート>
次に、図18〜図20を用いて、具材投入駆動手段47の駆動レバー45と具材容器29の解除レバー62の好適な形態と動作について説明する。なお、これらの図は、図14におけるF−F方向とG−G方向の断面の共通部分を説明するためのものであり、各断面固有の構成は説明を省略する。
図18は、駆動レバー45が反時計方向に回動し、解除レバー62に接触し始めた状態を示す。図19は、駆動レバー45がさらに回動し、解除レバー62を動作範囲の途中まで押込んだ状態を示す。図20は、駆動レバー45が解除レバー62の動作範囲一杯まで回動した状態を示す。
図18において、駆動レバー45は、駆動支点72を回転中心とし、先端を歯先円81aとなすインボリュート歯車であるとし、駆動レバー45の先端下面は、インボリュート曲線をなす。
ピッチ円直径(PCD1)82aは、標準歯車と同じくモジュールをm、歯数をz1とすれば、PCD1=m×z1であり、歯先円81a直径すなわち駆動レバー45の先端長さを直径で表せば歯先円81a直径=PCD1+2×m=(m+2)×z1として表され、そのようなインボリュート歯車の歯の一枚だけを取り出して駆動レバー45の一部とした形態である。
同様に、解除レバー62も、回動軸63を回転中心とし、先端を歯先円81bとなすインボリュート歯車であるとし、解除レバー62の先端上面は、インボリュート曲線をなす。
ピッチ円直径(PCD2)82bは、標準歯車と同じくモジュールをm、歯数をz2とすれば、PCD2=m×z2であり、歯先円81b直径すなわち解除レバー62の先端長さを直径で表せば歯先円81b直径=PCD2+2×m=(m+2)×z2として表され、そのようなインボリュート歯車の歯の一枚だけを取り出して解除レバー62の一部とした形態である。
ここで、解除レバー62と駆動レバー45のそれぞれの回転中心間の軸間距離をL3とし、モジュールをm、歯数Z1とZ2の歯車のかみあいに合わせてL3=(z1+z2)×m/2とすれば、駆動レバー45先端と解除レバー62先端とはインボリュート歯車として互いにかみあう。
インボリュート歯車のかみあいは一般的に良く知られているように、2枚の歯形のかみあいの接触点であるかみあい位置137は、それぞれの歯車の基礎円の共通接線である作用線83上を移動する。この作用線83は、回動軸63と駆動支点72とを結んだ中心線84に対する垂線85よりも圧力角αだけ傾斜しており、その作用線83に沿って伝達力136が伝達される。このような伝達力136はインボリュート歯車のかみあいの場合にはかみあいの前後で変化しないので、図18、図19、図20に至るまで、同一の作用線83上に伝達力136が伝達されると共に、駆動レバー45と解除レバー62との動作角度比は歯数の比、すなわちZ1/Z2と一定なので、駆動レバー45の動作角度に対する解除レバー62の動作角度は一定なので、解除レバー62の動作の変動が少なく安定した動作が得られる。
またさらに、インボリュート歯車の良く知られた特性として、歯車同士の軸間距離が変化しても回転角度の比は一定を保つので、加熱室2と具材容器29の距離が取付誤差などで変化したとしても、駆動レバー45の動作により解除レバー62を安定して動作できるので好適である。
駆動レバー45と解除レバー62に用いるインボリュート曲線におけるモジュールの選定についての好適な一例について説明する。駆動レバー45の先端と解除レバー62の先端のかみあい量は、モジュールmの2倍となる。そこで、加熱室2と具材容器29との間の距離変動量よりもモジュールを大きく設定することで、かみあい量に余裕が生じ、かみあいが外れることなく安定して好適である。
<第一の駆動手段>
次に、図21と図22を用いて、第一のプッシュロッド73aの下端に設けられ、第一のプッシュロッド73aを上下に駆動する第一の駆動手段88の構成の一例を説明する。なお、図21に破線で示す第二の駆動手段89の構成、動作は第一の駆動手段88と同等であるので個別の説明は省略する。
図21は、第一の駆動手段88の構成と動作を示す概略図である。図21(a)は第一のソレノイド91が動作していない非通電状態を示し、図15(a)(b)ないし図16(a)に示すように、第一のプッシュロッド73aが下降し、第一の駆動レバー45aが加熱室2の外側で略垂直となっているため、具材投入駆動手段47が第一の具材投入手段43に作用しない状態である。図21(b)は第一のソレノイド91が動作している通電状態を示し、図15(c)ないし図16(b)に示すように、第一のプッシュロッド73aが上昇し、第一の駆動レバー45aが略水平となっているため、加熱室2の側壁面の貫通穴74と具材容器29の作用穴46aを通して第一の解除レバー62aが操作され、具材投入駆動手段47が第一の具材投入手段43に作用した状態である。また、図22は、第一の駆動手段88を図21のK方向からみた図である。
図21、図22に示すように、第一のソレノイド91は、円筒穴のまわりにコイルを巻き回した固定子92と、固定子92に設けられた円筒穴94に沿って移動自在に支持された磁性体の移動子であるプランジャ93とを備え、固定子92のコイルに通電した際に生じる磁力でプランジャ93を固定子92側に吸引することで駆動力を生じる。
図21に示すように、第一の駆動手段88では、回転軸95のまわりに回転自在に軸支された略へ字状をしたベルクランク96の一端97に、第一のソレノイド91のプランジャ93の先端部が例えばピン等を介して回転自在に接続され、ベルクランク96の他端98には第一のプッシュロッド73aの下端が回転軸95のまわりに回転自在に軸支されている。図22に示すように、本実施例においてはベルクランク96の一端97は二股に分岐して、プランジャ93を挟み込んでピン99によって回動可能に支持される構成である。
図21(a)の非通電状態においては、プランジャ93はばね100によって固定子92から離れる方向(図の左上方向)に付勢されており、第一のプッシュロッド73aの自重と協業してベルクランク96に回転軸95のまわりに時計回りの回転力を与え、第一のプッシュロッド73aを最下降位置に保持する。先に述べたように、この状態では具材投入駆動手段47が第一の具材投入手段43に作用しない。図21(a)においては、プランジャ93は固定子92から最大に突出した状態であり、その時の突出量は最大値のP1である。
図21(b)の通電状態においては、固定子92のコイルに通電した状態を示しており、プランジャ93は固定子92に吸引されて移動し、ばね100力に抗ってベルクランク96を回転軸95のまわりに反時計まわりに回動して第一のプッシュロッド73aを上昇させ、図15(c)にて示したように具材投入駆動手段47が第一の具材投入手段43に作用してドライイースト133をパン焼成容器28内に投入する。図21(b)においては、プランジャ93は固定子92に最も吸引された状態であり、その時の突出量は最小値のP3である。
固定子92のコイルへの通電と切断とを複数回繰り返すことで、第一のプッシュロッド73aの上昇と落下とを繰り返すことができる。ドライイースト133は粉体または顆粒なので、乾燥時期に静電気が蓄積するなどして、すり鉢状の第一の具材投入手段43から落下しにくい場合がある。したがって、第一の具材底板67の開き動作は複数回繰り返すことが有効である。
ここで、ソレノイドは一般的にプランジャ93の移動方向に細長い形状をなしている。プランジャ93の移動量であるストロークが10mmないし15mm程度とすれば、固定子92に通電しない状態での全長は、例えば60〜70mm程度となって、第一のソレノイド91と第二のソレノイド101とを同軸に配置して直列に設けると近接して配置できないが、ソレノイドを傾斜させて配置することで、第一のソレノイド91の固定子92と第二の駆動手段89のベルクランク96とを上下に重ねて配置できるので、第一の駆動手段88と第二の駆動手段89との間隔を短縮して小型化できるので好適である。図21(a)に破線で第二の駆動手段89の配置の一例を示す。
本実施例においては、第一のソレノイド91のプランジャ93を傾斜して配置し、略へ字状のベルクランク96によってプランジャ93の移動方向を第一のプッシュロッド73aの上下方向の移動に変換して動作する駆動手段の構成について説明したが、そのような構成に限定されるものではなく、例えばソレノイドのプランジャ93を第一のプッシュロッド73aの移動方向と同じく上下方向に移動するよう配置し、ベルクランク96を設けずにプランジャ93と第一のプッシュロッド73aとを直結してプランジャ93により第一のプッシュロッド73aを直接動作する構成であってもよい。
あるいはまた、プランジャ93と第一のプッシュロッド73aをともに上下方向に配置して、ベルクランク96は略へ字状ではなく略水平に配置した一直線状であって、ベルクランク96の一端にプランジャ93を接続し、回転軸95を挟んで他端に第一のプッシュロッド73aを接続し、プランジャ93の下方向への移動を第一のプッシュロッド73aの上方向への移動に転換する構成であってもよい。
<ソレノイドの特徴・効果>
本実施例においては第一の駆動手段88と第二の駆動手段89を駆動するアクチュエータとしてソレノイド91、101を用いたので、通電されない状況においては、ばね100力とプッシュロッド73a、73bの自重によってプッシュロッド73a、73bを最下降位置に保持できる。またさらに、ソレノイド91、101の動作中に誤って電源をコンセントから引き抜かれたり、あるいは停電などによって動作途中でソレノイド91、101への通電が突然切断された場合にも、通電が切断すると同時にソレノイド91、101による駆動力は発生しなくなるので、その後ばね100力とプッシュロッド73a、73bの自重によってプッシュロッド73a、73bは最下降位置に戻る。
すなわち、図15(c)あるいは図16(b)のように、駆動レバー45が具材容器29に設けられた作用穴46内部に挿入されて第一の解除レバー62aないし第二の解除レバー62bに作用している最中であっても、通電の切断とともにプッシュロッド73a、73bは下降して駆動レバー45を図15(a)(b)ないし図16(a)に示した位置、すなわち駆動レバー45の先端が略鉛直上方を向き、加熱室2に設けられた貫通穴74よりも外側の引き込んだ位置に戻るので、その後例えばベーカリー手段30を取り出す場合にも駆動レバー45が操作の妨げにならずに取り扱い性が良好である。
<ブロック図>
図23は加熱調理器の制御装置15のブロック図である。150はマイクロコンピュータで、図示しない各スイッチに接続される操作ボタン入力回路151や、ドア開スイッチ14、パン焼成容器28の有無を検出するマイクロスイッチ35、温度センサ12の信号を受ける。マイクロコンピュータ150からの出力は、駆動回路152に接続され、マグネトロン8、回転アンテナ6を回転させるアンテナ駆動モータ7、熱風53を循環する熱風ファン19を駆動する熱風モータ18、熱風53を発生される熱風ヒータ21、機械室5を冷却する図示しない冷却ファン、グリル加熱を行う上ヒータ17、ボイラ13に供給された水分を蒸発させるボイラヒータ154、パン焼成容器28内の撹拌羽根27を回転させる撹拌モータ25、第一のソレノイド91、第二のソレノイド101に接続され、これらの開閉や回転、通電を制御する。また、使用者に加熱調理器の動作状態を知らせるための例えば7セグメント発光ダイオードや液晶のような表示器155、発光ダイオード156、ブザー157に接続される。
マイクロコンピュータ150は、ドア開スイッチ14がドア閉を検知して、さらに操作スイッチが押されると起動する。
加熱調理を行う際には、図24および図25に示すように、最初に調理機能を選択した後に基本的な制御処理プログラムを実行する。
まず、レンジ加熱を行なうときの制御を図24のステップS101〜S106を用いて説明する。ステップS101ではマイクロ波によるレンジ加熱を選択する。ステップS102では開閉扉3を開き、食品をセットする。ステップS103では開閉扉3を閉止し、扉スイッチ14が閉鎖を検知する。ステップS104では食品に応じて、加熱モードや加熱時間をセットする。ステップS105ではマグネトロン8に通電し、アンテナ駆動モータ7を駆動して回転アンテナ6を回転させ、マイクロ波により食品を加熱する。ステップS106では所定の時間が経過したらマグネトロン8の通電を終了し、ブザー157や表示器155により終了を報知する。本実施例の加熱調理器では、このようにして、レンジ加熱を行なう。
また、グリル加熱を行なうときの制御を図24のステップS108〜S113を用いて説明する。ステップS108ではヒータによるグリル加熱を選択する。ステップS109では加熱温度を設定する。ステップS110では熱風ヒータ21および熱風ファン19に通電し、加熱温度まで予熱する。ステップS111では予熱が完了したら、食品をセットする。ステップS112では熱風ヒータ21および熱風ファン19に通電し、所定時間加熱する。ステップS113では所定時間が経過したら、ヒータ21、18への通電を終了し、ブザー157や表示器155により終了を報知する。本実施例の加熱調理器では、このようにして、グリル加熱を行なう。
さらに、ベーカリー調理を行なうときの制御を図25のステップS114〜S126を用いて説明する。ステップS114ではパンを焼成するためにベーカリー機能を選択する。ステップS115ではパン焼成容器28に、水、小麦粉などのパン生地57を投入する。ステップS116では具材容器29にドライイースト133と、レーズンやナッツなどの具材135をセットする。ステップS117では本体1の扉を開き、底面の底面蓋36を取り外す。ステップS118では具材容器29をパン焼成容器28の上部に載置してベーカリー手段30の形態とし、ハンドル40を持って前面の開口から挿入して所定の位置にセットし、ロックレバー41を回動してロックし、本体1の開閉扉3を閉じ、扉スイッチ14が検知する。
ステップS119では撹拌モータ25を駆動して、パン生地57を練る。ステップS120では所定の時間、練り動作を行った後、第一のソレノイド91を駆動してドライイースト133を落下投入してさらに練ってドライイースト133をパン生地57に一様に混ぜる。ステップS121では練り工程の終了間際に第二のソレノイド101を駆動して、パン焼成容器28内にレーズンやナッツなどの具材135を落下投入する。ステップS122では撹拌モータ25を停止した後、所定時間放置して、発酵を促進する。
ステップS123では上熱風ヒータ21および熱風ファン19に通電し、加熱して焼成する。ステップS124では所定時間が経過して焼成が完了したら、扉を開き、ロックレバー41を解除してベーカリー手段30を取り外し、パン焼成容器28から具材容器29を取り外し、さらにパン焼成容器28から焼き上がったパンを取り出す。本実施例の加熱調理器では、このようにして、ベーカリー調理を行なう。
なお、ステップS125では加熱室2の底板11の貫通穴37に底面蓋36を取付けることで、貫通穴37内部への食品の破片等の侵入を防止してマイクロ波加熱ないしグリル加熱の可能な状態となる。
以上により、マイクロ波加熱、グリル加熱、パン焼成(ベーカリー)の各機能を備えることができる。なお、本実施例ではパン焼成を行う際には熱風ヒータ21を用いて加熱する例を示したが、それに限定するものではなく、マイクロ波加熱、上ヒータ17加熱、を用いても良いし、さらに熱風ヒータ21と他の加熱方法とを組み合わせても良い。
<タイミングチャート>
次に、図26を用いて、パン焼成工程における熱風ヒータ21、撹拌モータ25、第一のソレノイド91、第二のソレノイド101、の動作を説明する。図26は、横軸に時間、縦軸にヒータと各ソレノイドの動作状態を示すタイミングチャートである。
ベーカリー手段30をセットした後、時間t1において、撹拌モータ25を回転させて練り工程を開始する。次に、時間t2で第一のソレノイド91を動作させ、第一の駆動レバー45aを作用させてドライイースト133を落下投入する。イースト投入の動作は、複数回繰り返して行うことで確実に落下できる。時間t3において、第二のソレノイド101を動作して、第二の駆動レバー45bを作用させてレーズンやナッツといった具材135を落下投入させた後、第二の駆動レバー45bを元の状態に復帰して、加熱室2の壁面の外に移動する。
その後、時間t4で撹拌モータ25を停止して、練り工程が終了する。その後時間t5まで、発酵が適度に進むまで放置し、低温の場合など必要があれば熱風ヒータ21に通電して加熱する。次に時間t5にて熱風ヒータ21に通電して、焼成工程となり、所定の時間焼成したのち、時間t6にて熱風ヒータ21を停止して焼成が完了する。
<本実施例の加熱調理器の効果>
本実施例によれば、パン焼成容器28の上に、予めセットした具材を落下投入できる具材容器29を設けたベーカリー手段30を、本体1の前面に設けた前面開口42から加熱室2内部に設置することができ、さらには加熱室2の外側から加熱室2を貫通して加熱室2内側の具材容器29に作用して所定の時間に具材をパン焼成容器28の内部に投入できる具材投入駆動手段47を備えたので、電子レンジ、オーブン、具材入りパンを焼成できるベーカリー、の3つの機能を備えた加熱調理器を提供できる。
また、本実施例によれば、ベーカリー手段30の高さ、すなわちパン焼成容器28の高さと具材容器29の高さの合計が加熱室2の前面開口42の高さより小なるよう構成したので、ベーカリー手段30の着脱が容易で使いやすい加熱調理器を提供できる。
また、本実施例によれば、パン焼成容器28の側面の手前側に把手4となるハンドル40を備えたので、ベーカリー手段30を前面の開口から着脱しやすく、使いやすい加熱調理器を提供できる。
また、本実施例によれば、加熱室底面11の貫通穴37を覆う底面蓋36を加熱室底面11から取り外してパン焼成容器28内の撹拌羽根27を回転駆動する撹拌駆動軸24を目視できるよう露出させて後、パン焼成容器28をセットするので、パン焼成容器28がセットしやすいとともに、パン焼成完了後に底面蓋36を閉じた後は、加熱調理時に生じる食品の破片などが貫通穴37から撹拌駆動軸24への侵入を防止して、信頼性を高める効果がある。
また、本実施例によれば、パン焼成容器28の上面と具材容器29の底面との間に加熱室の前後方向を向いた隙間である通風路52を設け、その隙間に沿って熱風53が通過する構成としたので、熱風がパン生地表面56を直接加熱するので、生地が確実に加熱され、焼き色がついたパンが焼成できる。
また、本実施例によれば、パン焼成容器28の上面の本体奥側の端面よりも、具材容器29の端面が本体奥側に近接するよう配置したので、熱風53の流量を適切に阻害することによって、焼き色も膨らみもより均一に焼成されたパンを得られる。
また、本実施例によれば、加熱室2の側壁内側に近接して具材容器29を備えたベーカリー手段30をセットし、加熱室2側壁外側に具材投入駆動手段47を備え、具材投入駆動手段47の駆動レバー45が加熱室2の外側から加熱室2を貫通して内側の具材容器29に作用して具材をパン焼成容器28内に落下投入するよう構成したので、具材入りパンを焼成できる効果がある。
また、本実施例によれば、パン焼成容器28を捻ることなくロックレバー41を介して回動ツメ60を回動させることでパン焼成容器28を加熱室2に装着する構成としたので、パン焼成容器28は着脱する際とロックした後で同じ姿勢を保つので、具材投入駆動手段47と連結する作用穴46の位置関係が一定に保たれるので具材投入動作が確実である。
また、本実施例によれば、加熱室2の内側に向いた側にロックレバー41を突出させる構成としたので、ロックレバー41によってパン焼成容器28の転倒を防止できる。
また、本実施例によれば、加熱室2の外側から加熱室2を貫通して内側の具材容器29に作用して具材をパン焼成容器28内に落下投入する駆動レバー45は、具材容器29に作用しない間は、加熱室2の内側に出張らないよう側壁よりも外側に配置することで、食品の出し入れや清掃時の邪魔にならないので好適である。
また、本実施例によれば、具材投入駆動手段47のアクチュエータであるソレノイド91、101を加熱室2より下側の低温の機械室5に設け、具材をパン焼成容器28内に落下投入する駆動レバー45は加熱室2上端近傍に設け、アクチュエータと駆動レバー45とをプッシュロッド73で連結した構成としたので、アクチュエータは低温に保たれつつ駆動レバー45を介して具材容器29に作用して具材をパン焼成容器28内に落下投入できる。
また、本実施例によれば、具材を投入する際に開放される第二の具材底板70は、具材容器29の内側壁面に沿って開放されるので、第二の具材底板70が開いた後にも通風路52を塞いで熱風53を妨げることがなく、またさらに第二の具材底板70の下降した先端はパンの膨らみ量が少ない周辺部に位置するので、パンが膨らんでも傷つくことがない。
また、本実施例によれば、駆動レバー45が加熱室2を貫通するスリット形状の貫通穴74を金属ケースで覆うとともに、駆動力を伝達するプッシュロッド73に沿って金属のスリーブ80を設け、さらにプッシュロッド73の金属のスリーブ80の内側に挿入される部分を誘電体である樹脂製としたので、マイクロ波加熱の際に電波もれを防止できる。
また、本実施例によれば、具材投入駆動機構47に設けられた駆動レバー45と、具材容器29に設けられた解除レバー62のかみあい部分を互いにインボリュート曲線とし、歯車のかみあいをなすように配置したので、駆動レバー45の動作角度に対する解除レバー62の動作角度は一定なので、解除レバー62の動作の変動が少なく安定した動作が得られる、という効果がある。さらに、駆動レバー45と解除レバー62間の距離が変動しても回転角度の比は一定を保つので、さらに安定した動作が得られる。
<ソレノイドによる電源断時の効果>
ソレノイド91、101の動作中に誤って電源をコンセントから引き抜かれたり、あるいは停電などによってソレノイド91、101への通電が突然切断された場合にも、通電が切断すると同時にソレノイド91、101による駆動力は発生しなくなるので、その後はばね100力とプッシュロッド73a、73bの自重によってプッシュロッド73a、73bは最下降位置に移動するので、通電の切断とともに、加熱室の外側から加熱室を貫通して内側の具材容器に作用して具材をパン焼成容器内に落下投入する駆動レバー45は、加熱室2の内側に出張らないよう側壁よりも外側に位置するので、食品の出し入れや清掃時の邪魔にならないので好適である。