JP5913032B2 - スパークプラグ - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関等に使用されるスパークプラグに関する。
スパークプラグは、内燃機関(エンジン)等に取付けられ、燃焼室内の混合気への着火のために用いられるものである。一般にスパークプラグは、軸線方向に延びる軸孔を有する絶縁体と、軸孔の先端側に挿設される中心電極と、絶縁体の外周に設けられる主体金具と、主体金具の先端部に設けられ、中心電極との間で火花放電間隙を形成する接地電極とを備えている。そして、前記火花放電間隙に高電圧が印加され、火花放電間隙において火花放電を生じさせることで、混合気への着火がなされるようになっている。
ところで、燃焼室内においては混合気の不完全燃焼等によりカーボンが発生し、これが絶縁体のうち燃焼室に晒される部位(脚長部)の表面へと堆積してしまうおそれがある。ここで、脚長部表面に対するカーボンの堆積が進み、脚長部表面がカーボンで覆われて汚損してしまうと、火花放電間隙において正常な火花放電が発生せずに、中心電極から主体金具へとカーボンを伝って電流が流れてしまうおそれがある。その結果、失火等の不具合を招いてしまうおそれがある。
そこで、良好な耐汚損性を確保すべく、脚長部の表面粗さを小さくすることで、脚長部表面に対するカーボンの付着を抑制する手法が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
特開2003−303661号公報
しかしながら、上記手法では、耐汚損性の向上効果が十分とは言い難く、優れた耐汚損性を確保することができないおそれがある。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、絶縁体の表面粗さを調節することで、耐汚損性を著しく向上させることができるスパークプラグを提供することにある。
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
構成1.本構成のスパークプラグは、軸線方向に延びる軸孔を有する筒状の絶縁体と、
前記軸孔の先端側に挿設される中心電極と、
前記絶縁体の外周に設けられ、径方向内側に突出する突部を有する筒状の主体金具とを備え、
前記絶縁体は、
その先端が前記主体金具の先端よりも先端側に突出するとともに、
前記突部に、環状部材を介して係止される係止部を具備するスパークプラグであって、
前記絶縁体は、その先端から前記主体金具の先端より前記軸線方向後端側に1mmまでの範囲において、その外表面の十点平均粗さが20μm以上100μm以下とされるとともに、前記環状部材のうち前記絶縁体に接触する部位の先端から前記突部の先端までの範囲において、その外表面の十点平均粗さが20μm以下とされることを特徴とする。
上記構成1によれば、絶縁体のうち、その先端から主体金具の先端より軸線方向後端側に1mmまでの範囲に位置する部位(すなわち、エンジンの燃焼動作時に特に高温となる部位)は、その外表面の十点平均粗さが20μm以上とされている。すなわち、絶縁体の表面には微小ながらも凹凸が存在し、数多の突起が形成されているところ、前記突起のうち絶縁体の先端部に位置するものは、その高さが比較的大きなものとされている。従って、エンジンの燃焼動作時に絶縁体の先端部が特に高温となるという点も相俟って、エンジンの燃焼動作時に、絶縁体の先端部に位置する前記突起を非常に高温とすることができる。その結果、絶縁体の先端部に付着したカーボンを効果的に焼き切ることができ、優れた耐汚損性を実現することができる。
加えて、上記構成1によれば、絶縁体のうち、その先端から主体金具の先端より軸線方向後端側に1mmまでの範囲に位置する部位は、その外表面の十点平均粗さが100μm以下とされている。従って、絶縁体の先端部(突起同士の間)に対してカーボンが過度に付着してしまうことをより確実に防止できる。その結果、耐汚損性を一層向上させることができる。
さらに、上記構成1によれば、絶縁体は、環状部材のうち絶縁体に接触する部位の先端から突部の先端までの範囲において、その外表面の十点平均粗さが20μm以下とされている。すなわち、絶縁体のうちエンジンの燃焼動作時にさほど高温とならない部位については、表面粗さを大きくすることによるカーボンの焼き切り効果がさほど得られないため、表面粗さを小さくすることで、カーボンの付着自体を抑制するように構成されている。これにより、上記作用効果(絶縁体のうち特に高温となる部位ではカーボンを積極的に焼き切ること)と相俟って、非常に優れた耐汚損性を得ることができる。
尚、前記突起は、エンジンの燃焼動作時には非常に高温となるが、その高さが十分に大きいことから、燃焼後には、速やかに放熱されることとなる。従って、絶縁体の先端部の熱は速やかに引かれることとなるため、絶縁体先端部の過熱に伴うプレイグニッション(早期着火)の発生を十分に防止することができる。
構成.本構成のスパークプラグは、上記構成1において、前記絶縁体は、前記係止部の先端から先端側に延びる脚長部を有し、
前記軸線に沿った前記脚長部の長さが12mm以下とされることを特徴とする。
脚長部が短い場合には、絶縁体の先端部の熱が主体金具等へと速やかに引かれるため、絶縁体の先端部は高温となりにくい。従って、カーボンを焼き切る効果が不十分となりやすく、良好な耐汚損性を確保することが難しい。
この点、上記構成1を採用することで、脚長部が短く、良好な耐汚損性を確保することが難しい場合であっても、カーボンを十分に焼き切ることができ、優れた耐汚損性を実現することができる。換言すれば、上記構成1は、脚長部の長さが12mm以下とされ、耐汚損性の低下がより懸念される場合において、特に有意である。
構成.本構成のスパークプラグは、上記構成1又は2において、前記絶縁体の先端から前記主体金具の先端までの前記軸線に沿った距離が3.5mm以上とされることを特徴とする。
上記構成によれば、絶縁体の先端から主体金具の先端までの軸線に沿った距離が3.5mm以上とされている。従って、エンジンの燃焼動作時において、絶縁体の先端部をより一層高温とすることができる。その結果、上記構成1による作用効果を一層効果的に発揮させることができ、より一層優れた耐汚損性を実現することができる。
構成.本構成のスパークプラグは、上記構成1乃至のいずれかにおいて、前記主体金具は、その外周部に取付用のねじ部を有しており、
前記ねじ部のねじ径がM12以下とされることを特徴とする。
上記構成によれば、ねじ径(主体金具)の小径化に伴い、絶縁体先端部の体積が比較的小さなものとなる。従って、エンジンの燃焼動作時において、絶縁体の先端部をより一層高温とすることができる。その結果、上記構成1による作用効果をより効果的に発揮させることができ、耐汚損性の更なる向上を図ることができる。
スパークプラグの構成を示す一部破断正面図である。 スパークプラグの先端部の構成を示す一部破断拡大正面図である。 別の実施形態における環状部材の構成等を示す拡大断面図である。
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、スパークプラグ1を示す一部破断正面図である。尚、図1では、スパークプラグ1の軸線CL1方向を図面における上下方向とし、下側をスパークプラグ1の先端側、上側を後端側として説明する。
スパークプラグ1は、筒状をなす絶縁体としての絶縁碍子2、これを保持する筒状の主体金具3などから構成されるものである。
絶縁碍子2は、周知のようにアルミナ等を焼成して形成されており、その外形部において、後端側に形成された後端側胴部10と、当該後端側胴部10よりも先端側において径方向外向きに突出形成された大径部11と、当該大径部11よりも先端側においてこれよりも細径に形成された中胴部12と、当該中胴部12よりも先端側においてこれよりも細径に形成された脚長部13とを備えている。加えて、絶縁碍子2のうち、大径部11、中胴部12、及び、大部分の脚長部13は、主体金具3の内部に収容されている。そして、中胴部12と脚長部13との連接部には、先端側に向けて先細るテーパ状の係止部14が形成されており、当該係止部14にて絶縁碍子2が主体金具3に係止されている。
さらに、本実施形態では、軸線CL1に沿った脚長部13の長さXが12mm以下とされており、内燃機関等の燃焼動作時における、絶縁碍子2(脚長部13)の先端部の過熱が抑制されるようになっている。尚、軸線CL1を含む断面において、係止部14から脚長部13にかけての外形線が湾曲線状をなす場合、係止部14の外形線のうち直線状の部分を延長した仮想線と、脚長部13の後端側の外形線のうち直線状の部分を延長した仮想線との交点が、脚長部13及び係止部14の境界となり、当該境界から絶縁碍子2の先端までの軸線CL1に沿った長さが、脚長部13の長さXとなる。
加えて、絶縁碍子2には、軸線CL1に沿って延びる軸孔4が貫通形成されており、当該軸孔4の先端側には中心電極5が挿設されている。中心電極5は、熱伝導性に優れる金属〔例えば、銅や銅合金、純ニッケル(Ni)等〕からなる内層5Aと、Niを主成分とする合金からなる外層5Bとを備えている。また、中心電極5は、全体として棒状(円柱状)をなし、その先端部分が絶縁碍子2の先端から突出している。尚、本実施形態では、耐久性の向上を図るべく、中心電極5の先端部に、耐消耗性に優れる金属〔例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、又は、これらの少なくとも一種を主成分とする合金など〕からなる円柱状のチップ31が設けられている。
加えて、軸孔4の後端側には、絶縁碍子2の後端から突出した状態で端子電極6が挿入、固定されている。
さらに、軸孔4の中心電極5と端子電極6との間には、円柱状の抵抗体7が配設されている。当該抵抗体7の両端部は、導電性のガラスシール層8,9を介して、中心電極5と端子電極6とにそれぞれ電気的に接続されている。
加えて、前記主体金具3は、低炭素鋼(例えば、S25C等)などの金属により筒状に形成されており、その外周面にはスパークプラグ1を内燃機関等に取付けるためのねじ部(雄ねじ部)15が形成されている。また、ねじ部15の後端側には座部16が外周側に向けて突出形成されており、ねじ部15後端のねじ首17にはリング状のガスケット18が嵌め込まれている。さらに、主体金具3の後端側には、主体金具3を内燃機関等に取付ける際にレンチ等の工具を係合させるための断面六角形状の工具係合部19が設けられている。また、主体金具3の後端部には、径方向内側に向けて屈曲する加締め部20が設けられている。
さらに、主体金具3の内周には、径方向内側に突出するとともに、軸線CL1を中心とする環状をなす突部21が設けられている。そして、絶縁碍子2は、主体金具3に対してその後端側から先端側に向かって挿入され、自身の係止部14が環状をなす金属製の環状部材22を介して主体金具3の突部21に係止された状態で、主体金具3の後端側の開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって主体金具3に固定されている。係止部14及び突部21間に設けられた前記環状部材22によって、燃焼室内の気密性が保持され、燃焼室内に晒される絶縁碍子2の脚長部13と主体金具3の内周面との隙間に入り込む燃料ガスが外部に漏れないようになっている。尚、環状部材22は、必ずしも厳密な環状(閉じた環状)である必要はなく、例えば、径方向に延びる切欠きを有すること等により、一部が開口していてもよい。
さらに、加締めによる密閉をより完全なものとするため、主体金具3の後端側においては、主体金具3と絶縁碍子2との間に環状のリング部材23,24が介在され、リング部材23,24間には滑石(タルク)25の粉末が充填されている。すなわち、主体金具3は、環状部材22、リング部材23,24及び滑石25を介して絶縁碍子2を保持している。
また、図2に示すように、主体金具3の先端部26には、自身の中間部分にて曲げ返されて、自身の先端側側面が中心電極5の先端部と対向する接地電極27が接合されている。加えて、中心電極5の先端部(チップ31)と接地電極27の先端部との間には、火花放電間隙28が形成されており、当該火花放電間隙28において、軸線CL1にほぼ沿った方向で火花放電が行われるようになっている。
さらに、本実施形態において、絶縁碍子2は、その先端から主体金具3の先端より軸線CL1方向後端側に1mmまでの範囲RFにおいて、その外表面の十点平均粗さが20μm以上100μm以下(より好ましくは、40μm以上75μm以下)とされている。尚、十点平均粗さ(Rz)は、JIS B0601に規定されるものである。
また、絶縁碍子2は、環状部材22のうち絶縁碍子2に接触する部位の先端22Eから突部21の先端21Eまでの範囲RBにおいて、その外表面の十点平均粗さが20μm以下(より好ましくは、15μm以下)とされている。すなわち、内燃機関等の動作に伴いカーボンが付着する脚長部13のうち、その先端部の表面粗さは比較的大きなものとされる一方で、その後端部の表面粗さは十分に小さなものとされている。尚、本実施形態において、脚長部13のうち範囲RF及び範囲RB外に位置する部位における外表面の十点平均粗さは、比較的小さなもの(例えば、20μm以下)とされている。
また、絶縁碍子2は、筒状のゴム型を有するラバープレス成型機(図示せず)を用いて成形体を得た上で、所定の砥石により前記成形体の外周を整形するとともに、整形されたものを焼成することで得ることができる。そして、絶縁碍子2の表面粗さは、例えば、前記砥石の仕様などを変更することで調節することができる。
加えて、本実施形態では、絶縁碍子2の先端から主体金具3の先端までの軸線CL1に沿った距離Yが3.5mm以上とされている。
さらに、本実施形態においては、スパークプラグ1の小型化(小径化)を図るべく、主体金具3が小径化されており、ねじ部15のねじ径はM12以下とされている。これにより、絶縁碍子2の先端部(絶縁碍子2のうち前記範囲RFに位置する部位)の体積は比較的小さなものとなっている。
以上詳述したように、本実施形態によれば、絶縁碍子2のうち、前記範囲RFに位置する部位(すなわち、エンジンの燃焼動作時に特に高温となる部位)は、その外表面の十点平均粗さが20μm以上とされている。すなわち、絶縁碍子2の表面には微小ながらも凹凸が存在し、数多の突起が形成されているところ、前記突起のうち絶縁碍子2の先端部に位置するものは、その高さが比較的大きなものとされている。従って、エンジンの燃焼動作時に絶縁碍子2の先端部が特に高温となるという点も相俟って、エンジンの燃焼動作時に、絶縁碍子2の先端部に位置する前記突起を非常に高温とすることができる。その結果、絶縁碍子2の先端部に付着したカーボンを効果的に焼き切ることができ、優れた耐汚損性を実現することができる。
加えて、絶縁碍子2のうち、前記範囲RFに位置する部位は、その外表面の十点平均粗さが100μm以下とされている。従って、絶縁碍子2の先端部(突起同士の間)に対してカーボンが過度に付着してしまうことをより確実に防止できる。その結果、耐汚損性を一層向上させることができる。
さらに、本実施形態では、絶縁碍子2のうち、前記範囲RBに位置する部位は、その外表面の十点平均粗さが20μm以下とされている。すなわち、絶縁碍子2のうちエンジンの燃焼動作時にさほど高温とならない部位については、表面粗さを大きくすることによるカーボンの焼き切り効果がさほど得られないため、表面粗さを小さくすることで、カーボンの付着自体を抑制するように構成されている。従って、一層優れた耐汚損性を得ることができる。
また、本実施形態では、脚長部13の長さXが12mm以下とされているため、耐汚損性の低下が懸念されるが、絶縁碍子2の表面粗さを上述の構成とすることにより、良好な耐汚損性を確保することができる。
さらに、本実施形態では、前記距離Yが3.5mm以上とされているため、エンジンの燃焼動作時において、絶縁碍子2の先端部をより一層高温とすることができる。その結果、カーボンを一層確実に焼き切ることができ、より一層優れた耐汚損性を実現することができる。
また、ねじ部15のねじ径がM12以下とされており、これに伴い絶縁碍子2の先端部の体積が比較的小さなものとされている。従って、エンジンの燃焼動作時において、絶縁碍子2の先端部をより一層高温とすることができ、耐汚損性の更なる向上を図ることができる。
次いで、上記実施形態によって奏される作用効果を確認すべく、絶縁碍子のうち前記範囲RFに位置する部位における表面の十点平均粗さ(以下、「先端側表面粗さ」と称す)を種々変更したスパークプラグのサンプルを作製し、各サンプルについて、JIS D1606に基づく耐汚損性評価試験を行った。
耐汚損性評価試験の概要は次の通りである。すなわち、低温試験室内(−10℃)のシャシダイナモメータ上に排気量1.3L、4気筒、自然吸気、MPIエンジンを有する試験用自動車を置き、当該試験用自動車のエンジンに各サンプルを組み付ける。そして、空吹かしを3回行った後、3速35km/hで40秒間走行し、90秒間のアイドリングを挟んで、再度3速35km/hで40秒間走行する。その後、エンジンを一度停止・冷却させる。次いで、空吹かしを3回行った後、1速15km/hで20秒間走行することを、30秒間のエンジン停止を挟みつつ、合計3度行い、その後エンジンを停止させる。この一連のテストパターンを1サイクルとして、1サイクルごとに、サンプルにおける中心電極及び主体金具間の絶縁抵抗値を測定し、絶縁抵抗値が10MΩ以下となったサイクル数を求めた。ここで、絶縁抵抗値が10MΩ以下となったサイクル数(10MΩ到達サイクル数)が5サイクル以下であった場合には、耐汚損性が不十分であるとして「×」の評価を下すこととした。一方で、10MΩ到達サイクル数が6サイクル以上であった場合には、良好な耐汚損性を有するとして「○」の評価を下すこととした。表1に、当該試験の結果を示す。
尚、各サンプルともに、ねじ部のねじ径をM12とし、工具係合部の対辺寸法を14mmとし、絶縁碍子の先端から主体金具の先端までの距離Yを3.5mmとした。さらに、中心電極の先端部にIrを主成分とするチップ(Irチップ)を設けるとともに、火花放電間隙の大きさを1.0mmとした。また、各サンプルともに、同一の熱価を有するものとした。
Figure 0005913032
表1に示すように、先端側表面粗さを20μm以上100μm以下としたサンプルは、良好な耐汚損性を有することが明らかとなった。これは、次の(1)及び(2)によると考えられる。
(1)先端側表面粗さを20μm以上としたことで、絶縁碍子の先端部表面に形成された突起を非常に高温とすることができ、カーボンを効果的に焼き切ることができたこと。
(2)先端側表面粗さを100μm以下としたことで、絶縁碍子の先端部(突起同士の間)に対してカーボンが過度に付着してしまうことを防止できたこと。
また特に、先端側表面粗さを40μm以上75μm以下としたサンプルは、一層良好な耐汚損性を有することが確認された。
上記試験の結果より、良好な耐汚損性を実現すべく、先端側表面粗さを20μm以上100μm以下とすることが好ましいといえる。
また、耐汚損性をより向上させるべく、先端側表面粗さを40μm以上75μm以下とすることがより好ましいといえる。
次に、絶縁碍子のうち前記範囲RBに位置する部位における表面の十点平均粗さ(以下、「後端側表面粗さ」と称す)を種々変更したスパークプラグのサンプルを作製し、各サンプルについて、上述の耐汚損性評価試験を行った。尚、当該試験においては、10MΩ到達サイクル数が6サイクル以上8サイクル以下となった場合には、良好な耐汚損性を有するとして「○」の評価を下し、10MΩ到達サイクル数が9サイクル以上となった場合には、耐汚損性に極めて優れるとして「◎」の評価を下すこととした。表2に、当該試験の結果を示す。
尚、各サンプルともに、前記先端側表面粗さを50μmとした。また、ねじ部のねじ径をM12とし、工具係合部の対辺寸法を14mmとし、距離Yを3.5mmとし、火花放電間隙の大きさを1.0mmとした。加えて、各サンプルともに、中心電極にIrチップを設けるとともに、同一の熱価を有するものとした。
Figure 0005913032
表2に示すように、後端側表面粗さを20μm以下としたサンプルは、極めて優れた耐汚損性を有することが分かった。これは、絶縁碍子のうち前記範囲RBに位置する部位は高温となりにくく、表面粗さを大きくすることによる、カーボンの焼き切り効果がさほど得られないため、耐汚損性の面では、表面粗さを小さくし、カーボンの付着自体を抑制することの方が好ましいためであると考えられる。
また特に、後端側表面粗さを15μm以下としたサンプルは、10MΩ到達サイクル数が10サイクルとなり、一層優れた耐汚損性を有することが確認された。
上記試験の結果より、耐汚損性の更なる向上を図るべく、後端側表面粗さを20μm以下とすることがより好ましいといえる。
また、耐汚損性をさらに向上させるという観点から、後端側表面粗さを15μm以下とすることがより一層好ましいといえる。
次いで、先端側表面粗さを50μmとし、後端側表面粗さを15μmとした上で、脚長部の長さXを種々変更したスパークプラグのサンプル(実施例サンプル)と、先端側表面粗さを15μmとし、後端側表面粗さを25μmとした上で、脚長部の長さXを種々変更したスパークプラグのサンプル(比較例サンプル)とを作製し、各サンプルについて、上述の耐汚損性評価試験を行った。その後、脚長部の長さXを同一としたサンプルにおいて、比較例サンプルにおける10MΩ到達サイクル数に対する、実施例サンプルにおける10MΩ到達サイクル数の割合(改善率)を算出した。尚、改善率が高いほど、本発明を採用することによる効果が大きいといえる。表3に、当該試験の結果を示す。
尚、各サンプルともに、ねじ部のねじ径をM12とし、工具係合部の対辺寸法を14mmとし、距離Yを3.5mmとし、火花放電間隙の大きさを1.0mmとした。加えて、各サンプルともに、中心電極にIrチップを設けるとともに、同一の熱価を有するものとした。
Figure 0005913032
表3に示すように、脚長部の長さXを12mm以下としたサンプルは、改善率が2.0を上回り、脚長部の長さXを12mm以下とした場合において、本発明を採用することが特に好ましいことが分かった。これは、通常、脚長部が短いほど、絶縁碍子の先端部は冷えやすく、カーボンは焼き切れにくいが、本発明の構成としたことにより、脚長部が短い場合であっても、カーボンを十分に焼き切れたためであると考えられる。
上記試験の結果より、脚長部の長さXが12mm以下とされ、耐汚損性の低下がより懸念されるスパークプラグにおいて、本発明が特に有効であるといえる。
次に、先端側表面粗さを50μmとし、後端側表面粗さを15μmとした上で、前記距離Yを種々変更したスパークプラグのサンプル(実施例サンプル)と、先端側表面粗さを15μmとし、後端側表面粗さを25μmとした上で、距離Yを種々変更したスパークプラグのサンプル(比較例サンプル)とを作製し、各サンプルについて、上述の耐汚損性評価試験を行うとともに、改善率を算出した。表4に、当該試験の結果を示す。
尚、各サンプルともに、ねじ部のねじ径をM12とし、工具係合部の対辺寸法を14mmとし、火花放電間隙の大きさを1.0mmとした。また、各サンプルともに、中心電極にIrチップを設けるとともに、同一の熱価を有するものとした。
Figure 0005913032
表4に示すように、距離Yを3.5mm以上としたサンプルは、改善率が2.0以上となり、本発明による効果が特に大きいことが分かった。これは、距離Yを3.5mm以上としたことで、絶縁碍子の先端部が一層高温となり、その結果、先端側表面粗さを比較的大きくすることによるカーボンの焼き切り効果がより顕著に発揮されたためであると考えられる。
上記試験の結果より、距離Yが3.5mm以上とされ、絶縁碍子の先端部がより高温となりやすいスパークプラグにおいて、本発明が特に効果的であるといえる。
次いで、先端側表面粗さを50μmとし、後端側表面粗さを15μmとした上で、ねじ部のねじ径を種々変更したスパークプラグのサンプル(実施例サンプル)と、先端側表面粗さを15μmとし、後端側表面粗さを25μmとした上で、ねじ部のねじ径を種々変更したスパークプラグのサンプル(比較例サンプル)とを作製し、各サンプルについて、上述の耐汚損性評価試験を行うとともに、改善率を算出した。表5に、当該試験の結果を示す。
尚、各サンプルともに、工具係合部の対辺寸法を14mmとし、火花放電間隙の大きさを1.0mmとした。加えて、各サンプルともに、中心電極にIrチップを設けるとともに、同一の熱価を有するものとした。また、ねじ径の変更に合わせて絶縁碍子等のサイズを変更した。
Figure 0005913032
表5に示すように、ねじ部のねじ径をM12以下としたサンプルは、改善率が2.0以上となり、本発明による効果が特に大きいことが明らかとなった。これは、ねじ径の減少に伴い絶縁碍子の先端部の体積が小さくなったことで、絶縁碍子の先端部がより高温となり、その結果、先端側表面粗さを比較的大きくすることによるカーボンの焼き切り効果が一層効果的に発揮されたためであると考えられる。
上記試験の結果より、ねじ部のねじ径がM12以下とされたスパークプラグにおいて、本発明が特に効果的であるといえる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態において、環状部材22のうち絶縁碍子2に接触する部位の先端22Eは係止部14に接触しているが、必ずしも係止部14に接触していなくてもよい。従って、例えば、図3に示すように、環状部材42のうち絶縁碍子2に接触する部位の先端42Eが、係止部14よりも先端側に位置していてもよい。
(b)上記実施形態では、主体金具3の先端部26に接地電極27が接合される場合について具体化しているが、主体金具の一部(又は、主体金具に予め溶接してある先端金具の一部)を削り出すようにして接地電極を形成する場合についても適用可能である(例えば、特開2006−236906号公報等)。
(c)上記実施形態では、工具係合部19は断面六角形状とされているが、工具係合部19の形状に関しては、このような形状に限定されるものではない。例えば、Bi−HEX(変形12角)形状〔ISO22977:2005(E)〕等とされていてもよい。
1…スパークプラグ、2…絶縁碍子(絶縁体)、3…主体金具、4…軸孔、5…中心電極、13…脚長部、14…係止部、15…ねじ部、21…突部、CL1…軸線。

Claims (4)

  1. 軸線方向に延びる軸孔を有する筒状の絶縁体と、
    前記軸孔の先端側に挿設される中心電極と、
    前記絶縁体の外周に設けられ、径方向内側に突出する突部を有する筒状の主体金具とを備え、
    前記絶縁体は、
    その先端が前記主体金具の先端よりも先端側に突出するとともに、
    前記突部に、環状部材を介して係止される係止部を具備するスパークプラグであって、
    前記絶縁体は、その先端から前記主体金具の先端より前記軸線方向後端側に1mmまでの範囲において、その外表面の十点平均粗さが20μm以上100μm以下とされるとともに、前記環状部材のうち前記絶縁体に接触する部位の先端から前記突部の先端までの範囲において、その外表面の十点平均粗さが20μm以下とされることを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記絶縁体は、前記係止部の先端から先端側に延びる脚長部を有し、
    前記軸線に沿った前記脚長部の長さが12mm以下とされることを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグ。
  3. 前記絶縁体の先端から前記主体金具の先端までの前記軸線に沿った距離が3.5mm以上とされることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
  4. 前記主体金具は、その外周部に取付用のねじ部を有しており、
    前記ねじ部のねじ径がM12以下とされることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
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