JP2002175863A - スパークプラグ - Google Patents

スパークプラグ

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JP2002175863A
JP2002175863A JP2001195247A JP2001195247A JP2002175863A JP 2002175863 A JP2002175863 A JP 2002175863A JP 2001195247 A JP2001195247 A JP 2001195247A JP 2001195247 A JP2001195247 A JP 2001195247A JP 2002175863 A JP2002175863 A JP 2002175863A
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JP
Japan
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component
insulator
glaze
mol
glaze layer
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JP2001195247A
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English (en)
Inventor
Kenichi Nishikawa
倹一 西川
Yoshihide Takashita
義秀 高下
Makoto Sugimoto
誠 杉本
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Niterra Co Ltd
Original Assignee
NGK Spark Plug Co Ltd
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01TSPARK GAPS; OVERVOLTAGE ARRESTERS USING SPARK GAPS; SPARKING PLUGS; CORONA DEVICES; GENERATING IONS TO BE INTRODUCED INTO NON-ENCLOSED GASES
    • H01T13/00Sparking plugs
    • H01T13/20Sparking plugs characterised by features of the electrodes or insulation
    • H01T13/38Selection of materials for insulation
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03CCHEMICAL COMPOSITION OF GLASSES, GLAZES OR VITREOUS ENAMELS; SURFACE TREATMENT OF GLASS; SURFACE TREATMENT OF FIBRES OR FILAMENTS MADE FROM GLASS, MINERALS OR SLAGS; JOINING GLASS TO GLASS OR OTHER MATERIALS
    • C03C8/00Enamels; Glazes; Fusion seal compositions being frit compositions having non-frit additions
    • C03C8/02Frit compositions, i.e. in a powdered or comminuted form
    • C03C8/04Frit compositions, i.e. in a powdered or comminuted form containing zinc
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03CCHEMICAL COMPOSITION OF GLASSES, GLAZES OR VITREOUS ENAMELS; SURFACE TREATMENT OF GLASS; SURFACE TREATMENT OF FIBRES OR FILAMENTS MADE FROM GLASS, MINERALS OR SLAGS; JOINING GLASS TO GLASS OR OTHER MATERIALS
    • C03C8/00Enamels; Glazes; Fusion seal compositions being frit compositions having non-frit additions
    • C03C8/02Frit compositions, i.e. in a powdered or comminuted form
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Pb成分の含有量が少なく、しかも絶縁体と
ゴムキャップ内面との密着性を良好に確保でき、ひいて
は絶縁性及び耐フラッシュオーバ性に優れた釉薬層を有
したスパークプラグを提供する。 【解決手段】 抵抗体入りスパークプラグ100は、ア
ルミナ系の絶縁体2の表面に形成された釉薬層2dが、
Pb成分の含有量がPbO換算にて1mol%以下とさ
れ、Si成分、B成分、Zn成分及び/又はアルカリ土
類金属成分、ならびにアルカリ金属成分を含有する。ま
た、前記絶縁体には、軸線方向中間位置においてその外
周面に周方向の突出部が形成され、該軸線方向において
前記中心電極の先端に向かう側を前方側として、前記突
出部に対し後方側に隣接する絶縁体本体部の基端部外周
面が円筒面状に形成され、前記釉薬層はその基端部外周
面を覆う形で形成され、かつ該基端部外周面にてJI
S:B0601に規定された方法に従い測定した前記釉
薬層の表面粗さ曲線においてその最大高さRyが10μ
m以下とされている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はスパークプラグに関
する。
【0002】
【従来の技術】自動車エンジン等の内燃機関の点火用に
使用されるスパークプラグは、一般に、接地電極が取り
付けられる主体金具の内側に、アルミナ系セラミック等
で構成された絶縁体が配置され、その絶縁体の内側に中
心電極が配置された構造を有する。絶縁体は主体金具の
後方側開口部から軸方向に突出し、その突出部の内側に
端子金具が配置され、これがガラスシール工程により形
成される導電性ガラスシール層や抵抗体等を介して中心
電極と接続される。そして、その端子金具を介して高圧
を印加することにより、接地電極と中心電極との間に形
成されたギャップに火花放電が生ずることとなる。
【0003】ところが、プラグ温度が高くなったり、周
囲の湿度が上昇したりするなどの条件が重なると、高圧
印加してもギャップに飛火せず、絶縁体突出部の表面を
回り込む形で端子金具と主体金具との間で放電する、い
わゆるフラッシュオーバ現象が生じることがある。その
ため、一般に使用されているほとんどのスパークプラグ
においては、主にこのフラッシュオーバ現象防止のため
に絶縁体表面に釉薬層が形成されている。他方、釉薬層
は、絶縁体表面を平滑化して汚染を防止したり、化学的
あるいは機械的強度を高めたりするといった役割も果た
す。
【0004】スパークプラグ用のアルミナ系絶縁体の場
合、従来は、例えば、特開平8−279099号公報に
記載されているように、ケイ酸塩ガラスに比較的多量の
PbOを配合して軟化温度を低下させた鉛ケイ酸塩ガラ
ス系の釉薬が使用されてきた。しかしながら、有鉛釉薬
の場合は、高電圧でPbがPbやPbに変
化し、絶縁抵抗が急速に低下するため、耐フラッシュオ
ーバー電圧が劣化する。また、環境保護に対する関心が
地球規模で高まりつつある近年では、Pbを含有する釉
薬は次第に敬遠されるようになってきている。例えばス
パークプラグが多量に使用される自動車業界において
は、廃棄スパークプラグによる環境への影響を考慮し
て、Pb含有釉薬を使用したスパークプラグの使用は将
来全廃しようとの検討も進められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、そのよ
うなPb含有釉薬の代替品として従来検討されている硼
珪酸ガラスやアルカリ硼珪酸ガラス系の無鉛釉薬は、ガ
ラス軟化点が高かったり、あるいは絶縁抵抗が不足した
りする等の不具合が避けがたかった。また、スパークプ
ラグ用の釉薬の場合、エンジンに取り付けた環境下で使
用されることもあって、通常の絶縁磁器等よりも温度が
上昇しやすく、また、近年ではエンジンの高性能化に伴
いスパークプラグへの印加電圧も高くなってきているこ
とから、釉薬に対してもより厳しい環境に耐えうる絶縁
性能が求められるようになってきている。他方、自動車
エンジン等では、ゴムキャップを用いてスパークプラグ
をエンジン電装系に取り付ける方式が一般に広く採用さ
れているが、耐フラッシュオーバ性を向上させるために
は、絶縁体とゴムキャップ内面との密着性が重要であ
る。
【0006】本発明の課題は、Pb成分の含有量が少な
く、しかも絶縁体とゴムキャップ内面との密着性を良好
に確保でき、ひいては絶縁性及び耐フラッシュオーバ性
に優れた釉薬層を有したスパークプラグを提供すること
にある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】本発明の
スパークプラグは、中心電極と主体金具との間にアルミ
ナ系セラミックからなる絶縁体を配したスパークプラグ
において、その絶縁体の表面の少なくとも一部を覆う釉
薬層が形成され、その第一の構成は、該釉薬層が、Pb
成分の含有量がPbO換算にて1mol%以下とされ、
SiOに酸化物換算した値にて5〜60mol%のS
i成分と、Bに酸化物換算した値にて3〜50m
ol%のB成分とからなる第一成分を35〜80mol
%と、Zn成分とアルカリ土類金属成分R(ただし、R
はCa、Sr、Baから選ばれる1種又は2種以上)と
の少なくともいずれかからなる第二成分とを、ZnはZ
nОに、Rは組成式RОに酸化物換算した値にて合計で
12〜60mol%とを含有するとともに、それら第一
成分と第二成分との合計含有量が65〜98mol%で
あり、かつ、Zn成分と、Ba成分及び/又はSr成分
とは、Zn成分はZnO、Ba成分はBaO、Sr成分
はSrOにそれぞれ酸化物換算した値にて、合計で12
〜30mol%とされ、また、アルカリ金属成分とし
て、NaはNaO、KはKO、LiはLiOに酸
化物換算した値にて、それらの1種又は2種以上を合計
で2〜15mol%の範囲にて含有するものであり、ま
た、絶縁体には、軸線方向中間位置においてその外周面
に周方向の突出部が形成され、該軸線方向において中心
電極の先端に向かう側を前方側として、突出部に対し後
方側に隣接する絶縁体本体部の基端部外周面が円筒面状
に形成され、釉薬層はその基端部外周面を覆う形で形成
され、かつ該基端部外周面にてJIS:B0601に規
定された方法に従い測定した釉薬層の表面粗さ曲線にお
いてその最大高さRyが10μm以下とされていること
を特徴とする。
【0008】また、第二の構成は、釉薬層が、Pb成分
の含有量がPbO換算にて1mol%以下とされ、Si
に酸化物換算した値にて5〜60mol%のSi成
分と、Bに酸化物換算した値にて3〜50mol
%のB成分とからなる第一成分を35〜80mol%
と、Zn成分とアルカリ土類金属成分R(ただし、Rは
Ca、Sr、Baから選ばれる1種又は2種以上)との
少なくともいずれかからなる第二成分とを、ZnはZn
Оに、Rは組成式RОに酸化物換算した値にて合計で1
0〜60mol%とを含有するとともに、それら第一成
分と第二成分との合計含有量が65〜98mol%であ
り、かつ、Zn成分と、Ba成分及び/又はSr成分と
は、Zn成分はZnO、Ba成分はBaO、Sr成分は
SrOにそれぞれ酸化物換算した値にて、合計で10〜
30mol%とされ、また、Bi及びSbの少なくとも
1種を流動性改善成分として、BiはB に、Sb
はSbにそれぞれ酸化物換算した値にて合計で
0.5〜5mol%含有し、さらに、アルカリ金属成分
として、NaはNaO、KはKO、LiはLi
に酸化物換算した値にて、それらの1種又は2種以上を
合計で2〜15mol%の範囲にて含有するものであ
り、また、絶縁体には、軸線方向中間位置においてその
外周面に周方向の突出部が形成され、該軸線方向におい
て中心電極の先端に向かう側を前方側として、突出部に
対し後方側に隣接する絶縁体本体部の基端部外周面が円
筒面状に形成され、釉薬層はその基端部外周面を覆う形
で形成され、かつ該基端部外周面にてJIS:B060
1に規定された方法に従い測定した釉薬層の表面粗さ曲
線においてその最大高さRyが10μm以下とされてい
ることを特徴とする。
【0009】上記本発明は、使用する釉薬層が、Pb成
分の含有量がPbO換算にて1.0mol%以下とする
ことを前提とする(以下、このレベルにPb成分含有量
が低減された釉薬層を無鉛釉薬層と称する)。前述のよ
うに、釉薬層中にPb成分が価数の低いイオン(例えば
Pb2+)の形で含有されていると、コロナ放電等によ
りこれが価数の高いイオン(例えばPb3+)に酸化さ
れ、釉薬層の絶縁性が低下して耐フラッシュオーバ性が
損なわれる場合がある。また、前述の環境問題への適合
性を図るため、Pb含有量を上記のように削減すること
はこの観点においても好都合である。なお、Pbの含有
量は望ましくは0.1mol%以下、より望ましくは実
質的に含有しない(ただし、釉薬原料等から不可避的に
混入するものを除く)のがよい。
【0010】そして、本発明では、Pb含有量を上記の
ように低減しつつ、釉薬層の表面を平滑にしてゴムキャ
ップとの密着性を向上し、絶縁性能を確保するために、
上記の第一の構成もしくは第二の構成の組成を選択しつ
つ、前記のごとく、絶縁体本体部の基端部外周面におい
て最大高さRyが10μm以下となるように釉薬層の表
面粗さを規定している。
【0011】自動車エンジン等では、ゴムキャップを用
いてスパークプラグをエンジン電装系に取り付ける方式
が一般に広く採用されているが、耐フラッシュオーバ性
を向上させるためには、前述の通り絶縁体とゴムキャッ
プ内面との密着性が重要である。本発明者らが鋭意検討
したところ、硼珪酸ガラス系あるいはアルカリ硼珪酸ガ
ラス系の無鉛釉薬層においては、密着性の良好な釉焼面
を得る上で、釉薬層の表面粗さが重要であることがわか
った。そして、上記絶縁体本体部の基端部外周面は、特
にゴムキャップとの密着性が求められることから、表面
粗さの調整を適切に行わなければ、耐フラッシュオーバ
性等を十分に確保できなくなることが判明した。そこ
で、本発明のスパークプラグにおいては、上記組成の無
鉛釉薬層を有する絶縁体において、本体部の基端部外周
面を覆う釉薬層の表面粗さを上記数値範囲に設定するこ
とにより、釉薬層の絶縁性を低下させることなく釉焼面
とゴムキャップとの密着性が高められ、ひいては耐フラ
ッシュオーバ性を向上させることができる。
【0012】絶縁体の当該部位における釉薬層の表面粗
さ曲線において、その最大高さRyが10μmよりも大
きくなると、上記組成の無鉛釉薬層では均一で平滑な釉
焼面が形成されず、釉焼面とゴムキャップとの密着性が
損なわれて耐フラッシュオーバ性が不十分となる。最大
高さRyは、小さいほど密着性、即ち耐フラッシュオー
バ性の観点から好ましいが、過度にRyを小さくしよう
とすることは製造コストの高騰につながる場合もあるの
で、このような不具合が生じないような範囲にて最大高
さRyを定める(例えば、Ry≧0.5μm)。最大高
さRyは、より望ましくは1〜4μmとするのがよい。
なお、Ryの値は、JIS:B0601(1994)に
よる、定められた評価長さにて測定した粗さ曲線から、
その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取
り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の
方向に測定し、この値をマイクロメートル(μm)で表
したものをいう。評価長さ及び基準長さの選択は、JI
S:B0601(1994)の4.1.3に規定されて
いるごとくである。
【0013】絶縁体本体部の基端部外周面において、釉
薬層の表面粗さにおける最大高さRyが10μm以下と
なるように調整するためには、下地となる絶縁体本体部
の表面粗さにおいて、その最大高さRyが15〜35μ
mとなるように調整されていることが望ましい。絶縁体
本体部のRyが35μmを超えると、釉薬層の最大高さ
Ryを10μm以下に確保することが困難となる。他
方、絶縁体本体部のRyを15μm未満とすることは、
余分な精密研磨仕上げ工程が必要となり、工数の増加ひ
いてはコストアップにつながる。なお、絶縁体本体部の
表面粗さは、施釉前の絶縁体表面にて前記JISの規定
に従い測定可能であるが、施釉後においても、釉薬層付
の絶縁体を軸線を含む断面において画像処理により釉薬
層と絶縁体下地との境界線を確定し、その境界線を粗さ
プロファイルに代用することで、施釉前の絶縁体表面の
表面粗さを推定することができる。
【0014】絶縁体本体部の外周面後端部にはコルゲー
ション部が形成されていないことが好ましい。コルゲー
ション部には、凹凸があるため、ゴムキャップを装着し
た場合にゴムキャップとの間に隙間が生じやすく、ゴム
キャップと釉焼面との密着性を低下させ、耐フラッシュ
オーバ性の低下を招く場合がある。
【0015】また、本体部の基端部外周面を覆う釉薬層
の膜厚は10〜50μmとするのがよい。本発明者らが
鋭意検討したところ、硼珪酸ガラス系あるいはアルカリ
硼珪酸ガラス系の無鉛釉薬層においては、平滑な釉薬層
面を得る上で、釉薬層の膜厚調整が重要であることもわ
かった。そして、上記絶縁体本体部の基端部外周面は、
特にゴムキャップとの密着性が求められることから、膜
厚調整を適切に行えば、耐フラッシュオーバ性等を向上
できることが判明した。この範囲であると、釉薬層の絶
縁性を低下させることなく釉焼面とゴムキャップとの密
着性が高められ、さらに耐フラッシュオーバ性を向上さ
せることができる。
【0016】絶縁体の当該部位における釉薬層の厚さが
10μm未満になると、上記組成の無鉛釉薬層では均一
で平滑な釉焼面を形成することが困難となる場合がある
(ただし、下地となる絶縁体本体部の基端部外周面をバ
レル研磨等で平滑化できる場合はこの限りではない)。
また、釉薬層の厚さが50μmを超えると、上記組成の
無鉛釉薬層では絶縁性が低下し、同様に耐フラッシュオ
ーバ性低下につながる場合がある。また、絶縁体を立て
た状態で施釉する場合、釉薬スラリーの塗布・乾燥時あ
るいは釉焼時に釉薬ダレを起こしやすくなり、膜厚が下
方に向かうほど過剰となって、キャップ装着の困難を招
く惧れもある。釉薬層の厚さはより望ましくは10〜3
0μmとするのがよい。
【0017】本発明における釉薬層は酸化物を主体に構
成できる。そして、釉薬層構成成分の各含有量範囲の臨
界的意味は以下の通りである(特に断りのない限り、含
有量範囲の臨界的意味は第一の構成及び第二の構成に共
通である)。まず、Si成分含有量は、SiOに酸化
物換算した値にて5〜60mol%に設定される。該S
iO含有量が5mol%未満では、釉薬層のガラス化
が困難となり、均一な釉薬層の形成が不能となる。他
方、該Si成分含有量が60mol%を超えると、釉薬
の軟化点が上昇し、釉焼が困難あるいは不能となる。
【0018】また、B成分含有量は、Bに酸化物
換算した重量にて3〜50mol%に設定される。該B
成分含有量が3mol%未満になると、釉薬の軟化点が
上昇し、釉焼が困難あるいは不能となる。他方、B成分
含有量が50mol%を超えると、釉薬スラリーの耐水
性が不十分となるほか、釉薬層の失透や絶縁性の低下あ
るいは下地との熱膨張係数不適合といった問題が引き起
こされる場合がある。
【0019】Zn成分及び/又はアルカリ土類金属成分
R(ただし、RはCa、Sr、Baから選ばれる1種又
は2種以上)からなる第二成分の合計含有量は、Znは
ZnОに、Rは組成式RОに酸化物換算した値にて5〜
60mol%に設定される。該第二成分の合計含有量が
5mol%未満では、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温
度での釉焼が不能となる場合がある。また、釉薬層の熱
膨張係数が大きくなり過ぎ、釉薬層に貫入(クレージン
グ)等の欠陥が生じやすくなる場合がある。他方、第二
成分の合計含有量が60mol%を超えると、釉薬層の
失透が生じる場合がある。また、釉薬層の絶縁性が不十
分となり、耐フラッシュオーバ性が損なわれる場合があ
る。
【0020】また、本発明の釉薬層主要成分である上記
第一成分及び第二成分の合計含有量は、前記した酸化物
換算にて65〜98mol%に設定される。これらの合
計含有量が98mol%を超えると釉薬の軟化点が上昇
し、釉焼が不能となる場合がある。また、65mol%
未満では、絶縁性と軟化点及び熱膨張係数の調整とを両
立させることが困難となる。なお、該合計含有量は、望
ましくは70〜95mol%となっているのがよい。
【0021】そして、第一の構成においては、Zn成分
とBa及び/又はSr成分との合計含有量は、前記した
酸化物換算にて12〜30mol%となっている必要が
ある。これらの合計含有量が30mol%を超えると釉
薬層に白濁等を生じる。例えば、絶縁体の外面には、製
造者等を特定するための文字や図形あるいは品番などの
視覚情報を、色釉等を用いて印刷・焼付けすることが行
われているが、白濁等により、印刷された視覚情報の読
み取りが困難となる場合がある。また、12mol%未
満では、釉薬の軟化点が過度に上昇して釉焼が困難とな
り、また、外観不良の原因ともなりうる。なお、該合計
含有量は、望ましくは12〜20mol%となっている
のがよい。
【0022】他方、第二の構成では、Bi及び/又はS
bを流動性改善成分として、これを合計で0.5〜5m
ol%含有することを必須とする。流動性改善成分は、
いずれも釉焼時の流動性を高め、釉薬層中の気泡形成を
抑制したり、あるいは釉焼面の付着物を流動時に包み込
んで、異常突起となったりすることを防ぐ効果を有す
る。流動性改善成分の、酸化物換算した合計含有量が
0.5mol%未満では、釉焼時の流動性を改善して平
滑な釉薬層を得やすくする効果が必ずしも十分達成でき
なくなる場合がある。他方、5mol%を超えると、釉
薬の軟化点の、過度の上昇により釉焼が困難あるいは不
能となる場合がある。なお、Biは将来的に制限物質に
指定される可能性がある。
【0023】Sb及びBiは、5mol%を超える添加
量を採用したときに、釉薬層に過度の着色を生ずる場合
がある。例えば、絶縁体の外面には、製造者等を特定す
るための文字や図形あるいは品番などの視覚情報を、色
釉を用いて印刷することが行われているが、釉薬層の着
色があまり強くなりすぎると、印刷された視覚情報の読
み取りが困難となる場合がある。また、別の現実的な問
題としては、釉薬組成変更に由来する色調変化が、購買
者側では「使い慣れた外観色の理由なき変更」に映じ、
その抵抗感から必ずしもスムーズに製品が受け入れられ
ない、といった不具合も生じうる。
【0024】なお、釉薬層の下地を形成する絶縁体は、
本発明においては白色を呈するアルミナ系セラミックに
て構成されるが、着色の防止ないし抑制の観点において
は、絶縁体上に形成された状態にて観察した釉薬層の外
観色調が、彩度Csが0〜6、明度Vsが7.5〜10
となるように組成調整すること、例えば上記の遷移金属
成分の含有量を調整することが望ましい。彩度が6を超
えると、肉眼による色相識別性が顕著となり、また、明
度が7.5より小さくなると、灰色あるいは黒っぽい色
調が識別され易くなる。いずれも、外観上、「明らかに
色がついている」印象がぬぐいきれなくなる問題を生ず
る。なお、彩度Csは望ましくは0〜2、よりに望まし
くは0〜1とするのがよく、彩度Vsは望ましくは8〜
10、より望ましくは9〜10とするのがよい。本明細
書においては、明度VS及び彩度CSの測定方法について
は、JIS−Z8722「色の測定方法」において、
「4.分光測色方法」の「4.3反射物体の測定方法」
に規定された方法を用いるものとする。ただし、簡略な
方法として、JIS−Z8721に準拠して作成された
標準色票との目視比較により、明度及び彩度を知ること
もできる。
【0025】そして、該第二の構成では、上記の流動性
改善成分が上記範囲で含有される結果、Zn成分とBa
及び/又はSr成分との合計含有量は、やや少ない値に
なっていても必要十分な流動性を確保できる。その結
果、該合計含有量の下限値側の範囲が拡張可能となり、
請求項に記載した通り、10〜30mol%が最適の範
囲となる。
【0026】なお、Ba成分ないしSr成分は、釉薬層
の絶縁性向上に寄与するほか、強度の向上にも効果があ
る。その合計含有量が0.5mol%未満になると、釉
薬の絶縁性が低下し、耐フラッシュオーバー性が損なわ
れることにつながる。他方、合計含有量が30mol%
を超えると、釉薬層の熱膨張係数が高くなりすぎ、釉薬
層に貫入等の欠陥が生じやすくなる場合がある。また、
釉薬層に白濁等も生じやすくなる。Ba成分とSr成分
とは、いずれか一方を単独で含有させてもよいし、両者
を混合して含有してもよい。ただし、原料コスト的な面
においては、より安価なBa成分の使用が有利である。
【0027】なお、Ba成分及びSr成分は、使用原料
によっては釉薬中にて酸化物以外の形態で存在する場合
がある。例えば、BaSOをBa成分源として用いた
場合、S成分が釉薬層中に残留することがある。この硫
黄成分は釉焼時に釉薬層の表面近くに濃化して、溶融釉
薬の表面張力を低下させ、得られる釉薬層の平滑性を高
めることができる場合がある。また、Ca成分の含有量
は、CaОに酸化物換算した値にて0.5〜10mol
%となっていることが絶縁性向上の上で有効である。
【0028】次に、釉薬層中のアルカリ金属成分は釉薬
の軟化点を低下させる作用を有する。アルカリ金属成分
の合計含有量は、NaはNaO、KはKO、Liは
Li Oに酸化物換算した値にて、2〜15mol%に
設定される。その含有量が2mol%未満になると釉薬
の軟化点が上昇し、釉焼が不能となる場合がある。ま
た、15mol%を超えると、釉薬層の絶縁性が低下
し、耐フラッシュオーバー性が損なわれる場合がある。
アルカリ金属成分の含有量は、望ましくは3〜10mo
l%とするのがよい。
【0029】なお、アルカリ金属成分に関しては1種類
のアルカリ金属成分を単独添加するのではなく、Na、
K、Liから選ばれる2種類を共添加することが釉薬層
の絶縁性低下抑制に有効である。その結果、絶縁性をそ
れほど低下させずにアルカリ金属成分の含有量を増大さ
せることができ、結果として耐フラッシュオーバ性の確
保及び釉焼温度の低温化という2つの目的を同時に達成
することが可能となる。なお、アルカリ金属成分の共添
加による導電性抑制の効果が損なわれない範囲で、他の
アルカリ金属成分を配合することも可能である。なお、
絶縁性低下抑制のためには、各アルカリ金属成分の添加
量を5mol%以下とすることがより望ましく、特に望
ましくは、Na、K及びLiの3つの成分を全て含有させ
るのがよい。
【0030】さらに、上記釉薬層は、アルカリ金属成分
としてLi成分を含むことが好ましい。アルカリ金属成
分のうち、Li成分は、釉焼時の表面張力を低下して平
滑性を向上させ、表面粗さを小さくする効果がある。ま
た絶縁性改善のためのアルカリ共添加効果の発現と、釉
薬層の熱膨張係数調整、さらには機械的強度を向上させ
るため、なるべく含有させることが好ましい。Li成分
は、前記のように酸化物換算したモル含有量で、 0.2≦Li/(Na+K+Li)≦0.5 の範囲に設定することが好ましい。
【0031】Liの割合が0.2未満では、下地のアル
ミナに比べて熱膨張係数が大きくなりすぎ、その結果、
貫入(クレージング)等の欠陥が生じやすくなり、釉焼
面の仕上がり確保が不十分となる場合がある。一方、L
iの割合が0.5よりも大きくなると、Liイオンが、
アルカリ金属イオンの中でも比較的移動度が高いことか
ら、釉薬層の絶縁性能に悪影響を及ぼす場合がある。L
i/(Na+K+Li)の値は、より望ましくは0.3〜
0.45の範囲にて調整するのがよい。
【0032】以下、上記本発明にさらに付加可能な要件
について説明する。上記本発明の釉薬層には、上記説明
した成分以外にも、Alに酸化物換算した値にて
0.5〜10mol%のAl成分を含有させることがで
きる。Al成分は釉薬層の失透を抑制する効果を有す
る。添加量が上記の下限値未満では効果に乏しく、ま
た、上限値を超えた場合には、釉薬軟化点の過度の上昇
により釉焼が困難あるいは不能となる場合がある。
【0033】また、釉薬層には、Mo、Fe、W、N
i、Co及びMnの1種又は2種以上の成分を、Moは
MoO、FeはFe、WはWO、NiはNi
О、CoはCoО、MnはMnОにそれぞれ
酸化物換算した値にて合計で0.5〜5mol%の範囲
にて含有させることができる。これにより、釉焼時の流
動性が著しく高められ、ひいては比較的低温で釉焼可能
であって絶縁性に優れ、かつ平滑な釉焼面を有する釉薬
層を一層容易に得ることができる。
【0034】釉薬層中のMo、Fe、W、Ni、Co及
びMnの1種又は2種以上の成分(以下、流動性改善遷
移金属成分という)の、酸化物換算した合計含有量が
0.5mol%未満では、釉焼時の流動性改善効果が不
十分となり、平滑な釉薬層を得る上での効果が不十分と
なる。他方、5mol%を超えると、釉薬軟化点の過度
の上昇により釉焼が困難あるいは不能となる場合があ
る。また、流動性改善遷移金属成分の含有量が過剰とな
った場合の問題点として、前述のSbやBiと同様に、
釉薬層に意図せざる着色を生ずる場合があることが挙げ
られる。
【0035】また、Zr、Ti、Hf、Mg、Sn及び
Pの1種又は2種以上の成分を、ZrはZrOに、T
iはTiOに、MgはMgOに、SnはSnOに、
PはPにそれぞれ酸化物換算した値にて合計で
0.5〜5mol%の範囲で含有させることができる。
これらの成分は、各種目的に応じて積極的に添加するこ
ともできるし、原料(あるいは、後述する釉薬スラリー
の調製時に配合する粘土鉱物)や溶融工程における耐火
材等からの不純物(あるいはコンタミ)として不可避に
混入する場合もある。
【0036】これらの成分は、釉薬の軟化温度の調整
(例えばZrO、TiO、HfO )、絶縁性向上
(例えばZrOやMgO)、あるいは色調調整等のた
めに適宜配合することができる。また、Ti、Zrある
いはHfの配合により、耐水性が改善される。Zr成分
あるいはHf成分に関しては、釉薬層の耐水性改善効果
がTi成分に比して一層顕著である。なお、「耐水性が
良好」とは、例えば粉末状の釉薬原料を水等の溶媒とと
もに混合し、釉薬スラリーの形で長時間放置した場合
に、成分溶出による釉薬スラリーの粘性が高くなる不具
合を生じにくくなるということを意味する。その結果、
釉薬スラリーを絶縁体に塗布する場合に、その塗布厚さ
を適正化することが容易となり、また厚さのばらつきも
小さくなる。その結果、釉焼により形成される釉薬層の
厚さの適正化とばらつき低減とを効果的に図ることがで
きる。
【0037】なお、本発明のスパークプラグの構成にお
いては、釉薬層中における前記各成分は酸化物の形で含
有されることとなるが、非晶質のガラス相を形成するな
どの要因により、酸化物による存在形態を直接は同定で
きないことも多い。この場合は、釉薬層中における、前
記酸化物換算した値での元素成分の含有量が前述の範囲
のものとなっていれば、本発明の範囲に属するものとみ
なす。
【0038】ここで、絶縁体上に形成された釉薬層の各
成分の含有量は、例えばEPMA(電子プローブ微小分
析)やXPS(X線光電子分光)等の公知の微小分析方
法を用いて同定できる。例えばEPMAを用いる場合、
特性X線の測定には、波長分散方式とエネルギー分散方
式のいずれを用いてもよい。また、絶縁体から釉薬層を
剥離し、これを化学分析あるいはガス分析することによ
り組成同定する方法もある。
【0039】また、上記釉薬層を有する本発明のスパー
クプラグは、絶縁体の貫通孔内において、中心電極と一
体に、又は導電性結合層を間に挟んで中心電極と別体に
設けられた軸状の端子金具部を備えたものとして構成で
きる。この場合、該スパークプラグ全体を約500℃に
保持し、絶縁体を介して端子金具部と主体金具との間で
通電することにより絶縁抵抗値を測定することができ
る。そして、高温での絶縁耐久性を確保するために、こ
の絶縁抵抗値は200MΩ以上が確保されていること
が、フラッシュオーバ等の発生を防止する上で望まし
い。
【0040】絶縁抵抗値は具体的には、スパークプラグ
の端子金具側に直流定電圧電源(例えば電源電圧100
0V)を接続するとともに主体金具側を接地し、加熱炉
中にスパークプラグを配置して500℃に加熱した状態
で通電を行なう。例えば、電流測定用抵抗(抵抗値R
m)を用いて通電電流値Imを測定する場合を考えると、
通電電圧をVSとして、測定すべき絶縁抵抗値Rxは、
(VS/Im)−Rmにて求めることができる。通電電流
値Imは、例えば電流測定用抵抗の両端電圧差を増幅す
る差動増幅器の出力により測定可能である。
【0041】また、絶縁体は、Al成分をAl
酸化物換算した値にて85〜98mol%含有するアル
ミナ系絶縁材料で構成することができる。また、釉薬層
は、20〜350℃の温度範囲における釉薬層の平均の
熱膨張係数が、50×10 /℃〜85×10−7
℃の範囲のものとなっていることが望ましい。熱膨張係
数がこの下限値より小さくなっていると、釉薬層に亀裂
や釉飛び等の欠陥が生じやすくなる場合がある。他方、
熱膨張係数がこの上限値より大きくなっていると、釉薬
層に貫入等の欠陥が生じやすくなる。なお、上記熱膨張
係数は、より望ましくは60×10−7/℃〜80×1
−7/℃の範囲のものとなっているのがよい。
【0042】釉薬層の熱膨張係数は、釉薬層と略同一組
成となるように原料を配合・溶解して得たガラス質の釉
薬バルク体から試料を切り出し、これを用いて公知のデ
ィラトメータ法等により測定した値により推定すること
ができる。また、絶縁体上の釉薬層の熱膨張係数は、例
えばレーザー干渉計や原子間力顕微鏡等を用いて測定す
ることが可能である。
【0043】次に、上記本発明のスパークプラグは、以
下のような製造方法により製造することができる。すな
わち、該方法は、釉薬の各成分源となる成分源粉末を所
期の組成が得られるように配合して混合後、その混合物
を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融
物を急冷・ガラス化し粉砕したフリットを用いて釉薬粉
末を調製する釉薬粉末調製工程と、その釉薬粉末を絶縁
体の表面に堆積させて釉薬粉末堆積層を形成する釉薬粉
末堆積工程と、その絶縁体を焼成することにより、釉薬
粉末堆積層を絶縁体表面に焼き付けて釉薬層となす釉焼
工程と、を含む。
【0044】なお、各成分の成分源粉末としては、それ
ら成分の酸化物(複合酸化物でもよい)の他、水酸化
物、炭酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の各
種無機系材料粉末を使用できる。これら無機系材料粉末
は、いずれも加熱・溶融により酸化物に転化できるもの
を使用する必要がある。また、急冷は、溶融物を水中に
投じる方法の他、溶融物を冷却ロール表面に噴射してフ
レーク状の急冷凝固物を得る方法も採用できる。
【0045】釉薬粉末は、上記フリットを水又は溶媒中
に分散させた釉薬スラリーとして調製可能である。この
場合、釉薬スラリーを絶縁体表面に塗布し乾燥すること
で、釉薬粉末堆積層を該釉薬スラリーの塗布層として形
成できる。なお、釉薬スラリーを絶縁体表面に塗布する
方法としては、釉薬スラリーを噴霧ノズルから絶縁体表
面に噴霧する方法を用いると、均一な厚さの釉薬粉末堆
積層を簡単に形成でき、その塗布厚さの調整も容易であ
る。
【0046】釉薬スラリーには、形成した釉薬粉末堆積
層の形状保持力を高める目的で、適量の粘土鉱物や有機
バインダーを配合できる。粘土鉱物は、含水アルミノケ
イ酸塩を主体に構成されるものを使用でき、例えばアロ
フェン、イモゴライト、ヒシンゲライト、スメクタイ
ト、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、
イライト、バーミキュライト、ドロマイト等(あるいは
それらの合成物)の1種又は2種以上を主体とするもの
を使用できる。また、含有される酸化物系成分の観点に
おいては、SiO及びAlに加え、Fe
、TiO、CaO、MgO、NaO及びK
O等の1種又は2種以上を主に含有するものを使用する
ことができる。
【0047】本発明のスパークプラグは、絶縁体の軸方
向に形成された貫通孔に対し、その一方の端部側に端子
金具が固定され、同じく他方の端部側に中心電極が固定
されるとともに、該貫通孔内において端子金具と中心電
極との間に、それらを電気的に接合するための、主にガ
ラスと導電性材料との混合物からなる焼結導電材料部
(例えば導電性ガラスシール層や抵抗体)が形成された
ものとして構成できる。これを製造する場合、次のよう
な工程を含む方法を採用できる。 ・組立体製造工程:絶縁体の貫通孔に対し、その一方の
端部側に端子金具が配置され、同じく他方の端部側に中
心電極が配置されるとともに、該貫通孔内において端子
金具と中心電極との間に、ガラス粉末と導電性材料粉末
とを主体とする焼結導電材料原料粉末の充填層を形成し
た組立体を製造する。 ・釉焼工程:絶縁体の表面に釉薬粉末堆積層を形成した
状態の組立体を、800〜950℃の温度範囲に加熱し
て、釉薬粉末堆積層を絶縁体表面に焼き付けて釉薬層と
なす工程と、充填層中のガラス粉末を軟化させる工程と
を同時に行う。 ・プレス工程:その加熱された組立体において、貫通孔
内にて中心電極と端子金具とを相対的に接近させること
により、充填層をそれら中心電極と端子金具との間でプ
レスして焼結導電材料部となす。
【0048】この場合、焼結導電材料部により端子金具
と中心電極とが電気的に接合されるとともに、絶縁体貫
通孔の内面とそれら端子金具及び中心電極との間が封着
(シール)される。従って、上記釉焼工程がガラスシー
ル工程を形成することになる。該方法では、ガラスシー
ル工程と釉焼工程とが同時になされるので効率的であ
る。また、前述の釉薬層を用いるため釉焼温度を800
〜950℃と低くできるので、中心電極や端子金具の酸
化による製造不良が発生しにくく、スパークプラグの製
品歩留まりが向上する。ただし、釉焼工程を先に行って
おいて、その後にガラスシール工程を行うようにするこ
ともできる。
【0049】釉薬の軟化温度は、例えば600〜700
℃の範囲で調整するのがよい。軟化温度が700℃を超
えると、上記のようにガラスシール工程に釉焼工程を兼
用させる場合に950℃以上の釉焼温度が必要となり、
中心電極や端子金具の酸化が進みやすくなる。他方、軟
化温度が600℃未満になると、釉焼温度も800℃未
満の低温に設定する必要が生ずる。この場合、良好なガ
ラスシール状態が得られるよう、焼結導電材料部に使用
するガラスも軟化温度の低いものを使用しなければなら
なくなる。その結果、完成したスパークプラグが比較的
高温の環境下で長時間使用された場合に、焼結導電材料
部中のガラスが変質しやすくなり、例えば焼結導電材料
部が抵抗体を含む場合には、その負荷寿命特性などの性
能の劣化につながる場合がある。なお、釉薬層の軟化点
は、望ましくは520〜620℃の範囲で調整するのが
よい。
【0050】なお、釉薬層を構成する釉薬の軟化温度
は、例えば釉薬層を絶縁体から剥離して加熱しながら示
差熱分析を行い、屈状点を表す最初の吸熱ピークの次に
現われるピーク(すなわち第2番目に発生する吸熱ピー
ク)の温度をもって該軟化温度とする。また、釉薬の軟
化温度については、釉薬層中の各成分の含有量をそれぞ
れ分析して酸化物換算した組成を算出し、この組成とほ
ぼ等しくなるように、各被酸化元素成分の酸化物原料を
配合・溶解後、急冷してガラス試料を得、そのガラス試
料の軟化点をもって推定することもできる。
【0051】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に示すいくつかの実施例を参照して説明する。図1は、
本発明の第一の構成に係るスパークプラグの一実施例を
示す。該スパークプラグ100は、筒状の主体金具1、
先端部21が突出するようにその主体金具1の内側に嵌
め込まれた絶縁体2、先端に形成された発火部31を突
出させた状態で絶縁体2の内側に設けられた中心電極
3、及び主体金具1に一端が溶接等により結合されると
ともに他端側が側方に曲げ返されて、その側面が中心電
極3の先端部と対向するように配置された接地電極4等
を備えている。また、接地電極4には上記発火部31に
対向する発火部32が形成されており、それら発火部3
1と、対向する発火部32との間の隙間が火花放電ギャ
ップgとされている。
【0052】主体金具1は、低炭素鋼等の金属により円
筒状に形成されており、スパークプラグ100のハウジ
ングを構成するとともに、その外周面には、プラグ10
0を図示しないエンジンブロックに取り付けるためのね
じ部7が形成されている。なお、1eは、主体金具1を
取り付ける際に、スパナやレンチ等の工具を係合させる
工具係合部であり、六角状の軸断面形状を有している。
【0053】絶縁体2の軸方向には貫通孔6が形成され
ており、その一方の端部側から端子金具13が挿入・固
定され、同じく他方の端部側から中心電極3が挿入・固
定されている。また、該貫通孔6内において端子金具1
3と中心電極3との間に抵抗体15が配置されている。
この抵抗体15の両端部は、導電性ガラスシール層1
6,17を介して中心電極3と端子金具13とにそれぞ
れ電気的に接続されている。これら抵抗体15と導電性
ガラスシール層16,17とが焼結導電材料部を構成し
ている。なお、抵抗体15は、ガラス粉末と導電材料粉
末(及び必要に応じてガラス以外のセラミック粉末)と
の混合粉末を原料とし、後述のガラスシール工程におい
てこれを加熱・プレスすることにより得られる抵抗体組
成物で構成される。なお、抵抗体15を省略して、一層
の導電性ガラスシール層により端子金具13と中心電極
3とを直接接合した構成としてもよい。
【0054】絶縁体2は、内部に自身の軸方向に沿って
中心電極3を嵌め込むための貫通孔6を有し、全体が以
下の絶縁材料により構成されている。すなわち、該絶縁
材料はアルミナを主体に構成され、Al成分を、Al
に換算した値にて85〜98mol%(望ましくは
90〜98mol%)含有するアルミナ系セラミック焼
結体として構成される。
【0055】Al以外の成分の具体的な組成としては下
記のようなものを例示できる。 Si成分:SiO換算値で1.50〜5.00mol
%; Ca成分:CaO換算値で1.20〜4.00mol
%; Mg成分:MgO換算値で0.05〜0.17mol
%; Ba成分:BaO換算値で0.15〜0.50mol
%; B成分:B換算値で0.15〜0.50mol
%。
【0056】絶縁体2の軸方向中間には、周方向外向き
に突出する突出部2eが例えばフランジ状に形成されて
いる。そして、絶縁体2には、中心電極3(図1)の先
端に向かう側を前方側として、該突出部2eよりも後方
側がこれよりも細径に形成された本体部2bとされてい
る。一方、突出部2eの前方側にはこれよりも細径の第
一軸部2gと、その第一軸部2gよりもさらに細径の第
二軸部2iがこの順序で形成されている。なお、本体部
2bの外周面後端部にはコルゲーション部を形成させず
に、外周面全体が円筒状に形成されている。また、第一
軸部2gの外周面は略円筒状とされ、第二軸部2iの外
周面は先端に向かうほど縮径する略円錐面状とされてい
る。
【0057】他方、中心電極3の軸断面径は抵抗体15
の軸断面径よりも小さく設定されている。そして、絶縁
体2の貫通孔6は、中心電極3を挿通させる略円筒状の
第一部分6aと、その第一部分6aの後方側(図面上方
側)においてこれよりも大径に形成される略円筒状の第
二部分6bとを有する。端子金具13と抵抗体15とは
第二部分6b内に収容され、中心電極3は第一部分6a
内に挿通される。中心電極3の後端部には、その外周面
から外向きに突出して電極固定用凸部3cが形成されて
いる。そして、上記貫通孔6の第一部分6aと第二部分
6bとは、図2(a)の第一軸部2g内において互いに
接続しており、その接続位置には、中心電極3の電極固
定用凸部3cを受けるための凸部受け面6cがテーパ面
あるいはアール面状に形成されている。
【0058】また、第一軸部2gと第二軸部2iとの接
続部2hの外周面は段付面とされ、これが主体金具1の
内面に形成された主体金具側係合部としての凸条部1c
とリング状の板パッキン63を介して係合することによ
り、軸方向の抜止めがなされている。他方、主体金具1
の後方側開口部内面と、絶縁体2の外面との間には、フ
ランジ状の突出部2eの後方側周縁と係合するリング状
の線パッキン62が配置され、そのさらに後方側にはタ
ルク等の充填層61を介してリング状の線パッキン60
が配置されている。そして、絶縁体2を主体金具1に向
けて前方側に押し込み、その状態で主体金具1の開口縁
をパッキン60に向けて内側に加締めることにより加締
め部1dが形成され、主体金具1が絶縁体2に対して固
定されている。
【0059】図2(a)及び図2(b)は絶縁体2のい
くつかの例を示すものである。その各部の寸法を以下に
例示する。 ・全長L1:30〜75mm。 ・第一軸部2gの長さL2:0〜30mm(ただし、突
出部2eとの接続部2fを含まず、第二軸部2iとの接
続部2hを含む)。 ・第二軸部2iの長さL3:2〜27mm。 ・本体部2bの外径D1:9〜13mm。 ・突出部2eの外径D2:11〜16mm。 ・第一軸部2gの外径D3:5〜11mm。 ・第二軸部2iの基端部外径D4:3〜8mm。 ・第二軸部2iの先端部外径D5(ただし、先端面外周
縁にアールないし面取りが施される場合は、中心軸線O
を含む断面において、該アール部ないし面取部の基端位
置における外径を指す):2.5〜7mm。 ・貫通孔6の第二部分6bの内径D6:2〜5mm。 ・貫通孔6の第一部分6aの内径D7:1〜3.5m
m。 ・第一軸部2gの肉厚t1:0.5〜4.5mm。 ・第二軸部2iの基端部肉厚t2(中心軸線Oと直交す
る向きにおける値):0.3〜3.5mm。 ・第二軸部2iの先端部肉厚t3(中心軸線Oと直交す
る向きにおける値;ただし、先端面外周縁にアールない
し面取りが施される場合は、中心軸線Oを含む断面にお
いて、該アール部ないし面取部の基端位置における肉厚
を指す):0.2〜3mm。 ・第二軸部2iの平均肉厚tA((t2+t3)/2):
0.25〜3.25mm。
【0060】また、図1において、絶縁体2の主体金具
1の後方側に突出している部分2kの長さLQは、20
〜25mm(例えば23mm程度)である。
【0061】次に、図2に一点鎖線にて示すように、絶
縁体2の表面、具体的には本体部2bの外周面に釉薬層
2dが形成されている。その本体部2bの基端部外周面
において、釉薬層2dの表面粗さは、前記したRyが1
0μm以下となるように調整されてなる。また、形成厚
さは10〜150μm、望ましくは10〜50μmとさ
れる。さらに、絶縁体2の下地表面の表面粗さは、その
最大高さRyが15〜35μmとなるように調整されて
いる。なお、図1に示すように、本体部2bに形成され
た釉薬層2dは、その軸方向前方側が突出部2eとの接
続位置にいたる全面に釉薬層2dが形成されている一
方、後方側は本体部2bの後端縁位置まで延びている。
【0062】釉薬層2dは、課題を解決するための手段
及び作用・効果の欄にて説明した本発明の少なくともい
ずれかの組成を有するものである。各成分の組成範囲の
臨界的意味については、既に詳細に説明済みであるから
ここでは繰り返さない。また、主体金具1の後端縁を基
点として絶縁体本体部2bの突出長さLQの部分の外周
面における釉薬層2dの厚さt1(平均値)は10〜50
μmである。
【0063】次に、接地電極4及び中心電極3の本体部
3aはNi合金等で構成されている。また、中心電極3
の本体部3aの内部には、放熱促進のためにCuあるい
はCu合金等で構成された芯材3bが埋設されている。
一方、上記発火部31及び対向する発火部32は、I
r、Pt及びRhの1種又は2種以上を主成分とする貴
金属合金を主体に構成される。中心電極3の本体部3a
は先端側が縮径されるとともにその先端面が平坦に構成
され、ここに上記発火部を構成する合金組成からなる円
板状のチップを重ね合わせ、さらにその接合面外縁部に
沿ってレーザー溶接、電子ビーム溶接、抵抗溶接等によ
り溶接部を形成してこれを固着することにより発火部3
1が形成される。また、対向する発火部32は、発火部
31に対応する位置において接地電極4にチップを位置
合わせし、その接合面外縁部に沿って同様に溶接部を形
成してこれを固着することにより形成される。なお、こ
れらチップは、例えば表記組成となるように各合金成分
を配合・溶解することにより得られる溶解材、又は合金
粉末あるいは所定比率で配合された金属単体成分粉末を
成形・焼結することにより得られる焼結材により構成す
ることができる。なお、発火部31及び対向する発火部
32は少なくとも一方を省略する構成としてもよい。
【0064】上記スパークプラグ100は、例えば下記
のような方法で製造される。まず、絶縁体2であるが、
これは原料粉末として、アルミナ粉末と、Si成分、C
a成分、Mg成分、Ba成分及びB成分の各成分源粉末
を、焼成後に酸化物換算にて前述の組成となる所定の比
率で配合し、所定量の結合剤(例えばPVA)と水とを
添加・混合して成形用素地スラリーを作る。なお、各成
分源粉末は、例えばSi成分はSiO粉末、Ca成分
はCaCO粉末、Mg成分はMgO粉末、Ba成分が
BaCO粉末、B成分がHBO粉末の形で配合で
きる。なお、H BOは溶液の形で配合してもよい。
【0065】成形用素地スラリーは、スプレードライ法
等により噴霧乾燥されて成形用素地造粒物とされる。そ
して、成形用素地造粒物をラバープレス成形することに
より、絶縁体の原形となるプレス成形体を作る。ここで
は、内部に軸方向に貫通するキャビティを有するゴム型
が使用され、そのキャビティの下側開口部に下パンチが
嵌め込まれる。また、下パンチのパンチ面には、キャビ
ティ内においてその軸方向に延びるとともに、絶縁体2
の貫通孔6の形状を規定するプレスピンが一体的に凸設
されている。
【0066】このキャビティ内に、所定量の成形用素地
造粒物を充填し、キャビティの上側開口部を上パンチで
塞いで密封する。この状態でゴム型の外周面に液圧を印
加し、キャビティの造粒物を該ゴム型を介して圧縮する
ことによりプレス成形体を得る。なお、成形用素地造粒
物は、プレス時における造粒物の粉末粒子への解砕が促
進されるよう、該成形用素地造粒物の質量を100質量
部として、0.7〜1.3質量部の水分が添加された
後、上記プレス成形が行われる。成形体は、外面側がグ
ラインダ切削等により加工されて、絶縁体2に対応した
外形形状に仕上げられ、次いで温度1400〜1600
℃で焼成されて絶縁体2となる。
【0067】他方、釉薬スラリーの調製を以下のように
して行う。まず、Si、Al、B、Zn、Ba、Na、
K及びLi等の各成分源となる成分源粉末(例えば、S
i成分はSiO粉末、Al成分はAl粉末、B
成分はHBO粉末、ZnはZnO粉末、Ba成分は
BaCO粉末、NaはNaCO粉末、KはK
粉末、LiはLiCO粉末)を、所定の組成が
得られるように配合して混合する。次いで、その混合物
を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融
物を水中に投じて急冷・ガラス化し、さらに粉砕するこ
とにより釉薬フリットを作る。そして、この釉薬フリッ
トにカオリン、蛙目粘土等の粘土鉱物と有機バインダー
とを適量配合し、さらに水を加えて混合することにより
釉薬スラリーを得る。
【0068】そして、この釉薬スラリーを噴霧ノズルか
ら絶縁体2の必要な表面に噴霧・塗布することにより、
釉薬粉末堆積層としての釉薬スラリー塗布層を形成し、
これを乾燥する。
【0069】次に、この釉薬スラリー塗布層を形成した
絶縁体2への、中心電極3と端子金具13との組付け、
及び抵抗体15と導電性ガラスシール層16,17との
形成工程の概略は以下の通りである。まず、絶縁体2の
貫通孔6に対し、その第一部分6aに中心電極3を挿入
した後、導電性ガラス粉末を充填する。そして、貫通孔
6内に押さえ棒を挿入して充填した粉末を予備圧縮し、
第一の導電性ガラス粉末層を形成する。次いで抵抗体組
成物の原料粉末を充填して同様に予備圧縮し、さらに導
電性ガラス粉末を充填して予備圧縮を行うことにより、
中心電極3側(下側)から貫通孔6内には、第一の導電
性ガラス粉末層、抵抗体組成物粉末層及び第二の導電性
ガラス粉末層が積層された状態となる。
【0070】そして、貫通孔6に端子金具13を上方か
ら配置した組立体を形成する。この状態で加熱炉に挿入
してガラス軟化点以上である800〜950℃の所定温
度に加熱し、その後、端子金具13を貫通孔6内へ中心
電極3と反対側から軸方向に圧入して積層状態の各層を
軸方向にプレスする。これにより、各層は圧縮・焼結さ
れてそれぞれ導電性ガラスシール層16、抵抗体15及
び導電性ガラスシール層17となる(以上、ガラスシー
ル工程)。
【0071】ここで、釉薬スラリー塗布層に含まれる釉
薬フリットの軟化温度を600〜700℃としておけ
ば、釉薬スラリー塗布層を、上記ガラスシール工程にお
ける加熱により同時に釉焼して釉薬層とすることができ
る。また、ガラスシール工程の加熱温度として800〜
950℃の比較的低い温度を採用することで、中心電極
3や端子金具13の表面への酸化も生じにくくなる。
【0072】こうしてガラスシール工程が完了した組立
体には、主体金具1や接地電極4等が組み付けられて、
図1に示すスパークプラグ100が完成する。スパーク
プラグ100は、そのねじ部7においてエンジンブロッ
クに取り付けられ、燃焼室に供給される混合気への着火
源として使用される。ここで、スパークプラグ100へ
の高圧ケーブルあるいはイグニッションコイルの装着
は、図1に仮想線で示すように、絶縁体2の本体部2b
の外周面を覆うゴムキャップ(例えばシリコンゴム等で
構成される)RCを用いて行われる。このゴムキャップ
RCの孔径は、本体部2bの外径D1(図2)よりも
0.5〜1.0mm程度小さいものが使用される。本体
部2bは孔を弾性的に拡径しつつその基端部まで覆われ
るようにこれに押し込まれる。その結果、ゴムキャップ
RCは、孔内面において本体部2bの基端部外周面に密
着し、フラッシュオーバ等を防止するための絶縁被覆と
して機能する。そして、前述の組成の釉薬を使用しつ
つ、基端部外周面を覆う釉薬層2dの表面粗さを本発明
の数値範囲とすることにより釉焼面の平滑性が向上し、
釉焼面とゴムキャップRCとの密着性が高められるの
で、耐フラッシュオーバ性を向上させることができる。
また、後方側の突出部分2kにコルゲーション部が形成
されていないことも、ゴムキャップRCとの密着性を高
める上で有利に作用している。但し、図3に示すものの
ようにコルゲーションが形成されているものに適用して
も、釉焼面の平滑性向上により釉焼面とゴムキャップR
Cとの密着性が高められる効果は程度の差を除いて変わ
りはなく、耐フラッシュオーバ性を同様に向上させるこ
とができる。
【0073】なお、本発明のスパークプラグは図1に示
すタイプのものに限らず、例えば接地電極4の先端を中
心電極3の側面と対向させてそれらの間に火花ギャップ
gを形成したものであってもよい。この場合、接地電極
4は、中心電極3の両側に各1ずつの計2つ設ける態様
の他、中心電極3の周りに3ないしそれ以上のものを配
置することもできる。また、スパークプラグ100を、
絶縁体2の先端部を中心電極3の側面と接地電極4の先
端面との間に進入させたセミ沿面放電型スパークプラグ
として構成してもよい。この構成では、絶縁体2の先端
部の表面に沿う形で火花放電が起こるので、気中放電型
のスパークプラグと比べて耐汚損性が向上する。
【0074】
【実験例】本発明の効果を確認するために、以下の実験
を行なった。絶縁体2を次のようにして作製した。ま
ず、原料粉末として、アルミナ粉末(アルミナ95mo
l%、Na含有量(NaO換算値)0.1mol%、
平均粒径3.0μm)に対し、SiO(純度99.5
%、平均粒径1.5μm)、CaCO(純度99.9
%、平均粒径2.0μm)、MgO(純度99.5%、
平均粒径2μm)、BaCO(純度99.5%、平均
粒径1.5μm)、HBO(純度99.0%、平均
粒径1.5μm)、ZnO(純度99.5%、平均粒径
2.0μm)を所定比率にて配合するとともに、この配
合した粉末総量を100重量部として、親水性バインダ
ーとしてのPVAを3重量部と、水103重量部とを加
えて湿式混合することにより、成形用素地スラリーを作
製した。
【0075】次いで、これら組成の異なるスラリーをそ
れぞれスプレードライ法により乾燥して、球状の成形用
素地造粒物を調製した。なお、造粒物は、ふるいにより
粒径50〜100μmに整粒している。そして、この造
粒物を、既に説明したラバープレス法により圧力50M
Paにて成形し、その成形体の外周面にグラインダ研削
を施して所定の絶縁体形状に加工するとともに、温度1
550℃で焼成することにより絶縁体2を得た。なお、
蛍光X線分析により、絶縁体2は下記の組成を有してい
ることがわかった: Al成分:Al換算値で94.9mol%; Si成分:SiO換算値で2.4mol%; Ca成分:CaO換算値で1.9mol%; Mg成分:MgOに換算値で0.1mol%; Ba成分:BaOに換算値で0.4mol%; B成分:B換算値で0.3mol%。
【0076】また、図2(a)を援用して示す絶縁体2
の各部寸法は以下の通りである:L1=約60mm、L2
=約10mm、L3=約14mm、D1=約11mm、D
2=約13mm、D3=約7.3mm、D4=5.3m
m、D5=4.3mm、D6=3.9mm、D7=2.6
mm、t1=3.3mm、t2=1.4mm、t3=0.
9mm、tA=1.15mm。さらに、図1を援用して
示すと、絶縁体2の主体金具1の後方側に突出している
部分2kの長さLQは23mmである。なお、図3に示
すように、コルゲーション部2cを形成したものも作成
した。また、絶縁体2の表面をバレル研磨し、平滑にし
たものも作製した。
【0077】次に、釉薬スラリーを次のようにして調製
した。まず、原料としてSiO粉末(純度99.5
%)、Al粉末(純度99.5%)、HBO
粉末(純度98.5%)、ZnO粉末(純度99.5
%)、BaCO粉末(純度99.5%)、NaCO
粉末(純度99.5%)、KCO粉末(純度99
%)、LiCO粉末(純度99%)、MoО粉末
(純度99%)、Fe 粉末(純度99.0%)、
WО粉末(純度99%)、ZrO粉末(純度99.
5%)、TiO粉末(純度99.5%)、CaCO
粉末(純度99.8%)、MgO粉末(純度99.5
%)、Sb粉末(純度99%)、Bi粉末
(純度99%)及びPbO粉末(純度99%)を各種比
率で配合し、その混合物を1000〜1500℃に加熱
して溶融させ、その溶融物を水中に投じて急冷・ガラス
化し、さらにアルミナ製ポットミルにより粒径50μm
以下に粉砕することにより釉薬フリットを作製した。そ
して、この釉薬フリット100重量部に対し粘土鉱物と
してのニュージーランドカオリンを3重量部、及び有機
バインダーとしてのPVAを2重量部配合し、さらに水
を100重量部加えて混合することにより釉薬スラリー
を得た。
【0078】この釉薬スラリーを、噴霧ノズルより絶縁
体2の表面に噴霧後、乾燥して釉薬スラリー塗布層を形
成した。また、釉薬スラリーを投入した浴槽中に絶縁体
2を浸漬させ、その後絶縁体2を引き上げることにより
絶縁体2の表面に釉薬層を形成したものも作製した。な
お、乾燥後の釉薬の塗布厚さは100μm程度である。
この絶縁体2を用いて、既に説明した方法により、図1
に示すスパークプラグ100を各種作成した。ただし、
ねじ部7の外径は14mmとした。また、抵抗体15の
原料粉末としてはB−SiO−BaO−Li
O系ガラス、ZrO粉末、カーボンブラック粉末、T
iO粉末、金属Al粉末を、導電性ガラスシール層1
6,17の原料粉末としてはB−SiO−Na
O系ガラス、Cu粉末、Fe粉末、Fe−B粉末をそ
れぞれ用い、ガラスシール時の加熱温度、すなわち釉焼
温度は900℃にて行った。
【0079】他方、粉砕せずに塊状に凝固させた釉薬試
料も作製した。なお、この塊状の釉薬試料は、X線回折
によりガラス化(非晶質化)したものであることを確認
した。これを用いて化学組成分析を蛍光X線分析によっ
て行った。各試料の分析値(酸化物換算した値による)
を表1〜表5に示している。なお、絶縁体2の表面に形
成された釉薬層2dの各組成をEPMA法により測定し
たが、該塊状試料を用いて測定した分析値とほぼ一致し
ていることが確認できた。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】次に、絶縁体2の基端部外周面位置におけ
る釉薬層2d表面における表面粗さを、JIS:B06
01に規定された方法に従い、その最大高さRyを測定
した。なお、使用した測定装置は三鷹光器(株)製の非
接触三次元測定機(NH−3)である。また、絶縁体2
の基端部外周面位置における釉薬層2dの膜厚を断面の
SEM観察により測定した。
【0086】また、各スパークプラグについては、50
0℃での絶縁抵抗を、既に説明した方法により通電電圧
1000Vにて行った。さらに、火花放電ギャップg側
での放電を防止するため、シリコンチューブ等を絶縁体
2の先端側に被せる一方、スパークプラグ100を加圧
チャンバーに取り付け、図1に示すように絶縁体2の本
体部2bにシリコンゴム製のゴムキャップRCを被せつ
つ、外周をビニール等で絶縁した高圧リード線を端子金
具13に接続した。そして、その状態で、接続した高圧
リード線を介してスパークプラグ100に電圧を印加す
るとともに、その印加電圧レベルを0.1〜1.5kV
/秒の割合で増加させ、フラッシュオーバ現象を起こす
限界電圧を測定した。なお、限界電圧が30kVよりも
大きいものを優良(○)、25〜30kVのものを良好
(△)、25kV未満のものを不良(×)として評価し
た。以上の結果を表7〜表10に示す。なお、前記絶縁
抵抗の測定は上記耐フラッシュオーバ性の評価試験後に
も再度行なっている。
【0087】
【表6】
【0088】
【表7】
【0089】
【表8】
【0090】
【表9】
【0091】この結果によると、本体部2bの基端部外
周面にて釉薬層の表面粗さを10μm以下にすることに
より、ゴムキャップと絶縁体との密着性が向上し、耐フ
ラッシュオーバ電圧が向上していることがわかる。
【0092】なお、表6の実験例No.2では、実験例
No.1と比べてコルゲーション部の曲線分だけ距離が
長いために絶縁抵抗は向上しているが、コルゲーション
部があるために密着性が低下して、フラッシュオーバ電
圧がやや低下している。また、実験例No.3では、下
地となる絶縁体2の表面をバレル研磨により平滑にして
いるので、釉薬層の膜厚が5μmと薄くても、表面粗さ
を示す最大高さRyが4.0μmと小さく、良好なフラ
ッシュオーバ電圧を示している。これに対してバレル研
磨なしに同様に作製した実験例No.4では、釉薬層の
膜厚が5μmと薄い場合、表面粗さを示す最大高さRy
が15μmと高くなり、フラッシュオーバ電圧が不良と
なった。
【0093】実験例No.5では、釉薬層の膜厚が厚い
ため、キャップの脱着がやや困難となり、密着性もやや
低下して、このため絶縁抵抗もやや低下している。さら
に、実験例No.6では、釉薬スラリーをスプレー塗布
せずに釉薬スラリーの投入された浴槽中に浸漬すること
により塗布したものである。このため、膜厚にむらが生
じ、結果として表面粗さが増し、フラッシュオーバ電圧
が不良となった。
【0094】また、アルカリ金属成分としてLi成分を
含有しない表9の実験例No.32及びアルカリ金属成
分中のLi成分の割合が少ない実験例No.33と比較
すると、アルカリ金属成分中におけるLi成分の割合が
0.2〜0.5の範囲の、他の実験例の方が、表面粗さ
が小さくなっており、フラッシュオーバ電圧が向上して
いる。なお、実験例No.34及び35では、Pb成分
を多く含有しているために、絶縁抵抗が通電させた測定
前後で変化し、その後では明らかに低下し、フラッシュ
オーバ電圧も不良となった。ここで、表9中、実験例N
o.34及び35の絶縁抵抗を示す欄において、矢印の
前が測定前の絶縁抵抗値で、矢印の後がその後の絶縁抵
抗値を示す。
【0095】次に、実験例No.6について、JIS:
B0601に規定された方法に従い測定した表面粗さ曲
線において、釉薬塗布後と塗布前についての表面粗さ曲
線を図4及び図5に示す。釉薬の塗布後の粗さ曲線を示
す図4を、その塗布前の粗さ曲線図5を示すと比較する
と、釉薬の塗布後では、粗さ曲線の山頂と谷底の間隔が
狭まり、表面が明らかに平滑化されていることがわか
る。なお、図4及び図5には、粗さ曲線の測定条件(カ
ットオフ値、評価長さ、基準長さ、負荷長さ率の切断レ
ベル)と、得られた粗さ曲線から、JIS:B0601
の定義に基づいて算出される種々の粗さパラメータ(算
術平均粗さRa、最大高さRy、十点平均粗さRz、凹
凸の平均間隔Sm、局所山頂の平均間隔S及び負荷長さ
率tp)の値も合わせて示している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスパークプラグの一例を示す全体正面
断面図。
【図2】絶縁体のいくつかの実施例を示す縦断面図。
【図3】コルゲーション部を形成したスパークプラグを
示す図。
【図4】釉薬塗布後の表面粗さ曲線を示す図。
【図5】釉薬塗布前の表面粗さ曲線を示す図。
【符号の説明】
1 主体金具 2 絶縁体 2d 釉薬層 3 中心電極 4 接地電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉本 誠 愛知県名古屋市瑞穂区高辻町14番18号 日 本特殊陶業株式会社内 Fターム(参考) 5G059 AA05 FF02 FF06 FF12

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中心電極と主体金具との間にアルミナ系
    セラミックからなる絶縁体を配したスパークプラグにお
    いて、その絶縁体の表面の少なくとも一部を覆う釉薬層
    が形成され、該釉薬層は、 Pb成分の含有量がPbO換算にて1mol%以下とさ
    れ、 SiOに酸化物換算した値にて5〜60mol%のS
    i成分と、Bに酸化物換算した値にて3〜50m
    ol%のB成分とからなる第一成分を35〜80mol
    %と、Zn成分とアルカリ土類金属成分R(ただし、R
    はCa、Sr、Baから選ばれる1種又は2種以上)と
    の少なくともいずれかからなる第二成分とを、ZnはZ
    nОに、Rは組成式RОに酸化物換算した値にて合計で
    12〜60mol%とを含有するとともに、それら第一
    成分と第二成分との合計含有量が65〜98mol%で
    あり、かつ、Zn成分と、Ba成分及び/又はSr成分
    とは、Zn成分はZnO、Ba成分はBaO、Sr成分
    はSrOにそれぞれ酸化物換算した値にて、合計で12
    〜30mol%とされ、 また、アルカリ金属成分として、NaはNaO、Kは
    O、LiはLiOに酸化物換算した値にて、それ
    らの1種又は2種以上を合計で2〜15mol%の範囲
    にて含有するものであり、 また、前記絶縁体には、軸線方向中間位置においてその
    外周面に周方向の突出部が形成され、 該軸線方向において前記中心電極の先端に向かう側を前
    方側として、前記突出部に対し後方側に隣接する絶縁体
    本体部の基端部外周面が円筒面状に形成され、 前記釉薬層はその基端部外周面を覆う形で形成され、か
    つ該基端部外周面にてJIS:B0601に規定された
    方法に従い測定した前記釉薬層の表面粗さ曲線において
    その最大高さRyが10μm以下とされていることを特
    徴とするスパークプラグ。
  2. 【請求項2】 中心電極と主体金具との間にアルミナ系
    セラミックからなる絶縁体を配したスパークプラグにお
    いて、その絶縁体の表面の少なくとも一部を覆う釉薬層
    が形成され、該釉薬層は、 Pb成分の含有量がPbO換算にて1mol%以下とさ
    れ、 SiOに酸化物換算した値にて5〜60mol%のS
    i成分と、Bに酸化物換算した値にて3〜50m
    ol%のB成分とからなる第一成分を35〜80mol
    %と、Zn成分とアルカリ土類金属成分R(ただし、R
    はCa、Sr、Baから選ばれる1種又は2種以上)と
    の少なくともいずれかからなる第二成分とを、ZnはZ
    nОに、Rは組成式RОに酸化物換算した値にて合計で
    10〜60mol%とを含有するとともに、それら第一
    成分と第二成分との合計含有量が65〜98mol%で
    あり、かつ、Zn成分と、Ba成分及び/又はSr成分
    とは、Zn成分はZnO、Ba成分はBaO、Sr成分
    はSrOにそれぞれ酸化物換算した値にて、合計で10
    〜30mol%とされ、 また、Bi及びSbの少なくとも1種を流動性改善成分
    として、BiはB に、SbはSbにそれぞ
    れ酸化物換算した値にて合計で0.5〜5mol%含有
    し、 さらに、アルカリ金属成分として、NaはNaO、K
    はKO、LiはLi Oに酸化物換算した値にて、そ
    れらの1種又は2種以上を合計で2〜15mol%の範
    囲にて含有するものであり、 また、前記絶縁体には、軸線方向中間位置においてその
    外周面に周方向の突出部が形成され、 該軸線方向において前記中心電極の先端に向かう側を前
    方側として、前記突出部に対し後方側に隣接する絶縁体
    本体部の基端部外周面が円筒面状に形成され、 前記釉薬層はその基端部外周面を覆う形で形成され、か
    つ該基端部外周面にてJIS:B0601に規定された
    方法に従い測定した前記釉薬層の表面粗さ曲線において
    その最大高さRyが10μm以下とされていることを特
    徴とするスパークプラグ。
  3. 【請求項3】 前記絶縁体本体部の外周面後端部にはコ
    ルゲーション部が形成されていないことを特徴とする請
    求項1または2に記載のスパークプラグ。
  4. 【請求項4】 前記釉薬層がアルカリ金属成分としてL
    i成分を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいず
    れか1項に記載のスパークプラグ。
  5. 【請求項5】 前記釉薬層はLi成分を含有し、かつ、
    Li、Na及びKのうち、Li成分を含む2種以上から
    なるアルカリ金属成分をRとして、組成式R Oに酸化
    物換算した場合の合計モル含有量をNR2O、Li2Oに酸
    化物換算したLi成分のモル含有量をNLi2Oとして、N
    Li2O/NR2Oが0.2〜0.5に調整されていることを
    特徴とする請求項4記載のスパークプラグ。
  6. 【請求項6】 前記釉薬層はAl成分をAlに酸
    化物換算した値にて0.1〜5mol%の範囲にて含有
    する請求項1ないし5のいずれか1項に記載のスパーク
    プラグ。
  7. 【請求項7】 前記釉薬層が膜厚10μm〜50μmの
    範囲内にて形成されていることを特徴とする請求項1な
    いし6のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
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