JP3580761B2 - スパークプラグ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスパークプラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車エンジン等の内燃機関の点火用に使用されるスパークプラグは、一般に、接地電極が取り付けられる主体金具の内側に、アルミナ系セラミック等で構成された絶縁体が配置され、その絶縁体の内側に中心電極が配置された構造を有する。絶縁体は主体金具の後方側開口部から軸方向に突出し、その突出部の内側に端子金具が配置され、これがガラスシール工程により形成される導電性ガラスシール層や抵抗体等を介して中心電極と接続される。そして、その端子金具を介して高圧を印加することにより、接地電極と中心電極との間に形成されたギャップに火花放電が生ずることとなる。
【0003】
ところが、プラグ温度が高くなったり、周囲の湿度が上昇したりするなどの条件が重なると、高圧印加してもギャップに飛火せず、絶縁体突出部の表面を回り込む形で端子金具と主体金具との間で放電する、いわゆるフラッシュオーバ現象が生じることがある。そのため、一般に使用されているほとんどのスパークプラグにおいては、主にこのフラッシュオーバ現象防止のために絶縁体表面に釉薬層が形成されている。他方、釉薬層は、絶縁体表面を平滑化して汚染を防止したり、化学的あるいは機械的強度を高めたりするといった役割も果たす。
【0004】
スパークプラグ用のアルミナ系絶縁体の場合、従来は、ケイ酸塩ガラスに比較的多量のPbOを配合して軟化点を低下させた鉛ケイ酸塩ガラス系の釉薬が使用されてきたが、環境保護に対する関心が地球規模で高まりつつある近年では、Pbを含有する釉薬は次第に敬遠されるようになってきている。例えばスパークプラグが多量に使用される自動車業界においては、廃棄スパークプラグによる環境への影響を考慮して、Pb含有釉薬を使用したスパークプラグの使用は将来全廃しようとの検討も進められている。そして、そのようなPb含有釉薬の代替品として、例えば特開平11−43351号公報あるいは特開平11−106234号公報に、硼珪酸ガラスやアルカリ硼珪酸ガラス系の無鉛釉薬が提案されている。
【0005】
ところで、スパークプラグの絶縁体の表面には通常、メーカー名やロゴマークあるいは品番など、文字や記号その他の画像からなるマーキングが形成される。このマーキングは、顔料を配合したインクにより釉薬層非形成の絶縁体表面に印刷され、その後、釉薬を塗布して釉焼することにより形成されることが多い。この場合、マーキング層は透明化した釉薬層を介して透視される。マーキング層は、例えばスパークプラグの品種や形式を識別しやすくするため、色彩をそれら品種や形式毎に変えて形成されることも多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、釉薬層の下側に上記のようなマーキング層を形成する場合、マーキング層中の顔料を構成する呈色金属酸化物が、釉焼時において釉薬層中の成分とはある程度不可避的に反応を起こす。ここで、釉薬層を従来のPb含有型のものを使用した場合、呈色金属酸化物の本来の色調が維持されやすく、望みの色彩を安定的に得ることができていた。ところが、本発明者らの検討によると、無鉛釉薬のように釉薬中のPb成分の含有量が低く抑えられた釉薬を使用した場合、マーキング層の色彩を望みの色調に安定的に調整することが困難になることがわかった。
【0007】
本発明の課題は、釉薬層中のPb量を減少させても、その下側に形成されるマーキング層を安定的に呈色させることができるスパークプラグを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上記の課題を解決するために、本発明のスパークプラグの第一の構成は、絶縁体の表面に形成されるマーキング層と、そのマーキング層を透視可能な状態で被う釉薬層とを有し、該釉薬層を構成する釉薬は、Pb成分の含有量がPbO換算にて5mol%以下とされ、かつ釉薬層を介して透視される当該マーキング層の色調が、JIS:Z8721に規定された明度において3以下であり、かつ彩度において3以下となるか、又は明度において4以下であり、かつ彩度において2以下となるように、マーキング層に含有される金属元素成分の種別及び含有量が調整されていることを特徴とする。
【0009】
マーキング層を特に黒色に呈色させたい場合、マーキング層は、白色光による反射光にて観察を行ったときに、特定の波長域の光による突出した反射がなく、かつ全体の反射光レベルが低くなるように、可視光スペクトルの各波長域においてまんべんなく光の吸収を生ずることが重要である。しかしながら、黒色釉薬層中のPb含有量が、PbO換算にて5mol%以下になると、釉焼時に釉薬層中のPb以外の成分がマーキング層中の金属酸化物と反応して、その反応を起こした金属酸化物による特定波長の光吸収のレベルが変化したり、あるいは光吸収の波長がシフトしたりすることにより、黒色を呈するための光吸収のバランスが崩れ、結果としてマーキング層が黒からは逸脱した望まざる色調を呈しやすくなる。このような状況では、例えばマーキングの色彩にてスパークプラグの品種や形式を識別しようとする場合には、その識別が困難となる場合がある。また、別の現実的な問題としては、マーキング層の色調変化が、購買者側では「使い慣れたマーキング色の理由なき変更」に映じ、その抵抗感から必ずしもスムーズに製品が受け入れられない、といった不具合も生じうる。
【0010】
そこで、本発明においては、Pb含有量が5mol%以下である釉薬層を介して透視されるマーキング層の色調が、JIS:Z8721に規定された明度において3以下であり、かつ彩度において3以下となるか、又は明度に4以下であり、かつ彩度において2以下となるように、マーキング層に含有される金属元素成分の種別及び含有量を調整することで、上記のようにPb含有量の低い釉薬層を使用した場合でも、下側に形成されるマーキング層の外観色を黒色として安定的に認識することができる。
【0011】
本明細書においては、明度及び彩度の測定方法については、JIS:Z8722「色の測定方法」において、「4.分光測色方法」の「4.3反射物体の測定方法」に規定された方法を用いるものとする。ただし、簡略な方法として、JIS:Z8721に準拠して作成された標準色票との目視比較により、明度及び彩度を知ることもできる。
【0012】
マーキング層に含有される金属元素成分の種別及び含有量の調整は、例えば、次のような思想に基づいて行うことができる。マーキング層において呈色に寄与するのは、主に、電子遷移による光吸収を起こしやすい各種の遷移金属カチオン(以下、呈色金属成分という)であり、マーキング層の最終的な色調は、概略的には、個々の金属カチオンに由来する光吸収の重ねあわせとして観測される反射光スペクトル、換言すれば、含有される個々の呈色金属成分に由来した色の混合状態として視認されると考えられる。ところで、釉薬層のPb成分含有量が減少した場合、本発明者らが検討した結果、Crなどの特定の呈色金属成分は、Pb含有量の減少した釉薬層との反応により、呈する色に変化を生じやすいことがわかった(以下、易変色性金属成分という)。この場合、易変色性金属成分の量が過剰であると、その易変色性金属成分による変化後の色相の色みが強くなって、マーキング層全体としては黒からの色調の逸脱が強くなることにつながる。そこで、釉薬層中のPb成分含有量を削減するに伴い、そのような易変色性金属成分の含有量を相対的に減ずれば、易変色性金属成分による色調変化の影響を和らげることができる。他方、釉薬層中のPb含有量削減によってもたらされる、易変色性金属成分の変化後の色相がおおむねどのようなものであるかが判明していれば、その色相と色相環上での隔たりが大きい(例えば補色系となる)色相を呈する呈色金属成分を、黒色化調整成分として配合することにより、マーキング層全体としての色調を黒に近づけることが可能となる。
【0013】
なお、上記のような思想に基づいてマーキング層の組成調整を行う場合、以下の点に留意する必要がある。すなわち、同一の遷移金属カチオンであっても価電子状態によって光吸収のスペクトルには差異を生じ、例えば、周囲に配置したイオンから受ける相互作用や、釉焼の温度あるいは雰囲気等により、遷移金属カチオンの価電子状態が変化して呈する色は種々に変化することがある。このような現象は、光吸収の主体となる遷移金属カチオンの周囲に配置するのが、他の遷移金属カチオンである場合はもちろん、AlやZnなどの典型金属のカチオンであっても生じうる。なお、後者のような典型金属のカチオンは、しばしば色調調整や安定化など、呈色補助成分として機能する。
【0014】
マーキング層の色調を「黒」として識別できるようにするためには、マーキング層の彩度の測定値が、絶対値として3以下になっていることが必要である。彩度が3を超えると、明度に関係なくマーキング層は外観上、明らかに色みがついている印象がぬぐいきれなくなり、黒とは異質のものとなってしまうからである。また、明度が4を超えると、仮に彩度が非常に小さかったとしても色調が灰色系に近くなり、黒とは異質の外観を呈し始める。なお、明度が3以下の範囲であれば、彩度が3程度までは実質的にほぼ黒として識別されうるが、明度が3を超えると、明るくなる分だけ肉眼には色みを感じやすくなるので、明度3〜4の範囲に対しては彩度を2以下に留める必要がある。
【0015】
なお、彩度がゼロでない有限の値を示すということは、光学的な意味での純粋な「黒」が必ずしも実現していることを意味しない。しかしながら、相当注意しない限り、黒から逸脱した色調を呈していることが確認できないような場合、マーキングの色調による品種の識別が不能になったり、購買者側が抱いている色調イメージからの逸脱が過度に生じたりすることは考えにくい。従って、本発明の目的においては、上記のような明度及び彩度の範囲に属する色調は実質的に「黒」であるとみなすことができる。
【0016】
なお、マーキングの色調がどのように見えるかは、明度や彩度の絶対値にのみ依存するのではなく、背景色によっても見かけの色調が相対的に影響を受ける場合がある。例えば、下地となる絶縁体を白色のアルミナ系セラミックにて形成し、釉薬もほぼ無色透明に近い仕上がりの場合は、マーキングの背景も白色を呈する形となる。このような場合、マーキング層の色調に黒から隔たった色みの成分が混ざっていると、白色の背景色との対比でそれが目立ちやすくなる。例えば、背景色が白色系の場合、マーキング層明度及び彩度は前述の範囲でもよいが、「黒」としての識別性を高めるためには、明度及び彩度をともに2以下とすることが望ましい。なお、背景色が白色系であるとは、本明細書では、彩度が1以下、明度が9以上であることを意味する。
【0017】
Pb含有量の少ない釉薬層は、釉焼時の流動性を確保するためにZn成分を含有させることがある。マーキング層中の呈色金属成分にはZn成分との反応により呈する色に変化を生じやすいものが多いから、釉薬層がこのようなZn成分を含有している場合に、本発明の効果が一層発揮されやすくなる。
釉薬層中のZn成分の含有量は、例えばZnOに酸化物換算した値にて1〜25mol%の範囲で選択することができる。Zn成分含有量が1mol%未満になると、釉薬層の熱膨張係数が大きくなりすぎ、釉薬層に貫入等の欠陥が生じやすくなる場合がある。また、Zn成分は釉薬の軟化点を低下させる作用も有するので、これが不足すれば釉焼が困難となる場合がある。他方、Zn成分の含有量が25mol%を超えると、失透により釉薬層に白濁等を生じやすくなる場合がある。後者の場合、下地にマーキング層の視認が困難となったり、あるいはマーキング層の見かけの色調が灰色に近くなって黒から逸脱しやすくなったりする問題がある。
【0018】
次に、マーキング層を黒に呈色させたい場合、含有される金属元素成分としてFe、Cr、Co及びMnの1種又は2種以上を選択することが望ましい。このうち特に、FeとMnとは単独でも黒に近い色調を発することができ、黒色系呈色金属成分のベースとして有効に使用することができる。FeとMnとは一方のみを用いてもよいし、両者を併用するようにしてもよい。
【0019】
他方、FeやMnを単独で使用するだけでは、釉薬組成によっては、茶色(色相としては赤が混ざるということ)系等への色調の変化を生じたり、色むらを生じたりするなど、均一で安定した黒の色調を実現することが困難なこともある。特にMnを使用した場合は、赤系の色合いが混ざりやすい傾向が高く、マーキング層全体の色調は茶色系のものとなりやすい。この場合、Cr成分及びCo成分の一方又は双方を黒色化調整成分として配合することにより、得られるマーキング層の色調を黒に調整しやすくなる。この効果は、特に、Fe成分とCr成分とを組み合わせた場合に効果が大きい。例えば、Fe成分の色調が赤系の成分を含んで発色しようとした場合、Cr成分は緑系に発色する傾向が強いので、後者が黒色化調整成分として働いて黒系の色を実現しやすくなることが、現象論的に推測できる。
【0020】
ただし、Cr成分は、Pbの含有率が小さい釉薬組成を使用した場合に色調が変化しやすく、特にZnを含有した釉薬を使用すると、茶色系の赤を含んだ色調を呈しやすくなる。従って、そのCr成分に由来する赤系の色調を抑制するために、マーキング層は、Fe成分をFeに酸化物換算した値にて30〜60質量%と、Cr成分をCrに酸化物換算した値にて10〜40質量%とを含有するものとして構成することが、マーキング層の色調として安定で均一な黒を実現する上で望ましい。
【0021】
また、本発明のスパークプラグの第二の構成は、
絶縁体の表面に形成されるマーキング層と、
そのマーキング層を透視可能な状態で被う釉薬層とを有し、
該釉薬層は、Pb成分の含有量がPbOに酸化物換算した値にて5mol%以下とされ、かつ、Zn成分を、ZnOに酸化物換算した値にて1〜25mol%含有するとともに、
マーキング層は、Fe成分をFeに酸化物換算した値にて30〜60質量%と、Cr成分をCrに酸化物換算した値にて10〜40質量%とを含有することを特徴とする。
【0022】
Fe成分の上記含有量が30質量%未満になると、マーキング層を濃い黒色に呈色させることが困難になる場合がある。他方、60質量%を超えると黒色調整成分の含有しろが小さくなり、安定で均一な黒が得にくくなる場合がある。Feの代わりにMnを使用する場合も傾向は略同じであり、Mnを単独で、あるいはFeと併用して使用する場合は、その合計含有量を30〜60質量%とするのがよい。また、Cr成分の含有量が10質量%未満になると、Cr成分の黒色調整成分としての効果が不十分となり、安定で均一な黒が得にくくなる場合がある。他方、Cr成分の含有量が40質量%を超えると、マーキング層全体の色調が黒色から逸脱すること(例えば赤系の色が混ざって茶色っぽくなる)、ひいては明度及び彩度が前述の範囲から外れやすくなる場合がある。マーキング層は、より望ましくは、Cr成分をCrに酸化物換算した値にて10〜25質量%含有しているのがよい。
【0023】
マーキング層は、Co成分をCoOに酸化物換算した値にて10〜40質量%含有させることができる。Co成分も、赤色からの色相の隔たりの大きい青色系の色を呈しやすい傾向があり、黒色系呈色金属成分としてFeやMnを使用した場合等において、赤色系の色が混ざりやすくなる状況下では、黒色化調整成分として有効に機能する。ただし、Co成分の上記含有量が10質量%未満では効果が不十分となる場合があり、マーキング層全体の色調が却って黒色から逸脱しやすくなる場合がある。
【0024】
また、Cr成分とZn成分との反応等により、前述のような赤系の色みを呈しやすい場合には、Co成分を添加して青系の色を補うことにより、マーキング層全体の色調をより黒に近づけることも可能である。この場合、Cr成分とCo成分とが合計にて10〜40質量%含有されていることが望ましい。
【0025】
マーキング層は、さらにNi成分をNiに酸化物換算した値にて0.5〜15質量%含有させることができる。Ni成分も黒色化調整成分として有効に機能し、例えば釉薬層にZnが含有される場合には、該Znとの反応により青色系の呈色効果を示すので、Coと同様の色調調整効果が期待できる。ただし、Ni成分の上記含有量が0.5質量%未満では効果が不十分となる場合があり、15質量%を超えると、マーキング層全体の色調が却って黒色から逸脱しやすくなる場合がある。
【0026】
また、マーキング層は、Al成分及びBa成分の少なくとも一方を、Al成分はAlに、Ba成分はBaOにそれぞれ酸化物換算した値にて、合計で0.5〜15質量%含有させることができる。これら成分は、マーキング層に含有する他の呈色金属成分の発色を促進する効果を有する。ただし、その含有量が0.5質量%未満では効果に乏しく、15質量%を超えて含有させることは、それ以上の効果の増大が期待できないばかりか、呈色金属成分の全含有量が相対的に減少して、マーキング層が十分な濃さに呈色しにくくなることもありうる。
【0027】
なお、マーキング層には、上記以外にも、色調調整や発色促進あるいは色の均質化と安定化等を目的として、V、Sn、Zn、Ti、Zr、Na、Mg、Si、K、Caの1種又は2種以上を、VはVに、SnはSnOに、ZnはZnOに、TiはTiOに、ZrはZrOに、NaはNaOに、MgはMgOに、SiはSiOに、KはKOに、CaはCaOにそれぞれ酸化物換算した値にて、合計で5重量%の範囲内で含有させることが可能である。
【0028】
マーキング層の厚さは、1〜10μmとするのがよい。マーキング層の厚さが1μm未満では、下地の色が透けて現れやすくなる結果、マーキング層の色調が黒から逸脱しやすくなる問題を生ずる。他方、10μmを超えると、絶縁体表面にマーキング層に起因した凹凸が目立つようになり、外観が損なわれる問題を生ずる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に示すいくつかの実施例を参照して説明する。図1は、本発明の第一の構成に係るスパークプラグの一実施例を示す。該スパークプラグ100は、筒状の主体金具1、先端部21が突出するようにその主体金具1の内側に嵌め込まれた絶縁体2、先端に形成された発火部31を突出させた状態で絶縁体2の内側に設けられた中心電極3、及び主体金具1に一端が溶接等により結合されるとともに他端側が側方に曲げ返されて、その側面が中心電極3の先端部と対向するように配置された接地電極4等を備えている。また、接地電極4には上記発火部31に対向する発火部32が形成されており、それら発火部31と、対向する発火部32との間の隙間が火花放電ギャップgとされている。
【0030】
主体金具1は、低炭素鋼等の金属により円筒状に形成されており、スパークプラグ100のハウジングを構成するとともに、その外周面には、プラグ100を図示しないエンジンブロックに取り付けるためのねじ部7が形成されている。なお、1eは、主体金具1を取り付ける際に、スパナやレンチ等の工具を係合させる工具係合部であり、六角状の軸断面形状を有している。
【0031】
また、絶縁体2の軸方向には貫通孔6が形成されており、その一方の端部側に端子金具13が固定され、同じく他方の端部側に中心電極3が固定されている。また、該貫通孔6内において端子金具13と中心電極3との間に抵抗体15が配置されている。この抵抗体15の両端部は、導電性ガラスシール層16,17を介して中心電極3と端子金具13とにそれぞれ電気的に接続されている。これら抵抗体15と導電性ガラスシール層16,17とが焼結導電材料部を構成している。なお、抵抗体15は、ガラス粉末と導電材料粉末(及び必要に応じてガラス以外のセラミック粉末)との混合粉末を原料とし、後述のガラスシール工程においてこれを加熱・プレスすることにより得られる抵抗体組成物で構成される。なお、抵抗体15を省略して、一層の導電性ガラスシール層により端子金具13と中心電極3とを一体化した構成としてもよい。
【0032】
絶縁体2は、内部に自身の軸方向に沿って中心電極3を嵌め込むための貫通孔6を有し、全体が以下の絶縁材料により構成されている。すなわち、該絶縁材料はアルミナを主体に構成され、Al成分を、Alに換算した値にて85〜98質量%(望ましくは90〜98質量%)含有するアルミナ系セラミック焼結体として構成される。
【0033】
Al以外の成分の具体的な組成としては下記のようなものを例示できる。
Si成分:SiO換算値で1.50〜5.00質量%;
Ca成分:CaO換算値で1.20〜4.00質量%;
Mg成分:MgO換算値で0.05〜0.17質量%;
Ba成分:BaO換算値で0.15〜0.50質量%;
B成分:B換算値で0.15〜0.50質量%。
【0034】
図2は、絶縁体2のみを取り出して示すものである。絶縁体2の軸方向中間には、周方向外向きに突出する突出部2eが例えばフランジ状に形成されている。そして、絶縁体2には、中心電極3(図1)の先端に向かう側を前方側として、該突出部2eよりも後方側がこれよりも細径に形成された本体部2bとされている。一方、突出部2eの前方側にはこれよりも細径の第一軸部2gと、その第一軸部2gよりもさらに細径の第二軸部2iがこの順序で形成されている。なお、本体部2bの外周面後端部にはコルゲーション部2cが形成されている。また、第一軸部2gの外周面は略円筒状とされ、第二軸部2iの外周面は先端に向かうほど縮径する略円錐面状とされている。
【0035】
図1に戻り、中心電極3の軸断面径は抵抗体15の軸断面径よりも小さく設定されている。そして、絶縁体2の貫通孔6は、中心電極3を挿通させる略円筒状の第一部分6aと、その第一部分6aの後方側(図面上方側)においてこれよりも大径に形成される略円筒状の第二部分6bとを有する。端子金具13と抵抗体15とは第二部分6b内に収容され、中心電極3は第一部分6a内に挿通される。中心電極3の後端部には、その外周面から外向きに突出して電極固定用凸部3cが形成されている。そして、上記貫通孔6の第一部分6aと第二部分6bとは、第一軸部2g内において互いに接続しており、その接続位置には、中心電極3の電極固定用凸部3cを受けるための凸部受け面6cがテーパ面あるいはアール面状に形成されている。
【0036】
また、第一軸部2gと第二軸部2iとの接続部2hの外周面は段付面とされ、これが主体金具1の内面に形成された主体金具側係合部としての凸条部1cとリング状の板パッキン63を介して係合することにより、軸方向の抜止めがなされている。他方、主体金具1の後方側開口部内面と、絶縁体2の外面との間には、フランジ状の突出部2eの後方側周縁と係合するリング状の線パッキン62が配置され、そのさらに後方側にはタルク等の充填層61を介してリング状の線パッキン60が配置されている。そして、絶縁体2を主体金具1に向けて前方側に押し込み、その状態で主体金具1の開口縁をパッキン60に向けて内側に加締めることにより加締め部1dが形成され、主体金具1が絶縁体2に対して固定されている。
【0037】
次に、図2に示すように、絶縁体2の表面、具体的にはコルゲーション部2cを含む本体部2bの外周面と、第一軸部2gの外周面とに釉薬層2dが形成されている。なお、図1に示すように、本体部2bに形成された釉薬層2dは、その軸方向前方側が主体金具1の内側に所定長入り込む形で形成される一方、後方側は本体部2bの後端縁位置まで延びている。
【0038】
釉薬層2dは、例えばZnの含有量がZnO換算にて1〜25mol%であり、Pb成分の含有量がPbO換算にて5mol%以下、例えば1mol%以下とされる。一方、本体部2bにおいて絶縁体2の表面にはマーキング層2mが形成されている。マーキング層2mは、釉薬層2dにより透視可能な状態で覆われている。該マーキング層2mは、「課題を解決するための手段及び作用・効果」の欄にて説明したような、金属成分をカチオンとする酸化物を主体に構成され、釉薬層2dを介して透視される当該マーキング層2mの色調が、JIS:Z8721に規定された明度において3以下であり、かつ彩度において3以下となるか、又は明度において4以下であり、かつ彩度において2以下となるように、含有される金属元素成分の種別及び含有量が調整されている。具体的には、Fe、Mn、Cr、Co、AlあるいはBa等の成分を、前述の組成範囲にて含有するものであり、その厚さは1〜10μm程度である。
【0039】
一方、釉薬層2dは、例えばSiOに酸化物換算した値にて5〜60mol%のSi成分と、Bに酸化物換算した値にて3〜50mol%のB成分とからなる第一成分を35〜80mol%と、Zn成分とアルカリ土類金属成分R(ただし、RはCa、Sr、Baから選ばれる1種又は2種以上)との少なくともいずれかからなる第二成分とを、ZnはZnОに、Rは組成式RОに酸化物換算した値にて合計で5〜60mol%とを含有するとともに、それら第一成分と第二成分との合計含有量が65〜98mol%であり、また、アルカリ金属成分として、NaはNaO、KはKO、LiはLiOに酸化物換算した値にて、それらの1種又は2種以上を合計で2〜15mol%の範囲にて含有するものを使用することができる。釉薬層2dの形成厚さは、例えば7〜150μm、望ましくは10〜50μm程度である。特に、絶縁体本体部2bの基端部(主体金具1から後方に突出している部分の、コルゲーション部2cが付与されていない円筒状の外周面を呈する部分)外周面における釉薬層2dの厚さt1(平均値)は7〜50μmである。
【0040】
釉薬層2d中のSi成分含有量が5mol%未満では、釉薬のガラス化が困難となり、均一な釉薬層2dの形成が不能となる。他方、該Si成分含有量が60mol%を超えると、釉薬の線膨張係数が小さくなり過ぎ、釉薬層2dに亀裂や釉飛び等の欠陥が生じやすくなる。また、釉薬の軟化点が過度に上昇する結果、釉焼時の流動性が低下して釉溶け不良などを招きやすくなる。また、これを解決するために釉焼温度を上昇させようとすると、釉薬層2dとマーキング層2mとの反応が活発化して、マーキング層2mを所望の黒色とすることが困難となる場合がある。
【0041】
また、B成分含有量は、Bに酸化物換算した重量にて3〜50mol%に設定される。該B成分含有量が3mol%未満になると、釉薬の軟化点が上昇し、釉焼が困難あるいは不能となる。また、これを解決するために釉焼温度を上昇させようとすると、釉薬層2dとマーキング層2mとの反応が活発化して、マーキング層2mを所望の黒色とすることが困難となる場合がある。他方、B成分含有量が50mol%を超えると、釉薬層2dを形成するための釉薬スラリーの安定性が不十分となるほか、釉薬層2dの失透や絶縁性の低下あるいは下地との線膨張係数不適合といった問題が引き起こされる場合がある。
【0042】
Zn成分及び/又はアルカリ土類金属成分Rからなる第二成分の合計含有量が5mol%未満では、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。また、釉薬層2dの絶縁性が不十分となり、耐フラッシュオーバ性が損なわれる場合がある。他方、第二成分の合計含有量が60mol%を超えると、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。また、釉薬の線膨張係数が大きくなり過ぎ、釉薬層2dに貫入(クレージング)等の欠陥が生じやすくなる場合がある。なお、第一成分と第二成分との合計含有量に関しては、これらの合計含有量が98mol%を超えると釉薬の軟化点が上昇し、釉焼が不能となる場合がある。また、60mol%未満では、絶縁性と軟化点及び線膨張係数の調整とを両立させることが困難となる。なお、該合計含有量は、望ましくは70〜95mol%となっているのがよい。釉薬中のアルカリ金属成分は釉薬の軟化点を低下させる作用を有する。その含有量が2mol%未満になると釉薬の軟化点が上昇し、釉焼が不能となる場合がある。また、15mol%を超えると、釉薬の絶縁性が低下し、耐フラッシュオーバー性が損なわれる場合がある。アルカリ金属成分の含有量は、望ましくは3〜10mol%とするのがよい。
【0043】
なお、アルカリ金属成分に関しては1種類のアルカリ金属成分を単独添加するのではなく、Na、K、Liから選ばれる2種類を共添加することが釉薬層2dの絶縁性低下抑制に有効である。その結果、絶縁性をそれほど低下させずにアルカリ金属成分の含有量を増大させることができ、結果として耐フラッシュオーバ性の確保及び釉焼温度の低温化という2つの目的を同時に達成することが可能となる。なお、アルカリ金属成分の共添加による導電性抑制の効果が損なわれない範囲で、第三成分以降の他のアルカリ金属成分を配合することも可能である。
【0044】
ここで、絶縁体2上に形成されたマーキング層2m及び釉薬層2dの各成分の含有量は、例えばEPMA(電子プローブ微小分析)やXPS(X線光電子分光)等の公知の微小分析方法を用いて同定できる。例えばEPMAを用いる場合、特性X線の測定には、波長分散方式とエネルギー分散方式のいずれを用いてもよい。また、絶縁体2から釉薬層2dを剥離し、これを化学分析あるいはガス分析することにより組成同定する方法もある。
【0045】
釉薬層2dの軟化点は、例えば700℃以下の範囲で調整するのがよい。軟化点が700℃を超えると、釉薬層2dとマーキング層2mとの反応が進みやすくなり、マーキング層2mのにじみや色調変化を生じやすくなる。なお、釉薬の軟化点は、例えば釉薬層2dを絶縁体2から剥離して加熱しながら示差熱分析を行い、屈状点を表す最初の吸熱ピークの次に現れるピーク(すなわち第2番目に発生する吸熱ピーク)の温度をもって該軟化点とする。また、絶縁体2表面に形成された釉薬層2dの軟化点については、釉薬層2d中の各成分の含有量をそれぞれ分析して酸化物換算した組成を算出し、この組成とほぼ等しくなるように、各被酸化元素成分の酸化物原料を配合・溶解後、急冷してガラス試料を得、そのガラス試料の軟化点をもって当該形成された釉薬層2dの軟化点を推定することもできる。
【0046】
次に、接地電極4及び中心電極3の本体部3aはNi合金等で構成されており、Ir、Pt及びRhの1種又は2種以上を主成分とする貴金属合金を主体に構成される発火部31,32が、溶接接合等により形成されている。また、中心電極3の本体部3aの内部には、放熱促進のためにCuあるいはCu合金等で構成された芯材3bが埋設されている。なお、発火部31及び対向する発火部32は少なくとも一方を省略する構成としてもよい。
【0047】
上記スパークプラグ100は、例えば下記のような方法で製造される。まず、絶縁体2であるが、これは原料粉末として、アルミナ粉末と、Si成分、Ca成分、Mg成分、Ba成分及びB成分の各成分源粉末を、焼成後に酸化物換算にて前述の組成となる所定の比率で配合し、所定量の結合剤(例えばPVA)と水とを添加・混合して成形用素地スラリーを作る。なお、各成分源粉末は、例えばSi成分はSiO粉末、Ca成分はCaCO粉末、Mg成分はMgO粉末、Ba成分がBaCOあるいはBaSO、B成分がHBO粉末の形で配合できる。なお、HBOは溶液の形で配合してもよい。
【0048】
成形用素地スラリーは、スプレードライ法等により噴霧乾燥されて成形用素地造粒物とされる。そして、成形用素地造粒物をラバープレス成形することにより、絶縁体の原形となるプレス成形体を作る。成形体は、さらに外面側をグラインダ切削等により加工して、図2に示す絶縁体2に対応した外形形状に仕上げられ、次いで温度1400〜1600℃で焼成されて絶縁体2となる。
【0049】
次に、図3に示すように、絶縁体2の本体部2bの外周面に、マーキング層形成のための印刷層2m’を形成する。印刷のためのインクとしては、顔料など、呈色金属成分を含む原料酸化物粉末を、溶媒と有機結合剤あるいは粘性調整剤等と配合したものを使用できる。このインクを用いて、釉薬層2dを形成前の絶縁体2の表面に所望のパターンに印刷する。なお、使用する原料酸化物粉末粒子の平均粒径は、例えば0.3〜2.0μmの範囲で調整するのがよい。平均粒径が0.3μm未満では釉薬層2dへの顔料成分の拡散が生じやすくなり、色のにじみ等の原因ともなりうる。他方、2μm以上ではインクの粘性が高くなりすぎ、印刷層2mの塗布厚さにむら等が生じやすくなる。
【0050】
次に、釉薬スラリーの調製を以下のようにして行う。まず、Si、B、Zn、Ba、及びアルカリ金属成分(Na、K、Li)等の各成分源となる成分源粉末(例えば、Si成分はSiO粉末、B成分はHBO粉末、ZnはZnO粉末、Ba成分はBaCOあるいはBaSO粉末、NaはNaCO粉末、KはKCO粉末、LiはLiCO粉末)を、所定の組成が得られるように配合して混合する。次いで、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を水中に投じて急冷・ガラス化し、さらに粉砕することにより釉薬フリットを作る。そして、この釉薬フリットにカオリン、蛙目粘土等の粘土鉱物と有機バインダーとを適量配合し、さらに水を加えて混合することにより釉薬スラリーを得る。
【0051】
そして、図4に示すように、この釉薬スラリーSを噴霧ノズルNから絶縁体2の必要な表面に噴霧・塗布することにより、釉薬粉末堆積層としての釉薬スラリー塗布層2d’を形成し、これを乾燥する。なお、先に形成してある印刷層2mは釉薬スラリー塗布層2d’に覆われる。
【0052】
次に、この釉薬スラリー塗布層2d’を形成した絶縁体2への、中心電極3と端子金具13との組付け、及び抵抗体15と導電性ガラスシール層16,17との形成工程の概略は以下の通りである。まず、図5(a)に示すように、絶縁体2の貫通孔6に対し、その第一部分6aに中心電極3を挿入した後、(b)に示すように導電性ガラス粉末Hを充填する。そして、(c)に示すように、貫通孔6内に押さえ棒28を挿入して充填した粉末Hを予備圧縮し、第一の導電性ガラス粉末層26を形成する。次いで抵抗体組成物の原料粉末を充填して同様に予備圧縮し、さらに導電性ガラス粉末を充填して予備圧縮を行うことにより、図5(d)に示すように、中心電極3側(下側)から貫通孔6内には、第一の導電性ガラス粉末層26、抵抗体組成物粉末層25及び第二の導電性ガラス粉末層27が積層された状態となる。
【0053】
そして、図6(a)に示すように、貫通孔6に端子金具13を上方から配置した組立体PAを形成する。この状態で加熱炉に挿入してガラス軟化点以上である800〜950℃の所定温度に加熱し、その後、端子金具13を貫通孔6内へ中心電極3と反対側から軸方向に圧入して積層状態の各層25〜27を軸方向にプレスする。これにより、同図(b)に示すように、各層は圧縮・焼結されてそれぞれ導電性ガラスシール層16、抵抗体15及び導電性ガラスシール層17となる(以上、ガラスシール工程)。
【0054】
ここで、釉薬スラリー塗布層2d’に含まれる釉薬フリットの軟化点を600〜700℃としておけば、釉薬スラリー塗布層2d’を、上記ガラスシール工程における加熱により同時に釉焼して釉薬層2dとすることができる。また、ガラスシール工程の加熱温度として800〜950℃の比較的低い温度を採用することで、中心電極3や端子金具13の表面への酸化も生じにくくなる。そして、釉薬スラリー塗布層2d’の釉焼に伴い、印刷層2m’(図3)も焼結されてマーキング層2m(図2)となる。なお、印刷層2m’中の溶媒や有機成分は、釉焼時に蒸発あるいは燃焼して除去される。釉薬スラリー塗布層2d’は釉焼に伴い溶融して透明なガラス状の釉薬層2dとなり、下側のマーキング層2mが透視可能な状態となる。マーキング層2mの組成を前述のように調整することで、Pb成分の含有量が低く、亜鉛成分の比較的高い釉薬層2dとの間の反応が抑制され、マーキング層2mの外観色を黒色として安定的に認識することができる。
【0055】
こうしてガラスシール工程が完了した組立体PAには、主体金具1や接地電極4等が組み付けられて、図1に示すスパークプラグ100が完成する。スパークプラグ100は、そのねじ部7においてエンジンブロックに取り付けられ、燃焼室に供給される混合気への着火源として使用される。
【0056】
【実験例】
本発明の効果を確認するために、以下の実験を行なった。
(実験例1)
絶縁体2を次のようにして作製した。まず、原料粉末として、アルミナ粉末(アルミナ95質量%、Na含有量(NaO換算値)0.1質量%、平均粒径3.0μm)に対し、SiO(純度99.5%、平均粒径1.5μm)、CaCO(純度99.9%、平均粒径2.0μm)、MgO(純度99.5%、平均粒径2μm)、BaCO(純度99.5%、平均粒径1.5μm)、HBO(純度99.0%、平均粒径1.5μm)、ZnO(純度99.5%、平均粒径2.0μm)を所定比率にて配合するとともに、この配合した粉末総量を100質量部として、親水性バインダとしてのPVAを3質量部と、水103質量部とを加えて湿式混合することにより、成形用素地スラリーを作製した。
【0057】
次いで、これら組成の異なるスラリーをそれぞれスプレードライ法により乾燥して、球状の成形用素地造粒物を調製した。なお、造粒物は、ふるいにより粒径50〜100μmに整粒している。そして、この造粒物をラバープレス法により圧力50MPaにて成形し、その成形体の外周面にグラインダ研削を施して所定の絶縁体形状に加工するとともに、温度1550℃で焼成することにより絶縁体2を得た。なお、蛍光X線分析により、絶縁体2は下記の組成を有していることがわかった:
Al成分:Al換算値で94.9質量%;
Si成分:SiO換算値で2.4質量%;
Ca成分:CaO換算値で1.9質量%;
Mg成分:MgOに換算値で0.1質量%;
Ba成分:BaOに換算値で0.4質量%;
B成分:B換算値で0.3質量%。
【0058】
次に、釉薬スラリーを次のようにして調製した。まず、原料としてSiO(純度99.5%)、Al粉末(純度99.5%)、HBO粉末(純度98.5%)、NaCO粉末(純度99.5%)、KCO粉末(純度99%)、LiCO粉末(純度99%)、BaSO粉末(純度99.5%)、SrCO粉末(純度99%)、ZnO粉末(純度99.5%)、MoО粉末(純度99%)、CaO粉末(純度99.5%)、TiO粉末(純度99.0%)、ZrO粉末(純度99.5%)、MgO粉末(純度99.5%)、PbO粉末(純度99%)を各種比率で配合し、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を水中に投じて急冷・ガラス化し、さらにアルミナ製ポットミルにより粒径50μm以下に粉砕することにより釉薬フリットを作製した。そして、この釉薬フリット100質量部に対し粘土鉱物としてのニュージーランドカオリンを3質量部、及び有機バインダーとしてのPVAを2質量部配合し、さらに水を100質量部加えて混合することにより、2種類の釉薬スラリーを得た。なお、塊状に凝固させた釉薬試料を用いて釉薬の化学組成を分析した。その分析結果は、以下の通りであった:
(釉薬組成1)
SiО:28.5mol%
О:28.5mol%
ZnO:15.8mol%
BaO:5.5mol%
NaO:2.2mol%
O:5.4mol%
LiO:3.0mol%
AlО:2.4mol%
MoО:0.5mol%
ZrO:1.2mol%
MgO:1.1mol%
TiO:0.7mol%
CaO:3.3mol%
【0059】
(釉薬組成2)
SiО:29.5mol%
О:30.1mol%
ZnO:13mol%
BaO:3mol%
SrO:2.2mol%
NaO:1.4mol%
O:5.1mol%
LiO:3.0mol%
AlО:1.5mol%
MoО:0.5mol%
ZrO:1.2mol%
MgO:3.3mol%
PbO:6.2mol%
【0060】
次に、マーキング層形成用の各種組成のインクを、以下のようにして調製した。
すなわち、表1の各組成となるように酸化物原料を配合し、500〜1000℃にて仮焼した後、トロンメルミルにて平均粒径1μm以下となるように粉砕する。そして、その粉砕した粉末に適量のワニスとアルキド樹脂とを加えて混合し、ロールミルにて混練することにより、インクを得る。
【0061】
上記のインクを用いて、絶縁体2の表面に印刷層2m’を厚さ2μmにて形成して乾燥した後、釉薬スラリー(釉薬組成1)を、図4のように噴霧ノズルより絶縁体2の表面に噴霧後、乾燥して釉薬スラリー塗布層2d’を形成した。なお、乾燥後の釉薬の塗布厚さは100μm程度である。この絶縁体2を用いて、図1に示すスパークプラグ100を各種作成した。ただし、ねじ部7の外径は14mmとした。また、抵抗体15の原料粉末としてはB−SiO−BaO−LiO系ガラス、ZrO粉末、カーボンブラック粉末、TiO粉末、金属Al粉末を、導電性ガラスシール層16,17の原料粉末としてはB−SiO−NaO系ガラス、Cu粉末、Fe粉末、Fe−B粉末をそれぞれ用い、ガラスシール時の加熱温度、すなわち釉焼温度は900℃にて行った。
【0062】
そして、釉焼後の釉薬層2dを介して透視されるマーキング層2mの色調を目視確認するとともに、白色光源を用いた拡大鏡観察により、JIS:Z8721に準拠して作成された標準色票と目視比較して、その明度及び彩度を測定した。そして、色調確認の終了した試験品に対し、絶縁体2の表面に形成された釉薬層2dの各組成をEPMA分析により測定した。さらに、断面のEPMA分析により、マーキング層の組成分析を行った。以上の結果を表1に示す(組成は、酸化物換算にて示している)。
【0063】
【表1】
Figure 0003580761
【0064】
このように、釉薬層がPb成分をほとんど含まず、かつZn成分の含有量が比較的高いにもかかわらず、マーキング層の組成を調整する事により、該マーキング層の明度及び彩度がともに3以下の、黒系の色調が安定的に実現されていることがわかる。なお、マーキング層が赤褐色となった番号3のインクに関しては、Pbを含有する釉薬組成2の釉薬スラリーを用いて同様の実験を行ったところ、結果は明度3、彩度2であり、問題のない黒色を呈した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスパークプラグの一例を示す全体正面断面図。
【図2】絶縁体の外観を釉薬層とともに示す正面図。
【図3】印刷層の形成工程の説明図。
【図4】釉薬スラリー塗布層の形成工程の説明図。
【図5】ガラスシール工程の説明図。
【図6】図5に続く説明図。
【符号の説明】
1 主体金具
2 絶縁体
2d 釉薬層
2m マーキング層
3 中心電極
4 接地電極

Claims (10)

  1. 絶縁体の表面に形成されるとともに、金属元素成分としてFe及びMnの少なくとも一方と、Cr及びCoの少なくとも一方とを含有するマーキング層と、
    そのマーキング層を透視可能な状態で被う釉薬層とを有し、
    該釉薬層は、Pb成分の含有量がPbO換算にて5mol%以下とされ、かつ、前記釉薬層を介して透視される当該マーキング層の色調が、JIS:Z8721に規定された明度において3以下であり、かつ彩度において3以下となるか、又は明度において4以下であり、かつ彩度において2以下となるように、マーキング層に含有される金属元素成分の種別及び含有量が調整されていることを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記釉薬層はZn成分を含有する請求項1記載のスパークプラグ。
  3. 前記釉薬層はZn成分を、ZnOに酸化物換算した値にて1〜25mol%含有する請求項2記載のスパークプラグ。
  4. 前記マーキング層は、金属元素成分としてFeとCrとを含有する請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  5. 前記マーキング層は、Fe成分をFe に酸化物換算した値にて30〜60質量%と、Cr成分をCr に酸化物換算した値にて10〜40質量%とを含有する請求項4記載のスパークプラグ。
  6. 絶縁体の表面に形成されるマーキング層と、
    そのマーキング層を透視可能な状態で被う釉薬層とを有し、
    該釉薬層は、Pb成分の含有量がPbOに酸化物換算した値にて5mol%以下とされ、かつ、Zn成分を、ZnOに酸化物換算した値にて1〜25mol%含有するとともに、
    前記マーキング層は、Fe成分をFe に酸化物換算した値にて30〜60質量%と、Cr成分をCr に酸化物換算した値にて10〜40質量%とを含有することを特徴とするスパークプラグ。
  7. 前記マーキング層は、Cr成分をCr に酸化物換算した値にて10〜25質量%含有する請求項5又は6に記載のスパークプラグ。
  8. 前記マーキング層は、Co成分をCoOに酸化物換算した値にて10〜40質量%含有する請求項1ないし7のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  9. 前記マーキング層は、Ni成分をNi に酸化物換算した値にて0.5〜15質量%含有する請求項1ないし8のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  10. 前記マーキング層は、Al成分及びBa成分の少なくとも一方を、Al成分はAl に、Ba成分はBaOにそれぞれ酸化物換算した値にて、合計で0.5〜15質量%含有する請求項1ないし9のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
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