JP2004022227A - スパークプラグ - Google Patents

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布目 健二
Makoto Sugimoto
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Abstract

【課題】絶縁体の表面上に形成される、文字、記号、画像等を表すマーキング層におけるPb成分の含有量を減少させる。
【解決手段】絶縁体2の表面上のマーキング層2mに含有させるPb成分の含有量を、PbO換算にて、5mol%以下とするとともに、Si成分を、Al成分、Li成分、Na成分、K成分のうち一種または2種以上のアルカリ金属成分、さらに、V成分、Cr成分、Mn成分、Fe成分、Co成分、Ni成分、Cu成分、Pr成分、Nd成分、Au成分、Cd成分、Sn成分、Sb成分、Se成分のうち少なくとも一種以上が含有される発色成分にて構成する。
【選択図】    図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパークプラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車エンジン等の内燃機関の点火用に使用されるスパークプラグは、一般に、接地電極が取り付けられた主体金具の内側に、アルミナ系セラミック等で構成された絶縁体が配置され、その絶縁体の内側に中心電極が配置された構造を有する。絶縁体は、主体金具の後方側開口部から軸方向に突出し、その突出部の内側に端子金具が配置され、これがガラスシール工程により形成される導電性ガラスシールや抵抗体等を介して中心電極と接続される。そして、その端子金具を介して高圧を印加することにより、接地電極と中心電極との間に形成されたギャップに火花放電が生じることとなる。
【0003】
ところが、プラグ温度が高くなったり、周囲の温度が上昇したりするなどの条件が重なると、高圧印加してもギャップに飛火せず、絶縁体の表面を回り込む形で端子金具と主体金具との間で放電する、いわゆるフラッシュオーバ現象が生じることがある。そのため、一般に使用されているほとんどのスパークプラグにおいては、主にこのフラッシュオーバ現象防止のために絶縁体の表面上に釉薬層が形成されている。他方、釉薬層は、絶縁体表面を平滑化して汚染を防止したり、化学的あるいは機械的強度を高めたりするといった役割も果たす。
【0004】
スパークプラグ用のアルミナ系絶縁体の場合、従来は、ケイ酸塩ガラスに比較的多量のPbOを配合して軟化点を低下させた鉛ケイ酸塩ガラス系の釉薬が使用されてきたが、環境保護の観点より近年では、Pb成分を含有する釉薬は敬遠されるようになってきている。そこで、釉薬を無鉛化するために、種々検討がなされている。
【0005】
上記釉薬層以外にも、スパークプラグの絶縁体の表面上には通常、メーカ名やロゴマークあるいは品番など、文字や記号その他の画像からなる象形体が形成されている。この象形体として形成されてなるマーキング層は、発色成分である顔料を配合した一種または2種以上のインクを絶縁体の表面上に印刷させた後、焼成させることにより焼き付け形成される。このようにして、マーキング層は、自身の表面が焼き付け後の絶縁体の表面上に露出した上絵の形態、または、自身の表面が焼き付け後の絶縁体の表面上に露出していない下絵の形態のいずれかの形態にて形成されている。また、下絵の形態にてマーキング層が形成される場合、該マーキング層は、視認可能な状態とされる。さらに、マーキング層には、選定されるインクの種別により種々の色が呈色されるとともに、選定されるインクの種数により単色または複数の色が呈色される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記マーキング層は、下絵または上絵のいずれの形態においても、その表面をより平滑化させた状態で形成させる必要がある。この平滑化が抑制されると、マーキング層において所望の象形体を具現化させることが外観上抑制されることになる。そこで、従来は、象形体を形成させるために用いるインクにPb成分を比較的多量に含有させることで、マーキング層の表面の平滑化が図られていた。しかしながら、上記釉薬層と同様に、マーキング層においても、環境保護の観点より、その無鉛化を図ることは重要な課題とされる。
【0007】
そこで、マーキング層の無鉛化を進めるためには、マーキング層に含有されるPb成分の含有量を減少させた状態においても、そのマーキング層の表面の平滑性が少なくとも確保されるように、マーキング層に含有される含有成分の種類およびその含有量を検討する必要が生じる。また、特に、上絵の形態にて形成されるマーキング層においては、フラッシュオーバ現象の防止や、化学的または機械的強度を高めるといった釉薬層の機能がさらに求められる。このように、下絵または上絵といったマーキング層の形成形態を問わずに、マーキング層に含有されるPb成分の含有量を減少させる場合、該マーキング層の表面における平滑性の確保以外にも釉薬層の機能を有するように、マーキング層に含有される含有成分の種類およびその含有量を検討することが必要とされる。
【0008】
本発明は、まさに上記課題を鑑みてなされたものであって、すなわち本発明は、マーキング層に含有されるPb成分の含有量を減少させた状態においても、マーキング層の表面における平滑性が確保され、かつ、該マーキング層を釉薬層の機能を有したものとすることができるスパークプラグを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
上記課題を解決するための本発明のスパークプラグは、
絶縁体が配設されたスパークプラグであって、該絶縁体の表面上の少なくとも一部に形成されてなる、発色成分を含有し且つ視認可能とされるマーキング層を少なくとも有し、
前記マーキング層は、Pb成分の含有量が、PbO換算にて、5mol%以下とされるとともに、Si成分の含有量が、SiO換算にて、35〜90mol%、かつ、Al成分の含有量が、Al換算にて、0.1〜20mol%、かつ、Li成分、Na成分、K成分のうち一種または2種以上とされるアルカリ金属成分の含有量が、それぞれLiO、NaO、KO換算にて、0.1〜10mol%、さらに、V成分、Cr成分、Mn成分、Fe成分、Co成分、Ni成分、Cu成分、Pr成分、Nd成分、Au成分、Cd成分、Sn成分、Sb成分、Se成分のうち少なくとも一種以上が含有される前記発色成分の含有量が、それぞれV、Cr、MnO、Fe、CoO、NiO、CuO、Pr、Nd、Au、Cd、SnO、Sb、SeO換算にて、50mol%以下とされることを特徴とする。
【0010】
上記本発明のスパークプラグは、発色成分を含有してなるマーキング層が、自身の表面を焼き付け後の絶縁体の表面上に露出させた形の上絵の形態、または、自身の表面を焼き付け後の絶縁体の表面上に露出させていない形の下絵の形態のいずれかの形態にて形成されたものを念頭においたものである。このような両形態のいずれの形態においても、形成されたマーキング層の表面は、マーキング層が所望の外観にて視認されるように、より平滑化された状態であることが望まれる。この平滑化をなすために、従来においては、マーキング層に比較的多量のPb成分を含有させる必要があったが、本発明においては、そのPb成分の含有量をPbO換算にて5mol%以下とすることができる。
【0011】
上記のように、マーキング層におけるPb成分の含有量をPbO換算にて5mol%以下に削減させる場合、Pb成分以外の構成成分にて、マーキング層の表面における平滑化を図る必要がある。また、この平滑化にてマーキング層の表面における平滑性を確保する以外にも、マーキング層においては、マーキング層における化学的または機械的強度(以下、単に強度とも言う。)や絶縁性を確保する必要がある。上絵の形態にて形成されたマーキング層においては、釉薬層の機能を有するように、特に、マーキング層における強度や、フラッシュオーバ現象の防止に寄与する絶縁性を確保する必要がある。そこで、これら平滑性、強度および絶縁性といったマーキング層に必要とされる要件を確保するために、本発明のマーキング層においては、Pb成分の含有量がPbO換算にて5mol%以下とされるとともに、必須とされる含有成分およびその含有量の範囲を以下に記す理由にて規定させてなる。
【0012】
本発明のマーキング層においては、ガラス成分としてのSi成分が、SiO換算にて35〜90mol%含有されてなる。このSi成分は、マーキング層を焼成形成させる際のガラス基材とされるとともに、マーキング層の絶縁性を十分に確保させる役割を果たす。そこで、該役割を果たすSi成分の含有量であるが、その含有量が、SiO換算にて35mol%より小さくなると、マーキング層を焼成させる際の粒子の流動性が過度に大きくなり、マーキング層における自身と隣接する層との境界に外観上、色のにじみが生じてしまい、所望の外観にてマーキング層が視認されない不具合が生じる。一方、Si成分の含有量が、SiO換算にて90mol%を超えると、マーキング層を焼成形成させる際の粒子の流動性が抑制されてしまい、マーキング層を焼成形成させることが困難となる。これら内容を考慮して、Si成分の含有量は、35〜90mol%の範囲とされる。
マーキング層を焼成させる際の粒子の流動性が過度に大きくなり、マーキング層における自身と隣接する層との界面に外観上、色のにじみが生じてしまい、所望の外観にてマーキング層が視認されない不具合が生じる。
【0013】
次に、マーキング層においては、Al成分が、Al換算にて0.1〜20mol%含有されてなる。このAl成分は、マーキング層を焼成形成させる際の粒子の流動性を安定化させる役割を果たす。そのため、Al成分を含有させることで、マーキング層を焼成形成させるための焼成温度域を広げることが可能になるとともに、焼成形成されるマーキング層を、焼結性よく緻密形成させることが可能になる。その結果、マーキング層の強度を十分に確保することが可能となる。そこで、Al成分の含有量であるが、Al換算にて0.1mol%より小さくなると、マーキング層を緻密形成させる効果を十分に得ることができない。そのため、マーキング層の強度を十分に確保することができなくなる。一方、Al成分の含有量が、Al換算にて20mol%を超えると、マーキング層を呈色させるための発色成分が、その呈色効果を十分に果たすことができなくなる。そのため、マーキング層の外観色にくすみが生じる、または、所望の色とは違い、変色した状態にてマーキング層の外観が視認されるといった不具合が生じてしまう。これら内容を考慮して、Al成分の含有量は、0.1〜20mol%の範囲とされる。
【0014】
次に、マーキング層においては、Li成分、Na成分、K成分のうち1種または2種以上とされるアルカリ金属成分が、それぞれLiO、NaO、KO換算にて、0.1〜10mol%含有されてなる。このアルカリ金属成分は、上記ガラス成分とされるSi成分の軟化点を下げる役割を担う。そのため、アルカリ金属成分を含有させることで、マーキング層を焼成形成させる際の粒子の流動性を高めることが可能となるとともに、焼成形成されるマーキング層の表面をより平滑化されたものとできる。その結果、マーキング層の表面における平滑性を十分に確保することが可能となる。そこで、アルカリ金属成分の含有量であるが、それぞれLiO、NaO、KO換算にて0.1mol%より小さくなると、マーキング層の表面における平滑性を十分に確保することができない。一方、アルカリ金属成分の含有量が、それぞれLiO、NaO、KO換算にて10mol%を超えると、マーキング層の絶縁性が低下してしまう不具合が生じる。これら内容を考慮して、アルカリ金属成分の含有量は、0.1〜10mol%の範囲とされる。さらに、この含有量の範囲において、アルカリ金属成分を、Li成分、Na成分、K成分のうち2種、より望ましくは3種を共添加させた形とすることで、マーキング層の絶縁性をさらに高めることが可能となる。
【0015】
本発明においては、上記したSi成分、Al成分、アルカリ金属成分を、それぞれ上記した数値範囲にてマーキング層に含有させることで、平滑性、強度、絶縁性といったマーキング層に必要とされる要件が確保されてなる。これらマーキング層に含有されてなる含有成分以外に、さらに、マーキング層には、マーキング層を呈色させるための発色成分が含有されてなる。この発色成分は、V成分、Cr成分、Mn成分、Fe成分、Co成分、Ni成分、Cu成分、Pr成分、Nd成分、Au成分、Cd成分、Sn成分、Sb成分、Se成分のうち少なくとも1種以上が含有されたものであるとともに、その含有量が、それぞれV、Cr、MnO、Fe、CoO、NiO、CuO、Pr、Nd、Au、Cd、SnO、Sb、SeO換算にて、50mol%以下とされる。
【0016】
上記した発色成分とされる各成分は、その成分をなす上記酸化物などの組成物にてマーキング層に含有されることになる。また、該発色成分とされる各成分をなす各組成物は、JIS:Z8102にて規定される色のうちの一色に対応する形で視認されるものとされる。なお、絶縁体の色とマーキング層の色とが同色である場合、もしくは、マーキング層の色と釉薬層の色とが同色である場合は、マーキング層が視認できなくなることがある。よって、絶縁体の色とマーキング層の色、または、マーキング層の色と釉薬層の色とは異なる色となるように、マーキング層に含有される発色成分の種類を適宜選択することが望ましい。
【0017】
マーキング層に含有される発色成分の種類は、マーキング層を呈色させる際に所望される色に対応して適宜選択されるものである。また、上記発色成分とされる各成分それぞれをなす組成物は、上記した酸化物組成に限定されるものではなく、該酸化物組成は、マーキング層に含有されてなる発色成分の含有量を規定するための便宜上のものである。また、発色成分をなす酸化物組成としては、酸素と結合される元素の取り得る価数により種々異なるものが存在する。また、例えば、Au成分においては、酸素と結合することなく、Au単体にて存在する場合もある。このように発色成分なす物質としては、酸素と結合する元素の価数が異なる種々の酸化物組成などの組成物や、単一元素からなる単体のものなどといったように種々の種類を取り得ることが可能である。また、その物質の種類の違いや、例えば、酸素と結合する元素の価数が異なる種々の酸化物組成における、その価数の違いにより、視認される色を異する。そのため、マーキング層に含有される発色成分をなす物質の種類は、マーキング層を呈色させる際に所望される色に対応して、適宜選択されるものである。次に、マーキング層に含有される発色成分の含有量であるが、上記した発色成分とされる各成分のそれぞれ酸化物組成の換算にて、50mol%以下とされる。マーキング層においては、発色成分が少なくとも含有されていれば、マーキング層は呈色される。つまり、マーキング層に含有される発色成分は、0mol%より大きく50mol%以下とされる。そこで、マーキング層に含有される発色成分の含有量の上限値であるが、該発色成分が50mol%含有されれば、黒を含めたすべての色に、その濃淡も含めて十分に対応することが可能である。よって、マーキング層に含有される発色成分の含有量は、50mol%以下とされる。
【0018】
次に、本発明のマーキング層は、Mg成分およびCa成分のうち1種または2種を第一アルカリ土類金属成分として含有してなることを特徴とする。
【0019】
マーキング層に、Mg成分およびCa成分のうち1種または2種を第一アルカリ土類金属成分として含有させることで、マーキング層の絶縁性をさらに高めることが可能となる。特には、第一アルカリ土類金属成分を、Ca成分を必須としたものとすることで、マーキング層の絶縁性をさらに高めることが可能となる。このような効果をもつ第一アルカリ土類金属成分の含有量であるが、特には、その含有量をそれぞれMgO、CaO換算にて20mol%以下とすることが望ましい。この含有量の上限値を超えると、マーキング層に含有される上記ガラス成分としてのSi成分の軟化点が過度に上昇し、マーキング層を、十分に焼結性を確保した状態で焼成させることが困難となる場合や、マーキング層を焼成させること自体が困難となる場合があるからである。ここで、焼成後のマーキング層の焼結性が十分に確保されていないと、該マーキング層の外観がくすんだ色にて視認されるといった不具合が生じやすくなる。
【0020】
次に、本発明のマーキング層は、Ti成分およびZr成分のうち1種または2種を発色促進成分として含有してなることを特徴とする。
【0021】
マーキング層に、Ti成分およびZr成分のうち1種または2種を発色促進成分として含有させることで、発色成分をより安定した状態にて焼成形成させることができる。その結果、発色成分により呈色されるマーキング層の外観色を、さらに、つやが良く、くすみなどがない良好なものとすることができる。このような効果をもつ発色促進成分の含有量であるが、特には、その含有量をそれぞれTiO、ZrO換算にて50mol%以下とすることが望ましい。この含有量の上限値を超えると、マーキング層の外観色が所望された色にて視認されないといった不具合が、生じる場合があるからである。
【0022】
次に、本発明のマーキング層は、Zn成分を含有してなることを特徴とする。マーキング層に、Zn成分を含有させることで、マーキング層の表面をさらに平滑化させることが可能となる。このような効果をもつZn成分の含有量であるが、特には、その含有量をZnO換算にて12mol%以下とすることが望ましい。この含有量の上限値を超えると、マーキング層の外観色に、つや不足や、くすみなどの不具合が生じる場合があるからである。
【0023】
次に、本発明のマーキング層は、Sr成分およびBa成分のうち1種または2種を第二アルカリ土類金属成分として含有してなることを特徴とする。
【0024】
マーキング層に、Sr成分およびBa成分のうち1種または2種を第二アルカリ土類金属成分として含有させることで、マーキング層の絶縁性をさらに高めることが可能となる。このような効果をもつ第二アルカリ土類金属成分の含有量であるが、特には、それぞれSrO、BaO換算にて2mol%以下とすることが望ましい。この含有量の上限値を超えると、マーキング層の強度が低下してしまう場合があるからである。
なお、上記した第一アルカリ土類金属成分、第二アルカリ土類金属成分、Zn成分および発色促進成分のそれぞれ効果は、当然、マーキング層に含有させることにより得られるものである。よって、それぞれの含有量は、上記した酸化物換算にて0mol%より大きいことは言うまでもない。
【0025】
上述したSi成分、Al成分、アルカリ金属成分および発色成分を、少なくとも必須成分として含有してなる本発明のマーキング層は、Pb成分の含有量を削減させた状態にておいても、平滑性、強度、絶縁性といったマーキング層に必要とされる要件を確保することが可能とされる。また、さらに、上述した第一アルカリ土類金属成分、第二アルカリ土類金属成分、Zn成分、および発色促進成分のうち1種または2種以上の成分をマーキング層に含有させることで、平滑性、強度、絶縁性といったマーキング層に必要とされる要件をより確保することが可能となる。このようにして、マーキング層を、下絵および上絵のいずれの形成形態にても有用に適用させることが可能となる。その中においても、特に、焼き付け後の絶縁体の表面上にて、自身の表面が露出した形で形成された形態とされる、上絵の形態にも有用に適用させることが可能である点が、本発明のマーキング層の特徴と言える。このような上絵の形態にて形成させた場合においても、本発明のマーキング層は、釉薬層に求められる機能を代替することが可能とされるのみならず、下絵の形態にて形成される場合に比べて、その外観が直接視認されることとなるので、該外観をより所望の状態で視認させることが可能となる。
【0026】
上記してきた本発明のマーキング層は、発色成分を含有させることで、呈色がなされたものである。また、該発色成分をなす物質は、それぞれ固有の色にて視認されるものとされる。そこで、この視認される固有の色を異にする少なくとも2種の物質を、それぞれ違う領域に形成した場合、マーキング層は、視認される色を異にする少なくとも2種の色領域を有するとともに、複数の色にて視認されることとなる。また、ここで、視認される固有の色を異にする少なくとも2種の物質としては、発色成分の種類を異にするものであってもよいし、同一種類の発色成分とされるが、その組成物の種類が異なる物質であってもよい。このように、マーキング層に含有される発色成分の種類や、同一種類の発色成分であっても、それをなす各物質の種類を適宜選択することで、マーキング層を、複数の種類の色が呈色された鮮やかな色彩からなるものとすることができる。また、さらに、マーキング層をメーカ名やロゴマークあるいは品番など、文字や記号その他の画像からなる象形体として、その外観を視認させることで、該象形体を具現化させる場合、この象形体を、複数の色領域が組み合わせられたものとすることで、鮮やかな色彩にて視認させることが可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に示すいくつかの実施例を参照して説明する。
図1は、本発明に係わるスパークプラグの一実施例を示すものである。該スパークプラグ100は、筒状の主体金具1、先端部21が突出するようにその主体金具1の内側に嵌めこまれた絶縁体2、先端に形成された発火部31を突出させた状態で絶縁体2の内側に設けられた中心電極3、および主体金具1に一端が溶接等により結合されるとともに他端側が側方に曲げ返されて、その側面が中心電極3の先端部と対向するように配置された接地電極4等を備えている。また、接地電極4には上記発火部31に対向する発火部32が形成されており、それら発火部31と、対向する発火部32との間の隙間が火花放電ギャップgとされている。
【0028】
主体金具1は、低炭素鋼等の金属により円筒状に形成されており、スパークプラグ100のハウジングを構成するとともに、その外周面には、スパークプラグ100を図示しないエンジンブロックに取り付けるためのねじ部7が形成されている。なお、1eは、主体金具1を取り付ける際に、スパナやレンチ等の工具を係合させる工具係合部であり、六角状の軸断面形状を有している。
【0029】
また、絶縁体2の軸線方向には、貫通孔6が形成されており、その一方の端部側に端子金具13が固定され、同じく他方の端部側に中心電極3が固定されている。また、該貫通孔6内において端子金具13と中心電極3との間に抵抗体15が配置されている。この抵抗体15の両端部は、導電性ガラスシール層16、17を介して中心電極3と端子金具13とにそれぞれ電気的に接続されている。これら抵抗体15と導電性ガラスシール層とが焼結導電材料部を構成している。なお、抵抗体15は、ガラス粉末と導電材料粉末(及び必要に応じてガラス以外のセラミック粉末)との混合粉末を原料として、後述のガラス工程においてこれらを加熱・プレスすることにより得られる抵抗体組成物で構成される。なお、抵抗体15を省略して、一層の導電性ガラスシール層により端子金具13と中心電極3とを一体化した構成としてもよい。
【0030】
絶縁体2は、内部に自身の軸線方向に沿って中心電極3を嵌め込むための貫通孔6を有し、全体が以下の絶縁材料により構成されている。すなわち、該絶縁体材料はアルミナを主体に構成され、Al成分を、Al換算にて85〜90質量%(望ましくは90〜98質量%)含有するアルミナ系セラミック焼結体として構成される。
【0031】
Al成分以外の成分の具体的な組成としては下記のようなものを例示できる。
Si成分:SiO2換算にて1.50〜5.00質量%
Ca成分:CaO換算にて1.20〜4.00質量%
Mg成分:MgO換算にて0.05〜0.17質量%
Ba成分:BaO換算にて0.15〜0.50質量%
B成分:B換算にて0.15〜0.50質量%
【0032】
図2は、絶縁体2のみを取り出して示すものである。絶縁体2の軸方向中間には、周方向外向きに突出する突出部2eが例えばフランジ状に形成されている。そして、絶縁体2には、中心電極(図1)の先端に向かう側を前方側として、該突出部2eよりも後方側がこれよりも細径に形成された本体部2bとされている。一方、突出部2eの前方側にはこれよりも細径の第一軸部2gと、その第一軸部2gよりもさらに細径の第二軸部2iがこの順序で形成されている。なお、本体部2bの外周面後端部にはコルゲーション部2cが形成されている。また、第一軸部2gの外周面は略円筒状とされ、第二軸部2iの外周面は先端に向かうほど縮径する略円錐面状とされている。
【0033】
図1に戻り、中心電極3の軸断面径は抵抗体15の軸断面径よりも小さく設定されている。そして、絶縁体2の貫通孔6は、中心電極3を貫通させる略円筒状の第一部分6aと、その第一部分6aの後方側(図面上方側)においてこれよりも大径に形成される略円筒状の第二部分6bとを有する。端子金具13と抵抗体15とは第二部分6b内に収容され、中心電極3は第一部分6a内に挿通される。中心電極3の後端部には、その外周面から外向きに突出して電極固定用凸部3cが形成されている。そして、上記貫通孔6の第一部分6aと第二部分6bとは、第一軸部2g内において互いに接続しており、その接続位置には、中心電極3の電極固定用凸部3cを受けるための凸部受け面6cがテーパ面またはアール面状に形成されている。
【0034】
また、第一軸部2gと第二軸部2iとの接続部2hの外周面は段付面とされ、これが主体金具1の内面に形成された主体金具側係合部としての凸状部1cとリング状の板パッキン63を介して係合することにより、軸方向の抜止めがなされている。他方、主体金具1の後方側開口部内面と、絶縁体2の外面との間には、フランジ状の突出部2eの後方側周縁と係合するリング状の線パッキン62が配置され、そのさらに後方側にはタルク等の充填層61を介してリング状の線パッキン60が配置されている。そして、絶縁体2を主体金具1に向けて前方側に押し込み、その状態で主体金具1の開口縁をパッキン60に向けて内側に加締めることにより加締め部1dが形成され、主体金具1が絶縁体2に対して固定されている。
【0035】
次に、図2に示すように、絶縁体2の表面、具体的にはコルゲーション部2cを含む本体部2bの外周面と、第一軸部2gの外周面とに釉薬層2dが形成されている。なお、図1に示すように、本体部2bに形成された釉薬層2dは、その軸方向前方側が主体金具1の内側に所定長入り込む形で形成される一方、後方側は本体部2bの後端縁位置まで延びている。
【0036】
釉薬層2dの含有成分としては、公知のものを用いることが可能であるが、例えば、SiO換算にて5〜60mol%の含有量とされるSi成分と、B換算にて3〜50mol%の含有量とされるB成分とからなる第一成分を35〜80mol%の含有量とし、Zn成分とアルカリ土類金属成分R(但し、RはCa、Sr、Baから選ばれる1種または2種以上)との少なくともいずれかからなる第二成分を、Zn成分はZnO換算にて、アルカリ土類金属成分Rは組成式RO換算にて、5〜60mol%の含有量とするとともに、それら第一成分と第二成分との合計含有量を65〜98mol%とし、さらに、アルカリ金属成分として、Na成分はNaO、K成分はKO、Li成分はLiO換算にて、それら成分の1種または2種以上を合計で2〜15mol%含有させたたものより釉薬層2dを構成させることで、釉薬層2dに含有されるPb成分がPbO換算にて5mol%以下に削減された無鉛化がなされた釉薬層2dとすることができる。このように、釉薬層2dとしては、公知のもののうちでも特に、無鉛化がなされたものとされる。
【0037】
また、釉薬層2dの形成厚さとしては、例えば、7〜150μmm、望ましくは、10〜50μm程度である。特に、絶縁体本体部2bの基端部(主体金具1から後方に突出している部分の、コルゲーション部2cが付与されていない円筒状の外周面を呈する部分)外周面における釉薬層2dの厚さt1(平均値)は7〜50μmである。
【0038】
次に、図2に示すように、本体部2bにおいて絶縁体2の表面にはマーキング層2mが形成されている。この場合は、絶縁体2の表面と釉薬層2dとに当接するようにマーキング層2mが形成されてなる下絵の形態とされる。また、この下絵の形態以外にも、図3に示すように、本体部2bにおいて絶縁体2の表面に形成された釉薬層2dの表面に当接するように、上絵の形態にてマーキング層2mは形成される。図2、図3にそれぞれ示されるような下絵また上絵のいずれかの形態にてマーキング層2mは形成されることになる。このような形成形態を有するマーキング層2mは、Pb成分の含有量が、PbO換算にて5mol%以下、例えば、Pb成分を含有しない0mol%とされるPb成分の含有量が削減されたものである。また、このような無鉛化がなされたマーキング層2mにおいては、その表面における平滑性や、強度および絶縁性といったマーキング層に要求される諸条件を確保するために、Si成分が、SiO換算にて、35〜90mol%、かつ、Al成分が、Al換算にて、0.1〜20mol%、かつ、Li成分、Na成分、K成分のうち一種または2種以上とされるアルカリ金属成分が、それぞれLiO、NaO、KO換算にて、0.1〜10mol%含有されてなる。このような成分を必須成分として含有されてなるマーキング層2mは、下絵および上絵といった形成形態を問わずに、マーキング層として有用なものとされる。また、図3に示すような上絵の形態からなるマーキング層2mにおいては、釉薬層の機能を代替する必要があることから、特に、その表面における平滑性や、強度およびフラッシュオーバ現象の防止に寄与する絶縁性といった諸条件の確保が必要となるが、マーキング層2mに、上記した含有量とされるそれぞれ必須成分を含有させることで、釉薬層の代替としてマーキング層2mは、十分にその機能を果たすことができる。
【0039】
さらに、マーキング層2mには、該マーキング層2mを所望の色に呈色させるための発色成分として、V成分、Cr成分、Mn成分、Fe成分、Co成分、Ni成分、Cu成分、Pr成分、Nd成分、Au成分、Cd成分、Sn成分、Sb成分、Se成分のうち少なくとも一種以上が、それぞれV、Cr、MnO、Fe、CoO、NiO、CuO、Pr、Nd、Au、Cd、SnO、Sb、SeO換算として、50mol%以下含有されてなる。これら発色成分とされる各成分は、それぞれ固有の色にて視認されるものであり、マーキング層2mを呈色させる際の所望される色に応じて、それら発色成分とされる各成分のうち少なくとも1種が適宜選択される。
【0040】
また、マーキング層2mは、図2や図3のような文字といったように、メーカ名やロゴマークあるいは品番など、文字や記号その他の画像を象形体として形成する。そして、該象形体は、その外観が視認されることにより具現化される。また、マーキング層2mを呈色させる際に、例えば、図2や図3における3文字のうちMの文字を他の文字とは異なる色にて呈色させたい場合は、該Mの文字が形成された色領域に含有される発色成分をなす物質と、他の文字が形成された色領域に含有される発色成分をなす物質とが、異種であり且つ視認される色を異にする物質とする。このように発色成分をなす物質を適宜選択することで、マーキング層2mを、視認される色を異にする2種以上の色領域からなるものとできるとともに、マーキング層2mをなす3文字を鮮やか色彩にて視認させることができる。ここでは、象形体を文字とするマーキング層2mを代表させて説明したが、これに限らず、例えば、画像を象形体とする場合においても、視認される色を異にする2種以上の色領域を組み合わせることにより鮮やかな色彩の画像として視認させることができる。
【0041】
上記してきたマーキング層2mの形成厚さとしては、例えば、1〜10μm程度とされる。マーキング層2mに限らず、マーキング層の形成厚さが1μm未満では、下絵の形態における絶縁体または上絵の形態における釉薬層といったマーキング層に対する下地の層の色が透けて視認されやすくなる。その結果、マーキング層の外観を所望の色にて視認させることが抑制される。他方、マーキング層の形成厚さが10μm超えると、マーキング層の表面に凹凸形状が発生しやすくなる。その結果、マーキング層の表面の平滑性が抑制されるとともに、マーキング層の外観を所望の形で視認させることが抑制される。これら内容を考慮して、マーキング層の形成厚さは、1〜10μmの範囲とされるのが望ましく、該範囲を加味して、マーキング層2mの形成厚さは、1〜10μm程度とされるのが望ましい。
【0042】
ここで、絶縁体2上に形成されたマーキング層2mおよび釉薬層2dに含有される各含有成分の含有量は、例えば、EPMA(電子プローブ微小分析)やXPS(X線光電子分光)等の公知の微小分析方法を用いて同定できる。例えばEPMAを用いる場合、特性X線の測定には、波長分散方式とエネルギー分散方式のいずれを用いてもよい。また、絶縁体2から剥離させたマーキング層2mまたは釉薬層2dを化学分析あるいはガス分析することにより組成同定する方法もある。
【0043】
マーキング層2mの軟化点、つまりは、マーキング層2mに含有されるガラス成分とされるSi成分の軟化点は、例えば、700℃以下の範囲に調整するのがよい。軟化点が700℃を超えると、マーキング層2mを、焼結性を十分に確保した状態で焼成させることが困難となり、ひいては、所望の焼成温度にて焼成するができなくなる。なお、マーキング層の軟化点は、例えばマーキング層2mを絶縁体2から剥離して加熱しながら示差熱分析を行ない、軟化点を表す最初の吸熱ピークの次に現れるピーク(すなわち第二番目に発生する吸熱ピーク)の温度をもって該軟化点とする。また、絶縁体2表面上に形成されたマーキング層2mの軟化点については、マーキング層2mに含有されてなる各含有成分の含有量をそれぞれ分析するとともに酸化物換算した組成を算出し、この組成とほぼ等しくなるように、各被酸化元素成分の酸化物原料を配合・溶解後、急冷してガラス試料を得、そのガラス試料の軟化点をもって当該形成されたマーキング層2mの軟化点を推定することもできる。
マーキング層2mを、焼結性を十分に確保した状態で焼成することが困難となり、ひいては、所望の焼成温度にて焼成するができなくなる。
【0044】
次に、接地電極4および中心電極3の本体部3aはNi合金等で構成されており、Ir、PtおよびRhの1種又は2種以上を主成分とする貴金属成分を主体に構成される発火部31、32が、溶接接合等により形成されている。また、中心電極3の本体部3aの内部には、放熱促進のためにCuあるいはCu合金等で構成された芯材3bが埋設されている。なお、発火部31および対向する発火部32は少なくとも一方を省略する構成としてもよい。
【0045】
上記スパークプラグ100は、例えば下記のような方法で製造される。まず、絶縁体2であるが、これは、原料粉末として、アルミナ粉末と、Si成分、Ca成分、Mg成分、Ba成分およびB成分の各成分源粉末を、焼成後に酸化物換算にて前述の組成となる所定の比率で配合し、所定量の結合剤(例えばPVA)と水とを添加・混合して成形用素地スラリーを作る。なお、各成分源粉末は、例えば、Si成分はSiO粉末、Ca成分はCaCO粉末、Mg成分はMgO粉末、Ba成分はBaCOまたはBaSO粉末、B成分はHBO粉末の形で配合できる。なお、HBOは溶液の形で配合してもよい。
【0046】
成形用素地スラリーは、スプレードライ法等により噴霧乾燥されて成形用素地造粒物とされる。そして、成形用素地造粒物をラバープレス成形することにより、絶縁体の原型となるプラス成形体を作る。該成形体は、さらに外面側をグラインダー研磨等により加工して、図2に示す絶縁体2に対応した外形形状に仕上げられるとともに、温度1400〜1600℃で焼成されて絶縁体2となる。
【0047】
次に、形成させた絶縁体2の表面上にマーキング層2mおよび釉薬層2dを形成されるが、まず、図2に示すマーキング層2mが下絵の形態にて形成される場合の形成工程を説明する。図4に示すように、絶縁体2の本体部2bの外周面に、マーキング層形成のための印刷層2m’を形成する。印刷のためのインクとしては、顔料とされる上記発色成分のうち少なくとも1種以上の成分およびマーキング層に含有させる上記必須成分を少なくとも含む、マーキング層に含有させる含有成分の原料酸化物粉末を、溶媒と有機結合剤あるいは粘性調整剤等と配合したものを使用できる。また、このインクにおいては、配合される原料酸化物粉末の種類および配合比が適宜選択・調整されており、マーキング層に含有される各含有成分の含有量および、マーキング層を呈色させる際に所望される色に応じた発色成分の種類および該発色成分をなす物質の種類が適宜選択・調整される形となる。そこで、該インクを用いて、釉薬層2d形成前の絶縁体2の表面に、マーキング層をなす所望の象形体となるパターンを印刷する。また、このパターンを印刷する際に、マーキング層に呈色させる色を異にするように、配合される発色成分に係わる配合成分の種類を異にする2種以上のインクを用いることで、形成されるマーキング層を複数の色領域を有するものとすることができる。
【0048】
なお、上記インクに配合させる際に使用される原料酸化物粉末粒子の平均粒径は、例えば、0.3〜2.0μmの範囲で調整するのがよい。該平均粒径が0.3μm未満では釉薬層2dへの発色成分の拡散が生じやすくなり、視認される色ににじみ等の不具合が生じやすくなる。他方、2μmを越えるとインクの粘性が高くなりすぎ、印刷層2m’の塗布厚さにむら等が生じやすくなる。
【0049】
次に、釉薬スラリーの調整を以下のようにして行なう。まず、例えば、Si成分、B成分、Zn成分、Ba成分、およびアルカリ金属成分(Na成分、K成分、Li成分)等の各成分原料となる原料粉末(例えば、Si成分はSiO粉末、B成分はHBO粉末、Zn成分はZnO粉末、Ba成分はBaCOまたはBaSO粉末、Na成分はNaCO粉末、K成分はKCO粉末、Li成分はLiCO粉末)を所定の組成が得られるように配合して混合する。次に、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を水中に投じて急冷・ガラス化し、さらに粉砕することにより釉薬フリットを作る。そして、この釉薬フリットにカオリン、蛙目粘度等の粘度鉱物と有機バインダとを適量配合し、さらに水を加えて混合することにより釉薬スラリーを得る。
【0050】
そして、図5に示すように、この釉薬スラリーSを噴霧ノズルNから絶縁体2の必要な表面に噴霧・塗布することにより、釉薬粉末堆積層としての釉薬スラリー塗布層2d’を形成し、これを乾燥する。なお、先に形成してある印刷層2mは釉薬スラリー塗布層2d’に覆われる。
【0051】
次に、この釉薬スラリー2d’を形成した絶縁体2への、中心電極3と端子金具13の組み付け、及び抵抗体15と導電性ガラスシール層16、17との形成工程の概略は以下の通りである。まず、図6(a)に示すように、絶縁体2の貫通孔6に対し、その第一部分6aに中心電極3を挿入した後、(b)に示すように導電性ガラス粉末Hを充填する。そして、(c)に示すように、貫通孔6内に押さえ棒28を挿入して充填した粉末Hを予備圧縮し、第一の導電性ガラス粉末層26を形成する。次に、抵抗体組成物の原料粉末を充填して同様に予備圧縮し、さらに導電性ガラス粉末を充填して予備圧縮を行なうことにより、図5(d)に示すように、中心電極3側(下側)から貫通孔6内には、第一の導電性ガラス粉末層26、抵抗体組成物粉末層25及び第二の導電性ガラス粉末層27が積層された状態となる。
【0052】
そして、図7(a)に示すように、貫通孔6に端子金具13を上方から配置した組立体PAを形成する。この状態で加熱炉に挿入してガラス軟化点以上である800〜1200℃の所定温度に加熱し、その後、端子金具13を貫通孔6内へ中心電極3と反対側から軸方向に圧入して積層状態の各層25〜27を軸方向にプレスする。これにより、同図(b)に示すように、各層は圧縮・焼結されてそれぞれ導電性ガラスシール層16、抵抗体15および導電性ガラスシール層17となる。以上がガラスシール工程の概略工程である。
【0053】
ここで、印刷層2m’に含まれるガラス成分としてのSi成分の軟化点を600〜700℃、さらに、釉薬スラリー塗布層2d’に含まれる釉薬フリットの軟化点を600〜700℃としておけば、印刷層2m’および釉薬スラリー塗布層2d’を、上記ガラスシール工程における加熱により同時に焼成して、マーキング層2mおよび釉薬層2dを焼成形成させることができる。なお、Si成分の軟化点より釉薬フリットの軟化点のほうが低温である。Si成分の軟化点より釉薬フリットの軟化点が高温の場合、焼成した際に、印刷層が先に焼成され、マーキングににじみが生じることになる。また、ガラスシール工程の加熱温度として800〜950℃の比較的低い温度を採用することで、中心電極3と端子金具13の表面への酸化も生じにくくなる。なお、印刷層2m’中の溶媒や有機成分は、その焼成過程にて蒸発または燃焼して除去される。釉薬スラリー塗布層2d’は、その焼成に伴い溶融して透明がガラス状の釉薬層2dとなり、下側のマーキング層2mは、この釉薬層2dを介して、その外観が視認可能な状態となる。
【0054】
こうしてガラスシール工程が完了した組立体PAには、主体金具1や接地電極4等が組み付けられて、図1に示すスパークプラグ100が完成する。スパークプラグ100は、そのねじ部7においてエンジンブロックに取り付けられ、燃焼室に供給される混合気への着火源として使用される。
【0055】
ここまでに述べてきた工程は、図2に示すような、マーキング層2mが下絵の形態にて形成される場合であった。そこで、次に、図3に示すような、マーキング層2mが上絵の形態にて形成される場合の概略工程について述べる。まず、前述したように釉薬スラリーを得る。そして、この釉薬スラリーを絶縁体2の必要な表面に噴霧・塗布することにより、釉薬粉末堆積層としての釉薬スラリー塗布層2d’を形成して、これを乾燥する。この状態は、図4の印刷層2m’が印刷形成されてないものに対応する。次に、前述したように用意したインクを用いて、この釉薬スラリー塗布層2d’の表面に、マーキング層をなす所望の象形体となるパターンを印刷するとともに印刷層2m’を塗布形成する。その後、この絶縁体2への、中心電極3と端子金具13との組み付け、及び抵抗体15と導電性ガラスシール層16、17との形成を前述した工程手順にて行なうとともに、該工程手順に含まれる上記ガラスシール工程における加熱により、印刷層2m’および釉薬スラリー塗布層2d’を同時に焼成することで、図3に示すような上絵の形態からなるマーキング層2mおよび釉薬層2dを形成させることができる。以上が、マーキング層2mが上絵の形態にて形成される場合の、前述した下絵の形態にて形成される場合と工程上の手順が違う所のみを説明した概略工程である。
【0056】
また、マーキング層2mが上絵の形態にて形成される場合、上記以外にも以下のような工程にても形成させることができる。まず、上記同様にして、まず、絶縁体2の表面に釉薬スラリー塗布層2d’を形成する。そして、その後、この絶縁体2を、釉薬スラリー塗布層2d’に含有される釉薬フリットのガラス軟化点以上の温度に加熱させるとともに、釉薬スラリー塗布層2d’を釉薬層2dとなるように焼成形成させる。次に、この釉薬層2dの表面に、上記同様のインクを用いて、マーキング層をなす所望の象形体となるパターンを印刷するとともに印刷層2m’を塗布形成する。その後は、上記した同様の工程を経て、図3にしめすような上絵の形態からなるマーキング層2mおよび釉薬層2dを形成させることができる。
【0057】
【実施例】
本発明の効果を確認するために、以下の実験を行なった。
(実施例1)
絶縁体2を次のように作成した。まず、原料粉末として、アルミナ粉末(アルミナ95質量%、Na成分含有量(NaO換算値)0.1質量%、平均粒径3.0μm)に対し、SiO2(純度99.5%、平均粒径1.5μm)、CaCO(純度99.9%、平均粒径2.0μm)、MgO(純度99.5%、平均粒径2μm)、BaCO(純度99.5%、平均粒径1.5μm)、HBO(純度99.0%、平均粒径1.5μm)、ZnO(純度99.5、平均粒径2.0μm)を所定比率にて配合するとともに、この配合した粉末総量を100質量部として、親水性バインダとしてのPVAを3質量部と、水103質量部とを加えて湿式混合することにより、成形用素地スラリーを作成した。
【0058】
次に、これら組成の異なるスラリーをそれぞれスプレードライ法により乾燥して、球状の成形用素地造粒物を調製した。なお、造粒物は、ふるいにより粒径50〜100μmに整粒している。そして、この造粒物をラバープレス法により圧力50MPaにて成形し、その成形体の外周面にグラインダ研磨を施して所定の絶縁体形状に加工するとともに、温度1550℃で焼成することにより絶縁体2を得た。なお、蛍光X線分析により、絶縁体2は下記の組成を有していることがわかった。:
Al成分:Al換算値で94.9質量%;
Si成分:SiO換算値で2.4質量%;
Ca成分:CaO換算値で1.9質量%;
Mg成分:MgO換算値で0.1質量%;
Ba成分:BaO換算値で0.4質量%;
B成分:B換算値で0.3質量%。
【0059】
次に、釉薬スラリーを次のように調製した。まず、原料としてSiO粉末(純度99.5%)、Al粉末(純度99.5%)、HBO粉末(純度98.5%)、NaCO粉末(純度99.5%)、KCO粉末(純度99%)、LiCO粉末(純度99%)、BaSO粉末(純度99.5%)、ZnO粉末(純度99.5%)、MoO粉末(純度99%)、CaO粉末(純度99.5%)、TiO粉末(純度99.0%)、ZrO粉末(純度99.5%)、MgO粉末(純度99.5%)を各種比率で配合し、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を水中に投じて急冷・ガラス化し、さらにアルミナ製ポットミルにより粒径50μm以下に粉砕することにより釉薬フリットを作成した。そして、この釉薬フリット100質量部に対し粘土鉱物としてのニュージーランドカオリンを3質量部、及び有機バインダとしてのPVAを2質量部配合し、さらに水を100質量部加えて混合することにより釉薬スラリーを得た。なお、この釉薬スラリーを塊状に凝固させた釉薬試料を用いて、釉薬フリットに対応した釉薬の化学組成を分析した。その分析結果は、以下の通りであった:
(釉薬組成)
SiO:28.5mol%
:28.5mol%
ZnO:15.8mol%
BaO:5.5mol%
NaO:2.2mol%
O:5.4mol%
LiO:3.0mol%
Al:2.4mol%
MoO:0.5mol%
ZrO:1.2mol%
MgO:1.1mol%
TiO:0.7mol%
CaO:3.3mol%
【0060】
次に、マーキング層形成用の各種組成のインクを、以下のようにして調整した。表1(No.1〜No.39)の各組成およびその組成量となるように酸化物原料を配合し、500〜1000℃にて仮焼した後、トロンメルミル又はめのう乳鉢にて平均粒径1μm以下となるように粉砕する。そして、その粉砕した粉末に適量のワニスとアルキド樹脂又はワックスを加えて混合し、ロールミルにて混練することにより、インクを得る。
【0061】
上記のインクおよび釉薬スラリーを用いて、図3に示したマーキング層が釉薬層の表面に形成された上絵の形態となるように、マーキング層および釉薬層の形成を行なった。その形成方法としては、上記した方法にて、まず、絶縁体の表面に釉薬スラリーを噴霧ノズルより噴霧後、乾燥して釉薬スラリー塗布層を形成した。なお、乾燥後の釉薬スラリー塗布層の塗布厚さは100μm程度である。そして、この釉薬スラリー塗布層の表面に、上記のインクを用いて、マーキング層をなす所定のパターンを、その塗布厚さが2μmとなるように印刷形成するとともに乾燥させることにより印刷層を形成した。そして、このように釉薬スラリー塗布層および印刷層を形成させた絶縁体を用いて、図1に示すスパークプラグ100を各種作成した。ただし、ねじ部7の外径は14mmとした。また、抵抗体15の原料粉末としてはB−SiO−BaO−LiO系ガラス、ZrO粉末、カーボンブラック粉末、TiO粉末、金属Al粉末を、導電性ガラスシール層16、17の原料粉末としてはB−SiO−NaO系ガラス、Cu粉末、Fe粉末、Fe−B粉末をそれぞれ用い、ガラスシール時の加熱温度を800〜1200℃としてそれらの形成を行なった。また、この800〜1200℃に加熱させたガラスシール時に、釉薬スラリー塗布層および印刷層を同時に焼成することで、釉薬層およびマーキング層を焼成形成した。なお、図8に示すように、絶縁体2の本体部2b上にて、それぞれマーキング層2mと釉薬層2dの表面が、周方向に対して90゜おきに交互に露出するように形成した。
【0062】
上記のようにして、表1におけるそれぞれNo.1〜No.41の各組成およびその組成量となるように配合されたインクを用いて形成された、それぞれマーキング層に対応するスパークプラグ100(図1)を各種作成した。これら各種スパークプラグが、表1のNo.1〜No.41それぞれに対応する。
【0063】
しかしながら、表1におけるNo.1〜No.3およびNo.5のものについては、マーキング層を焼成形成させることができず、これらマーキング層は、インクに配合された成分が十分に反応しきれずに過度の焼きむらが発生したものや、インクに配合された成分のうち特定成分の溶融のみが促進されたことによる、過度の溶融ダレが発生したものとなった。つまり、表1におけるNo.1〜No.3およびNo.5のものは、マーキング層の形成自体が困難とされるものとなった。
【0064】
そして、No.1〜No.3およびNo.5を除く、No.4およびNo.6〜No.41のスパークプラグに対して、視認されるマーキング層の外観の色を目視にて判定するとともに、マーキング層に含有される各組成および組成量をEPMA分析により測定した。以上の結果を表1に示す(組成は、酸化物換算にて示している)。なお、表1のそれぞれNo.1〜No.3およびNo.5に対応する各組成および組成量は、それぞれに対応したインクを配合した際の、マーキング層に含有させる所期の目的とした各組成および組成量を表すものである。
【0065】
【表1】
Figure 2004022227
Figure 2004022227
Figure 2004022227
【0066】
表1より、マーキング層に含有させる発色成分の種類およびその含有量を適宜選択・調整することで、種々の色をマーキング層に呈色させることが可能であることが分かる。また、No.1〜No.9は本発明の請求範囲外のものであり、これら以外のNo.10〜No.41のものについて言えば、マーキング層に含有されるPb成分のPbO換算による含有量が、少なくとも5mol%以下となっていることが分かる。
【0067】
また、マーキング層の焼成形成が可能とされたNo.4、No.6〜No.41のものに対しては、マーキング層の表面の平滑性、マーキング層の強度および絶縁性、さらに、マーキング層に含有される発色成分の発色性を確認するために以下に示すような測定を行なった。なお、No.1〜No.3のものは、マーキング層に含有させるPb成分の含有量を過度に大きくしたために、ガラス成分とされるSi成分の軟化点の過度の低下を招き、その結果、マーキング層の焼成形成を困難化させたものと言える。このような観点からも、本発明においては、マーキング層に含有されるPb成分の含有量を、PbO換算にて5mol%以下にする効果を有する。他方、No.5のものは、マーキング層に含有させるSi成分の含有量をSiO換算にて90mol%を超えるものとしたために、マーキング層を焼成形成させる際の粒子の流動性が抑制されてしまい、十分に反応した状態で、マーキング層を焼成形成できなかったものと言える。そのために、マーキング層に含有させるSi成分の含有量は、少なくともSiO換算にて90mol%以下とする必要がある。
【0068】
マーキング層の表面の平滑性を目視判定にて判定した。また、マーキング層の外観を視認した際、視認される表面のつやの良し悪しで、マーキング層の表面の平滑性に対する良否判定とした。なぜなら、表面に巨視的な荒れや欠けなどの不具合や微視的な表面荒れや欠陥などの不具合があれば、表面に照射された光が、表面にて乱反射されたり、表面の欠陥に吸収されたりするために、視認されるマーキング層の表面のつやが抑制されるからである。そこで、マーキング層の外観を視認した際、表面のつやが非常に良好なものを◎、良好のものを○、表面につやがなく不良とされるものを×とした。
【0069】
次に、マーキング層の強度に対する良否判定は、絶縁体に対する熱衝撃試験を行なうことにより判定した。この熱衝撃試験は、所定の温度に過熱させた絶縁体を、水中に投下させ、該絶縁体に割れが生じ始める加熱温度を調べる試験である。そこで、この絶縁体に割れが生じ始める温度を、実施例のマーキング層が形成された絶縁体と、比較例として用意したマーキング層が形成されていない絶縁体とについて比較を行ない、比較例の絶縁体に割れが生じ始める温度に対して、実施例の絶縁体に割れが生じ始める温度に低下が見られなかったものを◎、その温度の低下が0℃より大きく5℃未満のものを○、その温度の低下が5℃以上10℃未満のものを△、その温度の低下が10℃以上のものを×とした。なお、比較例のマーキング層が形成されていない絶縁体は、上記した実施例におけるマーキング層に係わる条件を除いた同様の条件にて形成させたものである。つまり、比較例のスパークプラグは、実施例のものから、マーキング層のみを除いたものである。さらに、熱衝撃試験は、実施例および比較例ともに、同一条件にて作成したサンプル5個に対して行なうとともに、絶縁体に割れが生じ始める温度とは、これらサンプル5個にて平均させた温度である。また、熱衝撃試験は、絶縁体に割れが生じ始めるまで、2℃おきに絶縁体の温度を上げて順次行なった。
【0070】
次に、マーキング層の絶縁体に対する良否判定は、絶縁体の表面上にて露出形成された表面にフラッシュオーバを発生させ、一分後のフラッシュオーバ電圧の低下の大きさを基に行なった。具体的には、図8に示したようなマーキング層と釉薬層とが形成されている実施例の絶縁体と、比較例として用意したマーキング層が形成されていない絶縁体とについて比較実験を行なうことにより良否判定を行なった。なお、上記と同様に、比較例のマーキング層が形成されていない絶縁体は、実施例におけるマーキング層に係わる条件を除いた同様の条件にて形成させたものである。よって、実施例の絶縁体の表面上に露出形成された表面は、マーキング層および釉薬層の表面であるのに対し、比較例のものは、釉薬層の表面のみとされる。このような条件にて比較実験を行なったが、比較例のフラッシュオーバ電圧の低下の大きさに対して、実施例のフラッシュオーバ電圧の低下の大きさに差が生じないほど、マーキング層の絶縁性がより確保されていることになる。そこで、比較例のフラッシュオーバ電圧の低下の大きさに対して、実施例のフラッシュオーバ電圧の低下の大きさに差が見られなかったものを◎、そのフラッシュオーバ電圧の低下の大きさの差が、0kVより大きく1kV未満のもの○、そのフラッシュオーバ電圧の低下の大きさの差が、1kV以上のもの×とした。また、ここでは、マーキング層を図8に示すように、絶縁体2の本体部2bの略半分の面積を占めるように形成させている。そこで、例えば、このマーキング層の形成面積をこれよりも小さくした場合、良否判定○のものは、フラッシュオーバ電圧の低下の大きさに差が見られない程度となる、といった範囲のものであり、実際的に、良否判定○のものは、良否判定◎と同レベル程度に非常に良好なものと言える。また、このことは、上記した熱衝撃試験においも同様であり、マーキング層の形成面積を小さくすれば、良否判定○のものは、良否判定◎と同レベル程度に非常に良好なものとなるといった範囲のものである。
【0071】
次に、マーキング層の発色性に対する良否判定は、マーキング層の外観を目視した際に、視認されるマーキング層の呈色具合を基に判定した。また、ここでの呈色具合を、マーキングの視認される色のにじみ具合、視認される色のくすみ具合、視認される色のつや具合、視認される色が、所望した色とは異色の成分を含まず、いかに所望した色として視認されるかの程度具合を表す変色具合などの、視認される色の色調具合にて判断するものとした。そこで、マーキング層の外観を視認した際に、視認される呈色具合が非常に良好なものを◎、良好なもの○、良品許容範囲には入るが、わずかな色のくすみやにじみが視認されたものを△、そして、所望の色として視認されず、色のくすみ等が著しく認められたものを×とした。
【0072】
上述のようにして、No.4、No.6〜No.41のものに対して、マーキング層の表面の平滑性、マーキング層の強度および絶縁性、さらに、マーキング層に含有される発色成分の発色性の良否判定を行なった。その結果を表1に示す。
また、800〜1200℃とされる本実施例の焼成温度範囲の条件で、マーキング層の焼成ができなかったものを、焼成を×とし、該焼成温度範囲の条件でマーキング層の焼成が可能とされたものを、焼成を○とする焼成判定の結果も合わせて表1に示す。
【0073】
No.4および、No.6〜No.9は、本発明の請求範囲外のものであるが、No.4のものは、マーキング層に含有させるSi成分の含有量が、SiO換算にて35mol%より小さいために、マーキング層における自身と隣接する層との境界に外観上、色のにじみが著しく認められる結果となった。このNo.4と上記したNo.5に関する結果より、マーキング層に含有させるSi成分の含有量は、SiO換算にて35〜90mol%とする必要があることが分かる。次に、No.6のものは、マーキング層に含有させるAl成分の含有量が、Al換算にて0.1mol%より小さいために、マーキング層の強度、つまりは、マーキング層が形成された絶縁体の強度を十分に確保できない。一方、No.7のものは、マーキング層に含有させるAl成分の含有量が、Al換算にて20mol%より大きいために、マーキング層に含有される発色成分が、その発色効果を十分に果たせず、マーキング層が所望の発色性を確保できない。この結果より、マーキング層に含有させるAl成分の含有量は、Al換算にて0.1〜20mol%とする必要がある。次にマーキング層に含有させる、Li成分、Na成分、K成分のうち一種または2種以上とされるアルカリ金属成分の、それぞれLiO、NaO、KO換算による含有量であるが、No.8のものは、その含有量が、0.1mol%より小さいために、マーキング層の表面における平滑性を十分に確保することができず、一方、No.9のものは、その含有量が、10mol%より大きいために、フラッシュオーバ現象の防止に寄与する程度の絶縁性をマーキング層が確保できない。この結果より、マーキング層に含有させるアルカリ金属成分の含有量は、0.1〜10mol%とする必要がある。
【0074】
さらに、表1より、マーキング層に少なくとも発色成分を含有させれば、マーキング層は呈色することが分かる(例えば、No.25においては、発色成分の含有量が0.03mol%)。また、黒色をマーキング層に呈色させる際にも、例えばNo.41を見れば分かるように、発色成分を44.7mol%含有させれば十分である。このように、マーキング層に含有させる発色成分の含有量を、0mol%より大きく50mol%以下の範囲としておけば、黒色など種々の色を、その濃淡も含めてマーキング層に呈色させることができる。なお、ここで言う黒色とは、マーキング層から反射される光が可視光成分を含まないものという意味ではなく、一般的に、人が視認する色感覚で黒色と判定する範囲のものである。
【0075】
上記のような含有範囲にて、Si成分、Al成分、アルカリ金属成分を必須成分して含有する本発明のマーキング層は、Pb成分の含有量を削減させた状態においても、表面における平滑性が確保され、かつ、絶縁性や強度といった求められる諸条件を十分に確保したものとなる。また、下絵の形態よりも、これら諸条件の確保が必要とされる上絵の形態においても、本実施例にて示したように、本発明のマーキング層は、有用に釉薬層の代替として機能させることができる。
【0076】
また、No.37に示すように、発色成分以外に上記必須成分のみを含有させるだけ、マーキング層を十分に有用なものとすることができる。さらに、該必須成分に加えて、Zn成分を含有させた場合は、マーキング層の表面の平滑性をより高めることができる(例えばNo.38)。また、Mg成分およびCa成分のうち1種または2種とされる第一アルカリ土類金属成分を含有させた場合は、マーキング層の絶縁性をより高めることができる(例えばNo.21)。また、Sr成分およびBa成分のうち1種または2種とされる第二アルカリ土類金属成分を含有させた場合は、マーキング層の強度をより高めることができる(例えばNo.39)。また、Zr成分およびTi成分のうち1種または2種とされる発色促進成分を含有させた場合は、マーキング層の発色性をより高めることができる(例えばNo.15)。
【0077】
上記のような効果をそれぞれもつ、Zn成分、第一アルカリ土類金属成分、第二アルカリ土類金属成分、発色促進成分であるが、その含有量の上限値を、特に調整することで、マーキング層をより有用なものとすることができる。そこで、まず、Zn成分の含有量としては、ZnO換算にて12mol%以下とする。この含有量を超えると、No.11に示すように、マーキング層の発色性がやや抑制されたものとなる場合があるからである。次に、第一アルカリ土類金属成分のそれぞれMgO、CaO換算による含有量としては、20mol%以下とする。この含有量を超えると、マーキング層に含有されるSi成分の軟化点が過度に高まり、マーキング層を、焼結性を十分に確保した状態で焼成することができない場合や、焼成自体が困難とされる場合があるからである。例えば、No.10のものは、焼成自体は可能とされたが、確かにその焼成温度は、焼成可能とされた他のものより高温となり、その結果、焼結性が十分に確保されず焼成後のマーキング層の外観に僅かではあるがくすみが発生してしまった。次に、第二アルカリ土類金属成分のそれぞれSrO、BaO換算による含有量としては、2mol%以下とする。この含有量を超えると、No.13に示すように、マーキング層の強度がやや抑制されたものとなる場合があるからである。最後に、発色促進成分のそれぞれZrO、TiO換算による含有量としては、50mol%以下とする。この含有量を超えると、No.12に示すように、マーキング層の発色性がやや抑制されたものとなる場合があるからである。このように、必須成分以外の成分のそれぞれ含有量を調整するとともに、該必須成分以外の成分の1種または2種以上を、マーキング層に適宜含有させることで、マーキング層をより有用なものとすることができる。
【0078】
上記の実施例の結果より、本発明のスパークプラグが有するマーキング層は、下絵および上絵の形態を問わず有用なものとして機能することが分かった。また、該マーキング層に種々の色を呈色できることが分かった。そのため、マーキング層を、色彩豊かな象形体として、その外観を具現化させることが可能である。
【0079】
また、上記した各種測定全てが終了した後、実施例のNo.1〜No.39が有する釉薬層の断面のEPMA分析を行なったが、これら釉薬層は、上記した釉薬スラリーを塊状に凝固させた釉薬試料の組成とほぼ同一組成にて構成されていることを確認した。なお、本明細書における実施例および実施形態は、あくまで一例であって、本発明は、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスパークプラグの一例を示す全体正面断面図。
【図2】絶縁体の表面上に形成されるマーキング層の一形成形態を絶縁体の外観にて示す正面図。
【図3】図2に続くマーキング層の一形成形態を絶縁体の外観にて示す正面図。
【図4】印刷層の形成工程の説明図。
【図5】釉薬スラリー塗布層の形成工程の説明図。
【図6】ガラスシール工程の説明図。
【図7】図6に続く説明図。
【図8】実施例におけるマーキング層の形成形態を説明するための説明図。
【符号の説明】
1 主体金具
2 絶縁体
2d 釉薬層
2m マーキング層
3 中心電極
4 接地電極
100 スパークプラグ

Claims (12)

  1. 絶縁体が配設されたスパークプラグであって、該絶縁体の表面上の少なくとも一部に形成されてなる、発色成分を含有し且つ視認可能とされるマーキング層を少なくとも有し、
    前記マーキング層は、Pb成分の含有量が、PbO換算にて、5mol%以下とされるとともに、Si成分の含有量が、SiO換算にて、35〜90mol%、かつ、Al成分の含有量が、Al換算にて、0.1〜20mol%、かつ、Li成分、Na成分、K成分のうち一種または2種以上とされるアルカリ金属成分の含有量が、それぞれLiO、NaO、KO換算にて、0.1〜10mol%、さらに、V成分、Cr成分、Mn成分、Fe成分、Co成分、Ni成分、Cu成分、Pr成分、Nd成分、Au成分、Cd成分、Sn成分、Sb成分、Se成分のうち少なくとも一種以上が含有される、前記発色成分の含有量が、それぞれV、Cr、MnO、Fe、CoO、NiO、CuO、Pr、Nd、Au、Cd、SnO、Sb、SeO換算にて、50mol%以下とされることを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記マーキング層は、Mg成分およびCa成分のうち一種または2種を第一アルカリ土類金属成分として含有してなることを特徴とする請求項1記載のスパークプラグ。
  3. 前記第一アルカリ土類金属成分の含有量が、それぞれMgO、CaO換算にて、20mol%以下とされることを特徴とする請求項2記載のスパークプラグ。
  4. 前記マーキング層は、Ti成分およびZr成分のうち1種または2種を発色促進成分として含有してなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  5. 前記発色促進成分の含有量が、それぞれTiO、ZrO換算にて、50mol%以下とされることを特徴とする請求項4記載のスパークプラグ。
  6. 前記マーキング層は、Zn成分を含有してなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  7. 前記Zn成分の含有量が、ZnO換算にて、12mol%以下とされることを特徴とする請求項6記載のスパークプラグ。
  8. 前記マーキング層は、Sr成分およびBa成分のうち1種または2種を第二アルカリ土類金属成分として含有してなることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  9. 前記第二アルカリ土類金属成分の含有量が、SrO、BaO換算にて、2mol%以下とされることを特徴とする請求項8記載のスパークプラグ。
  10. 前記マーキング層の表面は、前記絶縁体の表面上にて、露出してなることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  11. 前記マーキング層は、視認される色を異にする前記発色成分とされる少なくとも2種の物質を含有してなるとともに、視認される色を異にする色領域を少なくとも2種有してなることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  12. 前記マーキング層は、2種以上の前記色領域を組み合わせることにより、象形体を具現化させたものであることを特徴とする請求項11記載のスパークプラグ。
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