JP2000313681A - アルミナ用無鉛グレーズ組成物およびグレーズド・アルミナ - Google Patents

アルミナ用無鉛グレーズ組成物およびグレーズド・アルミナ

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JP2000313681A
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mol
glass layer
alumina
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glaze composition
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Naoya Kikuchi
直哉 菊地
Jun Hirose
潤 廣瀬
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Noritake Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】従来よりも低温で焼成し得て生成されるガラス
層の特性が従来と同等以上のアルミナ焼結体用グレーズ
組成物、および低温焼成で生成されて従来と同等以上の
特性のガラス層を表面に備えたグレーズド・アルミナを
提供する。 【解決手段】絶縁碍子12のガラス層34の生成に用い
られるアルミナ焼結体用無鉛グレーズ組成物は、B2O3
CaO 、およびAl2O3 を主成分としてそれらの合計を100
(mol%) としたときその割合が70(mol%)、20(mol%)、お
よび10(mol%)に設定されると共に、その主成分がグレー
ズ組成物全体に対する割合で90(wt%) 程度含まれて構成
される。そのため、軟化点が640(℃) 程度と十分に低く
なって焼成温度が850(℃) 程度に低下し、熱膨張係数が
6.0(×10-6/℃) 程度と絶縁碍子12を構成するアルミ
ナ焼結体のそれと同程度であって耐熱衝撃性に優れ、し
かも、500(℃) の温度下における1000(V) 印加時の体積
抵抗で 8.9(MΩ・cm) 以上の高い絶縁性を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミナ焼結体の
表面にガラス層を形成するために用いられるグレーズ用
組成物およびグレーズド・アルミナに関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、電子回路基板、エンジンの点火
栓(スパーク・プラグ)の絶縁碍子や高圧碍子等の構成
材料として、アルミナ焼結体の表面の一部または全部に
ガラス層を設けたグレーズド・セラミックス(グレーズ
ド・アルミナ)が知られている。これらに用いられるグ
レーズド・セラミックスに要求される特性は、例えば、
電子回路基板においては、微細な回路や抵抗体を高精度
に形成できるように表面平滑性に優れ且つ反りの少ない
こと、および、基板上に備えられる抵抗体の発熱に起因
する熱衝撃でガラス層が破損しないように耐熱衝撃性に
優れること等である。また、点火栓の絶縁碍子において
は、シリンダ内でスパークを発生させる必要があること
から、例えば500(℃) 程度の高温下において、絶縁碍子
を軸心方向に貫通する内部電極(中心電極)と外部電極
(接地電極)との間の抵抗値で 100(MΩ) 程度以上の高
絶縁性が要求される。また、高圧碍子には、常温ではあ
るが点火栓等よりも更に高電圧が印加されることから、
一層高い絶縁性が必要である。更に、何れの用途におい
ても、ガラス層はアルミナ焼結体の表面に密着形成され
ることから、施釉時や使用中の温度変化に起因してクラ
ック等が生じないようにそのアルミナ焼結体と熱膨張係
数が同様であることも要求される。
【0003】上記のような特性を満足させるガラス層と
して従来から良く知られているのは鉛ガラスであるが、
鉛ガラスは製造および廃棄の段階で鉛の排出を伴うこと
から環境上好ましくない。そのため、現在では無鉛ガラ
ス(鉛含有量が極めて少なく、好ましくは鉛を全く含ま
ないガラス)が一般に用いられている。例えば、特開平
10−115424号公報に記載されたスパーク・プラ
グに用いられている釉薬(ガラス層)がそれである。こ
のガラス層は、B2O3−SiO2系ガラスにAl2O3 、Na2O、Pb
O 等を含有するものであり、PbO の割合は例えば10(wt
%) 以下が望ましいとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、アルミナ焼
結体の表面にガラス層を形成するに際しては、グレーズ
組成物に有機物或いは無機物の結合助剤と水等の液体を
添加してスラリ(泥漿)を作製し、被覆すべき部分に塗
布した後、グレーズ組成物の種類に応じて定められる焼
成(釉焼)温度で加熱処理を施すことにより、そのグレ
ーズ組成物を熔融させてガラス化する。そのため、この
ガラス層形成時の焼成温度は、被覆物であるアルミナ焼
結体の特性劣化が可及的に小さくなるように低い温度で
あることが望まれる。しかしながら、上記公報に記載さ
れているグレーズ組成物(釉薬スラリ)は焼成温度が90
0(℃) 以上と高いことから、低温で焼成し得て同等以上
の特性を有するグレーズ組成物が望まれていた。しか
も、例えば前述したような点火栓では、アルミナ焼結体
から成る絶縁碍子とニッケル合金等から成る内部電極と
の間をガラスでシールするが、耐熱合金とはいっても金
属製の内部電極を900(℃) もの高温に曝すことは好まし
くない。そのため、高温で処理するガラス層形成工程と
それよりも低温で処理するシール工程とを別々に実施す
る必要があることから、熱処理回数が多くなると共に工
程が長くなるという問題もあった。
【0005】本発明は、以上の事情を背景として為され
たものであって、その目的は、従来よりも低温で焼成し
得て生成されるガラス層の特性が従来と同等以上のアル
ミナ焼結体用グレーズ組成物、および低温焼成で生成さ
れて従来と同等以上の特性を有するガラス層を表面に備
えたグレーズド・アルミナを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための第1の手段】斯かる目的を達成
するため、第1発明のアルミナ焼結体用グレーズ組成物
の要旨とするところは、アルミナ焼結体の表面にガラス
層を形成するために用いられる無鉛グレーズ組成物であ
って、(a) 主成分100(mol%) がB2O3を50乃至90(mol%)、
CaOを10乃至40(mol%)、 Al2O3を 0乃至30(mol%)で構成
され、その主成分が組成物中に 90(wt%)以上の割合で含
まれることにある。
【0007】
【第1発明の効果】このようにすれば、アルミナ焼結体
用無鉛グレーズ組成物は、上記組成で構成され且つ主成
分であるB2O3、 CaO、および Al2O3の合計割合が十分に
大きくされていることから、軟化点が十分に低く、熱膨
張係数がアルミナ焼結体のそれと同程度となって耐熱衝
撃性に優れ、しかも、高い絶縁性を有するものとなる。
そのため、アルミナ焼結体の表面にガラス層を形成する
に際して、高絶縁性等の従来から要求される特性を満足
させつつ焼成温度を低くすることができる。
【0008】因みに、B2O3は本組成物の第1成分であっ
て、軟化点を低下させると共に生成されるガラス層の熱
膨張係数を小さくする作用を有する。そのため、上記主
成分の合計量が90(wt%) 以上であることを前提として、
50(mol%)よりも少なくなると軟化点が700(℃) 程度以上
と高くなって、作業温度すなわちガラス層形成時の焼成
温度が900(℃) 以上となる。反対に90(mol%)よりも多く
なるとアルミナ焼結体に比べて熱膨張係数が小さくなり
過ぎるため、施釉時および使用時の温度変化に起因する
熱衝撃によってガラス層にクラックが生じ得る。また、
CaO は本組成物の第2成分であって、熱膨張係数を大き
くし、絶縁性を低下させると共に、B2O3ほどではないが
軟化点を低下させる作用を有する。すなわち、主として
B2O3によって小さくされるガラス層の熱膨張係数を適切
な大きさに調節する機能を有するが、その一方でガラス
層の絶縁性を低下させる傾向がある。そのため、10(mol
%)よりも少なくなると熱膨張係数が小さくなり過ぎ、反
対に40(mol%)よりも多くなると絶縁性が低下する。ま
た、Al2O3 は含有が任意である本組成物の第3成分であ
って、耐熱性および高温における絶縁性を高めると共に
軟化点を上昇させる作用を有する。そのため、高温特性
上は添加することが好ましいが、30(mol%)を越えると軟
化点が700(℃) 程度以上に高くなって焼成温度を低くで
きない。そして、これら3化合物から成る主成分の合計
量を90(wt%) 以上とすることにより、例えばSiO2(シリ
カ)やアルカリ金属等のその他の成分の量を特性に大き
な影響を与えない程度に十分少なくできるため、軟化点
や絶縁性等の所望の特性を得ることができるのである。
【0009】
【課題を解決するための第2の手段】また、前記の目的
を達成するための第2発明の要旨とするところは、アル
ミナ焼結体の表面にガラス層を形成するために用いられ
る無鉛グレーズ組成物であって、(b) 主成分100(mol%)
がB2O3を50乃至90(mol%)、CaO を10乃至40(mol%)、Al 2O
3 を 0乃至30(mol%)、 La2O3およびY2O3の少なくとも一
方から成る第4成分を1乃至30(mol%)で構成され、その
主成分が組成物中に 90(wt%)以上の割合で含まれること
にある。
【0010】
【第2発明の効果】このようにすれば、アルミナ焼結体
用無鉛グレーズ組成物は、上記組成で構成され且つ主成
分であるB2O3、 CaO、 Al2O3、 La2O3およびY2O3の少な
くとも一方から成る第4成分の合計割合が十分に大きく
されていることから、軟化点が十分に低く、熱膨張係数
がアルミナ焼結体のそれと同程度となって耐熱衝撃性に
優れ、しかも高い絶縁性を有し、更に、高い耐水性を有
するものとなる。そのため、アルミナ焼結体の表面にガ
ラス層を形成するに際して、高絶縁性等の従来から要求
される特性を満足させつつ耐久性をも高め、しかも、焼
成温度を低くすることができる。なお、上記第4成分の
含有量は、好適には 2〜20(mol%)、一層好適には 5〜15
(mol%)である。このようにすれば、焼成温度を一層低い
範囲に留めつつ耐久性を一層高めることができる。
【0011】因みに、上記主成分のうちB2O3、 CaO、お
よび Al2O3の作用は前述した通りであるが、これらに加
えて含まれる第4成分( La2O3およびY2O3)は、アルミ
ナ焼結体の表面に生成されるガラス層の耐水性を高める
と共に組成物の軟化点を上昇させる作用を有する。その
ため、主成分の合計量が90(wt%) 以上であることを前提
として、1(mol%) よりも少なくなると耐水性が不十分と
なって溶解し易くなることから、高温および高湿度下に
おける耐久性が低下する。反対に30(mol%)よりも多くな
ると軟化点が700(℃) 程度以上に高くなって焼成温度を
低くできない。すなわち、前記第1発明の組成を有する
無鉛グレーズ組成物では、耐熱衝撃性や高絶縁性を維持
しつつ焼成温度を従来のものに比べて低くすることがで
きるものの耐水性は不十分である。そのため、低温且つ
低湿度下では優れた特性を有する一方で高温且つ高湿度
下では耐久性が低くなる問題があるが、上記第2発明の
無鉛グレーズ組成物によれば、第1発明の無鉛グレーズ
組成物の特性を略維持したまま、十分な耐水性も得られ
るのである。なお、耐水性を向上させる効果は La2O3
方が大きいが、Y2O3でも十分に耐水性を改善でき、これ
らのうち一方を単独で用いても、両方を混合して用いて
も、含有量に応じて耐水性が改善される。
【0012】
【課題を解決するための第3の手段】また、前記の目的
を達成するための第3発明の要旨とするところは、アル
ミナ焼結体の表面にガラス層を形成するために用いられ
る無鉛グレーズ組成物であって、(c) 主成分100(mol%)
がB2O3を50乃至90(mol%)、CaO を10乃至40(mol%)、Al 2O
3 を 0乃至30(mol%)、CeO2およびTiO2の少なくとも一方
から成る第5成分を 0.1乃至5(mol%) で構成され、その
主成分が組成物中に 90(wt%)以上の割合で含まれること
にある。
【0013】
【第3発明の効果】このようにすれば、アルミナ焼結体
用無鉛グレーズ組成物は、上記組成で構成され且つ主成
分であるB2O3、 CaO、 Al2O3、CeO2およびTiO2の少なく
とも一方から成る第5成分の合計割合が十分に大きくさ
れていることから、軟化点が十分に低く、熱膨張係数が
アルミナ焼結体のそれと同程度となって耐熱衝撃性に優
れ、しかも高い絶縁性を有し、更に、高い変色防止効果
を有するものとなる。そのため、アルミナ焼結体の表面
にガラス層を形成するに際して、高絶縁性等の従来から
要求される特性を満足させつつ太陽光等によるアルミナ
焼結体の変色を抑制して耐久性をも高め、しかも、焼成
温度を低くすることができる。なお、上記第5成分の含
有量は、好適には 0.1〜2.0(mol%) 、一層好適には 0.5
〜1.5(mol%) である。このようにすれば、ガラス自身の
着色を一層抑制しつつアルミナ焼結体の変色を一層抑制
できる。
【0014】因みに、上記主成分のうちB2O3、 CaO、お
よび Al2O3の作用は前述した通りであるが、これらに加
えて含まれる第5成分(CeO2およびTiO2)は、アルミナ
焼結体の表面に生成されるガラス層に着色すると共に、
そのガラス層の太陽光によるアルミナ焼結体の変色防止
能力を高める作用を有する。そのため、主成分の合計量
が90(wt%) 以上であることを前提として、0.1(mol%) よ
りも少なくなると太陽光照射でアルミナ焼結体が変色し
易くなる。反対に 5(mol%)よりも多くなるとガラスの着
色が著しくなりその透明度が低下する。すなわち、前記
第1発明の組成を有する無鉛グレーズ組成物では、耐熱
衝撃性や高絶縁性を維持しつつ焼成温度を従来のものに
比べて低くすることができるものの変色防止能力は不十
分である。そのため、機械的或いは電気的特性等の機能
面では優れた特性を有する一方で強い太陽光の下では耐
久性が低くなり得る問題があるが、上記第3発明の無鉛
グレーズ組成物によれば、第1発明の無鉛グレーズ組成
物の特性を略維持したまま、十分な変色防止効果も得ら
れるのである。一般に、アルミナ焼結体は酸化アルミニ
ウム純度が高い場合には化学的安定性が高く変色し難い
が、純度が低くなるほど太陽光等で変色し易い傾向にあ
り、例えば、前述したような点火栓では95(wt%) 程度以
下の純度のものが用いられていることから比較的容易に
変色する。このような変色が機能面の特性低下を伴うこ
とは少ないが、外観が悪くなって商品価値が低下するた
め好ましくなく、美観の面で耐久性が低下するのであ
る。また、一般にガラス層は被膜面を視認可能な状態で
被覆するために設けられることが多く、そのような用途
では透明度の高いことが望まれるため、ガラス層の着色
も商品価値の低下を伴って好ましくない。なお、第5成
分はCeO2およびTiO2の一方だけを単独で用いても両方を
混合して用いてもよい。
【0015】
【課題を解決するための第4の手段】また、前記の目的
を達成するための第4発明の要旨とするところは、アル
ミナ焼結体の表面にガラス層を形成するために用いられ
る無鉛グレーズ組成物であって、(d) 主成分100(mol%)
がB2O3を50乃至90(mol%)、CaO を10乃至40(mol%)、Al 2O
3 を 0乃至30(mol%)、 La2O3およびY2O3の少なくとも一
方から成る第4成分を1乃至30(mol%)、CeO2およびTiO2
の少なくとも一方から成る第5成分を 0.1乃至5(mol%)
で構成され、その主成分が組成物中に 90(wt%)以上の割
合で含まれることにある。
【0016】
【第4発明の効果】このようにすれば、アルミナ焼結体
用無鉛グレーズ組成物は、B2O3、 CaO、および Al2O3
第1乃至第3成分に加えて、 La2O3およびY2O3の少なく
とも一方から成る第4成分、およびCeO2およびTiO2の少
なくとも一方から成る第5成分の両者が含まれて主成分
が構成され、且つその主成分の合計割合が十分に大きく
されていることから、軟化点が十分に低く、熱膨張係数
がアルミナ焼結体のそれと同程度となって耐熱衝撃性に
優れ、高い絶縁性を有し、しかも高い耐水性を有し、更
に、高い変色防止効果を有するものとなる。そのため、
アルミナ焼結体の表面にガラス層を形成するに際して、
高絶縁性等の従来から要求される特性を満足させつつ機
能面および美観面の耐久性を共に高め、しかも、焼成温
度を低くすることができる。
【0017】
【第1乃至第4発明の他の態様】ここで、好適には、前
記第1発明乃至第4発明のアルミナ用無鉛グレーズ組成
物は、主成分のうちの第1成分であるB2O3が50乃至75(m
ol%)、第2成分である CaOが20乃至30(mol%)、第3成分
である Al2O3が 0乃至20(mol%)の範囲で含まれるもので
ある。このようにすれば、一層高い絶縁性を有し且つ低
温で焼成可能なグレーズ組成物を得ることができる。一
層好適には、B2O3は65(mol%)以上、Al2O3は10(mol%)以
下が望ましい。
【0018】また、好適には、前記第1発明乃至第4発
明のアルミナ用無鉛グレーズ組成物は、前記主成分の合
計量が95(wt%) 以上である。このようにすれば、不純物
量が一層少なくなるため、一層絶縁性を高めつつ焼成温
度を低くできる。一層好適には、上記合計量は98(wt%)
以上である。このようにすれば、グレーズ組成物は実質
的に主成分だけで構成されて、SiO2やアルカリ金属酸化
物等の他の化合物は殆ど含まれないことから、一層高い
絶縁性を備えて900(℃) 未満の比較的低温で焼成可能な
グレーズ組成物を得ることができる。
【0019】また、好適には、前記のアルミナ用無鉛グ
レーズ組成物は、アルカリ金属を実質的に含まないもの
である。このようにすれば、ガラス層に高温下で高電圧
が印加される場合にも、その絶縁性の変化が殆どなく高
い絶縁性が保たれる。そのため、ガラス層に電流が流れ
ることに起因して電気回路に流れる電流が変化すること
が抑制されるため、アルミナ焼結体上に形成されている
電気回路の信頼性が高められる。
【0020】因みに、従来ガラス層の構成材料として用
いられていたグレーズ組成物には、一般にLi(リチウ
ム)、 K(カリウム)、Na(ナトリウム)等のアルカリ
金属やSiO2等が含まれている。しかしながら、本発明者
等の実験結果によれば、ガラス層の構成成分にアルカリ
金属が含まれていると、常温では高い絶縁性を有するも
のの、高温下で電圧を印加した場合の絶縁性が一定の印
加電圧以上で急激に低下する傾向があり、例えば500
(℃) 程度の環境下では300(V)程度から絶縁性の低下が
見られる。そのため、ガラス層に流れる微弱電流の変化
に起因して電気回路に流れる電流がその絶縁性の変化の
程度に応じて変化することから、高信頼性を要求される
回路では安定性が不十分となるのである。このことは、
特に自動車のエンジン・ルーム内に配置されるエンジン
制御用基板等において、安全性に対する影響が大きいこ
とから問題になる。また、ガラス層の構成成分にSiO2
含まれていると、軟化点が上昇することからガラス層の
形成時に十分なガラスの流動性が得られないため、ピン
ホールが発生する等の不具合が生じ易い。
【0021】
【課題を解決するための第5の手段】また、前記の目的
を達成するための第5発明のグレーズド・アルミナの要
旨とするところは、前記第1発明乃至第4発明の何れか
の態様のアルミナ用無鉛グレーズ組成物から生成された
ガラス層を表面に備えたことにある。
【0022】
【第5発明の効果】このようにすれば、グレーズド・ア
ルミナは、前記のようなグレーズ組成物から生成される
結果、B2O3、 CaO、および Al2O3を主成分とし、或いは
これらに La2O3およびY2O3の少なくとも一方から成る第
4成分と、CeO2およびTiO2の少なくとも一方から成る第
5成分の何れか或いは両方を更に加えたものを主成分と
してそれぞれが前記割合で存在し、且つその主成分のガ
ラス層全体に占める割合が前記のように高くされたガラ
ス層を表面に備えて構成される。そのため、低温焼成で
生成されて高絶縁性等の特性が従来と同等以上のガラス
層を表面に備えたグレーズド・アルミナを得ることがで
き、また、第4成分および第5成分の少なくとも一方が
含まれる場合には、耐水性或いは変色防止効果が更に高
められたグレーズド・アルミナを得ることができる。
【0023】しかも、ガラス層にアルカリ金属が実質的
に含まれない態様においては、高温下で高電圧が印加さ
れる場合にもその絶縁性の変化が殆どなく、高い絶縁性
が保たれる。そのため、ガラス層に電流が流れることに
起因して電気回路に流れる電流が変化することが抑制さ
れるため、グレーズド・アルミナ上に実際に或いは事実
上形成されている電気回路の信頼性が高められる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を図面を
参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例の
アルミナ焼結体用グレーズ組成物(以下、単にグレーズ
組成物という)が適用されたグレーズド・アルミナを備
えた点火栓10の構成を示す断面図である。図におい
て、点火栓10は、絶縁碍子12の内周側に配置された
内部電極14と、その内部電極14に対向する位置に配
置された外部電極16を備えて絶縁碍子12の外周側に
配置された取付金具18とが、その絶縁碍子12によっ
て絶縁させられた状態で一体的に組み立てられたもので
あり、エンジンのシリンダ・ヘッド20に外部からねじ
込み固定されて用いられる。
【0025】上記の絶縁碍子12は、軸心方向に貫通す
る貫通穴22を径方向の中央部に備えて略円筒状を成す
ものであり、例えばアルミナ純度が90〜 95(wt%) 程度
で熱膨張係数が 7×10-6(/℃) 程度のアルミナ焼結体で
構成されている。また、この絶縁碍子12は、その軸心
方向において主として3つの部分で構成されており、シ
リンダ・ヘッド20から最も離隔した位置から順に、軸
部24、その軸部24に続くそれよりも大径の胴部2
6、およびその胴部26に続くそれよりも小径で先細り
の先端部28を備える。軸部24および胴部26内では
それぞれ外径が略一定となっており、それらの境界およ
び胴部26と先端部28との境界では何れもその外周面
30が傾斜面で連続させられている。
【0026】また、絶縁碍子12の外周面30には、軸
部24の端面32(端面32上を除く)から胴部26と
先端部28との境界までの範囲に例えば 50(μm)程度の
厚さのガラス層34が設けられており、軸部24および
胴部26の外周面30がそのガラス層34によって覆わ
れている。このガラス層34は、B2O3、 CaO、およびAl
2O3を主成分とする3成分系ガラス材料、例えば、それ
らの比が7 :2 :1 であってNa2O、Fe2O3 、SiO2等の不
純物を10(wt%) 程度の割合で含むガラスから成るもので
ある。このガラスは、熱膨張係数が 6×10-6(/℃) 程
度、ガラス転移点が620(℃) 程度、軟化点が640(℃) 程
度、体積抵抗が 25(℃) 、500(℃) においてそれぞれ 2
70(MΩ・cm) 程度、 8.9(MΩ・cm) 程度の特性を有して
いる。すなわち、上記ガラスの熱膨張係数は絶縁碍子1
2を構成するアルミナ焼結体のそれと同程度の値である
ため、使用中や後述する施釉時の温度変化の際に熱膨張
係数の相違に起因して熱衝撃が発生し、延いてはガラス
層34にクラック等の生じることはない。本実施例にお
いては、上記のようにガラス層34で被覆された絶縁碍
子12がグレーズド・アルミナに相当する。
【0027】また、前記の貫通穴22は、軸部24およ
び胴部26内では略一様な内径に形成されているが、胴
部26と先端部28との境界部分においては先細りの傾
斜面に形成され、先端部28内における内径は軸部24
内よりも小径である。前記の内部電極14は、胴部26
と先端部28との境界部からその先端部28内に亘る範
囲で貫通穴22に嵌合させられ、その先端36が先端部
28の先端面38から絶縁碍子12の外側に突き出した
状態で固定されている。内部電極14は例えば高融点の
ニッケル合金等で構成されて長手棒状を成すものであっ
て、軸部24側の基端40が先端36側ほど先細りにな
る傾斜面を備えて大径に形成されており、上記の固定状
態においてその基端40が貫通穴22の胴部26と先端
部28との境界に設けられている傾斜面に当接させられ
ている。
【0028】また、貫通穴22には、端面32側に端子
部42が露出させられた中軸44が嵌め込まれており、
その中軸44と内部電極14との間には、その基端40
側から順にガラス・シール46、抵抗体48、およびガ
ラス・シール50が備えられる。ガラス・シール46、
50は、貫通穴22を介してエンジンのシリンダ内が外
部空間と連通させられないようにその貫通穴22を気密
にシールすると共に、内部電極14および中軸44を所
定位置に固定する目的で設けられているが、何れも導電
性粉末ガラス等から生成されて導電性を有するものであ
る。そのため、中軸44と内部電極14とはそれらガラ
ス・シール46、50および抵抗体48を介して導通さ
せられている。
【0029】また、前記の取付金具18は、例えばニッ
ケル合金から成るものであって、絶縁碍子12の先端部
28および胴部26を外周側から覆うように設けられて
いる。この取付金具18は、前記の外部電極16を除く
主体部分が略円筒状を成しており、内径がその胴部26
よりも僅かに大きくされた大径部52と、内径がその先
端部28の基端部よりも僅かに大きくされ且つ大径部5
2に比較して小径の小径部54とから構成される。前記
の外部電極16は、その小径部54の先端から突出され
て先端部が内周側に向かって鉤状に曲がった状態で備え
られており、その先端部において前記の内部電極14の
先端36と対向させられている。
【0030】また、取付金具18の内面56は、大径部
52と小径部54との境界部分が先端部28と胴部26
との間の傾斜面に対向する傾斜面に形成されており、そ
れらの間には絶縁材料から成る円環状のガスケット58
が備えられる。取付金具18は、その軸心方向の中間位
置において絶縁碍子12との間でガスケット58を挟圧
した状態で、その大径部52の端部60が補助リング6
2を内側に配置した状態で内周側にかしめられることに
より、その絶縁碍子12に嵌合固定されている。そのた
め、取付金具18の内面56と絶縁碍子12の外周面3
0との間に形成された略円筒状の空間はガスケット58
に気密にシールされ、シリンダ内の気密性が確保されて
いる。なお、取付金具18の内面56は、大径部52お
よび小径部54の何れにおいても絶縁碍子12の外周面
30よりも大径に形成されており、上記のようにガスケ
ット58を介して取付金具18が絶縁碍子12に固定さ
れることにより、それら内面56および外周面30は非
接触状態にある。
【0031】以上のように構成された点火栓10は、端
子部42および取付金具18を介して内部電極14およ
び外部電極16間に電圧を印加することにより、それら
電極14、16間でスパークを発生させ、シリンダ内に
充満させられた混合気に電気火花を飛ばして爆発させる
ために用いられる。このとき、点火栓10は絶縁碍子1
2の温度が500(℃) 以上になることから、電極14、1
6間の抵抗値は、このような温度下において例えば1000
(V) 程度の電圧を印加した際に 100(MΩ) 以上に保たれ
なければならない。このため、碍子外周面30を被覆す
るガラス層34は、体積抵抗で少なくとも 500(kΩ・c
m) 以上の絶縁性を有していることが望まれる。本実施
例においては、ガラス層34がB2O3、 CaO、および Al2
O3を主成分としてこれらの比が7:2:1 程度であると共
に、不純物量が10(wt%) 程度のガラスで構成され、前述
したように500(℃) で1000(V) 印加時における体積抵抗
が 8.9(MΩ・cm) 程度の極めて高い絶縁性を有している
ため、点火栓10の構成材料として十分な特性を有して
いると言える。換言すれば、点火栓10は上記のような
ガラス層34が絶縁碍子12の外周面30に形成された
グレーズド・アルミナを備えているため、後述するよう
に低温焼成で製造可能であると共に、その電気的特性や
熱的特性等が従来以上のものとなっている。
【0032】ところで、点火栓10は、例えば図2に示
される工程に従って製造される。先ず、スラリ調合工程
S1においては、予め作製した前記ガラス層34と同様
な組成のグレーズ組成物に有機結合剤や粘土鉱物等を適
宜添加する共に水等の液中に分散して混合することによ
り、グレーズ用スラリ(泥漿)を調合する。このグレー
ズ組成物は、例えば図3に示される各工程に従って製造
することができる。すなわち、混合工程SS1におい
て、形成すべきガラスの組成等に応じて種類および混合
比を決定した複数種類の出発原料をそれぞれ秤量し、攪
拌機等を用いて十分に混合する。このとき、出発原料
は、前記の3成分の各々の酸化物、炭酸化合物、硝酸化
合物等が適宜選択されるが、例えばB2O3源としては硼酸
(H3BO3) 等が、 CaO源としては炭酸カルシウム(CaCO3)
等が、 Al2O3源としてはAl2O3 或いは水酸化アルミニウ
ム(Al(OH)3) 等が好適に用いられる。また、出発原料は
平均粒径で1(mm) 以下のものが溶解性の点で好ましい。
【0033】次いで、溶解工程SS2においては、例え
ば混合した原料粉体を白金坩堝等に入れ、1300〜 1500
(℃) 程度の上記出発原料の種類や割合等に応じた温度
で溶解する。続く粉砕工程SS3においては、溶解した
原料を急冷して得られたガラスを、例えばアルミナ製ボ
ールミルで微粉砕する。そして、分級工程SS4におい
て、適当な目開き(たとえば#330メッシュ程度)の
篩を用いて分級することにより、前記のグレーズ組成物
が得られる。
【0034】図2に戻って、スラリ塗布工程S2におい
ては、別途作製された絶縁碍子12の外周面30に、前
記のグレーズ用スラリをスプレ、刷毛塗りやどぶ付け等
によって一様な厚さとなるように塗布し、乾燥工程S3
において塗布したスラリを室温放置或いは乾燥機内に投
入することで乾燥する。続く内部電極挿入工程S4で
は、別途作製された内部電極14を絶縁碍子12の端面
32側から差し込み、粉体充填工程S5において、貫通
穴22内のその内部電極14上にシール用ガラス粉末お
よび抵抗体粉末を、その抵抗体粉末の充填層がシール用
ガラス粉末の充填層で挟まれるように三層に充填する。
続く中軸挿入工程S6においては、中軸44を端面32
側から差し込み、充填した粉末を更に押圧する。
【0035】そして、焼成工程S7において、例えば85
0(℃) 程度の焼成温度で30分程度保持して焼成処理を施
す。これにより、グレーズ用スラリ中のグレーズ組成
物、シール用ガラス粉末、および抵抗体粉末が溶解させ
られ且つ冷却過程で硬化させられ、碍子外周面30に 5
0(μm)程度の厚さのガラス層34が形成されてグレーズ
ド・アルミナが得られると同時に、シール・ガラス32
によって内部電極14および中軸44が貫通穴22内に
固定され且つその貫通穴22がシールされる。本実施例
においては、グレーズ組成物が前記の組成で構成される
ことから、前述のように軟化点が640(℃) 程度と低く、
転移点も620(℃) 程度であるため、作業温度が800(℃)
程度に低くなっている。そのため、上記のように850
(℃) 程度の温度で焼成可能であると共に、シール処理
のための焼成もそれと同時に実施し得るのである。この
後、金具取付工程S8において、前記の取付金具18を
絶縁碍子12の外周面30に嵌め込んで固定することに
より、前記の点火栓10が得られる。
【0036】以上説明したように、本実施例によれば、
点火栓10を構成する絶縁碍子12のグレーズ(ガラス
層34の生成)に用いられているアルミナ焼結体用無鉛
グレーズ組成物は、B2O3、CaO 、およびAl2O3 を主成分
としてそれらの合計を100(mol%) としたときその割合が
70(mol%)、20(mol%)、および10(mol%)に設定されると共
に、その主成分がグレーズ組成物全体に対する割合で90
(wt%) 程度含まれて構成される。そのため、軟化点が上
記のように640(℃) 程度と十分に低く、熱膨張係数が6.
0(×10-6/℃) 程度と絶縁碍子12を構成するアルミナ
焼結体のそれと同程度であって耐熱衝撃性に優れ、しか
も、500(℃) の温度下における1000(V)印加時の体積抵
抗で 8.9(MΩ・cm) 以上の高い絶縁性を有する。したが
って、絶縁碍子12の外周面30にガラス層34を形成
するに際して、高絶縁性等の従来から要求される特性を
満足させつつ焼成温度を850(℃) 程度まで低くすること
ができるのである。
【0037】また、本実施例のガラス層34が設けられ
た絶縁碍子12は、前記のようなグレーズ組成物から生
成される結果、B2O3、 CaO、および Al2O3を主成分とし
てそれぞれが7:2:1 の割合で存在し、且つその主成分の
ガラス層全体に占める割合が略90(wt%) と高くされたガ
ラス層34を外周面30に備えて構成される。そのた
め、低温焼成で生成されて高絶縁性等の特性が従来と同
等以上のガラス層34を外周面30に備えた絶縁碍子1
2を得ることができる。
【0038】ここで、下記の表1は、前記のガラス層3
4を構成するためのグレーズ組成物の組成を種々変更し
て評価した結果を纏めたものである。なお、評価するに
際しては、各々の組成に応じた調合比で前記の図3に示
される工程に従ってグレーズ用ペーストを製造し、アル
ミナ基板にスプレ塗布して900(℃) で30分の焼成処理を
施すことにより、厚さ 50(μm)程度のガラス層を形成し
た。但し、出発原料には高純度の試薬を用い、主成分の
組成物全体に対する重量割合は略100(wt%)としている。
表1におけるNo.7は前述の点火栓10の製造に用いられ
たグレーズ組成物と略同じものである。なお、表1にお
いて、熱膨張係数は 25(℃) から500(℃) までの平均線
膨張率 (×10-6/℃) であり、「抵抗」は、それぞれ示
されている温度において1000(V) の電圧を印加する絶縁
抵抗計で測定した抵抗値から算出した体積抵抗(MΩ・c
m) である。また、No.E1 、E2、E3、E6の組成のものに
ついては、僅かにガラスの白濁(失透)が見られたこと
から体積抵抗を測定していないが、絶縁性は他の組成の
場合と同程度と推定される。他のNo.E4 、E5、E7〜E12
は、何れも透明なガラス膜を得ることができ、特性を評
価した。但し、No.E5、E8、E12 については、No.E4 、E
7、E9、E11 等と焼成後のガラス膜表面状態が類似して
いると共に、その組成からそれらと同程度の特性を有す
るものと考えられるため、特性評価を行っていない。
【0039】 [表1] (実施例) No. E1 E2 E3 E4 E5 E6 E7 E8 E9 E10 E11 E12 B2O3 (mol%) 50 50 60 65 65 70 70 70 70 75 75 75 CaO (mol%) 20 30 20 25 30 10 20 25 30 15 20 25 Al2O3(mol%) 30 20 20 10 5 20 10 5 0 10 5 0 熱膨張係数 5.6 6.2 5.7 6.1 ── 6.5 6.0 ─ 6.2 5.8 6.3 ─ 転移点 (℃) 635 630 620 620 ── 535 620 ─ 630 550 580 ─ 軟化点 (℃) 685 670 665 660 ── ─ 640 ─ 670 605 630 ─ 抵抗 (25℃) ── ─ ── 270 ── ─ 270 ─ 285 280 285 ─ (500℃) ── ─ ── 8.2 ── ─ 8.9 ─ 5.9 34.8 11.9 ─
【0040】上記の表1から明らかなように、B2O3が50
〜75(mol%)、CaO が10〜30(mol%)、Al2O3 が0 〜30(mol
%)の範囲でこれらの合計を 100(mol%)とし、不純物量を
略零(すなわち、これらの主成分の合計量が略100(wt
%))とした組成では、何れの組成においても5.6 〜6.5
(×10-6/℃) 程度のアルミナ焼結体と同程度の熱膨張
係数を有し、500(℃) 程度の温度下において5.9 〜34.8
(MΩ・cm) 程度の極めて高い絶縁性を有することが確か
められた。上記の各実施例の常温[ 25(℃) ]における
体積抵抗は、下記の表2に組成の一例(作業温度以外の
特性データは省略した)を示すような従来の無鉛グレー
ズ組成物と同様であるが、このようなSiO2を主成分とす
るグレーズ組成物では、500(℃) 程度における体積抵抗
で 1(MΩ・cm) 以下に絶縁性が低下していた。因みに、
この体積抵抗の値は、前記図1に示すような点火栓10
において電極14、16間で 200(MΩ) 以下の値に相当
し、点火栓10のグレーズ用途としては一応の要求特性
を満足しているものの、信頼性を高めるためには一層の
高絶縁性が望まれるのである。これに対して、本実施例
によれば、このような高温においても 5(MΩ・cm) 以上
の高い絶縁性が保たれる利点がある。
【0041】[表2] (従来例)成分 \No. R1 R2 R3 R4 B2O3 (mol%) 19.3 17.0 17.0 5.0 CaO 2.3 4.6 4.6 4.0 Al2O3 7.8 7.0 7.0 2.5 SiO2 55.4 62.3 62.3 57.5 Na2O 7.4 5.1 − 1.5 ZnO 7.8 − − − BaO − 4.0 4.0 − Li2O − − 5.1 −Bi2O3 − − − 29.5 作業温度 (℃) 1150 950 950 900
【0042】また、前記表1に示される各実施例によれ
ば、何れの組成でも、転移点が535〜635(℃) 、軟化点
が605 〜685(℃) 程度[すなわち、転移点が535(℃) 以
上、軟化点が700(℃) 以下]であるため、作業温度が80
0(℃) 程度と低く、低温焼成が可能である。このため、
前述のような点火栓10に適用された場合においては、
絶縁碍子12の外周面30にグレーズするための加熱処
理と、金属部品である内部電極14とその絶縁碍子12
とをシールするための加熱処理とを、一回の焼成処理
(焼成工程S7)で同時に行い得る。これに対して、表
2に示されるような従来のグレーズ組成物では、作業温
度が900(℃) 以上と高くなる。そのため、内部電極14
をそのような高温に曝さないためには、900(℃) 以上の
温度で為されるグレーズの加熱処理と、850(℃) 以下の
温度で為されるシールの加熱処理とを別々に実施する必
要があったのである。
【0043】また、表1の各実施例のグレーズ組成物に
よれば、更に、高温下において電圧変化に起因する体積
抵抗の変化が殆ど生じない利点もある。図4は、表1の
No.E7 のグレーズ組成物から生成したガラスと、従来例
の例えばNo.R1 のグレーズ組成物から生成したガラスと
に、それぞれ500(℃) の温度下で電圧を印加して電流値
を測定した結果を示すV−I曲線である。図から明らか
なように、No.E7 では一様な傾きの直線になるのに対
し、No.R1 では300(V)近傍から傾きが増大して下に凸の
曲線になる。すなわち、No.R1 のガラスは、300(V)近傍
で急激に絶縁性が低下すると共に、それよりも高電圧で
は印加電圧に応じて絶縁性(体積抵抗)が変化する。そ
のため、このようなガラスでは、電圧変化に伴って電気
回路(例えば前記の点火栓10においては電極14、1
6間とそれらの間に電圧を印加するための電源を通る放
電回路。回路基板においてはその上に形成或いは実装さ
れた電子部品により構成される電気回路)に流れる電流
値が僅かに変化し、回路としての安定性が低くなる。し
たがって、従来のグレーズ組成物は、このような僅かな
電流値の変化が問題とならないような用途には用い得て
も、例えば、生命の安全に関わるような高い信頼性を要
求される回路基板のグレーズ処理等には適当なものとは
言えなかったのである。
【0044】また、従来のグレーズ組成物は、通常、0
(V)から測定電圧までの上記V−I曲線の傾きが一様で
あるとして抵抗値を近似することが行われていたが、上
記のような下に凸の曲線では測定電圧よりも低電圧では
抵抗値が過小評価される一方、それよりも高電圧では抵
抗値が過大評価される。そのため、近似値に基づいて回
路設計しても回路の高い信頼性は得られないという問題
もあった。
【0045】以上の説明から明らかなように、前記表1
の各実施例のグレーズ組成物は、B2O3が50〜75(mol%)、
CaO が10〜30(mol%)、Al2O3 が0 〜30(mol%)の範囲でそ
れらの合計を100(mol%) とし、組成物全体に対するそれ
らの重量割合が略100(wt%)となるように組成が構成され
ていることから、前述したように軟化点が700(℃) 以下
と十分に低く、熱膨張係数が5.6 〜6.5(×10-6/℃) 程
度とアルミナ焼結体のそれと同程度であって耐熱衝撃性
に優れ、しかも、500(℃) の温度下における1000(V) 印
加時の体積抵抗で 5(MΩ・cm) 以上の高い絶縁性を有す
る。そのため、アルミナ焼結体の表面にガラス層を形成
するに際して、高絶縁性等の従来から要求される特性を
満足させつつ焼成温度を850(℃) 程度以下に低くするこ
とができる。
【0046】また、前記の各実施例においては、グレー
ズ組成物にアルカリ金属やSiO2等が実質的に含まれてい
ないことから、前記の図4に示されるように、ガラス層
に500(℃) 程度の高温下で300(V)以上の高電圧が印加さ
れる場合にも、その絶縁性の変化が殆どなく高い絶縁性
が保たれる。そのため、ガラス層に電流が流れることに
起因して電気回路に流れる電流が変化することが抑制さ
れるため、ガラス層が回路基板上に設けられる場合にお
いては、そこに形成されている電気回路の信頼性が高め
られる。
【0047】次に、前記絶縁碍子12を被覆するガラス
層34およびそれを形成するためのグレーズ組成物の主
成分が、B2O3、CaO 、およびAl2O3 の3成分に加えて第
4成分として La2O3或いはY2O3を、第5成分としてCeO2
或いはTiO2を含んで構成される場合について説明する。
なお、以下の実施例において前述の実施例と共通する部
分については説明を省略する。
【0048】本実施例では、ガラス層34は、B2O3、Ca
O 、Al2O3 、La2O3 、およびCeO2を主成分とする5成分
系ガラス材料、例えば、それらの比が75:15:5 :4 :
1 であってNa2O、Fe2O3 、SiO2等の不純物を10(wt%) 程
度の割合で含むガラスから成るものである。このガラス
は、熱膨張係数が 6.3×10-6(/℃) 程度、ガラス転移点
が640(℃) 程度、軟化点が680(℃) 程度、体積抵抗が 2
5(℃) 、500(℃) においてそれぞれ 102.2(MΩ・cm) 程
度、28(MΩ・cm) 程度の特性を有している。したがっ
て、本実施例においても、上記ガラスの熱膨張係数が絶
縁碍子12を構成するアルミナ焼結体のそれと同程度の
値であるため、使用中や前述したような施釉時の温度変
化の際に熱膨張係数の相違に起因して熱衝撃が発生し、
延いてはガラス層34にクラック等の生じることはな
い。しかも、本実施例においては、上記のようにLa2O3
およびCeO2を第4成分および第5成分として含むことか
ら、前述した3成分系ガラス材料から成るガラス層34
に比較して、耐水性および変色防止効果が高い利点があ
る。
【0049】上記のようなガラス層34を備えた点火栓
10は、3成分系ガラス材料の場合と略同様に、前述し
た図2および図3に示される製造工程に従って製造され
る。この製造工程において、図3の混合工程SS1で
は、ガラス層34の組成に応じた複数種類の出発原料が
例えば酸化物、炭酸化合物、硝酸化合物等の形態で混合
される。出発原料は、用いられる設備の種類や必要とす
る原料純度等に応じて適宜選択されるが、例えばB2O3
としては硼酸(H3BO3) 等が、 CaO源としては炭酸カルシ
ウム(CaCO3) 等が、 Al2O3源としてはAl2O3 或いは水酸
化アルミニウム(Al(OH)3) 等が、La2O3 源としてはLa2O
3 或いは炭酸ランタン(La2(CO3)3 )等が、CeO2源とし
てはCeO2或いは炭酸セリウム(Ce2(CO3)3 )等がそれぞ
れ好適に用いられる。他の工程は略前述した通りであ
る。
【0050】ここで、下記の表3は、上記の第4成分お
よび第5成分を含むガラス層34を構成するためのグレ
ーズ組成物の組成を種々変更して評価した結果を纏めた
ものであり、熱膨張係数等の前記の表1にも示されてい
る特性の評価方法や単位等はそれと同様である。表3に
おいて、「耐水性」は、前記図3に示される工程に従っ
て作製したグレーズ組成物の粉末を加圧成形して800
(℃) ×1(hr) 程度の条件で焼成し、焼成体の内部から
切り出した一辺が約5(mm) の立方体形状の試験片を蒸溜
水中で 4時間煮沸した場合の溶解の程度を試験前後の乾
燥重量から求めた重量減少率で評価して◎、○、△、×
で表したものである。この試験は、高温、高湿度下で点
火栓10を用いた場合の劣化を加速して評価したことに
相当する。なお、試験片の焼成条件はグレーズ処理の条
件とは一致していないが、焼成温度を下げたのは試験片
を劣化し易くして評価を容易にするためである。また、
切り出した試験片は、#180 の耐水研磨紙で全面を研磨
してサンプル相互の表面状態を揃えてから蒸溜水中に投
入した。
【0051】 [表3] No. E10 E13 E14 E15 E16 E17 E18 E19 E20 B2O3 (mol%) 75 75 75 75 75 75 75 75 80 CaO (mol%) 15 15 15 15 15 15 15 15 10 Al2O3(mol%) 10 5 5 0 5 5 5 2.5 0 Y2O3 (mol%) 0 5 0 0 0 0 0 0 0 La2O3(mol%) 0 0 5 10 0 0 4 7.5 9 TiO2 (mol%) 0 0 0 0 5 0 0 0 0 CeO2 (mol%) 0 0 0 0 0 5 1 0 1 熱膨張係数 5.8 5.7 6.0 6.1 6.4 5.9 6.3 5.8 5.6 転移点 (℃) 550 630 620 650 540 590 640 635 640 軟化点 (℃) 605 680 670 690 590 635 680 680 690 抵抗 (25℃) 280 73.3 102.2 127 322 322 102.2 − − (500℃) 34.8 21.8 28 37.2 55.3 14.2 28 − − 耐水性 × △ ○ ◎ × × ○ ○ ○変色防止効果 × × × △ ◎ ◎ ○ ○ ○ No. E21 E22 E23 E24 E25 E26 E27 E28 E29 B2O3 (mol%) 70 75 70 70 75 80 80 65 65 CaO (mol%) 20 10 15 10 20 15 20 25 20 Al2O3(mol%) 0 0 0 0 0 0 0 0 0 Y2O3 (mol%) 0 0 0 0 0 0 0 0 0 La2O3(mol%) 9 14 14 19 4 4 0 9 14 TiO2 (mol%) 0 0 0 0 0 0 0 0 0 CeO2 (mol%) 1 1 1 1 1 1 0 1 1 熱膨張係数 6.0 5.7 5.8 5.8 6.1 6.0 6.5 6.3 − 転移点 (℃) 650 665 665 680 625 620 585 655 −軟化点 (℃) 680 700 715 720 670 660 625 685 690 耐水性 ○ ◎ ◎ ◎ △ △ × ○ ◎変色防止効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ○
【0052】上記の表3において、試料No.E10は、前記
の表1に示した3成分系ガラスであり、No.E13〜E29 の
各試料はこれを標準として耐水性および後述する変色防
止効果を評価した。耐水性の「◎」は全く重量減少がな
い(溶解しない)ことを、「○」は重量減少率が僅かに
認められることを、「△」は重量減少が認められるが標
準試料(No.E10)よりは十分に重量減少率が小さいこと
を、「×」は標準試料と同程度以上の重量減少が認めら
れたことをそれぞれ表す。表3から明らかなように、第
4成分( La2O3、Y2O3)を全く含まない場合(標準試料
No.E10およびNo.E16、E17 、E27 )は重量減少率が大き
いが、第4成分を添加することで耐水性を改善できる。
但し、同量の添加ではY2O3よりもLa2O3 の方が効果が大
きく、La 2O3 の割合を10(mol%)以上にすると蒸溜水中で
煮沸しても全く溶解しない程度の高い耐水性を与えるこ
とができる。本実施例のガラス層34では主成分中のB2
O3が耐水性を低下させているものと考えられるが、これ
に固溶し易い3価のLa2O3、Y2O3を添加することでそのB
2O3の溶解を抑制できるものと推定される。No.E10、E13
〜E18 の重量変化を比較したグラフを図5に示す。
【0053】また、上記のような第4成分を添加した組
成においては、上述したように耐水性が向上する結果、
前記の図2に示されるようにグレーズ用スラリを調製す
るためにガラス粉末を水に分散した場合に、スラリ粘度
が変化し難い利点もある。すなわち、表1に示されるよ
うな耐水性の低いグレーズ組成物では、ガラス粉末の成
分が水に溶解するとスラリのpHが変化するためガラス
の分散状態が変化する。そのため、例えば半日程度でス
ラリ粘度が変化することから、塗布条件が安定しない問
題があった。本実施例によれば、粘度変化が少ないこと
から、塗布条件が安定するのである。
【0054】また、上記の実施例のうちLa2O3 を添加し
た場合には、ガラス層34の表面の光沢が向上する効果
も見られた。すなわち、外観を重視されるグレーズド・
セラミックスにおいて一層好ましい性状のガラス層34
を得ることができる。
【0055】また、「変色防止効果」は、表1の場合と
同様にして作製した試料に紫外線(UV)を 1時間照射し
た場合のアルミナ焼結体の色の変化を評価して、◎、
○、△、×で表したものである。なお、試料は、例えば
図6に示すようにアルミナ基板66の略半面だけにガラ
ス層34を形成したものであり、残る半面ではアルミナ
焼結体の表面が露出した状態にある。この試料のグレー
ズの有無の境界とは垂直な境界線で二分した半面に紫外
線を照射して、グレーズした図の左半面のうちUV無し
の領域BとUV照射領域Cの色差を色差計で測定し、ハ
ンター(Hunter)の提案になるLab空間による表色系
での2点(領域Bの座標と領域Cの座標)間の距離ΔE
の大小で変色の程度を表して標準試料No.E10と比較し
た。ガラス層34が紫外線照射で変色しないことは別途
確認できているため、上記の距離ΔEはアルミナ基板6
6の変色の程度を表しているものといえる。表3におい
て「◎」は変色が殆どない(ΔEが極めて小さい)こと
を、「○」は標準試料に比べて変色が十分に抑制された
(ΔEが比較的小さい)ことを、「△」は変色が顕著で
あるが標準試料よりは小さいことを、「×」は標準試料
と同程度以上の変色が生じたことをそれぞれ表す。
【0056】表3から明らかなように、第5成分(Ce
O2、TiO2)を全く含まない場合(標準試料No.E10および
No.E13〜E15 、E19 、E27 )は、No.E15、E19 を除き、
アルミナ基板66が著しく変色するが、第5成分を添加
することでガラス層34の変色防止効果が高められる。
特に、第5成分を5(mol%) 程度添加すると紫外線を照射
してもガラス層34で覆われたアルミナ基板66が殆ど
変色しない程度の高い変色防止効果を与えることができ
る。すなわち、アルミナ基板66は太陽光の照射で変色
する傾向にあるが、その変色は太陽光中の紫外線による
ものと推定される。第5成分は、ガラス層34の紫外線
遮蔽機能を高めて、アルミナ基板66の変色を抑制する
ものと考えられるのである。なお、No.E15、E19 は第5
成分を含まないが、原子番号が57と大きいLaは僅かなが
らも紫外線遮蔽効果を有するため、これを多量に含むこ
れら2種の試料はアルミナ基板66の変色をある程度抑
制できたものと考えられる。また、第5成分はCeO2、Ti
O2の何れでもよいが、これらを混合して用いる場合に最
もよい結果を得ることができる。No.E10、E13 〜E18の
変色を比較したグラフを図7に示す。
【0057】なお、上記の図7において各試料について
変色度と共に示されている棒グラフは、ガラス層34自
身の着色の程度を表したものである。この着色の程度
は、例えば、前記の図6に示される領域Bとグレーズせ
ず且つ紫外線照射もしない領域Aとの色差を測定して、
BC間と同様にLab空間における距離△Eの距離の大
小で表した。図において△Eが小さいほど透明度が高
く、反対に△Eが大きいほど着色が著しいことになる。
図から明らかなように、No.E16、E17 のように第5成分
を5(mol%) 程度添加した場合には、ガラス層34自身の
着色が著しい。すなわち、第5成分は前記のように変色
防止効果をガラス層34に与えるものの、そのガラス層
34に着色する副作用を有する。点火栓10のグレーズ
等の用途では、アルミナ焼結体から成る絶縁碍子12の
表面に印刷等によって記載される社名、商標や品番等が
明瞭に読み取れるようにガラス層34の透明度の高いこ
とが望まれる。そのため、このよなガラス層34の透明
度が要求される用途では、たとえ変色防止効果が高くて
も着色は好ましくない。したがって、着色が問題となる
場合には、第5成分の添加量は5(mol%) 程度よりも少な
い範囲、例えば1(mol%)程度以下に設定することが適当
といえる。
【0058】また、前記の表3から明らかなように、本
実施例のNo.E13〜E29 においても熱膨張係数は 5.6〜6.
5(×10-6/℃) 程度、軟化点は700(℃) 程度以下、体積
抵抗は500(℃) で14.2〜55.3(MΩ・cm) 程度であり、何
れも表1に示したような3成分系の場合と同様な特性を
有する。したがって、本実施例のグレーズ組成物および
それから生成されるガラス層34も、絶縁碍子12の被
覆に好適に用いることができる。すなわち、本実施例に
よれば、アルミナ焼結体の表面にガラス層を形成するに
際して、高絶縁性等の従来から要求される特性を満足さ
せつつ焼成温度を850(℃) 程度以下に低くすることがで
きるだけでなく、更に、第4成分を加えた場合には耐水
性を高め、第5成分を加えた場合には変色防止効果を高
めることができる。なお、表3に示す各試料のうち、N
o.E19〜E29 については、その組成や焼成したガラス膜
の外観等から十分な特性を有するものと推定されるた
め、体積抵抗の評価は省略した。
【0059】以上、本発明の一実施例を図面を参照して
詳細に説明したが、本発明は、更に別の態様でも実施し
得る。
【0060】例えば、実施例においては、本発明のグレ
ーズ組成物が主として点火栓10の絶縁碍子12の外周
面30へのグレーズに用いられた場合について説明し、
グレーズド・アルミナの一例としてその外周面30にガ
ラス層34が設けられた絶縁碍子12が示されていた
が、本発明のグレーズ組成物は、アルミナ焼結体から成
るものであれば、高圧碍子や回路基板等へのグレーズ処
理にも好適に用いられる。すなわち、グレーズド・アル
ミナは、高圧碍子や回路基板であってもよい。このよう
な用途においても、グレーズのための焼成温度が低下さ
せられていることから、製造設備への負荷が軽くなると
共に、シール処理のような従来のグレーズ処理温度より
も低温に設定されていた処理をグレーズ処理と同時に実
施し得る利点がある。しかも、従来のグレーズ組成物に
比較して絶縁性が高められていると共に、高温、高電圧
下における電圧変化に伴う絶縁性の変化が殆どないこと
から、これらのグレーズド・セラミックスの信頼性が飛
躍的に高められる。
【0061】また、実施例においては、主成分であるB2
O3、CaO 、Al2O3 、La2O3 、Y2O3、CeO2、およびTiO2
合計が組成物全体に対して略90(wt%) を占め、不純物と
してNa2O、Fe2O3 、SiO2等を含む組成で構成されるグレ
ーズ組成物について説明したが、不純物としては上記の
ものの他にK2O 、ZnO 、BaO 、Li2O、Bi2O3 等の他の化
合物が合計で10(wt%) 程度までの範囲で微量含まれてい
ても差し支えない。但し、可及的に焼成温度を低くする
と共に、絶縁性等の電気的特性を高めるためには、主成
分の合計量が95(wt%) 以上であることが好ましく、98(w
t%) 以上であることが一層好ましい。
【0062】また、実施例においては、表1に示される
ように、B2O3が50〜75(mol%)、CaOが10〜30(mol%)、Al2
O3 が0 〜30(mol%)の範囲の組成のグレーズ組成物、或
いは表3に示されるように、B2O3が65〜80(mol%)、CaO
が10〜25(mol%)、Al2O3 が0〜10(mol%)、La2O3 が 4〜1
4(mol%)、Y2O3が5(mol%) 、CeO2が1 〜5(mol%) 、およ
びTiO2が5(mol%) の範囲の組成のグレーズ組成物につい
て説明したが、本発明の効果は、B2O3、CaO 、およびAl
2O3 の3成分系ではB2O3が50〜90(mol%)、 CaOが10〜40
(mol%)、 Al2O3が 0〜30(mol%)の範囲でこれらの合計が
100(mol%) となる場合、これらに前記の第4成分を含む
系では更にLa2O3 およびY2O3の少なくとも一方から成る
第4成分を 1〜30(mol%)の範囲で含んで主成分の合計が
100(mol%) となる場合、或いは、それら3成分系または
4成分系に前記の第5成分を含む系ではCeO2およびTiO2
の少なくとも一方から成る第5成分を 0.1〜5(mol%) の
範囲でこれらの合計が100(mol%) となる場合であって、
それら主成分の組成物全体に対する割合が90(wt%) 以上
であれば享受し得る。但し、表1に示したような3成分
系では、その表1の範囲の組成において一層好ましい効
果が得られ、また、その表1のうちガラス層34が失透
しないNo.E4 、E5、E7〜E12 の組成、すなわちB2O3が65
〜75(mol%)、CaO が20〜30(mol%)、Al2O3 が0 〜10(mol
%)の範囲の組成において、更に好ましい効果を得ること
ができる。また、表3に示したような4成分系や5成分
系では、その表3の範囲の組成において一層好ましい結
果が得られ、特に耐水性および遮光性が共に「○」評価
以上のNo.E18〜E24 、E28 、E29 の組成、すなわち、B2
O3が65〜80(mol%)、CaO が10〜25(mol%)、Al2O3 が0 〜
5(mol%)、La2O3 が4 〜19(mol%)、CeO2が0 〜1(mol%)
の範囲の組成において、更に好ましい効果を得ることが
できる。
【0063】また、実施例においては、グレーズ組成物
の出発原料としてH3BO3 、CaCO3 、Al2O3 或いはAl(OH)
3 、La2O3 或いはLa2(CO3)3 、CeO2或いはCe2(CO3)3
が用いられる場合について説明したが、出発原料は使用
する設備装置や得ようとする組成等に応じて適宜変更で
きる。例えば、グレーズ組成物の主成分の割合が低くて
もよい場合には、不純物含有量の多い出発原料を用いて
も差し支えない。
【0064】その他、一々例示はしないが、本発明は、
その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るもので
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のグレーズ組成物が適用され
た点火栓の断面構造を説明する図である。
【図2】図1の点火栓の製造工程の要部を説明する工程
図である。
【図3】図2の製造工程に用いられるグレーズ組成物の
製造工程を説明する工程図である。
【図4】本発明のグレーズ組成物から生成されたガラス
のV−I曲線を従来のものと比較して示す図である。
【図5】本発明の他の実施例のグレーズ組成物から生成
されたガラスの耐水性を評価した結果を説明する図であ
る。
【図6】図5の実施例のガラスの遮光性および着色を評
価するための試料を説明する図である。
【図7】図6の試料で評価した遮光性および着色の評価
結果を説明する図である。
【符号の説明】
12:絶縁碍子(アルミナ焼結体) 30:外周面(表面) 34:ガラス層

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミナ焼結体の表面にガラス層を形成
    するために用いられる無鉛グレーズ組成物であって、 主成分100(mol%) がB2O3(三酸化二硼素)を50乃至90(m
    ol%)、 CaO(酸化カルシウム)を10乃至40(mol%)、 Al2
    O3(酸化アルミニウム)を 0乃至30(mol%)で構成され、
    その主成分が組成物中に 90(wt%)以上の割合で含まれる
    ことを特徴とするアルミナ用無鉛グレーズ組成物。
  2. 【請求項2】 アルミナ焼結体の表面にガラス層を形成
    するために用いられる無鉛グレーズ組成物であって、 主成分100(mol%) がB2O3を50乃至90(mol%)、CaO を10乃
    至40(mol%)、Al2O3 を0乃至30(mol%)、 La2O3(酸化ラ
    ンタン)およびY2O3(酸化イットリウム)の少なくとも
    一方から成る第4成分を 1乃至30(mol%)で構成され、そ
    の主成分が組成物中に 90(wt%)以上の割合で含まれるこ
    とを特徴とするアルミナ用無鉛グレーズ組成物。
  3. 【請求項3】 アルミナ焼結体の表面にガラス層を形成
    するために用いられる無鉛グレーズ組成物であって、 主成分100(mol%) がB2O3を50乃至90(mol%)、CaO を10乃
    至40(mol%)、Al2O3 を0乃至30(mol%)、CeO2(酸化セリ
    ウム)およびTiO2(酸化チタン)の少なくとも一方から
    成る第5成分を 0.1乃至5(mol%) で構成され、その主成
    分が組成物中に90(wt%)以上の割合で含まれることを特
    徴とするアルミナ用無鉛グレーズ組成物。
  4. 【請求項4】 アルミナ焼結体の表面にガラス層を形成
    するために用いられる無鉛グレーズ組成物であって、 主成分100(mol%) がB2O3を50乃至90(mol%)、CaO を10乃
    至40(mol%)、Al2O3 を0乃至30(mol%)、 La2O3およびY2O
    3の少なくとも一方から成る第4成分を 1乃至30(mol
    %)、CeO2およびTiO2の少なくとも一方から成る第5成分
    を 0.1乃至5(mol%) で構成され、その主成分が組成物中
    に 90(wt%)以上の割合で含まれることを特徴とするアル
    ミナ用無鉛グレーズ組成物。
  5. 【請求項5】 アルカリ金属を実質的に含まないもので
    ある請求項1乃至4の何れかのアルミナ用無鉛グレーズ
    組成物。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5の何れかのアルミナ用無
    鉛グレーズ組成物から生成されたガラス層を表面に備え
    たことを特徴とするグレーズド・アルミナ。
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