以下、本発明を具体化したスパークプラグの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1,図2を参照して、一例としてのスパークプラグ100の構造について説明する。図1は、スパークプラグ100の部分断面図であり、図2は、スパークプラグ100の中心電極20の先端部22付近の拡大図である。なお、図1において、スパークプラグ100の軸線O方向を図面における上下方向とし、下側をスパークプラグ100の先端側、上側を後端側として説明する。
図1に示すように、スパークプラグ100は、絶縁碍子10と、この絶縁碍子10を保持する主体金具50と、絶縁碍子10内に軸線O方向に保持された中心電極20と、主体金具50の先端面57に基部32を溶接され、先端部31の一側面が中心電極20の先端部22に対向する接地電極30と、絶縁碍子10の後端部に設けられた端子金具40とを備えている。
まず、このスパークプラグ100の絶縁碍子10について説明する。絶縁碍子10は周知のようにアルミナ等を焼成して形成され、軸中心に軸線O方向へ延びる軸孔12が形成された筒形状を有する。軸線O方向の略中央には外径が最も大きな鍔部19が形成されており、それより後端側(図1における上側)には後端側胴部18が形成されている。鍔部19より先端側(図1における下側)には、後端側胴部18よりも外径の小さな先端側胴部17が形成され、さらにその先端側胴部17よりも先端側に、先端側胴部17よりも外径の小さな脚長部13が形成されている。脚長部13は先端側ほど縮径され、スパークプラグ100が内燃機関のエンジンヘッド200に取り付けられた際には、その燃焼室に曝される。そして、脚長部13と先端側胴部17との間は段部15として形成されている。
ここで、図2に示すように、絶縁碍子10の先端部11(脚長部13の先端部位)には、絶縁碍子10の外周面と先端面とがなす稜角部分が面取りされることにより、自身の外径が先端側ほど縮径された面取り部14が形成されている。この面取り部14は、R面取りにより形成することができ、その曲率半径を0.3mm〜0.7mm(本実施の形態では、0.5mm)に設定することができる。また、本実施の形態では、先端部11における絶縁碍子10の外径(先端外径)を、3.0mm〜4.3mmに設定することができる。なお、この先端外径は、先端部11における絶縁碍子10の外径ではあるが、面取部14における外径は含まれない。望ましくは、面取部14の後端の位置(図2において位置E1で示される、面取部14と外周面との境の位置にあたる。)において示される絶縁碍子10の外径であるとよい。
次に、中心電極20について説明する。図2に示すように、中心電極20は、インコネル(商標名)600または601等のニッケルまたはニッケルを主成分とする合金から形成された電極母材21の内部に、電極母材21よりも熱伝導性に優れる銅または銅を主成分とする合金からなる芯材25を埋設した構造を有する棒状の電極である。通常、中心電極20は、有底筒状に形成された電極母材21の内部に芯材25を詰め、底側から押出成形を行って引き延ばすことで作製されるものである。芯材25は、胴部分においては略一定の外径をなすものの、先端側においては先細り形状に形成される。本実施の形態では、中心電極20の外径が2.3mm、中心電極20の外径に対する芯材25の外径の割合が70%となっている。
また、中心電極20の先端部22は絶縁碍子10の先端部11よりも突出されており、先端側に向かって径小となるように形成されている。そして、先端部22の先端面には、耐火花消耗性を向上するため、PtまたはIrを主成分とし、直径が1mm以下(例えば、0.6mm)の貴金属または貴金属合金からなる電極チップ90が接合されている。両者の接合は、電極チップ90と中心電極20の先端部22との合わせ面を狙って外周を一周するレーザ溶接によって行われている。そして、レーザの照射により両材料が溶けて混ざり合うことによって、電極チップ90と中心電極20とが強固に接合されている。尚、中心電極20の先端部22には自身の外径が縮径された縮径部23が形成されており、縮径部23の外周面と、絶縁碍子10の先端付近の軸孔12の内周面との間に、若干の間隙が形成されている。この間隙の軸線O方向の深さは、0.8mm〜2.0mm(本実施の形態では、1.0mm)に設定することができる。また、中心電極20は軸孔12内を後端側に向けて延設され、シール体4およびセラミック抵抗3(図1参照)を経由して、後方(図1における上方)の端子金具40に電気的に接続されている。そして、端子金具40には高圧ケーブル(図示外)がプラグキャップ(図示外)を介して接続され、高電圧が印加されるようになっている。ここで、中心電極20を絶縁碍子10の軸孔12内に保持してなるものを組立体60(図2,図3参照)とする。なお、電極チップ90が、本発明における「第1貴金属片」に相当する。
次いで、接地電極30について説明する。接地電極30は耐腐食性の高い金属から構成され、一例として、インコネル(商標名)600または601等のニッケル合金が用いられる。この接地電極30は、自身の長手方向の横断面が略長方形を有しており、基部32が主体金具50の先端面57に溶接により接合されている。また、接地電極30の先端部31は、一側面側が中心電極20の先端部22に対向するように屈曲されている。この接地電極30の先端部31と、中心電極20の先端部22(より具体的には先端部22に接合された電極チップ90)との間に、火花放電間隙が形成される。そして、接地電極30の先端部31の一側面において、この火花放電間隙が形成される位置には、貴金属からなる電極チップ91が接合されている。電極チップ91は、Ptを主成分とし、Rh、Ir、Ni、及びRuのうちの少なくとも1種類を含有する貴金属合金を用いて形成したものである。なお、電極チップ91が、本発明における「第2貴金属片」に相当する。
次に、主体金具50について説明する。図1に示す主体金具50は、内燃機関のエンジンヘッド200にスパークプラグ100を固定するための円筒状の金具である。そして、絶縁碍子10を、その後端側胴部18の一部から脚長部13にかけての部位を取り囲むようにして内部に保持している。主体金具50は低炭素鋼材より形成され、図示外のスパークプラグレンチが嵌合する工具係合部51と、内燃機関の上部に設けられたエンジンヘッド200の取付ねじ孔201に螺合するねじ山が形成された取付ねじ部52とを備えている。
また、主体金具50の工具係合部51と取付ねじ部52との間には、鍔状のシール部54が形成されている。そして、取付ねじ部52とシール部54との間のねじ首59には、板体を折り曲げて形成した環状のガスケット5が嵌挿されている。ガスケット5は、スパークプラグ100をエンジンヘッド200に取り付けた際に、シール部54の座面55と取付ねじ孔201の開口周縁部205との間で押し潰されて変形し、両者間を封止することで、取付ねじ孔201を介したエンジン内の気密漏れを防止するためのものである。
主体金具50の工具係合部51より後端側には薄肉の加締部53が設けられ、シール部54と工具係合部51との間には、加締部53と同様に薄肉の座屈部58が設けられている。そして、工具係合部51から加締部53にかけての主体金具50の内周面と絶縁碍子10の後端側胴部18の外周面との間には、円環状のリング部材6,7が介在されており、さらに両リング部材6,7間にタルク(滑石)9の粉末が充填されている。加締部53を内側に折り曲げるようにして加締めることにより、リング部材6,7およびタルク9を介し、絶縁碍子10が主体金具50内で先端側に向け押圧される。これにより、主体金具50の内周で取付ねじ部52の位置に形成された段部56に、環状の板パッキン8を介し、絶縁碍子10の段部15が支持されて、主体金具50と絶縁碍子10とが一体にされる。このとき、主体金具50と絶縁碍子10との間の気密性は、板パッキン8によって保持され、燃焼ガスの流出が防止される。また、座屈部58は、加締めの際に、圧縮力の付加に伴い外向きに撓み変形するように構成されており、タルク9の圧縮ストロークを稼いで主体金具50内の気密性を高めている。
このような構造からなるスパークプラグ100では、絶縁碍子10の先端側の表面にカーボンが付着して燻った状態になると、絶縁抵抗値が低下し、さらにイグニッションコイルの発生電圧が低下する。そしてその発生電圧がプラグの要求電圧(火花ギャップ間でスパークする電圧)より低くなると火花放電できなくなるため、失火を起こす原因となる。このような失火を防止するためには、絶縁碍子10の先端温度を約450℃まで上昇させる。これにより、絶縁碍子10に付着したカーボンを焼き切ることができるので、失火を防止することができる。このような現象を「自己清浄」と呼ぶ。
このような自己清浄を速やかに行うことによって、燻った状態から正常な着火性能が得られる状態にまで速やかに回復させることができる。そして、自己清浄を速やかに行うためには、絶縁碍子10の先端温度を速やかに上昇させることが必要である。そこで本実施形態では、絶縁碍子10の先端側の昇温性能を向上させるために、絶縁碍子10の先端側の突出量、体積および熱抵抗値をそれぞれ規定している。
次に、各種パラメータについて、図2,図3を参照して説明する。図3は、軸線O方向において絶縁碍子10の先端から2mmの位置までに含まれる部分の先端側体積Vcを示す説明図である。
図2,図3に示すように、まず、主体金具50の先端面57から軸線O方向先端側に向かって突き出た絶縁碍子10の突出量(長さ)をH(mm)とする。次いで、絶縁碍子10の先端から軸線O方向後端側へ2mm離れた位置を通り、軸線Oと直交する平面P(2点鎖線P−Pでその断面を示す。)を想定する。この平面Pで組立体60を切断する。その時の平面Pで切断した絶縁碍子10の先端側の体積をVc(mm3)とする。また、平面Pで切断した組立体60の断面の常温(20℃)における空気層を除いた単位長さ当たりの熱抵抗値をRa(K/(m・W))とする。さらに高温(800℃)における空気層を除いた単位長さ当たりの熱抵抗値をRb(K/(m・W))とする。
ここで、熱抵抗値について説明する。熱抵抗値は熱の伝え難さを表す数値である。数値が大きいほど熱を伝えにくく、小さいほど熱を伝え易い。例えば、組立体60のある断面においてこのような熱抵抗値Rを求めるために、絶縁碍子10の熱伝導率をKiとし、中心電極20の電極母材21(ニッケル合金)の熱伝導率をKnとし、中心電極20の芯材25(銅合金)の熱伝導率をKcとする。さらに平面Pで切断された絶縁碍子10の断面積をSi、中心電極20の電極母材21の断面積をSn、中心電極20の芯材25の断面積をScとする。また、平面Pで切断された断面における絶縁碍子10の熱抵抗値をRi、中心電極20の電極母材21の熱抵抗値をRn、中心電極20の芯材25の熱抵抗値をRcとする。このとき、組立体60を平面Pで切断した断面における単位長当たりの熱抵抗値R(K/(m・W))は、以下の式によって導くことができる。
・1/R=(1/Ri)+(1/Rn)+(1/Rc)
=KiSi+KnSn+KcSc
・R=1/(KiSi+KnSn+KcSc)
次に、各種パラメータの数値について順に説明する。まず、絶縁碍子10の突出量H(mm)は1mm以上に規定されている。これは、後述する実施例1の評価試験の結果より、突出量H(mm)が1mm未満になると、絶縁碍子10の先端温度が上昇し難く、カーボンを全て焼き切ることができないからである。さらにカーボンが絶縁碍子に残存してしまうので、主体金具50に対して横飛火が容易に発生してしまい、スパークプラグ100としての十分な性能を得ることができないからである。
また、絶縁碍子10の先端側体積Vcは8mm3以上、17mm3以下に規定されている。これは、後述する実施例1の評価試験の結果より、先端側体積Vcが17mm3を超えてしまうと、絶縁碍子10の先端温度が速やかに上昇せず、カーボンを速やかに焼き切ることができないからである。一方、後述する実施例3の評価試験の結果によれば、先端側体積Vcが8mm3未満になると、絶縁碍子10の先端部11において径方向の厚み(肉厚)が薄くなり、絶縁貫通を生ずる虞がある。
また、絶縁碍子10の先端から2mmの位置の断面における熱抵抗値Raは、1.0×103K/(m・W)以上に規定されている。これは、後述する実施例1の評価試験の結果より、常温下での熱抵抗値Raを1.0×103K/(m・W)以上に規定することで、絶縁碍子10の先端温度を速やかに昇温させてカーボンを焼き切ることができ、その結果、燻り汚損試験後のスパークプラグ100の絶縁抵抗値を、エンジンの始動が可能とされる10MΩ以上に保持できるからである。一方、熱抵抗値Rbは1.0×104K/(m・W)以下に規定されている。これは、後述する実施例2の耐久試験の結果より、高温下での熱抵抗値Rbが1.0×104K/(m・W)より高くなると、十分な熱引きを行えず、耐久試験後の中心電極20の電極チップ90の消耗率が高くなり、スパークプラグ100としての耐久性が急激に低下するからである。
このように、各種パラメータを規定することによって、絶縁碍子の先端側の昇温性能を向上させることができる。これにより、絶縁碍子に付着したカーボンを速やかに焼き切ることができるので、絶縁碍子の表面にカーボンが残存せず、横飛火の発生を防止することができる。さらに、正常な着火性能に必要な絶縁抵抗の確保にも高い効果を発揮できる。
また、本実施の形態のスパークプラグ100においては、前述したように、絶縁碍子10の先端部11に、自身の外径が先端側ほど縮径された面取り部14(図2参照)が形成されている。そして中心電極20の先端部22には、自身の外径が縮径された縮径部23(図2参照)が形成されており、この縮径部23における中心電極20の外周面と、絶縁碍子10の先端付近の軸孔12の内周面との間に、若干の間隙が形成されている。このような構成のスパークプラグ100においては、中心電極20の縮径部23の後端(図2において位置E2で示す。)において外径が不連続に変化するため電界が集中しやすく、この縮径部の後端に対応する絶縁碍子10の肉厚が薄いと、絶縁碍子10に絶縁貫通が生じるおそれがある。そこで、本実施の形態では、面取り部14に施したR面取りの曲率半径を0.5mmとし、間隙の軸線O方向の深さを1.0mmとし、さらに縮径部23の後端(位置E2)が面取り部14の後端(位置E1)よりも後端側に位置することを規定している。これにより、縮径部23の後端(位置E1)に対応する絶縁碍子10の肉厚を確保することができ、絶縁碍子10の絶縁貫通の発生を防止することができる。
さらに、本実施の形態では、中心電極20側の電極チップ90の材料として、Pt又はIrを主成分とし、直径が1mm以下の貴金属または貴金属合金を用いている。上記のように、絶縁碍子10の先端側の昇温性能を向上させた本実施の形態のスパークプラグ100において、中心電極20には高い熱負荷がかかるが、その先端に接合される電極チップ90に、このように融点が高く耐火花消耗性の高い貴金属または貴金属合金を用いることで、火花放電による電極消耗に対して高い耐性を得ることができる。また、接地電極30側の電極チップ91の材料にも、融点が高く耐火花消耗性の高い貴金属合金、具体的に、Ptを主成分とし、Rh、Ir、Ni、及びRuのうちの少なくとも1種類を含有する貴金属合金を用いることで、火花放電による電極消耗に対して高い耐性を得ることができ、好ましい。
次に、各種パラメータの最適値を実証するために、スパークプラグの評価試験並びに耐久試験を行った。まず、実施例1として、絶縁碍子の突出量H、先端側体積Vc、熱抵抗値Raの最適値を求めるためのスパークプラグの評価試験について説明する。次いで実施例2として、熱抵抗値Rbの最適値を求めるためのスパークプラグの耐久試験について説明する。
実施例1では、絶縁碍子の突出量H、先端側体積Vcおよび熱抵抗値Raが、スパークプラグの絶縁抵抗値に与える影響を調べた。この評価試験では、まず、熱抵抗値Raの調整方法に応じてケース1とケース2とに分かれる。そして、それらケース1,2において、絶縁碍子の突出量Hが異なる5つの試験区をそれぞれ設けた。具体的には、ケース1では、試験区1−1(突出量H=0mm)、試験区1−2(突出量H=1mm)、試験区1−3(突出量H=1.8mm)、試験区1−4(突出量H=2.3mm)、試験区1−5(突出量H=3.8mm)を各々設定した。一方、ケース2では、試験区2−1(突出量H=0mm)、試験区2−2(突出量H=1mm)、試験区2−3(突出量H=1.8mm)、試験区2−4(突出量H=2.3mm)、試験区2−5(突出量H=3.8mm)を各々設定した。
さらに、各試験区において、6種類の先端側体積Vcと、6種類の熱抵抗値Raとをそれぞれ設定し、36通りの組み合わせを設定した。先端側体積Vcについては、8、12、14.5、17、19、20mm3の6種類を設定した。一方、熱抵抗値Raについては、ケース1では、0.6、0.8、1.0、2.0、4.0、6.0(×103K/(m・W))の6種類を設定し、ケース2では、0.6、0.7、0.8、1.0、1.2、1.5(×103K/(m・W))の6種類を設定した。なお、後述するが、ケース1とケース2とで熱抵抗値Raの調整範囲が異なるのは、熱抵抗値Raの調整方法が異なることに起因するものである。そして、これらの組み合わせと、各試験区で決められた突出量Hとを満たす絶縁碍子を各々作製し、それら絶縁碍子を有するスパークプラグを各々作製した。なお、スパークプラグの主体金具の取付ねじ部の外径は、呼び径でM10に調整した。
ここで、熱抵抗値Raの調整方法について説明する。熱抵抗値Raの調整方法には2通りある。1つは、中心電極の芯材の材質や芯材の体積を変えることによって調整する方法である。この場合、中心電極の芯材の材質として、ニッケル、ニッケル合金、又は銅合金等を用いる。もう1つは、絶縁碍子の材質を変えることによって調整する方法である。この場合、絶縁碍子の材質として、アルミナ及び窒化アルミニウム等を用いる。なお、本実施例では、熱伝導率15〜170W/(K・m)のアルミナ及び窒化アルミニウムを使用した。そして、実施例1では、中心電極の芯材の材質等を調整することによって熱抵抗値Raを調整するケース1と、絶縁碍子の材質を調整することによって熱抵抗値Raを調整するケース2とに分け、このような2通りの調整方法の違いが試験結果に与える影響について調べた。
また、本評価試験のサンプル作製において、上記した熱抵抗値Raの調整方法では、絶縁碍子の先端側体積Vcと、中心電極及び絶縁碍子に用いられる材質の化学的性質等との関係によって、熱抵抗値Raを調整できる範囲が限られる。ケース1では、0.6×103〜6.0×103K/(m・W)までの範囲で調整した。さらに、先端側体積Vcが12mm3以上で、熱抵抗値Raが6.0×103K/(m・W)の絶縁碍子と、先端側体積Vcが20mm3で、熱抵抗値Raが4.0×103K/(m・W)の絶縁碍子とを作製することができなかった。そのため、図4乃至図8に示す図表では、これらの組み合わせに該当するデータがないので「−」とした。
一方、ケース2では、調整できる範囲がケース1よりも狭く、0.6×103〜1.5×103K/(m・W)までの範囲で調整した。さらに、先端側体積Vcが8〜14.5mm3で、熱抵抗値Raが0.6×103K/(m・W)の絶縁碍子と、先端側体積Vcが8mm3で、熱抵抗値Raが0.7×103K/(m・W)の絶縁碍子とを作製することができなかった。そのため、図9乃至図13に示す図表では、これらの組み合わせに該当するデータがないので「−」とした。
次に、試験条件について説明する。試験条件としては、JIS D1606に規定されている燻り汚損試験を実施した。その後、JIS B8031に規定された測定方法によって、スパークプラグの絶縁抵抗値(Ω)を測定した。
次に、絶縁抵抗値の評価基準について説明する。評価は10サイクル終了時の絶縁抵抗値で行い、A〜Dの4段階で評価した。「A」は、10サイクル終了時の絶縁抵抗値が100MΩ以上、「B」は、10サイクル終了時の絶縁抵抗値が10MΩ以上100MΩ未満、「C」は、10サイクル終了時の絶縁抵抗値が10MΩ未満、「D」は、途中サイクルでエンジン始動不良を生じたことを示す。なお、絶縁抵抗値が高いほど、絶縁碍子の先端温度が速やかに上昇し、絶縁碍子に付着したカーボンが速やかに焼き切られているので、昇温性能が高いと評価した。これとは逆に、絶縁抵抗値が低いほど、絶縁碍子の先端温度が速やかに上昇せず、絶縁碍子にカーボンが残存しているため、昇温性能は低いと評価した。
まず、ケース1の評価試験の結果について、図4乃至図8を参照して説明する。図4は、試験区1−1の結果を示す図表であり、図5は、試験区1−2の結果を示す図表であり、図6は、試験区1−3の結果を示す図表であり、図7は試験区1−4の結果を示す図表であり、図8は、試験区1−5の結果を示す図表である。
試験区1−1の結果について説明する。図4に示すように、試験区1−1では、絶縁碍子の先端側体積Vcおよび熱抵抗値Raに関係なく、全てのサンプルにおいて評価は「D」であった。
試験区1−2の結果について説明する。図5に示すように、試験区1−2では、先端側体積Vcが8〜12mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜6.0×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「A」であった。さらに先端側体積Vcが14.5〜17mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜4.0×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「B」であった。また先端側体積Vcが8〜14.5mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが0.8×103K/(m・W)のサンプルの評価は「C」であった。そしてこれら以外のサンプルの評価は「D」であった。
試験区1−3の結果について説明する。図6に示すように、試験区1−3では、先端側体積Vcが8〜12mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜6.0×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「A」であった。さらに先端側体積Vcが14.5〜17mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜4.0×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「B」であった。また先端側体積Vcが8〜17mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが0.8×103K/(m・W)のサンプルの評価は「C」であった。そしてこれら以外のサンプルの評価は「D」であった。
試験区1−4の結果について説明する。図7に示すように、試験区1−4でも試験区1−3の結果と同様に、先端側体積Vcが8〜12mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜6.0×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「A」であった。さらに先端側体積Vcが14.5〜17mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜4.0×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「B」であった。また先端側体積Vcが8〜17mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが0.8×103K/(m・W)のサンプルの評価は「C」であった。そしてこれら以外のサンプルの評価は「D」であった。
試験区1−5の結果について説明する。図8に示すように、試験区1−5でも試験区1−3の結果と同様に、先端側体積Vcが8〜12mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜6.0×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「A」であった。さらに先端側体積Vcが14.5〜17mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜4.0×103K/(m・W)の範囲内の有するサンプルの評価は「B」であった。また先端側体積Vcが8〜17mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが0.8×103K/(m・W)のサンプルの評価は「C」であった。そしてこれら以外のサンプルの評価は「D」であった。
次に、試験区1−1の結果について考察する。試験区1−1では、絶縁碍子の突出量Hが0mmであるので、絶縁碍子の先端が主体金具の内側に隠れてしまっている。この場合、絶縁碍子において燃焼室に曝される部分が少ないので、絶縁碍子の先端温度は上昇し難くいと推測される。よって、絶縁碍子に付着したカーボンを速やかに焼き切ることができず、残存してしまうことから、奥飛火(リーク現象)や横飛火が容易に発生してしまい、エンジンの始動不良を引き起こしたと推測される。
試験区1−2の結果について考察する。試験区1−2では、絶縁碍子の突出量Hが1mmであるので、主体金具の先端面から絶縁碍子の先端が突出している。つまり、絶縁碍子の先端側が燃焼室に曝されるので、絶縁碍子の先端温度は試験区1−1に比べて上昇し易くなる。このことから試験区1−1に比べ、絶縁抵抗値を所定レベル以上に確保できるサンプルが多数得られた。その中でも、絶縁碍子の先端側体積Vcが17mm3以下で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103K/(m・W)以上であれば、絶縁抵抗値を少なくとも10MΩ以上に維持できることがわかった(図5に示す「A」と「B」に該当する範囲)。さらに好ましくは、絶縁碍子の先端側体積Vcが12mm3以下で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103K/(m・W)以上であれば、絶縁抵抗値を少なくとも100MΩ以上に維持できることがわかった(図5に示す「A」に該当する範囲)。
試験区1−3、1−4、1−5の結果について考察する。試験区1−3、1−4、1−5は、試験区1−2とほぼ同様の結果が得られた。このことからケース1では、絶縁碍子の突出量Hは少なくとも1mm以上を満たせばよいことが分かった。しかし、絶縁碍子の突出量が極端に長くなると、絶縁碍子において燃焼室内に曝される部分が多くなるので、絶縁碍子が焼けすぎる場合がある。さらに中心電極も燃焼室内の中心に向かって突き出すことになるので、中心電極の電極チップが高温になり過ぎて消耗し易くなってしまう。また、後述する実施例2の耐久試験の結果より、突出量H=1mmの方が、突出量H=4mmよりも耐久性が高いことから、自己清浄が正常に機能する1mm程度に規定するのが好ましい。
次に、ケース2の評価試験の結果について、図9〜図13を参照して説明する。図9は、試験区2−1の結果を示す図表であり、図10は、試験区2−2の結果を示す図表であり、図11は、試験区2−3の結果を示す図表であり、図12は試験区2−4の結果を示す図表であり、図13は、試験区2−5の結果を示す図表である。
試験区2−1の結果について説明する。図9に示すように、試験区2−1では、絶縁碍子の先端側体積Vcおよび熱抵抗値Raに関係なく全てのサンプルにおいて、評価は「D」であった。
試験区2−2の結果について説明する。図10に示すように、試験区2−2では、先端側体積Vcが8〜12mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜1.5×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「A」であった。さらに先端側体積Vcが14.5〜17mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜1.5×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「B」であった。また先端側体積Vcが8〜14.5mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが0.8×103K/(m・W)のサンプルの評価は「C」であった。そしてこれら以外のサンプルの評価は「D」であった。
試験区2−3の結果について説明する。図11に示すように、試験区2−3では、先端側体積Vcが8〜12mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜1.5×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「A」であった。さらに先端側体積Vcが14.5〜17mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜1.5×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「B」であった。また先端側体積Vcが8〜17mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが0.8×103K/(m・W)のサンプルの評価は「C」であった。そしてこれら以外のサンプルの評価は「D」であった。
試験区2−4の結果について説明する。図12に示すように、試験区2−4は試験区2−3の結果と同様に、先端側体積Vcが8〜12mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜1.5×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「A」であった。さらに先端側体積Vcが14.5〜17mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜1.5×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「B」であった。また先端側体積Vcが8〜17mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが0.8×103K/(m・W)のサンプルの評価は「C」であった。そしてこれら以外のサンプルの評価は「D」であった。
試験区2−5の結果について説明する。図13に示すように、試験区2−5も試験区2−3の結果と同様に、先端側体積Vcが8〜12mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜1.5×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「A」であった。さらに先端側体積Vcが14.5〜17mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103〜1.5×103K/(m・W)の範囲内のサンプルの評価は「B」であった。また先端側体積Vcが8〜17mm3の範囲内で、かつ熱抵抗値Raが0.8×103K/(m・W)のサンプルの評価は「C」であった。そしてこれら以外のサンプルの評価は「D」であった。
次に、試験区2−1の結果について考察する。図9に示すように、試験区2−1では、試験区1−1と同様に、絶縁碍子の突出量Hが0mmであるので、絶縁碍子の先端が主体金具の内側に隠れてしまっている。よって、絶縁碍子に付着したカーボンを速やかに焼き切ることができず、残存してしまうことから、奥飛火(リーク現象)や横飛火が容易に発生してしまい、エンジンの始動不良を引き起こしたと推測される。
試験区2−2の結果について考察する。図10に示すように、試験区2−2では、試験区1−1と同様に、絶縁碍子の突出量Hが1mmであるので、主体金具の先端面から絶縁碍子の先端が突出している。つまり、絶縁碍子の先端側が燃焼室に曝されるので、絶縁碍子の先端温度は試験区2−1に比べて上昇し易くなる。このことから試験区2−1に比べ、絶縁抵抗値を確保できるサンプルが多数得られた。そして、絶縁碍子の先端側体積Vcが17mm3以下で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103K/(m・W)以上であれば、絶縁抵抗値を少なくとも10MΩ以上に維持できることがわかった(図10に示す「A」と「B」に該当する範囲)。さらに好ましくは、絶縁碍子の先端側体積Vcが12mm3以下で、かつ熱抵抗値Raが1.0×103K/(m・W)以上であれば、絶縁抵抗値を少なくとも100MΩ以上に維持できることがわかった(図10に示す「A」に該当する範囲)。
試験区2−3、2−4、2−5の結果について考察する。図11乃至図13に示すように、試験区2−3、2−4、2−5は、図10に示す試験区2−2とほぼ同様の結果である。このことからケース1では、絶縁碍子の突出量Hは少なくとも1mm以上を満たせばよいことが分かった。
次に、ケース1及びケース2の結果全体について考察する。ケース1とケース2とでは、熱抵抗値Raの調整範囲が異なるものの、重複する範囲ではほぼ同様の結果が得られた。つまり、熱抵抗値Raの何れの調整方法でも、熱抵抗値Raが1.0×103K/(m・W)以上の範囲内であれば良好な結果が得られている。このことから、熱抵抗値Raの調整方法の違いが評価試験の結果に与える影響はほとんど無いと思われる。以上の結果から、各種パラメータを以下の範囲に限定することによって、燻り汚損試験後の絶縁抵抗値を10MΩ以上に保持できることがわかった。
・H≧1mm
・Vc≦17mm3
・Ra≧1.0×103K/(m・W)
さらに、絶縁碍子の先端側体積Vcをさらに12mm3以下に限定することによって、燻り汚損試験後の絶縁抵抗値を100MΩ以上に保持できることもわかった。
次に、高温下での中心電極の電極チップの耐久性を調べるために、高温下における熱抵抗値Rbを種々変えた耐久試験を行った。さらに絶縁碍子の突出量Hが電極チップの消耗率に与える影響についても調べた。以下、耐久試験の方法並びに結果について説明する。
まず、試験方法について説明する。熱抵抗値Rbについては、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4(×104K/(m・W))の6種類を設定した。なお、熱抵抗値Rbの調整は、実施例1のケース2と同様に、絶縁碍子の材質を調整することによって行った。これに加え、絶縁碍子の突出量Hについては、1mm、4mmの2種類を設定した。そして、これらを組み合わせてなる12種類の絶縁碍子を作製し、それらを含む12種類のスパークプラグをサンプルとして用意した。なお、サンプルとして用いられるスパークプラグはM10の細径のものを使用した。さらに電極チップには、イリジウム合金チップを使用した。そして、2000cc、直列4気筒エンジンにて、5000RPM、W.O.Tで100時間の耐久試験を実施した。そして、その耐久試験後の電極チップの消耗率(%)を算出し、スパークプラグとしての耐久性を評価した。消耗率は、耐久試験前後における電極チップの体積減少の割合(耐久試験前の電極チップ体積から耐久試験後の電極チップ体積を差し引いたものを耐久試験前の電極チップ体積で除したもの)より算出した。尚、電極チップの体積は、例えば、X線CT装置等により算出することができる。また、評価基準として、従来品の電極チップの消耗率とほぼ同じである5%を合格ラインに設定した。
次に、耐久試験の結果について、図14,図15を参照して説明する。図14は、耐久試験の結果を示す図表であり、図15は、耐久試験の結果を示すグラフである。図14に示すように、絶縁碍子の突出量H=1mmでは、熱抵抗値Rbが0.4×104K/(m・W)の場合、電極チップの消耗率は1%であった。さらに熱抵抗値Rbが0.6×104K/(m・W)の場合、電極チップの消耗率は2%であった。さらに熱抵抗値Rbが0.8×104K/(m・W)の場合、電極チップの消耗率は3%であった。さらに熱抵抗値Rbが1.0×104K/(m・W)の場合、電極チップの消耗率は5%であった。さらに熱抵抗値Rbが1.2×104K/(m・W)の場合、電極チップの消耗率は35%であった。さらに熱抵抗値Rbが1.4×104K/(m・W)の場合、電極チップの消耗率は55%であった。
一方、絶縁碍子の突出量H=4mmでは、図14に示すように、熱抵抗値Rbが0.4×104K/(m・W)の場合、電極チップの消耗率は1%であった。さらに熱抵抗値Rbが0.6×104K/(m・W)の場合、電極チップの消耗率は2%であった。さらに熱抵抗値Rbが0.8×104K/(m・W)の場合、電極チップの消耗率は3%であった。さらに熱抵抗値Rbが1.0×104K/(m・W)の場合、電極チップの消耗率は5%であった。さらに熱抵抗値Rbが1.2×104K/(m・W)の場合、電極チップの消耗率は39%であった。さらに熱抵抗値Rbが1.4×104K/(m・W)の場合、電極チップの消耗率は59%であった。
次に、耐久試験の結果について考察する。図15に示すように、突出量Hが1mm、4mmの何れにおいても、熱抵抗値Rbが0.4×104〜1.0×104K/(m・W)までは、消耗率が5%以下の範囲内であった。そして、熱抵抗値Rbが1.0×104K/(m・W)を超えると電極チップの消耗が急激に進んだため、電極チップの消耗率は急激に上昇した。このことから絶縁碍子の熱抵抗値Rbを1.0×104K/(m・W)以下に規定すれば、消耗率を5%以下に抑えることができるので、スパークプラグとしての耐久性を十分に確保することができる。
また、熱抵抗値Rbが1.0×104K/(m・W)を超えると、突出量H=4mmのサンプルの方が、突出量H=1mmのサンプルに比して、消耗率がやや高くなった。例えば、熱抵抗値Rbが1.2×104K/(m・W)の場合、突出量H=1mmのサンプルでは電極チップの消耗率は35%であったが、突出量H=4mmのサンプルでは電極チップの消耗率は39%であった。これは、絶縁碍子の突出量Hが大きくなったことによって、中心電極の電極チップが燃焼室内に突き出され、電極チップがより高温になって負荷がかかったものと推測される。
ところで、実施例2では、細径であるM10のスパークプラグをサンプルとして用いたが、M14の取付ねじ部の外径を有するスパークプラグで同様の耐久試験を行ったところ、電極チップの消耗率は3%であった。つまり、M10のスパークプラグにおいて、M14のスパークプラグと同等の電極チップの消耗率を達成するためには、図14,図15より、熱抵抗値Rbを0.8×104K/(m・W)以下にすれば良いことがわかる。このように、熱抵抗値Rbを0.8×104K/(m・W)以下に規定することによって、細径であるM10のスパークプラグにおいてもM14のスパークプラグと同等の優れた耐久性を維持できることがわかった。
次に、絶縁碍子の先端側体積Vcについて、絶縁碍子の耐電圧特性の面で最適値を求めるため、評価試験を行った。以下、耐久試験の方法並びに結果について説明する。
まず、試験方法について説明する。先端側体積Vcについて、6、8、12、17、19(mm3)の5種類を設定した。具体的に、外径をφ1.9〜φ2.3mmの範囲で異ならせるとともに、外径に対する芯材(銅芯)の外径の割合を15〜90%の範囲で異ならせた中心電極と、先端における外径をφ3.1〜φ4.3mmの範囲で異ならせた絶縁碍子とを適宜組み合わせることにより、上記5種類の先端側体積Vcに設定した絶縁碍子を作製し、それらを含むスパークプラグを各種類につき10本ずつサンプルとして用意した。そして、1600cc、直列4気筒エンジンにて、5000RPM、W.O.Tで1時間の耐久試験を実施し、その耐久試験後に絶縁碍子の先端部を観察して、絶縁貫通が生じているか否かを確認した。
次に、絶縁貫通の有無の評価基準について説明する。評価は先端側体積Vcの異なる種類ごとに、AまたはBの2段階で行った。「A」は、先端側体積Vcが同一である10本のサンプルのうち、絶縁貫通の生じたサンプルが1本もなかったことを示し、「B」は、絶縁貫通の生じたサンプルが1本でもあったことを示す。
次に、耐久試験の結果について、図16を参照して説明する。図16は、耐久試験の結果を示す図表である。図16に示すように、先端側体積Vcが6mm3のサンプルでは、絶縁貫通の生じたサンプルが見つかり、「B」と評価された。しかし、先端側体積Vcが8mm3以上のサンプルでは、いずれのサンプルにも絶縁貫通が生ずることはなく、「A」と評価された。
次に、耐久試験の結果について考察する。「B」と評価された先端側体積Vcが6mm3のサンプルは、絶縁碍子の先端部において十分な体積を確保できず、径方向の厚み(肉厚)が薄くなったことにより、耐久試験において絶縁貫通を生ずる結果となったと考えられる。一方、先端側体積Vcが8mm3以上のサンプルであれば、絶縁碍子の先端部において十分な体積を確保でき、耐久試験において絶縁貫通を生じない、十分な肉厚を確保できることがわかった。
以上説明したように、本実施形態のスパークプラグ100では、絶縁碍子10の先端側の昇温性能を向上するために、上記パラメータついて各種規定した。例えば、主体金具50の先端面57から軸線O方向先端側に向かって突き出た絶縁碍子10の突出量をH(mm)とする。次いで、絶縁碍子10の先端から軸線O方向後端側へ2mm離れた位置を通り、軸線Oと直交する平面P(2点鎖線P−Pでその断面を示す。)を想定する。その平面Pで組立体60を切断した時の絶縁碍子10の先端側の体積をVc(mm3)とする。また、平面Pで切断した組立体60の断面の常温(20℃)における空気層を除いた単位長さ当たりの熱抵抗値をRa(K/(m・W))とする。この場合、突出量H、先端側体積Vc、常温下の熱抵抗値Raを、少なくとも以下のように規定する。
・H≧1mm
・Vc≦17mm3
・Ra≧1.0×103K/(m・W)
このように規定することで、絶縁碍子10の先端側の昇温性能を向上させることができる。そして、絶縁碍子10の先端温度を速やかに上昇させることができるので、絶縁碍子10の先端側の表面に付着したカーボンを速やかに焼き切ることができる。よって、中心電極20から絶縁碍子10を介して主体金具50へ飛火する横飛火等の沿面放電の発生を防止できるので、混合気への正常な着火を安定して確保することができる。また、高温下(800℃)における空気層を除いた単位長さ当たりの熱抵抗値Rb(K/(m・W))を、Rb≦1.0×104K/(m・W)(さらに好ましくは、Rb≦0.8×104K/(m・W))に規定することによって、中心電極20の電極チップ90の消耗を抑えることができる耐久性の良いスパークプラグを提供することができる。なお、このような効果は、主体金具50の取付ねじ部52の外径が、呼び径でM10以下の細径のスパークプラグ100には特に有効である。スパークプラグ100は細径であればあるほど、主体金具50と絶縁碍子10との間のクリアランスを確保することが困難であり、絶縁碍子に付着したカーボンを速やかに取り除かなければ、容易に奥飛火(リーク現象)や横飛火が発生してしまうからである。また、絶縁碍子の先端側体積Vcをさらに12mm3以下に規定することによって、燻り汚損試験後のスパークプラグの絶縁抵抗値を100MΩ以上に保持できる。一方で、絶縁碍子の先端側体積Vcを8mm3以上に規定することによって、絶縁碍子の先端部における径方向の厚み(肉厚)を確保し、絶縁貫通を生じにくくさせることができる。
なお、本発明は各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、中心電極20を構成する電極母材21や芯材25の材質は、それぞれ、ニッケルまたはニッケルを主成分とする合金、および銅または銅を主成分とする合金からなるとしたが、それぞれ、耐火花消耗性に優れた金属(Fe合金など)、および電極母材21よりも熱伝導性に優れた金属(Ag合金など)の組み合わせとなれば、その他の金属を用いてもよい。また、電極チップ90,91は、いずれか一方あるいは両方ともなくてもよい。