JP5910562B2 - 車両のグリルシャッタ構造 - Google Patents
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Description
エンジンルーム内へ導入された走行風は、車両走行時、フロアパネルのトンネル部等を後方へ流れて車両周りに空気の乱れを形成する要因であることから、この走行抵抗の増加とこれに伴う車両の燃費性能低下を回避するため、エンジンルーム内へ導入される走行風量を調整可能なグリルシャッタユニットを搭載する傾向が高くなっている。
特許文献1の車両用可動グリルシャッターは、フロントグリル開口部に一体的に設置され、第1支持軸を備えた左側第1フィン(左側シャッタ部材)と、第2支持軸を備えた右側第2フィン(右側シャッタ部材)と、第1フィンを開閉駆動する第1出力軸と、第2フィンを開閉駆動する第2出力軸と、第1,第2フィンの間に配置されたアクチュエータとを備え、第1,第2出力軸と第1,第2支持軸との間に第1,第2自在継手を夫々設けている。
特許文献2の車両前部のダクト構造は、バンパフェースに形成されたフロントグリルとこのフロントグリルの下側に形成された走行風導入口とを設け、これらフロントグリル及び走行風導入口とラジエータコアサポート(シュラウド部材)に支持されたラジエータとの間にラジエータコアサポートに取り付けられたダクト装置(グリルシャッタユニット)を設け、このダクト装置が、フロントグリルと走行風導入口とからラジエータへ走行風を供給する複数のダクト部と、各ダクト部内において走行風を通過又は遮断するシャッタとを夫々備えている。
左右1対のフロントサイドフレームの前端には、前方へ延びるクラッシュカンが夫々設置されている。これらクラッシュカンの前端には、車幅方向に延びるバンパーレインフォースメントが懸架され、その前側周辺がバンパフェースによって覆われている。それ故、車両の正衝突の際、フロントサイドフレームの前端に設けられたクラッシュカンが潰れることによって衝突荷重を吸収し、乗員の安全性を確保している。
しかし、バンパーレインフォースメントの後退量が大きな重衝突の場合、クラッシュカンの圧縮変形に伴ってバンパーレインフォースメントとフロントサイドフレーム前端との離隔距離が接近するため、衝突荷重によりグリルシャッタユニットが破損する虞がある。
特許文献2のグリルシャッタユニットでは、シャッタユニットとダクト部とからなるグリルシャッタユニットが一体成形体として構成されているため、ダクト部の前側部分の一部が破損した場合であっても、グリルシャッタユニット全体を交換する必要が生じ、修理・補修費用が高くなり、リペアビリティ性能が低下するという問題が生じる。
設計条件として、ダクト部先端と走行風導入口とを密着状に当接させることも考えられるが、その場合、軽衝突であってもバンパーレインフォースメントとの干渉によりグリルシャッタユニットが破損し易くなる虞もある。
また、シャッタユニットと枠部とがバンパーレインフォースメントよりも車体後方に配設され、枠部の前端に可撓性を有するシール部を設けたため、車両衝突の際、後退するバンパーレインフォースメントはシール部を変形させるものの、シャッタユニットと枠部とを破損から保護することができる。更に衝突荷重が大きく枠部が破損した場合、走行風ガイド部材を交換するだけで良く、リペアビリティ性能を向上できる。
枠部とシール部との結合力が高い走行風ガイド部材を1回の成形工程で製造できるため、走行風ガイド部材の生産性を高くできる。また、走行風ガイド部材の組付作業性を高くできるため、リペアビリティ性能を更に向上できる。
また、シャッタユニットを介すことなくエンジンルーム内へ導入される走行風を防止でき、過冷却や走行抵抗増加に伴う燃費性能低下を確実に回避することができる。
本発明が適用される車両Vには、前後方向に延びる左右1対のフロントサイドフレーム1と、これら左右1対のフロントサイドフレーム1の前端に固定された左右1対のクラッシュカン2と、これら左右のクラッシュカン2の前端に連結された車幅方向に延びるバンパーレインフォースメント3(以下、バンパーレイン3と略称する)と、このバンパーレイン3に固定された矩形枠状のシュラウド部材20と、このシュラウド部材20に固定されたグリルシャッタユニット30と、車体前端部に配設されたバンパフェース4等が設けられている。
図1,図3,図4,図6に示すように、左右1対のフロントサイドフレーム1は、車幅方向に所定間隔離隔して配設され、これら左右1対のフロントサイドフレーム1の前端に上下左右に張り出したフランジ1aが夫々溶接されている。
左右1対のクラッシュカン2は、角筒状に形成されており、その後端には上下左右に張り出したフランジ2aが夫々溶接され、複数のボルトb1によってフランジ1aに夫々結合されている。これらのクラッシュカン2は、車両衝突時にバンパーレイン3を介して前方から作用した衝突荷重により圧縮変形しながら潰れることで衝突エネルギーを吸収し、所期のエネルギー吸収機能を達成し得るサイズ・形状に構成されている。
ベース板6は、断面略U字状の本体部6aと、この本体部6aの上端部から上方へ延びる上側フランジ部6bと、この上側フランジ部6bの上端部から屈曲して後方へ延びる上側水平壁部6cと、本体部6aの下端部から下方へ延びる下側フランジ部6dと、この下側フランジ部6dの下端部から屈曲して後方へ延びる下側水平壁部6eとを備えている。
本体部6aの後壁部が左右1対のクラッシュカン2の前端部に連結されている。
図4,図6〜図8に示すように、バンパーレイン3の後側で且つ左右1対のクラッシュカン2の間には、所定距離離隔した状態でシュラウド部材20をバンパーレイン3に支持するための左右1対の取付ブラケット25が夫々接合されている。この左右1対の取付ブラケット25は、本体部6aの後壁部から後方へ延び、その後側壁部に上下1対のボルト穴h6が夫々設けられている。
衝撃吸収体8は、車両衝突時にバンパフェース4及びバンパーレイン3を介して前方から作用した衝突荷重により圧縮変形することで衝突エネルギーを吸収し、所期のエネルギー吸収機能を達成し得るサイズ・形状に構成されている。
V字形溝12bは、後述するシャッタ部材35a〜35eから流下してプレート部12a上に滞留する水をその内部に回収し、底部に形成された複数の水抜き孔12fから回収された水を外部(車体下方)へ排出している。
本実施例では、下壁部8aと下側水平壁部6eとが、グリルシャッタユニット30の通気導入口の上側外周壁面に相当し、バンパグリル4bの下縁部とプレート部12aの前側部分の上面が、グリルシャッタユニット30の通気導入口の下側外周壁面に相当している。
図1〜図9,図11に示すように、シュラウド部材20は、バンパーレイン3の後方位置に略鉛直姿勢に配置され、ラジエータ15とコンデンサ(図示略)等が取り付けられている。シュラウド部材20は、硬質合成樹脂材料によって形成され、左右方向に延びてラジエータ15の上部を支持するアッパ部材21と、左右方向に延びてラジエータ15の下部を支持するロア部材22と、アッパ部材21とロア部材22の左右両端部を夫々連結する左右1対のサイド部材23等と、アッパ部材21の途中部とロア部材22の途中部とを上下方向に亙って連結する左右1対のステー部24を備え、正面視にて略矩形枠状に一体成形体として構成されている。
上壁部21bの左端部と右端部には、ラジエータ15の上部を支持するための左右1対の支持開口(図示略)が設けられている。図3,図9,図11〜図13に示すように、ロア部材22は、フロントクロスメンバ10の前側近傍位置に配置され、上側前壁部22aと、この上側前壁部22aの下端から後方へ水平状に延びる中段部22bと、この中段部22bの後端から鉛直下方へ延びる下側前壁部22cと、この下側前壁部22cの下端から後方へ延びる下壁部22dを備えている。
これら左右1対のサイド部材23は、左右対称の構造のため、主に左側のサイド部材23について説明する。
前壁部23aの中段部には、シュラウド部材20をバンパーレイン3に支持させるための上下1対のボルト穴h2と、これら上下1対のボルト穴h2の下方位置にグリルシャッタユニット30を取り付けるための上下1対のボルト穴h3が形成されている。予めバンパーレイン3に接合された取付ブラケット25のボルト穴h6(図7,図8参照)とサイド部材23の上下1対のボルト穴h2(図9,図11参照)とをボルトb4(図4,図5参照)によって締結することにより、シュラウド部材20がバンパーレイン3に対して固定される。これにより、シュラウド部材20がバンパーレイン3に対して一体的に連結されるため、バンパーレイン3が後退移動する際、シュラウド部材20は、バンパーレイン3と一体的に同期して後退移動する。
グリルシャッタユニット30は、車両Vが所定の運転状態のとき、エンジンルーム内へ進入する走行風を許容し、それ以外の状態(例えば暖機前状態等)のとき、エンジンルーム内へ流入する走行風を制限する走行風量調整機構である。
図3に示すように、グリルシャッタユニット30は、正面視にて脚払い部材12のプレート部12aの上方位置においてフロントグリル4aの下側部分の一部とバンパグリル4bとに重なるように配置され、バンパーレイン3の下側に配置されている。図11に示すように、グリルシャッタユニット30は、シュラウド部材20の下側前壁部22cに形成された左右1対のボルト穴h1及び左右1対の前壁部23aに夫々形成された上下1対のボルト穴h3にボルトb2,b3を介して取り付けられている。
シャッタユニット31は、角筒状のユニット枠部33と、このユニット枠部33に枢支され左右方向に延びる複数の回動軸34a〜34eと、これら複数の回動軸34a〜34eに夫々装備され開閉動作可能な複数のシャッタ部材35a〜35eと、これら複数のシャッタ部材35a〜35eを開閉動作させるリンク機構(図示略)とアクチュエータを含んだ開閉駆動手段36等を備えている。
下壁部42は、中段部22bよりも下方位置に配置され、車幅方向中央部分において下方へ凹入したユニット側凹部45と、下壁部42の後端且つ左右端寄り位置から夫々下方へ張り出した左右1対の取付フランジ部46が設けられている。
左右1対の取付フランジ部46には、下側前壁部22cに形成された左右1対のボルト穴h1に対応する位置においてシャッタユニット31をシュラウド部材20へ取り付けるためのボルト穴h4が夫々形成されている。
右側壁部43には、複数のシャッタ部材35a〜35eを開閉動作可能な開閉駆動手段36が装着されている。
複数のシャッタ部材35a〜35eのうち最下部のシャッタ部材35eは、ユニット側凹部45に対応するように上縁部が略直線状に形成され且つ下縁部が車幅方向中央部分において下方に凹入するように形成されると共に、車幅方向中央部分の上下幅がそれ以外の部分の上下幅よりも幅が広くなるように形成されている。シャッタ部材35a〜35dは、一様に長方形状に形成されている。
図8〜図13に示すように、走行風ガイド部材32は、角筒状のガイド枠部37と、このガイド枠部37の前端から前方へ延びる角筒状のシール部38等を一体的に備えている。
ガイド枠部37は、硬質合成樹脂材料(例えばPP)で形成され、シール部38は、可撓性を有する熱可塑性エラストマー(TPE:例えばシリコンゴム)で可撓性を有するものに形成されている。
本実施例では、1対の金型内に形成された一次成形空間内に硬質合成樹脂材料を射出してガイド枠部37を成形し、これに連続してガイド枠部37が配置された一次成形空間を拡張した二次成形空間内に熱可塑性エラストマーを射出してシール部38を成形する異種樹脂成形方法により、一体品の走行風ガイド部材32を製造している。
これにより、材質の異なった二種類の合成樹脂からなる走行風ガイド部材32を1回の成形工程で製造し、ガイド枠部37とシール部38の係合力を高くしている。
上壁部51は、その前端形状が平面視にてバンパーレイン3の後端部分に沿うように前凸湾曲状に形成され、バンパーレイン3の後端部分よりも後側に配設されている。
上側中央シール部66は、後部よりも前部が上方へ移行するように形成され、組付け時(車両Vの停止時)、上側中央シール部66の上面は衝撃吸収体8の下壁部8aとバンパーレイン3の下側水平壁部6eとに対して隙間Sを形成するように近接状に配置されている(図13参照)。この上側中央シール部66は、複数のシャッタ部材35a〜35eが開閉動作したとき、進行が遮断された走行風(矢印)によって上側中央シール部66の下方空間の圧力上昇に伴って上方へ弾性変形可能に構成されている(図12参照)。
左右1対の側部シール部63には、車幅方向内側へ突出して前後方向に延びる複数のリブ部68が夫々設けられている。
まず、クラッシュカン2と取付ブラケット25とが連結されたバンパーレイン3にシュラウド部材20を組付けてシュラウドアセンブリ体を形成する。
バンパーレイン3に設けられた取付ブラケット25のボルト穴h6(図7,図8参照)とシュラウド部材20のボルト穴h2(図9,図11参照)を重ね合わせてボルトb4(図4,図5参照)を挿通し、締結工具により締結する。このとき、シュラウド部材20には、グリルシャッタユニット30以外の部材(ラジエータ15等)が予め装備されている。
次に、フロントサイドフレーム1のフランジ1aとクラッシュカン2のフランジ2aとを複数のボルトb1で締結し、シュラウドアセンブリ体をフロントサイドフレーム1へ組付ける。
図11に示すように、複数の係合部54をユニット枠部33の内周部分の前端部に係合させた後、走行風ガイド部材32に設けられた脚部56のボルト穴h7にシャッタユニット31のボルト部47を挿通し、ナットn1により締結してグリルシャッタユニット30を作成する。
図11に示すように、シュラウド部材20のボルト穴h1,h3にシャッタユニット31のボルト穴h4,h5を重ね合わせた後、ボルトb2,b3をボルト穴h1,h3,h4,h5に挿通し締結工具(図示略)によって締結する。
走行風ガイド部材32のシール部38が可撓性を有するため、フロントグリル4aやバンパグリル4b等の走行風導入口よりも車体後方にグリルシャッタユニット30を組付ける場合、走行風導入口周りの部材(例えば下方に張り出した衝撃吸収体8)との接触による損傷を回避でき、組付け作業性を向上することができる。
最後に、脚払い部材12を取り付けた後、バンパフェース4を組付けて終了する。
この車両Vのグリルシャッタユニット30によれば、シャッタユニット31を介すことなくエンジンルーム内へ導入される走行風を抑制できるため、過冷却や走行抵抗増加に伴う燃費性能低下を回避できる。また、シャッタユニット31とガイド枠部37とがバンパーレイン3よりも車体後方に配設され、ガイド枠部37の前端に可撓性を有するシール部38を設けたため、車両Vの衝突の際、後退するバンパーレイン3はシール部38を変形させるものの、シャッタユニット31とガイド枠部37とを破損から保護することができる。更に衝突荷重が大きくガイド枠部37が破損した場合、走行風ガイド部材32を交換するだけで良く、リペアビリティ性能を向上できる。
1〕前記実施例においては、複数のシャッタ部材を備えたグリルシャッタユニットの例を説明したが、グリルシャッタユニットの前後長を確保できる場合、単一のシャッタ部材によって走行風導入口を開閉しても良い。また、角筒状のグリルシャッタユニットの例を説明したが、何れの形状でも適用可能である。
3 バンパーレイン
4b バンパグリル
12 脚払い部材
15 ラジエータ
20 シュラウド部材
23a (サイド部)前壁部
30 グリルシャッタユニット
31 シャッタユニット
32 走行風ガイド部材
35a〜35e シャッタ部材
37 ガイド枠部
38 シール部
61 上側シール部
62 下側シール部
Claims (2)
- 車体前端に設けられたバンパフェースの走行風導入口よりも車体後方に配設され且つ開閉可能なシャッタ部材を有するシャッタユニットを備えた車両のグリルシャッタ構造において、
前記シャッタユニットの外周縁部から車体前方へ延びる走行風ガイド部材と、
車体前端下部に設けられた脚払い部材とを備え、
前記走行風ガイド部材が、車体前端に設けられたバンパーレインフォースメントよりも車体後方に配設され且つ前記シャッタユニットの外周縁部に装着可能に構成された硬質合成樹脂製の枠部と、この枠部の前端から前方へ連なり且つ可撓性を有する軟質合成樹脂製のシール部とを備えた一体品の異種樹脂成形体で構成され、
前記バンパフェースが、前記バンパーレインフォースメント及び脚払い部材よりも前方で且つ前記バンパーレインフォースメント及びシャッタユニットの周囲を部分的に覆うように配設され、
前記シール部の上壁部が、後部よりも前部が上方に移行すると共にその上面が前記バンパーレインフォースメントの下端部に近接状に形成され、
前記シール部の下壁部が、前側程下方へ移行すると共にその下面が前記脚払い部材に当接状に形成されたことを特徴とする車両のグリルシャッタ構造。 - 前記車両が前記バンパーレインフォースメントに保持されたシュラウド部材を備え、
前記シャッタユニットが前記シュラウド部材の前側近傍に配置され且つシュラウド部材の前壁部に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のグリルシャッタ構造。
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