本発明者等は、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を、複数の層を積層した構成の加飾フイルム構造体によって実現することを目標として検討を重ねた。その結果、金属研磨面調意匠の実現のためには、加飾フイルム構造体に入射した光の拡散反射と、吸光と、正反射(鏡面反射)とが重要な要素であることに着目した。そして、拡散反射は、加飾フイルム構造体の表面層の表面粗さによって再現が可能、吸光は、明度が相対的に低い無彩色層によって再現が可能、正反射は、刺激値が相対的に高い金属光沢層によって再現が可能であることを見出し、適切な配列で各層を形成した上で、それらの面積等により無彩色層や金属光沢層への光の入射量をバランスさせることで、光の拡散反射と吸光と正反射とが相俟った金属研磨面調意匠の外観を得ることが可能であることを見出した。
しかし、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を有するような真実性(リアル性)の高い金属研磨面意匠を実現することは容易ではなく、例えば金属光沢層の表面に微小凹凸を設けるなどするだけでは、金属光沢層の表面が荒れることで却って全体が塗装面のようになってしまう。
そこで、本発明者は、このような知見と創意工夫とに基づき、種々試験を繰り返すことにより、光沢が強すぎず、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を有する金属研磨面調意匠を提供できる加飾フイルム構造体10Aを完成させた。
すなわち、本実施形態に係る加飾フイルム構造体10Aは、図1(A)に示すように、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層1と、表面層1の裏面側に形成された複数の微細ドットからなる無彩色層2と、無彩色層2のドット間を埋めるように表面層1の裏面側に形成された金属光沢層3とを備えている。無彩色層2はJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)が0〜80であり、この無彩色層2のドットには、微細な粒子からなる光拡散材が含まれている。
ここで、表面層1は拡散反射機能を有し、無彩色層2は吸光機能及び拡散反射機能を有し、金属光沢層3は正反射機能を有する。
この加飾フイルム構造体10Aでは、無彩色層2のドット間の間隙に金属光沢層3の一部が配置されることにより、ドット間の間隙から金属光沢層3が観察される。そのため、この加飾フイルム構造体10Aを、拡散反射機能を有する表面層1側から見たときには、吸光機能を有する無彩色層2が、正反射機能を有する金属光沢層3の中に細かく点在している。
このような構成によれば、表面層1側から加飾フイルム構造体10Aに入射した光は、表面層1の表面側の表面粗さによって一部が拡散反射し、表面層1の裏面側の無彩色層2のドットによって一部が吸光され、またドットの周縁部および当該ドットに含まれる前記光拡散材によって一部が拡散反射し、表面層1の裏面側の金属光沢層3によって一部が正反射(鏡面反射)する。このような光の拡散反射、吸光、正反射が相俟って、光沢が強すぎず、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感の金属研磨面調意匠が実現し、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾フイルム構造体10Aが得られる。
なお、図1(A)は、無彩色層2のドットの裏面側にも金属光沢層3が存在し、無彩色層2のドット間の間隙に金属光沢層3の一部が配置された構成であったが、これに限らず、無彩色層2のドットの裏面側には金属光沢層3が存在せず、無彩色層2のドット間の間隙に金属光沢層3の全部が配置された構成でもよい。
また、図1(B)に示すように、本実施形態に係る別の加飾フイルム構造体10Aは、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層1と、表面層1の表面側に形成された複数の微細ドットからなる無彩色層2と、表面層1の裏面側に形成された金属光沢層3とを備えている。無彩色層2はJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)が0〜80であり、当該無彩色層2のドットには、微細な粒子からなる光拡散材が含まれている。
ここで、表面層1は拡散反射機能を有し、無彩色層2は吸光機能及び拡散反射機能を有し、金属光沢層3は正反射機能を有する。
この加飾フイルム構造体10Aでは、無彩色層2の下に金属光沢層3が配置されることにより、ドット間の間隙から金属光沢層3が観察される。そのため、この加飾フイルム構造体10Aを、拡散反射機能を有する表面層1側から見たときには、吸光機能を有する無彩色層2が、正反射機能を有する金属光沢層3の中に細かく点在している。
このような構成によれば、表面層1側から加飾フイルム構造体10Aに入射した光は、表面層1の表面側の表面粗さによって一部が拡散反射し、表面層1の表面側の無彩色層2のドットによって一部が吸光され、またドットの周縁部および当該ドットに含まれる前記光拡散材によって一部が拡散反射し、表面層1の裏面側の金属光沢層3によって一部が正反射(鏡面反射)する。このような光の拡散反射、吸光、正反射が相俟って、光沢が強すぎず、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感の金属研磨面調意匠が実現し、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾フイルム構造体10Aが得られる。
なお、本実施形態において、上記拡散反射機能とは、外部から入射角45度で入射された可視光(波長:420〜670nm、広がり角:実質零度)を反射するとき、反射光強度の20%以上を正反射角±3度以内の方向以外の方向に反射する機能をいう。あるいは、外部から入射角90度で入射された可視光(波長:380〜780nm、広がり角:実質零度)を透過するとき、透過光強度の5%以上を正透過方向角±3度以内の方向以外の方向に変角する機能をいう。また、吸光機能とは、外部から入射角90度で入射された可視光(波長:420〜670nm、広がり角:実質零度)の強度の20%以上を吸収又は透過する機能をいう。好ましくは、入射された可視光を反射するとき、波長ごと(420〜670nm)の反射率の差が±10%以内である。また、正反射機能とは、外部から入射角45度で入射された可視光(波長:420〜670nm、広がり角:実質零度)を反射するとき、反射光強度の90%以上を正反射角±3度以内の方向に反射する機能をいう。なお、これら拡散反射機能、吸光機能および正反射機能についての定義は、後述する他の実施形態についても同じである。
本実施形態では、表面層1の表面側の表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)、無彩色層2の明度(L*)、無彩色層2のドットの面積、無彩色層2のドットの面積率、無彩色層2に含まれる光拡散材のアスペクト比及び含有量、金属光沢層3の刺激値(Y45°)を調整することによって、加飾フイルム構造体10Aの金属研磨面調意匠における光の拡散反射の程度、光の正反射の程度、光の吸収の程度をそれぞれ独立して所望の値に調整することができる。
本実施形態では、表面層1の表面側の表面粗さは、Ra2μm以下、かつRmax4μm以下又はSm50μm以上である。Ra(算術平均粗さ)を2μm以下とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。Rmax(最大高さ)を4μm以下又はSm(凹凸の平均間隔)を50μm以上とすることによっても、金属研磨面調意匠を実現するために十分は拡散反射が確実に得られる。
表面層1の表面側の表面粗さは、より好ましくは、Ra1μm以下、かつRmax2μm以下又はSm100μm以上である。これにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射がより一層確実に得られる。
本実施形態においては、無彩色層2のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)は0〜80である。無彩色層2の明度(L*)を80以下とすることにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面意匠を実現するために十分な吸光が達成される。
無彩色層2の明度(L*)は、より好ましくは、0〜50である。これにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分は吸光がより一層確実に達成される。
なお、無彩色層2に含まれる前記光拡散材は、加飾フイルム構造体10に入射する光を拡散反射させることが可能な微粒子、例えばマイカ(雲母)、セラミック、金属(アルミニウム等)、樹脂フイルム等からなる微粒子である。光拡散材の平均アスペクト比(最短辺(径)/最長辺(径))は0.5以下であり、光拡散材の含有量は、無彩色層2の成分100重量部に対して50重量部以下である。光拡散材の平均アスペクト比および含有量が上記のような範囲にあることで、無彩色層2の吸光機能を著しく損なうことなく、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を演出するような十分な拡散反射が達成される。
ここで、上記のように金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を実現するには、加飾フイルム構造体に入射する光が拡散反射する割合を増やすことが有効である。この際、例えば金属光沢層の表面に微小凹凸を設けることが考えられるが、この場合には、上述の通り、金属光沢層の表面が荒れることで却って全体が塗装面のようになってしまう。また、無彩色層のドットを多数設け、これらドットの周縁部の拡散反射を利用して鈍く光る独特の質感を演出することも考えられるが、この場合には、より微小な無彩色層のドットをより数多く設ける必要があり技術的な困難性を伴う。これに対して、無彩色層2が光拡散材を含有する上記加飾フイルム構造体10の構成によれば、金属光沢層3の表面を荒らすことなく、また、技術的な困難性を伴うこと無く、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を演出するような十分な拡散反射が達成される。
本実施形態においては、平面視でのドットの面積は10−3〜105μm2である。ドットの面積を10−3μm2以上とすることにより、ドットが小さくなりすぎず、ドットによる吸光が確実に行われる。ドットの面積を105μm2以下とすることにより、平面視での単位面積当たりのドットの面積率を一定としたときに、ドットの数が増えるから、ドットの周縁長が長くなり、ドットの周縁部による拡散反射が確実に行われる。また、ドットが大きくなりすぎず、加飾フイルム構造体10Aの見栄えの低下が抑制される。
本実施形態においては、平面視での単位面積当たりのドットの面積率は1〜80%である。ドットの面積率を1%以上とすることにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光が確実に達成される。ドットの面積率を80%以下とすることにより、吸光が過剰になりすぎず、加飾フイルム構造体10Aの過度の明度及び/又は刺激値の低下が抑制される。
無彩色層2のドットの面積率は、より好ましくは、1〜60%である。これにより、吸光が過剰になりすぎず、加飾フイルム構造体10Aの過度の明度及び/又は刺激値の低下がより一層抑制される。
本実施形態においては、金属光沢層3のJIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における刺激値(Y45°)は10000以上である。金属光沢層3の刺激値(Y45°)を10000以上とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢が確実に得られる。
金属光沢層3の刺激値(Y45°)は、より好ましくは、20000以上である。これにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢がより一層確実に得られる。
上記の加飾フイルム構造体10Aは、例えば転写フイルムのベース材(図示せず)に各層1〜3を印刷や塗装等することによって容易に得ることができる。あるいは、加飾フイルム構造体10Aの表面層1となるクリアフイルムに各層2、3を印刷や塗装等することによっても容易に得ることができる。そして、得られた加飾フイルム構造体10Aを基材5の表面に転写や接着等することによって容易に基材5を金属研磨面調に加飾することができる。もしくは、基材5の表面に直接加飾フイルム構造体10Aの各層1〜3を印刷や塗装等してもよい。
このようにして、加飾フイルム構造体10Aが基材5の表面側に形成されてなる加飾成形部材20Aが得られる。この加飾成形部材20Aは、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈するものとなる。
基材5は樹脂成形部材であることが好ましい。光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材20Aの形状の自由度を高くすることができるからである。
なお、図1において、符号4は、金属光沢層3を表面層1に押え付けるための裏打ち層及び/又は加飾フイルム構造体10Aを基材5に接着するための接着層である。さらに、金属光沢層3が裏打ち層(接着層)4によって侵食されあるいは腐食するのを防ぐための保護層(図示せず)を金属光沢層3と裏打ち層(接着層)4との間に設けてもよい。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図2(A)に示すように、加飾フイルム構造体10Bは、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層11と、表面層11の裏面側に形成された複数の微細ドットからなる金属光沢層12と、金属光沢層12のドット間を埋めるように表面層11の裏面側に形成された無彩色層13とを備えている。無彩色層13はJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)が0〜80であり、当該無彩色層13には、微細な粒子からなる光拡散材が含まれている。
ここで、表面層11は拡散反射機能を有し、金属光沢層12は正反射機能及び拡散反射機能を有し、無彩色層13は吸光機能及び拡散反射機能を有する。
この加飾フイルム構造体10Bでは、金属光沢層12のドット間の間隙に無彩色層13の一部が配置されることにより、ドット間の間隙から無彩色層13が観察される。そのため、この加飾フイルム構造体10Bを、拡散反射機能を有する表面層11側から見たときには、正反射機能を有する金属光沢層12が、吸光機能を有する無彩色層13の中に細かく点在している。
このような構成によれば、表面層11側から加飾フイルム構造体10Bに入射した光は、表面層11の表面側の表面粗さによって一部が拡散反射し、表面層11の裏面側の無彩色層13によって一部が吸光され、この無彩色層13に含まれる前記光拡散材によって一部が拡散反射し、表面層11の裏面側の金属光沢層12のドットによって一部が正反射(鏡面反射)し、またドットの周縁部によって一部が拡散反射する。このような光の拡散反射、吸光、正反射が相俟って、光沢が強すぎず、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感の金属研磨面調意匠が実現し、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾フイルム構造体10Bが得られる。
なお、図2(A)は、金属光沢層12のドットの裏面側にも無彩色層13が存在し、金属光沢層12のドット間の間隙に無彩色層13の一部が配置された構成であったが、これに限らず、金属光沢層12のドットの裏面側には無彩色層13が存在せず、金属光沢層12のドット間の間隙に無彩色層13の全部が配置された構成でもよい。
また、図2(B)に示すように、本実施形態に係る別の加飾フイルム構造体10Bは、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層11と、表面層11の表面側に形成された複数の微細ドットからなる金属光沢層12と、表面層11の裏面側に形成された無彩色層13とを備えている。無彩色層13はJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)が0〜80であり、当該無彩色層13のドットには、微細な粒子からなる光拡散材が含まれている。
ここで、表面層11は拡散反射機能を有し、金属光沢層12は正反射機能及び拡散反射機能を有し、無彩色層13は吸光機能及び拡散反射機能を有する。
この加飾フイルム構造体10Bでは、金属光沢層12の下に無彩色層13を配置することにより、ドット間の間隙から無彩色層13が観察される。そのため、この加飾フイルム構造体10Bを、拡散反射機能を有する表面層11側から見たときには、正反射機能を有する金属光沢層12が、吸光機能を有する無彩色層13の中に細かく点在している。
このような構成により、表面層11側から加飾フイルム構造体10Bに入射した光は、表面層11の表面側の表面粗さによって一部が拡散反射し、表面層11の裏面側の無彩色層13によって一部が吸光され、この無彩色層13に含まれる前記光拡散材によって一部が拡散反射し、表面層11の表面側の金属光沢層12のドットによって一部が正反射(鏡面反射)し、またドットの周縁部によって一部が拡散反射する。このような光の拡散反射、吸光、正反射が相俟って、光沢が強すぎず、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感の金属研磨面調意匠が実現し、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾フイルム構造体10Bが得られる。
本実施形態では、表面層11の表面側の表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)、無彩色層13の明度(L*)、無彩色層13に含まれる光拡散材のアスペクト比及び含有量、金属光沢層12の刺激値(Y45°)、金属光沢層12のドットの面積、金属光沢層12のドットの面積率、を調整することによって、加飾フイルム構造体10Bの金属研磨面調意匠における光の拡散反射の程度、光の正反射の程度、光の吸収の程度をそれぞれ独立して所望の値に調整することができる。
本実施形態では、表面層11の表面側の表面粗さは、Ra2μm以下、かつRmax4μm以下又はSm50μm以上である。Ra(算術平均粗さ)を2μm以下とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。Rmax(最大高さ)を4μm以下又はSm(凹凸の平均間隔)を50μm以上とすることによっても、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。
表面層11の表面側の表面粗さは、より好ましくは、Ra1μm以下、かつRmax2μm以下又はSm100μm以上である。これにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射がより一層確実に得られる。
本実施形態においては、無彩色層13のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)は0〜80である。無彩色層2の明度(L*)を80以下とすることにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面意匠を実現するために十分な吸光が達成される。
無彩色層13の明度(L*)は、より好ましくは、0〜50である。これにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光がより一層確実に達成される。
なお、無彩色層13に含まれる前記光拡散材は、図1の無彩色層2に含まれる光拡散材と同様、例えばマイカ(雲母)、セラミック、金属(アルミニウム等)、樹脂フイルム等からなる微粒子である。光拡散材の平均アスペクト比(最短辺(径)/最長辺(径))は0.5以下であり、光拡散材の含有量は、無彩色層2の成分100重量部に対して50重量部以下である。光拡散材の平均アスペクト比および含有量が上記のような範囲にあることで、無彩色層13の吸光機能を著しく損なうことなく、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を演出するような十分な拡散反射が達成される。
本実施形態においては、金属光沢層12のJIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における刺激値(Y45°)は10000以上である。金属光沢層12の刺激値(Y45°)を10000以上とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢が確実に得られる。
金属光沢層12の刺激値(Y45°)は、より好ましくは、20000以上である。これにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢がより一層確実に得られる。
本実施形態においては、平面視でのドットの面積は10−3〜105μm2である。ドットの面積を10―3μm2以上とすることにより、ドットが小さくなりすぎず、ドットによる正反射が確実に行われる。ドットの面積を105μm2以下とすることにより、平面視での単位面積当たりのドットの面積率を一定としたときに、ドットの数が増えるから、ドットの周縁長が長くなり、ドットの周縁部による拡散反射が確実に行われる。また、ドットが大きくなりすぎず、加飾フイルム構造体10Bの見栄えの低下が抑制される。
本実施形態においては、平面視での単位面積当たりのドットの面積率は20〜99%である。ドットの面積率を20%以上とすることにより、平面視での単位面積当たりの無彩色層13の面積率が80%以下となり、吸光が過剰になりすぎず、加飾フイルム構造体10Bの過度の明度及び/又は刺激値の低下が抑制される。ドットの面積率を99%以下とすることにより、平面視での単位面積当たりの無彩色層13の面積率が1%以上となり、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光が確実に達成される。
金属光沢層12のドットの面積率は、より好ましくは、40〜99%である。これにより、吸光が過剰になりすぎず、加飾フイルム構造体10Bの過度の明度及び/又は刺激値の低下がより一層抑制される。
上記の加飾フイルム構造体10Bは、例えば転写フイルムのベース材(図示せず)に各層11〜13を印刷や塗装等することによって容易に得ることができる。あるいは、加飾フイルム構造体10Bの表面層11となるクリアフイルムに各層12、13を印刷や塗装等することによっても容易に得ることができる。そして、得られた加飾フイルム構造体10Bを基材15の表面に転写や接着等することによって容易に基材15を金属研磨面調に加飾することができる。もしくは、基材15の表面に直接加飾フイルム構造体10Bの各層11〜13を印刷や塗装等してもよい。
このようにして、加飾フイルム構造体10Bが基材15の表面側に形成されてなる加飾成形部材20Bが得られる。この加飾成形部材20Bは、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈するものとなる。
基材15は樹脂成形部材であることが好ましい。光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材20Bの形状の自由度を高くすることができるからである。
なお、図2において、符号14は、無彩色層13を表面層11に押え付けるための裏打ち層及び/又は加飾フイルム構造体10Bを基材15に接着するための接着層である。さらに、無彩色層13が裏打ち層(接着層)14によって侵食されあるいは腐食するのを防ぐための保護層(図示せず)を無彩色層13と裏打ち層(接着層)14との間に設けてもよい。
次に、本発明のさらに他の実施形態について説明する。
図3(A)に示すように、加飾成形部材20Cは、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層21と、表面層21の表面側に形成された複数の微細ドットからなる金属光沢層22とを備えるフイルム構造体10Cが基材24の表面側に形成されたものである。
また、図3(B)に示すように、本実施形態に係る別の加飾成形部材20Cは、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層21と、表面層21の裏面側に形成された複数の微細ドットからなる金属光沢層22とを備えるフイルム構造体10Cが基材24の表面側に形成されたものである。
また、図3(C)に示すように、本実施形態に係るさらに別の加飾成形部材20Cは、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層21と、表面層21の裏面側に形成された複数の微細ドットからなる金属光沢層22と、金属光沢層22のドット間を埋めるように表面層21の裏面側に形成された透明又は半透明の充填層25とを備えるフイルム構造体10Cが基材24の表面側に形成されたものである。
これらの図3(A)〜図3(C)に示す各加飾フイルム構造体10Cにおいて、基材24は樹脂材料等から形成されており、何れもJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)が0〜80であり、入射光の一部を拡散反射させることが可能な光拡散材を含んでいる。
ここで、表面層21は拡散反射機能を有し、金属光沢層22は正反射機能及び拡散反射機能を有し、基材24表面は吸光機能及び拡散反射機能を有する。
これらの加飾成形部材20Cでは、金属光沢層22を複数の微細ドットからなる構成としたことにより、ドット間の間隙から基材24表面が観察される。そのため、この加飾成形部材20Cを、拡散反射機能を有する表面層21側から見たときには、正反射機能を有する金属光沢層22が吸光機能を有する基材24表面の中に細かく点在している。
このような構成によれば、表面層21側から加飾成形部材20Cに入射した光は、表面層21の表面側の表面粗さによって一部が拡散反射し、基材24の表面によって一部が吸光され、この基材24に含まれる前記光拡散材によって一部が拡散反射し、表面層21の表面側又は裏面側の金属光沢層22のドットによって一部が正反射(鏡面反射)し、またドットの周縁部によって一部が拡散反射する。このような光の拡散反射、吸光、正反射が相俟って、光沢が強すぎず、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感の鈍く光る質感の金属研磨面調意匠が実現し、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材20Cが得られる。
なお、図3(C)は、金属光沢層22のドットの裏面側にも充填層25が存在し、金属光沢層22のドット間の間隙に充填層25の一部が配置された構成であったが、これに限らず、金属光沢層22のドットの裏面側には充填層25が存在せず、金属光沢層22のドット間の間隙に充填層25の全部が配置された構成でもよい。
本実施形態においては、表面層21の表面側の表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)、金属光沢層22の刺激値(Y45°)、金属光沢層22のドットの面積、金属光沢層22のドットの面積率、基材24表面の明度(L*)、基材24に含まれる光拡散材のアスペクト比及び含有量を調整することによって、加飾成形部材20Cの金属研磨面調意匠における光の拡散反射の程度、光の正反射の程度、光の吸収の程度をそれぞれ独立して所望の値に調整することができる。
本実施形態では、表面層21の表面側の表面粗さは、Ra2μm以下、かつRmax4μm以下又はSm50μm以上である。Ra(算術平均粗さ)を2μm以下とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。Rmax(最大高さ)を4μm以下又はSm(凹凸の平均間隔)を50μm以上とすることによっても、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。
表面層21の表面側の表面粗さは、より好ましくは、Ra1μm以下、かつRmax2μm以下又はSm100μm以上である。これにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射がより一層確実に得られる。
本実施形態では、金属光沢層22のJIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における刺激値(Y45°)は10000以上である。金属光沢層22の刺激値(Y45°)を10000以上とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢が確実に得られる。
金属光沢層22の刺激値(Y45°)は、より好ましくは、20000以上である。これにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢がより一層確実に得られる。
本実施形態では、平面視でのドットの面積は10−3〜105μm2である。ドットの面積を10−3μm2以上とすることにより、ドットが小さくなりすぎず、ドットによる正反射が確実に行われる。ドットの面積を105μm2以下とすることにより、平面視での単位面積当たりのドットの面積率を一定としたときに、ドットの数が増えるから、ドットの周縁長が長くなり、ドットの周縁部による拡散反射が確実に行われる。また、ドットが大きくなりすぎず、フイルム構造体10Cの見栄えの低下が抑制される。
本実施形態では、平面視での単位面積当たりのドットの面積率は20〜99%である。ドットの面積率を20%以上とすることにより、平面視での単位面積当たりの基材24表面の面積率が80%以下となり、吸光が過剰になりすぎず、加飾成形部材20Cの過度の明度及び/又は刺激値の低下が抑制される。ドットの面積率を99%以下とすることにより、平面視での単位面積当たりの基材24表面の面積率が1%以上となり、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光が確実に達成される。
金属光沢層22のドットの面積率は、より好ましくは、40〜99%である。これにより、吸光が過剰になりすぎず、加飾成形部材20Cの過度の明度及び/又は刺激値の低下がより一層抑制される。
本実施形態では、基材24表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)は0〜80である。基材24の明度(L*)を80以下とすることにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面意匠を実現するために十分な吸光が達成される。
基材24表面の明度(L*)は、より好ましくは、0〜50である。これにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光がより一層確実に達成される。
なお、基材24に含まれる前記光拡散材は、図1の無彩色層2に含まれる光拡散材と同様、例えばマイカ(雲母)、セラミック、金属(アルミニウム等)、樹脂フイルム等からなる微粒子である。光拡散材の平均アスペクト比(最短辺(径)/最長辺(径))は0.5以下であり、光拡散材の含有量は、基材34の成分100重量部に対して50重量部以下である。光拡散材の平均アスペクト比および含有量が上記のような範囲にあることで、基材24の吸光機能を著しく損なうことなく、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を演出するような十分な拡散反射が達成される。
次に、本発明のさらに他の実施形態について説明する。
図4(A)に示すように、本実施形態に係る加飾成形部材20Dは、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層31と、表面層31の表面側に形成された、複数の微細孔32aを有する金属光沢層32とを備えるフイルム構造体10Dが基材34の表面側に形成されたものである。表面層31は、金属光沢層32の微細孔32aを埋めるように形成されている。
また、図4(B)に示すように、本実施形態に係る別の加飾成形部材20Dは、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層31と、表面層31の裏面側に形成された、複数の微細孔32aを有する金属光沢層32とを備えるフイルム構造体10Dが基材34の表面側に形成されたものである。表面層31は、金属光沢層32の微細孔32aを埋めるように形成されている。
また、図4(C)に示すように、本実施形態に係るさらに別の加飾成形部材20Dは、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層31と、表面層31の裏面側に形成された、複数の微細孔32aを有する金属光沢層32と、金属光沢層32の微細孔32aを埋めるように表面層31の裏面側に形成された透明又は半透明の充填層35とを備えるフイルム構造体10Dが基材34の表面側に形成されたものである。
これらの図4(A)〜図4(C)に示す各加飾フイルム構造体10Dにおいて、基材36は樹脂材料等から形成されており、何れもJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)が0〜80であり、入射光の一部を拡散反射させることが可能な光拡散材を含んでいる。
ここで、表面層31は拡散反射機能を有し、金属光沢層32は正反射機能及び拡散反射機能を有し、基材34表面は吸光機能及び拡散反射機能を有する。
また、金属光沢層32は、複数の微細孔32aを有するため、微細孔32a以外の部分は、例えばメッシュ状、網目状、あみだくじ状、クモの巣状等の形状を呈している。
これらの加飾成形部材20Dにおいては、金属光沢層32を複数の微細孔32aを有する構成としたことにより、微細孔32aを通して基材34表面が観察される。そのため、この加飾成形部材20Dを、拡散反射機能を有する表面層31側から見たときには、吸光機能を有する基材34表面が正反射機能を有する金属光沢層32の中に細かく点在している。
このような構成により、表面層31側から加飾成形部材20Dに入射した光は、表面層31の表面側の表面粗さによって一部が拡散反射し、基材34の表面によって一部が吸光され、この基材34に含まれる前記光拡散材によって一部が拡散反射し、表面層31の表面側又は裏面側の金属光沢層32(微細孔32a以外の部分)によって一部が正反射(鏡面反射)し、また微細孔32aの周縁部によって一部が拡散反射する。このような光の拡散反射、吸光、正反射が相俟って、光沢が強すぎず、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感の鈍く光る質感の金属研磨面調意匠が実現し、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材20Dが得られる。
なお、図4(C)は、金属光沢層32の裏面側にも充填層35が存在し、金属光沢層32の微細孔32aに充填層35の一部が配置された構成であったが、これに限らず、金属光沢層32の裏面側には充填層35が存在せず、金属光沢層32の微細孔32aに充填層35の全部が配置された構成でもよい。
本実施形態においては、表面層31の表面側の表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)、金属光沢層32の刺激値(Y45°)、金属光沢層32の微細孔32aの面積、金属光沢層32の微細孔32aの面積率、基材34表面の明度(L*)、基材34に含まれる光拡散材のアスペクト比及び含有量を調整することによって、加飾成形部材20Dの金属研磨面調意匠における光の拡散反射の程度、光の正反射の程度、光の吸収の程度をそれぞれ独立して所望の値に調整することができる。
本実施形態においては、表面層31の表面側の表面粗さは、Ra2μm以下、かつRmax4μm以下又はSm50μm以上である。Ra(算術平均粗さ)を2μm以下とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。Rmax(最大高さ)を4μm以下又はSm(凹凸の平均間隔)を50μm以上とすることによっても、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。
表面層31の表面側の表面粗さは、より好ましくは、Ra1μm以下、かつRmax2μm以下又はSm100μm以上である。これにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射がより一層確実に得られる。
本実施形態においては、金属光沢層32のJIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における刺激値(Y45°)は10000以上である。金属光沢層32の刺激値(Y45°)を10000以上とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢が確実に得られる。
金属光沢層32の刺激値(Y45°)は、より好ましくは、20000以上である。これにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢がより一層確実に得られる。
本実施形態においては、平面視での微細孔32aの面積は10−3〜105μm2である。微細孔32aの面積を10―3μm2以上とすることにより、微細孔32aが小さくなりすぎず、微細孔32aを通して露出する基材34表面による吸光が確実に達成される。微細孔32aの面積を105μm2以下とすることにより、微細孔32aが大きくなりすぎず、金属光沢層32(微細孔32a以外の部分)による正反射が確実に行われる。また、平面視での単位面積当たりの微細孔32aの面積率を一定としたときに、微細孔32aの数が増えるから、微細孔32aの周縁長が長くなり、微細孔32aの周縁部による拡散反射が確実に行われる。
本実施形態においては、平面視での単位面積当たりの微細孔32aの面積率は1〜80%である。微細孔32aの面積率を1%以上とすることにより、平面視での単位面積当たりの基材34表面の面積率が1%以上となり、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光が確実に達成される。微細孔32aの面積率を80%以下とすることにより、平面視での単位面積当たりの基材34表面の面積率が80%以下となり、吸光が過剰になりすぎず、加飾成形部材20Dの過度の明度及び/又は刺激値の低下が抑制される。
金属光沢層32の微細孔32aの面積率は、より好ましくは、1〜60%である。これにより、吸光が過剰になりすぎず、加飾成形部材20Dの過度の明度及び/又は刺激値の低下がより一層抑制される。
本実施形態においては、基材34表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L*)は0〜80である。基材34の明度(L*)を80以下とすることにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面意匠を実現するために十分な吸光が達成される。
基材34表面の明度(L*)は、より好ましくは、0〜50である。これにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光がより一層確実に達成される。
なお、基材34に含まれる前記光拡散材は、図1の無彩色層2に含まれる光拡散材と同様、例えばマイカ(雲母)、セラミック、金属(アルミニウム等)、樹脂フイルム等からなる微粒子である。光拡散材の平均アスペクト比(最短辺(径)/最長辺(径))は0.5以下であり、光拡散材の含有量は、基材34の成分100重量部に対して50重量部以下である。光拡散材の平均アスペクト比および含有量が上記のような範囲にあることで、基材34の吸光機能を著しく損なうことなく、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を演出するような十分な拡散反射が達成される。
本実施形態においては、フイルム構造体10C(10D)は、例えば転写フイルムのベース材(図示せず)に各層21、22、25(31、32、35)を印刷や塗装等することによって容易に得ることができる。あるいは、フイルム構造体10C(10D)の表面層21(31)となるクリアフイルムに各層22、25(32、35)を印刷や塗装等することによっても容易に得ることができる。そして、得られたフイルム構造体10C(10D)を、基材24(34)の表面に転写や接着等することによって容易に基材24(34)を金属研磨面調に加飾することができる。もしくは、基材24(34)の表面に直接フイルム構造体10C(10D)の各層21、22、25(31、32、35)を印刷や塗装等してもよい。
このようにして、フイルム構造体10C(10D)が基材24(34)の表面側に形成されてなる加飾成形部材20C(20D)が得られる。この加飾成形部材20C(20D)は、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈するものとなる。
基材24、34は樹脂成形部材であることが好ましい。光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材20C、20Dの形状の自由度を高くすることができるからである。
なお、図3中の符号23、図4中の符号33は、充填層25、35を表面層21、31に押え付けるための裏打ち層及び/又はフイルム構造体10C、10Dを基材24、34に接着するための接着層である。さらに、充填層25、35や金属光沢層22、32が裏打ち層(接着層)23、33によって侵食されあるいは腐食するのを防ぐための保護層(図示せず)を充填層25、35や金属光沢層22,32と裏打ち層(接着層)23、33との間に設けてもよい。この場合、裏打ち層(接着層)23、33や保護層は、基材24、34表面が金属光沢層22、32を介して良好な状態で観察できるように、透明又は半透明のものを用いる。
以上説明した図1〜図4の各実施形態の加飾フイルム構造体10A〜10Dおいては、表面層1、11、21、31、無彩色層2、13、金属光沢層3、12、22、32及び充填層25、35の厚みは、特に限定されない。状況に応じて、例えば1μm〜1mmの範囲内の厚みとすることができる。
表面層1、11、21、31は、透明又は半透明である限り、無色でも有色でもよい。表面層1、11、21、31の色を調整することによって、加飾フイルム構造体10A〜10Dの金属研磨面調意匠における金属の種類(例えばアルミニウム等)を所望のものに調整することができる。
無彩色層2、13の材料は、特に限定されない。樹脂や金属が好ましいが、状況に応じて、例えば紙や鉱物あるいはその他の繊維質やその他の無機物等でもよい。
金属光沢層3、12、22、32の材料も、特に限定されない。例えば樹脂や金属が好ましい。金属光沢層3、12、22、32の色を調整することによっても、加飾フイルム構造体10A〜10Dの金属研磨面調意匠における金属の種類(例えばアルミニウム等)を所望のものに調整することができる。
充填層25、35も、透明又は半透明である限り、無色でも有色でもよい。充填層25、35の色を調整することによっても、加飾成形部材20C、20Dの金属研磨面調意匠における金属の種類(例えばアルミニウム等)を所望のものに調整することができる。
また、本発明の作用効果を損なわない範囲で、フイルム構造体10A〜10Dの外表面、あるいは、加飾成形部材20A〜20Dの外表面に、透明又は半透明の、無色又は有色の、保護層を設けてもよい。この保護層は、例えば、表面層1、11、21、31の上に直接設けられる。この保護層は、フイルム構造体10A〜10Dあるいは加飾成形部材20A〜20Dの表面保護のために設けられる。また、この保護層は、表面層1、11、21、31の表面側の表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)を調整するために設けられるものであってもよい。したがって、本発明でいう、表面層1、11、21、31の表面側の表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)には、この保護層で調整された表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)が包含される。
以上説明した図1〜図4の各加飾成形部材20A〜20Dは、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈するものであり、従って、例えばドアハンドル等の自動車内装部品、家電部品、パーソナルコンピュータ部品、携帯電話部品、事務用部品、スポーツ用具部品、計測機器部品、雑貨部品等に好適である。
以下、実施例を通して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何等限定されるものではない。
[加飾フイルム構造体の作製]
(試験番号1〜8、10〜13、15(試験番号10、11は比較例))
図1(A)に示した構成の加飾フイルム構造体10を表1に示す仕様により作製した。表面層1として、帝人化成社製のポリカーボネートシート「PC1151」(板厚0.5mm)を用い、この片面にスクリーン印刷にて無彩色層2(厚み3μm)を形成した。無彩色層2の形成には、セイコーアドバンス社製のUVインキ「HUG」を用いた。次に、無彩色層2の上にスクリーン印刷にて金属光沢層3(厚み2μm:無彩色層2の上の厚みとして)を形成した。金属光沢層3の形成には、帝国インキ製造社製のインキ「MIR−51000ミラーシルバー」を用いた。次に、金属光沢層3の上にスクリーン印刷にて裏打ち層4(厚み10μm)を形成した。裏打ち層4の形成には、帝国インキ製造社製のインキ「MIB−611白色」を用いた。以上により、表面層1側から観察したときにアルミニウムの研磨面調の外観を呈する加飾フイルム構造体10が得られた。
なお、試験番号6の無彩色層2の形成には、光拡散材として東洋アルミニウム社製のアルミフレーク「アルペースト51−148B(平均粒径D50(最長径)=37μm/平均厚み(最短径)=0.62μm)」を用い、試験番号11の無彩色層2の形成には、光拡散材として東洋アルミニウム社製のアルミフレーク「WXM630(平均粒径D50(最長径・最短径)=8μm)」を用い、これら以外の試験番号の無彩色層2の形成には、光拡散材として東洋アルミニウム社製のアルミフレーク「アルペーストTCR−3040(平均粒径D50(最長径)=17μm/平均厚み(最短径)=0.8μm)」を用いた。
(試験番号2(比較例))
無彩色層2の形成に光拡散材を用いなかった他は、試験番号1〜8、10〜13、15と同様にして加飾フイルム構造体を作成した。
(試験番号9、14(比較例))
無彩色層2を形成しなかった他は、試験番号1〜8、10〜13、15と同様にして加飾フイルム構造体を作成した。
[加飾フイルム構造体の外観評価]
作製した加飾フイルム構造体10の外観を光学的に評価した。すなわち、表面層1側から加飾フイルム構造体10に入射角45度で可視光(波長:420〜670nm、広がり角:実質零度)を照射し、正反射角の刺激値Y、つまり正反射(鏡面反射)の刺激値(Y45°)と、正反射角−5度の刺激値Y、つまり拡散反射の刺激値(Y40°)とを村上色彩技術研究所製の変角分光光度計を用いて測定した。また、加飾フイルム構造体10の外観を目視で評価した。それらの結果を表1、2に示す。
ここで、正反射の刺激値(Y45°)は、試料面の法線方向に対する照明光軸角度を−45±2°とし、受光反射光軸角度を45±2°として、JIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における反射による物体色の三刺激値の定義に従ってY値を計算したものである。また、拡散反射の刺激値(Y40°)は、試料面の法線方向に対する照明光軸角度を−45±2°とし、受光反射光軸角度を40±2°として、JIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における反射による物体色の三刺激値の定義に従ってY値を計算したものである。
なお、本物のアルミニウムの研磨面及び低艶サテンめっきの正反射の刺激値(Y45°)及び拡散反射の刺激値(Y40°)を同様にして測定したところ、アルミニウムの研磨面の正反射の刺激値(Y45°)は35000〜55000の範囲(例えば38306)、拡散反射の刺激値(Y40°)は900〜1300の範囲(例えば925)であり、サテンめっきの正反射の刺激値(Y45°)は10000〜75000の範囲(例えば31977)、拡散反射の刺激値(Y40°)は900〜2600の範囲(例えば1784)であった。
表1、2から明らかなように、無彩色層2を形成しなかった試験番号9、14に比べて、無彩色層2を形成した試験番号1〜8、10〜13、15の加飾フイルム構造体10は、正反射の刺激値(Y45°)、拡散反射の刺激値(Y40°)、及び/又は、正反射刺激値(Y45°)に対する拡散反射刺激値(Y40°)の比(拡散反射刺激値(Y40°)/正反射刺激値(Y45°))が、本物のアルミニウムの研磨面のそれに比較的近い値であった。また、無彩色層2を形成した試験番号1〜8、10〜13、15の加飾フイルム構造体10うちでも、無彩色層2に光拡散材が含まれている試験番号1、3〜8、10〜13、15の加飾フイルム構造体10は、光拡散材が含まれていない試験番号2の加飾フイルム構造体10に比べると拡散反射の刺激値(Y40°)が高くなる傾向にあり、金属研磨面の表面粗さによって鈍く光る独特の質感を実現するのに十分な拡散反射が達成されていることが考察できる。なお、無彩色層2に含まれる光拡散材の平均アスペクト比1の試験番号11、及び無彩色層2に含まれる光拡散材の含有量が200重量部の試験番号10の加飾フイルム構造体10については、目視評価の結果が悪いが、これは無彩色層2での拡散反射の割合が高くなり過ぎた結果、当該無彩色層2による吸光機能とのバランスが損なわれたことが要因の一つと考えられる。