JP5909216B2 - 管路の更新方法及びその管路 - Google Patents

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Description

本発明は、流体が流れている既設管路を更新する方法と、その方法により更新した管路に関する。
既設の水道管路(既設管路の一例)を更新する工事では、水道水の利用者に対する利便性を考慮し、通水状態を保持しながら施工できる不断水工法の利用が望ましい。従来は、図13に示すように既設の水道管路の途中に分岐管路を接続し、その分岐管路で形成したバイパスに流路を一時的に切り替えて、その区間の管路を更新するようにしていた。管路の矢印は、水の流れを表している。
具体的には、まず、(a)のように、仕切弁87と仕切弁88とで挟まれたA区間の両側に割T字管81,82を装着し、その各々に仕切弁81a,82aを接続する。次に、割T字管81,82を装着した管路部分を穿孔し、(b)のように分岐管路85を接続してバイパスを形成する。仕切弁81a,82aを開いて仕切弁87,88を閉じ、A区間を新設管路80Aに更新したら、仕切弁87,88を開いて仕切弁81a,82aを閉じ、(c)のように分岐管路85を撤去する。
B区間においても、(d)のように、上述の要領で分岐管路86を接続してバイパスを形成する。続いて、割T字管83,84の各々に接続された仕切弁83a,84aを開き、仕切弁88,89を閉じて、B区間を新設管路80Bに更新する。その後、仕切弁88,89を開いて仕切弁83a,84aを閉じ、(e)のように分岐管路86を撤去する。かかる工程を繰り返すことで、既設の水道管路を順次に更新することができる。
ところが、この方法では、分岐管路の撤去後も仕切弁81a,83aを残置させるため、誤操作によって流路の開閉が切り替わったり、煩雑な維持管理が必要になったりする恐れがある。特許文献1,2では、仕切弁を介して分岐管路に接続されていた接続口を不断水工法により密栓し、その仕切弁を撤去する手法が提案されている。しかし、かかる手法では、特殊な構造を有する栓部材が、密栓する箇所と同じ数だけ必要になるため、コスト面で改善の余地があった。
特開2010−96241号公報 特開2010−117029号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、施工後の誤動作や煩雑な維持管理を回避でき、それでいてコストを抑えられる管路の更新方法と、その管路を提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る管路の更新方法は、流体が流れる状態を保持しながら、既設管路の更新すべき区間に沿って新管路を敷設し、連絡管路を介して前記新管路の上流側と下流側を前記既設管路に連通させるとともに、前記既設管路に前記連絡管路が合流する分岐部と、前記新管路に前記連絡管路が合流する分岐部とに、分岐部の接続口を選択的に閉鎖しうる切替弁を設けて、前記既設管路の更新すべき区間を迂回するバイパスを形成する第1の工程と、前記切替弁を操作して、更新すべき区間の前記既設管路から前記バイパスに流路を切り替え、その区間の前記既設管路を撤去する第2の工程と、前記切替弁が閉鎖している分岐部の接続口のうち、第2の工程で撤去した前記既設管路に接続されていた接続口を施蓋または密栓して、その切替弁の弁体を撤去する第3の工程とを備えるものである。
この方法では、第1の工程においてバイパスを形成し、第2の工程において既設管路を撤去する。既設管路を撤去する前には、分岐部に設けた切替弁を操作して、バイパスへ流路を切り替える。バイパスに含まれる新管路は、更新後の管路を構成できるが、それに限られない。第3の工程において施蓋または密栓する分岐部の接続口は、前以て切替弁で閉鎖されているため、汎用品の使用が可能である。この方法によれば、切替弁から弁体を撤去することで、施工後の誤動作や煩雑な維持管理を回避できる。また、接続口の施蓋や密栓に汎用品を使用できるうえ、弁体が回収されることから、コストを効果的に抑えられる。
この管路の更新方法では、第1の工程と第2の工程を繰り返して、更新区間を下流側へ向けて延長していくに際し、2回目以降の第1の工程では、直前の第1の工程で敷設した新管路を下流側に延長させてバイパスを形成し、2回目以降の第2の工程では、更新すべき区間の既設管路とともに、その既設管路の上流側の分岐部に設けられた切替弁を撤去することが好ましい。かかる方法によれば、施工範囲を効率良く延長できる。それでいて、既設管路に設けられていた切替弁を回収して、それ以降の第1の工程で再使用することが可能となるため、コストを有効に抑えられる。
この管路の更新方法では、前記新管路に前記連絡管路が合流する分岐部に設けられる前記切替弁が、前記新管路の一部を構成するT字管に弁体を内蔵した構造を有し、前記T字管に対する前記弁体の姿勢に応じて、閉鎖する接続口が切り替わるものでもよい。この場合、新管路の分岐部における切替弁の敷設や取り扱いが簡単になり、施工性を向上できる。
この管路の更新方法では、前記既設管路に前記連絡管路が合流する分岐部に設けられる前記切替弁が、前記既設管路に外嵌装着された割T字管に、弁体を内蔵する内弁箱を収容した構造を有し、前記内弁箱に対する前記弁体の姿勢に応じて、閉鎖する接続口が切り替わるものでもよい。この場合、既設管路に対して切替弁を適切に敷設できて有用である。
この管路の更新方法では、第3の工程で撤去した弁体を、それ以降の第1の工程で設けられる切替弁の弁体として再使用することが好ましい。このように弁体を再使用することにより、使用される弁体の個数を削減してコストを抑制できる。
この管路の更新方法では、前記既設管路に前記連絡管路が合流する分岐部に設けられる前記切替弁の弁体が、前記既設管路のフルカット切断により形成された一対の管切断面の間に配置されていて、その弁体を第3の工程で撤去した後に前記管切断面を防蝕することが好ましい。これにより、管切断面に錆が発生するなどの不都合を防止できる。
また、本発明に係る管路は、既設管路の更新区間に沿って敷設された新管路と、前記新管路の上流側と下流側を前記既設管路に連通させる連絡管路と、前記既設管路に前記連絡管路が合流する分岐部に設けられ、前記既設管路に外嵌装着された割T字管と、前記新管路に前記連絡管路が合流する分岐部および前記新管路の途中の分岐部に設けられ、前記新管路の一部を構成するT字管とを備える。前記割T字管は、蓋体により閉鎖された開口部を上部に有するとともに、分岐部の接続口を閉鎖しうる弁体を内蔵しておらず、前記割T字管が設けられた分岐部の接続口のうち、前記既設管路と前記連絡管路との連通に用いられていない接続口が施蓋または密栓されている。前記T字管は、蓋体により閉鎖された開口部を上部に有するとともに、分岐部の接続口を閉鎖しうる弁体を内蔵しておらず、前記T字管が設けられた分岐部の接続口のうち、前記新管路と前記連絡管路との連通に用いられていない接続口、または前記新管路の幹線から分岐する接続口が施蓋または密栓されている。
本発明により管路を更新する手順の一例を示す概略平面図 本発明により管路を更新する手順の一例を示す概略平面図 既設管路側の切替弁を示す水平断面図 図3のA−A矢視断面図 新管路側の切替弁を示す水平断面図 図5のB−B矢視断面図 接続口を施蓋した分岐部を示す水平断面図 防蝕処置を施す前の分岐部を示す縦断面図 防蝕体の斜視図 芯体の斜視図 防蝕処置を施した後の分岐部を示す縦断面図 図2の[H]の段階に続く手順の一例を示す概略平面図 既設の水道管路を更新する手順の一例を示す概略図
本発明の実施形態について、ダクタイル鋳鉄製の水道管を配管してなる既設の水道管路(既設管路の一例)を更新する工事を例に挙げ、図面を参照しながら説明する。まずは図1,2に基づいて管路の更新方法を概略的に説明し、その後に各々の構成について詳しく説明する。
[管路の更新方法]
図1,2において、管路沿いの矢印は水の流れを表している。水道管路である既設管路1は、水源や浄水場から市街地へと向かう幹線管路を構成し、[A]は工事前の状態である。まずは、通水状態を保持しながら、[B]のように、既設管路1の更新すべき区間S1に沿って新管路11を敷設し、連絡管路15,16を介して新管路11の上流側と下流側を既設管路1に連通させるとともに、分岐部21,22,26にそれぞれ切替弁31,32,36を設けて、既設管路1の更新すべき区間S1を迂回するバイパスを形成する(第1の工程に相当)。
分岐部21,22では、それぞれ既設管路1に連絡管路15,16が合流し、分岐部26では、新管路11に連絡管路16が合流する。切替弁31,32,36は、いずれも分岐部の接続口を選択的に閉鎖しうる三方切替弁である。黒塗りの扇形で表記している切替弁31の弁体31Aは、その扇形の弧に対向した接続口を閉鎖する。したがって、[B]では、既設管路1から連絡管路15への水流が遮断された状態にある。切替弁32,36や後出する他の切替弁も、これと同様に構成されている。
次に、[C]のように、切替弁31,32,36を操作して、更新すべき区間S1の既設管路1からバイパスに流路を切り替え、その区間S1の既設管路1を撤去する(第2の工程に相当)。続いて、[D]のように、切替弁が閉鎖している分岐部21,22,26の接続口のうち、撤去した既設管路1に接続されていた分岐部21の接続口21cを施蓋または密栓し、[E]のように、その分岐部21に設けられている切替弁31の弁体31Aを撤去する(第3の工程に相当)。本実施形態では、管の切り口にキャップ10を取り付けて接続口21cを施蓋している。
[D]では、切替弁31が前以て閉鎖しているために、分岐部21の接続口21cは止水状態にある。それ故、接続口21cを施蓋または密栓するための部材(本実施形態ではキャップ10)に特殊な構造は不要であり、汎用品を適用できる。分岐部21では、接続口21cの施蓋後に弁体31Aが撤去されることから、施工後の誤動作や煩雑な維持管理を適切に回避できる。また、キャップ10に汎用品を適用しうるとともに、弁体31Aが回収されることから、コストを効果的に抑制できる。
上記の如きバイパスの形成工程(第1の工程)と既設管路の撤去工程(第2の工程)を繰り返し、更新区間を下流側へ向けて延長していくことにより、施工範囲を効率良く延長していける。その際、2回目以降の第1の工程では、直前の第1の工程で敷設した新管路を下流側に延長させてバイパスを形成し、2回目以降の第2の工程では、更新すべき区間の既設管路とともに、その既設管路の上流側の分岐部に設けられた切替弁を撤去することが好ましい。
[E]に示すように、2回目の第1の工程では、既設管路1の更新すべき区間S2を迂回するバイパスを形成する。これは、直前の第1の工程で敷設した新管路11を下流側に延長させたものである。具体的には、更新すべき区間S2に沿って新管路12を敷設し、連絡管路16,17を介して新管路12の上流側と下流側を既設管路1に連通させるとともに、分岐部22,23,26,27にそれぞれ切替弁32,33,36,37を設ける。この連絡管路16と切替弁32,36は、直前の第1の工程で敷設されていたものである。
[F]に示すように、2回目の第2の工程では、更新すべき区間S2の既設管路1とともに、その既設管路1の上流側の分岐部22に設けられた切替弁32を撤去する。それらを撤去する前には、既設管路1側の切替弁33と、新管路11,12側の切替弁36,37とを操作して、更新すべき区間S2の既設管路1からバイパスに流路を切り替えておく。3回目以降の第1の工程と第2の工程も、基本的にこれと同じ要領で実施される。
[G]に示すように、3回目の第1の工程では、既設管路1の更新すべき区間S3を迂回するバイパスを形成する。新管路13は連絡管路17,18を介して既設管路1に連通し、分岐部23,24,27,28には、それぞれ切替弁33,32,37,38を設ける。また、[G]では、[F]の段階で切替弁が閉鎖していた分岐部23,26,27の接続口のうち、撤去した既設管路1に接続されていた分岐部26の接続口26aを施蓋し、その分岐部26に設けられた切替弁36の弁体36Aを撤去している(第3の工程に相当)。
第3の工程で撤去した弁体は、それ以降の第1の工程で設けられる切替弁の弁体として再使用できる。本実施形態では、[D]から[E]に至る段階において、撤去した切替弁31の弁体31Aを、分岐部23に設けられる切替弁33の弁体として再使用している。また、[F]から[G]に至る段階において、撤去した切替弁36の弁体36Aを、分岐部28に設けられる切替弁38の弁体として再使用している。このような弁体の再使用により、施工に必要な弁体の個数を削減でき、延いてはコストの抑制に資する。
また、本実施形態では、[E]から[G]に至る段階において、第2の工程で既設管路1とともに撤去した切替弁32を、その後の第1の工程で分岐部24に設けられる切替弁として再使用している。これは、後述する割T字管などとともに、弁体32Aを再使用するものである。分岐部23に設けられた切替弁33も、これと同様にして撤去後に再使用できる。このような使い回しを活用すれば、4つの弁体31A,32A,36A,37Aのみでも施工に事足りる。
第3の工程では、既設管路側の切替弁と新管路側の切替弁のうち、少なくとも一方において弁体を撤去すればよいが、本実施形態のように双方において弁体を撤去することが好ましく、それらの再使用によって部品点数を大幅に削減できる。第3の工程は、初回の第1の工程と第2の工程を済ませた後の任意のタイミングで行いうるが、回収した弁体を直後に再使用する場合には、第1の工程と第2の工程を繰り返す途中の適宜のタイミングで行われる。
[H]の段階では、4回目の第1の工程と第2の工程を済ませて、施工を完了している。この管路は、既設管路1の更新区間に沿って敷設された新管路11〜14と、その新管路の上流側と下流側を既設管路1に連通させる連絡管路15,19を備える。分岐部21,25,26〜29では、それらの各々に設けられていた切替弁から弁体が撤去されている。また、撤去した既設管路1に接続されていた接続口21c,25b,26a〜28aは、それぞれ施蓋されている。
この更新後の管路では、各切替弁から弁体が撤去されているため、誤動作の心配がなく、そのうえ煩雑な維持管理を不要にできる。また、弁体を操作するための軸部材が上方に向けて突出しないため、将来同じ場所を掘削した際に重機が引っ掛ける恐れを軽減できる。後年、この管路を再び更新する場合には、所要の分岐部に弁体を戻して切替弁を設けるとともに、接続口の施蓋を解除することにより、上記と同様の手順で新管路の敷設に供することができる。
後述するように、本実施形態では、既設管路1に連絡管路が合流する分岐部において、切替弁の弁体が、既設管路1のフルカット切断により形成された一対の管切断面の間に配置される。それ故、施工完了後に残存する分岐部21,25では、弁体を第3の工程で撤去した後に管切断面を防蝕している。例えば分岐部21では、[E]において弁体31Aを撤去した後、[F]において防蝕体61を設置し、それにより防蝕処置を施している。
[既設管路側の切替弁]
既設管路に連絡管路が合流する分岐部に設けられる切替弁について、詳しく説明する。ここでは、分岐部21に設けられた切替弁31を例に挙げる。他の分岐部22〜25に設けられる切替弁は、基本的にこれと同様に構成できる。
切替弁31は、図3,4のように、既設管路1に外嵌装着された割T字管4に内弁箱40を収容した構造を有する。割T字管4は、既設管路1の外周面を水密に包囲可能な分割構造を有し、内弁箱40を収容する外弁箱として機能する。内弁箱40は、円筒状に形成され、弁体31Aを内蔵している。図4では、内弁箱40を断面でなく外観で描いている。分岐部21には、分岐短管に形成された接続口21aと、既設管路1に沿った一対の接続口21b,21cとが形成され、内弁箱40に対する弁体31Aの姿勢に応じて、閉鎖する接続口が切り替わる。
上側部材4Aと下側部材4Bとを備えた上下二つ割り構造の割T字管4は、その分割面を略水平方向に向けている。図4のように、割T字管4の上部には、蓋体42により閉鎖された開口部が形成されている。既設管路1のフルカット切断や、内弁箱40に内蔵された弁体31Aの出し入れは、この開口部を通じて行われる。その際、割T字管4の開口部には、漏水を防ぐために作業用仕切弁や密閉ケース(図8参照)が接続される。弁体31Aの回転軸31Bは、その上端を蓋体42から突出させている。
弁体31Aは、平面視扇形をした底壁31Cと、内弁箱40の内面に接触可能なシール壁31Dとを備え、内弁箱40に内蔵された状態で、回転軸31Bを介して回動自在に構成されている。図3では弁体31Aが接続口21aを閉鎖しているが、これを回動操作することで内弁箱40に対するシール位置が切り替わり、接続口21bや接続口21cを選択的に閉鎖できる。内弁箱40の外面には、割T字管4の内面と接するパッキン41が取り付けられている。
第1の工程において切替弁31を設ける際には、まず、バイパスの始点となる箇所で割T字管4を既設管路1に装着する。このとき、連絡管路15となる分岐短管を割T字管4に接続しておく。次に、割T字管4の開口部に作業用仕切弁を介して穿孔装置を接続し、フルカット切断によって既設管路1を管軸方向に切り離す。切断時の漏水を防ぐために、分岐短管は予め施蓋しておく。そして、穿孔装置に代えて接続した着脱治具により内弁箱40を割T字管4内に収容し、開口部を蓋体42で閉鎖する。
第3の工程において弁体31Aを撤去する際には、蓋体42を取り外した開口部に作業用仕切弁を介して着脱治具を取り付け、開口部を通じて割T字管4から内弁箱40を取り出す。既述のように、撤去した弁体31Aは、その後に設けられる切替弁33の弁体として再使用される。図1[D]の段階では、分岐部23となる箇所に割T字管4のみを装着しており、この部位をフルカット切断した後、内弁箱40に内蔵された弁体31Aを割T字管4に挿入することで、図2[E]のように切替弁33が設けられる。
かかる構造により、図2[H]の管路では、既設管路1に連絡管路15,19が合流する分岐部21,25に、既設管路1に外嵌装着された割T字管が設けられている。そして、その割T字管は、蓋体により閉鎖された開口部を上部に有するとともに、分岐部21,25の接続口を閉鎖しうる弁体を内蔵していない。分岐部21,25の接続口のうち、既設管路1と連絡管路15,19との連通に用いられていない接続口21c,25bは施蓋されている。上述した切替弁32,33の使い回しを活用すれば、3つの割T字管のみでも施工に事足りる。
[新管路側の切替弁]
新管路に連絡管路が合流する分岐部に設けられる切替弁について、詳しく説明する。ここでは、分岐部26に設けられた切替弁36を例に挙げる。他の分岐部27〜29に設けられる切替弁は、基本的にこれと同様に構成できる。
切替弁36は、図5,6に示すように、新管路の一部を構成するT字管5に弁体36Aを内蔵した構造を有する。T字管5は、弁体36Aを収容する弁箱として機能する。図6では、弁体36Aを断面でなく外観で描いている。分岐部26には、分岐短管に形成された接続口26aと、新管路の幹線に沿った一対の接続口26b,26cとが形成され、T字管5に対する弁体36Aの姿勢に応じて、閉鎖する接続口が切り替わる。T字管5には別部材である分岐短管が接続されているが、これに代えて一体的にT字状をなす構造としてもよい。
切替弁36は、既設管路1に設けられる切替弁31とは異なり、新規に配管される新設配管用切替弁として構成されている。このため、フルカット切断を行う必要がなく、管内面に予め防蝕処置を施しておけるとともに、内弁箱を具備しないことでシンプル且つコンパクトな構成にできる。T字管5の上部には、蓋体52により閉鎖された開口部が形成されており、この開口部を通じて弁体36Aを出し入れできる。弁体36Aを撤去する際には、上述した作業用仕切弁や密閉ケースがT字管5の開口部に接続される。
弁体31Aと同様に、弁体36Aは、平面視扇形をした底壁36Cと、T字管5の内面に接触可能なシール壁36Dとを備え、回転軸36Bを介して回動自在に構成されている。図5の弁体36Aは、接続口26aを閉鎖しているが、これを回動操作することでT字管5に対するシール位置が切り替わり、接続口26bや接続口26cを選択的に閉鎖できる。弁体36Aの撤去は、弁体31Aの場合と同じ要領で行うことができる。図2[G]のように、撤去した弁体36Aを再使用する場面ではバイパスが通水されていないため、特段の対処は必要ない。
かかる構造により、図2[H]の管路では、新管路に連絡管路19が合流する分岐部29、および、新管路の途中の分岐部26〜28に、その新管路の一部を構成するT字管が設けられている。そして、そのT字管は、蓋体により閉鎖された開口部を上部に有するとともに、分岐部26〜29の接続口を閉鎖しうる弁体を内蔵していない。分岐部26〜29の接続口のうち、新管路と連絡管路19との連通に用いられていない接続口29cと、新管路の幹線から分岐する接続口26a〜28aは施蓋されている。
[接続口の施蓋]
図7は、図2[H]における分岐部21の水平断面図である。接続口21cの先端にある管の切り口には、メカニカル帽とも呼ばれるキャップ10が取り付けられている。接続口21cの先端側で管の継手部を解除した場合には、その継手構造を利用して蓋部材を接合してもよい。分岐部25,29においても、これと同様にして接続口を施蓋できる。分岐部26〜28の接続口26a〜28aは、それぞれ分岐短管の端面に接合したフランジ蓋20により施蓋されている。これらに代えて管内を閉塞する栓部材を使用し、接続口を密栓してもよい。
[管切断面の防蝕]
既述のように、分岐部21,25では、弁体を撤去した後、フルカット切断により形成された管切断面に防蝕処置を施す。本出願人らによる特願2012−053219号(2012年3月9日出願、本願出願時において未公開)に記載の手法によれば、通水状態を保持しながら一対の管切断面を簡易に防蝕することができる。以下、この手法について簡単に説明する。
まず、図8のように、割T字管4の開口部に作業用仕切弁71を介して密閉ケース72を接続する。作業用仕切弁71と密閉ケース72は、上述した弁体の撤去や再使用の際にも利用できる。密閉ケース72に内蔵されている二重筒体6は、図9に示した筒状の防蝕体61に、図10に示した筒状の芯体62が挿入される入れ子構造を有する。ここでの二重筒体6は、芯体62の下端部だけを防蝕体61に挿入した仮保持の状態にある。図8では、二重筒体6を断面ではなく外観によって描いている。
次に、図11のように、操作桿73の押し下げにより下降させた二重筒体6を、開口部を通じて割T字管4内に収容する。一対の管切断面30の間に二重筒体6が配置されると、最初に防蝕体61が位置決めされ、その後の操作桿73の更なる押し下げにより、芯体62が防蝕体61に挿入される。芯体62の外径は防蝕体61の内径よりも大きいため、芯体62の挿入によって防蝕体61は拡径する。拡径した防蝕体61は、図7,11のように一対の管切断面30に押し当たって密着し、防蝕処置が施される。
二重筒体6の上部には中栓63が設けられており、図11の段階で割T字管4の開口部は密封される。防蝕体61は、例えばゴムや合成樹脂により作製され、芯体62は、例えばダクタイル鋳鉄により作製される。防蝕体61と芯体62の側方には、分岐部の接続口に連通する複数の貫通孔が設けられている。二重筒体6の設置を完了したら、作業用仕切弁71と密閉ケース72を取り外し、割T字管4の開口部に蓋体42を装着して二重筒体6の姿勢を安定させる。
本実施形態では、防蝕体61と芯体62の側方に三方の貫通孔を設けているが、これに限られない。例えば、施蓋される接続口(図7では右側の接続口)を閉鎖するようにして、貫通孔を二方向にのみ設けることが考えられる。かかる構成によれば、防蝕体61からキャップ10に至る区間において、いわゆる「死に水」が発生することを防止できる。その区間に残った水は、キャップ10の排水口を介して排出することができる。
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、図2の[H]の段階で施工を完了し、バイパスに含まれていた新管路11〜14により更新後の管路を構成して、以後の利用に供する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、図12に示すようにして更なる新管路9を敷設し、その新管路9を以後の利用に供してもよい。この方法によれば、撤去された既設管路1の経路に更新後の管路を敷設することが可能になる。
図12においては、まず、[I]に示すように、分岐部21,25に設置していた防蝕体61を撤去し、それらの代わりに弁体31A,32Aを挿入して切替弁31,35を設ける。図2において防蝕体61の設置を先延ばしにしておけば、この防蝕体61の撤去作業は省略できる。そして、[J]に示すように、接続口21c,25bを施蓋していたキャップ10を撤去し、それらを互いに連通させるように新管路9を新設配管する。[I]と[J]の手順は、前後しても構わない。
次に、[K]に示すように、切替弁31,35を操作して新管路9に流路を切り替え、連絡管路15,19とともに新管路11〜14を撤去する。続いて、[L]に示すように、接続口21a,25aにフランジ蓋20を取り付けて施蓋した後、分岐部21,25から弁体31A,32Aを撤去し、それらに代えて防蝕体61を設置する。
(2)本発明において、第1の工程で分岐部に設けられる切替弁は、上述した構造を有するものに限られない。前述の実施形態では三方切替弁を使用する例を示したが、四方以上の接続口に対応する切替弁も使用可能であるし、上記とは異なる弁体や弁箱の形状を採用しても構わない。
(3)本発明は、既設の水道管路の更新に適用できるものであるが、これに限られず、水以外の各種の液体、気体などの流体に用いる流体管路の更新に幅広く適用できる。
1 既設管路
4 割T字管
5 T字管
6 二重筒体
11〜14 新管路
15〜19 連絡管路
21〜25 分岐部
26〜29 分岐部
21a〜21c 接続口
26a〜26c 接続口
30 管切断面
31〜33 切替弁
31A,32A 弁体
36〜38 切替弁
36A,37A 弁体
40 内弁箱
42 蓋体
52 蓋体

Claims (7)

  1. 流体が流れる状態を保持しながら、既設管路の更新すべき区間に沿って新管路を敷設し、連絡管路を介して前記新管路の上流側と下流側を前記既設管路に連通させるとともに、前記既設管路に前記連絡管路が合流する分岐部と、前記新管路に前記連絡管路が合流する分岐部とに、分岐部の接続口を選択的に閉鎖しうる切替弁を設けて、前記既設管路の更新すべき区間を迂回するバイパスを形成する第1の工程と、
    前記切替弁を操作して、更新すべき区間の前記既設管路から前記バイパスに流路を切り替え、その区間の前記既設管路を撤去する第2の工程と、
    前記切替弁が閉鎖している分岐部の接続口のうち、第2の工程で撤去した前記既設管路に接続されていた接続口を施蓋または密栓して、その切替弁の弁体を撤去する第3の工程とを備える管路の更新方法。
  2. 第1の工程と第2の工程を繰り返して、更新区間を下流側へ向けて延長していくに際し、
    2回目以降の第1の工程では、直前の第1の工程で敷設した新管路を下流側に延長させてバイパスを形成し、
    2回目以降の第2の工程では、更新すべき区間の既設管路とともに、その既設管路の上流側の分岐部に設けられた切替弁を撤去する請求項1に記載の管路の更新方法。
  3. 前記新管路に前記連絡管路が合流する分岐部に設けられる前記切替弁が、前記新管路の一部を構成するT字管に弁体を内蔵した構造を有し、前記T字管に対する前記弁体の姿勢に応じて、閉鎖する接続口が切り替わる請求項1又は2に記載の管路の更新方法。
  4. 前記既設管路に前記連絡管路が合流する分岐部に設けられる前記切替弁が、前記既設管路に外嵌装着された割T字管に、弁体を内蔵する内弁箱を収容した構造を有し、前記内弁箱に対する前記弁体の姿勢に応じて、閉鎖する接続口が切り替わる請求項1〜3いずれか1項に記載の管路の更新方法。
  5. 第3の工程で撤去した弁体を、それ以降の第1の工程で設けられる切替弁の弁体として再使用する請求項1〜4いずれか1項に記載の管路の更新方法。
  6. 前記既設管路に前記連絡管路が合流する分岐部に設けられる前記切替弁の弁体が、前記既設管路のフルカット切断により形成された一対の管切断面の間に配置されていて、その弁体を第3の工程で撤去した後に前記管切断面を防蝕する請求項1〜5いずれか1項に記載の管路の更新方法。
  7. 既設管路の更新区間に沿って敷設された新管路と、前記新管路の上流側と下流側を前記既設管路に連通させる連絡管路と、前記既設管路に前記連絡管路が合流する分岐部に設けられ、前記既設管路に外嵌装着された割T字管と、前記新管路に前記連絡管路が合流する分岐部および前記新管路の途中の分岐部に設けられ、前記新管路の一部を構成するT字管とを備え、
    前記割T字管は、蓋体により閉鎖された開口部を上部に有するとともに、分岐部の接続口を閉鎖しうる弁体を内蔵しておらず、前記割T字管が設けられた分岐部の接続口のうち、前記既設管路と前記連絡管路との連通に用いられていない接続口が施蓋または密栓され、
    前記T字管は、蓋体により閉鎖された開口部を上部に有するとともに、分岐部の接続口を閉鎖しうる弁体を内蔵しておらず、前記T字管が設けられた分岐部の接続口のうち、前記新管路と前記連絡管路との連通に用いられていない接続口、または前記新管路の幹線から分岐する接続口が施蓋または密栓されている管路。
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