JP5909059B2 - コラーゲン担持物、絆創膏、コラーゲンキットおよびコラーゲン担持物の製造方法 - Google Patents
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Description
本願明細書において、「コラーゲン」とは、タンパク質の一種で、3本のポリペプチド鎖が螺旋を巻いたものの総称である。従来からI〜XXIX型が知られているが、本発明で使用するコラーゲンとしてはいずれであってもよく、新たに見出されるコラーゲンであってもよい。生体内に含まれるコラーゲンの大部分は水に不溶性であり、本発明では、動物の皮や骨等の原料に含まれるコラーゲンをプロテアーゼなどの酵素を添加して可溶化したもの、アルカリを添加して可溶化したものを「可溶化コラーゲン」と称する。なお、生体内には、動物の皮や骨等の原料には、わずかに中性塩溶液や酸性溶液に溶ける可溶性コラーゲンも含まれている。本発明で使用するコラーゲンは、水溶液に溶解するものであれば、不溶性コラーゲンを可溶化したものであってもよく、本来含まれる可溶性コラーゲンであってもよい。なお、本願明細書では生体内に大量に存在する不溶性コラーゲンを原料として調製される「可溶化コラーゲン」を用いて説明するが、本願発明における「コラーゲン」には、「可溶性コラーゲン」と「可溶化コラーゲン」との双方が含まれる。また、「コラーゲン線維」とは、複数の「コラーゲン分子」どうしが会合したものを意味する。コラーゲン分子としては、前記可溶化コラーゲンや可溶性コラーゲンが相当する。可溶化コラーゲン溶液を等電点沈殿し、または塩析するとコラーゲン分子どうしが会合し、コラーゲン線維を沈殿物として分取することができる。コラーゲン線維は、沈殿の際に複数のコラーゲン線維が会合して大きな凝集体として沈殿する場合がある。従って、本発明において「会合」とは、コラーゲン分子どうしの結合とコラーゲン線維どうしの結合の双方を含むものとする。また、「コラーゲン沈殿物」とは、コラーゲン溶液から固体で析出したコラーゲンを意味し、「コラーゲン粉末」とは、「コラーゲン沈殿物の粉状固形物」を意味する。
アシル化コラーゲンとしては、サクシニル化コラーゲン、フタル化コラーゲン、マレイル化コラーゲンなどがある。例えば、酵素処理によって抽出したアテロコラーゲン溶液をpH9〜12に調整し、その後、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸などの酸無水物を添加してなるサクシニル化コラーゲン、フタル化コラーゲン、マレイル化コラーゲンなどのアシル化コラーゲンなどがある。
エステル化コラーゲンとしては、可溶化コラーゲンをエステル化したもののほか、不溶性コラーゲンをエステル化した後に酵素反応などで可溶化されたエステル化コラーゲンなどがある。
例えば、1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、dl−2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、dl−2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、dl−2−ヘキサノール、dl−3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、dl−2−オクタノール、3−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3−ノナノール、4−ノナノール、5−ノナノール、デカノール、1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルなどが挙げられる。
本発明で使用する粗コラーゲン沈殿物は、「等電点がpH3.5〜8.0であり、平均粒子径1〜1,000μmのコラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体を12〜50質量%含有する」ものである。
本発明で使用する粗コラーゲン沈殿物の平均粒子径は、1〜1,000μm、より好ましくは5〜900μm、特に好ましくは10〜750μm、更に好ましくは30〜500μmである。平均粒子径が1,000μmを超えると乾燥や粉末化が困難となる場合がある。なお、コラーゲン分子の長径は300nmであり、コラーゲン分子どうしの会合が生じない場合には、コラーゲンの粒子径は300nmとなる。しかしながら、後記するように、このような300nmのコラーゲン分子が平行に複数結合してなるSLS線維は、更にSLS線維が相互に会合して凝集体を形成し、沈殿物となる。このようなSLS線維の沈殿物では少なくとも3個以上のSLS線維が会合していると想定して1μmを下限とした。なお、本願における平均粒子径は、位相差顕微鏡で観察した値である。位相差顕微鏡像の長径をもって粗コラーゲン沈殿物の粒子径とし、十視野に含まれる全ての粗コラーゲン沈殿物の粒子径を平均し、平均粒子径とした。
物理的処理方法としては、例えば、コラーゲンやコラーゲン誘導体を溶解する溶液を撹拌しつつpH3.5〜8.0で等電点沈殿させる方法がある。撹拌によってコラーゲン分子どうしの会合が抑制され線維長の短いコラーゲン線維となり、更に複数のコラーゲン線維の会合による凝集体の生成を抑制し、粒子径の短いコラーゲン沈殿物を沈殿させることができる。また、生成した沈殿物を破砕して更に粒子径の短いコラーゲン沈殿物を沈殿させてもよい。撹拌の程度は、溶液のコラーゲンやコラーゲン誘導体の濃度、撹拌方法、撹拌容器の形状やサイズなどによって適宜選択することができる。ホモジナイザーを使用する場合には回転数1,000〜20,000rpmである。コラーゲン線維の会合による凝集体の生成を抑制し、または生成する沈殿物の破砕を効率的に行うため、撹拌と破砕機構を有する装置を使用してもよい。
また、化学的処理方法としては、コラーゲン分子同士の会合を阻止する会合阻止剤を添加する方法がある。このような会合阻止剤としては、グルコース、スクロース、キシロース、ガラクトース、フルクトース、グリセリンなどの糖類がある。また、コラーゲン分子の束状集合体を形成させるATPがある。例えばコラーゲン溶液に酸性条件下でアデノシン三リン酸(ATP)を加え、コラーゲン分子の塩基性部位同士をATPのリン酸基で架橋させる。ATPによって複数のコラーゲン分子が平行に架橋し、コラーゲン分子の塩基性部位同士がATPのリン酸基で架橋されたSLS(Segment-long-spacing)線維が生成される。すなわち、前記した疎水性相互作用によるコラーゲン分子どうしの会合に優先して、ATPによるコラーゲン分子の架橋が生じるため、300nmのコラーゲン分子が平行に連結された、平均粒子径300nmのSLS線維となる。なお、複数のSLS線維が会合して凝集体を形成し、沈殿する。SLS線維には、コラーゲンのほかにATPが架橋剤として含まれるが、他のコラーゲンやコラーゲン誘導体と同様にATPを含んだまま粉末化することができる。また、SLS線維の沈殿物を得た後にATPを除去し、その後に粉末化してもよい。
粗コラーゲン沈殿物における前記コラーゲン沈殿物および/またはコラーゲン誘導体沈殿物の濃度は、12〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%、特に好ましくは20〜35質量%である。12質量%を下回ると、粗コラーゲン沈殿物の含水率が高すぎるため脱水効率が悪く、乾燥すると微細かつ多孔質のコラーゲン粉末とならずにフィルム状になる場合がある。一方、50質量%以上の粗コラーゲン沈殿物を調製することは容易でない。なお、粗コラーゲン沈殿物に含まれるコラーゲン沈殿物および/またはコラーゲン誘導体沈殿物以外の主成分は、沈殿前のコラーゲン溶液やコラーゲン誘導体溶液を構成する水溶液である。
本発明では、等電点沈殿や塩析で得たコラーゲン沈殿物を粗コラーゲン沈殿物として使用することができる。等電点沈殿物の調製工程において塩析も行われるため、以下、等電点沈澱物を調製する場合で粗コラーゲン沈殿物の調製方法を説明する。また、本発明では、I〜XXIX型のいずれのコラーゲンも使用可能であるが、生体からI型コラーゲンを抽出する場合で以下に説明する。
例えば、原料となる不溶性コラーゲンとして、石灰漬け後の床皮を洗浄し、ハムスライサーで約10cm角に細切、ミンチ後さらに機械的にすり潰したものを、アセトン、エーテルなどの有機溶剤あるいは脂肪分解酵素使用して脱脂後、十分に洗浄したものを使用することができる。
上記(iii−1)で調製した不溶性コラーゲンに、コラーゲン終濃度1質量%となるよう蒸留水に懸濁後、塩酸を加えてpH3.0に調整し、コラーゲン重量に対し百分の一量の酸性プロテアーゼを加え25℃、72時間可溶化処理を行い、酵素反応を停止して酵素可溶化コラーゲン液を得る。この酵素可溶化コラーゲンを終濃度3質量%水酸化ナトリウム、1.9%(v/w)モノメチルアミン水溶液に懸濁し、所望の時間アルカリ処理を行うことで沈殿物を得ることができる。より具体的には、4時間のアルカリ処理で等電点が7.8へと低下し、1日のアルカリ処理により等電点が5.6にまで低下する。所望の等電点となった時に、塩酸を加えて反応を停止し、終濃度5質量%となるよう塩化ナトリウムを加えて塩析させ、遠心分離により沈澱を回収する。回収した塩析沈殿物を、コラーゲン濃度2質量%となる容量の蒸留水に分散させ、塩酸を加えてpH3.0に調整して均一に溶解し、コラーゲン溶液を得る。次に、このコラーゲン溶液を、布および濾紙で濾過した後、水酸化ナトリウムで所望の等電点のpHとなるよう調整すれば、等電点4.5〜8.0の粗コラーゲン沈殿物を得ることができる。なお、酵素可溶化コラーゲンに代えて、不溶性コラーゲンを使用し、終濃度3質量%水酸化ナトリウム、1.9%(v/w)モノメチルアミン水溶液に懸濁し、上記と同様に処理しても等電点pH4.5〜8.0の粗コラーゲン沈殿を得ることができる。
上記(iii−1)で調製した不溶性コラーゲンや(iii−1)記載のアルカリ可溶化コラーゲン、(iii−2)に記載の酵素可溶化コラーゲンをアシル化あるいはエステル化して、等電点pH4.5〜9.0のコラーゲン誘導体を得て、これをアシル化やエステル化などの誘導体処理を行い、次いで塩析等により粗コラーゲン沈殿物を得る。例えば、等電点9.0の酵素可溶化コラーゲンをアシル化した場合、コラーゲンのアミノ基が修飾されて等電点が酸性側へとシフトする。また、例えば、等電点4.5のアルカリ可溶化コラーゲンをエステル化した場合、コラーゲンのカルボキシル基が修飾されて等電点が塩基性側へとシフトする。所望の等電点となった時に、終濃度5質量%となるよう塩化ナトリウムを加えて塩析させ、遠心分離により沈澱を回収する。回収した塩析沈澱を、コラーゲン濃度2質量%となる容量の蒸留水に分散させ、塩酸を加えてpH3.0に調整して均一に溶解し、コラーゲン溶液を得る。次に、このコラーゲン溶液を布および濾紙で濾過した後、水酸化ナトリウムで所望の等電点のpHとなるよう調整することで、等電点4.5〜8.0の粗コラーゲン沈殿物を得ることができる。
なお、コラーゲン分子中のカルボキシル基を、カルボン酸クロライドに誘導し、前記アルコール類の水酸基と酸クロライドの脱塩酸反応によってもエステル化を行うこともできる。
上記したように、コラーゲンやコラーゲン誘導体の等電点は、可溶化方法やその他によって調整することができる。本発明では、等電点がpH3.5〜8.0のコラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体を対象とする。これらは等電点沈殿物として得ることができ、例えば、前記コラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体溶液をpH3.5〜8.0に調整して得たコラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体を使用することができる。なお、等電点とは、コラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体を含有する水溶液でコラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体が最小の溶解度を示す溶液のpHを意味する。一般に、コラーゲンの等電点は、pH4.3〜9.3であるが、pH4.3未満の溶液でも沈殿物が形成されうるため、前記コラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体溶液をpH3.5以上とした。本発明は、本来、沈殿しやすいコラーゲンやコラーゲン誘導体の溶解性を確保する点に特徴があり、等電点がpH4.0〜8.0、好ましくはpH4.0〜7.0、より好ましくはpH4.5〜6.0、特に好ましくは4.5〜5.0である。
本発明のコラーゲン粉末やコラーゲン誘導体粉末は、使用する粗コラーゲン沈殿物の等電点や平均粒子径に依存した等電点や平均粒子径を有する。このため、等電点がpH4.5の粗コラーゲン沈殿物を使用した場合には、等電点pH4.5のコラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末となり、等電点がpH6.0の粗コラーゲン沈殿物を使用した場合は、等電点がpH6.0のコラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末となる。更に、例えば、等電点がpH4.5〜6.0のコラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体の混合物を使用した場合には、等電点がpH4.5〜6.0のコラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末となる。
本発明のコラーゲン粉末やコラーゲン誘導体粉末が上記中性溶液で溶解性に優れる理由は明確ではないが、「等電点がpH3.5〜8.0であり、平均粒子径1〜1,000μmのコラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体を12〜50質量%含有する粗コラーゲン沈殿物」を使用することが一因と考えられる。乾燥前のコラーゲン沈殿物および/またはコラーゲン誘導体沈殿物の平均粒子径が1〜1,000μmであるため、得られるコラーゲン粉末やコラーゲン誘導体粉末も微細となる。また、粗コラーゲン沈殿物を親水性有機溶媒に分散させて乾燥させると、溶媒中にコラーゲンが微細に分散し、得られる沈殿物が多孔質となる。この多孔により表面積が拡大し、更に溶解が速やかに行われたためと考えられる。従来は、等電点pH4.0〜8.0のコラーゲンは、中性溶液での溶解性が十分でないため、一旦、その等電点より酸性側の溶液に溶解し、次いでアルカリを添加してpH5.5〜8.5に調整する必要があった。本発明では、例えば等電点がpH4.5のコラーゲン粉末の場合、pH5.5〜8.5の溶解液に速やかに溶解するためより酸性の強い酸に溶解する必要がなく、従って、その後のアルカリの添加も不要である。溶解操作が簡便であるばかりでなく酸とアルカリとによる塩類の形成を回避することができる。また、アルカリに溶解する必要がないため、コラーゲンのペプチド化を回避することができ、三重螺旋構造の含有率の高いコラーゲン溶液を製造することができる。
本発明のコラーゲン粉末やコラーゲン誘導体粉末は、医療用途や化粧用用途などに好適に使用することできる。例えば、化粧用用途としては、化粧水、乳液、美容液、一般クリーム、クレンジングなどの洗顔料、パック、ひげそり用クリーム、日焼け止めクリーム、日焼け止めローション、日焼けローション、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、口紅、リップクリーム、シャンプー、リンスなどを例示することができる。
本発明のコラーゲン担持物は、上記コラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末を基材に担持させてなる。
基材としては、紙や布、これらの複合材を好ましく使用することができる。紙基材としては、天然紙のほか合成樹脂からなる合成紙であってもよい。また、布としては木綿、絹、羊毛などやこれらの混合物の織物のほか不織布などであってもよい。更に、紙に布を貼り合わせた複合材であってもよい。
その形状は、円形、方形その他の多角形であってもよく、不定形であってもよい。例えば、基材が顔面の形状に成形されたものであれば、パック剤として使用することができる。
本発明のコラーゲン担持物は、粘着テープの一部に添付することで、絆創膏として使用することができる。
絆創膏として使用する場合には、前記コラーゲン担持物に、塩化ベンザルコニウムなどの殺菌消毒剤などを配合することができる。
絆創膏として使用する場合、添付されたコラーゲン担持物に溶解液を含浸させてもよく、溶解液を使用しなくてもよい。例えば、溶解液を使用せず、乾いた状態でコラーゲン担持物を傷口に添付すると、絆創膏の基材に担持されたコラーゲンがリンパ液に溶解してゲル化するため、絆創膏からのリンパ液の遺漏を防止することができる。三重螺旋構造を呈する未変性コラーゲンは、皮膚細胞の接着性に優れ、かつ動物間で相同性が高いため免疫反応を起こしにくく、好適である。
(i)キット
本発明の可溶性コラーゲンキットは、上記コラーゲン担持物、または上記コラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末と、pH5.5〜8.5の溶解液とからなる。
前記したように、本発明のコラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末は、pH5.5〜8.5の溶解液に速やかに溶解するため、必要時に溶解液を添加して溶解し、コラーゲン溶液を調製することができる。従来は、コラーゲン溶液は、熱安定性が低いため冷蔵保存を必要とされていたが、本発明によれば、室温保存が可能となる。なお、上記コラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末を使用する場合には、容器に入れたコラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末に溶解液を投入して溶解させ、これを皮膚などに投与することができ、容器に代えて手のひらにコラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末を投入し、これを溶解液で溶解し、コラーゲン溶液として使用してもよい。
本発明のコラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末やコラーゲン担持物は、一回の使用量ごとに個別包装されていてもよく、同様に、溶解液も個別包装されていてもよい。このような溶解液の個別包装容器にコラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末またはコラーゲン担持物を添加してコラーゲン溶液を調製してもよい。コラーゲンは吸湿性があるため、ガスバリア性の個別容器などに収納することが好ましい。
本発明のコラーゲンキットを構成する溶解液としては、pH5.5〜8.5、より好ましくはpH5.5〜8.5、特に好ましくはpH5.5〜7.5の溶液である。pHの調整は、無機または有機酸によって行うことができ、緩衝液であってもよい。なお、溶解液のpHは、使用するコラーゲン粉末やコラーゲン誘導体粉末の等電点などに応じて適宜選択することができる。
本発明のコラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末は、等電点がpH3.5〜8.0であり、平均粒子径1〜1,000μmのコラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体を12〜50質量%含有する粗コラーゲン沈殿物を乾燥させて調製することができる。乾燥方法に限定はないが、コラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体の平均粒子径や形状を維持したまま乾燥することが好ましい。平均粒子径が8〜1,000μmであり、溶解性に優れるコラーゲン粉末やコラーゲン誘導体粉末が得られるからである。より好ましくは、粗コラーゲン沈殿物を親水性有機溶媒に分散させ、固形物を分取した後に乾燥する方法である。粗コラーゲン沈殿物の脱水が簡便で風乾により粉末化しうる点で優れる。具体的には、コラーゲン含有溶液を、コラーゲンの会合を制御しつつpH3.5〜8.0で等電点沈澱させ、または塩析して平均粒子径1〜1,000μmの等電点沈殿物を得て、前記等電点沈殿物に含まれるコラーゲン沈殿物の濃度を調整して12〜50質量%含有する粗コラーゲン沈殿物とし、前記粗コラーゲン沈殿物を親水性有機溶媒に分散させ、固形物を分取し、乾燥して製造する。なお、コラーゲン誘導体粉末を製造するには、等電点pH4.5〜9.0のコラーゲン沈殿物にエステル化やアシル化などの修飾処理を行い、pH3.5〜8.0で等電点沈澱し、または塩析などにより濃度12〜50質量%の粗コラーゲン誘導体を得て、これを親水性有機溶媒に分散させ、固形物を分取し、乾燥することで製造することができる。なお、コラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体の平均粒子径や形状を維持したまま乾燥することができれば、粗コラーゲン沈殿物を親水性有機溶媒に分散させた後に固形物を分取しこれを凍結乾燥などによって乾燥してもよい。凍結乾燥その他の乾燥方法は、従来公知の方法を採用することができる。よって、以下、粗コラーゲン沈殿物を親水性有機溶媒に分散させ、固形物を分取した後に乾燥する方法について説明する。
コラーゲン溶液を等電点沈殿させ、または塩析させると、一般には、コラーゲンの会合によって平均粒子径が約2,000μmのコラーゲン沈殿物となって沈殿するが、コラーゲン分子の会合を抑制し、または物理的に粉砕することで平均粒子径が1〜1,000μmのコラーゲン沈殿物および/またはコラーゲン誘導体沈殿物からなる粗コラーゲン沈殿物を調製することができる。
前記粗コラーゲン沈殿物を前記親水性有機溶媒に分散させることで粗コラーゲン組成物を簡便に脱水し、かつ精製することができる。前記した粗コラーゲン沈殿物を分散させる親水性有機溶媒としては、水と混和しうる炭素含有溶媒であればよく、特に制限されず、例えばアルコール、ケトン、エーテル、エステル、極性非プロトン性溶媒などが挙げられる。
粗コラーゲン沈殿物に対する前記親水性有機溶媒の使用量は、使用する親水性有機溶媒によって適宜選択することができるが、例えば、エタノールを使用する場合は、前記粗コラーゲン沈殿物1質量部に対して、エタノールを3〜2000質量部、好ましくは5〜1000質量部、より好ましくは10〜100質量部、特に好ましくは10〜30質量部添加することが好ましい。
(iii)固形物の分取
親水性有機溶媒に分散させた粗コラーゲン沈殿物は、溶媒中で沈殿する。本発明では、この沈殿物を分取するため、親水性有機溶媒分散液を濾過し、または遠心分離などの分離手段によってコラーゲン沈殿物を分取する。このような親水性有機溶媒による分散および分取は、1回で十分であるが、2〜3回など複数回行ってもよい。
前記固形物を乾燥し、コラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末を得ることができる。親水性有機溶媒に分散させた後に得た固形物は、室温で風乾することができる点に特徴がある。乾燥機を用いるなど他の方法で乾燥してもよいが、その際、温度は15℃未満とすることが好ましい。
更に、コラーゲン沈殿物を親水性有機溶媒に分散させても、コラーゲン濃度が低い場合には親水性有機溶媒による脱水が困難で、沈殿物がペレット状に固化し、粉末状の乾燥物を得ることができなかったが、粗コラーゲン沈殿物に含まれるコラーゲン沈殿物やコラーゲン誘導体沈殿物の濃度が12〜50質量%であれば、親水性有機溶媒による脱水を効率的に行うことができ、このため、親水性有機溶媒から分取した固形分の含水率を極めて低く調整できる。しかも、これらを室温で乾燥することで微細なコラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末を調製することができたのである。加えて、親水性有機溶媒に分散させる前のコラーゲン沈殿物は、平均粒子径が1〜1,000μmであるため、これを風乾すると平均粒子径が8〜1,000μmのコラーゲン粉末となる。本発明では、上記コラーゲン粉末やコラーゲン誘導体粉末を更に微細に加工するなどの処理を行ってもよい。
本発明のコラーゲン担持物は、前記粗コラーゲン沈殿物の親水性有機溶媒分散液と基材とを接触させる湿式法と、前記コラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末を基材の接触させる乾式法とによって製造することができる。
本発明のコラーゲン担持物は、等電点がpH3.5〜8.0であり、平均粒子径1〜1,000μmのコラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体を12〜50質量%含有する粗コラーゲン沈殿物を親水性有機溶媒に分散させ、得られた親水性有機溶媒分散液を基材に担持し、および乾燥することで製造することができる。より具体的には、コラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体を含有する溶液を、コラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体の会合を制御しつつpH3.5〜6.0で等電点沈澱させて平均粒子径1〜1,000μmの等電点沈殿物を得て、前記等電点沈殿物に含まれるコラーゲン沈殿物および/またはコラーゲン誘導体沈殿物の濃度を調整して12〜50質量%含有する粗コラーゲン沈殿物とし、前記粗コラーゲン沈殿物を親水性有機溶媒に分散させ、得られた親水性有機溶媒分散液を基材に担持し、および乾燥してもよい。また、コラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体を含有する溶液を、pH3.5〜6.0で等電点沈澱させ、前記沈殿を破砕して平均粒子径1〜1,000μmの等電点沈殿物を得て、前記等電点沈殿物に含まれるコラーゲン沈殿物および/またはコラーゲン誘導体沈殿物の濃度を調整して12〜50質量%含有する粗コラーゲン沈殿物とし、前記粗コラーゲン沈殿物を親水性有機溶媒に分散させ、得られた親水性有機溶媒分散液を基材に担持し、および乾燥してもよい。
一方、予めコラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末を調製し、バインダーを介して基材に塗工してもよい。
このようなバインダーとしては、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、澱粉およびその誘導体、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースやヒドロキシアルキルセルロースなど)などの水溶性高分子多糖類やポリビニルアルコール(PVA)や変性PVA、不飽和ジカルボン酸を共重合したもの、アクリル酸およびその誘導体、ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)などの水溶性ポリマーなどを例示することができる。バインダーの配合量は使用するバインダーの種類によって適宜選択することができる。
次いで、基材に担持したコラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体を乾燥する。バインダーの種類や配合量によって異なるが、室温で乾燥することができる。ただし、送風その他の方法で乾燥してもよい。その際、温度は15℃未満とすることが好ましい。
上記方法によれば、コラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末に他の配合物を含有させる場合に好適である。
(1)豚皮の真皮層を肉挽き等で細砕し、脱脂後十分に洗浄した不溶性コラーゲンを原料とした。終濃度3質量%水酸化ナトリウム、1.9%(v/w)モノメチルアミンとなるよう混合した可溶化水溶液に、コラーゲン終濃度4.5質量%となるよう調製した不溶性コラーゲンを懸濁し、18℃、3週間可溶化処理を行った。上記のようにして得たアルカリ可溶化コラーゲン液に、終濃度5質量%となるよう塩化ナトリウムを加えて塩析させ、遠心分離により沈澱を回収した。回収した塩析沈澱を、コラーゲン濃度3質量%となる容量の蒸留水に分散させ、塩酸を加えてpH3.0に調整して均一に溶解した。次に布および濾紙で濾過した後、水酸化ナトリウムでpH4.5となるよう調整し、マスコロイダー(石臼式磨砕機:増幸産業社製)にて流速500ml/min、回転数1,500rpm、クリアランス50μmで撹拌しながらコラーゲンを等電点沈澱させた。得られた沈殿物に含まれるコラーゲン沈殿物の平均粒子径は、141μmであった。次いで、17,500rpm、20分の遠心分離により沈澱を回収し、再びpH4.5に調整した蒸留水で洗浄して脱塩し、上記遠心分離を10回行い、粗コラーゲン沈殿物として回収した。この粗コラーゲン沈殿物のコラーゲン濃度は30質量%であった。得られたコラーゲン沈殿物の位相差顕微鏡像を図1に示す。
次いで、得られた粗コラーゲン沈殿物50gを温度20℃のエタノール950gに投入し、ホモジナイザーを用いて30分間分散させ、分散液を濾過してコラーゲン粉末を分取し、室温で風乾することによりコラーゲン粉末を得た。
(4)得られたコラーゲン粉末5mgを10mM酢酸1mlに再溶解し、5mM酢酸で終濃度0.1mg/mlに調製したコラーゲン溶液の円二色性(CD)を20℃で測定した。結果を図4に示す。対照として実施例1で得たアルカリ可溶化コラーゲン溶液(未変性コラーゲン)および前記アルカリ可溶化コラーゲン溶液を温度100℃で3分間熱変性させたアルカリ可溶化コラーゲン溶液(変性コラーゲン)の結果も示す。再溶解したコラーゲン溶液(本発明のコラーゲン粉末)は、未変性コラーゲンのカーブと略一致し、20℃において三重らせん構造を維持していることが明らかとなった。
内径10mm、長さ40mm、容量2mlの円筒形チューブに、サンプル5mgを表1の溶解液B 1mlと共に混合して密栓し、1分間に20回の180℃の転倒混和を行った。なお、溶解液Bおよび操作は、温度20℃にて行った。混和後、2分、4分、6分、8分、10分、15分、20分、30分にその一部をサンプリングし、5,000rpmで遠心した上澄み液をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、ゲルをCBBで染色した。脱色後、コラーゲンのバンドの濃度を画像解析ソフト(NIH image)を用いて定量し上澄み液のコラーゲン濃度を算出した。ついで、経過時間とコラーゲン濃度との関係から、溶解初速度を算出した。なお、溶解初速度は、混和0時から10分以内の直線性のある時間で算出した。
表4に溶解性、表5に溶解初速度の結果を示す。なお、表4において、◎は45分未満に溶解した場合、○は45分以上90分未満内に溶解した場合、△は90分以上180分未満内で溶解した場合、×は180分以内には溶解しない場合を示す。
また、図5に溶解初速度の測定における、上記上澄みのコラーゲン濃度の経時変化を示す。
(1) 粗コラーゲン沈殿物を分散させる親水性有機溶媒をアセトンに変更した以外は実施例1と同様に操作してコラーゲン粉末を得た。
(2) 得られたコラーゲン粉末5mgを使用し、実施例1と同様に操作し、溶解性を評価した。表1に、実施例2の概要を示し、表4に溶解性、表5に溶解初速度の結果を示す。溶解液の添加により、コラーゲン粉末は速やかに溶解し、透明のコラーゲン溶液となった。
(1) 粗コラーゲン沈殿物を分散させる親水性有機溶媒をジエチルエーテルに変更した以外は実施例1と同様に操作してコラーゲン粉末を得た。
(2) 得られたコラーゲン粉末5mgを使用し、実施例1と同様に操作し、溶解性を評価した。表1に、実施例3の概要を示し、表4に溶解性、表5に溶解初速度の結果を示す。溶解液の添加により、コラーゲン粉末は速やかに溶解し、透明のコラーゲン溶液となった。
(1) 実施例1で得られた粗コラーゲン沈殿物1gを温度20℃のエタノール999gに投入し、ホモジナイザーを用いて30分間分散させ、コラーゲンを均一に分散させた分散液20mlを直径50mmの紙基材を濾紙として使用し、前記紙基材でコラーゲン沈殿物を濾取し、この紙基材を室温で乾燥させてコラーゲン担持物を作製した。
(2) 溶解液量を2mlに変更した以外は実施例1と同様にして、得られたコラーゲン粉末5mgを使用し、溶解性を評価した。表1に、実施例4の概要を示し、表4に溶解性、表5に溶解初速度の結果を示す。溶解液の添加により、コラーゲン粉末は速やかに溶解し、透明のコラーゲン溶液となった。
(1) 実施例1で得られたアルカリ可溶化コラーゲン液に、水酸化ナトリウムを添加してpH4.5となるよう調製し、静置することによりコラーゲンを等電点沈澱させた。その後、マスコロイダーにて流速500ml/min、回転数1,500rpm、クリアランス50μmの条件で等電点沈澱を破砕した。得られた沈殿物に含まれるコラーゲン沈殿物の平均粒子径は724μmであった。遠心分離により沈澱を回収後、再びpH4.5に調製した蒸留水で洗浄して脱塩し、上記遠心分離を10回行い、粗コラーゲン沈殿物として回収した。この粗コラーゲン沈殿物のコラーゲン濃度は27質量%であった。
(2) 得られたコラーゲン粉末5mgを使用し、実施例1と同様に操作し、溶解性を評価した。表1に、実施例5の概要を示し、表4に溶解性、表5に溶解初速度の結果を示す。また、図5に溶解初速度の測定における、上記上澄みのコラーゲン濃度の経時変化を示す。
(1) 実施例1で得られたアルカリ可溶化コラーゲン液に、水酸化ナトリウムを添加してpH4.5となるよう調製し、静置することによりコラーゲンを等電点沈澱させた。その後、マスコロイダーにて流速500ml/min、回転数1,500rpm、クリアランス50μmの条件で、3回等電点沈澱を破砕した。得られた沈殿物に含まれるコラーゲン沈殿物の平均粒子径は335μmであった。遠心分離により沈澱を回収後、再びpH4.5に調製した蒸留水で洗浄して脱塩し、上記遠心分離を10回行い、粗コラーゲン沈殿物として回収した。この粗コラーゲン沈殿物のコラーゲン濃度は28質量%であった。
(2) 得られたコラーゲン粉末5mgを使用し、実施例1と同様に操作し、溶解性を評価した。表1に、実施例6の概要を示し、表4に溶解性、表5に溶解初速度の結果を示す。
実施例1で得られたアルカリ可溶化コラーゲンの等電点沈殿物(等電点pH4.5)をメタノール中に分散し、終濃度0.1Mとなるように塩酸を加えた。室温で3時間撹拌しながらエステル化反応を行い、水酸化ナトリウム溶液でpHを中性にして反応を停止させると共にコラーゲンを沈澱させた。沈殿物を遠心して分取した後、10mMの酢酸に再溶解し、メチルエステル化コラーゲンを得た。メチルエステル化コラーゲンの等電点はpH7.9であった。
次いで、得られた粗コラーゲン沈殿物0.5gを温度20℃のエタノール9.5gに投入し、ホモジナイザーを用いて30分間分散させ、分散液を濾過して固形コラーゲンを分取し、室温で風乾してコラーゲン粉末を得た。表1に、実施例7の概要を示し、表4に溶解性、表5に溶解初速度の結果を示す。
牛皮の真皮層を肉挽き等で細砕し、脱脂後十分に洗浄した不溶性コラーゲンを原料とした。不溶性コラーゲンをコラーゲン終濃度2質量%となるよう蒸留水に懸濁後、塩酸を加えてpH3.0に調整した。コラーゲン重量に対し百分の一量の酸性プロテアーゼを加え25℃、72時間可溶化処理を行った。この酵素可溶化コラーゲン液(等電点pH9.0)に水酸化ナトリウム溶液を加えてpH8〜9に調整し、コラーゲンを等電点沈澱させた。この等電点沈澱分散液に終濃度0.5mMとなるように無水コハク酸を加え、室温で撹拌しながら1時間アシル化反応を行った。反応後、塩酸を加えて溶液を酸性にし、終濃度5質量%となるように塩化ナトリウムを加えて反応を停止させると共にサクシニル化コラーゲンを沈澱させた。沈殿物を遠心して分取した後、サクシニル化コラーゲンを10mMの酢酸に再溶解し、サクシニル化コラーゲンを得た。サクシニル化コラーゲンの等電点は5.4であった。
(1) 実施例1で得られた粗コラーゲン沈殿物を終濃度1質量%となるように塩酸に再溶解し、その後水酸化ナトリウムで中和してpH7.5のアルカリ可溶化コラーゲン溶液を得た。この溶液を凍結乾燥し、コラーゲンスポンジを作製した。図8に、コラーゲンスポンジの電子顕微鏡像を示す。
(2) 得られたコラーゲンスポンジ5mgを使用し、実施例1と同様に操作し、溶解性を評価した。表1に、比較例1の概要を示し、表4に溶解性、表5に溶解初速度の結果を示す。また、図5に溶解初速度の測定における、上記上澄みのコラーゲン濃度の経時変化を示す。
(1) 実施例1で得られた粗コラーゲン沈殿物を終濃度0.25質量%となるように塩酸に再溶解し、その後水酸化ナトリウムで中和してpH7.5のアルカリ可溶化コラーゲン溶液を得た。この溶液をアクリル板にキャストし、風乾することによりコラーゲンフィルムを作製した。図9に、コラーゲンフィルムの電子顕微鏡像を示す。
(2) 得られたコラーゲンフィルム5mgを使用し、実施例1と同様に操作し、溶解性を評価した。表1に、比較例2の概要を示し、表4に溶解性、表5に溶解初速度の結果を示す。溶解初速度の結果を示す。
(1) 実施例1で得られた粗コラーゲン沈殿物を終濃度1質量%となるように塩酸に再溶解し、その後水酸化ナトリウムで中和してpH7.5のアルカリ可溶化コラーゲン溶液を得た。この溶液を27ゲージの注射針を用いてエタノール中に吐出し、その後風乾することによりコラーゲン繊維を作製した。図10に、コラーゲン繊維の電子顕微鏡像を示す。
(2) 得られたコラーゲン繊維5mgを使用し、実施例1と同様に操作し、溶解性を評価した。表1に、比較例3の概要を示し、表4に溶解性、表5に溶解初速度の結果を示す。溶解初速度の結果を示す。
(1) 豚皮の真皮層を肉挽き等で細砕し、脱脂後十分に洗浄した不溶性コラーゲン線維を原料とした。不溶性コラーゲン線維をコラーゲン終濃度2質量%となるよう蒸留水に懸濁後、塩酸を加えてpH3.0に調整した。コラーゲン重量に対し百分の一量の酸性プロテアーゼを加え25℃、72時間可溶化処理を行った。酵素反応停止後、上記のようにして得た酵素可溶化コラーゲン液に、終濃度5質量%となるよう塩化ナトリウムを加えて塩析させ、遠心分離により沈澱を回収した。
回収した塩析沈澱を、コラーゲン濃度2質量%となる容量の蒸留水に分散させ、塩酸を加えてpH3.0に調整して均一に溶解した。次に布および濾紙で濾過した後、水酸化ナトリウムでpH9.0となるよう調整し、マスコロイダーにて流速500ml/min、回転数1,500rpm、クリアランス50μmで撹拌しながらコラーゲンを等電点沈澱させた。得られた沈殿物に含まれるコラーゲン沈殿物の平均粒子径は、131μmであった。次いで、17,500rpm、20分の遠心分離により沈澱を回収後、再びpH9.0に調整した蒸留水で洗浄して脱塩し、上記遠心分離を10回行い、粗コラーゲン沈殿物として回収した。この粗コラーゲン沈殿物のコラーゲン濃度は23質量%であった。
次いで、得られた粗コラーゲン沈殿物50gを温度20℃のエタノール950gに投入し、ホモジナイザーを用いて30分間分散させ、分散液を濾過してコラーゲン粉末を分取し、室温で風乾することによりコラーゲン粉末を得た。得られたコラーゲン粉末の電子顕微鏡像を図11に示す。
(2) 得られたコラーゲン粉末5mgを使用し、実施例1と同様に操作し、溶解性を評価した。表1に、比較例4の概要を示し、表4に溶解性、表5に溶解初速度の結果を示す。溶解初速度の結果を示す。
(1) 実施例1で得られたアルカリ可溶化コラーゲン液に、水酸化ナトリウムを添加してpH4.5となるよう調整し、静置することによりコラーゲンを等電点沈澱させた。得られた沈殿物に含まれるコラーゲン沈殿物の平均粒子径は、1,858μmであった。遠心分離により沈澱を回収後、再びpH4.5に調整した蒸留水で洗浄して脱塩し、上記遠心分離を10回行い、粗コラーゲン沈殿物として回収した。この粗コラーゲン沈殿物のコラーゲン濃度は33質量%であった。得られたコラーゲン沈殿物の位相差顕微鏡像を図12に示す。
次いで、得られた粗コラーゲン沈殿物50gを温度20℃のエタノール950gに投入し、ホモジナイザーを用いて30分間分散させ、分散液を濾過した。しかし、濾過したコラーゲン分散物はフィルム状となり、粉末にはならなかった。
(2) 得られたコラーゲン固形物5mgを使用し、実施例1と同様に操作し、溶解性を評価した。表1に、比較例5の概要を示し、表4に溶解性、表5に溶解初速度の結果を示す。溶解初速度の結果を示す。また、図5に溶解初速度の測定における、上記上澄みのコラーゲン濃度の経時変化を示す。
(1)実施例1で得たアルカリ可溶化コラーゲンの等電点沈殿物を終濃度3%となるように蒸留水に分散し、均一な分散液となるように30分間ホモジナイズした。この分散液を、噴霧乾燥機を使用して、入口温度120℃、出口温度60℃になるように熱風温度を調整してスプレードライし、コラーゲン粉末を得た。表1に、比較例6の概要を示し、表4に溶解性の結果を示す。
噴霧乾燥して得たコラーゲン粉末は20時間後にも約20%程度しか溶解しなかった。原料のコラーゲン沈殿物は実施例1と同じものであるため、実施例1との溶解性の差は、コラーゲン分子の相違ではなく処理工程に依存した形状の相違によるものである。溶け残りを観察すると、噴霧乾燥品はコラーゲン粉末が微細であるためダマ状になり、ダマの表面のみ半透明で溶解していた。噴霧乾燥ではコラーゲン粒子の平均粒子径が4.60μmと小さく、かつその表面が比較的滑らかであるため溶解液がダマの内部まで浸透しにくく、これが溶解性に劣る理由と考えられる。これに対し、実施例1〜8はいずれもダマを形成することは無かった。
(2)上記(1)で調製したコラーゲン粉末について、実施例1と同様にして、BET1点法にて比表面積を、レーザー回折・散乱法にて粒度分布を測定した。比表面積および平均粒子径を表6に、粒度分布を図13に、コラーゲン粉末の電子顕微鏡像を図14に示
Claims (6)
- 等電点がpH3.5〜8.0であり、平均粒子径1〜1,000μmのコラーゲン沈殿物および/またはコラーゲン誘導体沈殿物が乾燥された粉末であり、当該粉末5mgのpH6.5溶液の溶解初速度が0.2mg/分以上であるコラーゲン粉末および/またはコラーゲン誘導体粉末が、基材に担持されたコラーゲン担持物。
- 前記基材が、紙、布またはこれらの複合物である、請求項1記載のコラーゲン担持物。
- 粘着テープの一部に請求項1または2記載のコラーゲン担持物が添付された絆創膏。
- 請求項1または2記載のコラーゲン担持物と、pH5.5〜8.5の溶解液とからなるコラーゲンキット。
- 等電点がpH3.5〜8.0であり、平均粒子径1〜1,000μmのコラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体を12〜50質量%含有する粗コラーゲン沈殿物を親水性有機溶媒に分散させ、
得られた親水性有機溶媒分散液を基材に担持し、および乾燥することを特徴とする、コラーゲン担持物の製造方法。 - 前記粗コラーゲン沈殿物が、コラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体を含有する溶液を、コラーゲンおよび/またはコラーゲン誘導体の会合を制御しつつpH3.5〜8.0で等電点沈澱させて平均粒子径1〜1,000μmの等電点沈殿物を得て、
前記等電点沈殿物に含まれるコラーゲン沈殿物および/またはコラーゲン誘導体沈殿物の濃度を調整して12〜50質量%としたものである、請求項5記載のコラーゲン担持物の製造方法。
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