JP2007246461A - 細胞生育促進機能を有する経皮吸収可能な低分子絹ペプチドの製造と利用 - Google Patents

細胞生育促進機能を有する経皮吸収可能な低分子絹ペプチドの製造と利用 Download PDF

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Abstract

【課題】安心安全な天然物であるフィブロイン由来の低分子化物から細胞生育促進機能を有する物を分離回収する。該回収物には経皮吸収可能な分子量3,000以下の低分子ペプチドが含有する。これを健康な皮膚の維持、回復を目的としたスキンケア素材として提供することが課題である。
【解決手段】絹糸を溶解することなく、絹糸フィブロインの分子量を低下し、細胞生育促進機能成分と細胞生育阻害成分に分ける。その方法として、結晶性絹粉末を水に浸漬した上清液から低分子化物を抽出する。得られた抽出物には細胞生育促進機能があり、経皮吸収が可能な分子量400〜3,000の低分子ペプチドを50〜99%含有している。
【選択図】 図1

Description

フィブロイン由来で、ヒト皮膚細胞生育促進機能を有し、かつ経皮吸収可能な低分子ペプチドをスキンケア用素材として医薬品、医薬部外品および化粧品等の分野に利用する。
絹フィブロイン由来で、皮膚再生機能を有する経皮吸収可能な低分子ペプチドの提供を目的としている。先ず、技術背景について述べる。
絹はフィブロインとセリシンの2つのタンパク質からなっている。従来、フィブロイン繊維である絹糸は手術糸として古くから使われてきたことから、フィブロインは分子量に関係なく生体適合性素材と考えられ、スキンケア素材として使われてきた。一方、本発明者は絹タンパクの内、特にフィブロインの有するヒト皮膚細胞生育機能に注目し、絹糸を粉末、フィルム、ゲル等に変え、これらをスキンケア素材として利用するための開発と機能解明の研究を進めてきた(特許文献1−5)。
特許第2997758号 特許第3362778号 特開2004-339189 特開2004-123683 特開平6-292595 特許第3659352号 医学大辞典 (株)医学書院発行 P.689、2003年3月出版 ゲノムバンク(Gen Bank accession no. AF226688) 加藤弘 絹繊維の加工技術とその応用 P.66 玉田靖 まてりあ 第42巻 第1号 2003年 繊維便覧(原料編)、繊維学会編、P.53
最近、フィブロインとセリシンからなっている繭糸や生糸、または繭糸や生糸からセリシンを除いた絹糸等の加工工程で、分子量約37万のフィブロインの分子量低下にともなって、フィブロインは細胞生育促進機能も低下する。さらに、フィブロインの分子量が2万程度以下に低下すれば細胞生育促進性がほとんどないか、あるいは細胞生育を阻害することが分かってきた(特許文献4)。
その後、フィブロインの細胞生育促進機能はフィブロインの非結晶部位に、フィブロインの結晶部位には細胞生育を阻害する部分のあることが分かった。また、ペプチドが細胞生育性を促進するにはペプチドのアミノ酸残基数が4残基以上になるとよい(特許文献3)。1残基当たりの分子量を約100とすれば、4残基の分子量は約400となる。
ところで、美容の一つとして、損傷のない表皮の一部を剥ぎ取り、損傷を造り、外用剤で皮膚再生を促し、若々しい皮膚を得ようとすることが行われている。しかし、皮膚再生を積極的に行う場合、表皮の一部を剥ぎ取るより、表皮表面から皮膚再生成分を直接経皮吸収させるほうが負担が少なく、容易である。しかし、従来、絹タンパクを経皮吸収させるような利用は行われていなかった。
経皮吸収とは(非特許文献1)損傷の無い皮膚から直接物質が体内に吸収されることを言う。フィブロインは蛋白質として酸性、塩基性の性質、また疎水性や親水性アミノ酸からなっているので、脂溶性や水溶性も備え、乳化作用も有る(特許文献3,6)ので、フィブロイン低分子化物の経皮吸収としては分子の大きさが重要である。
皮膚は外部からよけいなものが入ってこないようにバリアを作っているため、容易には経皮吸収されない。特に、天然成分は分子量が大きいため経皮吸収されないが、分子量が小さい化学物質は簡単に経皮吸収される。
通常、市販されている外用剤には分子量1,000程度以下の機能性化学物質が添加され、これを経皮吸収させている。また、分子量がおよそ3,000以下のものは皮膚浸透すると言われている。経皮吸収の容易さとしては、汗腺や毛穴を介する方が角質層経路より有利であり、分子量5,000程度でも通過可能と考えられる。
スキンケア素材として、安心して使用でき、健康で生き生きとした皮膚となる素材が求められている。そこで、広く使われ、よく知られた絹タンパクから、ヒトの皮膚細胞を生育促進する機能を有し、経皮吸収可能な分子量400〜5,000、好ましくは400〜3,000の低分子ペプチドが得られれば、スキンケア素材として、極めて有用となる。しかし、これまで使われてこなかった。その理由を以下に述べる。
まず、フィブロインの細胞生育促進機能は分子量37万の時が最も高い。各種の加工工程での分子量低下は細胞生育促進機能の低下となり、分子量1万以下では細胞生育を阻害するようになる(特許文献4)ので、皮膚再生素材として使えなかった。
スキンケア素材として使われているフィブロインの分子量、特に低分子量に関して述べる。
絹糸を非結晶性フィルムに変え、創傷被覆材とする方法がある(特許文献1)。この場合、絹糸を中性塩で溶解し、溶解液を水で透析(脱塩)した後に非結晶性の水溶性フィブロインフィルムとしている。絹糸を中性塩で溶解する工程でフィブロインの分子量は低下するが、分子量が1万以下に低分子化したものは非常に少ない。それでも透析過程で、通常は分子量1万程度以下が通過できる半透膜を使うため、分子量約1万以下のものは中性塩とともに除去される。
したがって、一般に、絹糸を溶解、透析して得られるフィブロインには経皮吸収されるようなフィブロイン由来の低分子は含まれない。
ところが、特許文献5では、絹糸を溶解、透析して得たフィブロイン水溶液に酵素を作用させた分子量200〜4,000のフィブロインの低分子化下物について言及している。しかし、該特許の目的は、フィブロインは高分子量であるため、食用として消化しやすいように、酵素処理で低分子化しているのみである。従って、得られた物のアミノ酸組成は元のフィブロインと同じである。
本発明では、前記したような、フィブロインの低分子化による細胞生育阻害を避けたい。従って、本発明の低分子化物は元のフィブロインとは異なるアミノ酸組成であり、細胞生育促進性を有している。また、酵素の含有を避けたい。
一般に、タンパク質も含め、有機化合物の固体としての材料物性は分子量依存性を示し、分子量が低い場合は弾力性に乏しく、もろくて割れやすく、取り扱い難い。一方、分子量が大きくなるにつれて弾力性が高くなり、柔軟で、割れ難くなるため、扱い易くなる。フィブロインの場合も、分子量1万程度以下のフィルムは割れやすく、分子量5,000程度以下ではフィルム化自体が困難である。
ところで、絹糸の繊維構造はフィブロインのβ型微結晶が1軸配向した構造である。非特許文献2によれば、フィブロインはアミノ酸組成から結晶部位と非結晶部位の繰り返しからなっている。絹糸の繊維構造が形成されるとき、グリシン(G)やアラニン(A)など疎水性側鎖のアミノ酸が多いフィブロインの結晶部位は、結晶化しやすく、これらが部分的に集合して微細な結晶(β型結晶)を繊維軸方向に形成し、これらの微結晶が絹糸の骨格となっていると考えられている。
吐糸直後の絹糸フィブロインは高分子量で、絹糸は柔軟であるが、絹糸フィブロインが低分子化すると脆くなる。
細胞生育促進機能を有し、経皮吸収可能で、安心安全な天然物であるフィブロイン由来の低分子ペプチドを、健康な皮膚の維持、回復を目的としたスキンケア素材として提供することが課題である。ところで、フィブロイン由来の低分子ペプチドを得る方法はある(特許文献3、5)。特許文献3では、酵素を使うため工程が複雑で、高価であること、また低分子ペプチドに酵素が残ることなどのため使われなかった。特許文献5では食用のため、分子量を単に小さくすることが目的であった。
そこで、フィブロイン以外のものを含まず。細胞生育促進性に優れた、また皮膚再生を促し、フィブロイン由来の経皮吸収可能な低分子ペプチドをさらに容易に得る方法を提供する。つまり、課題は細胞生育促進性に優れた絹フィブロイン由来の低分子ペプチドを効率よく得て、これを経皮吸収させ、損傷の無い部分の皮膚も再生を促すことにある。そのため、酵素を使わないでフィブロインを低分子化する。
本発明で言う細胞生育促進性に優れた機能とは、本発明の実施例2で示すように、絹粉末や絹粉末から得られたフィブロイン低分子化物の濃度を変えた細胞生育率測定で、生育率が100%を超え、しかも濃度の濃い方の生育率が濃度の薄い方の生育率より高い場合を言う。濃度の高い方が濃度の薄い方より生育率が低いことは細胞生育を阻害していると考える。
絹糸を溶解しない方法で得る結晶性絹粉末の製造において、粉末の微細化ほど絹糸の低分子化処理を強くしなければならない。その結果、得られる結晶性絹粉末は細胞生育性がないか阻害するようになる。従って、結晶性絹粉末の細胞生育促進機能を高めるため、細胞生育促進機能の高いフィブロインで絹粉末をコーティングし、結晶性絹粉末の細胞生育促進機能を高める(特許文献4)必要があった。その後、フィブロイン分子の非結晶部位に細胞生育促進機能、結晶部位に細胞生育阻害のあることを突き止め、現在出願中である(特許文献3)。
これらの知見から、フィブロインの低分子化物から細胞生育を促進する物と阻害する物とに分けることを考え、鋭意研究した結果、絹糸を溶解することなく、絹糸フィブロインの分子量を低下し、分子量の低下した絹糸の粉末から、フィブロインの低分子化物を水で抽出する。得られた抽出物の分子量は1万程度以下であり、抽出物には経皮吸収が可能な分子量400〜3,000の低分子ペプチドを50〜99%含有している。また、抽出物は細胞生育促進機能を有し、該低分子ペプチドは該抽出物以上に優れた細胞生育促進機能を有していることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本願の第1の発明は、結晶性絹粉末を水に浸漬して、上層と該粉末を含有する沈殿物の下層とを形成せしめ、細胞生育促進機能成分を含有する該上層を分離し、採取することを特徴とする抽出物に存する。
本願の第2の発明は、請求項1に記載の抽出物を得る方法に存する。
本願の第3の発明は、請求項1に記載の抽出物に含有する分子量400〜3、000の細胞生育促進機能を有する低分子ペプチド抽出物に存する。
本願の第4の発明は、請求項1に記載の抽出物を含有する化粧料に存する。
本願の第5の発明は、請求項3に記載の低分子ペプチドを含有する化粧料に存する。
本願の第6の発明は、請求項3に記載の低分子ペプチドを含有する創傷被覆材に存する。
本発明の低分子ペプチドはフィブロイン由来のもので、分子量400〜3,000であるため経皮吸収可能で、しかも細胞生育促進機能を有する。そのために、該低分子ペプチドはそれ自体がスキンケア素材として、また該低分子ペプチドを他の素材に添加し、スキンケア素材として、医薬品、医薬部外品、化粧品などに極めて有用である。
フィブロイン由来で、細胞生育促進機能を有し、中性塩などの絹糸溶解剤や酵素など、フィブロイン由来以外のものを含まず、分子量400〜3,000の低分子ペプチドを得るには、結晶性絹粉末から水溶性成分を抽出することで得られる。
結晶性絹粉末の製造方法は、絹糸をアルカリ処理してフィブロインを低分子化し、これを水洗し乾燥した後に粉砕して、絹粉末を得る(特許文献2)。水洗によって、絹糸(フィブロイン)以外の物が除かれる。このようにして得られる結晶性絹粉末は、絹糸が有する繊維構造をしているが、フィブロインは低分子化されているため、細胞生育性が無いか、阻害すると考えられていた。
低分子ペプチドの作出について述べる。
1.結晶性絹粉末から低分子ペプチドを得る。
結晶性絹粉末とは、繭糸、生糸、絹糸を原料とし、粉末化工程でセリシンが除かれた絹糸を溶解することなく加工して得た粉末をいい、該粉末は絹糸の繊維構造を残している。 結晶性絹粉末の製造方法としては、(1)絹糸をアルカリ処理する、(2)絹糸に光(放射線、紫外線など)を照射する、(3)絹糸を裁断する、(4)絹糸を爆砕する、などの加工後に、粉砕して粉末化することが知られている。本発明の場合、粉末を作る方法としては(1)や(2)の方法が好ましい。
結晶性絹粉末の原料には、家蚕および野蚕(エリ蚕、クリキュラ蚕、天蚕、タサール蚕、ムガ蚕、ヨナクニ蚕、サク蚕)の繭糸、生糸、絹糸が用いられる。野蚕の中ではではエリ蚕、クリキュラ蚕の繭糸は細いので粉末原料として好ましいが、家蚕の原料は白く、タンニンなどの不純物が少ないので野蚕の原料より粉末化が容易なため、さらに好ましい。
絹糸をアルカリ処理や光照射でフィブロインの分子量を低下した場合は、フィブロインのペプチド結合が加水分解される。フィブロインの低分子化した断片の内で、非結晶部位の断片は、低分子化していることと親水性側鎖のアミノ酸が多いことから、水溶性成分として抽出される。一方、細胞生育に係らない、あるいは阻害すると考えられるフィブロインの結晶部位は非結晶部位と比べてグリシン、アラニン等の疎水性側鎖のアミノ酸が多い。これら疎水性アミノ酸を主とした微結晶が網の目状に一軸配向して繊維構造を形成し、絹糸の骨格となっている。このような絹糸の構造(非特許文献3、4)は粉末となっても残っている(特許文献2)。
フィブロインはH鎖とL鎖からなる。非特許文献2によればH鎖とL鎖の全アミノ酸数は5567となる、またH鎖はN末端部位、結晶部位と非結晶部位の繰り返し部位、C末端部位からなっている。これらのアミノ酸組成からL鎖およびH鎖のN末端部位、非結晶部位、C末端部位を非結晶部(特許文献3)とすれば、非結晶部のアミノ酸数は778となり、非結晶部のアミノ酸数の割合はH鎖とL鎖の合計の13.9%となる。一方、フィブロインの非結晶部におけるグリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)の数は前記ゲノムバンクから110,75,115となるので、それらの非結晶部に占める割合はG:14.1%、A:9.6%、S:14.8%と計算される。
結晶性絹粉末から低分子化物を得るには、粉末粒子が小さいほど粉末表面積の合計は大きくなり、粉末から水溶性成分が抽出しやすい。(平均)粒子径が10ミクロン程度以下では、結晶性絹粉末から低分子化物を得やすいが、粒子径が0.5ミクロン程度以下では粉末製造過程で低分子化物の多くが除かれてしまうと考えられ、粒子経は0.5〜10ミクロン程度が好ましい。
また、低分子化物を抽出物として得るには結晶性絹粉末を水に浸漬し、攪拌した後にろ過するとか、遠心分離のような方法で、粉末と上清液(抽出液)を分離する。遠心分離する場合の回転数は少ない方が回収量は多くなるが、少なすぎると粉末が混入する。
一方、回転数が1万rpm以上では上清液の含有物の分子量にほとんど差が無くなってくる。従って、回転数は2,000〜10,000rpm程度、好ましくは3,000〜8,000rpm程度で、3〜20分間遠心分離すれば、得られた上清液からの抽出物には細胞生育促進性に優れたフィブロイン由来で、分子量1万程度以下の低分子化物からなっている。さらに、該低分子化物には経皮吸収可能な分子量400〜3,000の低分子ペプチドが50〜99%含有されている。
2.低分子ペプチドの利用
結晶性絹粉末から抽出した抽出物(低分子化物)および低分子ペプチドは、経皮吸収可能なスキンケア素材として溶液状態で皮膚に塗布して使う。抽出物には低分子ペプチドが50〜99%含有しているため、抽出物から低分子ペプチドを分離しなくてもスキンケア素材として有用であり、抽出液(濃度0.01%〜1.0%)を毎日、1ヶ月程度以上続けて皮膚に塗布すると、徐々に皮膚の改善が進み、肌を生き生きとさせる。
その他の使用方法としては、他のスキンケア素材(乳液やクリームなど)に添加して使う。他のスキンケア素材としては高分子フィブロインが好ましい。
3.低分子ペプチドを含有した高分子フィブロインの作成
フィブロイン由来の細胞生育促進性に優れた抽出物(低分子化物)および低分子ペプチドは、溶液の状態ではそのまま使える。低分子化しているため、固体として使うには脆く、粉末化し易いが、フィルム化は難しい。フィルムとして使う場合は抽出物(低分子化物)または低分子ペプチドを高分子フィブロインに添加し、フィルム化すると使いやすくなる。
高分子フィブロインフィルムの作成はすでに知られているように、絹糸を中性塩で溶解する方法を用いてもよい(特許文献1)。このような方法で得たフィブロインの分子量は5万〜20万程度の高分子フィブロインとなり、その非結晶性フィルムは弾力性に富んだ材料で、取り扱いやすい。
低分子ペプチドを含有した高分子フィブロインフィルムを使うときには水、化粧水、乳液などのスキンケア用の液体に溶かし、溶液状態にして皮膚に塗布する。該フィルムの溶解液は化粧水、乳液などより水が好ましい。
外観上は傷のない皮膚であっても、該低分子ペプチドやその添加物の塗布を1ヶ月程度以上続けることで、塗布しない部分より手触りが滑らかで、張りがあり、弾力的な生き生きとした肌になる。
本発明はフィブロイン又はフィブロイン由来の物のみの使用を目的としているが、スキンケアとして通常に使用される成分(絹セリシンはもちろん、油成分や香料等、また皮膚再生促進剤など)を適宜配合することができることは言うまでもない。
〈結晶性絹粉末を水に浸漬して得た抽出液(上清液)の濃度と粉末粒子径〉
絹糸のアルカリ処理はいづれの場合も、絹糸20g、炭酸ソーダ4.5g、ハイドロサルファイトナトリウム2.0g、水400gを同時に密閉容器に入れ、120℃で30分、60分、90分、120分、150分処理した。アルカリ処理後にこれらを水洗、乾燥して、粉砕した。粉砕するとき、3種類の粉砕機(1.回転式衝撃粉砕機(不二電気工業社(製)サンプルミルKI-1)、2.攪拌雷漬装置(石川式)、3.気流式粉砕機(日清製粉社(製)カレントジェットCJ-10))で粉砕した。その結果、粒子径の異なる5種類の粉末を得た。
各粉末の1gを100gの水に入れ、よく攪拌して粉末を分散させて、遠心分離(8、000rpm、10分)し、沈殿物を回収し、乾燥後に重量減を測定した。また、遠心分離して得た上清液の濃度を吸光度で算出した。275nmにおける吸光度と濃度は、一般に、吸光度≒1/10(%)として知られているので、これを用いた。結果を表1に示す。
Figure 2007246461
〈結晶性絹粉末から水で抽出した抽出物と抽出後の粉末の細胞生育性、分子量、アミノ酸組成〉
前記の実施例で得た絹粉末(粉末番号2)1gを水100gに浸漬し、攪拌した後、これを遠心分離機(8,000rpm、10分)で遠心分離し、粉末(沈殿物)と上清液(抽出液)に分けた。粉末と上清液に分けた内の粉末を乾燥後、その0.3gを9モルLiSCN(チオシアン酸リチウム)5mlに溶かし、溶解液を3、000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後の上清液を50倍の水で30分間、4回透析した。透析後、再び遠心分離してフィブロイン水溶液を得た。
一方、上清液はすでにフィブロイン水溶液となっているので、そのまま細胞生育測定に使った。
結晶性絹粉末から水で抽出して得た上清液と水で抽出後の粉末を溶解して得た水溶液とを0.025%および0.0025%の濃度に、70%エタノールで調整し、それらをポリスチレンの細胞培養容器(シャーレ、35mmφ)に1mlずつ入れて風乾した。細胞は三光純薬(株)から購入した凍結ヒト皮膚線維芽細胞(成人由来)を使用した。培地はクラボウ(株)から購入したヒト皮膚線維芽細胞増殖用低血清培地を使用した。培養はシャーレ1枚につき倍地2ml、7万の細胞を接種して3日間培養した。
細胞数の測定はシャーレ1枚につき培地2ml、アラマーブルー(IWAKI(株))0.1mlの割合で入れ、37℃、2時間培養した後に570nm、600nmの吸光度から計算した色素の還元量を生細胞数とし、培養容器に結晶性絹粉末に関する成分が無添加の場合(対照区)を100%とした。結果を表2に示す。
Figure 2007246461
表2で、濃度が濃い場合(0.025%)と薄い場合(0.0025%)との生育率を比較する。先ず、水に浸漬した後の粉末について、細胞生育率は濃度の濃い方が低く、粉末から水で抽出して得た抽出物では、細胞生育率は濃度の濃い方が高くなっている。これは、粉末を水に浸漬するとフィブロインの非結晶部位のペプチドは溶出し、上清液に含有され、結晶部位のペプチドは粉末の骨格として残ることが原因と考えられる。従って、表2でフィブロイン結晶部位が主となっている粉末は細胞生育を阻害し、フィブロインの非結晶部位が主となっている抽出物には細胞を生育促進する機能がある。抽出物は結晶性絹粉末を水に浸漬し、上清液と沈殿物に分けたときの上清液に含有しているフィブロインの低分子化物を言う。
また、粉末から抽出した上清液に含有して入るフィブロインの分子量をクロマトグラフィーで測定した。カラムはSuperdex peptide HR10/30(ファルマシア)を使用した。バッファーは10ミリモルPBSを使用し、流速0.6ml/minで行った。結果を図1に示す。
図1の縦軸は214nmの吸光度、横軸は時間と分子量である。図1は次のことを示す。結晶性絹粉末を水に浸漬して得られたフィブロイン由来の分子量は、ほぼ99%が分子量1万以下で、分子量5,000以下は約87%、分子量3,000以下は約71%、分子量1,000以下は約28%、分子量400未満は約3%である。(図1)
次に、結晶性絹粉末から抽出した抽出物と沈殿物(抽出後の結晶性絹粉末)のアミノ酸組成の違いを見るため、アミノ酸分析を行った。抽出物および沈殿物を乾燥後に200倍量の6N塩酸を加え、減圧封管した後に110℃で24時間加熱した。その後、ロータリーエバポレーターを使い、塩酸を除いた後に、1,000倍のクエン酸ナトリウム緩衝液(pH=2.2)で希釈し、アミノ酸分析を行った。アミノ酸分析は高速液体クロマトグラフィー装置(シマズ社製、M10A)を用い、カラムはPhenomenex 社製のLUNA(C18,4.6×100mm)で行った。結果を表3に示す。
Figure 2007246461
先ず、表3では抽出物と沈殿物でアミノ酸組成が異なる。引用文献5では抽出物と沈殿物のアミノ酸組成は同じである。次に、フィブロインのアミノ酸組成(非特許文献5)は、アラニン30.7%、グリシン42.8%、セリン10.0%となっている。そこで、フィブロイン、表3の抽出物、および前述段落0020のフィブロイン非結晶部位のアミノ酸組成を比較する。アミノ酸の内でアラニン、グリシン、セリンの組成について比較すると、表3の抽出物はフィブロインの非結晶部位の組成に類似していて、段落0020で述べたアラニン、グリシン、セリンの比率から、沈殿物の70〜100%はフィブロインの非結晶部位からの断片であると考えられる。
〈低分子ペプチドの細胞生育率〉
図1に示す分子量測定試験において、分子量が(イ)400〜3,000の部分と(ロ)約1万以下で3,000を超えた部分を回収し、回収した(イ)と(ロ)について実施例2と同様の細胞生育試験を回収物の濃度0.025%について行った。その結果、細胞生育率は(イ)では241%、(ロ)では187%となり、分子量400〜3,000の方が高い細胞生育率を示した。
〈抽出液(上清液)の塗布試験〉
結晶性絹粉末を水に浸漬して得た上清液(実施例1の粉末番号2の上清液)を、正常な皮膚を呈した成人3人の腕の表面に0.5ccを毎日、2回塗布し、塗布しなかった部分と塗布した部分とを手触りと肉眼観察で比較したところ、3週間から1ヶ月程度経過後から塗布した部分の方が、手触りでは滑らかさに優れ、肉眼観察では透明感があり、生き生きとしていた。
[参考例1]
〈非結晶性高分子フィブロインフィルムの製造〉
水1,000cc中に炭酸ソーダ0.5gを入れ、煮沸(100℃)し、煮沸中に家蚕の繭10.0gを浸漬、攪拌して90分間精練し、絹糸とした。その練減は25.5%、であった。絹糸は99%以上がフィブロインと考えられる。
得られた絹糸6gを9モル LiSCN 150mlに溶解し、溶解液を50倍量の水で4回透析し、フィブロイン水溶液(濃度8.3%)を得た。これを実施例2と同じ方法で分子量を測定した。その結果、分子量は約10万であった。また、このフィブロイン水溶液をプラスチック平板上で、室温で送風しながら乾燥し、フィルムを得た。これをフィルムAとする。フィルムA(約1cm×2cm)を水(約20℃、100g)に浸漬したところ、フィルムは1分程度で100%溶解し、水溶性のフィルムを得た。
〈低分子ペプチドを含有した非結晶性高分子フィブロインフィルムの塗布試験〉
低分子ペプチドは実施例2において、結晶性絹粉末を水に浸漬攪拌し、これを遠心分離して得た上清液または抽出液(分子量3,000以下の低分子ペプチドを71%含有、濃度0.147%)である。この上清液10gと[参考例2]で得た(高分子)フィブロイン水溶液(濃度8.3%)10gを混合した。また、これを平板上で送風しながら乾燥し、分子量3,000以下の低分子ペプチドを1.2%含有するフィルムを得た。これをフィルムBとする。得られたフィルムBから水溶性試験片(約1cm×2cm)を切り出し水(約20℃、100g)に浸漬したところ、フィルムは1分程度で100%溶解した。
次に、フィルムAとフィルムBに水を添加し、皮膚に塗布した。先ず、フィルムAとフィルムBから塗布試験片(約1cm×1cm)を切り出し、これらを正常な皮膚をした成人3人の腕に置き、水約0.3ccを加えて、腕上でフィルムを溶かし、皮膚によく塗布した。1日2回の塗布を1ヶ月続けたところ、フィルムAを塗布した部分は手触りが滑らかとなった。フィルムBを塗布した部分は手触りが滑らかであることに加えて、透明感があり生き生きとしていた。フィルムAとBとでは塗布後の皮膚の透明感に僅かな違いがあり、フィルムBの方がより良い結果であった。
本発明に必要な結晶性絹粉末はすでに生産されている。また、本発明の抽出物は安心で安全なフィブロイン由来のもので、経皮吸収可能な分子量400〜3,000の低分子ペプチドを含有し、しかも細胞生育促進機能を有する。また、フィブロイン由来のもの以外は含まない。そのために、アレルギー性皮膚でこれまで化粧がしにくかった人の多くに使えること、皮膚を剥離することなく皮膚再生の促進が可能であることなどから、これまで以上の多くの人にスキンケア素材として利用される。
結晶性絹粉末を水に浸漬して抽出した抽出液(上清液)に含有しているフィブロイン由来低分子化物のクロマトグラフィーによる分子量分析

Claims (6)

  1. 結晶性絹粉末を水に浸漬して、上層と該粉末を含有する沈殿物の下層とを形成せしめ、細胞生育促進機能成分を含有する該上層を分離し、採取することを特徴とする抽出物。
  2. 請求項1に記載の抽出物を得る方法。
  3. 請求項1に記載の抽出物に含有する分子量400〜3、000の細胞生育促進機能を有する低分子ペプチド。
  4. 請求項1に記載の抽出物を含有する化粧料。
  5. 請求項3に記載の低分子ペプチドを含有する化粧料。
  6. 請求項3に記載の低分子ペプチドを含有する創傷被覆材。
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