JP5907757B2 - アクリル系樹脂発泡成形体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アクリル系樹脂発泡成形体の製造方法に関する。
従来、アクリル系樹脂発泡体は、強度に優れるとともに軽量性、断熱性に優れていることから、表面に繊維強化プラスチックス(FRP)を貼り付けて、貨物車両の保冷室の壁材、小型ボートの船体、そして風力発電の羽などを構成するための部材として利用されている。
この部材を作製する方法としては、部材よりも大きなアクリル系樹脂発泡体を作製し、裁断加工により該アクリル系樹脂発泡体を所定の形状や寸法に加工する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
また、板状のアクリル系樹脂発泡体を作製し、該アクリル系樹脂発泡体を雄型及び雌型で挟み込みながら加熱させて成形して、所定の形状や寸法に加工する方法も知られている(例えば、特許文献2)。
特開2006−045256号公報 特開昭48−43054号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、切り落とした部分が端材として生じ、また、アクリル系樹脂発泡体を成形しようとする形状が複雑な程手間がかかるという問題がある。
また、特許文献2の方法では、該アクリル系樹脂発泡体を加熱し軟化させてアクリル系樹脂発泡成形体を得るので、該アクリル系樹脂発泡体を加熱しすぎると該アクリル系樹脂発泡体の表面を溶融したり、セルを押し潰して、アクリル系樹脂発泡成形体が外観(表面状態)の不良なものとなってしまうという問題がある。一方で、外観の不良なものとならないように加熱を抑制すると、形状が複雑な程、所望の形状に成形できないおそれがあるという問題もある。さらに、この方法では、板状のアクリル系樹脂発泡体を雄型及び雌型で挟み込んで加工するので、比較的厚みのあるようなものを加工することが困難であるという問題もある。また、この方法では、通常、雄型の面及び雌型の面よりも広い板状のアクリル系樹脂発泡体を用いるので、雄型及び雌型からはみ出た部分を切り落とす作業が必要となり、また、この切り落とした部分が端材として生じてしまうという問題もある。
本発明は、上記問題点に鑑み、外観が良好なアクリル系樹脂発泡成形体を所望の形状に比較的簡便に形成することができ、更に、端材が生じ難いアクリル系樹脂発泡成形体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、アクリル系モノマーを含む重合性モノマー成分と、熱分解型発泡剤を含む発泡剤と、重合開始剤とを含有する重合性溶液を作製し、前記重合性モノマー成分を重合させた後、前記重合によって得られた発泡性重合体の塊を複数成形型に下記式に示す充填率が150〜1000%となるように入れ、該成形型内で複数の発泡性重合体の塊を加熱することによって発泡させてアクリル系樹脂発泡成形体を形成させることを特徴とするアクリル系樹脂発泡成形体の製造方法にある。
充填率(%) = ((充填した発泡性重合体の全質量(g)/充填した発泡性重合体を自由発泡させた際に得られる発泡体の密度(g/cm3 ))/成形型の内容積(cm3 ))×100
本発明によれば、発泡性重合体を成形型内で発泡させて成形体を得ることから、比較的簡便にアクリル系樹脂発泡成形体を作製することができ、また、端材が生じ難い。また、発泡性重合体の塊を複数成形型に入れ、発泡性重合体を発泡させつつ発泡成形体を形成していることから、発泡状態が良好な成形体を作製することができる。さらに、複数の発泡性重合体の塊を成形型内で発泡させていることから、発泡性重合体が発泡する際に成形型内で樹脂が広がりやすくなり、所望の形状に成形体を形成することができる。
従って、本発明によれば、発泡状態が良好なアクリル系樹脂発泡成形体を所望の形状に比較的簡便に形成することができ、更に、端材が生じ難いアクリル系樹脂発泡成形体の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態のアクリル系樹脂発泡成形体の製造方法では、まず、アクリル系モノマーを含む重合性モノマー成分と、熱分解型発泡剤を含む発泡剤と、重合開始剤とを含有する重合性溶液を作製する。次に、該重合性モノマー成分を重合させて複数の発泡性重合体の塊を作製する。そして、得られた複数の重合体の塊を型枠に入れ、該型枠内で複数の重合体の塊を加熱することによって発泡させるとともに融着させてアクリル系樹脂発泡成形体を形成させる。
以下、まず、重合性溶液を構成させるための成分について説明する。
(アクリル系モノマー)
前記アクリル系モノマーとしては、発泡剤として好ましく用いられる尿素に対する優れた溶解性を示すことから水溶性のアクリル系モノマーを含有させることが好ましく、(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。
なお、本明細書における“(メタ)アクリル”との用語は、“メタクリル”と“アクリル” の何れか一方又は両方を意味している。
また、(メタ)アクリル酸以外のアクリル系モノマーとしては、該アクリル系モノマーの発泡性重合体を発泡させるのに際して優れた発泡性を発揮させ得る点においてメタクリル酸メチルを用いることが好ましい。
(メタ)アクリル酸、メタクリル酸メチル以外のアクリル系モノマーとしては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイン酸イミドなどを採用することができる。このうち、得られるアクリル系樹脂発泡成形体に高い耐熱性を付与することができるという観点から、重合性溶液に無水マレイン酸及びメタクリルアミドを含有させることが好ましい。
(アクリル系モノマー以外の重合性モノマー成分)
なお、上記アクリル系モノマー以外の重合性モノマー成分として、上記アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーをアクリル系樹脂発泡成形体の改質などを目的として重合性溶液に少量含有させることも可能である。
特に、発泡性の向上に有効となるスチレンモノマーを重合性溶液に含有させることが好ましい。
ただし、スチレンモノマーを過剰に含有させると、アクリル系樹脂発泡成形体の特徴である硬質さを損なうおそれを有することから重合性モノマー成分に占めるスチレンモノマーの含有量は20質量%以下とすることが好ましい。
より具体的には、本実施形態における重合性溶液は、含有される重合性モノマー成分の内の35〜70質量%がメタクリル酸メチルで、14〜45質量%が(メタ)アクリル酸で、10〜20質量%がスチレンであることが好ましい。
なお、14〜45質量%の割合で含有される(メタ)アクリル酸の内、全てをメタクリル酸としても、全てをアクリル酸としても良く、メタクリル酸とアクリル酸との両方を併せて14〜45質量%となるように重合性溶液に含有させてもよい。
ただし、後述する発泡剤として尿素を用いる場合、尿素に対する溶解性の観点からは、メタクリル酸を多く含有させることが好ましい。
このような配合を採用することで、発泡性に優れ、硬質で強度に優れたアクリル系樹脂発泡成形体を得ることができる。
(発泡剤)
発泡剤としては、熱分解型発泡剤を含む発泡剤を用いる。
前記熱分解型発泡剤は、65℃以上で分解して気体を発生するものであり、100〜180℃で分解して気体を発生するものが好ましい。
前記熱分解型発泡剤としては、尿素、尿素誘導体、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アミドグアニジン、トリメチレントリアミン、パラトルエンスルホンヒドラジン、アゾジカルボンアミド、イタコン酸、無水マレイン酸、チオ尿素、塩化アンモニウム、ジシアンジアミド、ジオキサン、ヘキサン、抱水クロラール、クエン酸等が挙げられる。特に尿素は、好適な発泡剤である。
前記熱分解型発泡剤は、含有量が少ないと、得られるアクリル系樹脂発泡成形体の発泡度が低下して軽量性を損なうおそれを有し、逆に過剰であると、重合性溶液中に熱分解型発泡剤を均一に溶解させることが困難となったり、得られるアクリル系樹脂発泡成形体中に熱分解型発泡剤を残存させ易くなったり、破泡を生じさせたりするおそれを有する。
このようなことから、熱分解型発泡剤は、重合性モノマー成分の合計量を100質量部とした場合に0.5〜30質量部となる割合で重合性溶液に含有させることが好ましく、熱分解型発泡剤が尿素である場合には、重合性モノマー成分の合計量を100質量部とした場合に1〜15質量部となる割合で重合性溶液に含有させることが好ましい。
熱分解型発泡剤以外のその他の発泡剤としては、沸点が65℃以上の物理発泡剤(アルコール)を用いることができ、沸点が65℃〜180℃の物理発泡剤(アルコール)が好ましい。具体的な例としては、イソプロパノール、シクロペンタノール、エタノール、1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−エチル−1−ヘキサノール等のアルコールが挙げられる。これらの発泡剤は、単独で用いても効果がなく、熱分解型発泡剤と併用される。使用量としては、重合性モノマー成分の合計量を100質量部とした場合に、熱分解型発泡剤との合計量で0.6〜30質量部となる割合で重合性溶液に含有させることが好ましい。
(重合開始剤)
前記重合開始剤としては、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどのようなレドックス系重合開始剤、熱分解型開始剤、光分解型開始剤等を用いる。分解温度が高い程、重合性溶液の重合速度の調整が難しいが、重合性溶液の重合速度を調整し易いという観点から、レドックス系重合開始剤を用いることが好ましい。
また、上記t−ブチルハイドロパーオキサイド以外のレドックス系重合開始剤として利用可能な具体的な物質としては、クメンヒドロキシパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。
前記重合開始剤は、重合性モノマー成分の合計量を100質量部とした場合に、0.1〜5質量部となる割合で重合性溶液に含有されることが好ましい。
(還元剤)
なお、本実施形態においては、前記重合性溶液には、還元剤を含有をさらに含有させることができる。
該還元剤としては、N,N−ジメチルアニリンなどの窒素含有化合物の様な、他の化合物を還元する(電子を供与する)ことのできる化合物等を用いることができる。
上記N,N−ジメチルアニリン以外の窒素含有化合物で還元剤として利用可能な具体的な物質としては、トリエチルアミンなどのアミン化合物が挙げられる。
前記還元剤は、前記重合開始剤の含有量に対して0.1〜5倍の割合で重合性溶液に含有されることが好ましい。
(金属イオン、塩化物イオン)
また、本実施形態においては、前記重合性溶液には、Cu+、Cu2+、Fe3+、Ag+、Pt2+、及び、Au3+からなる群より選ばれる1種以上の金属イオン、並びに、塩化物イオンをさらに含有させることができる。
前記金属イオンは、いずれも酸化還元電位が正の値のものである。
また、前記金属イオンは、重合性溶液中で、電子を授与するもの、すなわち酸化剤として、または電子を供与するもの、すなわち還元剤としての機能を発揮し、前記重合性モノマー成分の重合反応の促進に寄与するものである。
一方で前記塩化物イオンは、前記の金属イオンと結合や脱離することにより、前記重合性モノマー成分の重合反応の促進に寄与するものである。
上記の金属イオン及び塩化物イオンは、塩化銅、塩化第二鉄、塩化銀、塩化金といった形で同じ物質で両方を一度に重合性溶液に含有させるようにしてもよく別々の物質によって重合性溶液に含有させるようにしてもよい。
上記のような塩化物以外であれば、例えば、臭化銅、ヨウ化銅、ステアリン酸銅、ナフテン酸銅、臭化銀などの物質によって重合性溶液に上記のような金属イオンを含有させることができる。
なお、銅、銀、金については、上記のような塩ではなく、金属そのもの、或いは、合金によってそのイオンを重合性溶液に含有させることができる。
例えば、銅、銅合金(コンスタンタン:銅/ニッケル合金、真鍮:銅/亜鉛合金)、銀、金からなる微粒子、線、メッシュなどを重合性溶液中に混入させることによってこれらのイオンを重合性溶液に含有させることができる。
なお、塩化物イオンを重合性溶液に含有させるための具体的な物質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩酸などの他に、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−メチル−3−n−オクチルイミダゾリウムクロライド、1−メチル−1−ヒドロキシエチル−2−牛脂アルキル−イミダゾニウムクロライドなどのイミダゾリウム塩型の界面活性剤、ヘキサトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩型の界面活性剤などが挙げられる。
なお、塩化物イオンを重合性溶液に含有させるための具体的な物質としては、塩化ナトリウム、塩酸、及び、ヘキサトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドのいずれかであることが好ましく、特に、セチルトリメチルアンモニウムクロライドを採用することが好ましい。
これらの塩化物イオン含有物質を重合性溶液に含有させる場合には、通常、重合性溶液中の重合性モノマー成分の合計量を100質量部とした場合に0.005〜5質量部となる割合で含有させることができる。
また、前記金属イオンを重合性溶液に含有させるための具体的な物質としては、塩化銀、塩化銅、ステアリン酸銅、ナフテン酸銅、塩化第二鉄、又は、銅(銅粒子や銅線)が好ましい。
これらを重合性溶液に含有させる場合には、通常、重合性溶液中の重合性モノマー成分の合計量を100質量部とした場合に1×10-6〜1×10-2質量部となる割合で含有させることができる。
(脱水剤)
さらに、本実施形態においては、前記重合性溶液には、脱水剤をさらに含有させることができる。
該脱水剤としては、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウム等の硫酸塩、ゼオライト(モレキュラーシーブ)などを挙げることができ、このような脱水剤の重合性溶液における含有量は、例えば、重合性溶液中の重合性モノマー成分の合計量を100質量部とした場合に0.01〜10質量部となる割合で含有させることができる。このような脱水剤は重合性溶液の調製時に混合攪拌して溶液中の水分を脱水した後、ろ過除去されることが望ましい。
(重合抑制剤)
また、本実施形態においては、前記重合性溶液には、単独モノマー間での重合反応や、急激な重合反応などを抑制するために重合抑制剤をさらに含有させることができる。
前記重合抑制剤としては、アルカリ土類金属塩、即ち、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムの塩であって、例えば、ギ酸カルシウムなどを挙げることができ、このような重合抑制剤の重合性溶液における含有量は、例えば、重合性溶液中の重合性モノマー成分の合計量を100質量部とした場合に0.001〜5質量部となる割合で含有させることができる。前記重合性溶液は、重合抑制剤を含有することにより、重合性モノマー成分を重合させた際に、過剰に重合してしまうのを抑制することができるという利点がある。
(気泡調整剤)
さらに、本実施形態においては、前記重合性溶液には、気泡調整剤をさらに含有させることができる。
該気泡調整剤としては、例えば、アルカリ土類金属塩、金属酸化物、シリカゲル、珪藻土などの粉末状無機物、硫酸ナトリウム、アジピン酸エステル、フタル酸エステル、クエン酸エステルなどが挙げられる。
このような気泡調整剤の重合性溶液における含有量は、例えば、重合性溶液中の重合性モノマー成分の合計量を100質量部とした場合に0.01〜10質量部となる割合で含有させることができる。
(アクリル系樹脂発泡体)
また、本実施形態においては、前記重合性溶液には、前記重合性モノマー成分と同一或いは異なる重合性モノマー成分の発泡性重合体を発泡させてなるアクリル系樹脂発泡体をさらに含有させることができる。
前記アクリル系樹脂発泡体は、前記重合性溶液中の重合性モノマー成分の重合反応の促進に寄与するものである。
前記アクリル系樹脂発泡体は、前記重合性溶液中の重合性モノマー成分の合計量を100質量部とした場合に、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部、さらにより好ましくは5〜10質量部となる割合で重合性溶液に含有される。
前記重合性溶液は、重合性モノマー成分の合計量100質量部に対して前記アクリル系樹脂発泡体が20質量部以下であることにより、該前記アクリル系樹脂発泡体が重合性モノマー成分に均一に溶解されやすくなるという利点がある。また、前記重合性溶液は、重合性モノマー成分の合計量100質量部に対して前記アクリル系樹脂発泡体が0.1質量部以上であることにより、前記重合性溶液中の重合性モノマー成分の重合が促進されるという利点がある。
前記アクリル系樹脂発泡体としては、従来のアクリル系樹脂発泡成形体の加工方法で出る切り粉を用いることができる。本実施形態に係るアクリル系樹脂発泡成形体の製造方法では、求められる最終製品形状となるように成形型での成形が行われることから、従来の方法のように二次加工を要しないが、仮に成形型で形成させることが困難な形状が一部設けられている製品を作製するために、成形後に二次加工が必要になる場合は、その際に発生する切り粉や端材を前記重合性溶液に加えるアクリル系樹脂発泡体として用いることができる。
(発泡性重合体)
本実施形態に係るアクリル系樹脂発泡成形体の製造方法では、上述した重合性溶液の材料を加熱しながら撹拌して混合させて前記重合性溶液を作製する。
次に、前記重合性溶液を濾過し、無機塩等の残渣物を除去させる。
そして、前記残渣物が除去された重合性溶液を適当な大きさの型枠に入れ加熱し、前記重合性溶液の重合性モノマー成分を重合させて発泡性重合体を得る。この重合では、前記重合性モノマー成分が重合する温度以上、且つ、前記熱分解型発泡剤が分解する温度未満で加熱する。通常、重合温度は、30〜65℃、重合時間は、5〜50時間である。
得られた発泡性重合体が成形型内容積に比べて大きい場合には、前記発泡性重合体を分割して発泡性重合体の塊を複数作製する。例えば、カッター等で前記発泡性重合体を切断したり、ハンマー等で前記発泡性重合体を砕いたりすることで、前記発泡性重合体を分割して発泡性重合体の塊を複数作製する。塊のサイズは、成形する成形体の容積によって調整されるが、小さいと良好に発泡しないことがあり、大きいと成形型への追従性が悪くなって型通りの成形体が得られないことがあるので、1〜30mm角とすることが好ましく、1〜10mm角とすることがより好ましい。
(成形型内での発泡成形)
そして、前記発泡性重合体の複数の塊を成形型内に、下記式に示す充填率が150〜1000%となるように入れる。発泡性重合体の塊のサイズは、篩して揃えて入れてもよいし、様々なサイズのものを入れてもよい。
充填率(%) = ((充填した発泡性重合体の全質量(g)/充填した発泡性重合体を自由発泡させた際に得られる発泡体の密度(g/cm3 ))/成形型の内容積(cm3 ))×100
前記充填率は、好ましくは、200〜1000%である。
成形型の細部まで型通りに成形させうるという観点や、平滑性の高いアクリル系樹脂発泡成形体を得るという観点から、1〜10mm角の比較的サイズの小さなものをサイズを揃えて入れることが好ましい。
充填率が低いと、成形型通りの成形体が得られなかったり、得られた成形体の表面の平滑性が不十分だったり、発泡した発泡性重合体同士の融着性が不十分となって得られた発泡成形体の強度が不十分となることがあり、高すぎても得られる発泡成形体の嵩密度が大きくなって軽量性が不十分となる。
なお、自由発泡させた際の発泡体の密度とは、充填する発泡性重合体を25mm×30 mm×30mmのブロック状にして、これを型内発泡成形する際に用いる加熱温度、加熱時間で成形型の規制を受けない自由空間で発泡させた時に得られる発泡体の容積と重量から算出する。
そして、該成形型を加熱し該成形型内の複数の発泡性重合体を発泡させ、アクリル系樹脂発泡成形体を作製する。発泡させるための加熱温度としては、100〜180℃が好ましい。発泡させるための加熱時間としては、0.2〜5時間が好ましい。
次に、実施例、比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
まず、実施例、比較例のアクリル系樹脂発泡成形体の製造方法で用いる、2種類の発泡性重合体(発泡性重合体A及び発泡性重合体B)について説明する。
(発泡性重合体Aの作製)
メタクリル酸メチル47質量%、メタクリル酸25質量%、スチレン16質量%、無水マレイン酸8.0質量%、及び、メタクリルアミド4.0質量%からなる重合性モノマー成分100質量部に、重合開始剤としてのt−ブチルヒドロパーオキサイド0.5質量部、セチルトリメチルアンモニウムクロライド0.1質量部、ギ酸カルシウム0.2質量部、硫酸ナトリウム2.0質量部、ジオクチルフタレート2.0質量部、及び、発泡剤としての尿素5.0質量部を加え、これらを35℃で加熱しながら撹拌した。その後、これらを濾過して残渣の無機塩を除去し、重合性溶液Aを作製した。
次に、この重合性溶液A1500gを25mm×210mm×360mmの内法を有するテフロン製の直方体状の型枠に入れた。
そして、重合性溶液Aを型枠ごと43.5℃で21時間加熱し重合性モノマー成分を重合させて発泡性重合体A(樹脂密度1.16g/cm3 )を得た。
(発泡性重合体Aを自由発泡させて得られる発泡体の密度)
前記発泡性重合体Aをシンクス社製の電動パネルカッターで25 mm×30 mm×30mmの大きさに裁断しブロック状にした。これを180℃に設定された温風循環炉に入れて1時間加熱し、発泡させたところ、密度0.076g/cm3(13.2cm3/g)の発泡体を得た。
(発泡性重合体Bの作製)
メタクリル酸メチル61質量%、メタクリル酸24質量%、及び、スチレン15質量%からなる重合性モノマー成分100質量部に、重合開始剤としてのt−ブチルヒドロパーオキサイド0.5質量部、セチルトリメチルアンモニウムクロライド0.04質量部、ギ酸カルシウム0.1質量部、硫酸ナトリウム0.6質量部、N,N−ジメチルアニリン0.5質量部、発泡剤としての尿素5質量部を加え、これらを35℃で加熱しながら撹拌した。その後、これらを濾過して残渣の無機塩を除去し、重合性溶液Bを作製した。
次に、この重合性溶液B1500gを25mm×210mm×360mmの内法を有するテフロン製の直方体状の型枠に入れた。
そして、重合性溶液Bを型枠ごと50℃で34時間加熱し重合性モノマー成分を重合させて発泡性重合体B(樹脂密度1.16g/cm3 )を得た。
(発泡性重合体Bを自由発泡させて得られる発泡体の密度)
該発泡性重合体Bをシンクス社製の電動パネルカッターで25 mm×30 mm×30mmの大きさに裁断しブロック状にした。これを170℃に設定された温風循環炉に入れて1時間加熱し、発泡させたところ、密度0.046 g/cm3(21.7cm3/g)の発泡体を得た。
(実施例1)
前記発泡性重合体Aをシンクス社製の電動パネルカッターで30mm角以下の大きさに裁断しブロック状にした。続いて、このブロック状の発泡性重合体Aを金槌(打撃部分が直径3cmのもの)を用いて1〜30mm角に砕いて、発泡性重合体Aの塊を複数得た。この塊を篩にかけて1〜10mmの塊を選別した。
そして、発泡性重合体Aの1〜10mmの塊を複数(合計量:48g)成形型(内容積:120cm3 、魚型)に入れ(充填率:526%)、該成形型を180℃に設定された温風循環炉に入れて1時間加熱し発泡させて発泡成形体を作製した。発泡成形体は、成形型形状通りに成形されており、表面が平滑な発泡成形体(密度:0.40g/cm3 )であった。また、該成形体に30cm高さから5kgの鉄球を落下させても破断しなかった。なお、この落球試験は、発泡成形体の上から重さ5kgの鉄球を落下させて破断する高さ(5cmきざみ)を測定した。以下の実施例、比較例でも同様にして行った。
(実施例2)
前記成形型に発泡性重合体Aの塊を入れる合計量を30gとしたこと(充填率:329%)としたこと以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を作製した。型形状通りに成形された表面が平滑な発泡成形体(密度:0.25g/cm3 )を得ることができた。また、該成形体に30cm高さから5kgの鉄球を落下させても破断しなかった。
(実施例3)
前記成形型に発泡性重合体Aの塊を入れる合計量を20gとしたこと(充填率:219%)としたこと以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を作製した。型形状通りに成形された表面が平滑な発泡成形体(密度:0.17g/cm3 )を得ることができた。また、該成形体に30cm高さから5kgの鉄球を落下させても破断しなかった。
(実施例4)
前記成形型に発泡性重合体Aの塊を入れる合計量を14gとしたこと(充填率:154%)としたこと以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を作製した。型形状通りに成形された表面がほぼ平滑な発泡成形体(密度:0.12g/cm3 )を得ることができた。また、該成形体に30cm高さから5kgの鉄球を落下させても破断しなかった。
(実施例5)
前記発泡性重合体Bから1〜10mmの発泡性重合体Bの塊を実施例1と同様にして作製した。
そして、発泡性重合体Bの塊を複数(合計量:48g)成形型(内体積:120cm3 、魚型)に入れ(充填率:870%)、該成形型を170℃に設定された温風循環炉に入れて1時間加熱し、発泡させて発泡成形体を作製した。型形状通りに成形された表面が平滑な発泡成形体(密度:0.40g/cm3 )を得ることができた。また、該成形体に30cm高さから5kgの鉄球を落下させても破断しなかった。
(実施例6)
前記成形型に発泡性重合体Bの塊を入れる合計量を30gとしたこと(充填率:543%)以外は、実施例5と同様にして、発泡成形体を作製した。型形状通りに成形された表面が平滑な発泡成形体(密度:0.25g/cm3 )を得ることができた。また、該成形体に30cm高さから5kgの鉄球を落下させても破断しなかった。
(実施例7)
前記成形型に発泡性重合体Bの塊を入れる合計量を20gとしたこと(充填率:362%)以外は、実施例5と同様にして、発泡成形体を作製した。型形状通りに成形された表面が平滑な発泡成形体(密度:0.17g/cm3 )を得ることができた。また、該成形体に30cm高さから5kgの鉄球を落下させても破断しなかった。
(実施例8)
前記成形型に発泡性重合体Bの塊を入れる合計量を14gとしたこと(充填率:254%)以外は、実施例5と同様にして、発泡成形体を作製した。型形状通りに成形された表面が平滑な発泡成形体(密度:0.12g/cm3 )を得ることができた。また、該成形体に30cm高さから5kgの鉄球を落下させても破断しなかった。
(比較例1)
前記成形型に発泡性重合体Aの塊を入れる合計量を8g(充填率:88%)としたこと以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を作製した。成形型通りの成形体が得られなかった。
(比較例2)
前記成形型に発泡性重合体Aの塊を入れる合計量を10g(充填率:110%)としたこととしたこと以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を作製した。ほぼ成形型通りの成形体であったが、表面に多数のへこみが見られ平滑ではなかった。(密度:0.08g/cm3 )また、該成形体に25cm高さから5kgの鉄球を落下させると、発泡性重合体Aの塊どうしの融着部分が破断した。
(比較例3)
前記成形型に発泡性重合体Bの塊を入れる合計量を5gとしたこと(充填率:91%)としたこと以外は、実施例5と同様にして、発泡成形体を作製した。成形型通りの成形体が得られなかった。
(比較例4)
前記成形型に発泡性重合体Bの塊を入れる合計量を7gとしたこと(充填率:127%)以外は、実施例5と同様にして、発泡成形体を作製した。ほぼ成形型通りの成形体であったが、表面にへこみが見られ平滑ではなかった。また、該成形体に25cm高さから5kgの鉄球を落下させると、発泡性重合体Bの塊どうしの融着部分が破断した。
本発明の範囲内の方法で作製した実施例の発泡成形体は、前記充填率127%以下で作製した比較例の発泡成形体に比して、外観が良好であり、また、強度が高かった。

Claims (2)

  1. アクリル系モノマーを含む重合性モノマー成分と、熱分解型発泡剤を含む発泡剤と、重合開始剤とを含有する重合性溶液を作製し、前記重合性モノマー成分を30〜65℃で重合させた後、前記重合によって得られた発泡性重合体の塊を複数成形型に下記式に示す充填率が150〜1000%となるように入れ、該成形型内で複数の発泡性重合体の塊を加熱することによって発泡させてアクリル系樹脂発泡成形体を形成させ
    前記重合性溶液は、含有される重合性モノマー成分の内の35〜70質量%がメタクリル酸メチルで、14〜45質量%が(メタ)アクリル酸で、10〜20質量%がスチレンであることを特徴とするアクリル系樹脂発泡成形体の製造方法。
    充填率(%) = ((充填した発泡性重合体の全質量(g)/充填した発泡性重合体を自由発泡させた際に得られる発泡体の密度(g/cm))/成形型の内容積(cm))×100
  2. アクリル系モノマーを含む重合性モノマー成分と、熱分解型発泡剤を含む発泡剤と、重合開始剤とを含有する重合性溶液を作製し、該重合性溶液を濾過して残渣物を除去し、前記重合性モノマー成分を重合させた後、前記重合によって得られた発泡性重合体の塊を複数成形型に下記式に示す充填率が150〜1000%となるように入れ、該成形型内で複数の発泡性重合体の塊を加熱することによって発泡させてアクリル系樹脂発泡成形体を形成させ
    前記重合性溶液は、含有される重合性モノマー成分の内の35〜70質量%がメタクリル酸メチルで、14〜45質量%が(メタ)アクリル酸で、10〜20質量%がスチレンであることを特徴とするアクリル系樹脂発泡成形体の製造方法。
    充填率(%) = ((充填した発泡性重合体の全質量(g)/充填した発泡性重合体を自由発泡させた際に得られる発泡体の密度(g/cm))/成形型の内容積(cm))×100
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