本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例について説明する。
<全体構成>
まず、画像形成装置の全体構成について説明する。
図1には、実施形態の一例としての画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、上下方向(矢印Y方向)の下側から上側へ向けて、記録媒体の一例としての記録用紙PAが収容される用紙収容部12と、用紙収容部12の上に設けられ用紙収容部12から供給される記録用紙PAに画像形成を行う画像形成部14と、画像形成部14の上に設けられ読取原稿(図示省略)を読み取る原稿読取部16と、画像形成部14内に設けられ画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部20と、を含んで構成されている。なお、以後の説明では、画像形成装置10を正面視したときの装置本体10Aの上方向をY方向、水平方向(右方向)をX方向、手前側から奥側に向かう奥行き方向をZ方向と記載する。また、X、Y、Z方向とは逆の方向を−X、−Y、−Z方向と記載する。
用紙収容部12は、サイズの異なる記録用紙PAが収容される第1収容部22、第2収容部24、及び第3収容部26が設けられている。第1収容部22、第2収容部24、及び第3収容部26には、収容された記録用紙PAを画像形成装置10内に設けられた搬送路28に送り出す送り出しロール32が設けられている。そして、搬送路28における送り出しロール32よりも下流側には、記録用紙PAを一枚ずつ搬送するそれぞれ一対の搬送ロール34及び搬送ロール36が設けられている。また、搬送路28における記録用紙PAの搬送方向で搬送ロール36よりも下流側には、記録用紙PAを一旦停止させるとともに、決められたタイミングで後述する二次転写位置へ送り出す位置合せロール38が設けられている。
搬送路28の上流側部分(搬送ロール36が設けられている部位)は、画像形成装置10の正面視において、Y方向に向けて用紙収容部12の左側から画像形成部14の左側下部まで直線状に設けられている。また、搬送路28の下流側部分は、画像形成部14の左側下部から画像形成部14の右側面に設けられた排紙部15まで設けられている。さらに、搬送路28には、記録用紙PAの両面に画像形成を行うために記録用紙PAが搬送及び反転される両面搬送路29が接続されている。
両面搬送路29は、画像形成装置10の正面視において、画像形成部14の右側下部から用紙収容部12の右側までY方向に直線状に設けられた第1反転路33と、第1反転路33に搬送された記録用紙PAの後端が進入するとともにX方向における図示の左側に記録用紙PAを搬送する第2反転路35と、搬送路28、第1反転路33、及び第2反転路35の切り替えを行う切替部材(図示省略)と、を有している。そして、第1反転路33には、一対の搬送ロール42が間隔をあけて複数箇所に設けられており、第2反転路35には、一対の搬送ロール44が間隔をあけて複数箇所に設けられている。
なお、第2反転路35の下流側端部は、搬送路28の上流側部分にある複数の搬送ロール36のうち、一番下流側にある搬送ロール36の手前側(上流側)に案内部材(図示省略)により接続されている。
原稿読取部16は、読取原稿を1枚ずつ自動で搬送する原稿搬送装置52と、原稿搬送装置52の下側に配置され1枚の読取原稿が載せられるプラテンガラス54と、原稿搬送装置52によって搬送された読取原稿又はプラテンガラス54に載せられた読取原稿を読み取る原稿読取装置56とが設けられている。
一方、画像形成部14には、現像剤像(トナー画像)を形成する画像形成ユニット60と、矢印A方向に回転(周回移動)可能に設けられ外周にトナー画像を保持する中間転写ベルト62と、画像形成ユニット60で形成されたトナー画像を中間転写ベルト62へ一次転写させる4本の一次転写ロール64と、中間転写ベルト62上のトナー画像を記録用紙PAに二次転写させる1本の二次転写ロール66と、が設けられている。
図2に示すように、画像形成ユニット60は、一例として、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色のトナー画像が形成される複数の画像形成ユニット60Y、60M、60C、60Kで構成されている。なお、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60Kは、トナーの色が異なるだけで基本構成は同じである。このため、画像形成ユニット60Kについて説明し、他の画像形成ユニット60Y、60M、60Cについては符号の図示及び説明を省略する。
また、以後の説明では、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60Kを構成する各部材について、トナー色(Y、M、C、K)毎の区別が必要なときは、部材の符号の末尾にトナー色を表す添字Y、M、C、Kを付与して区別し、トナー色(Y、M、C、K)毎の区別が不要なときは、添字Y、M、C、Kを省略した符号で各部材を説明する場合がある。
画像形成ユニット60は、外周面に静電潜像及びトナー画像を保持する像保持部材の一例としての感光体72と、感光体72の外周面を帯電する帯電ユニット74と、帯電された感光体72の外周面を露光し感光体72上に静電潜像を形成する露光装置76と、感光体72上に形成された静電潜像を各色トナーで現像して各色のトナー画像を形成する現像装置100と、一次転写後の感光体72の外周面を清掃するクリーニングユニット78と、を含んで構成されている。なお、現像装置100の詳細については後述する。
感光体72は、円筒状であり、中間転写ベルト62の幅方向を軸方向として中間転写ベルト62と対向配置され、駆動手段(図示省略)によって矢印R方向(周方向であり図示の時計回り方向)に回転可能に支持されている。また、帯電ユニット74は、一例として、スコロトロン方式の帯電器であり、放電によって感光体72の外周面をトナーの帯電極性と同じ極性(一例としてマイナス極性)で帯電させる。
露光装置76は、半導体レーザ及びf−θレンズ(図示省略)、ポリゴンミラー76A、結像レンズ(図示省略)、及び複数のミラー76Bを有している。そして、露光装置76は、K色(ブラック色)の画像情報に基づき半導体レーザから出射されたレーザ光Bを、ポリゴンミラー76Aで偏向走査し、帯電ユニット74により帯電された感光体72の外周面に照射(露光)して静電潜像を形成するようになっている。なお、露光装置76は、レーザ光をポリゴンミラーで偏向走査する方式に限らず、LED(Light Emitting Diode)方式であってもよい。
クリーニングユニット78は、感光体72と軸方向を揃えたクリーニングロール78Aを有している。そして、クリーニングロール78Aは、感光体72の外周面に接触しながら回転することで、一次転写後に感光体72の外周面に残留しているトナーや埃などを回収する。
中間転写ベルト62は、一例として、ポリイミド樹脂を主成分としており、円筒状に形成されている。また、中間転写ベルト62の内側には、矢印A方向の上流側から下流側へ向けて、中間転写ベルト62を移動させる駆動ロール61と、電圧が印加されるとともに感光体72(接地)との電位差でトナー画像を中間転写ベルト62へ一次転写する一次転写ロール64と、中間転写ベルト62を内側から支持する支持ロール63と、中間転写ベルト62に張力を付与する張力付与ロール65と、中間転写ベルト62の二次転写位置の内側に配置され二次転写ロール66の対向電極となる対向ロール67と、支持ロール69とが、それぞれ図示の反時計回り方向に回転可能に設けられている。
そして、中間転写ベルト62は、駆動ロール61、4本の一次転写ロール64、支持ロール63、張力付与ロール65、対向ロール67、及び支持ロール69に巻き掛けられて支持されており、駆動ロール61がモータを含む駆動手段(図示省略)によって回転駆動されることで、矢印A方向に周回移動するようになっている。
一次転写ロール64は、ベアリング(図示省略)により両端部が回転可能に支持され、外周面が中間転写ベルト62の内周面と接触している。また、一次転写ロール64は、中間転写ベルト62に転写されるトナー画像の極性とは逆の極性(プラス極性)の電圧が芯金(図示省略)に印加されている。ここで、各感光体72が接地されており、各感光体72の電位と各一次転写ロール64の電位との間に電位差が生じている。この電位差で形成される電界の作用により、感光体72の外周面に保持されているトナー画像が、一次転写位置QAで中間転写ベルト62に一次転写される。
また、中間転写ベルト62の外側(駆動ロール61側とは反対側)には、中間転写ベルト62と接触して表面をクリーニングするベルトクリーナ71が設けられている。そして、中間転写ベルト62を挟んで対向ロール67側とは反対側には、中間転写ベルト62上のトナー画像を記録用紙PAに二次転写する既述の二次転写ロール66が設けられている。
二次転写ロール66は、円柱状の芯金(図示省略)の周囲に発泡弾性層を被覆した構成となっている。そして、この芯金は接地されており、二次転写ロール66の電位と対向ロール67の電位との間に電位差が生じている。この電位差で形成される電界の作用により、中間転写ベルト62上のトナー画像が、二次転写位置QBで記録用紙PAに二次転写される。
一方、搬送路28における二次転写位置QBよりも下流側には、記録用紙PAを下流側へ搬送する搬送ユニット79が設けられている。搬送ユニット79は、回転可能に設けられた搬送ロール79A、79Bと、搬送ロール79A、79Bに巻き掛けられた無端状の搬送ベルト79Cと、を含んで構成されている。そして、搬送ユニット79は、搬送ロール79Bがモータを含む駆動手段(図示省略)により回転駆動されることで、搬送ベルト79Cを周回移動させるようになっている。また、搬送路28における搬送ユニット79よりも下流側には、定着装置80が設けられている。
定着装置80は、記録用紙PAのトナー画像面側に配置され内部に熱源(一例としてハロゲンヒータ(図示省略))を有する定着ロール82と、定着ロール82に向けて記録用紙PAを加圧する加圧ロール84と、を有している。そして、定着装置80では、記録用紙PAが定着ロール82と加圧ロール84との接触部(ニップ部)に進入して加熱及び加圧されることで、トナー画像が記録用紙PAに定着される。
図1に示すように、搬送路28における定着装置80よりも下流側には、トナー画像が定着された記録用紙PAを排紙部15へ搬送する複数の搬送ロール86が設けられている。また、画像形成部14における画像形成ユニット60Y、60M、60C、60Kよりも上側には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各トナーを収容するトナーカートリッジ88Y、88M、88C、88Kが交換可能に設けられている。そして、トナーカートリッジ88Y、88M、88C、88Kは、各トナー色に合わせて各現像装置100(図2参照)に接続されており、各色のトナーを各現像装置100に送り込むようになっている。
(画像形成工程)
次に、画像形成装置10における画像形成工程について説明する。
図2に示すように、画像形成装置10が作動すると、画像処理装置(図示省略)又は外部から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像データが露光装置76に順次出力される。
続いて、露光装置76から画像データに応じて出射された光が、帯電ユニット74により帯電された感光体72の外周面を露光する。そして、感光体72の外周面には、各色の画像データに対応した静電潜像が形成される。さらに、感光体72の外周面に形成された静電潜像は、現像装置100によって各色のトナー画像として現像される。そして、感光体72の外周面の各色のトナー画像は、一次転写ロール64によって中間転写ベルト62に一次転写(多重転写)される。
一方、一例として、第3収容部26から送り出され、搬送路28を搬送されてきた記録用紙PAは、位置合わせロール38により、中間転写ベルト62への各トナー画像の多重転写とタイミングを合わせて二次転写位置QBに搬送される。そして、中間転写ベルト62上に多重転写されたトナー画像は、二次転写位置QBに搬送されてきた記録用紙PA上に二次転写ロール66によって二次転写される。
続いて、トナー画像が転写された記録用紙PAは、定着装置80に向けて矢印C方向(図示の右方向)に搬送される。そして、定着装置80では、トナー画像が定着ロール82及び加圧ロール84によって加熱、加圧されて記録用紙PAに定着される。さらに、トナー画像が定着された記録用紙PAは、一例として排紙部15(図1参照)に排出される。
なお、図1に示すように、記録用紙PAの両面に画像を形成する場合は、定着装置80で表面に画像定着を行った後、記録用紙PAを両面搬送路29に送り込むことで、記録用紙PAの先端と後端を入れ替える。そして、再度、記録用紙PAを搬送路28に送り込んで、記録用紙PAの裏面の画像形成及び定着を行う。
<現像装置>
次に、現像装置100について説明する。
図3に示すように、現像装置100は、現像剤Gが収容されたハウジング102と、現像ロール106と、現像ロール106の外周面に保持された現像剤Gの層の厚みを規制するトリマー108と、現像剤Gを現像ロール106に供給する第1オーガ109と、第1オーガ109共に現像剤Gを循環搬送する第2オーガ111と、を有している。
現像剤Gは、一例として、負極性に帯電する帯電粒子の一例としてのトナーTと、正極性に帯電する磁性粒子の一例としての磁性キャリアCAと、を含む2成分現像剤で構成されている。
ハウジング102は、容器本体103と、容器本体103の上部を塞ぐカバー部材104とを含んで構成されている。また、ハウジング102は、現像ロール106が収容される現像ロール室122と、現像ロール室122の下方側に設けられた第1攪拌室123と、第1攪拌室123に隣接する第2攪拌室124と、を有している。
容器本体103は、Z方向に見て、−Y方向に凸となるように2箇所で湾曲した底壁103Aと、底壁103Aの−X方向の端部に形成された取付部103Bと、底壁103AのX方向の端部に立設された側壁103Cと、底壁103Aの中央部に立設され第1攪拌室123と第2攪拌室124とを仕切る仕切壁103Dと、を含んで構成されている。
カバー部材104は、第2攪拌室124上に配置される上壁104Aと、上壁104Aの−X方向の端部から左斜め上方へ延びて現像ロール室122を覆う傾斜壁104Bと、傾斜壁104Bの上端に連続して湾曲した湾曲壁104Cと、を有している。
現像ロール106は、円柱状に形成され容器本体103にZ方向に沿って設けられたシャフト106Cを介して固定支持された磁力発生部の一例としてのマグネットロール106Aと、円筒状に形成されマグネットロール106Aの外側で回転可能に支持された現像剤保持部材の一例としての現像スリーブ106Bと、を有している。即ち、マグネットロール106Aは、現像スリーブ106Bの内側に配置されている。
マグネットロール106Aは、シャフト106Cに外周面(周方向)に沿って複数の磁極が設けられており、現像剤Gを引き付ける磁力を発生する。
現像スリーブ106Bは、一例として、アルミニウム製の筒状部材であり、Z方向の両端部に該両端部を塞ぐキャップ状の支持部材(図示省略)が取り付けられ、この支持部材の内側にベアリング(図示省略)が固定されている。そして、このベアリングにシャフト106Cが挿入されることで、マグネットロール106Aに対して現像スリーブ106Bが周方向に回転可能となっている。なお、現像スリーブ106Bは、図示しないモータ及びギヤを含む駆動部によりR方向に回転駆動されるようになっている。
また、現像スリーブ106Bの外周面には、詳細を後述する複数の凹溝110(図4及び図5参照)が形成されている。さらに、現像スリーブ106Bは、感光体72と軸方向を揃えるとともに感光体72の外周面と対向配置されている。なお、本実施形態においては、現像ロール106(現像スリーブ106B)の軸方向はZ方向と一致する。そして、現像スリーブ106Bは、外周面に現像剤Gを保持した状態で感光体72の回転方向とは逆方向(WITH方向)に回転し、感光体72と対向する位置(現像領域)で感光体72の静電潜像(潜像)をトナーTで現像する。
一方、第1攪拌室123には、現像剤Gを攪拌しながら搬送する第1オーガ109が配置されている。第1オーガ109は、Z方向に沿って配置された回転軸109Aと、回転軸109Aの外周に支持されたらせん状の翼部109Bとを有している。また、第1オーガ109は、現像スリーブ106Bの回転方向におけるトリマー108よりも上流側で現像スリーブ106Bと対向配置され、現像スリーブ106Bと回転軸方向(Z方向)が揃えられ、翼部109Bを回転して現像剤Gを回転軸方向に搬送すると共に現像スリーブ106Bに現像剤Gを供給するようになっている。
第2攪拌室124には、現像剤Gを攪拌しながら搬送する第2オーガ111が配置されている。第2オーガ111は、Z方向に沿って配置された回転軸111Aと、回転軸111Aの外周に支持された翼部111Bとを有している。また、第2オーガ111は、第1オーガ109とは逆方向に回転するようになっており、第1オーガ109とともに現像剤Gを循環搬送する。
ここで、トリマー108は、Z方向を長手方向とする板状の部材であり、先端部108Aが現像スリーブ106Bの外周面と対向配置されている。第1攪拌室123内の現像剤Gは、現像スリーブ106B上に保持された状態で、現像スリーブ106BのR方向の回転により搬送される。そして、現像スリーブ106B上に保持された現像剤Gは、現像スリーブ106Bの外周面200Aとトリマー108の先端部108Aとの間へ進入することで層の厚みが規制され、感光体72と対向する現像領域に搬送される。
<現像スリーブ>
つぎに現像スリーブについて説明する。
図4及び図5に示すように、現像スリーブ106Bは、筒体の一例としてのスリーブ本体200と、スリーブ本体200の外周面200Aに形成された現像剤Gを保持搬送可能な複数の凹溝110と、を含んで構成されている。スリーブ本体200は、アルミニウム等の非磁性金属を材料として構成された筒状部材とされている。また、複数の凹溝110は、スリーブ本体200の外周面200Aに軸方向に沿って延びると共に周方向に間隔をあけて形成されている。
本実施形態では、凹溝110の軸方向から見た断面の形状はV字形状とされている。また、図4(B)に示すように、V字の角度の設計値は108°とされている。また、凹溝110は周方向に予め定められたピッチで形成され、本実施形態では全部で64本形成されている。更に、凹溝110の深さHの設計値は95μmとされ、周方向に沿った溝幅Wの設計値は115μmとされている。
なお、「周方向に間隔をあけて形成」とは、図4(C)に示すように、連続して凹溝110が形成されている場合も含まれる。
図5に示すように、現像スリーブ106Bのスリーブ本体200は、軸方向から見た断面が略楕円状の筒状とされている。また、本実施形態では、スリーブ本体200は、φ16mmに対して、長軸L1(長径)と短軸L2(短径)との差が30μmの楕円とされている。即ち、本実施形態のスリーブ本体200は、長軸L1が「16mm+15μm」で短軸L2が「16mm−15μm」が設計値の楕円となっている。なお、図5は判りやすくするため、L1とL2との比を実際よりも大きく図示している(楕円を強調して図示している)。更に、凹溝110の深さを実際よりも大きく図示している(凹溝110を強調して図示している)。
スリーブ本体200の外周面200Aに形成された凹溝110の深さHは、楕円の短軸L2側から長軸L1側に向かって浅くなる周期性をもって、周方向に間隔をあけて形成さている(周期性に関しては後述する図7を参照)。言い換えると、凹溝110は、スリーブ本体200の外周面200Aにおける短軸L2側が深く、長軸L1側に向かって徐々に浅くなっている。なお、凹溝110の深さHにはバラツキがあり、隣接する凹溝110の長軸L1側が浅くなっていない場合もあるが、全体として長軸L1側に向かって浅くなるように形成されている。
(現像スリーブの製造方法)
次に、現像スリーブ106Bの製造方法の一例を説明する。
図6に示す現像スリーブ106Bの製造装置500は、絞型502と引抜型504とを備えている。引抜型504は、引抜開口506の縁部に凹溝110(図4及び図5も参照)を形成するためのV字状の切込部510が周方向に間隔をあけて形成されている。なお、引抜型504の引抜開口506は、スリーブ本体200を楕円形状とするため、断面形状が楕円形状となっている。しかし、切込部510は同一形状で設計されている。
そして、まず絞型502にて素管440を絞り加工して一次減径した減径管442を成型する。次に、絞型502にて絞り加工された減径管442を、引抜型504に通過させることで、楕円形状のスリーブ本体200の外周面200Aに複数の凹溝110が形成された現像スリーブ106Bが成型される。
なお、引抜工程において、引抜型504の引抜開口506を楕円形状とすることで、成形時のひずみにより、現像スリーブ106Bのスリーブ本体200の外周面200Aにおける楕円の短軸L2側の圧力が高くなり、長軸L1側の圧力が低くなる。そして、この圧力差によって、外周面200Aの短軸L2側の凹溝110は設計値に対して深くなり、長軸L1側の凹溝110は設計値に対して浅くなる。
なお、本説明では、現像スリーブ106Bは引抜成型にて製造されたが、これに限定されるものではない。押出成型によって製造してもよい。
(測定及び画像)
つぎに、本実施形態の現像スリーブ106Bと次に説明する比較例の現像スリーブ800(図10参照)とにおける周方向の直径の変動と凹溝の深さの変動とを測定した結果(図7と図11参照)と、本実施形態の現像スリーブ106Bと比較例の現像スリーブ800とを用いて形成したハーフトーン画像(図8参照)を比較した結果について説明する。
[比較例]
まず、比較例の現像スリーブ800について説明する。
本実施形態では、図5に示すように、成形後に軸方向から見たスリーブ本体200の断面形状が楕円となるように作成した(設計値は長軸L1が「16mm+15μm」で短軸L2が「16mm−15μm」の楕円)。これに対して、比較例では、成形後のスリーブ本体が真円となるように作成する(設計値はφ16mmの真円)。製造方法は、本実施形態と同様であるが、引抜型504の引抜開口506は、真円形状のスリーブ本体とするため真円となっている。
そして、比較例のように真円となるように成形した場合、引抜工程において、うねりが生じ、うねりによって周方向に周期的な圧力ムラが生る。この周方向の周期的な圧力ムラによってスリーブ本体の直径に周方向に周期性の変動(振れ)が生じると共に、凹溝の深さに周方向に周期性のムラが生じる。そして、これらスリーブ本体の直径の変動(振れ)の位相と凹溝の深さの位相とが同期するので、スリーブ本体の外周面に形成された凹溝が直径の長い部位で深くなり、直径が短い部位で深くなる。
なお、図10に示すように、比較例の現像スリーブ800は、本実施形態のように軸方向から見た断面形状が楕円形状のスリーブ本体802と、このスリーブ本体802の外周面802Aに周方向に凹溝810が形成された構成である。そして、設計値に対して直径の長い側、つまり長軸L1側の凹溝810は設計値に対して深くなり、設計値に対して直径の短い側、すなわち短軸L2側に向かって凹溝810は徐々に浅くなっている。
[変動測定結果]
図7と図11とにおける、それぞれ(A)のグラフは、64本の各凹溝110,810の深さHを示し、(B)は現像スリーブ106B,800のスリーブ本体200,802の半径を示している。なお、(A)のグラフの横軸は凹溝の順番を示している。つまり、例えば、横軸の「30」は、基準から30番目の凹溝を示している。そして、この各凹溝の位置(横軸)は(B)のグラフの横軸の測定位置と一致するように揃えられて図示されている。また、In、Center,Outは、現像スリーブ106B,800における軸方向の測定位置を示している。すなわち、Inは軸方向の一端部、Centerは軸方向の中央部、Outは軸方向の他端部が、測定位置であることを示している。
図10に示すように、比較例の現像スリーブ800の場合は、周方向における凹溝810の深さの位相とスリーブ本体802の半径の変動(振れ)の位相とが略一位置している(略同位相となっている)。すなわち、凹溝110の深さは、短軸L2側から長軸L1側に向かって深くなるような周期性をもって形成されている。よって、図10に示すように、スリーブ本体802の外周面802Aに形成された凹溝810は、直径の短い側(短軸L2側)で浅く、直径の長い側(長軸L1側)で深くなっていることが判る。
これに対して、本実施形態の現像スリーブ106Bの場合は、図7に示すように、周方向における凹溝110の深さの位相とスリーブ本体200の半径の変動(振れ)の位相とがずれている(略逆位相となっている)。すなわち、凹溝110の深さは、短軸L2側から長軸L1側に向かって浅くなるような周期性をもって形成されている。よって、図5に示すように、スリーブ本体200の外周面200Aに形成された凹溝110が短軸L2側で深くなり、長軸L1側で浅くなっていることが判る。
なお、この測定結果は実際に引抜成形によって製造された現像スリーブ106B,800の実測値である。よって、製造誤差など各種誤差が含まれている。例えば、凹溝110、810の深さHはバラツキがあり、本実施形態では、隣接する凹溝110の長軸L1側が浅くなっていない場合もあるが、全体として長軸L1側に向かって浅くなっている。同様に、比較例では、隣接する凹溝810の長軸L1側が深くなっていない場合もあるが、全体として長軸L2側に向かって深くなっている。
[画像]
図8(A)は、本実施形態の現像スリーブ106B(図5及び図7参照)を用いて形成したハーフトーン画像を示している。図8(B)は、比較例の現像スリーブ800(図9及び図10参照)を用いて形成したハーフトーン画像を示している。なお、記録用紙PAの搬送方向は矢印Sで示している。
ここで、現像スリーブ106Bの外周面に現像剤Gを保持して搬送する量を「搬送量」とし、現像によって現像スリーブ106Bから感光体72に供給される現像剤G(トナーT)の量を「供給量」とする。そして、深い凹溝は現像剤の搬送力が大きくなり、これにより搬送される現像剤量が多くなり画像濃度が上昇する(感光体72への供給量が上昇する)。一方、浅い凹溝は現像剤の搬送力が小さくなり、これによって搬送される現像剤量が少なくなり画像濃度が低下する(感光体72への供給量が低下する)。また、現像スリーブ106B,800と感光体72との隙間、所謂現像ギャップ(図3のGAPを参照)が狭いと画像濃度が上昇し(感光体72への供給量が上昇し)、広いと画像濃度が低下する(感光体72への供給量が低下する)。
そして、比較例の現像スリーブ800(図9及び図10参照)では、長軸L1側が感光体72(図3参照)と対向する位置となった場合は現像ギャップ(図3参照)が狭くなり且つ現像剤G量(搬送量)が多くなり、相乗効果によって画像濃度の上昇が顕著になる。しかし、短軸L2側が感光体72(図3参照)と対向する位置となった場合は現像ギャップ(図3参照)が広くなり且つ現像剤量(搬送量)が少なくなり、相乗効果によって画像濃度低下が顕著になる。したがって、図8(B)に示すように、画像濃度のムラ(縞模様)が顕著になる。
これに対して、本実施形態の現像スリーブ106B(図5及び図7参照)では、楕円の長軸L1側が感光体72(図3参照)と対向する位置となった場合は現像ギャップ(図3参照)が狭くなるが現像剤量(搬送量)が少なくなり、逆に短軸L2側が感光体72(図3参照)と対向する位置となった場合は現像ギャップ(図3参照)が広くなるが現像剤量(搬送量)が多くなる。したがって、図8(A)に示すように、感光体72への供給量のムラが相殺され、画像濃度のムラが抑制される。
<作用効果>
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
楕円の現像スリーブ106B(スリーブ本体200)を作成することで、楕円の長軸L1側の凹溝110が浅くなり、短軸L2側の凹溝110が深くなる。そして、現像スリーブ106Bにおける楕円の長軸L1側は現像ギャップが狭くなるが現像剤量(搬送量)が少なくなり、逆に短軸L2側は現像ギャップが広くなるが現像剤G量(搬送量)が多くなる。したがって、感光体72への供給量のムラが相殺され、画像濃度のムラが抑制される。つまり、現像スリーブに起因する画像品質の低下が抑制される(画像品質が確保される)。また、別の観点から説明すると、成形後に現像スリーブ106Bを絞加工等の後加工を行うことなく、画像品質が確保される。
なお、比較例の成形後の現像スリーブ106Bを後加工によって、長軸L1を短く且つ短軸L2を長くする加工して、現像スリーブ106Bと同様に、凹溝810の深さが短軸側から長軸側に向かって浅くなるようにしてもよい。
本実施形態では長軸L1と短軸L2との差は30μmが設計値であるが、これに限定されるものではない。凹溝110の深さHや深さHの変動量等、或いは画像特性や製造装置の特性等によって、適宜決定すればよい。なお、本実施形態の場合、長軸L1と短軸L2との差が50μm以上とした場合、ハーフトーン画像に濃度ムラが発生することが確認されている。
<変形例>
つぎに本実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、図3に示すように、現像スリーブ106Bのスリーブ本体200の外周面200Aに形成された凹溝110はV字形状とされていたが、これに限定されるものではない。例えば、図9に示す現像スリーブ107Bのスリーブ本体201の外周面201Aに形成された凹溝113のようにU字形上(略矩形状)であってもよい。
<その他>
尚、本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、上記実施形態では、現像方式は二成分現像方式であったが、これに限定されるものでない。磁性一成分現像方式にも適用可能である。
また、画像形成装置の構成としては、上記実施形態の構成に限られず種々の構成とすることが可能である。更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。