JP5904896B2 - レンズ検査装置およびレンズ検査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、レンズ検査装置およびレンズ検査方法に関する。
従来、レンズの検査の一つとして面間偏心の検査が行われている。
面間偏心の検査方法としては、レンズ面の反射光束を測定する方法や、触針などによりレンズ面を3次元計測する方法などが提案されているが、いずれも測定時間が長いという問題がある。このため、面間偏心を短時間で検査する方法が強く求められてきた。
例えば、特許文献1には、測定時間の短縮が可能なレンズ検査装置として、被検レンズの透過光の波面収差を測定することにより面間偏心の合否判定を行うレンズ総合検査機が記載されている。
特許文献1に記載の技術では、透過波面の位相データをツェルニケ(Zernike、ゼルニケ。本明細書では、以下、「ゼルニケ」に統一する)の多項式展開によって近似すると、多項式展開の係数であるゼルニケ係数が、6つの偏心量の1次結合で表されることを利用し、連立方程式を解くことで面間偏心を求めている。この連立方程式の係数行列は、各ゼルニケ係数を各偏心量で偏微分した偏微分係数になっており、特許文献1では、被検レンズの設計値に基づいてコンピュータシミュレーションプログラムから計算される値を利用している。
特許第3206984号公報
しかしながら、上記のような従来のレンズ検査装置およびレンズ検査方法には、以下の問題があった。
特許文献1に記載の技術では、面間偏心量を求める連立方程式の係数行列として、被検レンズの設計値に基づいてコンピュータシミュレーションプログラムから計算される値を利用している。
このような光学シミュレーションは、理想的な測定系を前提としているため、実際の波面収差の測定系における波面収差の挙動とのずれが無視できない場合には、測定精度が悪化してしまうという問題がある。
測定系にも、例えば、測定光学系のレンズの製作誤差や配置誤差など、波面収差の誤差要因がある。このため、測定系における測定光束の波面は、光学シミュレーションの波面収差の挙動とは異なる挙動を示す可能性がある。このような誤差要因は、レンズ検査装置ごとにばらつくため、複数のレンズ検査装置間の機差が発生する原因となる。
また、測定光束の波面を表す位相データを多項式展開する空間領域が、実際の測定系と光学シミュレーションとで一致しないために、実際の波面の挙動が光学シミュレーションと一致しない場合もある。
例えば、測定系で検出される光束のうち周辺部は輝度が低下していたり、歪みが生じていたり、光束が真円でなかったりする。さらに、このような周辺部では、画像データを取得する撮像光学系のディストーションの影響もある。
このため、光束の周辺まで含めてゼルニケ多項式によるフィッティングを行うと各項の係数が不安定になりがちである。
一般的には光束に円形のマスクをかけてその内部のみで多項式展開するが、この空間領域を狭くしすぎると、多項式展開のフィッティング誤差が大きくなってしまうおそれがある。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、レンズの面間偏心の検査を迅速かつ高精度に行うことができるレンズ検査装置およびレンズ検査方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明のレンズ検査装置は、単レンズからなる被検レンズの第1面と第2面との面間偏心量の検査を行うレンズ検査装置であって、前記被検レンズを検査基準位置に保持するレンズ保持部と、前記被検レンズの透過波面を測定する波面測定部と、該波面測定部で測定された前記透過波面をゼルニケ多項式近似して、ゼルニケ係数を算出するフィッティング演算部と、該フィッティング演算部により算出された前記ゼルニケ係数のうち、回転方向の次数が1または−1であって放射方向の次数が互いに異なる次数に対応する2種類のゼルニケ係数Z、Z(ただし、p、qは、p≠qの整数)を変数とし、係数が予め実測値により校正された1次式によって、前記面間偏心量に対応する偏心判定値を算出する判定値算出部と、を備える構成とする。
また、本発明のレンズ検査装置では、前記レンズ保持部を、前記検査基準位置と、該検査基準位置から前記波面測定部の測定光軸に直交する方向にずらされた複数の校正用測定位置との間で切り替え可能に移動する軸直角移動部と、前記校正用測定位置において測定された透過波面から算出された前記ゼルニケ係数Z、Zに基づいて前記1次式の係数を算出する係数算出部と、校正用レンズを用いた校正動作の制御を行う校正モードと、前記被検レンズを検査する検査動作の制御を行う検査モードとが切り替え可能に設けられた制御部と、をさらに備え、前記制御部は、前記校正モードでは、前記軸直角移動部によって、前記校正用レンズを前記校正用測定位置に移動させ、前記校正用測定位置を複数の測定位置において、前記波面測定部による透過波面を測定と、前記フィッティング演算部による前記ゼルニケ係数の算出と、をそれぞれ行わせて、前記フィッティング演算部から該ゼルニケ係数のうち前記ゼルニケ係数Z、Zからなる2次元データの組(Z、Z)を取得して、前記係数算出部に送出し、前記係数算出部は、前記制御部が前記校正モードにおいて取得した前記校正用レンズの前記2次元データの組(Z、Z)の分布を直線近似して傾きを算出し、該傾きを前記1次式の係数として前記判定値算出部に設定することが好ましい。
また、本発明のレンズ検査装置では、前記レンズ保持部をその保持中心回りに回転移動する回転移動部と、前記レンズ保持部を回転移動して測定された前記偏心判定値の分布を解析して、測定系の収差であるシステム収差を推定し、該システム収差を除去するための補正値を算出して前記判定値算出部に送出する補正値算出部と、を備え、前記制御部は、前記校正モードでは、前記軸直角移動部による移動と前記回転移動部による回転移動とを組み合わせて、複数の移動位置および複数の回転位置において、前記波面測定部による透過波面を測定と、前記フィッティング演算部による前記ゼルニケ係数の算出とをそれぞれ行わせて、前記回転位置の情報とともに前記フィッティング演算部から前記校正用レンズの前記2次元データの組(Z、Z)を取得して、前記係数算出部に送出し、該係数算出部が前記校正用レンズの前記2次元データの組(Z、Z)に基づいて前記1次式の係数を算出して前記判定値算出部に設定した後に、該判定値算出部に前記校正用レンズの前記2次元データの組(Z、Z)を送出し、該2次元データの組(Z、Z)を用いて、前記判定値算出部に算出させた前記偏心判定値の分布を取得して、前記回転位置の情報とともに、前記補正値算出部に送出して、前記補正値を算出させ、前記検査モードでは、前記レンズ保持部に前記被検レンズが保持された後に、前記軸直角移動部によって、前記レンズ保持部を前記検査基準位置に位置づけ、該検査基準位置において、前記波面測定部による透過波面を測定と、前記フィッティング演算部による前記ゼルニケ係数の算出とをそれぞれ行わせて、前記フィッティング演算部から前記被検レンズの前記2次元データの組(Z、Z)を取得し、前記判定値算出部に、前記被検レンズの前記2次元データの組(Z、Z)を送出し、前記判定値算出部は、前記検査モードで偏心判定値を算出する場合に、前記被検レンズの前記2次元データの組(Z、Z)を用いて前記1次式による偏心判定値を算出してから、前記補正値算出部から送出された前記補正値による補正を施したものを偏心判定値として算出することが好ましい。
また、本発明のレンズ検査装置では、前記判定値算出部が用いる前記1次式の係数は、単レンズからなる校正用レンズを前記検査基準位置から前記波面測定部の測定光軸に直交する方向に移動し、前記波面測定部によって前記校正用レンズの透過波面を複数の移動位置において測定し、測定された前記校正用レンズの各透過波面から前記フィッティング演算部により前記ゼルニケ係数を算出し、該ゼルニケ係数のうち、前記ゼルニケ係数Z、Zからなる2次元データの組(Z、Z)の分布を直線近似したときの傾きであることが好ましい。
本発明のレンズ検査方法は、単レンズからなる被検レンズの第1面と第2面との面間偏心量の検査を行うレンズ検査方法であって、前記被検レンズを検査基準位置に保持して、前記被検レンズの透過波面を測定する波面測定工程と、該波面測定工程で測定された前記透過波面をゼルニケ多項式近似して、ゼルニケ係数を算出するフィッティング演算工程と、該フィッティング演算工程により算出された前記ゼルニケ係数のうち、回転方向の次数が1または−1であって放射方向の次数が互いに異なる次数の2種類のゼルニケ係数Z、Z(ただし、p、qは、p≠qの整数)を変数とし、係数が予め実測値により校正された1次式によって、前記面間偏心量に対応する偏心判定値を算出する判定値算出工程と、を備える方法とする。
また、本発明のレンズ検査方法では、前記波面測定工程に先行して、校正用レンズを、前記検査基準位置から透過波面の測定光軸に直交する方向にずらした校正用測定位置を含む複数の測定位置に保持して、前記校正用レンズの透過波面を測定する校正用波面測定工程と、前記測定位置ごとに測定された前記透過波面をゼルニケ多項式近似して、ゼルニケ係数を算出する校正用フィッティング演算工程と、該校正用フィッティング演算工程で算出された前記ゼルニケ係数のうち前記ゼルニケ係数Z、Zからなる2次元データの組(Z、Z)を前記測定位置ごとに取得し、前記2次元データの組(Z、Z)の分布を直線近似して傾きを算出し、該傾きを前記判定値算出工程に用いる前記1次式の係数に設定する係数算出工程と、を備える方法とする。
また、本発明のレンズ検査方法では、前記係数算出工程と前記波面測定工程との間に、補正値算出工程を備え、前記校正用波面測定工程では、前記校正用レンズの保持中心回りに回転移動することにより、回転位置を変えた透過波面の測定を併せて行い、前記補正値算出工程では、前記係数算出工程で取得された前記2次元データの組(Z、Z)を用いて、前記回転位置ごとに、前記1次式による前記偏心判定値を算出して、前記校正用レンズの回転移動に伴う偏心誤差を含む前記偏心判定値の分布を取得し、該偏心判定値の分布を解析して、測定系の収差であるシステム収差を推定し、該システム収差を除去するための補正値を算出し、前記判定値算出工程では、前記ゼルニケ係数Z、Zを用いて、前記1次式による偏心判定値に、前記補正値による補正を施したものを偏心判定値として算出する方法とする。
本発明のレンズ検査装置およびレンズ検査方法によれば、透過波面の測定値からゼルニケ係数Z、Zを求め、係数が予め実測値により校正された1次式によって、面間偏心量に対応する偏心判定値を算出するため、レンズの面間偏心の検査を迅速かつ高精度に行うことができるという効果を奏する。
本発明の第1の実施形態のレンズ検査装置の構成を示す模式的なシステム構成図である。 レンズの軸について説明する模式的な断面図である。 レンズの軸の傾斜と面間偏心との関係を示す模式図である。 レンズの面間偏心について説明する模式的な断面図である。 本発明の第1の実施形態のレンズ検査装置のレンズ保持部の構成を示す模式的な構成図である。 本発明の第1の実施形態のレンズ検査装置の制御部の機能構成を示す機能ブロック図である。 本発明の第1の実施形態のレンズ検査方法の工程フローを示すフローチャートである。 本発明の第1の実施形態のレンズ検査方法の校正工程の工程フローを示すフローチャートである。 校正に用いる2次元データの組(Z、Z)、(Z、Z)の散布図の一例を示すグラフである。 本発明の第2の実施形態のレンズ検査装置の制御部の機能構成を示す機能ブロック図である。 本発明の第2の実施形態のレンズ検査方法の校正工程の工程フローを示すフローチャートである。 補正値算出工程における補正値の算出方法を説明する模式的なグラフである。 本発明の第3の実施形態のレンズ検査装置の構成を示す模式的なシステム構成図である。 本発明の第3の実施形態のレンズ検査装置の制御部の機能構成を示す機能ブロック図である。
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態のレンズ検査装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態のレンズ検査装置の構成を示す模式的なシステム構成図である。図2は、レンズの軸について説明する模式的な断面図である。図3は、レンズの軸の傾斜と面間偏心との関係を示す模式図である。図4は、レンズの面間偏心について説明する模式的な断面図である。図5は、本発明の第1の実施形態のレンズ検査装置のレンズ保持部の構成を示す模式的な構成図である。図6は、本発明の第1の実施形態のレンズ検査装置の制御部の機能構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、本実施形態のレンズ検査装置1は、単レンズからなる被検レンズ7の面間偏心量の検査を行う装置である。
まず、レンズ検査装置1で検査可能な面間偏心について簡単に説明する。
レンズ面の姿勢は球心の位置で代表できる。非球面レンズの場合にも、レンズ中心部は近似的に球面とみなせる(以下、近軸球面と称する)ため、近軸球面の球心の位置で代表できる。
例えば、図2に示すように、第1面100aと、第2面100bとを有するレンズ100では、第1面100aの球心Oと第2面100bの球心Oとを通る直線Oは、レンズの姿勢を表すレンズの軸Oと考えることができる。
なお、図2は模式図であり見やすいように寸法は誇張している(図3、4も同様)。
図示略のレンズ保持枠に固定する際の位置決め面、例えば、光軸に沿う方向の位置決め用の平面部100cがレンズ100に形成されている場合には、位置決め面の加工誤差等によって、レンズ保持枠の基準軸線Oに対してレンズ100の軸Oが傾いて保持されることになり、光学性能の劣化につながる。すなわち、レンズの軸Oが基準軸線Oに対して許容範囲を超える傾き量で倒れていれば、レンズ保持枠に保持された光学ユニットとして光学性能が確保できなくなり、不良品となる。そのため、レンズの軸Oの基準軸線Oに対する傾きθが規定内かどうかの検査を実施する必要がある。ここで、傾きθは、平面部100cで決まる基準平面Hに直交する軸線に対する傾きとして求めることができる。
このようなレンズ100の軸Oの傾きθによる偏心は、基準軸線Oに直交する方向(基準平面Hに沿う方向)における各レンズ面間のシフト偏心と等価であり、幾何学的に換算することができる。
例えば、第1面100aの曲率半径(非球面の場合には近軸曲率半径)がr、第2面100bの曲率半径(非球面の場合には近軸曲率半径)がr、第1面100aと第2面100bと間の中心部の肉厚がd12であるとする。このとき、球心(非球面の場合は近軸球面の球心)O、O、レンズの軸Oと第1面100a、第2面100bと交点a、b、および基準平面Hとの関係は、図3に示す三角形で表される。
このため、基準平面Hに沿う方向における球心O、Oの間のシフト偏心の差は、Δ=(r−r−d12)・sinθとなる。
そこで、本実施形態では、図3、4に示すように、このシフト偏心で表した第1面100aと第2面100bとの間の相対的な偏心量Δを、レンズ100の面間偏心と称する。
レンズ検査装置1の概略構成は、マッハツェンダー型の干渉計4(波面測定部)と、干渉計4の動作を含む測定動作を制御するとともに干渉計4から取得した干渉縞画像を解析してレンズ検査のための演算処理を行う制御ユニット5(制御部)とを備える。
被検レンズ7の種類は、特に限定されず、凸レンズでもよいし、凹レンズでもよい。また、被検レンズ7の各レンズ面の面形状も特に限定されず、球面でもよいし、非球面でもよい。
干渉計4は、レーザー11からの光を、可変NDフィルター43を通過させた後、ビームエキスパンダー12によりその径を広げ、明るさ絞り15を通して、ビームスプリッター16で2つの光路R、Sに分け、別のビームスプリッター24でこれらの光路を再び合成し、結像レンズ25を介してスクリーン10上に干渉縞を結像させるものである。
結像レンズ25とスクリーン10との間には、アライメント絞り26が設けられている。
また、ビームスプリッター24によって合成された光路の光軸上には、スクリーン10を介して、結像レンズ25と反対側に、補助接写レンズ27、ズームレンズ28、および撮像素子29がこの順に配置されている。
ビームエキスパンダー12は、レーザー11側から、凸レンズ13と、ピンホール44と、コリメータ14とが同軸に配置されている。これにより、可変NDフィルター43を透過して光量が調整されたレーザー光は、凸レンズ13によって集光された後、ピンホール44から出射され、コリメータ14によって拡径された平行光束とされる。
コリメータ14とビームスプリッター16との間には、レーザー光の光束径を決める明るさ絞り15が配置されている。なお、明るさ絞り15は、被検レンズ7となるべく共役な位置に配置することが好ましい。
凸レンズ13は、焦点距離の異なる複数のものが、図示略のスライド機構により切り替え可能に設けられている。
光路R上には、ビームスプリッター16からビームスプリッター24に向かって、シャッター33、ミラー17、入射レンズ8、基準レンズ6、集光レンズ22がこの順に配置されている。
基準レンズ6は、参照波面を形成するためのものであり、本実施形態では、面間偏心量が評価できるように、被検レンズ7と同じ設計条件で、高精度に形成されたレンズを用いている。すなわち、略設計値通りに製造されて、面間偏心量がないか、あっても微小量であり、波面収差も設計値に略一致しているレンズを採用している。
ただし、例えば、従来と同様な面間偏心の測定を行って、被検レンズ7のうちから、面間偏心量が十分小さいものを見つけ出しておき、これを基準レンズ6として用いることも可能である。
また、基準レンズ6は必ずしも被検レンズ7と同一の面形状・同一の肉厚・同一の屈折率でなくてよい。干渉縞が生じ、その干渉縞本数が解析可能な本数内(例えば数10本程度など、干渉縞の識別が可能な範囲)であればよい。例えば被検レンズ7が作りにくい形状の場合、上記の範囲で基準レンズ6の形状・肉厚・屈折率を適宜変更してもよい。
基準レンズ6と被検レンズ7とが回転対称な形状で、解析可能な干渉縞は生ずるようになっていれば、偏心は求めることができる。
また、光路S上には、ビームスプリッター16からビームスプリッター24に向かって、シャッター32、ミラー18、入射レンズ9、被検レンズ7、集光レンズ23がこの順に配置されている。
ただし、入射レンズ8(9)は、レーザー11からの光を集光光束として基準レンズ6(被検レンズ7)に入射させるもので、基準レンズ6(被検レンズ7)が凹レンズの場合のみ光路R(S)中に配置される。
このため、入射レンズ8(9)は、基準レンズ6(被検レンズ7)が凸レンズの場合に光路R(S)から退避できるように、例えば、図示略の保持部材に設けられたバイヨネットマウント等のレンズマウントに着脱可能に固定されるか、またはスライダ方式やレボルバ方式による可動機構に保持されている。
また、本実施形態では、入射レンズ8、9はそれぞれ光路R、Sの光軸O、O(波面測定部の測定光軸)に沿って移動可能に保持されている。このため、入射レンズ8、9は被検レンズ7の各レンズ面の有効径を十分カバーするような最適な光軸O、O上の位置に配置することができる。
入射レンズ8(9)を光路中に配置した場合には、被検レンズ7に対する共役な位置も移動するため、明るさ絞り15は、例えば、凸レンズ13とコリメータ14との間に形成される共役な位置45に配置することが好ましい。
また、レンズ検査装置1では、干渉計4を用いて基準レンズ6の透過光束と被検レンズ7の透過光束による干渉縞を形成し、周知のフリンジスキャン法によって、被検体の透過波面を測定する。このため、干渉計4では、光路Sの光路長を微小変化させることができるように、ミラー18はピエゾ素子19により、ミラー18の法線方向に微小移動可能に保持されている。
光路R、S上に形成されたこれらの光学系は、ピエゾ素子19によって光路Sの光路長を微小に変更できる点を除いて、等価に作られている。このため、被検レンズ7の基準レンズ6に対する光路差、より正確には、被検レンズ7の光路で生ずる波面収差と基準レンズ6の光路で生ずる波面収差との差に対応した干渉縞がスクリーン10上に結像されるようになっている。
スクリーン10は、レーザーのスペックルパターンを避けるため、毎秒数回回転している。
被検レンズ7(基準レンズ6)は、図5に示すように、一方のレンズ面である第2面7b(6b)を集光レンズ23(22)に向け、他方のレンズ面である第1面7a(6a)をミラー17(図1参照)側に向けた状態で、後述するレンズ保持部20の保持部に対して光軸O(O)に沿う方向および光軸O(O)に直交する方向に位置決めされた状態で保持されている。
本実施形態では、光軸O(O)に沿う方向の位置決めを行うため、第2面7b(6b)の外周側に隣接して、位置決め平面部7c(6c)が形成されている。位置決め平面部7c(6c)は、レンズの軸に直交する平面を目標として形成されているが、一般には加工誤差が含まれている。
本実施形態では、光路Sにおいてレンズ保持部20が配置された位置では、光路Sの光軸Oが鉛直軸に沿っており、光路Rにおいてレンズ保持部20が配置された位置では、光路Rの光軸Oが水平方向に沿っている。このため、被検レンズ7は、レンズ保持部20上に載置されているが、基準レンズ6は、図示略の押えバネ等で、位置決め状態が保持されている。
レンズ保持部20は、被検レンズ7(基準レンズ6)を径方向および軸方向に位置決めして保持するものので、径方向の保持中心位置となる保持中心軸線Pが光軸O(O)と平行となるように、移動ステージ21の基準面21a上に着脱可能に固定されている。
レンズ保持部20の保持部は、保持中心軸線Pに直交する平面からなる軸方向保持面20aと、保持中心軸線Pに向かって進退する径方向保持部20bとを備える。
移動ステージ21は、図示略の保持部材に固定され、レンズ保持部20を光軸O(O)に直交する2軸方向に移動可能に保持するXYステージ21A(軸直角移動部)と、XYステージ21Aの可動部に固定され、レンズ保持部20を保持中心軸線P回りに回転移動可能に保持する回転ステージ21B(回転移動部)とを備える。
移動ステージ21は、図6に示すように、後述する制御ユニット5からの制御信号によって駆動されるようになっている。
レンズ保持部20は、保持する被検レンズ7(基準レンズ6)の形状に合わせて複数のものが用意されている。各レンズ保持部20は、移動ステージ21の基準面21aから被検レンズ7(基準レンズ6)の第1面7a(6a)の面頂までの高さHが、被検レンズ7(基準レンズ6)の種類ごとに異なる測定上の最適の高さとなるように設定されている。
ここで、測定上の最適の高さとは、レンズ保持部20を基準面21aに固定したとき、被検レンズ7(基準レンズ6)の第1面7a(6a)および第2面7b(6b)の有効径を光束が十分覆うことができ、かつ、被検レンズ7(基準レンズ6)通過後の光束が集光レンズ23(22)によってケラレることなく通過し、かつ、被検レンズ7(基準レンズ6)付近の位置とスクリーン10とが光学的に共役となるような高さである。
このため、異なる種類の被検レンズ7(基準レンズ6)を測定する場合には、本実施形態では、その種類に応じたレンズ保持部20に被検レンズ7(基準レンズ6)を保持させて、移動ステージ21の基準面21aに固定するだけでよく、移動ステージ21の光軸O(O)に沿う方向の位置は、被検レンズ7(基準レンズ6)の種類が変わっても変更する必要がなくなる
なお、「被検レンズ7(基準レンズ6)付近の位置」は、干渉縞をより鮮明に観察したい位置に応じて適宜設定することができる。例えば、第1面7a(6a)の面のうねりを明瞭に観察するためには、第1面7a(6a)の位置に合わせればよく、同様に第2面7b(6b)に設定してもよい。あるいは、第1面7a(6a)と第2面7b(6b)との中間の一定位置に設定してもよい。
スクリーン10は、光軸に沿う方向の位置が調節可能に設けられている。このため、スクリーン10は、被検レンズ7付近の位置と共役になる位置の近傍で、かつ、測定光学系の歪曲収差が小さくなる位置に設置することが可能である。
すなわち、干渉計4の測定光学系である集光レンズ23(22)、入射レンズ9(8)、結像レンズ25においても、レンズ設計上の収差がある程度発生することは避けられないが、特に歪曲収差は、後述する波面収差のフィッティングの精度を悪化させる要因となる。
そこで、予め、全光学系の光線追跡を行って歪曲収差が最小となる光軸上の位置が、被検レンズ7付近の位置と共役になる位置からどれだけ移動した位置になるか求めておき、そのような位置にスクリーン10を移動する微調整を行うことが好ましい。
このとき、被検レンズ7付近の位置とスクリーン10との共役関係は多少崩れてもよい。
補助接写レンズ27は、スクリーン10に結像された干渉縞を拡大するものである。
ズームレンズ28は、補助接写レンズ27で拡大された干渉縞画像を適宜の大きさに変換するものであり、補助接写レンズ27とズームレンズ28とは、ほぼアフォーカルな光学系を構成している。
なお、アライメント絞り26と補助接写レンズ27とは、スクリーン10と一体に光軸に沿う方向に移動可能に支持されている。
撮像素子29は、ズームレンズ28によって結像された干渉縞画像を光電変換して、干渉縞の光強度データを取得するものであり、例えばCCDなどの光電変換素子からなり、ズームレンズ28の像面に配置されている。
撮像素子29は、図6に示すように、後述する制御ユニット5のデータ取得部102と通信可能に接続されている。
また、撮像素子29には、光電変換された干渉縞の映像を表示するモニタ30が接続されている。これにより、操作者は、モニタ30で干渉縞画像をリアルタイムで観測することができる。
制御ユニット5の機能構成は、図6に示すように、測定制御部100(制御部)、記憶部101、データ取得部102、フィッティング演算部104、係数算出部105、および判定値算出部106を備える。
制御ユニット5の装置構成は、CPU、メモリ、入出力インターフェース、外部記憶装置などからなるコンピュータからなり、以下に説明する制御、演算を行う制御プログラム、演算プログラムを実行することにより、上記の各機能構成の動作が実現できるようになっている。
測定制御部100は、レンズ検査装置1の動作制御や演算を行うものであり、操作部32、表示部31、移動ステージ21、およびピエゾ素子19と通信可能に接続されている。また、測定制御部100は、制御ユニット5の内部では、記憶部101、データ取得部102、フィッティング演算部104、係数算出部105、および判定値算出部106と通信可能に接続されている。
操作部32は、操作者がレンズ検査装置1の動作に関する操作入力を行ったり、動作制御に必要な数値データ入力を行ったりするためのもので、例えば、キーボード、マウス、操作ボタン等の操作入力手段からなる。
表示部31は、測定制御部100から出力される画像情報、文字情報を表示するものである。測定制御部100から出力される情報としては、例えば、測定制御部100が取得した干渉縞画像、測定制御部100が画像処理した画像、操作者が操作入力を行うため測定制御部100が生成した操作画面画像、被検レンズ7の検査結果の情報、後述する校正モードにおける演算結果の数値やグラフなどを挙げることができる。
測定制御部100は、後述する校正工程に関する動作制御を行う校正モードと、被検レンズ7の検査を行う検査モードとを備えており、操作者は操作部32からの操作入力により、これらのモードを選択的に切り替えることができる。
測定制御部100は、ピエゾ素子19に対しては、校正モードでも検査モードでも、透過波面をフリンジスキャン法によって測定するためのスキャン動作の制御を行う。すなわち、干渉縞の縞本数が最小となるように、基準レンズ6、被検レンズ7の各光路R、S上の位置を調整した後に、一定の位相差を有する複数の干渉縞を取得するためミラー18を微小移動させる制御を行う。
測定制御部100は、移動ステージ21の制御に関して、操作部32からの操作入力に応じて移動ステージ21の移動量を設定する手動移動モードと、予め設定された校正用測定位置に移動ステージ21を移動させる自動移動モードとを備える。校正用測定位置については後述の動作説明の中で説明する。
操作者は、測定制御部100を手動移動モードに設定することにより、操作入力を通じて、移動ステージ21を移動させることができる。例えば、XYステージ21Aを駆動して、レンズ保持部20に保持された基準レンズ6および被検レンズ7の光軸O、Oに直交する方向の位置を検査基準位置に合わせたり、回転ステージ21Bを駆動して、レンズ保持部20を保持中心軸線P回りに回転させたりすることができる。
検査基準位置は、マッハツェンダー型の干渉計4において基準レンズ6および被検レンズ7を用いて、被検レンズ7の波面収差を測定するための干渉縞が取得される位置であり、詳しくは動作説明の中で説明する。
測定制御部100は、検査モードでは、手動移動モードによって移動ステージ21の位置が検査基準位置に設定されたら、手動移動モードを終了し、設定された検査基準位置を維持する制御を行う。
また、測定制御部100は、校正モードでは、手動移動モードによって移動ステージ21の位置が検査基準位置に設定されたら、自動移動モードに移行し、移動ステージ21のXYステージ21Aを駆動して、校正用測定位置に移動させていく制御を行う。そして校正用の干渉縞の取得が終了したら、検査基準位置にXYステージ21Aの位置を戻す制御を行う。
また、測定制御部100は、制御ユニット5内の各部に対して、制御信号を送出したり、データの送受信を行ったりして、それぞれの動作制御を行う。
記憶部101は、測定制御部100から送出されたデータを記憶するものである。記憶部101が記憶するデータとしては、例えば、測定制御部100が動作制御を行うための制御データや、制御ユニット5において、演算処理に必要となるパラメータ、演算対象となるデータ、演算結果のデータなどを挙げることができる。
データ取得部102は、測定制御部100からの制御信号に基づいて、撮像素子29から送出される出力信号を取得し、測定制御部100に送出するものである。測定制御部100に送出された出力信号は測定制御部100を介して記憶部101に記憶される。
波面データ生成部103は、測定制御部100から送出された一定の位相差を有する干渉縞の画像データから、フリンジスキャン法に基づいて、基準レンズ6の透過波面に対する被検レンズ7の透過波面の差分からなる波面データを生成するものである。
フィッティング演算部104は、測定制御部100から送出された波面データをゼルニケ多項式近似して、ゼルニケ係数を算出するものである。
すなわち、光軸を中心とする極座標(ρ,θ)として、波面データをW(ρ,θ)(ただし、iは、1以上K以下の整数。Kは撮像素子29の有効画素数。)で表すとき、この波面データW(ρ,θ)を次式(1)に示す近似関数W(ρ,θ)で表す。
Figure 0005904896
ここで、f(ρ,θ)は、j番目のゼルニケ多項式、Zは、フィッティングによって求めたj番目のゼルニケ多項式に対応するゼルニケ係数、Jは、近似に用いるゼルニケ多項式の数である。
Jの大きさは、被検レンズ7の種類などに応じて、後述する係数算出部105の計算に使用するゼルニケ係数を精度よく計算できる程度の大きさとすればよい。例えば、J=9〜36程度の範囲から選択することが好ましい。
フィッティング演算としては、最小二乗法を採用することができる。
フィッティング演算によって算出された、ゼルニケ係数Zは、測定制御部100に送出され、測定制御部100によって、記憶部101に記憶される。
ここで、係数算出部105、判定値算出部106について説明する前に、ゼルニケ多項式およびゼルニケ係数について簡単に説明する。
ゼルニケ多項式は、nを0以上の整数、mを整数とすると、放射方向の次数nと、回転方向の次数mとにより規定され、それぞれを(n,m)モードのゼルニケ多項式と称する場合がある。ここで、次数nはゼルニケ多項式におけるρの最高次のべき数になっている。
また、各(n,m)モードを適宜の順番に並べたときの配置位置を番号jで表す場合もある。
ゼルニケ多項式の例について、j=1〜16の場合の例を、表1に示す。
Figure 0005904896
ゼルニケ係数は、周知のようにザイデル収差と関係があり、例えば、特許文献1にもその一例が記載されている。本実施形態で重要となるのは、特に面間偏心と関係するゼルニケ係数である。
被検レンズ7に面間偏心があると、透過光の波面収差に、面間偏心に応じた特定の方位角θの向きに偏りが生じる収差成分が発生する。このような収差成分は、光軸に対して回転対称性を有しない収差成分になる。ここで、「回転対称性」とは、収差成分の分布形状を回転軸(光軸)の回りに2π/N(N=2,3,…)だけ回転移動したときに、回転前の分布形状に一致する性質を言い、それぞれNに応じて、N回対称であると言う。
特定の方位角θの向きに偏りが生じる収差成分を表すゼルニケ係数とは、回転方向の次数mが1または−1のゼルニケ係数である。このようなゼルニケ係数に対応するゼルニケ多項式は、表1に例示した範囲では、j=2,3,7,8,14,15に対応するf(ρ,θ)である。このようなゼルニケ多項式を、以下では、回転対称性を有しないという意味で「回転非対称項」と称する。
これらに対応するゼルニケ係数は、[Z,Z]、[Z,Z]、[Z14,Z15]である。ここで、大かっこでくくったもの同士は、同じ次数nを有するゼルニケ多項式に対応するもので、それぞれ、方位角0°成分(X成分)・90°成分(Y成分)、±90°成分同士というように、方位角θとの関係で対をなしていることを示している。
以下、ゼルニケ多項式の次数という場合、特に断らない限り、放射方向の次数nを意味するものとする。
他のゼルニケ係数について簡単に説明すると、Z(定数項)、Z(パワー成分)、Z(3次球面収差)、Z16(5次球面収差)などは、方位角θに依存しない(m=0)収差成分であり、任意角度の回転対称性を有している。
また、[Z,Z]、[Z12,Z13]、[Z10,Z11]、[Z17,Z18]などは、mが±2もしくは±3であるため、それぞれ2回対称もしくは3回対称の成分を表している。厳密には、被検レンズ7に面間偏心があると、これらの収差成分も発生はするが、その量は小さいため、これらを用いて面間偏心を算出すると測定誤差の影響が大きくなる。したがって、これらのゼルニケ係数は面間偏心の算出にはあまり適していない。
次に、回転非対称項に対応するゼルニケ係数と面間偏心との関係について説明する。
被検レンズ7の第1面7a、第2面7bにそれぞれ、測定光軸基準のシフト偏心量δX,1、δY,1、δX,2、δY,2が生じた場合、これらが微小量であるとすることで、近似的に、次式(2a)、(2b)が成り立つ。
Figure 0005904896
ここで、各偏微分係数は偏心に対するゼルニケ係数の変化率、すなわちゼルニケ係数の偏心検出感度を表している。例えば、∂Z/∂δX,1は、シフト偏心量δX,1の変化に対するゼルニケ係数Zの変化率であり、ゼルニケ係数Zの偏心検出感度を表している。偏心量は微小量としているため、各偏微分係数は定数である。特許文献1では、各偏微分係数を被検レンズ7の設計値に基づいたコンピュータシミュレーションプログラムによって算出している。具体的には、例えば、10μmの偏心が発生したときの球面収差からゼルニケ係数の変化率を算出することが可能である。
このため、上記式(2a)、(2b)は、それぞれ定係数の2元連立方程式を表しており、逆行列を計算することで、δX,1、δY,1、δX,2、δY,2について解くことができる。
ここで、∂Z/∂δX,1=∂Z/∂δY,1=C,∂Z/∂δX,2=∂Z/∂δY,2=C,∂Z/∂δX,1=∂Z/∂δY,1=C,∂Z/∂δX,2=∂Z/∂δY,2=Cの関係に注意すると、次式(3a)、(3b)、(3c)、(3d)が成り立つ。
Figure 0005904896
ここで、定数D、D、D、Dは、C、C、C、Cで表される逆行列成分である。
したがって、面間偏心量δ、δ、面間偏心の大きさδが、a、bを定数として、次式(4a)、(4b)、(4c)で表される。
Figure 0005904896
上記式(4a)、(4b)に示すように、面間偏心量δは、それぞれ回転非対称項に対応する次数の異なる2種類のゼルニケ係数Z,Zの1次結合で表され、面間偏心量δは、それぞれ回転非対称項に対応する次数の異なる2種類のゼルニケ係数Z,Zの1次結合で表される。
特許文献1では、上記式(4a)、(4b)において、ゼルニケ係数を干渉縞測定によって求め、定数a、bを、光学シミュレーションを行う汎用のコンピュータシミュレーションプログラムによる計算値によって求めている。
これに対して、本実施形態では、上記式(4a)、(4b)を一般化した次式(5a)、(5b)を仮定し、定係数A、Bを実測データから求める。
δ=A・Z+B・Z ・・・(5a)
δ=A・Z+B・Z ・・・(5b)
すなわち、定係数A、Bは、被検レンズ7のレンズ設計に応じて決まるゼルニケ係数の偏心感度と、レンズ検査装置1ごとに異なる光源、測定光学系等に固有のシステム収差とによって定まる定数である。したがって、被検レンズ7と同じ設計仕様に基づき、被検レンズ7と同様の第1面7a、第2面7b、位置決め平面部7cを有する校正用レンズ70を用いた実測データから推定される係数を使用することが可能である。
なお、上記式(4a)、(4b)は、ゼルニケ係数が偏心量に応じて多少とも変化する(偏心感度を有する)ゼルニケ係数であれば、どんなゼルニケ係数に適用することも可能であるが、ゼルニケ係数の測定にはフィッティング誤差が含まれることを考慮すると、偏心量に対する感度が高いゼルニケ係数を用いることが好ましい。このため、回転非対称項に対応するゼルニケ係数が好ましい。
以下では、一例として波面の傾き成分を表すゼルニケ係数[Z,Z]と、3次のコマ収差を表すゼルニケ係数[Z,Z]を用いた例で説明する。ただし、例えば、それぞれに代えて、ゼルニケ係数[Z,Z]と、5次のコマ収差を表すゼルニケ係数[Z、Z15]を用いることも可能である。
本実施形態では、定係数A、Bを次のようにして求める。
上記式(5a)、(5b)を、それぞれZ、Zについて解くと、次式(6a)、(6b)のように表される。
=(−A/B)・Z+δ/B ・・・(6a)
=(−A/B)・Z+δ/B ・・・(6b)
したがって、面間偏心量δ、δが一定の校正用レンズ70を用いてゼルニケ係数[Z,Z]、[Z,Z]を測定し、Z平面上、Z平面上でそれぞれ測定値の近似直線を求めれば、その近似直線の傾きが(−A/B)である。このため、係数比A/Bは、面間偏心量δ、δが不明でも求まり、かつ、面間偏心が一定の1つの校正用レンズ70から求まることになる。
係数算出部105は、測定制御部100による校正モードの校正用測定位置において測定された透過波面から算出されたゼルニケ係数Z、Z、Z、Zに基づいて係数比A/Bを算出し、算出結果を測定制御部100に送出するものである。
本実施形態では、校正モードにおける校正用レンズ70の測定結果を、2次元データの組(Z、Z)、(Z、Z)で表すとき、その散布図の分布を直線近似して傾きを算出し、この傾きから係数比A/Bを求める。
直線近似演算としては、最小二乗法を採用している。
判定値算出部106は、フィッティング演算部104により算出されたゼルニケ係数Zのうち、回転非対称項であって異なる次数に対応する2種類のゼルニケ係数[Z,Z]、[Z,Z]を変数とし、係数が予め実測値により校正された1次式によって、面間偏心量に対応する偏心判定値を算出するものである。
面間偏心量に対応する偏心判定値とは、面間偏心量と一対一に対応する適宜の判定値を採用することができる。ここで、面間偏心量は発生方位が特定されるベクトル量であってもよいし、単に面間偏心の大きさでもよく、検査の目的によって適宜選択することができる。検査の一例として、面間偏心量自体や、面間偏心量に比例する量を挙げることができる。
本実施形態では、次式(7a)、(7b)に示す偏心判定値Z7,0、Z8,0を採用している。
7,0=Z−(−A/B)・Z ・・・(7a)
8,0=Z−(−A/B)・Z ・・・(7b)
上記式(6a)、(6b)と対照すれば分かるように、偏心判定値Z7,0、Z8,0は、上記式(6a)、(6b)の切片であり、それぞれδ/B、δ/Bに等しいから、面間偏心量に比例する量であり、面間偏心量と一対一に対応する量である。
被検レンズ7として、既知の面間偏心量δ、δを有する校正用レンズを使用する場合、δ(δ)をZ7,0(Z8,0)で割ることによって、係数Bを求めることができる。このようにして係数Bが求めておけば、係数A/Bの値から係数Bも求まるため、上記式(5a)、(5b)によって、面間偏心量δ、δも求まる。
ただし、係数Bを算出しなくても、偏心判定値Z7,0、Z8,0によって、面間偏心量の相対比較が可能となる。このため、面間偏心量の絶対値を必要としないレンズ検査では、偏心判定値Z7,0、Z8,0によってレンズ検査を行うことが可能である。例えば、レンズの加工条件の条件出しをするため、種々の加工条件で加工したレンズの面間偏心の検査を行うような場合には、面間偏心の相対比較ができれば十分である。
次に、本実施形態のレンズ検査装置1の動作について、本実施形態のレンズ検査方法を中心として説明する。
図7は、本発明の第1の実施形態のレンズ検査方法の工程フローを示すフローチャートである。図8は、本発明の第1の実施形態のレンズ検査方法の校正工程の工程フローを示すフローチャートである。図9(a)、(b)は、それぞれ、校正に用いる2次元データの組(Z、Z)、(Z、Z)の散布図の一例を示すグラフである。横軸はゼルニケ係数Z(Z)、縦軸はゼルニケ係数Z(Z)であり、いずれの単位もλ(=633(nm))である。
レンズ検査装置1を用いて被検レンズ7の面間偏心の検査を行うには、図7に工程フローを示すように、校正工程S1を行った後、波面測定工程S2、フィッティング演算工程S3、判定値演算工程S4、および検査結果出力工程S5を、被検レンズ7の個数に応じて必要な回数だけ繰り返す。
操作者は、校正工程S1を開始する前に、操作部32から操作入力を行って、測定制御部100を手動移動モードに設定し、レンズ検査装置1の初期設定を行う。
まず、光路S中のシャッター32を閉じ、光路R中のシャッター33を開き、基準レンズ6をレンズ保持部20に保持させる。この時、基準レンズ6の中心が光軸Oと一致するようにするために、アライメント絞り26を開閉して、スクリーン10上に映る基準レンズ6を通った光束の像(明るい円盤)がアライメント絞り26の開閉と共に均等にケラレるように、移動ステージ21を駆動して、基準レンズ6を保持したレンズ保持部20の位置の微動調節を行う。
次に、光路S中のシャッター32を開き、校正用レンズ70を光路S中のレンズ保持部20に保持させる。
これにより、スクリーン10上に干渉縞が形成され、モニタ30上に表示される。
この状態で、操作者は、レンズ保持部20を光軸O回りに回転させたときの干渉縞の形を観察して、干渉縞の形が、校正用レンズ70の回転と共に形を変えずに回るように、移動ステージ21を駆動して、光路S上のレンズ保持部20の位置の微動調節を行う。
このようにして、レンズ保持部20の回転中心が光軸O上に来るようにすることができる。この位置が、検査基準位置となる。以上で、初期設定が終了する。
操作者は、操作部32から、初期設定が終了したこと、および続いて校正工程S1を行うことを測定制御部100に伝えるための操作入力を行う。
この操作入力により、測定制御部100が校正モードに切り替えられ、校正工程S1が開始される。本工程は、校正用レンズ70を用いた測定によって、係数比A/Bを算出する工程であり、図8に示すように、校正用波面測定工程S11、および校正用フィッティング演算工程S12を必要な回数だけ繰り返した後、係数算出工程S14を行う。
校正用波面測定工程S11では、校正用レンズ70を、検査基準位置から透過波面の測定光軸に直交する方向にずらした校正用測定位置を含む複数の測定位置に保持して、校正用レンズ70の透過波面を測定する。
このとき、校正用レンズ70が非球面レンズの場合には、明るさ絞り15を調整して、校正用レンズ70に照射される光束が近軸光と見なせる程度の光束径に設定する。これにより、非球面は、近似的に球面と見なせる。
測定制御部100には、校正用レンズ70の測定位置についての情報が予め設定されており、本ステップの実行回数をカウントするカウンタ等(以下、測定位置移動用カウンタと称する)によって、本工程を実行する際の光軸Oに直交する方向の測定位置の設定を行い、自動移動モードによってXYステージ21Aを移動させる。
例えば、校正用レンズ70について、測定位置が、検査基準位置P、校正用測定位置P、…、P(ただし、Nは、1以上の整数)のように設定されている場合、測定位置移動用カウンタの値から1つの校正用レンズ70の何番目の測定かを検知して、測定順番に対応する測定位置にXYステージ21Aを移動する。ただし、初回の測定が検査基準位置Pの場合には移動は行われない。
測定制御部100は、XYステージ21Aによる測定位置の移動が完了したら、データ取得部102に制御信号を送出して、撮像素子29から干渉縞の画像データを取得させ、取得した画像データを記憶部101に記憶する。
次に、測定制御部100は、フリンジスキャンを行うため、予め決められた位相量に対応する移動量だけピエゾ素子19を駆動し、各移動位置で、上記と同様に、干渉縞の画像データを取得して、記憶部101に記憶させる。
必要な枚数の干渉縞の画像データが取得されたら、ピエゾ素子19を移動開始前の位置に戻す。また、すべての測定位置での画像データの取得が終了したら、移動ステージ21の位置を検査基準位置に復帰させる。
次に、測定制御部100は、記憶部101に記憶された位相差が異なる複数の干渉縞の画像データを、波面データ生成部103に送出する。
波面データ生成部103では、送出された画像データから、波面データW(ρ,θ)を算出し、測定制御部100に送出する。
測定制御部100は、送出された波面データW(ρ,θ)を記憶部101に記憶させる。
以上で、校正用波面測定工程S11が終了する。
次に、校正用フィッティング演算工程S12を行う。本工程は、測定された透過波面をゼルニケ多項式近似して、ゼルニケ係数を算出する工程である。
測定制御部100は、波面データW(ρ,θ)をフィッティング演算部104に送出する。フィッティング演算部104では、波面データW(ρ,θ)をゼルニケ多項式近似して、ゼルニケ係数を算出する。算出したゼルニケ係数は、少なくとも、偏心判定値の計算に用いるゼルニケ係数の組(Z、Z)、(Z,Z)を測定制御部100に送出し、測定制御部100は記憶部101に予め設定された記憶領域に記憶させる。
以上で、校正用フィッティング演算工程S12が終了する。
次にステップS13を行う。本ステップでは、測定制御部100が、校正に用いる予定のデータがすべて取得されたかどうかを判定し、すべて取得されたと判定された場合に、係数算出工程S14のステップに移行する。
予定されたデータが取得されていない場合には、測定位置移動用カウンタを更新して、校正用波面測定工程S11を行うステップに移行する。
係数算出工程S14は、校正用フィッティング演算工程S12で算出されたゼルニケ係数のうち2次元データの組(Z、Z)、(Z、Z)を測定位置ごとに取得し、2次元データの組(Z、Z)、(Z、Z)の分布を直線近似して傾きを算出し、この傾きを判定値算出工程S4に用いる係数比A/Bに設定する工程である。
測定制御部100は、記憶部101に記憶された2次元データの組(Z、Z)、(Z、Z)を、係数算出部105に送出する。
係数算出部105では、2次元データの組(Z、Z)、(Z、Z)のそれぞれの散布図の分布を最小二乗法によって、次式(8a)、(8b)のように、直線近似して、それぞれの傾きα、αと切片β、βを求める。
=α・Z+β ・・・(8a)
=α・Z+β ・・・(8b)
ここで、α=α、β=βとなるべきであるが、ゼルニケ係数には測定誤差があるため、完全には一致しない。そこで、本実施形態では、次式(9a)、(9b)に示す平均値を求めて、傾きα、切片βとして、測定制御部100に送出する。
α=(α+α)/2 ・・・(9a)
β=(β+β)/2 ・・・(9b)
測定制御部100は、係数算出部105から送出されたαを、判定値算出部106に送出し、判定値算出部106が上記式(7a)、(7b)を計算する際のパラメータである係数比A/Bを、下記式(10)のように設定する。
A/B=−α ・・・(10)
以上で、係数算出工程S14が終了し、校正工程S1が終了する。
なお、校正用レンズ70の面間偏心量δ、δが既知の場合には、本工程において、さらに、δ(δ)をZ7,0(Z8,0)で割って、係数Bを算出し、上記式(10)から係数Aを算出するようにしてもよい。
ここで、校正工程S1で得られる傾きαの実際の測定例について、下記表2に示す。また、測定例1−1における散布図のグラフを図9(a)、(b)に示す。
Figure 0005904896
測定例1−1、1−2、1−3、1−4は、レンズ保持部20の固定位置を光軸回りに90°ずつ変えて測定した例である。校正用レンズ70の面間偏心量は2μmである。
表2に示すように、傾きαはわずかにばらついているものの、略一致している。
また、図9(a)、(b)を参照すると、散布図のデータは、良好に直線近似されていることが分かる。
測定例2−1、2−2は、面間偏心量1μmの校正用レンズ70を用い、校正用レンズ70を光軸に沿う方向に移動してデフォーカスした位置で測定した例である。
測定例3−1、3−2は、面間偏心量30μmの校正用レンズ70を用い、校正用レンズ70を光軸に沿う方向に移動してデフォーカスした位置で測定した例である。
表2に示すように、これら測定例2−1、2−2、3−1、3−2の測定結果も、測定例1−1の傾きαと略一致していることが分かる。
このように、傾きαは、レンズ保持部20の固定位置、レンズ保持部20の光軸に沿う方向の位置、校正用レンズ70の面間偏心量の大きさがばらついても、安定していることが分かる。
次に、図7に示すように、波面測定工程S2を行う。本工程は、校正用レンズ70に代えて、被検レンズ7を検査基準位置に保持し、被検レンズ7の透過波面を測定する工程である。
本工程では、測定制御部100は、検査モードの動作制御を行い、各レンズ保持部20の位置は検査基準位置に固定しておく。
操作者は、検査を行う被検レンズ7をレンズ保持部20に保持させ、検査を開始する操作入力を行う。
これにより、測定制御部100は、上記の校正用波面測定工程S11と同様にして、フリンジスキャン法により被検レンズ7の透過波面の波面データW(ρ,θ)を取得し、記憶部101に記憶させる。
以上で、波面測定工程S2が終了する。
次に、フィッティング演算工程S3を行う。本工程は、波面測定工程S2で測定された透過波面の波面データをゼルニケ多項式近似して、ゼルニケ係数を算出する工程である。
測定制御部100は、被検レンズ7の波面データW(ρ,θ)をフィッティング演算部104に送出する。フィッティング演算部104では、上記の校正用フィッティング演算工程S12と同様にして、波面データW(ρ,θ)をゼルニケ多項式近似して、ゼルニケ係数を算出する。また、算出したゼルニケ係数は、少なくとも、偏心判定値の計算に用いるゼルニケ係数の組(Z、Z)、(Z,Z)を測定制御部100に送出し、測定制御部100は記憶部101に予め設定された記憶領域に記憶させる。
以上で、フィッティング演算工程S3が終了する。
次に、判定値演算工程S4を行う。本工程は、フィッティング演算工程S3により算出されたゼルニケ係数の組(Z、Z)、(Z,Z)を変数とし、係数が予め実測値により校正された1次式によって、面間偏心量に対応する偏心判定値を算出する工程である。
測定制御部100は、上記フィッティング演算工程S3でフィッティング演算部104から送出されたゼルニケ係数の組(Z、Z)、(Z,Z)を、判定値算出部106に送出して、上記式(7a)、(7b)に基づいて、偏心判定値Z7,0、Z8,0を算出させる。
判定値算出部106は、上記式(7a)、(7b)に基づいて、偏心判定値Z7,0、Z8,0を算出して、測定制御部100に送出する。
以上で、判定値演算工程S4が終了する。
次に、検査結果出力工程S5を行う。本工程は、測定制御部100が、判定値算出部106から送出された被検レンズ7の偏心判定値Z7,0、Z8,0を算出して、表示部31に結果を出力する工程である。
測定制御部100は、偏心判定値Z7,0、Z8,0を表示部31に文字情報や画像情報によって表示する。
以上で、検査結果出力工程S5が終了する。
次に、ステップS6を行う。本ステップは、検査を終了するかどうかを判定するステップである。本実施形態では、検査を終了するかどうかは、操作者が操作入力を行うことにより決定する。
操作者は、表示部31に表示された偏心判定値を見て、偏心判定値の大小により、被検レンズ7の合否判定、あるいは相対比較を行う。そして、必要に応じて、次に測定する被検レンズ7を選定する。例えば、予め用意された他の被検レンズ7を検査してもよいし、検査結果の出た被検レンズ7を再測定してもよい。
操作者は、検査を続行する場合には、検査を終了しないための操作入力を行う。この場合、測定制御部100は、波面測定工程S2に移行する。すなわち、検査モードを維持して、操作者による検査を開始する操作入力待ちとなる。この間、操作者は、次に検査する被検レンズ7をレンズ保持部20に保持させて、上記波面測定工程S2の動作を繰り返す。
一方、操作者が検査を終了する操作入力を行うと、測定制御部100は、検査を終了する。
このようにして、本実施形態のレンズ検査方法によれば、被検レンズ7の透過波面をゼルニケ多項式近似して、ゼルニケ係数を算出し、面間偏心量と対応した偏心判定値を算出することにより、面間偏心の検査を行うことができる。
このため、フリンジスキャン法によって、波面データを取得するのと同程度の時間で検査を行うことができるため、例えば、レンズ面の反射光束を測定する方法や、触針などによりレンズ面を3次元計測する方法などに比べて、迅速な検査を行うことができる。
例えば、従来技術のように、被検レンズ7の設計値による光学シミュレーションから算出される係数a、bを用いて、上記式(4a)、(4b)から面間偏心量を算出する場合には、光学シミュレーションに反映されない干渉計4における種々の誤差によって、面間偏心量に測定誤差が生じる。
これに対して、本実施形態では、予め校正用レンズ70によって実測したゼルニケ係数の散布図を直線近似して求めた係数比A/Bを用いることで、上記式(7a)、(7b)が校正されるため、干渉計4の光源や測定光学系に含まれる誤差要因の影響が低減され、高精度な検査を行うことができる。
なお、上記の説明では、偏心判定値に基づいた合否判定、または相対比較は、表示部31の表示を見て操作者が行うものとして説明したが、これらは、測定制御部100が行うようにしてもよい。例えば、記憶部101に予め偏心判定値の許容値を記憶しておくことで、検査結果出力工程S5において、測定制御部100が偏心判定値をこの許容値と比較して合否判定を行い、例えば、偏心判定値の数値とともに、「合格」、「不良」といった文字情報を表示したり、合否判定結果を表データとして表示したりすることが可能である。
また、検査結果出力工程S5で算出された偏心判定値を記憶部101に記憶し、複数の被検レンズ7の検査が終了した段階で、測定制御部100が、各測定における偏心判定値を比較して、最も良好な偏心判定値が得られた被検レンズ7の情報を表示部31に表示するようにしてもよい。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態のレンズ検査装置について説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態のレンズ検査装置の制御部の機能構成を示す機能ブロック図である。
図1、10に示すように、本実施形態のレンズ検査装置1Aは、上記第1の実施形態のレンズ検査装置1の制御ユニット5に代えて、制御ユニット5Aを備える。
制御ユニット5Aは、上記第1の実施形態の制御ユニット5に、補正値算出部107を追加し、測定制御部100、判定値算出部106に代えて、測定制御部100A、判定値算出部106Aを備えるものである。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
測定制御部100Aは、校正モードにおいて、移動ステージ21の回転ステージ21Bを駆動して、校正用レンズ70をレンズ保持部20の保持中心軸線P回りに回転させた測定位置を追加する点が上記第1の実施形態と異なる。
また、測定制御部100Aは、検査モードにおいて、偏心判定値を算出させる前に、補正値算出部107によって偏心判定値に含まれる測定系の収差であるシステム収差を除去するための補正値を算出させる点が上記第1の実施形態と異なる。
システム収差は、干渉計4に含まれる光学系、例えば、入射レンズ8、9、集光レンズ22、23、基準レンズ6等の偏心や面精度誤差など起因する収差であり、レンズ検査装置1Aに固有の収差である。
補正値算出部107は、校正モードにおいて、回転位置が異なるレンズ保持部20を回転移動して測定された偏心判定値の分布を解析して、システム収差を推定し、この測定誤差を除去するための補正値を算出して判定値算出部106Aに送出するものである。
判定値算出部106Aは、校正モードでは、上記第1の実施形態の判定値算出部106と同様な動作を行う構成とされている。
ただし、検査モードでは、判定値算出部106と同様にして、被検レンズ7に対する偏心判定値を測定してから、補正値算出部107から送出された補正値による補正を加えたものを偏心判定値として算出し、測定制御部100Aに送出する構成とされている。
次に、本実施形態のレンズ検査装置1Aの動作について、本実施形態のレンズ検査方法を中心として説明する。
図11は、本発明の第2の実施形態のレンズ検査方法の校正工程の工程フローを示すフローチャートである。図12は、補正値算出工程における補正値の算出方法を説明する模式的なグラフである。横軸は偏心判定値Z7,0、縦軸は偏心判定値Z8,0である。
レンズ検査装置1Aを用いたレンズ検査方法は、図7に工程フローを示すように、上記第1の実施形態の校正工程S1、判定値演算工程S4、検査結果出力工程S5に代えて、校正工程S21、判定値演算工程S24、検査結果出力工程S25を備える。
また、本実施形態の校正工程S21は、図11に示すように、校正用波面測定工程S31、および校正用フィッティング演算工程S32を必要な回数だけ繰り返した後、係数算出工程S34、補正値算出工程S35を行う。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
上記第1の実施形態と同様に、初期設定が終了した後、操作者の操作入力により、測定制御部100Aが校正モードに切り替えられ、校正工程S21が開始される。
校正用波面測定工程S31では、校正用測定位置として、XYステージ21Aによる移動に加えて、回転ステージ21Bによってレンズ保持部20を回転移動させた測定位置が追加されている。回転移動量は、検査基準位置に対して0°〜360°の範囲で、少なくとも3箇所を設定しておく。測定精度を向上するためには、90°以下のステップで4箇所以上設定することが好ましい。
以下では、一例として90°ステップ回転移動し、上記第1の実施形態の各校正用測定位置で、回転位置が異なる4箇所で、上記第1の実施形態と同様に、透過波面の測定を行う。
次に行う校正用フィッティング演算工程S32は、校正用測定位置が異なる点以外は、上記第1の実施形態と同様の工程である。ただし、偏心判定値の計算に用いるゼルニケ係数の組(Z、Z)、(Z,Z)は、それぞれの回転位置とともに測定制御部100Aに送出され、測定制御部100Aは、回転位置の情報とともに記憶部101に記憶させる。
ステップS33では、測定制御部100Aが、校正に用いる予定のデータがすべて取得されたかどうかを判定し、すべて取得されたと判定された場合に、係数算出工程S34のステップに移行する。
予定されたデータが取得されていない場合には、測定位置移動用カウンタを更新して、校正用波面測定工程S31を行うステップに移行する。
係数算出工程S34は、校正用フィッティング演算工程S32で算出されたゼルニケ係数のうち2次元データの組(Z、Z)、(Z、Z)を回転位置が区別された測定位置ごとに取得し、上記式(8a)、(8b)、(9a)、(9b)のように、2次元データの組(Z、Z)、(Z、Z)の分布を回転位置ごとに直線近似して傾きを算出し、この傾きαを上記式(10)のように、を判定値算出部106Aに設定する工程である。
次に、補正値算出工程S35を行う。本工程は、係数算出工程S34で取得された2次元データの組(Z、Z)、(Z、Z)を用いて、回転位置ごとに、上記式(7a)、(7b)に基づいて偏心判定値Z7,0、Z8,0を算出して、校正用レンズ70の回転移動に伴う偏心誤差を含む偏心判定値の分布を取得し、この偏心判定値の分布を解析して、検査基準位置の中心と測定光軸との位置ずれによる測定誤差を推定し、この測定誤差を除去するための補正値を算出する工程である。
被検レンズ7の透過波面の波面収差は、レンズ固有の波面収差S(以下、被検体収差と称する)と、干渉計4の測定光学系等に起因する波面収差であるシステム収差Nとの和と考えることができる。システム収差がレンズ収差に比べて無視できない場合には、システム収差を除去した検査を行うことが好ましい。
ゼルニケ係数Zにおける被検体収差、システム収差をそれぞれS、Nとすると、次式(11a)、(11b)、(11c)、(11d)が成り立つ。
=S+N ・・・(11a)
=S+N ・・・(11b)
=S+N ・・・(11c)
=S+N ・・・(11d)
これらの式(11a)〜(11d)を、上記式(7a)、(7b)に代入すると、次式(12a)、(12b)が得られる。
Figure 0005904896
ここで、被検レンズ7を保持中心軸線P回りに回転させると、被検体収差に起因する光である[S−{(−A/B)・S}]と[S−{(−A/B)・S}]とが回転に伴って変化するのに対して、システム収差に起因する残りの項は回転しても変化しない。
このため、例えば、4つの回転位置に応じて算出された偏心判定値(Z7,0(1),Z8,0(1))、…、(Z7,0(4),Z8,0(4))を、Z7,08,0平面上にプロットすると、それぞれ図12の点q、…、qのようにばらついてプロットされることになる。
本工程では、補正値算出部107は、このような点q、…、qをZ7,08,0平面上で円近似するフィッティングを行って、近似円Cの中心座標q(Z7,e,Z8,e)を算出し、測定制御部100Aに送出する。
この中心座標qは、被検レンズ7の回転により変化しない成分であり、システム収差の寄与分である[N−{(−A/B)・N}]と[N−{(−A/B)・N}]とを表している。
測定制御部100Aは、送出された中心座標q(Z7,e,Z8,e)を後述する検査モードにおける偏心判定値の計算に用いる補正値として、判定値算出部106Aに設定する。
以上で、補正値算出工程S35が終了し、校正工程S21が終了する。
次に、上記第1の実施形態と同様にして、波面測定工程S2と、フィッティング演算工程S3とを行う。
次に、本実施形態の判定値演算工程S24を行う。
本工程では、測定制御部100Aは、上記第1の実施形態と同様にして、被検レンズ7のゼルニケ係数の組(Z,Z)、(Z,Z)を判定値算出部106Aに送出して、偏心判定値を算出させる。
本実施形態の判定値算出部106Aは、上記第1の実施形態と同様に、上記式(7a)、(7b)に基づいて、偏心判定値Z7,0、Z8,0を算出した後、次式(13a)、(13b)に基づいて、システム収差が補正された偏心判定値Z7,S、Z8,Sを算出して、測定制御部100Aに送出する。
7,S=Z7,0−Z7,e ・・・(13a)
8,S=Z8,0−Z8,e ・・・(13b)
次に、検査結果出力工程S25を行う。本工程は、合否判定を測定制御部100Aが行う点と合否の判定に用いる偏心判定値が異なる点とを除いて上記第1の実施形態の検査結果出力工程S5と同様の工程である。
すなわち、本実施形態では、測定制御部100Aが、判定値算出部106Aから送出された被検レンズ7の偏心判定値Z7,S、Z8,Sを記憶部101に予め記憶された偏心判定値の許容値と比較して、被検レンズ7の面間偏心の合否を判定し、判定結果を出力する。
次に、ステップS6に移行して、検査を続行または終了する。
以上で、本実施形態のレンズ検査工程が終了する。
本実施形態では、偏心判定値として、システム収差が補正された偏心判定値Z7,S、Z8,Sを用いて被検レンズ7の面間偏心の合否を判定するため、より高精度な合否判定が可能となる。
また、本実施形態では、システム収差を除去することができるため、基準レンズ6の面間偏心量がある程度はあっても、被検レンズ7の面間偏心量を正確に測定することができる。
[第1変形例]
次に、本実施形態の変形例(第1変形例)について説明する。
本変形例は、上記第2の実施形態の補正値算出工程S35、判定値演算工程S24、検査結果出力工程S25の変形例である。
以下、上記第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
偏心判定値Z7,S、Z8,Sは、偏心判定値Z7,0、Z8,0において、システム収差が補正された偏心判定値であるため、より高精度に求められた偏心判定値Z7,0、Z8,0である。したがって、上記式(6a)、(6b)において、偏心判定値Z7,0、Z8,0と同様、上記式(6a)、(6b)の切片として意味を有している。このため、次式(14a)、(14b)が成り立つ。
7,S=δ/B ・・・(14a)
8,S=δ/B ・・・(14b)
したがって、校正用レンズ70の面間偏心量δ、δを従来技術の測定により予め求めておけば、補正値算出工程S35において、偏心判定値Z7,S、Z8,Sを算出してから、予め求めた校正用レンズ70の面間偏心量δ、δを上記式(14a)、(14b)に代入することで、定係数Bを算出することができる。したがって、上記式(10)から、定係数Aも算出することができる。
そこで、本工程では、補正値算出部107は、これら定係数A、Bを算出して、測定制御部100Aに送出し、測定制御部100Aは、判定値算出部106Aに定係数A、Bを設定する。
また、判定値演算工程S24では、判定値算出部106は、測定制御部100Aによって設定された定係数A、Bを用い、上記式(5a)、(5b)に基づいて、偏心判定値として、面間偏心量δ、δそのものを算出する。
検査結果出力工程S25では、測定制御部100Aは、算出された面間偏心量δ、δを許容面間偏心と比較して、合否の判定を行う。
なお、本変形例では、校正用レンズ70の面間偏心量δ、δの測定座標系と、レンズ検査装置1Aにおける測定座標系とを、正確に合わせる必要があるため、校正用レンズ70の移載時の取り扱いに注意する必要がある。
ただし、本変形例では、定係数Bを求めればよいため、上記式(4c)で定義される面間偏心の大きさδを用いて次式(15)によって、定係数Bを算出してもよい。
B=δ/√(Z7,S +Z8,S ) ・・・(15)
本変形例の精度を確かめるため、面間偏心が既知の被検レンズ7を多数用いて、面間偏心量δを測定したところ、相関係数0.85の良好な相関が得られた。
これに対して、比較のため、同一の被検レンズ7の群を用いて、光学シミュレーションを用いて上記式(4a)、(4b)から算出された係数a、bを用いた面間偏心の測定を行ったところ、相関係数は、0.25となった。
このため、本変形例の方が格段に高精度に面間偏心を測定できていることが分かる。
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態のレンズ検査装置について説明する。
図13は、本発明の第3の実施形態のレンズ検査装置の構成を示す模式的なシステム構成図である。図14は、本発明の第3の実施形態のレンズ検査装置の制御部の機能構成を示す機能ブロック図である。
図13に示すように、本実施形態のレンズ検査装置1Bは、上記第1の実施形態のレンズ検査装置1のモニタ30を削除し、レーザー11、レンズ保持部20、移動ステージ21を除く干渉計4と、制御ユニット5とに代えて、波面変換レンズ51および波面測定部52と、制御ユニット5B(制御部)とを備えるものである。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
本実施形態では、レンズ保持部20は、検査基準位置における保持中心軸線Pが、レーザー11から出射されるレーザー光の光軸Oと同軸となる位置に配置されている。
波面変換レンズ51は、レーザー11とレンズ保持部20との間の光路上に配置され、レーザー11から出射されるレーザー光の波面を、校正用レンズ70の種類に応じて変換するためのものである。本実施形態では、校正用レンズ70の焦点位置に集光する球面波を形成し校正用レンズ70、およびこれと同じ設計の被検レンズ7の透過波面が平面波となるようにしている。
波面測定部52は、校正用レンズ70、被検レンズ7の透過波面を測定し、その透過波面をゼルニケ多項式近似して、ゼルニケ係数を出力するものであり、シャックハルトマンセンサーと、その出力からゼルニケ係数を算出する解析演算部とを備えた構成を採用している。
シャックハルトマンセンサーは、マイクロレンズアレイと撮像素子とを備え、マイクロレンズアレイに入射した光束の集光スポットを撮像素子で撮像し、この画像データを用いて、解析演算部が各集光スポットの集光位置を解析し、波面解析を行うものである。
解析演算部は、シャックハルトマンセンサーから送出された各集光スポットの集光位置から、シャックハルトマンセンサーのマイクロレンズアレイに理想波面が入射した場合の各集光スポットの理想集光位置との差分を求める。そして、この差分を、ゼルニケ多項式を用いて解析しフィッティング演算を行うことにより、ゼルニケ係数を算出する。
波面測定部52は、制御ユニット5Bと通信可能に接続され、ゼルニケ係数を制御ユニット5Bに送出できるようになっている。
このため、波面測定部52は、被検レンズ7の透過波面を測定する波面測定部と、この透過波面をゼルニケ多項式近似して、ゼルニケ係数を算出するフィッティング演算部とを兼ねている。
制御ユニット5Bは、図14に示すように、上記第1の実施形態の制御ユニット5の波面データ生成部103、フィッティング演算部104を削除し、測定制御部100、データ取得部102に代えて、測定制御部100B、データ取得部102Bを備える。
測定制御部100Bは、上記第1の実施形態の測定制御部100から、ピエゾ素子19、波面データ生成部103、フィッティング演算部104に関する制御機能を削除したものである。
データ取得部102Bは、波面測定部52から送出されるゼルニケ係数を取得し、測定制御部100Bに送出するものである。
このような構成により、レンズ検査装置1Bによれば、波面測定部52を備えるため、基準レンズ6を用いることなく、校正用レンズ70、被検レンズ7の透過波面の波面収差を測定することができる。
また、測定制御部100Bは、データ取得部102Bを介して、校正用レンズ70、被検レンズ7の波面収差を表すゼルニケ係数を取得することができる。
このため、上記第1の実施形態と同様、図7、8に示すフローに従って、校正用レンズ70による校正と、被検レンズ7の面間偏心の測定とを行うことができる。
レンズ検査装置1Bによれば、シャックハルトマンセンサーを用いてゼルニケ係数を測定するため、干渉計4を用いる場合に比べて装置構成が簡素化される。また、基準レンズ6を用いなくてもよいため、初期設定が容易であり、作業性が良好となる。
また、本実施形態では、測定光学系は、レーザー11、波面変換レンズ51、およびシャックハルトマンセンサーで校正されるため、測定光学系に含まれる誤差も低減される。
また、このような測定光学系に起因するシステム収差は、上記第2の実施形態の第1変形例のレンズ検査方法を用いれば、同様にして低減することが可能である。
なお、上記の各実施形態の説明では、偏心判定値として、上記式(7a)、(7b)に基づいて、偏心判定値Z7,0、Z8,0を算出したが、ゼルニケ係数Z(Z)とZ(Z)の役割を交換して、次式(16a)、(16b)に示す偏心判定値Z2,0、Z3,0を採用することも可能である。
2,0=Z−(−B/A)・Z ・・・(16a)
3,0=Z−(−B/A)・Z ・・・(16b)
また、上記各実施形態、変形例の説明では、校正工程に続いて、被検レンズ7の検査が行われる例で説明したが、校正工程は、検査が行われる前に、一回行われていればよい。このため、被検レンズ7に対応して、偏心判定値を算出するための係数比A/Bや、定係数A、Bが制御部に記憶されていれば、検査前に校正工程を行うことなく検査を開始することができる。
また、上記各実施形態、変形例の説明では、校正動作が制御部によって制御される場合の例で説明したが、校正動作は、操作部からの操作入力に応じて行うようにしてもよい。
また、上記第1変形例の説明では、1つの校正用レンズ70の面間偏心量δに基づいて、係数Bを算出した場合の例で説明したが、既知の異なる面間偏心量δを有する校正用レンズ70を複数用いて、それぞれから上記式(15)の右辺の分母√(Z7,S +Z8,S )から算出し、√(Z7,S +Z8,S )と面間偏心量δとの散布図を、最小二乗法で直線近似して、その傾きから係数Bを求めてもよい。
また、上記各実施形態、変形例の説明では、非球面レンズの面間偏心を測定する場合に、校正用レンズ、被検レンズ、基準レンズに対して、近軸光を入射させて、近軸球面の球心のシフト偏心を測定するものとして説明したが、面間偏心はこのような測定による面間偏心に限定されるものではない。
レンズ面が非球面の場合には、非球面固有の回転対称軸が存在するため、非球面の姿勢を非球面の回転対称軸で代表した面間偏心も採用できる。例えば、非球面と球面とを有する単レンズの場合、非球面の回転対称軸が球面の球心を通る場合以外は、非球面と球面との間に偏心が生じている。また、2つの非球面を有する単レンズの場合、各非球面の回転対称軸が同軸になっている場合以外は、2つの非球面との間に偏心が生じている。
校正用レンズ、被検レンズ、基準レンズが非球面と球面とを有する場合には、非球面の回転対称軸の姿勢による偏心も含めた面間偏心を測定するため、上記各実施形態、変形例において、近軸光よりも光束径の大きい光束を入射させて、上記と同様の測定を行うことが可能である。
この測定を行うには、校正用レンズ、被検レンズ、基準レンズを、例えば心取りするなどして、各レンズの位置決め平面部に対して非球面の回転対称軸の傾きが略直交するようにしておく。
この場合、位置決め平面部に対して非球面の回転対称軸が略直交しているため、非球面の回転対称軸のチルト偏心が低減されている。このため、入射光束の光束径を大きくするのみでその他は上記各実施形態、変形例と同様の測定を行うことで、非球面の回転対称軸で代表させた非球面のシフト偏心を測定することができる。
このようにして測定された面間偏心は、非球面の情報を含む面間偏心測定になっているため、非球面レンズのシフト偏心をより高精度に表す面間偏心になっている。
また、上記の各実施形態、変形例で説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせたり、削除したりして実施することができる。
1、1A、1B レンズ検査装置
4 干渉計(波面測定部)
5、5A、5B 制御ユニット
6 基準レンズ
7 被検レンズ
6a、7a 第1面
6b、7b 第2面
6c、7c 位置決め平面部
19 ピエゾ素子
20 レンズ保持部
21 移動ステージ
21A XYステージ(軸直角移動部)
21B 回転ステージ(回転移動部)
29 撮像素子
52 波面測定部
70 校正用レンズ
100、100A、100B 測定制御部(制御部)
101 記憶部
102、102B データ取得部
103 波面データ生成部
104 フィッティング演算部
105 係数算出部
106、106A 判定値算出部
107 補正値算出部
、O 光軸(波面測定部の測定光軸)
P 保持中心軸線
R、S 光路
S1、S21 校正工程
S2 波面測定工程
S3 フィッティング演算工程
S4、S24 判定値演算工程
S5、S25 検査結果出力工程
S11、S31 校正用波面測定工程
S14、S34 係数算出工程
S31 校正用波面測定工程
S32 校正用フィッティング演算工程
S35 補正値算出工程

Claims (7)

  1. 単レンズからなる被検レンズの第1面と第2面との面間偏心の検査を行うレンズ検査装置であって、
    前記被検レンズを検査基準位置に保持するレンズ保持部と、
    前記被検レンズの透過波面を測定する波面測定部と、
    該波面測定部で測定された前記透過波面をゼルニケ多項式近似して、ゼルニケ係数を算出するフィッティング演算部と、
    該フィッティング演算部により算出された前記ゼルニケ係数のうち、回転方向の次数が1または−1であって放射方向の次数が互いに異なる次数に対応する2種類のゼルニケ係数Z、Z(ただし、p、qは、p≠qの整数)を変数とし、係数が予め実測値により校正された1次式によって、前記面間偏心量に対応する偏心判定値を算出する判定値算出部と、
    を備えることを特徴とするレンズ検査装置。
  2. 前記レンズ保持部を、前記検査基準位置と、該検査基準位置から前記波面測定部の測定光軸に直交する方向にずらされた複数の校正用測定位置との間で切り替え可能に移動する軸直角移動部と、
    前記校正用測定位置において測定された透過波面から算出された前記ゼルニケ係数Z、Zに基づいて前記1次式の係数を算出する係数算出部と、
    校正用レンズを用いた校正動作の制御を行う校正モードと、前記被検レンズを検査する検査動作の制御を行う検査モードとが切り替え可能に設けられた制御部と、
    をさらに備え、
    前記制御部は、
    前記校正モードでは、前記軸直角移動部によって、前記校正用レンズを前記校正用測定位置に移動させ、前記校正用測定位置を複数の測定位置において、前記波面測定部による透過波面を測定と、前記フィッティング演算部による前記ゼルニケ係数の算出と、をそれぞれ行わせて、前記フィッティング演算部から該ゼルニケ係数のうち前記ゼルニケ係数Z、Zからなる2次元データの組(Z、Z)を取得して、前記係数算出部に送出し、
    前記係数算出部は、
    前記制御部が前記校正モードにおいて取得した前記校正用レンズの前記2次元データの組(Z、Z)の分布を直線近似して傾きを算出し、該傾きを前記1次式の係数として前記判定値算出部に設定する
    ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ検査装置。
  3. 前記レンズ保持部をその保持中心回りに回転移動する回転移動部と、
    前記レンズ保持部を回転移動して測定された前記偏心判定値の分布を解析して、測定系の収差であるシステム収差を推定し、該システム収差を除去するための補正値を算出して前記判定値算出部に送出する補正値算出部と、
    を備え、
    前記制御部は、
    前記校正モードでは、前記軸直角移動部による移動と前記回転移動部による回転移動とを組み合わせて、複数の移動位置および複数の回転位置において、前記波面測定部による透過波面を測定と、前記フィッティング演算部による前記ゼルニケ係数の算出とをそれぞれ行わせて、前記回転位置の情報とともに前記フィッティング演算部から前記校正用レンズの前記2次元データの組(Z、Z)を取得して、前記係数算出部に送出し、
    該係数算出部が前記校正用レンズの前記2次元データの組(Z、Z)に基づいて前記1次式の係数を算出して前記判定値算出部に設定した後に、該判定値算出部に前記校正用レンズの前記2次元データの組(Z、Z)を送出し、
    該2次元データの組(Z、Z)を用いて、前記判定値算出部に算出させた前記偏心判定値の分布を取得して、前記回転位置の情報とともに、前記補正値算出部に送出して、前記補正値を算出させ、
    前記検査モードでは、前記レンズ保持部に前記被検レンズが保持された後に、前記軸直角移動部によって、前記レンズ保持部を前記検査基準位置に位置づけ、
    該検査基準位置において、前記波面測定部による透過波面を測定と、前記フィッティング演算部による前記ゼルニケ係数の算出とをそれぞれ行わせて、前記フィッティング演算部から前記被検レンズの前記2次元データの組(Z、Z)を取得し、
    前記判定値算出部に、前記被検レンズの前記2次元データの組(Z、Z)を送出し、
    前記判定値算出部は、
    前記検査モードで偏心判定値を算出する場合に、前記被検レンズの前記2次元データの組(Z、Z)を用いて前記1次式による偏心判定値を算出してから、前記補正値算出部から送出された前記補正値による補正を施したものを偏心判定値として算出する
    ことを特徴とする請求項2に記載のレンズ検査装置。
  4. 前記判定値算出部が用いる前記1次式の係数は、
    単レンズからなる校正用レンズを前記検査基準位置から前記波面測定部の測定光軸に直交する方向に移動し、前記波面測定部によって前記校正用レンズの透過波面を複数の移動位置において測定し、測定された前記校正用レンズの各透過波面から前記フィッティング演算部により前記ゼルニケ係数を算出し、該ゼルニケ係数のうち、前記ゼルニケ係数Z、Zからなる2次元データの組(Z、Z)の分布を直線近似したときの傾きである
    ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ検査装置。
  5. 単レンズからなる被検レンズの第1面と第2面との面間偏心量の検査を行うレンズ検査方法であって、
    前記被検レンズを検査基準位置に保持して、前記被検レンズの透過波面を測定する波面測定工程と、
    該波面測定工程で測定された前記透過波面をゼルニケ多項式近似して、ゼルニケ係数を算出するフィッティング演算工程と、
    該フィッティング演算工程により算出された前記ゼルニケ係数のうち、回転方向の次数が1または−1であって放射方向の次数が互いに異なる次数の2種類のゼルニケ係数Z、Z(ただし、p、qは、p≠qの整数)を変数とし、係数が予め実測値により校正された1次式によって、前記面間偏心量に対応する偏心判定値を算出する判定値算出工程と、
    を備えることを特徴とするレンズ検査方法。
  6. 前記波面測定工程に先行して、
    校正用レンズを、前記検査基準位置から透過波面の測定光軸に直交する方向にずらした校正用測定位置を含む複数の測定位置に保持して、前記校正用レンズの透過波面を測定する校正用波面測定工程と、
    前記測定位置ごとに測定された前記透過波面をゼルニケ多項式近似して、ゼルニケ係数を算出する校正用フィッティング演算工程と、
    該校正用フィッティング演算工程で算出された前記ゼルニケ係数のうち前記ゼルニケ係数Z、Zからなる2次元データの組(Z、Z)を前記測定位置ごとに取得し、前記2次元データの組(Z、Z)の分布を直線近似して傾きを算出し、該傾きを前記判定値算出工程に用いる前記1次式の係数に設定する係数算出工程と、
    を備えることを特徴とする請求項5に記載のレンズ検査方法。
  7. 前記係数算出工程と前記波面測定工程との間に、補正値算出工程を備え、
    前記校正用波面測定工程では、
    前記校正用レンズの保持中心回りに回転移動することにより、回転位置を変えた透過波面の測定を併せて行い、
    前記補正値算出工程では、
    前記係数算出工程で取得された前記2次元データの組(Z、Z)を用いて、前記回転位置ごとに、前記1次式による前記偏心判定値を算出して、前記校正用レンズの回転移動に伴う偏心誤差を含む前記偏心判定値の分布を取得し、該偏心判定値の分布を解析して、測定系の収差であるシステム収差を推定し、該システム収差を除去するための補正値を算出し、
    前記判定値算出工程では、
    前記ゼルニケ係数Z、Zを用いて、前記1次式による偏心判定値に、前記補正値による補正を施したものを偏心判定値として算出する
    ことを特徴とする請求項6に記載のレンズ検査方法。
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