しかしながら、前述のインパネリインフォースメント構造では、ステアリングホイールからステアリングコラムに車両幅方向の力が加わった場合、複数本のパイプフレームには車両幅方向に互いに逆向きの応力が発生する。このような互いに逆向きの応力に対する剛性が配慮されていないので、パイプフレームが車両幅方向にずれを生じる可能性があり、改善の余地があった。
本発明は上記事実を考慮し、ステアリングコラムからの左右入力に対して剛性を向上することができるインパネリインフォースメント構造を得ることが目的である。
請求項1に記載された発明に係るインパネリインフォースメント構造は、車両幅方向を長手方向として配置され、車両平面視で車両前後方向を軸方向として配置されたステアリングコラムを支持するパイプ状の第1フレーム部材と、第1フレーム部材の車両後方側に第1フレーム部材に対して略平行に配置されると共にステアリングコラムを支持するパイプ状の第2フレーム部材と、第1フレーム部材の長手方向に対して斜めに交差する方向を長手方向として配置され、長手方向の一端部が第1フレーム部材に固定されると共に他端部が第2フレーム部材に固定され、第1フレーム部材と第2フレーム部材とを連結するブラケットと、を備えている。
請求項1に係る発明では、ステアリングコラムが第1フレーム部材及び第2フレーム部材に支持されている。そして、第1フレーム部材と第2フレーム部材とはブラケットにより連結されている。仮に、ステアリングコラムに車両幅方向の力が入力されると、車両幅方向において互いに逆向きの応力が第1フレーム部材及び第2フレーム部材に発生する。
ここで、ブラケットは、第1フレーム部材の長手方向に対して斜めに交差する方向を長手方向として配置されている。第1フレーム部材に対して第2フレーム部材が略平行に配置されているので、ブラケットは第2フレーム部材の長手方向に対しても斜めに交差する方向を長手方向として配置されている。そして、ブラケットの長手方向の一端部が第1フレーム部材に固定されると共に他端部が第2フレーム部材に固定されている。このため、第1フレーム部材に発生した応力は、それと同一方向に作用する応力として、ブラケットを介して第2フレーム部材に伝達される。同様に、第2フレーム部材に発生した逆向きの応力は、それと同一方向に作用する応力として、ブラケットを介して第1フレーム部材に伝達される。従って、第1フレーム部材に発生した応力が、第2フレーム部材から伝達された逆向きの応力により減少されると共に、第2フレーム部材に発生した逆向きの応力が、第1フレーム部材から伝達された応力により減少される。
請求項2に記載された発明に係るインパネリインフォースメント構造では、請求項1に係る発明において、ブラケットは、第1フレーム部材の長手方向に対して斜めに交差する方向を長手方向として配置され、長手方向の一端部が第1フレーム部材に固定されると共に他端部が第2フレーム部材に固定され、第1フレーム部材と第2フレーム部材とを連結する第1ブラケットと、第1フレーム部材及び第2フレーム部材と直交する軸に対して、第1ブラケットの長手方向とは鏡面反転された方向を長手方向として配置され、長手方向の一端部が第1フレーム部材に固定されると共に他端部が第2フレーム部材に固定され、第1フレーム部材と第2フレーム部材とを連結する第2ブラケットと、を備えている。
請求項2に係る発明によれば、ブラケットは第1ブラケット及び第2ブラケットを備えており、第1ブラケット、第2ブラケットはそれぞれ第1フレーム部材及び第2フレーム部材に固定されている。ここで、第1ブラケットは、第1フレーム部材の長手方向に対して斜めに交差する方向を長手方向として配置されており、第2ブラケットは、第1ブラケットの長手方向とは鏡面反転された方向を長手方向として配置されている。仮に、ステアリングコラムに車両幅方向の力が入力され、車両幅方向において互いに逆向きの応力が第1フレーム部材、第2フレーム部材にそれぞれ発生すると、この応力は第1ブラケット及び第2ブラケットを回転する回転モーメントとして作用する。第1ブラケットに作用する回転モーメントは、第1フレーム部材と第2フレーム部材との間を押拡げる又は押縮める応力となる。第2ブラケットに作用する回転モーメントは、第1フレーム部材と第2フレーム部材との間を押縮める又は押拡げる逆向きの応力となる。このため、応力が互いに逆向きになるので、回転モーメントに基づく応力を減少することができる。
請求項3に記載された発明に係るインパネリインフォースメント構造では、請求項2に係る発明において、第1ブラケットは、車両背面視で第2ブラケットと交差して設けられている。
請求項3に係る発明によれば、第1ブラケットは第2ブラケットと交差して設けられている。このため、第1ブラケットに回転モーメントが生じたときの応力の発生位置と、第2ブラケットに回転モーメントが生じたときの応力の発生位置とが、最も近接されている。従って、回転モーメントに基づく応力を効果的に減少することができる。
請求項4に記載された発明に係るインパネリインフォースメント構造では、請求項1〜請求項3のいずれか1項に係る発明において、ブラケットは、長手方向と直交する幅方向の端部を長手方向に沿って折曲げたフランジ部を備えている。
請求項4に係る発明によれば、ブラケットにはフランジ部が設けられている。フランジ部によりブラケットの剛性を高めることができる。
請求項5に記載された発明に係るインパネリインフォースメント構造では、請求項1〜請求項4のいずれか1項に係る発明において、第1フレーム部材の一端部及び第2フレーム部材の一端部はエクステンションに接続されており、ブラケットは、第1フレーム部材及び第2フレーム部材のステアリングコラムを支持する位置とエクステンションが接続される位置との間に設けられている。
請求項5に係る発明によれば、ブラケットは、第1フレーム部材及び第2フレーム部材のステアリングコラムを支持する位置とエクステンションが接続される位置との間に設けられている。ブラケットは、双方の位置のいずれにも近い位置に設けられている。このため、第1フレーム部材及び第2フレーム部材に発生する車両幅方向の応力又は回転モーメントに基づく応力を効果的に減少することができると共に、第1フレーム部材、第2フレーム部材及びエクステンションを含む構造体の剛性を向上することができる。
請求項1に記載された発明に係るインパネリインフォースメント構造は、第1フレーム部材及び第2フレーム部材に発生する互いに逆向きの応力を減少する構成とされているので、ステアリングコラムからの左右入力に対する剛性を向上することができるという優れた効果を有する。
請求項2に記載された発明に係るインパネリインフォースメント構造は、回転モーメントに基づく応力を減少する構成とされているので、車両幅方向の応力並びに回転モーメントに基づく応力に対する剛性を向上することができるという優れた効果を有する。
請求項3に記載された発明に係るインパネリインフォースメント構造は、最も近接した位置において回転モーメントに基づく応力を減少する構成とされているので、回転モーメントに基づく応力に対する剛性をより一層向上することができるという優れた効果を有する。
請求項4に記載された発明に係るインパネリインフォースメント構造は、フランジ部によりブラケットの剛性を高める構成とされているので、応力に対する剛性をより一層向上することができるという優れた効果を有する。
請求項5に記載された発明に係るインパネリインフォースメント構造は、応力を効果的に減少することができると共に、エクステンションを含む構造体の剛性を向上することができる構成とされているので、応力に対する剛性をより一層向上することができるという優れた効果を有する。
以下、図面を参照し、本発明に係るインパネリインフォースメント構造の実施の形態を説明する。なお、図において適宜示されている矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示している。また、矢印INは車両幅方向の内側を示している。
[第1実施の形態]
(インパネリインフォースメント構造の構成)
図1には左ハンドル車の運転席側から車両前方側に見たインパネリインフォースメント構造の斜視図が示されている。また、図2には運転席側から助手席側に向って車両側面視で見たインパネリインフォースメント10の概略側面図が示されている。そして、図3には平面視における運転席側のインパネリインフォースメント構造の一部を拡大した平面図が示されている。自動車の車室内の運転席及び助手席よりも車両前方側には図示を省略したインストルメントパネルが配設されている。このインストルメントパネルの内側には本発明に係るインパネリインフォースメント構造が適用されたインパネリインフォースメント10が設けられている。
インパネリインフォースメント10は、車両幅方向を長手方向として配置された第1フレーム部材としてのフレーム部材12と、このフレーム部材12よりも車両後方側であってやや車両下方側に離間して配置され、フレーム部材12に対して略平行に延設された第2フレーム部材としてのフレーム部材14とを備えている。フレーム部材12はメインフレーム部材として構成されており、その左側の一端はエクステンション16及び左側ブラケット20C(図3参照)を介して車両左側のフロントピラー20に取付けられている。フレーム部材12は例えば金属製の中空丸パイプにより構成されている。フレーム部材12の一端はエクステンション16に設けられた取付孔16Aに嵌合されており、例えば溶接等の固定手段によりフレーム部材12とエクステンション16とが接合されている。この接合箇所はフレーム部材12とエクステンション16との接続箇所とされている。エクステンション16の左側ブラケット20Cへの取付けには例えば締結手段であるボルト及びナットが使用されている。フレーム部材12の右側の他端は、図示を省略した車両右側のフロントピラーまで車両幅方向に沿って延設されており、このフロントピラーにエクステンション18及び図示を省略した右側ブラケットを介して取り付けられている。フレーム部材12の他端はエクステンション18に設けられた取付孔18Aに嵌合されており、同様に固定手段によりフレーム部材12とエクステンション18とが接合されている。エクステンション18の右側ブラケットへの取付けには同様に締結手段が使用されている。つまり、フレーム部材12は左右一対のフロントピラー20間に車両幅方向に沿って架設されている。これにより、側面衝突時等の車両幅方向の入力荷重に対して車体剛性が高められている。
なお、フロントピラー20は、車室外側に配置されたフロントピラーアウタパネル20Aと、フロントピラーアウタパネル20Aの車両幅方向の内側に配置されてフロントピラーアウタパネル20Aとで閉断面を構成するフロントピラーインナパネル20Bとを備えている。車両右側のフロントピラーの構成は車両左側のフロントピラー20の構成と同様とされている。
フレーム部材14はサブフレーム部材として構成されている。フレーム部材14の左側の一端は、エクステンション16を介してフレーム部材12に接続されると共に、エクステンション16及び左側ブラケット20Cを介して車両左側のフロントピラー20に取付けられている。フレーム部材14はフレーム部材12と同様に例えば金属製の中空丸パイプにより構成されている。フレーム部材14の一端はエクステンション16に設けられた取付孔16Bに嵌合されており、例えば溶接等の固定手段によりフレーム部材14とエクステンション16とが接合されている。フレーム部材12と同様に、この接合箇所はフレーム部材14とエクステンション16と接続箇所とされている。フレーム部材14の右側の他端は、車両幅方向の中間部の運転席側寄りに配設されたフロアブレース22に取付けられており、フロアブレース22を介してフレーム部材12の中間部に接続されている。
フロアブレース22は、車両上下方向を長手方向とし、車両前後方向を幅方向とする例えば金属製板材により構成されている。フロアブレース22の上端部にはフレーム部材12が貫通される貫通孔22Aが設けられており、更に貫通孔22Aの車両後方下側にはフレーム部材14の他端が嵌合される取付孔22Bが設けられている。そして、例えば溶接等の固定手段により、フロアブレース22とフレーム部材12とが接合されると共に、フロアブレース22とフレーム部材14とが接合されている。なお、フロアブレース22の周縁にはフランジ22Cが設けられており、曲げや捻りに対するフロアブレース22の機械的強度が高められている。また、フロアブレース22の下端部は車両の床部に接続されている。
図1に示されるように、車両幅方向の中間部の助手席側寄りには車両上下方向に延設されたセンタブレース24が設けられている。センタブレース24の上端部は例えば締結手段としてのボルト及びナットによりフレーム部材12に固定されており、又下端部は同様に例えば締結手段により床部に固定されている。センタブレース24は例えば金属製パイプにより構成されている。
また、フレーム部材12におけるセンタブレース24の配設位置の前方には、アーム状のカウルブレース26が設けられている。カウルブレース26の後端部は例えば溶接等の固定手段によりフレーム部材12に固定されており、又前端部は例えば固定手段か或いは締結手段により図示を省略したカウルに固定されている。
図1〜図3に示されるように、車両の運転席側において、複数のフレーム部材12及びフレーム部材14には、それらに対して車両下方側に配置されると共に車両平面視で車両前後方向を軸方向として配置されたステアリングコラム32が支持されている。ステアリングコラム32は、運転席の中央部であって、エクステンション16とフロアブレース22との中間部に取付けられている。詳細な構造は省略するが、ステアリングコラム32は、筒状のコラムチューブ(二点鎖線を用いて輪郭の一部が示されている。)32Gと、その軸芯部(中心軸)32Cに配置されかつ図示しないベアリングを介して回転自在に支持されたステアリングメインシャフト32Hとを備えている。ステアリングメインシャフト32Hの車両後方側の端部にはステアリングホイール34が取付けられている。
コラムチューブ32Gの軸方向前側であってフレーム部材12よりも更に車両前方側には車両上方側に突出されたブラケット取付部32Aが設けられており、このブラケット取付部32Aにはカウルトゥブレース28の一端部28Bが接続されている。この接続箇所はここでは1カ所であり、接続には例えば締結手段としてのボルト及びナットが使用されている。カウルトゥブレース28の他端部28Cは、車両上方後方側に延設されると共に、フレーム部材12に接続されている。この接続には例えば固定手段としての溶接が使用されている。カウルトゥブレース28には側面視において逆三角形状のブレース本体28Aが設けられており、これによりフレーム部材12がカウルトゥブレース28を介してカウルに連結されている。
コラムチューブ32Gの車両後方側であってフレーム部材14よりも更に車両後方側には車両上方側に突出されたブラケット取付部32Bが設けられており、このブラケット取付部32Bにはステアリングサポートブラケット30の一端が接続されている。ステアリングサポートブラケット30は例えば金属製のプレート30Aにより構成されており、プレート30Aの一端側には車両幅方向に互いに離間されて2箇所の取付孔30B、30Cが設けられている。この取付孔30B、30Cには各々例えば締結手段であるスタッドボルトが設けられており、これによりコラムチューブ32Gがステアリングサポートブラケット30に支持されている。この支持箇所はここでは2カ所である。取付孔30B、30Cはプレート30Aの車両幅方向の両側部において車両下方側に凹設された底面に設けられている。従って、プレート30Aの凹設された側面の部位はフランジとして構成されており、このフランジによりステアリングサポートブラケット30の剛性が高められている。ステアリングサポートブラケット30の他端は、車両前方側に延設されると共に、フレーム部材14に接続されている。フレーム部材14との接続部位において、フレーム部材14の外周の一部の形状に合わせて、ステアリングサポートブラケット30には円弧状の切欠部30Dが設けられている(図2参照)。このステアリングサポートブラケット30の切欠部30Dとフレーム部材14との接続には例えば固定手段としての溶接が使用されている。
(ブラケットの構成)
図4には図1〜図3に示されるブラケット40の斜視図が示されている。図1〜図4に示されるように、本実施の形態に係るインパネリインフォースメント10では、フレーム部材12及びフレーム部材14のステアリングコラム32を支持する位置とエクステンション16が接続される位置との間であって双方の中間部にブラケット40が設けられている。ブラケット40は、フレーム部材12の長手方向(車両幅方向と一致する方向)に対して斜めに交差する方向を長手方向として配置されており、この長手方向の一端部をフレーム部材12に固定すると共に他端部をフレーム部材14に固定し、フレーム部材12とフレーム部材14とを連結する構成とされている。
本実施の形態に係るブラケット40は第1ブラケット42と第2ブラケット44とを備えている。第1ブラケット42は、フレーム部材12の長手方向に対して、図3中、車両前方側から車両後方側に向かって車両幅方向の内側から外側に斜めに交差する方向を長手方向として配置されている。第1ブラケット42の長手方向の一端部はフレーム部材12の上部に固定されると共に、他端部はフレーム部材14の上部に固定されている。第2ブラケット44は、フレーム部材12及びフレーム部材14を車両前後方向に直交する仮想的な軸C(図3参照)に対して、第1ブラケット42の長手方向とは鏡面反転された方向を長手方向として配置されている。第2ブラケット44の長手方向の一端部はフレーム部材12の下部に固定されると共に、他端部はフレーム部材14の下部に固定されている。つまり、第2ブラケット44は、図3中、車両前方側から車両後方側に向かって車両幅方向の外側から内側に斜めに交差する方向を長手方向として配置されている。そして、本実施の形態では、特に図3に示されるように、車両背面視で第1ブラケット42は第2ブラケット44と交差して設けられている。
図4に示されるように、第1ブラケット42は、例えば平面視で長手方向に細長い平行四辺形状の金属製の板材により製作されており、平坦なブラケット本体40Aと、このブラケット本体40Aの長手方向と直交する幅方向の両端部を長手方向に沿ってそれぞれ上方(又は下方)に折曲げた一対のフランジ部40B、40Cとを備えている。この一対のフランジ部40B、40Cにより、第1ブラケット42の剛性が高められている。第1ブラケット42とフレーム部材12、フレーム部材14のそれぞれとは例えば溶接により固定されている。第2ブラケット44の構成は第1ブラケット42の構成と同一とされている。
また、ステアリングコラム32上には、フレーム部材12とフレーム部材14とにそれぞれ固定され、双方を連結する板状のブラケット36が設けられている。このブラケット36は、フレーム部材12の断面中心点とフレーム部材14の断面中心点とを結ぶ線と交差して、フレーム部材12とフレーム部材14との間に架設されている。詳細な構造の説明は省略するが、ブラケット36は、ステアリングコラム32から伝達される振動によりフレーム部材12、フレーム部材14に各々生じる回転モーメントを互いに逆向きに作用させる機能を備えている。
(本実施の形態の作用並びに効果)
次に、本実施の形態に係るインパネリインフォースメント10の作用並びに効果について説明する。
本実施の形態に係るインパネリインフォースメント10では、ステアリングコラム32がフレーム部材12及びフレーム部材14に支持されている。そして、ブラケット40は、フレーム部材12、フレーム部材14のそれぞれに固定されており、双方を連結する構成とされている。仮に、図3に示されるように、ステアリングホイール34に車両幅方向の外側から内側に作用する力Fが入力されると、この力Fはステアリングコラム32に入力される。ステアリングコラム32では、車両前方側がカウルトゥブレース28を介してフレーム部材12により支持されており、車両後方側がステアリングサポートブラケット30を介してフレーム部材14により支持されている。このため、ステアリングホイール34側のフレーム部材14のステアリングコラム32を支持する箇所には、ステアリングホイール34に入力された力Fと同一方向の力F1が加わる。一方、フレーム部材12のステアリングコラム32を支持する箇所には、力F1と反対方向に作用する力F2が加わる。図5に示されるように、力F1は、ここではエクステンション16を引張る応力S1としてフレーム部材14に作用する。力F2は、ここではエクステンション16を圧縮する応力S2としてフレーム部材12に作用する。つまり、フレーム部材14、12の各々には車両幅方向において互いに逆向きの応力S1、S2が発生する。このような互いに逆向きの応力S1、S2が発生した場合には、図5に符号16Cを付けて二点鎖線で示されるように、エクステンション16に変形を及ぼすことが懸念される。なお、ステアリングホイール34に車両幅方向の内側から外側に作用する逆向きの力Fが入力された場合には、当然のことながら、引張と圧縮との関係が逆になる。
ここで、図1〜図4及び図6に示されるように、ブラケット40の第1ブラケット42は、フレーム部材12の長手方向に対して斜めに交差する方向を長手方向として配置されている。フレーム部材12に対してフレーム部材14が略平行に配置されているので、第1ブラケット42はフレーム部材14の長手方向に対しても斜めに交差する方向を長手方向として配置されている。そして、第1ブラケット42の長手方向の一端部がフレーム部材12に固定されると共に他端部がフレーム部材14に固定されている。このため、図6に示されるように、フレーム部材12に発生した応力S2は、それと同一方向に作用する応力S21として、第1ブラケット42を介してフレーム部材14に伝達される。同様に、フレーム部材14に発生した逆向きの応力S1は、それと同一方向に作用する応力S11として、第1ブラケット42を介してフレーム部材12に伝達される。従って、フレーム部材12に発生した応力S2が、フレーム部材14から伝達された逆向きの応力S11により減少されると共に、フレーム部材14に発生した逆向きの応力S1が、フレーム部材12から伝達された応力S21により減少される。応力S11、S21が効率良く伝達され、応力S2と応力S11とが等価の場合、応力S1と応力S21とが等価の場合、応力S1、S2は各々相殺される。
一方、ブラケット40の第2ブラケット44は、第1ブラケット42と同様の構成を備えている。このため、図7に示されるように、フレーム部材12に発生した応力S2は、それと同一方向に作用する応力S22として、第1ブラケット42を介してフレーム部材14に伝達される。同様に、フレーム部材14に発生した逆向きの応力S1は、それと同一方向に作用する応力S12として、第1ブラケット42を介してフレーム部材12に伝達される。従って、フレーム部材12に発生した応力S2が、フレーム部材14から伝達された逆向きの応力S12により減少されると共に、フレーム部材14に発生した逆向きの応力S1が、フレーム部材12から伝達された応力S22により減少される。
このように構成される第1実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造によれば、フレーム部材12及びフレーム部材14に発生する互いに逆向きの応力S1、S2を減少する構成とされているので、車両幅方向の応力S1、S2に対する剛性を向上することができる。
また、本実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造では、ブラケット40は第1ブラケット42及び第2ブラケット44を備えており、第1ブラケット42、第2ブラケット44はそれぞれフレーム部材12及びフレーム部材14に固定されている。
ここで、第1ブラケット42は、フレーム部材12の長手方向に対して斜めに交差する方向を長手方向として配置されており、第2ブラケット44は、第1ブラケット42の長手方向とは鏡面反転された方向を長手方向として配置されている。上記と同様に、仮に、ステアリングコラム32への力Fの入力により車両幅方向において互いに逆向きの応力S1、S2がフレーム部材14、12に発生すると、この応力S1、S2は第1ブラケット42及び第2ブラケット44を回転する回転モーメントとして作用する。図8に示されるように、第1ブラケット42はフレーム部材12とフレーム部材14との離間距離よりも長いので、フレーム部材12に応力S2が発生すると、第1ブラケット42には、水平分力としての応力S2と第1ブラケット42の長手方向に第1ブラケット42の外側に向かって作用する分力としての応力S23との合成力M2が発生する。同様に、第1ブラケット42には、フレーム部材14に応力S1が発生すると、水平分力としての応力S1と第1ブラケット42の長手方向に第1ブラケット42の外側に向かって作用する分力としての応力S13との合成力M1が発生する。この合成力M1、M2は平面視において反時計周りに第1ブラケット42を回転する回転モーメントとして作用する。この第1ブラケット42に作用する回転モーメントは、フレーム部材12とフレーム部材14との間を押拡げる応力S3となる(フレーム部材12、14には曲げ応力として作用する)。一方、図9に示されるように、フレーム部材12に応力S2が発生すると、第2ブラケット44には、水平分力としての応力S2と第1ブラケット42の長手方向に第1ブラケット42の内側に向かって作用する分力としての応力S24との合成力M4が発生する。同様に、第2ブラケット44には、フレーム部材14に応力S1が発生すると、水平分力としての応力S1と第1ブラケット42の長手方向に第1ブラケット42の内側に向かって発生する分力としての応力S14との合成力M3が発生する。この合成力M3、M4は平面視において反時計周りに第2ブラケット44を回転する回転モーメントとして作用する。この第2ブラケット44に作用する回転モーメントは、フレーム部材12とフレーム部材14との間を押縮める応力S4となる。このため、応力S3、S4が互いに逆向きになるので、回転モーメントに基づく応力S3、S4を減少することができる。なお、応力S3と応力S4とが等価の場合、応力S3、S4は相殺される。
このように構成される本実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造は、回転モーメントに基づく応力S3、S4を減少する構成とされているので、応力S1、S2並びに応力S3、S4に対する剛性を向上することができる。
更に、本実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造では、第1ブラケット42は車両背面視で第2ブラケット44と交差して設けられている。このため、第1ブラケット42に回転モーメントが生じたときの応力S3の発生位置と、第2ブラケット44に回転モーメントが生じたときの応力S4の発生位置とが、最も近接されている。従って、回転モーメントに基づく応力S3、S4を効果的に減少することができる。
このように構成される本実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造は、最も近接した位置において回転モーメントに基づく応力S3、S4を減少する構成とされているので、応力S3、S4に対する剛性をより一層向上することができる。
また、本実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造では、第1ブラケット42及び第2ブラケット44にはフランジ部40B、40Cが設けられている。フランジ部40B、40Cにより第1ブラケット42及び第2ブラケット44の剛性を高めることができる。従って、このように構成されるインパネリインフォースメント構造は、応力S1、S2並びに応力S3、S4に対する剛性をより一層向上することができる。
更に、本実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造では、第1ブラケット42及び第2ブラケット44は、フレーム部材12及びフレーム部材14のステアリングコラム32を支持する位置とエクステンション16が接続される位置との間に設けられている。第1ブラケット42及び第2ブラケット44は、双方のいずれにも近い位置に設けられている。このため、フレーム部材12及びフレーム部材14に発生する車両幅方向の応力S1、S2又は回転モーメントに基づく応力S3、S4を効果的に減少することができると共に、フレーム部材12、14及びエクステンション16を含む構造体の剛性を向上することができる。
このように構成される本実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造は、応力S1〜S4を効果的に減少することができると共に、エクステンション16を含む構造体の剛性を向上することができる構成とされているので、応力S1〜S4に対する剛性をより一層向上することができる。
また、本実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造では、運転席側に2本のフレーム部材12及びフレーム部材14が設けられており、助手席側に1本のフレーム部材12が設けられている。このため、インパネリインフォースメント10の剛性、特にステアリング剛性が効果的に向上されると共に、構造の小型化(助手席側スペースの拡大)並びにフレーム部材の減少による軽量化を実現することができる。
[第2実施の形態]
次に、図10を用いて、本発明の第2実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造について説明する。なお、第2実施の形態並びにそれ以降の実施の形態において、第1実施の形態で説明した構成要素と同一機能を有する構成要素には同一符号を付し、この同一符号が付された構成要素の説明は重複するので省略する。
図10にはインパネリインフォースメント構造の要部を拡大した図3に対応する拡大平面図が示されている。図10に示されるように、本実施の形態に係るインパネリインフォースメント10では、車両背面視においてX字状とされており、前述の第1実施の形態に係る第1ブラケット42と第2ブラケット44とが一体に構成されたブラケット40が設けられている。
本実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造では、前述の第1実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造により得られる作用及び効果と同様の作用及び効果を得ることができる。また、ブラケット40が1つの部品であるので、部品点数を削減することができる。
[第3実施の形態]
次に、図11を用いて、本発明の第3実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造について説明する。図11にはインパネリインフォースメント構造の要部を拡大した図3に対応する拡大平面図が示されている。図11に示されるように、本実施の形態に係るインパネリインフォースメント10では、第1ブラケット42と第2ブラケット44とが、交差されておらず、車両幅方向に互いに離間された位置に配置されている。
本実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造では、前述の第1実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造により得られる作用及び効果と同様の作用及び効果を得ることができる。
[上記実施の形態の補足説明]
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、本発明には以下の変形例が含まれる。
上記した実施の形態に係るインパネリインフォースメント構造では、運転席側のフレーム部材が2本とされていたが、3本(又はそれ以上)とされてもよい。また、運転席側のフレーム部材が3本以上とされ、助手席側のフレーム部材が2本以上とされてもよい。なお、本発明では、運転席側のフレーム部材と助手席側のフレーム部材とが一体化されている必要はなく、双方のフレーム部材がセンタブレースを介して連結される構成とされてもよい。
また、インパネリインフォースメント構造では、ブラケットが2本までの例しか説明されていないが、3本以上のブラケットが設けられてもよい。また、ブラケットは板状部材に限定されるものではなく、丸棒、角棒等の棒状部材、丸パイプ、角パイプ等のパイプ状部材であってもよい。