JP2003312542A - 車体前部構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ステアリングの安定とオフセット衝突時にお
いても乗員への影響を軽減させる車体前部構造を提供す
る。 【解決手段】 ステアリングサポートパイプ３とカウル
９との間に取付るスティフナ１３であって、スティフナ
１３の前端はカウル９の車体幅方向の中央部付近に取付
け、スティフナ１３の後部は左右対称に二つに分岐した
形状にして、その後端は、ステアリングサポートパイプ
３の車体幅方向の中央部より外方に取付けた。したがっ
て、オフセット衝突時にカウル９の後退の影響が少な
く、また、ステアリングサポートメンバ３を押す力が分
散され、ステアリングサポートメンバ３の変形を低減で
きる。また、ステアリングサポートメンバ３においてス
ティフナ１３の取付点が増えることで、高い振動数の振
動に対しても振動の低減効果が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】一般に、自動車のステアリン
グを支持するステアリングコラムは、車体幅方向に架設
したステアリングサポートメンバに取付けられている。
本発明は、上記の構造に係る自動車の車体前部構造に関
するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、自動車（ここでは四輪車をいう）
のステアリングは乗員（運転者）に対向した位置に、略
車体前後方向に延びたステアリングコラムを軸として回
転自在に設けられている。図５ないし図７に示すよう
に、自動車１の前部には、ステアリングコラム２が概略
ステアリングサポートメンバ（以下、ステアリングサポ
ートパイプという）３に支持されて、ステアリング４を
車室内に配している。ステアリングサポートパイプ３は
その両端を、車体両側のフロントピラーを形成するダッ
シュサイドパネル５にステアリングサポートブラケット
６を介して取付けられている。

【０００３】また、ステアリングコラム２が左側のダッ
シュサイドパネル５に近い位置に取付けられ（左ハンド
ルの場合）、ステアリングサポートパイプ３の左側のダ
ッシュサイドパネル５とステアリングコラム２との間
に、リーンホース７がステアリングサポートパイプ３と
併設されている。また、ステアリングサポートパイプ３
およびリーンホース７によってステアリングコラムブラ
ケット８が取付けられ、ステアリングコラム２はステア
リングコラムブラケット８を介してステアリングサポー
トパイプ３に取付けられることになる。

【０００４】また、ステアリングサポートパイプ３の車
体前方側にはカウル９が配設され、この間に棒状のステ
ィフナ１０をブラケット11、12を介してリーンホース７
の端部位置から車体前後方向に取付け、ステアリング系
の振動を低減させている。

【０００５】ステアリングコラム２は、非常時に乗員が
ステアリング４に衝突した場合、ステアリングコラム内
部のエネルギー吸収機構を動作させることで乗員に加わ
る衝撃を低減するようになっている。また、ステアリン
グ４にはエアバッグが取付けられているものもあり、同
様に乗員がステアリング４に衝突した場合、乗員に加わ
る衝撃を低減させるようになっている。

【０００６】ところで、スティフナ１０を取付けない場
合（図８参照）、通常、ステアリング４と乗員が対峙し
ており、前方への衝突時には図９に示すように、ステア
リングコラム２を取付けたステアリングサポートパイプ
３が変形することが考えられる。この場合、ステアリン
グコラム２が変位して、ステアリングコラム２のエネル
ギー吸収機構やエアバッグが設定通りに機能しない虞が
ある。そこで、ステアリングコラム２付近にカウル９と
ステアリングサポートパイプ３を結ぶスティフナ１０を
設けることで、乗員がステアリング４に衝突した場合の
ステアリングサポートパイプ３の変形を低減させること
ができる。この場合、図１０に示すように、スティフナ
１０の取付位置をステアリングコラム付近に位置させる
ことでステアリング４への振動伝達を抑えるようにする
ことができ、また、スティフナ１０の取付位置を中央
（ｐ）に持ってくることで全体の剛性を高めてもよい。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】前述したように、ステ
ィフナ１０をカウル９とステアリングサポートパイプ３
との間に設けることにより、剛性を高めたり振動低減を
図ることができる。しかしながら、図１１に示すよう
に、非常時において、乗員側車体前部のオフセット衝突
を起こした場合、その衝突程度により、車体変形がカウ
ル９まで及んだ状況にあっては、スティフナ１０がステ
アリングサポートパイプ３を支持すると共に、ステアリ
ングサポートパイプ３が乗員側に押し出される形とな
り、ステアリング４の後方移動量が大きくなり、乗員へ
の衝撃が増加する可能性が高くなる。

【０００８】そこで、一例として、ステアリングコラム
２のほぼ同じ箇所に第１、第２ブレース（本願でいうス
ティフナに相当する）の一端を固定して前方に延ばし、
第１ブレースの他端を車幅方向外側のフロントピラー付
近に取付け、第２ブレースは前方のリインホースメント
または車幅方向外側の第１ブレースに近接した位置に取
付けることが提案されている（実公平８−６６７４号公
報）。しかし、第１、第２ブレースとも車体幅方向に対
し、ステアリングコラムの位置と同じかもしくは外方に
その他端が固定されているので、車両の正面衝突時には
座屈、屈曲がスムーズに行われるが、オフセット衝突時
には効果のほどは不明である。

【０００９】本発明は、ステアリングに伝わる振動を抑
制すると共に、非常時の車両前部のオフセット衝突時に
おける乗員の傷害を軽減するような車体前部構造を提供
することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するために、請求項１の発明は、車両両側のフロントピ
ラーを形成するダッシュサイドパネル間に、ステアリン
グコラムを支持するステアリングサポートメンバを車体
幅方向に架設し、前記ステアリングサポートメンバと、
この前方に位置する車体幅方向に設けた剛性部材との間
にスティフナを車体前後方向に渡設した車体前部構造に
おいて、前記スティフナの前端は前記剛性部材の車体幅
方向の中央部付近に取付けられ、前記スティフナの後端
は二つに分岐してステアリングサポートメンバの車体幅
方向の外方に取付けられていることを特徴とする。

【００１１】請求項２の発明は請求項１記載の発明にお
いて、前記スティフナは前後端に、前記剛性部材および
前記ステアリングサポートメンバのブラケットをそれぞ
れ備え、前記スティフナの前後端をねじ止めによってそ
れぞれに取付けたことを特徴とする。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付
図面に基づいて説明する。図１（ａ），（ｂ）に示すス
テアリングサポートパイプ３は車両両側のダッシュサイ
ドパネル間に、ステアリングサポートブラケット６を介
して取付けられる。ステアリングサポートパイプ３には
ステアリングコラムブラケット８を介してステアリング
コラム２が取付けられる。

【００１３】スティフナ１３は左右対称にＶ字形状に製
作され、カウル側を１点で固定し、ステアリングサポー
トパイプ３側を２点で固定する。したがって、スティフ
ナ１３の前端にはフロントブラケット１１が設けられ、
フロントブラケット１１を介してカウル（剛性部材）９
の車体中心付近にボルトで取付けている。また、スティ
フナ１３の後端にはそれぞれリアブラケット１２が設け
られ、リアブラケット１２を介してステアリングサポー
トパイプ３の車体中心付近より左右外方２点にボルト１
４によりねじ止めされている（図４参照）。なお、ステ
アリングサポートパイプ３のスティフナ１３を取付ける
箇所は、パイプ形状として強度を持たせているが、厚板
として強度を持たせてもよい。

【００１４】このように、Ｖ字型のスティフナ１３を装
着することで、ステアリングサポートパイプ３にはステ
ィフナ１３が直角より傾けた角度で取付けられることに
なり、カウル９の後退時にスティフナ１３の荷重がステ
アリングサポートパイプ３に二分される。また、スティ
フナ１３はステアリングサポートパイプ３の２箇所で取
付けられるので、スティフナ取付点でのステアリングサ
ポートパイプ３を押す力が半減され、ステアリングサポ
ートパイプ３の変形が少なくなる。さらに、剛性の向上
により、より高い周波数の振動まで振動低減の効果が得
られる。

【００１５】したがって、乗員側へのオフセット衝突の
場合、図２に示すように、スティフナ１３のカウル側取
付位置を車体中心付近とすることで、カウル９は衝突側
の後退量が大きく、車体中心付近の後退量は衝突側より
小さく、非衝突側の後退量はさらに小さい。そして、カ
ウル後退によりスティフナ１３がステアリングサポート
パイプ３を押すときに、従来、点で押していたものが線
（２箇所）で押すことになり、ステアリングサポートパ
イプ３の変形が抑制される。これによりカウル後退の影
響を減じ、ステアリングサポートパイプ３の変形が減
り、ステアリング後退量の増加を防ぐ。

【００１６】また、図３に示すように、スティフナ１３
の形状をＹ字型に製作してもよく、このステアリングサ
ポートパイプ３とカウル９との間に装着しても上記と同
様の効果が得られる。また、カウル９からスティフナ１
３への結合が確実になりステアリング４への振動が低減
される。このように、スティフナ１３の後端が左右対称
に分岐されてステアリングサポートパイプ３を押す力が
均一に分散され、ステアリングサポートパイプ３の変形
を防いでいるが、スティフナ１３の分岐する一方の部材
の強度を変えることにより左右対称の形状にすることも
ない。

【００１７】本願発明の場合、図４に示すように、ステ
アリングサポートパイプ３とカウル９との取付におい
て、スティフナ１３をブラケット11、12を介してボルト
１４で締め付けている。この箇所は板金塗装した後、実
装品を取付ける箇所でもあり、実装品の装着前に溶接に
よってスティフナ１３を結合させると、その後に塗装す
ることになり、生産ラインにおける手順を溶接工程の割
込みのため大幅に変更しなければならないが、ボルト締
めにより生産ラインのどこにでも割込みが自由になり、
生産ラインへの影響は少ない。

【００１８】

【発明の効果】本発明は以上述べた通りであり、請求項
１に記載の発明では、後端を二つに分岐したスティフナ
により、車体前部の剛性部材側は車体幅方向中央位置に
スティフナの前端を取付け、ステアリングサポートメン
バにスティフナの後端を二箇所で取付けている。したが
って、オフセット衝突時に剛性部材後退の影響が少な
く、また、ステアリングサポートメンバを押す力が分散
され、ステアリングサポートメンバの変形を低減でき
る。また、ステアリングサポートメンバにおいてスティ
フナの取付点が増えることで、高い振動数の振動に対し
ても振動の低減効果が得られる。請求項２に記載の発明
では請求項１の発明において、スティフナの取付手段が
ねじ止めなので、工場の生産ラインにおいてスティフナ
の装着が溶接工程ではなく、部品の組付け工程で行える
ので、自動車製造時の手順（順番）中、任意な工程でス
ティフナの装着が行え、組付け性の自由度が大きくな
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態におけるステアリング支持
構造の前方斜視（ａ）と上面視（ｂ）の模式図である。

【図２】図１（ｂ）のステアリング支持構造のオフセッ
ト衝突時の模式図である。

【図３】他の実施の形態のおけるステアリング支持構造
の模式図である。

【図４】本発明の実施の形態におけるステアリングサポ
ートメンバとスティフナとの取付構造を示す断面図であ
る。

【図５】従来の四輪車の要部斜視図である。

【図６】図５に示すステアリング支持構造の斜視図であ
る。

【図７】図６に示すステアリング支持構造を斜め前方か
ら見た斜視図である。

【図８】従来のステアリング支持構造の各部の配置を示
す上面視の模式図である。

【図９】図８に示すステアリング支持構造の衝突時にお
ける模式図である。

【図１０】従来のステアリング支持構造の上面視の模式
図である。

【図１１】図１０に示すステアリング支持構造の衝突時
における模式図である。

【符号の説明】

２ ステアリングコラム ３ ステアリングサポートメンバ ５ ダッシュサイドパネル ９ 剛性部材（カウル） １２ ブラケット １３ スティフナ １４ ボルト

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 車両両側のフロントピラーを形成するダ
   ッシュサイドパネル間に、ステアリングコラムを支持す
   るステアリングサポートメンバを車体幅方向に架設し、
   前記ステアリングサポートメンバと、この前方に位置す
   る車体幅方向に設けた剛性部材との間にスティフナを車
   体前後方向に渡設した車体前部構造において、 前記スティフナの前端は前記剛性部材の車体幅方向の中
   央部付近に取付けられ、前記スティフナの後端は二つに
   分岐してステアリングサポートメンバの車体幅方向の外
   方に取付けられていることを特徴とする車体前部構造。
2. 【請求項２】 前記スティフナは前後端に、前記剛性部
   材および前記ステアリングサポートメンバのブラケット
   をそれぞれ備え、前記スティフナの前後端をねじ止めに
   よってそれぞれに取付けたことを特徴とする請求項１記
   載の車体前部構造。