JP5895366B2 - ノンアスベスト摩擦材組成物 - Google Patents
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すなわち、本発明は、下記のとおりである。
2.前記チタン酸塩が、燐片状、板状又は柱状である上記1に記載のノンアスベスト摩擦材組成物。
3.前記チタン酸塩が、チタン酸リチウムカリウム又はチタン酸マグネシウムカリウムである上記1又は2に記載のノンアスベスト摩擦材組成物。
4.前記三硫化アンチモンの含有量が、1〜10質量%である上記1〜3のいずれかに記載のノンアスベスト摩擦材組成物。
5.上記1〜4のいずれかに記載のノンアスベスト摩擦材組成物を成形してなる摩擦材。
6.上記1〜4のいずれかに記載のノンアスベスト摩擦材組成物を成形してなる摩擦材と裏金とを用いて形成される摩擦部材。
[ノンアスベスト摩擦材組成物]
本発明のノンアスベスト摩擦材組成物は、結合材、有機充填材、無機充填材及び繊維基材を含む摩擦材組成物であって、該摩擦材組成物中の銅の含有量が銅元素として5質量%以下であり、銅及び銅合金以外の金属繊維の含有量が0.5質量%以下であり、チタン酸塩及び三硫化アンチモンを含有し、該チタン酸塩の含有量が10〜35質量%であることを特徴とする。
上記構成により、従来品と比較して制動時に生成する摩耗粉中の銅が少ないことから環境に優しく、高温での耐摩耗性に優れ、かつメタルキャッチを抑制できるという効果を発現することができる。
結合材は、摩擦材組成物に含まれる有機充填材、無機充填材及び繊維基材等を一体化し、強度を与えるものである。本発明のノンアスベスト摩擦材組成物に含まれる結合材としては特に制限はなく、通常、摩擦材の結合材として用いられる熱硬化性樹脂を用いることができる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂;アクリルエラストマー分散フェノール樹脂及びシリコーンエラストマー分散フェノール樹脂等の各種エラストマー分散フェノール樹脂;アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂及びアルキルベンゼン変性フェノール樹脂等の各種変性フェノール樹脂等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。特に、良好な耐熱性、成形性及び摩擦係数を与えることから、フェノール樹脂、アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂を用いることが好ましい。
有機充填材は、摩擦材の音振性能や耐摩耗性等を向上させるための摩擦調整剤として含まれるものである。本発明のノンアスベスト摩擦材組成物に含まれる有機充填材としては、上記性能を発揮できるものであれば特に制限はなく、通常、有機充填材として用いられる、カシューダストやゴム成分等を用いることができる。
上記カシューダストは、カシューナッツシェルオイルを硬化させたものを粉砕して得られる、通常、摩擦材に用いられるものであればよい。
上記ゴム成分としては、例えば、タイヤゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
また、カシューダストとゴム成分とを併用してもよく、カシューダストをゴム成分で被覆したものを用いてもよいが、音振性能の観点から、カシューダストとゴム成分とを併用することが好ましい。
無機充填材は、摩擦材の耐熱性の悪化を避けるための摩擦調整剤として含まれるものであり、本発明において無機充填剤としてチタン酸塩及び三硫化アンチモンを必須とする。
チタン酸塩としては、チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸マグネシウムカリウム等を用いることができる。チタン酸カリウムとしては、例えば、K2O・6TiO2、K2O・8TiO2等が挙げられる。チタン酸リチウムカリウムとしては、例えば、チタン源とリチウム源とカリウム源とを混合して製造したK0.3-0.7Li0.27Ti1.73O3.8-3.95で表される組成のものなどが挙げられる。チタン酸マグネシウムカリウムとしては、例えば、チタン源とマグネシウム源とカリウム源とを混合して製造したK0.2-0.7Mg0.4Ti1.6O3.7-3.95で表される組成のものなどが挙げられる。
これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、高温での耐摩耗性をより向上させることから、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸マグネシウムカリウムが好ましい。
チタン酸塩の形状は、例えば走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)観察から解析することができる。
ここで、チタン酸塩の形状についての定義の一例を記載する。チタン酸塩に外接する直方体のうち最小の体積をもつ直方体(外接直方体)の最も長い辺を長径L、次に長い辺を短径B、最も短い辺を厚さTとして(B>Tとする)、チタン酸塩の形状をアスペクト比(L/T、L/B)で定義する。
繊維状のチタン酸塩とは、L/Tが10よりも大きく、L/Bが10よりも大きいチタン酸塩である。例えば、ティスモD、ティスモN(いずれも、大塚化学株式会社製)等が挙げられる。
柱状のチタン酸塩とは、L/T=2〜10、L/B=2〜10であるチタン酸塩である。TOFIX−S(東邦マテリアル株式会社製)などが挙げられる。
板状のチタン酸塩とは、L/Tが10よりも大きく、L/Bが10よりも小さいチタン酸塩である。例えば、TXAX−A、TXAX−MA、TXAX−KA、TXAX−CT(いずれも、株式会社クボタ製)等が挙げられる。
また、粒子状のチタン酸塩のうち、鱗のような薄板状の形状のものを鱗片状のチタン酸塩といい、例えば、テラセスPS、テラセスPM、テラセスL、テラセスTF−S(いずれも、大塚化学株式会社製)等が挙げられる。
上記形状の中でも、高温の耐摩耗性をより向上させるために、燐片状、柱状又は板状のものを用いることが好ましい。
また、平均粒子径が1〜50μm、比表面積が0.5〜10m2/gのものが好ましい。なお、平均粒子径はメジアン径で表され、メジアン径とは、レーザー回折法の体積分布から求めた50%径をいう。また、比表面積は吸着ガスとして窒素ガスを用いたBET法等により求めることができる。
本発明のノンアスベスト摩擦材組成物における三硫化アンチモンの含有量は、0.5〜12質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、1〜6質量であることがさらに好ましく、2〜5質量%であることが特に好ましい。三硫化アンチモンの含有量を0.5〜12質量%、好ましくは1〜10質量%とすることで優れた耐摩耗性を示し、メタルキャッチの生成を避けることができる。
上記無機充填材としては、例えば、硫化錫、二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化ビスマス、硫化亜鉛、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ドロマイト、コークス、黒鉛、マイカ、酸化鉄、バーミキュライト、硫酸カルシウム、タルク、クレー、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ムライト、クロマイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、シリカ、酸化鉄、γ−アルミナ等の活性アルミナ等を用いることができ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、対面材への攻撃性低下の観点から、黒鉛、硫酸バリウムを含有することが好ましく、摩擦係数向上の観点から、酸化ジルコニウムを含有することが好ましい。
繊維基材は、摩擦材において補強作用を示すものである。
本発明のノンアスベスト摩擦材組成物に含まれる繊維基材としては、通常、繊維基材として用いられる、無機繊維、金属繊維、有機繊維、炭素系繊維等を用いることができ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、ここでいう繊維基材には上述したチタン酸塩の繊維状のものは含まれない。
なお、ここでいう鉱物繊維とは、スラグウール等の高炉スラグ、バサルトファイバー等の玄武岩、その他の天然岩石等を主成分として溶融紡糸した人造無機繊維であり、Al元素を含む天然鉱物であることがより好ましい。具体的には、SiO2、Al2O3、CaO、MgO、FeO、Na2O等が含まれるもの、又はこれら化合物が1種又は2種以上含有されるものを用いることができ、より好ましくはこれらのうちAl元素を含むものが、鉱物繊維として用いることができる。摩擦材組成物中に含まれる鉱物繊維全体の平均繊維長が大きくなるほど摩擦組成物中の各成分との接着強度が低下する傾向があるため、鉱物繊維全体の平均繊維長は500μm以下が好ましく、より好ましくは100〜400μmである。ここで、平均繊維長とは、該当する全ての繊維の長さの平均値を示した数平均繊維長のことをいう。例えば200μmの平均繊維長とは、摩擦材組成物原料として用いる鉱物繊維を無作為に50個選択し、光学顕微鏡で繊維長を測定し、その平均値が200μmであることを示す。
銅又は銅合金の繊維としては、銅繊維、黄銅繊維、青銅繊維等を用いることができ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
銅及び銅合金以外の金属繊維としては、例えば、アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、チタン、ニッケル、マグネシウム、シリコン等の金属単体又は合金形態の繊維や、鋳鉄繊維等の金属を主成分とする繊維が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
上記炭素系繊維としては、耐炎化繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、活性炭繊維等を用いることができ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のノンアスベスト摩擦材組成物は、前記の結合材、有機充填材、無機充填材、繊維基材以外に、必要に応じてその他の材料を配合することができる。
例えば、本発明のノンアスベスト摩擦材組成物中における、銅全体の含有量が、銅元素として5質量%以下となる範囲で、銅粉、黄銅粉、青銅粉等の金属粉末等を配合することができる。また、耐摩耗性の観点から、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系ポリマー等の有機添加剤等を配合することができる。
また、本発明は、上述のノンアスベスト摩擦材組成物を用いた摩擦材及び摩擦部材を提供する。
本発明のノンアスベスト摩擦材組成物は、これを成形することにより、自動車等のディスクブレーキパッドやブレーキライニング等の摩擦材として使用することができる。本発明の摩擦材は高温での耐摩耗性及びメタルキャッチ制御に優れるため、制動時に負荷の大きいディスクブレーキパッドの摩擦材に好適である。
さらに、上記摩擦材を用いることにより、該摩擦材を摩擦面となるように形成した摩擦部材を得ることができる。摩擦材を用いて形成することができる摩擦部材としては、例えば、下記の構成等が挙げられる。
(2)裏金と、該裏金の上に摩擦面となる本発明の摩擦材組成物からなる摩擦材とを有する構成。
(3)上記(2)の構成において、裏金と摩擦材との間に、裏金の接着効果を高めるための表面改質を目的としたプライマー層、及び、裏金と摩擦材との接着を目的とした接着層をさらに介在させた構成。
上記裏金は、摩擦部材の機械的強度の向上のために、通常、摩擦部材として用いるものであり、材質としては、金属または繊維強化プラスチック等を用いることができ、例えば、鉄、ステンレス、無機繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック等が挙げられる。プライマー層及び接着層としては、通常、ブレーキシュー等の摩擦部材に用いられるものであればよい。
具体的には、本発明のノンアスベスト摩擦材組成物を、レディーゲミキサー、加圧ニーダー、アイリッヒミキサー等の混合機を用いて均一に混合し、この混合物を成形金型にて予備成形し、得られた予備成形物を成形温度130℃〜160℃、成形圧力20〜50MPaの条件で2〜10分間で成形し、得られた成形物を150〜250℃で2〜10時間熱処理する。必要に応じて塗装、スコーチ処理、研磨処理を行うことによって摩擦材を製造することができる。
なお、「上張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材であり、「下張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材と裏金との間に介在する、摩擦材と裏金との接着部付近の剪断強度、耐クラック性向上を目的とした層のことである。
なお、実施例及び比較例に示す評価は次のように行った。
耐摩耗性は、制動前ブレーキ温度500℃、制動前速度60km/h、減速度0.3Gで1000回制動を行い、試験前後の摩擦材厚みから、摩擦材の摩耗量を算出した。
(2)メタルキャッチ生成の評価
メタルキャッチ生成の評価では、制動前速度60km/h、制動条件1.96m/s2、2.94m/s2、3.92m/s2でそれぞれ2回ずつ、制動前温度を50℃から300℃まで50℃間隔で昇温する計36回の制動を行った後、250℃から50℃まで50℃間隔で降温し、かつ上記同様の制動条件による計30回の制動を行った。試験完了後、摩擦材摺動面に生成したメタルキャッチの大きさと数を、以下の基準で評価した。
A:メタルキャッチの生成無し
B:長径2mm未満のメタルキャッチが1個〜2個生成
C:長径2mm未満のメタルキャッチが3個以上生成
D:長径2mm以上のメタルキャッチが1個以上生成
(3)摩擦係数の評価
摩擦係数は、自動車技術会規格JASO C406に基づき測定し、第2効力試験における摩擦係数の平均値を算出した。
ディスクブレーキパッドの作製
表1に示す配合比率に従って材料を配合し、実施例及び比較例の摩擦材組成物を得た。なお、表1の各成分の配合量の単位は、摩擦材組成物中の質量%である。
この摩擦材組成物をレディーゲミキサー(株式会社マツボー社製、商品名:レディーゲミキサーM20)で混合し、この混合物を成形プレス(王子機械工業株式会社製)で予備成形し、得られた予備成形物を成形温度145℃、成形圧力30MPaの条件で5分間成形プレス(三起精工株式会社製)を用いて日立オートモティブシステムズ株式会社製の裏金と共に加熱加圧成形し、得られた成形品を200℃で4.5時間熱処理し、ロータリー研磨機を用いて研磨し、500℃のスコーチ処理を行って、ディスクブレーキパッド(摩擦材の厚さ11mm、摩擦材投影面積52cm2)を得た。
作製したディスクブレーキパッドについて、前記の評価を行った結果を表1に示す。
(結合材)
・フェノール樹脂:日立化成工業株式会社製(商品名:HP491UP)
(有機充填剤)
・カシューダスト:東北化工株式会社製(商品名:FF−1090)
(無機充填剤)
・チタン酸塩1:大塚化学株式会社製 (商品名:テラセスL)
成分:チタン酸リチウムカリウム、形状:燐片状
メジアン径:25μm、比表面積:0.6m2/g
・チタン酸塩2:大塚化学株式会社製 (商品名:テラセスPS)
成分:チタン酸マグネシウムカリウム、形状:燐片状
メジアン径:4μm、比表面積:2.5m2/g
・チタン酸塩3:大塚化学株式会社製 (商品名:テラセスTF−S)
成分:チタン酸カリウム、形状:燐片状
メジアン径:7μm、比表面積:3.5m2/g
・チタン酸塩4:株式会社クボタ製 (商品名:TXAX−MA)
成分:チタン酸カリウム、形状:板状
比表面積:1.5m2/g
・チタン酸塩5:東邦マテリアル株式会社製 (商品名:TOFIX−S)
成分:チタン酸カリウム、形状:柱状
メジアン径:6μm、比表面積:0.9m2/g
・チタン酸塩6:大塚化学株式会社製 (商品名:ティスモD)
成分:チタン酸カリウム、形状:繊維状
比表面積:7.0m2/g
・黒鉛:TIMCAL社製(商品名:KS75)
・三硫化アンチモン:日本精鉱株式会社製(商品名:P3)
(繊維基材)
・アラミド繊維(有機繊維):東レ・デュポン株式会社製(商品名:1F538)
・鉄繊維(金属繊維):GMT社製(商品名:#0)
・銅繊維(金属繊維):Sunny Metal社製(商品名:SCA−1070)
・鉱物繊維(無機繊維):LAPINUS FIBERS B.V製(商品名:RB240 Roxul 1000、平均繊維長300μm)
Claims (4)
- 結合材、有機充填材、無機充填材及び繊維基材を含む摩擦材組成物であって、該摩擦材組成物中の銅の含有量が銅元素として5質量%以下であり、銅及び銅合金以外の金属繊維の含有量が0.5質量%以下であり、チタン酸塩及び三硫化アンチモンを含有し、該チタン酸塩が、チタン酸リチウムカリウム又はチタン酸マグネシウムカリウムであり、該チタン酸塩の含有量が14〜20質量%であり、該三硫化アンチモンの含有量が2〜6質量%であり、銅又は銅合金の繊維を含有する、ノンアスベスト摩擦材組成物。
- 前記チタン酸塩が、燐片状、板状又は柱状である請求項1に記載のノンアスベスト摩擦材組成物。
- 請求項1又は2に記載のノンアスベスト摩擦材組成物を成形してなる摩擦材。
- 請求項1又は2に記載のノンアスベスト摩擦材組成物を成形してなる摩擦材と裏金とを用いて形成される摩擦部材。
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