以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
本実施の形態に係るインクジェットプリンタ1は、記録用紙Pに対する印刷のほか、画像の読み取りなども行うことが可能な、いわゆる複合機であり、図1に示すように、印刷部2(印刷装置)、読取部3(読取装置)、操作パネル4などを備えている。また、インクジェットプリンタ1の動作は、制御装置50(図4参照)によって制御されている。
印刷部2は、記録用紙Pに対する印刷を行うための部分であり、図1、図2に示すように、インクジェットプリンタ1の外部に露出した給紙トレイ11及び排紙トレイ12と、インクジェットプリンタ1の内部に設けられたキャリッジ13、インクジェットヘッド14及び用紙搬送ローラ15とを備えている。給紙トレイ11は、記録用紙Pを供給するための部分である。排紙トレイ12は、印刷完了後の記録用紙Pが排出される部分である。
キャリッジ13は、2本のガイドレール16に案内されて走査方向に往復移動する。インクジェットヘッド14は、キャリッジ13に搭載されており、その下面に形成された複数のノズル10からインクを吐出する。複数のノズル10は、走査方向と直交する第1搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、インクジェットヘッド14には、このようなノズル列9が、走査方向に沿って4つ配列されている。用紙搬送ローラ15は、記録用紙Pを第1搬送方向に搬送する。
そして、印刷部2では、給紙トレイ11に供給され、記録用紙Pを用紙搬送ローラ15で第1搬送方向に搬送しつつ、キャリッジ13とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド14から記録用紙Pにインクを吐出してドットを形成することによって、記録用紙Pに印刷を行う。また、印刷が完了した記録用紙Pは、用紙搬送ローラ15によってさらに第1搬送方向に搬送されることで、排紙トレイ12に排出される。
読取部3は、原稿台21、ADFユニット22、読取素子23などを備えている。原稿台21は、例えばガラスなど、透光性のある材料からなり、インクジェットプリンタ1の上面に設けられている。ADFユニット22は、原稿台21の上方に配置されており、給紙部31、排紙部32、複数のローラ33a〜33e、複数の案内部材34a〜34cなどを備えている。
給紙部31は、読み取られる画像が印刷された記録用紙Pを配置するための部分であり、ADFユニット22の上端部に設けられている。排紙部32は、画像の読み取りが完了した記録用紙Pが排出される部分であり、給紙部31の下方に設けられている。
ローラ33aは、給紙部31に設けられており、給紙部31に配置された原稿をADFユニット22の内部に搬送する。ローラ33bは、給紙部31と排紙部32との間の高さに設けられており、ローラ33aによって給紙部31から搬送されてきた記録用紙Pを排紙部32に向けて搬送する。ローラ33cは、ローラ33bの上端部との間で記録用紙P挟んで、記録用紙Pを搬送する。ローラ33dは、ローラ33bの下端部とので記録用紙P挟んで、記録用紙Pを搬送する。ローラ33eは、画像の読み取りが完了した記録用紙Pを搬送して、排紙部32に排出させる。
案内部材34aは、ローラ33bの外周面に沿うように設けられており、ローラ33bによって搬送される記録用紙Pを、ローラ33bの外周面に沿って案内する。案内部材34bは、ローラ33bのほぼ真下に配置されており、ローラ33bのほぼ真下まで搬送されてきた記録用紙Pを走査方向と平行な第2搬送方向(図3の右側)に案内する。案内部材34cは、案内部材34bの図3における右側に、案内部材34bと間隔をあけて配置されており、案内部材34bよりも下流側まで搬送されてきた記録用紙Pを、排紙部32に向けて案内する。
読取素子23は、例えば、CCD方式やCIS方式の読取素子であり、原稿台21の下方に配置されている。また、読取素子23は、ガイド部材39に沿って、走査方向に原稿台21のほぼ全長にわたって移動可能となっている。
そして、読取部3では、走査方向(読取方向)に移動させた読取素子23により、透光性のある原稿台21に配置された記録用紙Pに印刷された画像を読み取る。あるいは、案内部材34bと案内部材34cとの間の隙間38のほぼ真下に移動させた読取素子23により、ADFユニット22によって搬送されて隙間38の上方を通過する記録用紙Pに印刷された画像を読み取る。
次に、制御装置50の構成について説明する。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)61、ROM(Read Only Memory)62、RAM(Random Access Memory)63などによって構成された制御部51と、各種制御回路などよって構成されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)52とを備えている。制御装置50は、キャリッジ13を駆動するキャリッジモータ41、インクジェットヘッド14を駆動するドライバIC42、印刷部2の用紙搬送ローラ15を駆動するローラモータ43、ADFユニット22のローラ33a、33b、33eを駆動するローラモータ44、読取素子23を移動させる読取素子モータ45、読取素子23などの動作を制御することによって、インクジェットプリンタ1に、後述するテストパターンなどの画像の印刷、テストパターンなどの画像の読取、インクジェットヘッド14におけるインクの吐出タイミングの調整処理などを実行させる。
次に、インクジェットプリンタ1において、インクジェットヘッド14におけるインクの吐出タイミングを調整する手順について、図5のフローチャートを用いて説明する。図5のフローで示す処理は、例えば、インクジェットプリンタ1の製造段階、最初の電源投入時など、ユーザがインクジェットプリンタ1を用いて実際に印刷を行うよりも前に実行される。
インクジェットヘッド14におけるインクの吐出タイミングを調整するためには、まず、印刷部2において、記録用紙Pにドット100(図8(a)参照)を形成することによって、記録用紙PにテストパターンTを印刷する(ステップS101、以下、単にS101などとする)(パターン印刷ステップ)。テストパターンTは、図6(a)に示すように、第1搬送方向両側の縁H1、H2が走査方向と平行な一組の平行対向辺を形成し、走査方向両側の縁F1、F2が、それぞれ、第1搬送方向に対して互いに逆向きに所定角度だけ傾いた残りの2辺を形成する、略台形のパターンである。なお、本実施の形態では、縁F1、F2を含むテストパターンTの走査方向における両端部が、本発明に係る判定用領域に相当する。また、テストパターンTのこれら2つの判定用領域の間に位置する部分が、本発明に係る濃度情報取得用領域に相当する。すなわち、本実施例では判定用領域と濃度情報取得用領域とが走査方向において連続している。
次に、テストパターンTが印刷された記録用紙Pを、縁H1が先端側となるような向きで、ADFユニット22により搬送する。これにより、記録用紙Pは、テストパターンTの印刷時に第1搬送方向を向いていた長手方向が、隙間38の上方を通過するときに第2搬送方向を向く。そして、記録用紙Pが隙間38の上方を通過するときに、読取素子23でテストパターンTを読み取る(S102、読取ステップ)。このとき、第2搬送方向に搬送される記録用紙Pに印刷されたテストパターンTが、固定された読取素子23により読み取られるため、テストパターンTは、第2搬送方向と反対方向である読取方向に読み取られることとなる。なお、このとき、記録用紙Pを、縁H2が先端側となるような向きで、ADFユニット22により搬送してもよい。
次に、テストパターンTの読み取り結果から、テストパターンTの各部分の濃度情報を取得する(S103、濃度情報取得ステップ)。そして、テストパターンTの読み取り結果から、縁F1r、F2rの位置の情報、具体的には、縁F1r、F2rを形成するドット(後述する図8の「11」〜「71」のドット100)の位置を取得する(S104、縁情報取得ステップ)。ここで、縁F1r、F2rとは、テストパターンTの読取結果から得られた縁のことであり、印刷されたテストパターンTの縁F1、F2との区別を明確にするために符号を異ならせている。また、縁F1r、F2rを形成するドットの位置は、例えば、読み取り結果に対して、sobelフィルタをかけるなどの画像処理を行うことにより取得する。なお、上記S103とS104の前後は逆であってもよいし、これら2つの処理を同時に進行させてもよい。
次に、S104で読み取った縁F1r、F2rの位置情報、すなわち、縁F1r、F2rを形成するドットの位置情報に応じて、S103で読み取った濃度情報を補正する濃度情報補正処理を実行する(S105、補正ステップ)。濃度情報補正処理について説明すると、濃度情報補正処理では、図7に示すように、まず、縁F1r、F2rが、読取方向に対して上記所定角度だけ傾いた直線であるか否かを判定する(S201)。
より詳細に説明すると、印刷されたテストパターンTの縁F1、F2は、読取時には読取方向に対して所定角度だけ傾いた直線を形成する。そのため、記録用紙PがADFユニット22により正常に搬送されていれば、読み取り結果から得られる縁F1r、F2rも、読取方向に対して所定角度だけ傾いた直線を形成する。これに対して、記録用紙Pが、ADFユニット22により、第2搬送方向と直交する方向(直交方向)にずれながら搬送されてしまった場合には、縁F1r、F2rは、読取方向に対する角度が上記所定角度とは異なる直線、あるいは曲線となる。
すなわち、S201で、読み取り結果から得られる縁F1r、F2rが、読取方向に対して所定角度だけ傾いた直線であるか否かを判定することで、記録用紙PがADFユニット22により適切な方向に搬送されたか否かがわかる。
ここで、読み取り結果から得られる縁F1r、F2rが読取方向に対して所定角度だけ傾いた直線であるか否かの判定方法について説明する。読み取り結果から得られる縁F1rが、読取方向に対して所定角度だけ傾いた直線であるか否かを判定するためには、S104で検出した縁F1rを形成するドット100(図8の「11」、「21」、・・、「71」で示すドット100)のうち、最初に読み取られる「11」を通り、且つ、読取方向に対して上記所定角度だけ傾いた直線を算出し、次に読み取られる「21」のドット100がこの直線上に位置しているか否かを判定する。具体的には、例えば、算出した直線と「21」のドット100の中心との距離を算出し、当該距離が所定距離以下であれば、直線上に位置していると判定する。
そして、「21」のドット100が上記直線上に位置していると判定された場合には、上述したのと同様にして「31」、「41」、・・、「71」のドット100が上記直線上に位置しているか否かを順に判定する。ただし、あるドット100(例えば「M1」(M=2、3、4、・・、7)のドット100)が上記直線上に位置していないと判定された場合には、それ以降のドット100についての判定は行わない。
そして、「M1」のドット100が、上記直線上に位置していないと判定された場合には、さらに「M1」のドット100を通り、且つ、読取方向に対して所定角度だけ傾いた直線を算出し、上述したのと同様にして「(M+1)1」、「(M+2)1」、・・のドット100が、算出された直線上に位置しているか否かを判定する。そして、以下、最後のドット100(図8では「71」のドット100)についての判定がされるまで、上述したような判定を繰り返す。
このとき、テストパターンTの読取時における記録用紙Pの搬送方向が正常であれば、縁F1rを形成するドット100が、読取方向に対して所定角度だけ傾いた1以上の直線を形成していると判定される。
具体的に説明すると、印刷したテストパターンTが正常に読み取られていれば、図8(a)に示すように、縁F1rを形成する全てのドット100(「11」、「21」、・・、「71」のドット100)が1つの直線L11上に位置すると判定される。
また、読取時の記録用紙Pの搬送方向は正常であったが、後述するように、テストパターンTの一部分が読み取られなかった場合には、例えば、図8(b)に示すように、「11」〜「31」のドット100が直線L21上に位置し、「61」、「71」のドット100が直線L21とは別の直線L31上に位置すると判定される。なお、図8(b)は「41」、「42」、・・・のドット100、及び、「51」、「52」、・・・のドット100が読み取られなかった場合を示している。
また、読取時の記録用紙Pの搬送方向は正常であったが、後述するように、テストパターンTの一部分が重複して読み取られた場合には、例えば、図8(c)に示すように、「11」〜「31」のドット100が直線L41上に位置し、「51」〜「71」のドット100が直線L41とは別の直線L51上に位置すると判定される。なお、図8(c)は「41」、「42」、・・・のドット100が3回重複して読み取られた場合を示しており、重複して読み取られた「41」のドット100は、最初に読み取られた「41」のドット100が直線L41上に位置し、最後に読み取られた「41」のドット100が直線L51上に位置している。
また、縁F1rが、読取方向に対する角度が上記所定角度とは異なる直線、あるいは曲線となる場合には、上述したような、読取方向に対して所定角度傾いた直線は得られない。
以上のように、S201では、縁F1rを形成するドット100が、図8(a)〜(c)に示す直線L11〜L51のような、読取方向に対して所定角度傾いた直線を形成しているか否かを判定する。また、縁F2rが読取方向に対して所定角度だけ傾いた直線であるか否かの判定も、上述したのと同様の方法で行う。なお、以下では、縁F2rにおける、直線L11〜L51に対応する直線を、それぞれ、直線L12〜L52として説明を行う(図6(b)、図9(b)、図10(b)参照)。
また、このとき、S102において、記録用紙Pの搬送方向は正常であるが、記録用紙Pが傾いた状態で搬送されることもあり得る。そこで、S201では、縁H1、H2を形成するドット(図8の「11」、「12」・・・のドット100、「71」、「72」・・・のドット100)の位置を検出することによって、縁H1、H2の向きを取得し、縁H1、H2の向きが直交方向と平行となるように、読み取り結果全体を座標変換してから上記判定を行ってもよい。
縁F1r、F2rが読取方向に対して所定角度だけ傾いた直線を形成していると判定された場合には(S201:YES)、縁F1r、F2rの直交方向における位置の、読取方向に沿った変化に、不連続な部分があるか否かを判定する(S202)。
テストパターンTが正常に読み取られていれば、縁F1r、F2rの直交方向の位置の、読取方向に沿った変化は、図6(b)に示すように連続的なものとなる。これに対して、テストパターンTの読取時に、記録用紙Pが一時的に本来の搬送量よりも大きく搬送されてしまった場合には、図9(a)に示すように、テストパターンTの一部の領域(欠損領域Ta)が読み取られない。そして、この場合には、テストパターンTの読み取り結果は、図9(b)に示すように、欠損領域Taの読取方向上流側の端の位置(第1位置)において、縁F1r、F2rの直交方向の位置の、読取方向に沿った変化が不連続になる。ここで、記録用紙Pが一時的に本来の搬送量よりも大きく搬送されてしまう場合とは、例えば、ADFユニット22に搬送される記録用紙Pの後端があるローラから外れたときに、それよりも下流側のローラに引っ張られて、一時的に大きく搬送される場合である。
ここで、S202での具体的な判定方法について説明する。テストパターンTが正常に読み取られており、縁F1r、F2rの直交方向の位置の、読取方向に沿った変化が連続的なものとなる場合、図6(b)、図8(a)に示すように、縁F1r、F2rは、それぞれ、直線L11、L12を形成する。そして、直線L11を延長したときの、読取方向と平行な所定の直線K1との交点を切片C11として求めると、切片C11の位置は変化しない。同様に、直線L12を延長したときの、読取方向と平行な所定の直線K2との交点を切片C12として求めると、切片C12の位置は変化しない。
これに対して、欠損領域Taが読み取られず、縁F1r、F2rの直交方向における位置の、読取方向に沿った変化が不連続になる場合には、図8(b)、図9(b)に示すように、縁F1r、F2rの欠損領域Taよりも読取方向上流側の部分(図8(c)の「11」〜「31」のドット100と、縁F2rのこれらのドットに対応するドット)が、それぞれ、直線L21、L22を形成し、下流側の部分(図8(c)の「51」〜「71」のドット100と、縁F2rのこれらのドットに対応するドット)が直線L31、L32を形成する。そして、縁F1rにおいては、直線L21、L31を延長したときの、直線K1との交点を切片C21、C31として求めると、切片C31が切片C21に対して読取方向上流側にずれている。同様に、縁F2rにおいては、直線L22、L32を延長したときの、直線K2との交点を切片C22、C32として求めると、切片C32の位置が切片C22の位置に対して読取方向上流側にずれている。なお、上記結果は、直線K1、K2が読取方向と平行であれば、直線K1、K2の位置によらず得られるものである。
そこで、S202では、上記切片の位置が読取方向上流側に変化する部分があるときに、縁F1r、F2rの直交方向における位置の、読取方向に沿った変化に不連続な部分があると判定する。そして、S202において、縁F1r、F2rの直交方向における位置の、読取方向に沿った変化に不連続な部分がないと判定された場合には(S202:NO)、そのままS204に進み、あると判定された場合には(S202:YES)、S203の補正処理を行った後にS204に進む。
S203では、テストパターンTの欠損領域Taと読取方向の上流側及び下流側に連続する領域の濃度情報から、欠損領域Taを補間するための補間濃度情報を決定し、図9(c)に示すように、当該補間濃度情報で、欠損領域Taの濃度情報を補間する。なお、図9(c)では、「B」の符号を付した領域が、補間した領域を示している。
より詳細に説明すると、欠損領域Taの位置については、読取方向における、直線L21、L22の下流側の端の位置が、欠損領域Taの読取方向上流側の端の位置(第1位置)となる。また、上述の切片の変化量(切片C31とC21との差、切片C32とC22との差)が、欠損領域Taの読取方向における長さD1(第1長さ)となる。
また、補間濃度情報は、欠損領域Taにおける濃度が、読取方向に沿って、テストパターンTの、欠損領域Taの読取方向上流側に連なる領域における濃度から、読取方向下流側に連なる領域における濃度まで連続的に変化するようなものとなるように、テストパターンTの、欠損領域Taの読取方向上流側に連なる領域における濃度情報と、読取方向下流側に連なる領域における濃度情報とから決定する。
S204では、読み取り結果から得られる縁F1r、F2rの位置の直交方向における位置が、読取方向に沿って変化しない部分があるか否かを判定する。
テストパターンTの読み取り時に、記録用紙Pが一時的に搬送されなかった場合には、テストパターンTのある領域(例えば、図10(a)の一点鎖線で囲んだ領域E)が重複して読み取られる。そして、この場合には、図10(b)に示すように、読取方向において、重複して読み取られた回数に対応した長さD2(第2長さ)にわたる領域Gにおいて、縁F1r、F2rの直交方向における位置は変化しない。ここで、記録用紙Pが一時的に搬送されない場合とは、例えば、ADFユニット22により搬送される記録用紙Pの先端があるローラに到達してから、当該ローラにリップされて搬送され始めるまでの間、記録用紙Pの搬送が一時的に搬送されない場合などである。なお、本実施の形態では、読取方向における領域Eの位置が、本発明に係る第2位置に相当する。
ここで、S204での具体的な判定方法について説明する。テストパターンTの同じ部分が重複して読み取られた場合には、例えば、図8(c)、図10(b)に示すように、縁F1r、F2rの重複して読み取られた位置(第2位置)よりも読取方向上流側の部分(図8(c)の「11」〜「31」のドット100及び最初に読み取られた「41」のドット100と、縁F2rのこれらのドットに対応するドット)が直線L41、L42を形成し、重複して読み取られた位置(第2位置)よりも読取方向下流側の部分(図8(c)の最後に読み取られた「41」のドット100及び「51」〜「71」のドット100と、縁F2rのこれらのドットに対応するドット)が直線L51、L52を形成する。そして、直線L41、L51を延長したときの、上記所定の直線K1との交点を切片C41、S51として求めると、切片C51が切片C41に対して読取方向の下流側にずれる。同様に、直線L42、L52と、上記所定の直線K2との交点を切片C42、C52として求めると、切片C52が切片C42に対して読取方向の下流側にずれる。なお、この結果は、直線K1、K2が読取方向と平行であれば、直線K1、K2の位置によらず得られるものである。
そこで、S204では、上記切片の位置が読取方向下流側に変化する部分があるときに、読み取り結果から得られる縁F1r、F2rの直交方向における位置が変化しない部分があると判定する。そして、S204において、縁F1r、F2rの直交方向における位置が変化しない部分がないと判定された場合には(S204:NO)、そのままS106に進み、あると判定された場合には(S204:YES)、S205、S206の補正処理の後にS106に進む。
S205では、重複して読み取られた濃度情報の平均値を算出し、重複して読み取られた部分における濃度情報を上記平均値に置換する。S206では、図10(b)に示すように、重複する濃度情報を削除する補正を行う。
S205、S206の処理についてより詳細に説明すると、テストパターンTの重複して読み取られた領域の位置については、直線L41、L42の、読取方向下流側の端の位置が、重複して読み取られた領域Eの、読取方向における位置(第2位置)となる。また、上述の切片の変化量(切片C51とC41との差、切片C52とC42との差)が、縁Fr1、F2rの直交方向における位置が変化しない領域G(重複領域)の、読取方向における長さD2となるため、この切片の変化量から、上記領域が何度重複して読み取られたかがわかる。そこで、本実施の形態では、これらの結果に基づいて、重複して読み取られた領域における濃度情報を、これらの平均値に置き換え(S205)、重複する濃度情報を削除する(S206)。
一方、テストパターンTの縁F1r、F2rが、読取方向に対して所定角度だけ傾いた直線でないと判定された場合には(S201:NO)、縁F1r、F2rが直線であるか曲線であるか、縁F1rの縁F1に対するズレと、縁F2rの縁F2に対するズレとが同程度であるか否かなどに応じて、読取素子23による読取に歪みがあったこと、読取時に記録用紙Pが第2搬送方向に対して傾いた方向に搬送されたこと(斜行)、斜行があった場合に記録用紙Pの面方向の回転を伴うものであるか否かなどを判定する。そして、この判定結果に応じて、S102で取得した濃度情報を補正し(S207)、その後、S106に進む。
S106では、テストパターンの各部分の読み取り結果から得られる濃度情報から、テストパターンTの各部分に対応するノズル10におけるインクの吐出タイミングを順次調整する。
以上に説明した実施の形態によると、テストパターンTの直交方向における縁F1、F2が読取方向に対して傾いている。したがって、欠損領域Taが読み取られなかった場合には、縁F1r、F2rを延長したときの切片の位置が読取方向上流側に変化する。したがって、このような場合に、欠損領域Taにおける濃度情報を補間する補正を行うことにより、テストパターンTが正常に読み取られた場合と同等の読み取り結果を得ることができる。これにより、テストパターンTから誤った濃度情報を取得してしまうのを防止することができる。さらに、このとき、欠損領域Taの読み取り方向上流側及び下流側の領域における濃度情報から決定される補間濃度情報によって、欠損領域の濃度情報を補間するため、欠損領域の濃度情報を適切に補間することができる。
また、上述したように、テストパターンTの一部が重複して読み取られた場合には、上記切片の位置が読取方向下流側に変化する。したがって、このような場合に、重複して読み取られた部分における濃度情報を削除することにより、テストパターンTが正常に読み取られた場合と同等の読み取り結果を得ることができる。これにより、テストパターンTから誤った濃度情報を取得してしまうのを防止することができる。さらに、このとき、重複して読み取られた領域における濃度情報を、これらの平均値に置き換えるため、当該領域における濃度情報が正確なものとなる。
そして、これらのことから、読取時の記録用紙Pの斜行の態様に応じた適切な補正を行うことができ、補正後の濃度情報に基づいて、インクジェットヘッド14における各ノズル10からのインクの吐出タイミングを適切に調整することができる。
加えて、テストパターンTの直交方向における両側の縁F1、F2が、いずれも読取方向に傾いているため、上述したように、読み取り結果から得られる縁F1r、F2rが直線であるか曲線であるかや、縁F1、F2に対するズレの程度の差などに応じて、読取時の記録用紙Pの斜行や、読取素子23による読取の歪みなども判断することができる。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成については、適宜その説明を省略する。
上述の実施の形態では、上記切片の位置が上記第1位置において読取方向上流側に変化していることから、縁F1r、F2rの直交方向における位置が、第1位置において不連続であると判断し、このときの切片の変化量から欠損領域Taの長さD1(第1長さ)を取得したが、これには限られない。例えば、縁F1r、F2rの直交方向の位置が不連続に変化することを直接検出することにより上記判断を行い、縁F1r、F2rの直交方向における位置の、不連続に変化するときの変化量から長さD1を取得するなど、別の方法で第1位置や第1長さを取得してもよい。
また、上述の実施の形態では、上記切片の位置が第2位置において読取方向下流側に変化していることから、縁F1r、F2rの直交方向における位置が、第2位置を上流側の端とする領域Gにおいて変化しないと判断し、このときの切片の変化量から領域Gの読取方向における長さD2(第2長さ)を取得したが、これには限られない。例えば、縁F1r、F2rの直交方向における位置が変化しないことを直接検出することによって上記判断を行い、領域Gの読取方向における長さを直接検出することによって長さD2を取得するなど、別の方法で第2位置や第2長さを取得してもよい。
また、上述の実施の形態では、テストパターンTの縁F1、F2が、読取方向に対して互いに逆方向に傾いていたがこれには限られない。一変形例(変形例1)では、図11(a)に示すように、縁F1、F2が、読取方向に対して、所定角度だけ互いに同じ方向に傾いており、テストパターンTが略平行四辺形となっている。この場合でも、上述の実施の形態と同様にして、正常に読み取られたか否かの判定や、判定結果に基づく濃度情報の補正などを行うことができる。
また、上述の実施の形態では、縁F1、F2の両方が、読取方向に対して傾いていたが、これには限られない。別の一変形例(変形例2)では、図11(b)に示すように、縁F1のみが読取方向に対して傾いており、縁F2は読取方向と平行となっている。この場合でも、上述の実施の形態と同様にして、欠損領域Taが読み取られなかったか否かの判定、及び、テストパターンTの一部の領域が重複して読み取られたか否かの判定を行うことはできる。なお、これとは逆に、縁F2のみが読取方向に対して傾いており、縁F1は読取方向と平行となっていてもよい。
また、上述の実施の形態では、縁F1、F2が、それぞれ、1つの直線を形成していたが、これには限られない。別の一変形例(変形例3)では、図11(c)に示すように、縁F1、F2が、それぞれ、読取方向に3つの部分F1a〜F1c、及び、3つの部分F2a〜F2cに分かれており、これらの部分が、それぞれ、1つの直線を形成している。また、縁F1の3つの部分F1a〜F1cが形成する直線は、直交方向に互いにずれており、読取方向に重なっており、縁F2の3つの部分F2a〜F2cが形成する直線は、直交方向に互いにずれており、読取方向に重なっている。
縁F1、F2が読取方向に対して傾いている場合、テストパターンTにおいて濃度情報取得用領域を確保しようとすると、縁F1、F2を読取方向と平行とした場合と比較して、テストパターンTの直交方向の長さが長くなる。変形例3では、縁F1の3つの部分F1a〜F1cが形成する直線、及び、縁F2の3つの部分F2a〜F2cが形成する直線を、それぞれ、直交方向に互いにずらし、読取方向に互いに重なるようにしているため、上述の実施の形態の場合と比較して、テストパターンTの直交方向の長さを短くすることができる。なお、この場合には、各部分F1a〜F1c、F2a〜F2c毎に、それぞれ、上述の実施の形態と同様にして、テストパターンTが正常に読み取られたか否かの判定などを行う。
また、変形例3では、縁F1と縁F2とが読取方向に対して互いに逆向きに傾いていたが、図11(d)に示すように、縁F1と縁F2とが、読取方向に対して同じ方向に傾いていてもよい(変形例4)。また、変形例3、4では、部分F1a〜F1c、及び、部分F2a〜F2cが、それぞれ、ほぼ全体において読取方向に互いに重なっていたが、部分F1a〜F1c及び部分F2a〜F2cは、それぞれ、一部分のみが読取方向に重なっていてもよい。また、変形例3、4では、縁F1、F2が、それぞれ、読取方向に3つの部分に分かれていたが、F1、F2は、それぞれ、2つの部分あるいは4つ以上の部分に分かれていてもよい。
また、上述の実施の形態では、濃度情報を取得させるための濃度情報取得用領域と、上記判定を行うための判定用領域とが一体となったテストパターンTを印刷したが、これには限られない。別の一変形例(変形例5)では、図11(e)に示すように、テストパターンUが、濃度情報を取得させるための、略正方形の濃度情報取得用領域U1と、濃度情報取得用領域U1の直交方向の両側に、濃度情報取得用領域U1から離れて配置されており、縁F1、F2を形成する2つの判定用領域U2、U3とを有している。この場合でも、上述の実施の形態と同様にして、テストパタンーンTが正常に読み取られたか否かの判定などを行うことができる。
また、上述の実施の形態では、記録用紙PにテストパターンTのみを印刷したが、これには限られない。別の一変形例(変形例6)では、図11(f)に示すように、テストパターンTの、縁F1、F2の直交方向におけるすぐ外側の部分に、それぞれ、フラッシングパターンR1、R2が配置されている。上述の実施の形態で説明した判定などを正確に行うためには、縁F1、F2は、正確な直線であることが好ましい。しかしながら、インクジェットヘッド14のノズル10から連続してインクを吐出させて印刷を行う場合には、ノズル10内のインクの乾燥により、初回の吐出時には、2回目以降の吐出時よりもインクの吐出特性が不安定となりやすく、縁F1、F2が初回の吐出時に吐出されるインクによって形成されると、縁F1、F2が正確な直線とならない虞がある。
これに対して、変形例6では、テストパターンTの縁F1、F2の印刷の直前に、フラッシングパターンR1、R2を印刷するためにノズル10からインクが吐出される(フラッシングが行われる)ので、縁F1、F2を印刷するときのノズル10からのインクの吐出特性が安定する。これにより、縁F1、F2を正確に印刷することができる。
また、以上の例では、テストパターンの直交方向における外側の縁が、読取方向に対して傾いていたが、これには限られない。別の一変形例(変形例7)では、図11(g)に示すように、変形例5と同様、濃度情報取得用領域U1の直交方向における両側に、濃度情報取得用領域U1から離れて、判定用領域U2、U3が配置されているが、判定用領域U2、U3の、直交方向における内側の縁F3、F4が、それぞれ、読取方向に対して傾いている。
この場合でも、縁F3、F4を用いて、上述の実施の形態と同様にして、正常に読み取られたか否かの判定などを行うことができる。また、この場合には、判定用領域U2、U3の縁F3、F4を形成している部分よりも直交方外側の部分(図中一点鎖線よりも直交方向外側の部分)が、変形例6のフラッシング領域と同様の機能を果たすため、変形例6と同様、縁F3、F4を正確に印刷することができる。
また、上述の実施の形態では、ADFユニット22により搬送された記録用紙Pに印刷されたテストパターンTを読取素子23で読み取る場合に、本発明を適用した例について説明したが、原稿台21に配置された記録用紙Pに印刷されたテストパターンTを、走査方向と平行な読取方向に移動する読取素子23によって読み取る場合にも、本発明を適用することは可能である。
この場合、読取素子23が、ガタつきにより、一時的に本来の移動量よりも大きく移動してしまい、その結果、テストパターンTの一部の領域が読み取られないことがあり得る。また、読取素子23が、ガタつきにより、一時的に移動が停止してしまい、その結果、テストパターンTの一部の領域が重複して読み取られてしまうことがあり得る。しかしながら、上述の実施の形態で説明したのと同様にして、テストパターンTが正常に読み取られたか否かの判定や、その判定結果に基づく濃度情報の補正を行うことにより、テストパターンTから誤った濃度情報を取得してしまうのを防止することができる。
また、以上では、テストパターンなどの印刷を行う印刷部と、テストパターンなどの画像を読み取る読取部の両方を備えた、いわゆる複合機に本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。
読取部を備えていないインクジェットプリンタ(印刷装置)でテストパターンを印刷し、インクジェットプリンタとは別のスキャナ(読取装置)でテストパターンを読み取り、読み取り結果に基づいて、インクの吐出タイミングの調整を行ってもよい。また、この場合には、読み取り結果を、インクジェットプリンタ及びスキャナに接続されたPCに入力し、PCにおいてインクの吐出タイミングを決定する。あるいは、テストパターンの読み取り結果をインクジェットプリンタに入力し、インクジェットプリンタにおいて、インクの吐出タイミングを決定する。
また、以上では、インクジェットヘッドからインクを吐出することによって印刷を行うインクジェットプリンタにおけるテストパターンの濃度情報の取得に、本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、レーザプリンタなど別の方法によって印刷を行う印刷装置や印刷システムにおける濃度情報の取得に、本発明を適用することも可能である。