JP5888152B2 - パラジウムめっき液の劣化状態評価方法、パラジウムめっき方法 - Google Patents

パラジウムめっき液の劣化状態評価方法、パラジウムめっき方法 Download PDF

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Description

本発明は、パラジウムめっき液の劣化状態の評価方法、パラジウムめっき方法に関し、より詳しくは、パラジウムめっき液の劣化状態を有効に且つ定量的に評価することができるパラジウムめっき液の劣化状態評価方法、及びその劣化状態評価方法を適用したパラジウムめっき方法に関する。
パラジウム(Pd)めっきは、高い硬度に由来して、耐磨耗性、低有孔度、熱安定性といった物理特性に優れており、電気接点部品で多く使用されている。Pdめっきを行うためのPdめっき液としては、塩化アンミンパラジウム錯体を含むアルカリ性のものが一般的に実用化されている。
このタイプのパラジウムめっき液は、使用回数を重ねると塩素が蓄積していく。そのため、Pdめっきの物理的特性が変化してしまうことが知られている。特に、ボンディングワイヤ用銅線に対してパラジウムめっきを行う用途では、パラジウムめっき後に伸線する工程があるため、パラジウムめっきの物理特性が変化することによってめっき剥離等の不良が発生することがある。
したがって、めっき剥離等の不良を未然に防止するために、めっき液の劣化状態を的確に評価できるようにすることが望ましい。
特許文献1には、めっき被膜を形成したパラジウムめっき層の熱履歴後におけるはんだ濡れ性が良好で、しかもめっき液の劣化が起こりにくく、リードフレーム用として好適なものであって、さらには厚めっきが可能で電子部品用接点材料の製造に適用して有効なパラジウムめっき液が開示されている。そして、この特許文献1には、めっき外観、はんだ濡れ性、電流効率といった評価項目を用いて、パラジウムめっき液の劣化の評価方法を開示している。
特開2001−262390号公報
しかしながら、特許文献1に開示されているパラジウムめっき液の評価方法は、めっき液の性状によっては劣化状態を評価することが困難となる場合があり、より有効な評価方法であって、しかも定量的に評価可能な方法が望まれている。
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、パラジウムめっき液の性状等に依らずに、そのパラジウムめっき液そのものの劣化状態を有効に評価することができ、且つ定量的な評価が可能なパラジウムめっき液の劣化状態評価方法について提供することを目的とする。
本件発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、パラジウムめっき液のpHを所定範囲に維持した状態で、そのめっき液に対してデファレンシャルパルスボルタンメトリー(DPV)測定を行い、得られるピークの強度を測定することにより、めっき液の劣化状態を的確にしかも定量的に評価できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明に係るパラジウムめっき液の劣化状態評価方法は、パラジウムめっき液のpHを7.5〜8.2の範囲に調整するpH調整工程と、上記pH範囲にあるパラジウムめっき液に作用電極を浸漬して、−1.1V〜−0.4V(Ag/AgCl電極基準)の範囲で電位を印加してDPVによる測定を行うDPV測定工程と、上記DPV測定工程にて得られたボルタモグラムに基づいて、−1.1V〜−0.9Vの範囲に検出されるピーク強度(Ia)と、−0.9V〜−0.6Vの範囲に検出されるピーク強度(Ib)から算出される比Ia/Ibにより、上記パラジウムめっき液の劣化状態を評価する評価工程とを有することを特徴とする。
ここで、上記DPV測定工程におけるDPV測定を同一の作用電極を用いて繰り返し行う場合、該DPV測定毎に、上記作用電極を塩酸溶液に浸漬し、0V〜0.8V(Ag/AgCl電極基準)の範囲で電位を印加して該作用電極を洗浄することが好ましい。また、上記塩酸溶液の濃度としては、0.1mol/L〜7.0mol/Lとすることが好ましい。
また、上記作用電極としては、金(Au)電極であることが好ましい。
また、本発明に係るパラジウムめっき方法は、パラジウムめっき液を用いたパラジウムめっき方法において、上記パラジウムめっき液を用いて被めっき物に対してめっき処理を施すめっき工程と、上記めっき工程後のパラジウムめっき液の劣化状態を評価する劣化状態評価工程とを有し、上記劣化状態評価工程は、上記めっき工程後のパラジウムめっき液のpHを7.5〜8.2の範囲に調整するpH調整工程と、pH調整したパラジウムめっき液に作用電極を浸漬して、−1.1V〜−0.4V(Ag/AgCl電極基準)の範囲に電位を印加してデファレンシャルパルスボルタンメトリー(DPV)による測定を行うDPV測定工程と、上記DPV測定工程にて得られたボルタモグラムに基づいて、−1.1V〜−0.9V以下の範囲に検出されるピーク強度(Ia)と、−0.9V〜−0.6Vの範囲に検出されるピーク強度(Ib)から算出される比Ia/Ibにより上記パラジウムめっき液の劣化状態を評価する評価工程とを含み、上記劣化状態評価工程における劣化状態の評価に基づいて、上記めっき工程におけるめっき処理に使用するパラジウムめっき液の交換を行うことを特徴とする。
また、本発明に係るボンディングワイヤは、上記パラジウムめっき方法により被めっき物であるボンディングワイヤ用銅線に対してパラジウムめっき被膜を形成させて得られたことを特徴とする。
また、本発明に係るリードフレームは、上記パラジウムめっき方法により被めっき物である銅リードフレームに対してパラジウムめっき被膜を形成させて得られたことを特徴とする。
本発明によれば、めっき液の性状に依らず、パラジウムめっき液そのものの劣化状態を簡単な操作により短時間で評価することができ、しかもその劣化状態を定量的に評価することができる。これにより、めっき液の更新のタイミングを的確に判断することができ、また適切な操業管理を可能にする。
パラジウムめっき液の劣化状態評価方法の工程図である。 実施例1(1)のDPV測定で得られたボルタモグラムを示す図である。 実施例1(1)の新浴及び劣化浴のそれぞれを用いてCu線にめっき処理を施してめっき被膜を形成させた後に伸線処理したときのCu線の外観観察写真図である。 比較例1のCV測定で得られたボルタモグラムを示す図である。 実施例2の条件1〜3のめっき液に対するDPV測定で得られたボルタモグラムを示す図である。 実施例2で得られたボルタモグラムから算出したピーク強度比(Ia/Ib)と、めっき剥離状態を示す外観観察写真をまとめた図である。
以下、本発明に係るパラジウムめっき液の劣化状態評価方法、及びその劣化状態評価方法を適用したパラジウムめっき方法の具体的な実施形態について、図面を参照しながら、以下の順序で詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
1.概要
2.パラジウムめっき液の劣化状態評価方法
2―1.pH調整工程
2−2.DPV測定工程
2−3.評価工程
3.パラジウムめっき方法
4.実施例
4−1.パラジウムめっき液の劣化状態の検出方法の検討
4−2.パラジウムめっき液の劣化状態の定量評価の検討
4−3.電極繰り返し使用時における検出ピーク形状の確認及び再現性の検討
4−4.リードフレームへのめっき処理
≪1.概要≫
本実施の形態に係るパラジウム(Pd)めっき液の劣化状態評価方法は、パラジウムめっき液の劣化状態を評価する方法であり、パラジウムめっき(被膜)の物理的特性の変化を抑制してめっき剥離等の不良の発生を未然に防止することを可能にするものである。
具体的に、この劣化状態評価方法は、図1の工程図に示すように、パラジウムめっき液のpHを7.5以上8.2以下の範囲に調整するpH調整工程S1と、そのpH範囲にあるパラジウムめっき液に作用電極を浸漬して、−1.1V〜−0.4V(Ag/AgCl電極基準)の範囲で電位を印加してデファレンシャルパルスボルタンメトリー(DPV)による測定を行うDPV測定工程S2と、DPV測定工程にて得られたボルタモグラムに基づいて、−1.1V〜−0.9Vの範囲に検出されるピーク強度(Ia)と、−0.9V〜−0.6Vの範囲に検出されるピーク強度(Ib)から算出される比Ia/Ibにより、そのパラジウムめっき液の劣化状態を評価する評価工程S3とを有する。
ここで、評価対象となるパラジウムめっき液は、一般的に使用されているものであって、塩化アンミンパラジウム錯体を含むアルカリ性のめっき液である。
このパラジウムめっき液は、使用を重ねると塩素がめっき液中に蓄積するようになる。すると、めっき液の液性が変化して、いわゆる劣化している状態となり、このめっき液を使用してパラジウムめっき被膜を形成させると、その被膜の物理的特性を変化させる。具体的には、その劣化したパラジウムめっき液を用いて、例えばボンディングワイヤ用の銅(Cu)線に対してめっき処理を行うと、めっき処理後の伸線によってめっき剥離等の不具合を生じさせる。
従来では、劣化状態評価として、被めっき物に対してパラジウムめっき被膜を形成させて、そのめっき被膜に対して視覚的な観察や物理的な測定を行うことによって評価していたが、あくまでもめっき被膜の性状評価に過ぎず、パラジウムめっき液そのものの劣化状態を直接的に十分に評価できるものではなかった。
これに対して、本実施の形態に係る劣化状態評価方法によれば、液の性状に依らずに、パラジウムめっき液そのものの劣化状態を直接的に評価することができ、しかもその劣化状態を定量的に評価することができる。これにより、パラジウムめっき液の劣化が生じた段階で新たなめっき液に更新するための指標にすることができ、めっき液の更新タイミングを的確に判断することができる。
また、この劣化状態評価方法によれば、パラジウムめっき液を劣化させずに長期間使用可能なようにするための対策を的確に講じることができ、その対策の有効性の判断を正確に評価することもできる。さらに、その評価フローは、非常にシンプルであり、短時間で評価することができるため、操業管理に用いることができ効率的な操業を可能にする。
≪2.パラジウムめっき液の劣化状態評価方法≫
以下、本実施の形態に係るパラジウムめっき液の劣化状態評価方法の各工程について、より詳細に説明する。
<2−1.pH調整工程>
pH調整工程S1では、評価対象となるパラジウムめっき液のpHを7.5〜8.2の範囲に調整する。このpH調整工程S1では、次工程のDPV測定の前に、パラジウムめっき液のpHをpH測定計等を用いて計測し、上記範囲内にあるか否かを確認する。そして、上記範囲内でない場合には、アンモニア水や塩酸等のpH調整剤を添加することによってpHを調整する。
ここで、パラジウムめっき液のpHが7.5未満であると、後述するDPV測定で得られるボルタモグラムに検出される2つのピーク(AピークとBピーク)の強度比が変化するとともに、めっき液中の有機成分の溶解度が低下して沈殿を形成し、正確な劣化状態の評価が困難となる。また、DPV測定の再現性も悪くなり、複数回の測定や時間経過後の再度の測定を正確に行うことができなくなる。
また一方、パラジウムめっき液のpHが8.2より大きいと、DPV測定にて検出される2つのピーク(AピークとBピーク)の強度比が変化するとともに、めっき液中の他の成分に由来するピークがBピークと略同じピーク位置に検出される可能性があり、測定の妨害となる。
このように、本実施の形態に係る劣化状態評価方法では、評価対象となるパラジウムめっき液のpHを7.5〜8.2の範囲として後述するDPV測定を行うことによって、劣化の判断指標となるピークを的確に検出することができ、定量的な評価を正確に行うことが可能となる。
<2−2.DPV測定工程>
DPV測定工程S2では、pH7.5〜8.2の範囲にあるパラジウムめっき液に作用電極を浸漬して、デファレンシャルパルスボルタンメトリー(DPV)による測定を行う。具体的には、作用電極をめっき液に浸漬して、参照電極(基準電極)としての銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極を基準に、初期電位を−1.1Vとし、最終電位を−0.4Vとして、この−1.1V〜−0.4Vの範囲で電位(基底電位)を印加走査することにより、その印加した電位に対する電流値を測定する。
デファレンシャルパルスボルタンメトリー(DPV:Differencial Pulse Voltammetry)法は、上述のように、所定の範囲の直流電圧を一定速度で印加走査して、一定のパルス電圧を重畳する方法であり、S/N比が高くなって感度が良くなり、明確なピークを検出することができ、またその測定時間も短い。
DPV測定工程S2では、上述のようにして、パラジウムめっき液に対して−1.1V〜−0.4Vの範囲で電位を印加してDPV測定を行うことにより、塩化アンミンパラジウム錯体由来の還元電流ピークを検出することができる。
そして、このDPV測定によって、−1.1V〜−0.4Vの範囲での電位に対する電流値の変化を示した電位−電流曲線(ボルタモグラム)を得ることができる。
ここで、パラジウムめっき液に電位を印加すると、下記式に示す反応が生じる。すなわち、2価のPdイオン(Pd2+(「Pd(II)」とも表記する))が0価のPdメタル(Pd)へと還元される反応が生じる。なお、このときの還元電位は、めっき液中に含まれる添加剤の種類や濃度によって変化する。
Pd2+ + 2e ⇔ Pd 0.915V(vs NHE)
このとき、Pd(II)が還元されるときに生じる還元電流ピークは、正常なパラジウムめっき液、つまり劣化が生じていないパラジウムめっき液であれば、−1.1V〜−0.9V(Ag/AgCl電極基準)の範囲にPd錯体についての1本の還元電流ピーク(以下、「Aピーク」とする)を示す。しかしながら、パラジウムめっき液の使用を重ねると、そのめっき液は徐々に劣化していき、−0.9V〜−0.6V(Ag/AgCl電極基準)の範囲にPd錯体についての別の還元電流ピーク(以下、「Bピーク」とする)が出現する。このBピークは、パラジウムめっき液の劣化によってめっき液中に不純物が蓄積することにより、Pd(II)の還元電流ピークがシフトして生じるものである。
図2に、新規なめっき液(新浴)と1ヶ月間使い込んで劣化を生じさせためっき液(劣化浴)のそれぞれに対して上述のDPV測定を行って得られたボルタモグラムを示す。なお、このボルタモグラムは、下記の実施例1(1)の操作によって得られたものである。図2に示されるように、新浴では、−1.1V〜−0.9Vの電位範囲にのみピーク(Aピーク)が検出され、劣化浴では、新浴で検出されたAピークと共に、そのAピークのピーク位置から−0.9V〜−0.6Vの電位範囲にシフトしたようなピーク(Bピーク)が検出されていることが分かる。
このBピークが検出されたパラジウムめっき液では、それを用いてめっき処理を行うと、形成されるパラジウムめっき被膜中の粒子構造が変化して、その被膜の柔軟性が失われ、加工性が悪化し、めっき剥離等の原因となる。
したがって、このことから、パラジウムめっき液に対してDPV測定を行うことによって、Bピークの検出の有無を確認し、さらにそのBピークの強度を測定することによって、パラジウムめっき液の劣化状態(劣化度合い)を判断することができる。
なお、ボルタモグラム測定として、DPV法によるもののほかに、サイクリックボルタンメトリー(CV:Cyclic Voltammetry)法がある。しかしながら、CV法を用いて測定すると、得られるボルタモグラム全体がブロードとなりピークが出現しにくく、劣化の有無を判断できないばかりか、正確な定量評価を行うことができない。これに対して、DPV法を用いて測定すると、上述したように、ボルタモグラムにピークが出現しやすくなる。このことは、電位パルスを用いた測定では充電電流の寄与が小さいことに起因する。
DPV測定に用いる作用電極としては、特に限定されないが、例えば金(Au)電極、プラチナ(Pt)電極等を用いることができる。その中でも、より測定の再現性が高いという観点からAu電極を用いることが特に好ましい。
具体的に説明すると、上述の還元反応式に示したように、パラジウムめっき液に対するDPV測定に伴って作用電極に銀色の金属光沢のパラジウム(Pd)メタルが析出付着していくが、このとき、作用電極として金色のAu電極を用いた場合、後述する塩酸洗浄によりパラジウムが除去できたか否かを電極表面の色を目視観察することによって判断することができる。一方で、作用電極として銀色の金属光沢のPt電極を用いた場合では、同じく銀色の付着パラジウムが洗浄により除去できたか否かを目視で十分に判断することが難しくなる。複数回に亘って同一の作用電極を用いてDPV測定を行う場合等では、電極に付着残留したパラジウムにより、DPV測定の正確性に影響し、再現性が悪くなる可能性がある。この点、Au電極を作用電極として用いることによって、コンディショニングが容易となり、より高い再現性で以って測定を行うことができる。
なお、作用電極として、炭素(C)電極を用いることも可能であるが、電極に付着したパラジウムが測定中に剥離し始めるために、電流が不安定となり、電圧−電流曲線のプロファイルが所定の電圧値において乱れてギザギザなものとなる可能性がある。また、Pt電極と同様に、Au電極に比べて再現性が劣る。そのため、より的確に劣化状態を定量評価するという観点から、Au電極やPt電極を用いることが好ましく、再現性も加味するとAu電極を用いることがより好ましい。
ここで、DPV測定工程S2において、一度の劣化状態の評価に際して複数回に亘って測定を行う場合や、めっき液使用後の所定の時間経過毎に測定を行う場合等、同一の作用電極を用いて繰り返し測定を行うときには、DPV測定毎にその測定に先立って、作用電極を塩酸洗浄することが好ましい。
上述したように、パラジウムめっき液に対してDPV測定を行うと、その測定に伴って、作用電極にPdメタルが析出付着する。同一の作用電極を用いて繰り返し測定を行う場合、そのPdメタルが付着したままの作用電極を用いると、作用電極の表面状態の変化により、正確な電位−電流曲線のプロファイルを得ることができず、還元電流ピーク(Aピーク及びBピーク)のピーク位置に再現性が無くなる可能性があり、的確にピーク検出を行うことができなくなることがある。
そこで、DPV測定を同一の作用電極を用いて繰り返し行う場合には、そのDPV測定毎に作用電極を塩酸溶液に浸漬して塩酸洗浄を行う。これにより、作用電極に付着したPdメタルを除去することができ、測定不良を防止することができる。また、このようにして洗浄を行うことで同一の作用電極を用いた繰り返し測定が可能となることにより、測定毎に新規な電極を準備する必要がなくなり、電極の使用コストを削減することができる。
具体的に、塩酸洗浄は、作用電極を塩酸溶液に浸漬した上で、参照電極としてのAg/AgCl電極基準で0V〜0.8Vの電位を印加することによって行うことが好ましい。
また、塩酸洗浄に用いる塩酸溶液の濃度としては、特に限定されないが、0.1mol/L〜7.0mol/Lの範囲とすることが好ましい。この濃度範囲の塩酸溶液を用いて洗浄することによって、作用電極に付着したPdメタルをより効率的に除去することができ、複数回に亘るDPV測定によるピーク位置の再現性を高めることができる。
<2−3.評価工程>
続いて、評価工程S3では、DPV測定工程S2にて得られたボルタモグラムに基づいて、測定対象としたパラジウムめっき液の劣化状態を評価する。
具体的に、この評価工程S3では、ボルタモグラムの−1.1V〜−0.9Vの電位範囲に検出されるAピークのピーク強度(Ia)と、−0.9V〜−0.6Vの電位範囲に検出されるBピークのピーク強度(Ib)から算出される比Ia/Ibによって、そのパラジウムめっき液の劣化状態を評価する。
上述したように、パラジウムめっき液が劣化した状態にあると、DPV測定により−0.9V〜−0.6Vの電位範囲にBピークが検出される。そして、そのめっき液の劣化状態が進行するほど、検出されるBピークの強度が大きくなり、一方でPd錯体についての通常の還元電流ピークである、−1.1V〜−0.9Vの電位範囲に検出されるAピークの強度が小さくなる。したがって、めっき液の劣化が進むにつれて、DPV測定のボルタモグラムの検出ピークから算出されるピーク強度比(Ia/Ib)は、それに伴って小さくなっていく。
このように、パラジウムめっき液の劣化状態と、DPV測定にて検出されるAピーク及びBピークのピーク強度比(Ia/Ib)には相関があり、このピーク強度比(Ia/Ib)の大小を、めっき液の劣化の度合い(劣化状態の進行度)として定量的に評価することができる。
以上詳述したように、本実施の形態に係るパラジウムめっき液の劣化状態評価方法では、パラジウムめっき液のpHを所定の範囲に維持した状態で、そのめっき液に対して−1.1V〜−0.4V(Ag/AgCl電極基準)の電位範囲でのDPV測定を行い、得られるピークの強度に基づいて、めっき液の劣化状態を評価するようにしている。
このような劣化状態評価方法によれば、従来のようなめっき処理後に形成されためっき被膜の性状からの間接的な評価ではなく、パラジウムめっき液そのものの劣化状態を直接的に簡単な操作により短時間で評価することができ、しかもその劣化状態を定量的に評価することができる。また、この方法では、Pd錯体由来の2つの還元電流ピークを検出し、そのピークの強度に基づいて劣化状態を評価するものであるので、めっき液の性状に依らずに的確に評価することができる。
また、この劣化状態評価方法によれば、パラジウムめっき液の劣化が生じた段階で新たなめっき液に更新するための指標にすることができ、めっき液の更新タイミングを的確に判断することができる。例えば、所定のピーク強度比(Ia/Ib)を更新タイミングの基準とすることにより、めっき液の管理を効率的に且つ確実に行うことができる。
また、パラジウムめっき液を劣化させずに長期間使用可能なようにするための対策を的確に講じることができ、その対策の有効性の判断を正確に評価することもできる。さらに、その評価フローは、非常にシンプルであり、短時間で評価することができるため、操業管理に用いることができ効率的な操業を可能にする。
≪3.パラジウムめっき方法≫
次に、本実施の形態に係るパラジウムめっき方法について説明する。
本実施の形態に係るパラジウムめっき方法は、パラジウムめっき液を用いたパラジウムめっき方法であって、上述したパラジウムめっきの劣化状態評価方法を、いわゆるめっき液の品質管理手法として適用したものである。このめっき方法では、めっき液の劣化状態を的確に評価して、そのめっき液の更新タイミング等を正確に判断することができ、被めっき物に対して良好なめっき被膜を形成させることを可能にする。
具体的に、このパラジウムめっき方法は、パラジウムめっき液を用いて被めっき物に対してめっき処理を施すめっき工程と、めっき工程後のパラジウムめっき液の劣化状態を評価する劣化状態評価工程とを有する。
めっき工程では、例えば銅線等の被めっき物に対して、パラジウムめっき液を用いてパラジウムめっき処理を施す。
パラジウムめっき液としては、上述したように一般的に使用されているもであって、塩化アンミンパラジウム錯体を含むアルカリ性のめっき液を用いることができる。また、そのめっき液を用いためっき処理方法(めっき被膜形成方法)については、特に限定されるものではなく、周知の方法を用いて行うことができる。
劣化状態評価工程では、上述しためっき工程において用いるパラジウムめっき液の劣化状態を評価する。具体的に、この劣化状態評価工程は、めっき工程後のパラジウムめっき液のpHを7.5〜8.2の範囲に調整するpH調整工程と、pH調整したパラジウムめっき液に作用電極を浸漬して、−1.1V〜−0.4V(Ag/AgCl電極基準)の範囲に電位を印加してデファレンシャルパルスボルタンメトリー(DPV)測定を行うDPV測定工程と、DPV測定工程にて得られたボルタモグラムに基づいて、−1.1V〜−0.9V以下の範囲に検出されるピーク強度(Ia)と、−0.9V〜−0.6Vの範囲に検出されるピーク強度(Ib)から算出される比Ia/Ibによりパラジウムめっき液の劣化状態を評価する評価工程とを含む。
この劣化状態評価工程における評価方法については、上述したパラジウムめっき液の評価方法と同じであるため、詳細な説明は省略する。
そして、本実施の形態に係るパラジウムめっき方法では、上述した劣化状態評価工程におけるめっき液の劣化状態の評価に基づいて、めっき工程におけるめっき処理に使用するパラジウムめっき液の交換(更新)を行うことを特徴とする。
このようなパラジウムめっき方法によれば、めっき処理に使用するめっき液の劣化状態を的確に判断することができ、その劣化状態に応じてめっき処理を新規なものに更新することができるので、めっき工程におけるめっき処理により形成されるパラジウムめっき被膜を良好なものにすることができ、例えばめっき剥離等の不具合の発生を防止することができる。
具体的には、例えばボンディングワイヤ用の銅(Cu)線を被めっき物として、パラジウムめっき処理を施す場合、使用するパラジウムめっき液が劣化していると、Cu線の表面に形成されるパラジウムめっき被膜の加工性が悪くなり、伸線処理等を施すことでめっき剥離等の不具合が生じる。また、銅(Cu)製のリードフレームを被めっき物とした場合においても、劣化したパラジウムめっき液によりめっき処理を施すことで、リードフレーム面に形成されるパラジウムめっき被膜の加工性が悪くなってめっき剥離等の不具合が生じる。
これに対して、本実施の形態に係るパラジウムめっき方法を適用すると、めっき液の劣化状態を適切に評価し管理することができるので、適切なタイミングでめっき液を更新することができ、形成されるめっき被膜にめっき剥離等の不具合が生じることを未然に防ぐことができる。そして、これにより、良好なめっき被膜が形成されたボンディングワイヤやリードフレームを得ることができる。
また、このように劣化状態評価工程において、めっき液の劣化状態を適切に評価することができるので、めっき液の劣化を防止するための対策の有効性を適切に判断することができ、長期間に亘ってめっき液を使用することを可能にする。
さらに、このようにして劣化状態を的確に評価して管理したパラジウムめっき液を用いて、例えば銅リードフレーム等の被めっき物に対してめっき処理を行うことにより、良好な加工性を有するパラジウムめっき被膜を確実に形成することができる。このようなリードフレーム上に形成されたパラジウムめっき被膜では、ボンディング性が良好となるので、半導体素子生産における生産性が向上するとともに、接合強度が高まって半導体素子の信頼性を向上させることができる。
≪4.実施例≫
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<4−1.パラジウムめっき液の劣化状態の検出方法の検討>
[実施例1(1)]
市販のパラジウム(Pd)めっき液(パラブライトSST 日本高純度化学株式会社製)の新規な浴(新浴)と、約1ヶ月間使い込んで劣化している浴(劣化浴)に対して、デファレンシャルパルスボルタンメトリー(DPV)による測定を行った。
先ず、それぞれのパラジウムめっき液のpHを計測し、それぞれがpH7.8であることを確認した。次に、pH7.8の状態で、パラジウムめっき液に対して−1.1V〜−0.4V(Ag/AgCl電極基準)の範囲で電位を印加してDPV測定を行った。その結果、図2に示すボルタモグラムが得られた。
なお、DPV測定においては、電気化学分析装置として電気分析アナライザー609D(BAS株式会社製)を用い、作用電極には金(Au)電極、補助電極には白金(Pt)電極、参照電極には銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極を用いた。
図2のボルタモグラムに示されるように、新浴では、−1.1V〜−0.9Vの電位範囲のピーク(Aピーク)のみが検出されたが、劣化浴では、そのAピークの他に−0.9V〜−0.6Vの電位範囲のピーク(Bピーク)が検出されていることが分かる。
次に、予め脱脂工程、酸化膜除去工程を経た被めっき物である銅(Cu)線に対して、この新浴と劣化浴とを用いてそれぞれめっき処理を施してめっき被膜を形成させた。そして、被膜を形成させたCu線に対して伸線処理を施した。図3が、伸線処理後のそれぞれのCu線の様子を示した写真図である。この図3のそれぞれの写真に示されるように、新浴を用いてめっき処理を施したCu線ではめっき剥離現象は起きなかったが、劣化浴を用いてめっき処理を施したCu線ではめっき剥離現象が起きていることが分かる。
このように、被めっき物に対して形成させためっき被膜に剥離を生じさせるほどに劣化状態となっているパラジウムめっき液では、DPV測定を行うことによって、−1.1V〜−0.9Vの電位範囲で検出されるAピークの他に、−0.9V〜−0.6Vの電位範囲にBピークが明確に検出されることが分かった。したがって、これにより、めっき液の劣化の有無及びその度合いを的確に評価できることが分かった(なお、劣化状態の定量評価については、下記の実施例2を参照。)。
[比較例1]
比較例1では、実施例1(1)と同様の市販のパラジウムめっき液の新浴と、約1ヶ月間使い込んで劣化している劣化浴に対して、サイクリックボルタンメトリー(CV)による測定を行った。
先ず、それぞれのパラジウムめっき液のpHを計測し、それぞれがpH7.8であることを確認した。次に、パラジウムめっき液に対して−0.4〜−1.1V(Ag/AgCl電極基準)の範囲に電位を印加してCV測定を行った。CV測定の作用電極には、Au電極を用いた。その結果、図4に示すボルタモグラムが得られた。
図4のボルタモグラムに示されるように、新浴では、−1.1V〜−0.9Vの電位範囲にピーク(Aピーク)が検出され、劣化浴では、そのAピークの他に−0.9V〜−0.6Vの電位範囲にピーク(Bピーク)が検出された。しかしながら、実施例1(1)のDPV測定によって得られるボルタモグラムと比較すると、各ピークが非常にブロードであるため、ピーク検出の判断が難しく、めっき液の劣化の有無及びその度合いを的確に評価することは困難となった。
[比較例2]
比較例2では、新浴と劣化浴のそれぞれのパラジウムめっき液のpHを4.0とした状態で、DPV測定を行ったこと以外は、実施例1(1)と同様にして行った。
その結果、パラジウムめっき液中の有機成分がpH低下に伴う溶解度の低下によって沈殿を形成してしまい、正確なめっき液の劣化状態の評価が困難となった。また、液性の変化に伴って、DPV測定の再現性も悪くなり、複数回の測定や時間経過後の測定を正確に行うことができなくなった。
[比較例3]
比較例3では、新浴と劣化浴のそれぞれのパラジウムめっき液のpHを8.8とした状態で、DPV測定を行ったこと以外は、実施例1(1)と同様にして行った。
その結果、パラジウムめっき液中の別の成分由来のピークがBピークとほぼ同じピーク位置に検出され、そのBピークの検出確認の妨害となってしまい、劣化状態の定量評価を十分に効果的に行うことはできなかった。
表1に、実施例及び各比較例のDPV測定条件及び測定結果をまとめて示す。なお、表1中の測定結果の欄の「劣化評価可否」の項目について、『○』はDPV測定によるピークが明確に検出され、めっき液の劣化状態を的確に評価できたことを示し、『×』はピークが明確に検出されなかった又は他の要因により、めっき液の劣化状態を的確に評価できなかったことを示す。
<4−2.パラジウムめっき液の劣化状態の定量評価の検討>
[実施例2]
実施例2として、実施例1(1)と同様の市販のパラジウムめっき液を使用期間によって3条件用意し、その3つのめっき液に対してDPV測定を行った。条件1は、新規なめっき液からなる浴(新浴)であり、条件2は、2週間使用した後のめっき液からなる浴(2週間使用浴)であり、条件3は、2ヶ月間使用した後のめっき液からなる浴(2カ月間使用浴)である。
先ず、それぞれのパラジウムめっき液のpHを計測し、それぞれがpH7.8であることを確認した。次に、pH7.8の状態で、パラジウムめっき液に対して−1.1V〜−0.4V(Ag/AgCl電極基準)の範囲で電位を印加してDPV測定を行った。DPV測定の作用電極には、金(Au)電極を用いた。その結果、図5に示すボルタモグラムが得られた。
図5のボルタモグラムに示されるように、めっき液の使用期間が長くなるにつれて、−1.1V〜−0.9Vの電位範囲に検出されるAピークは小さくなり、一方で、−0.9V〜−0.6Vの電位範囲に検出されるBピークが大きくなることが分かる。
このとき、検出されたAピークの強度をIa、Bピークの強度をIbとして、IaとIbの比(Ia/Ib)を算出した。なお、ピーク強度の算出に際しては、DPV測定に用いた電気分析アナライザー609Dの波形分離機能によって波形分離を行った後にピーク強度算出機能によってピーク強度を求めた。条件3のめっき液についてのDPV測定では、−1.0V〜−0.9Vの電位範囲に小さいピーク(Aピーク)が表れており、これを波形分離した後に、ピーク強度を算出してIaとした。
また、予め脱脂工程、酸化膜除去工程を経た被めっき物であるCu線に対して、条件1〜3のパラジウムめっき液を用いてそれぞれめっき処理を施してめっき被膜を形成させ、めっき処理後に伸線処理を施してそれぞれのCu線の外観を観察した。図6に、ピーク強度比の算出結果及びCu線の外観観察結果を示す。
図6に示されるように、めっき液の使用期間が長くなるにつれて、Ia/Ibが小さくなるとともに、Cu線の外観からもめっき剥離の発生数が多くなっていることが分かる。具体的には、Ia/Ib≦3となるとめっき剥離が発生し、Ia/Ib≦0.6となるめっき剥離が多発した。このCu線におけるめっき剥離は、使用期間の経過に伴って劣化が進んだめっき液を用いてめっき被膜を形成したことに起因し、劣化が進んだめっき液により形成されためっき被膜ほどめっき剥離の発生数は多くなる。
このように、DPV測定によって得られたボルタモグラムから検出されるAピークとBピークの強度比(Ia/Ib)の大小と、めっき剥離発生数、すなわちめっき液の劣化度合い(状態)とは相関している。したがって、AピークとBピークの強度比(Ia/Ib)を算出することによって、そのパラジウムめっき液の劣化状態を定量的に評価できることが分かった。
<4−3.電極繰り返し使用時における検出ピーク形状の確認及び再現性の検討>
[実施例1(2)]
上述した実施例1(1)におけるDPV測定後、用いた作用電極を濃度1.4mol/Lの塩酸溶液に浸し、0〜0.8V(Ag/AgCl電極基準)の範囲で電位を印加して、その作用電極の表面を洗浄(塩酸洗浄)した。
洗浄処理後、再びパラジウムめっき液のpHが7.8であることを確認した後、パラジウムめっき液に対して−1.1V〜−0.4V(Ag/AgCl電極基準)の範囲で電位を印加してDPV測定を行った。
その結果、実施例1(1)と同様に、新浴では、−1.1V〜−0.9Vの電位範囲にAピークが検出され、劣化浴では、そのAピークの他に−0.9V〜−0.6Vの電位範囲にBピークが検出され、どちらもシャープで綺麗なピークが得られ、繰り返し同一の電極を使用した場合でも、再現性高く測定できることが分かった。
[実施例3]
実施例3では、1回目のDPV測定後に作用電極の塩酸洗浄を行わなかったこと以外は、実施例1(2)と同様にして再びDPV測定を行った。
その結果、検出されたAピークとBピークは共にシャープな形状であり、感度良く検出することができ、定量評価も効果的に行うことができることが分かった。しかしながら、それぞれのピーク位置が測定毎に若干異なり、実施例1(2)に比べて測定の再現性が劣った。これは、作用電極表面の状態が測定毎に異なってしまうため、検出されるピークの電位が異なることに起因すると考えられる。したがって、このことから、同一の作用電極を用いて繰り返し測定を行う場合には、再現性を高めるという点で、DPV測定毎に塩酸溶液を用いて洗浄処理を施すことがより好ましいことが分かった。
[実施例4]
実施例4では、作用電極として白金(Pt)電極を用いたこと以外は、実施例1(2)と同様にして、DPV測定毎に濃度1.4mol/Lの塩酸溶液に浸して0〜0.8V(Ag/AgCl電極基準)の範囲で電位を印加して作用電極表面を塩酸洗浄し、複数回に亘るDPV測定を行った。
その結果、検出されたAピークとBピークは共にシャープな形状であり、感度良く検出することができ、定量評価も効果的に行うことができることが分かった。しなしながら、それぞれのピーク位置が測定毎に若干異なり、実施例1(2)に比べて測定の再現性が劣った。これは、作用電極にPt電極を用いると、電極自体の色が銀色であるため、測定毎の塩酸による洗浄で表面に析出付着したPd(銀色)が除去できたかどうかの目視判定が容易ではなくなったため、Pdが完全に除去できなかった場合に再現性が悪化したと考えられる。したがって、このことから、同一の作用電極を用いて繰り返し測定を行う場合には、再現性を高めるという点で、作用電極としてAu電極を用いることがより好ましいことが分かった。
[実施例5]
実施例5では、作用電極として炭素(C)電極を用いたこと以外は、実施例1(2)と同様にして、DPV測定毎に濃度1.4mol/Lの塩酸溶液に浸して0〜0.8V(Ag/AgCl電極基準)の範囲で電位を印加して作用電極表面を塩酸洗浄し、複数回に亘るDPV測定を行った。
その結果、検出されたAピークとBピークは共にシャープな形状であり、感度良く検出することができ、定量評価も効果的に行うことができることが分かった。しかしながら、そのボルタモグラムのプロファイル形状は、実施例1(2)に比べて若干ギザギザとなった。また、それぞれのピーク位置が測定毎に若干異なり、実施例1(2)に比べて測定の再現性が劣った。これは、作用電極にC電極を用いると、その電極表面に析出付着したPdがC電極から容易に剥離するため、DPV測定中の電流が安定しない可能性があることが原因であると考えられる。したがって、このことから、同一の作用電極を用いて繰り返し測定を行う場合には、再現性及び安定性を高めるという点で、作用電極としてAu電極を用いることがより好ましいことが分かった。
表2に、実施例及び各比較例の測定条件及び測定結果をまとめて示す。なお、表2中の測定結果の欄の「再現性」の項目について、『○』は同一の作用電極を用いた繰り返しの測定においても再現性良く劣化状態を評価できたことを示し、『△』は測定の再現性がやや劣ることを示す。
<4−4.リードフレームへのめっき処理>
[実施例6]
パラジウムめっきリードフレームの一般的な製造プロセスである、脱脂工程と、酸化膜除去工程と、ニッケルめっき工程と、酸化膜除去工程と、パラジウムめっき工程と、金めっき工程とからなるプロセスにおいて、そのパラジウムめっき工程においては、上述のDPV測定で検出されたピーク強度比がIa/Ib>3となるパラジウムめっき液を使用してめっき処理を行って、リードフレームを製造した。
このようにして得られたリードフレームに対して、キューリックアンドソファ社製のワイヤボンダIConnを用いて、半導体素子組み立てに広く用いられるベア銅ボンディングワイヤによる超音波熱圧着式ワイヤボンディングを行った。その結果、リードフレーム上への銅ワイヤのボンディングは良好に行われた。また、連続ボンディング性についても、10000ワイヤの連続ボンディングであっても、スティッチボンディング不着によるボンダ停止の発生は無かった。
[比較例4]
パラジウムめっきリードフレームの一般的な製造プロセスである、脱脂工程と、酸化膜除去工程と、ニッケルめっき工程と、酸化膜除去工程と、パラジウムめっき工程と、金めっき工程とからなるプロセスにおいて、そのパラジウムめっき工程においては、上述のDPV測定で検出されたピーク強度比がIa/Ib≦3となるパラジウムめっき液を使用してめっき処理を行って、リードフレームを製造した。
このようにして得られたリードフレームに対して、キューリックアンドソファ社製のワイヤボンダIConnを用いて、半導体素子組み立てに広く用いられるベア銅ボンディングワイヤによる超音波熱圧着式ワイヤボンディングを行った。その結果、リードフレーム上への銅ワイヤのボンディングは、キャピラリによって超音波が印加された部分のパラジウム層がニッケル層から剥離しやすくなり、スティッチプル強度は実施例6にてボンディングした銅ワイヤの50%未満となり、ボンディング性は大きく低下した。また、連続ボンディング性についても、10000ワイヤの連続ボンディングにおいてスティッチボンディング不着によるボンダ停止が3回も発生した。
本発明に係るパラジウムめっき液の劣化状態評価方法によれば、めっき液そのものの劣化状態を直接的に、しかも定量的に評価することができ、パラジウムめっき液の操業管理だけでなく、めっき液の更新時期の把握方法やめっき液の劣化防止のための対策の有効性の評価方法として本発明を適用することができ、その工業的な価値は極めて大きい。
本発明を適用したパラジウムめっき銅線やパラジウムめっき銅リードフレームでは、パラジウムが剥離せずかつ接合性のよい製品であるため、高い信頼性が得られる半導体素子を製造することができ、その工業的な価値は極めて大きい。

Claims (5)

  1. パラジウムめっき液のpHを7.5〜8.2の範囲に調整するpH調整工程と、
    上記pH範囲にあるパラジウムめっき液に作用電極を浸漬して、−1.1V〜−0.4V(Ag/AgCl電極基準)の範囲で電位を印加してデファレンシャルパルスボルタンメトリー(DPV)による測定を行うDPV測定工程と、
    上記DPV測定工程にて得られたボルタモグラムに基づいて、−1.1V〜−0.9Vの範囲に検出されるピーク強度(Ia)と、−0.9V〜−0.6Vの範囲に検出されるピーク強度(Ib)から算出される比Ia/Ibにより、上記パラジウムめっき液の劣化状態を評価する評価工程と
    を有することを特徴とするパラジウムめっき液の劣化状態評価方法。
  2. 上記DPV測定工程におけるDPV測定を同一の作用電極を用いて繰り返し行う場合、該DPV測定毎に、上記作用電極を塩酸溶液に浸漬し、0V〜0.8V(Ag/AgCl電極基準)の範囲で電位を印加して該作用電極を洗浄することを特徴とする請求項1に記載のパラジウムめっき液の劣化状態評価方法。
  3. 上記塩酸溶液の濃度を0.1mol/L〜7.0mol/Lとすることを特徴とする請求項2に記載のパラジウムめっき液の劣化状態評価方法。
  4. 上記作用電極は、金(Au)電極であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のパラジウムめっき液の劣化状態評価方法。
  5. パラジウムめっき液を用いたパラジウムめっき方法において、
    上記パラジウムめっき液を用いて被めっき物に対してめっき処理を施すめっき工程と、
    上記めっき工程後のパラジウムめっき液の劣化状態を評価する劣化状態評価工程とを有し、
    上記劣化状態評価工程は、
    上記めっき工程後のパラジウムめっき液のpHを7.5〜8.2の範囲に調整するpH調整工程と、
    pH調整したパラジウムめっき液に作用電極を浸漬して、−1.1V〜−0.4V(Ag/AgCl電極基準)の範囲に電位を印加してデファレンシャルパルスボルタンメトリー(DPV)測定を行うDPV測定工程と、
    上記DPV測定工程にて得られたボルタモグラムに基づいて、−1.1V〜−0.9Vの範囲に検出されるピーク強度(Ia)と、−0.9V〜−0.6Vの範囲に検出されるピーク強度(Ib)から算出される比Ia/Ibにより上記パラジウムめっき液の劣化状態を評価する評価工程とを含み、
    上記劣化状態評価工程における劣化状態の評価に基づいて、上記めっき工程におけるめっき処理に使用するパラジウムめっき液の交換を行うことを特徴とするパラジウムめっき方法。
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