JP5885923B2 - 免疫応答を低減して免疫状態を治療する方法 - Google Patents
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Description
以下に記載の説明は、本発明を理解するために役に立ち得る情報を含む。かかる情報が従来の技術である、または現在申請する発明に関連すると認めるものではなく、あるいは明示的または暗示的に引用される出版物が従来の技術、ましてや現在申請する発明に関連すると認めるものではない。
本発明は、自己免疫応答を含む、異常な、過剰なまたは望ましくない免疫応答を低減または減弱する方法に関する。これらのプロセスは、単独に、または合わせて、多数の疾患と状態に関与している。これらの疾患または状態は、全身性またはどちらかと言えば、例えば、赤血球、血管、結合組織、神経系、主要臓器、甲状腺または膵臓のような内分泌腺、筋肉、関節あるいは皮膚のような局所性である可能性がある。
免疫系は、微生物、毒素、ガン細胞、および他人または他種からの外来性血液または細胞のような、場合によっては有害な物質から身体を保護する。これらの抗原は、抗体および、特定の抗原を認識して破壊する特化された白血球である感作リンパ球の産生を含む、免疫応答によって破壊される。
自己免疫疾患は、免疫系が通常は無視する正常な身体組織を破壊する場合に発症する。通常、免疫系は、自己と非自己組織を鑑別することが可能である。いくつかのリンパ球は、自己組織細胞に対して感作されるが、この応答は、通常、その他のリンパ球によって制御または抑制される。自己免疫疾患は、この正常な制御プロセスが乱された場合に発症する。通常、自己抗原を認識するほとんどのT細胞は、その起始部位である胸腺で排除され、決して体循環に入ることはない。正常T細胞は、自己抗原に応答することなく、リンパ節と血液を介して循環する。ところが、自己免疫疾患を罹患する患者は、自己抗原によって活性化されうるT細胞を有しているとされる。いったん活性化されると、このT細胞は分裂して、活性化抗原を攻撃する多数のエフェクター細胞を産生する。抗原が、異種抗原というよりはむしろ自己抗原である場合、重篤かつ場合によっては致命的な結果が生じる。自己免疫応答はまた、正常な体細胞が変化して、自己として認識されなくなる場合に発症する。
MSは、CNSの炎症性疾患であり、20歳から40歳の間に発症し、米国では35万人がMSに罹患している。MSの経過は一般的に、神経性症状の急性増悪とその後の一連の再発と寛解によって特徴づけられる。これらの増悪はしばしば、永久的な神経障害を起因する。MSは致命的な疾患ではないが、疾患の進行はしばしば、結果として機能的な身体障害とクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)の低下をもたらす。本疾患の初期症状は、眼球運動障害、振戦、運動失調、痙直、疲労、感覚障害、疼痛症候群、膀胱または腸管機能不全、および精神障害を含むことがある。これに引き続く症状は、より顕著な上位運動ニューロン障害、即ち、痙直の増加、不全対麻痺または四肢不全麻痺の増加、を含む。また、めまい、協調不能、抑うつ、情緒不安定、歩行異常、疲労および疼痛もよく見られる。
免疫抑制薬フィンゴリモド(fingolimod)(FTY720または2−アミノ−2−(2−[4−オクチルフェニル]エチル)−1,3−プロパンジオール塩酸塩)は、再発型多発性硬化症患者に関する治験で、かなりの治療効果を発揮することが示されている。経口フィンゴリモドを1日1回服用した患者では、疾患活動度が急速に低下し、再発頻度とCNS病巣数の顕著な減少がみられた。FTY720はまた、T細胞の遊走を妨害し、リンパ球がリンパ節とその他の組織から離脱することを防ぐ。Tリンパ球およびBリンパ球をリンパ組織に隔離することによって、血液からリンパ球がほぼ完全に消失し、このプロセスには可逆性があることから、フィンゴリモドはリンパ球を殺さないことが示されている。FTY720は、血流中に入ると迅速にリン酸化される。リン酸化FTY720は、S1P2を除く全てのSIPレセプターに結合する。リンパ球に発現される主要S1PレセプターであるS1P1は、リンパ球遊走の主要な制御因子であり、血管外リンパ球が組織から遊出するために必要とされる。脳において、T細胞は再活性化され、有害な炎症反応を誘導する。FTY720を0.1mg/kgまたはそれ以上の高用量で経口投与すると、LEWラットにおいてミエリン塩基性タンパク質によって誘発された実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の麻痺がほぼ完全に防止される。FTY720による治療は、SJLマウスにおいて、ミエリンプロテオリピドタンパク質免疫によって誘発されたEAEの再発を抑制する。Webb, Mら(2004) J. Neuroimm. 153:108:121。
本発明による方法はまた、免疫応答を低減または減弱することが望ましい、自己免疫状態以外の状態または疾患の治療に有効であると考えられる。そのような状態は、過剰な、異常なまたは望ましくない免疫応答によって特徴づけられる可能性がある。特に限定はされないが、そのような例は、同種移植片拒絶および移植片対宿主病を含む。同種移植は、遺伝的に同一ではない同種メンバー中への、臓器または組織(例えば、腎臓、心臓、肺、角膜、皮膚、骨髄、膵臓またはその他の組織や臓器)の移植である。したがって、ほとんどのヒトの臓器および組織移植片は、同種移植片である(残る移植片のほとんどは、一卵性双生児からの移植片である)。同種移植片拒絶は、移植片レシピエントの免疫系が、同種移植片を異物と認識して、破壊し始めるときに発症する。これによって最終的には、移植臓器が破壊され、二度目の移植が必要な結果になり得る。したがって、必ずしも予測されないというわけではないが、同種移植片拒絶は、望ましくない免疫応答の一例である。
脂質とそれらの誘導体は現在、単に細胞膜中の1つの構造エレメントまたはβ酸化、解糖などの代謝プロセスの源としてではなく、医学研究のための重要なターゲットとして認識されている。特に、ある種の生理活性脂質は、動物およびヒト疾患において重要なシグナル伝達メディエーターとして機能する。原形質膜に由来する脂質のほとんどは、構造的役割のみを果たしているにも係わらず、それらの小部分は、細胞外刺激の細胞中への取り次ぎに関与している。これらの脂質は、「生理活性脂質」または、一方では、「生理活性シグナル伝達脂質」と呼ばれている。「脂質シグナル伝達」とは、細胞膜脂質を第二のメッセンジャーとして使用するいくつかの細胞シグナル伝達経路のいずれかを意味し、ならびに脂質シグナル伝達分子とその特異的レセプターとの直接的相互作用を意味する。脂質シグナル伝達経路は、増殖因子から炎症性サイトカインに至る様々な細胞外刺激によって活性化され、アポトーシス、分化および増殖のような細胞運命の決定を制御する。生理活性脂質シグナル伝達の研究は、益々多数の生理活性脂質が同定され、その作用が特徴づけられているために、精力的に科学的研究が推し進められている分野である。
リゾリン脂質(LPL)は、リゾ脂質としても知られており、1つの炭化水素主鎖と1つのリン酸基を含む1つの極性頭基を含む、低分子量(一般的には約500ダルトン以下)脂質である。リゾ脂質のあるものは、生理活性シグナル伝達脂質である。医学的に重要な生理活性リゾ脂質の2つの特有な例は、LPA(グリセロール主鎖)とS1P(スフィンゴイド主鎖)である。特定のLPA、S1P、およびジヒドロS1Pの構造を以下に示す。
S1Pは、細胞増殖のメディエーターであり、生存経路の活性化を介してアポトーシスから保護する。Maceykaら (2002), Biochim Biophys Acta, 1585: 192−201、Spiegel S. ら(2003), Nat Revs Molec Cell Biol, 4: 397−407.セラミド/スフィンゴシン(CER/SPH)濃度とS1P間の釣り合いが、細胞が死経路に導かれるか、あるいはアポトーシスから保護されるかを決定するレオスタット・メカニズムをもたらすことが提言されている。レオスタット・メカニズムの主要な制御酵素は、スフィンゴシンリン酸化酵素(SPHK)であり、その役割は、死を促進する生理活性シグナル伝達脂質(CER/SPH)を増殖促進S1Pに変換することである。S1Pには2つの運命がある:S1Pは、S1Pを切断してホスホエタノールアミンとヘキサデカナールを生じるS1P脱離酵素によって分解されるか、または、あまり一般的ではないが、S1P脱リン酸酵素によって加水分解されてSPHになり得る。
小分子スフィンゴシン類似体であるFTY720 (FTY、フィンゴリモド、2−アミノ−2−(2−[4−オクチルペンチル]エチル)−1,3−プロパンジオール塩酸塩)は、リンパ球輸送を変化させることによって作用する新しい免疫抑制薬であり、末梢血管リンパ球減少症とリンパ節におけるリンパ球数の増加を起因する。FTYは、リンパ球上に発現するS1Pレセプターのあるものに結合することによって、免疫調節効果を媒介する。Bohler Tら(2005), Transplantation, 79: 492−5。
多発性硬化症(MS)は、オリゴデンドロサイトに向かう免疫応答が、中枢神経系(CNS)のミエリン鞘に対する限局的な損傷を起因する自己免疫疾患の1つである。これは、重篤な、通常進行性の、神経機能障害および身体障害を起因する。FTY720の小規模な、プラセボ対照治験が、再発型MS患者を対象として実施された。FTYまたはプラセボが1日1回、6ヵ月間経口投与され、FTYの投与を受けた患者は、再発率の有意な低下によって測定されるように、疾患活動性の急速な低下を示した。MRIによって測定されたガドリニウム増強CNS病巣数の減少もまた実証された。スイッチング試験では、プラセボを開始した患者が、FTYに転換したときに改善を示した。Kapposら,(2006) N. Engl. J. Med. 355:1124−1140、およびMassberg Sとvon Andrian, U.による総説(2006)N. Engl. J. Med. 355: 1088−1091。
FTY(FTYまたはFTY−P)は、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎とCD4+CD62L+T細胞トランスファー大腸炎の発症を減弱することが示されている。FTYは、両モデルにおいて、体重減少防止に効果があり、疾患活動性指標と組織学的大腸炎スコアは、FTY投与マウスにおいて、非投与マウスよりも有意に低かった。両大腸炎モデルにおいて、FTYは、炎症性の大腸固有層へのCD4+ T細胞の浸潤を阻止し、その理由で、著者らは、FTYを炎症性腸疾患(IBD)の臨床治療薬候補として示唆する。Deguchiら,(2006) Oncol Rep. 16:699−703。
LPAは、真核および原核細胞の両方におけるリン脂質の生合成の前駆物質として長い間知られてきたが、LPAは、最近になって、活性化細胞、特に血小板によって迅速に産生かつ遊離され、特異的な表面レセプターに作用することによってターゲット細胞に影響を及ぼすシグナル伝達分子として知られるようになった(例えば、Moolenaarら(2004),BioEssays, 26:870−881およびvan Leewenら(2003),Biochem Soc Trans,31:1209−1212を参照).小胞体で合成され、さらに複雑なリン脂質にプロセスされる以外に、LPAは、細胞活性化後に既存のリン脂質の加水分解によって生成されることが可能であり、例えば、sn−2位は、脱アシル化のために、通常は脂肪酸残基を欠如し、脂肪酸にエステル結合されたsn−3位ヒドロキシル基のみが残る。さらに、LPA産生における主要な酵素であるオートタキシン(リゾPLD/NPP2)は、多数の腫瘍の種類がautotoxin(自家毒素)を上方制御するため、ガン遺伝子の生成物であり得る。Brindley (2004), J Cell Biochem, 92:900−12.ヒトの血漿と血清中のLPA濃度は報告されており、感受性が高く、特異性のあるLC/MS法を使用した算出を含む。Bakerら(2001), Anal Biochem, 292:287−295。例えば、1時間25℃で放置された新鮮ヒト血清中のLPA濃度は、約1.2mMと推定され、LPA類似体16:0、18:1、18:2、および20:4が主要な種である。同様に、1時間25℃で放置された新鮮ヒト血漿中のLPA濃度は、約0.7mMと推定され、18:1および18:2LPAが主要な種である。
Matrix Biol, 23:353−61.さらに、LPAは、コラーゲン遺伝子発現と線維芽細胞の増殖を刺激することによって、いくらかの直接的な線維形成効果を有する。Chenら(2006) FEBS Lett. 580:4737−45。
(III.定義)
(A.免疫由来部分)
いくつかの抗体は最近、食品医薬品局によって、ヒトにおける治療用途として認可された。Kling(1999)Mod. Drug Disc. 2:33 45.脂質ベースの治療の1つの局面では、生理活性シグナル伝達脂質に結合する抗体は、治療に使用するために、例えば、薬剤組成物、医療デバイス、およびそれらと同様なものの中に組み込むことによって、患者に送達することができる。そのような方法は、例えば、組織または体液中のターゲットである生理活性脂質の有効濃度を調節したり、インビボまたはエクスビボで血液からターゲット脂質を取り除くことによって機能し得る。
Visentinらは、極めて高い親和性と特異性でS1Pに結合するマウスモノクローナル抗体について説明している。この抗体は、ヒトガンのいくつかの動物モデルにおいて、腫瘍の進行とそれに付随する血管形成を遅延することが示された。Cancer Cell (2006) 9:225−238。
LPAに対するモノクローナル抗体が開発された。この抗体の構築、合成、精製、および試験については、米国特許出願第11/755,721号(代理人整理番号 LPT−3100−UT4)に記載されているが、本発明と共同所有され、本明細書では、全ての目的のために、全文を参考文献として編入している。
本発明による抗体および抗体フラグメントは、いずれかの適切な方法、例えば、インビボ(ポリクローナルおよび単一特異抗体の場合)、細胞培養(典型的には、モノクローナル抗体の場合で、所望する抗体を発現するハイブリドーマ細胞が適切な条件下で培養される)、インビトロ翻訳反応、および組換えDNA発現系によって作製され得る(Johnsonら、Methods Enz.203:88−98, 1991).抗体および抗体フラグメントならびに変異体は、多様な動物細胞、好ましくは、哺乳類細胞、特に好ましくは、マウスおよびヒト細胞から作製され得る。非天然発生抗体および抗体の抗原結合部位によって付与される所望の抗原ターゲット能力のみを保有するT細胞レセプター変異体を含む抗体は、公知の細胞培養技術および組換えDNA発現系によって作製され得る(例えば、Johnsonら、Methods in Enzymol 203:88−98, 1991、Molloyら、Mol.Immunol. 32:73−81, 1998、Schodinら、J. Immunol. Methods 200 69−77, 1997を参照)。組換えDNA発現系は、典型的には、例えば、二特異性抗体およびsFv分子のような抗体変異体またはフラグメントの作製に使用される。好ましい組換えDNA発現系は、宿主細胞と特定のタンパク質を高レベルで産生するように工作された発現コンストラクトを使用する系を含む。好ましい宿主細胞と発現コンストラクトは、プラズミドまたはウイルス(バクテリオファージ)に由来する発現コンストラクトを内部に持つEscherichia coli、エピソームまたは染色体に組み込まれた発現コンストラクトを内部に持つSacharomyces cerevisieaeまたはFichia pastorasのような酵母菌、Sf9細胞およびバキュロウイルスのような昆虫細胞およびウイルス、およびエピソームまたは染色体に組み込まれた(例えば、レトロウイルスの)発現コンストラクトを内部に持つ哺乳類細胞を含む(総説としては、Vermaら、J. Immunol. Methods 216:165−181, 1998を参照)。抗体はまた、植物(米国特許第6,046,037号、Maら、Science 268:716−719, 1995)、またはファージディスプレイ技術(Winterら、Annu. Rev. Immunol. 12:433−455, 1994)によっても作製することができる。
膜結合、典型的には疎水性の、生理活性脂質レセプター由来であり、レセプターの脂質結合能力を保有している、可溶性ポリペプチドはまた、生理活性脂質および脂質代謝物を結合するために使用され得る。例えば、Edg(S1PおよびLPA)レセプターの場合は、時には、特定のアミノ酸残基が、スフィンゴ脂質結合の特異性、即ち、どのスフィンゴ脂質が特定のレセプターによって結合されるかを決定するアミノ酸に関与し得る。Parrillら、(2000) J. Biol. Chem. 275:39379−39384、Wangら、(2001) J. Biol. Chem. 276:49213−49220。そのような情報は、関心対象であるレセプター残基、即ち、スフィンゴ脂質に結合するアミノ酸伸長を含む可溶性レセプターフラグメントを供給するために使用し得る。天然可溶性TNFαレセプター由来の可溶性レセプターフラグメントが調製されており、それらの少なくとも1つであるENBREL(Etanercept)は、関節炎治療薬として開発中である。さらに、そのような残基の修飾は、当業者が可溶性レセプターフラグメントの結合特異性および/または親和性を調整することを可能にし得る。
従来より、ターゲット分子を検出かつ精製するための技術は、そのようなターゲットに特異的に結合する、抗体のようなポリペプチドを使用してきた。核酸が他の核酸(例えば、相補配列を有するもの)、アプタマー(即ち、非核酸系ターゲット分子に結合する核酸)に特異的に結合することは長い間知られている。例えば、Blackwellら、Science(1990)250:1104−1110、Blackwellら、Science(1990)250:1149−1152、Tuerkら、Science(1990)249:505−510、Joyce, (1989)Gene 82:83−87、および「Aptamer analogs specific for biomolecules(生体分子特異的アプタマー類似体)」と題する米国特許第5,840,867号。
酸ではない、または(ii)核酸または二重または三重型塩基対形成以外のメカニズムによ
って結合されるその構造エレメントである。そのような分子は、本明細書では非核酸系分子と呼ぶ。
「核酸」とは、本明細書で使用する場合は、天然源から分離される、PCR増幅または化学合成のような技術を用いてインビトロで調製される、例えば、組換えDNA技術を介してインビボで調製される、またはいずれかの適切な方法によって調製される核酸を意味する。核酸は、どのような形(直線、環状など)、または形態(一本鎖、二重鎖、高次コイルなど)であってもよい。「核酸」という用語はまた、ペプチド核酸(PNA)およびポリペプチド−核酸抱合体のような核酸誘導体、少なくとも1つの化学的に修飾された糖残基、主鎖、ヌクレオチド間結合、塩基、ヌクレオシド、またはヌクレオチド類似体を有する核酸、ならびに化学的に修飾された5'および/または3'末端を有する核酸、そして2つ以上のそのような修飾を有する核酸も含むがそれらに限定はされない。核酸中に存在する全ての結合が同一である必要はない。
アプタマーおよびその他の核酸に組み込むことができる化学的修飾は、限定または拝外することなく、塩基修飾、糖修飾、および主鎖修飾を含む。
一般的に、アプタマーを同定する技術は、予め選択した非核酸ターゲット分子を、アプタマー候補である異なる核酸の混合物(2〜50メンバー)、プール(50〜5,000メンバー)またはライブラリー(50以上のメンバー)と共に、ターゲット分子がアプタマーと複合体を形成することを可能にする条件下で、インキュベートする。「異なる核酸」によって、各アプタマー候補のヌクレオチド配列が、その他のメンバーと異なること、即ち、アプタマー候補の配列は、それぞれについてランダムであることを意味する。ランダム性は様々な方法によって導入でき、その例は、核酸を内部に持つ細胞を変異原性薬剤に曝露することによってインビボで、核酸の化学的処理によってインビトロで、または複製プロセスの忠実度を低下させる条件下で故意に進行させる生化学的複製(例えば、PCR)によってインビトロで実行することができる突然変異誘発、配列内の少なくとも1つの位置に関してランダムである予め選択された1つの配列を有する複数の核酸を合成することによるランダム化化学合成である。「予め選択された配列の1つの位置でランダム」という表現は、通常、例えば、できるだけ100%Aに近く(例えば、5'−C−T−T−A−G−T−3')合成される配列の1つの位置は、その位置(5'−C−T−T−N−G−T−3'、ここでNは、ランダム化位置を示し、例えば、合成反応は、A、T、C、およびCを各25%含むか、またはAをx%、Tをw%、Cをy%、およびGをz%含み、ここでx+w+y+z=100)においてランダムに合成されることが可能であることを意味する。このプロセスの後の段階では、配列のランダム化は益々少なくなり、共通配列が出現する。そのような場合、独自のヌクレオチド配列を有するアプタマーを最終的に得ることが好ましい。
「小分子」という用語は、生物学的プロセスに影響を及ぼすように作用できるポリペプチドおよび核酸以外の化学物質またはその他の部分を含む。小分子は、現在公知でかつ使用されている治療薬をいくつでも含むことができ、生物学的機能のスクリーニング目的のためのそのような分子のライブラリーにおいて合成される小分子であり得る。小分子は、大きさによって巨大分子から区別される。本発明による小分子は、通常約5,000ダルトン(Da)以下、好ましくは約2,500Da以下、より好ましくは1,000Da以下、最も好ましくは約500Da以下の分子量を有する。
一般的に、「ポリペプチド模倣体」(「ペプチド模倣体」)は、ポリペプチドの生物活性を模倣する分子であるが、化学的性質ではペプチド性ではない。ある実施態様では、ペプチド模倣体は、ペプチド結合(即ち、アミノ酸間のアミド結合)を含まない分子であるが、ペプチド模倣体と言う用語は、プソイドペプチド、セミペプチドおよびペプトイドのように、完全にペプチド性ではない分子を含み得る。広範な定義によるいくつかのペプチド模倣体の例(例えば、ポリペプチドの一部が、ペプチド結合を欠如する構造によって置換されている)を以下に説明する。完全にまたは部分的に非ペプチド特性である如何に係わらず、本発明に従うペプチド模倣体は、ポリペプチドの活性基の三次元配置によく似た反応性化学部分の空間配置を備えている。このよく似た活性部位ジオメトリの結果、このペプチド模倣体は、ポリペプチドの生物活性によく似た生物学的効果を提示し得る。
ポリペプチドおよびそれらの誘導体の例は、米国特許第7,169,390号に開示されているが、これは同一出願人によるものであって、本明細書では、その全体を包含している。これらの例は例示であり、その他のまたはさらなる変形を限定するものではない。
本発明は、1つ以上の生理活性脂質、またはその前駆物質または代謝物の活性または濃度を変化する1つ以上の治療薬を用いて、自己免疫疾患および状態を治療または予防するための方法を導く。本発明による治療法と組成物は、「有効濃度」、即ち、生理活性脂質の絶対的、相対的、有効および/または利用可能な濃度および/または活性を変化することによって作用する。生理活性脂質の有効濃度を低下させることは、下流効果を含む、ターゲット脂質またはその望ましくない影響を中和すると言うことができる。
本明細書に前述したように、スフィンゴシン類似体FTY720は、自己免疫疾患である多発性硬化症を罹患する患者の再発とCNS病巣の減少に有効であることが示されている。FTYは、S1Pレセプターアンタゴニストであり、従ってS1Pシグナル伝達を遮断するため、リゾ脂質S1PおよびLPAのような生理活性シグナル伝達脂質に結合し、それらの有効濃度を低下させる薬剤はまた、MSおよびその他の自己免疫疾患および状態の治療に有効性を実証するはずであると考えられている。これは、MSの標準動物モデルとして広く使用されている、急性実験自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルを含む、動物モデルを使用して実証されている。ラットEAEモデルでFTYは、EAE疾患の発症に対してほぼ完全な保護を与え、T細胞の脊髄への浸潤の減少を伴った。通常は、EAEでは、ミエリン塩基性タンパク質特異性Tリンパ球がCNSの有髄組織を攻撃する。CNSの炎症病巣はまた、FTY投与動物には存在しないが、コントロール動物には存在する。Fujinoら、(2003) Pharm and Exp Therap. 305:70−77。
関節リウマチ(RA)は、関節の炎症と壊変に起因する疼痛と身体障害を生じる自己免疫疾患である。関節リウマチの2つの動物モデルで、ラットアジュバント誘発性関節炎(AA)およびコラーゲン誘発性関節炎(CIA)モデルにおいて、FTYが、抗リウマチ化合物であるミゾリビンとプレドニゾロンと比較された。ある用量でのFTY720の効力は、AAおよびCIAモデルの両方において、ミゾリビンとプレドニゾロンと比較してほとんど等しいか、またはより高かった。他の化合物ではなく、FTYが、投与動物において、循環リンパ球量を有意に減少した。FTYはまた、異常な副作用を提示しなかったため、著者らは、有害事象を示した他の2つの化合物よりも高い安全性範囲を有すると結論するに至った。Matsuura, M.ら、(2000), Int. J. Immunopharmacol., 22:323−331.FTYは、S1Pレセプターアンタゴニストであり、従ってS1Pシグナル伝達を遮断するため、リゾ脂質S1PおよびLPAのような生理活性シグナル伝達脂質に結合し、それらの有効濃度を低下させる薬剤はまた、RAおよびその他の自己免疫疾患および状態の治療に有効性を実証するではずであると考えられている。
1型糖尿病は、免疫系が、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞を損傷および/または破壊して、インスリン産生ができなくなる、自己免疫疾患である。他の自己免疫状態および同種移植片拒絶の防止におけるFTY720の有効性に基づき、非肥満糖尿病(NOD)マウスにおける自己免疫性糖尿病の発症に対するこの化合物の影響が検討された。4週齢から動物にFTYの経口投与を開始した。ほとんどの非投与NODマウスは、35週齢までに糖尿病になったが、FTYを毎日投与した場合は、ほとんど全ての投与マウスにおいて糖尿病の発症を防止した。35週齢時にFTY投与を停止すると、5匹のマウスでは2週間以内に糖尿病が発症したが、残りのマウスは最高44週齢まで非糖尿病状態を維持した。投与期間を通じて薬の副作用は見られなかった。FTY720はまた、NODマウスマウスにおいて、シクロホスファミド誘発性糖尿病を防止した。これによって、著者らは、FTYは安全かつ有効な治療薬であり、また前糖尿病の人々の長期療法に有効であり得ると結論した。Maki T.ら(2002) Transplantation, 74:1684−6.明らかに糖尿病のNODマウスにおけるFTY720の連続経口投与はまた、糖尿病の完全な逆転を導くことが示された。Maki, T.ら、(2005) Transplantation, 79:1051−5. FTYは、S1Pレセプターアンタゴニストであり、従ってS1Pシグナル伝達を遮断するため、リゾ脂質S1PおよびLPAのような生理活性シグナル伝達脂質に結合し、それらの有効濃度を低下させる薬剤はまた、1型糖尿病およびその他の自己免疫疾患および状態の治療に有効性を実証するはずであると考えられている。
強皮症は、皮膚の瘢痕または肥厚を起因する自己免疫疾患であり、ときには、肺、心臓および/または腎臓を含む、身体の他の部分にも併発する。強皮症は、身体の皮膚および臓器における瘢痕組織(線維症)の形成によって特徴づけられ、これは、罹患領域の肥厚と硬化を招き、その結果として機能の低下に繋がる可能性がある。強皮症財団によれば、現在強皮症を罹患している米国人はおよそ30万人にのぼる。罹患している人々の三分の一以下が広汎性疾患を患い、残りの三分の二は、主に皮膚症状を有する。この疾患が肺に影響を及ぼして瘢痕を生じると、肺はもはや本来あるべきように拡大できないために、呼吸が制限されるようになる可能性がある。呼吸能力を測定するために、医師は、努力肺活量(FVC)を評価する装置を使用する。FVCが推定読み取り値の50%以下の人々では、強皮症関連肺疾患による10年死亡率がおよそ42%である。死亡率がこれほど高い1つの理由は、現在有効な治療法がないためである。
角膜移植の動物モデルにおいて、FTY720投与マウスは、経口投与した場合に、同所性角膜移植片生存の顕著な延長を示した。Zhangら(2003), Transplantation, vol 76: 1511−3.FTY経口投与はまた、ラットからマウスへの角膜の異種移植モデルにおいて、拒絶を有意に遅延し、かつその重症度を低減した。Sedlakovaら、(2005), Transplantation, vol 79, 297−303.同種移植片拒絶についての既知の病因に、S1Pシグナル伝達の影響を調節することは移植片生存を好転し得ることを示唆するこれらのデータを組み合わせると、生理活性脂質に結合し、それによってその有効濃度を低下させる薬剤はまた、異常な、望ましくないまたは過剰な免疫応答によって特徴づけられる同種移植片拒絶、移植片対宿主病およびその他の状態の治療に有効なはずであると考えられている。
糸球体腎炎のような糸球体の免疫疾患は、末期腎臓病の主要な原因に数えられる。これらの疾患は共通して、尿細管間質性コンパートメントの線維症と炎症によって特徴づけられる進行過程をたどる。「炎症性瘢痕」とは、本来は慢性腎臓病との関連において、炎症と線維症の併発に対して与えられた名称である。解説については、Petersら、(2004), Kidney Intl. 66:1434−1443を参照。生理活性シグナル伝達脂質の有効濃度を低下させる薬剤は、瘢痕形成と免疫および/または炎症性コンポーネントの両方によって特徴づけられる状態に特に有効なはずであると考えられる。
上記の例のような疾患および状態の治療は、異なる製剤とデバイスを用いる様々なルートで投与することができる。適切な薬剤として許容される希釈剤、担体、および賦形剤は、当該分野に公知である。
表1と2に要約するように、マウスモノクローナル抗体LT1002(SPHINGOMAB)に関する28日間毒性試験を、0、30、75、および200mg/kgの用量で実施した。下のデータ表1〜7に示すように、全ての用量レベルで、用量に関連するリンパ球の減少と高用量では好塩基球の減少が見られた。この減少は、%好中球、%単球および%網状赤血球の増加、ならびに%リンパ球の並列減少に反映された。循環好中球のこの減少は、リンパ球輸送を変更し、その結果末梢血液リンパ減少症を生じることによって作用する新しい免疫抑制薬である小分子スフィンゴシン類似体のFTY720で見られる効果に並行した。
表1―28日間一般毒性試験デザイン
マウスにおけるLT1002の28日間試験は、LAB前臨床(試験1005−2615)によって実施され、40の臓器と注射部位(尾)が、全てのコントロールおよび高用量レベル(グループ4、200mg/kg/日)動物において、総体的な病態について評価された。LT1002は、LT1009のマウス型で、Lpath社の抗S1Pモノクローナル抗体である。
グループ4の10匹中3匹のオスおよび10匹中5匹のメスに見られた赤脾髄の延髄外血球新生の軽度から著明な増加、ならびにグループ3(75mg/kg/日)の1匹のオスと1匹のメスに見られた軽度な赤脾髄の延髄外血球新生の増加(グループ3マウスで検査された脾臓はこれらのみ)は、LT1002関連の可能性があると考えられたが、毒性学的な有意性はなかった。」
S1Pシグナル伝達阻害薬FTY720は、リンパ球輸送/ホーミングのパターンおよびリンパ球ホーミングの加速を変更することにより、免疫抑制の様式で作用すると考えられる。Chibaら、(1998)J. Immunol. 160:5037.抗S1P抗体のリンパ球輸送に対する影響もまた、基本的に以下に発表された方法として、試験されている。Schwabら、(2005) Science 309: 1735−1739。
[51Cr遊離CTLアッセイ]
一次エクスビボ細胞毒性リンパ球(CTL)アッセイを、免疫優性ペプチドの存在/非存在下でインキュベートした51Cr標識MC−57細胞を標的として使って、Murali−Krishna, K.ら、(1998) Immunity 8(2):177−87に説明するように、実施した。結果は、以下の式を適用して、結果に100%を掛けることによって算出する。
脾細胞(4x106)を、10%FBSおよびGolgi Stop (Pharmingen、San Diego、CA)を含む250μLのRPMI−1640中で、2μg/mLの免疫優性H−2b制限CD8+T細胞エピトープペプチドの存在下で12時間インキュベートする。負のコントロールは、ペプチドを加えずにインキュベートする。刺激後、製造元(Pharmingen)によって指定されるように、細胞をCD8と細胞内IFN−γについて染色する。染色後、FACScanまたはFACSCaliburを使ってフローサイトメトリで細胞を分析し、CellQuest(商品名)ソフトウェア(Becton Dickinson Immunocytometry Systems、San Jose、CA)を使ってCD8とIFN−γの発現についてデータ解析を行った。CD8+T細胞のペプチド特異的活性化のパーセントは、IFN−γを発現するCD8+T細胞数をCD8+T細胞の合計数で割ることによって計算される。IFN−γを産生するT細胞誘導の正のコントロールとして、ナイーブコントロール動物からの同数の脾細胞を、染色前に、20ng/mLのホルボール−12−ミスチリン酸−13−アセテート(PMA、Calbiochem、La Jolla、CA)および3μMのイオノマイシン(Calbiochem)の存在下、6時間インキュベートする。
EAEは、中枢神経系(CNS)の実験的自己免疫疾患であり(Zamvilら、(1990) Ann. Rev. Immunol., 8:579)、ヒト自己免疫状態である多発性硬化症(MS)の疾患モデルである[Alvordら、Experimental Allergic Model for Multiple Sclerosis(多発性硬化症の実験的アレルギーモデル), NY 511 (1984)]。EAEは、CNSから精製されたミエリン塩基性タンパク質(例えば、モルモットまたはウシ脊柱のエマルジョン)または脳炎惹起性プロテオリピド(PLP)またはミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG35-55)のペプチドフラグメントで免疫することによって、哺乳類種[例えば、SJL/Jマウスはマウス(H−2S)の感受性系統である]において容易に誘発される。白質の注射によって誘発された、マウスにおける実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、CNS炎症の有用なモデルであり、多発性硬化症の研究に使用されている(Spahnら1999、また、Howard WeinerによるEAEの様々なマウスモデルに関する40を上回る論文を参照)。
コラーゲン誘発性関節炎(CIA)は、ヒト自己免疫疾患である関節リウマチ(RA)の動物モデルである。Trenthornら、(1977)J. Exp. Med., 146:857.この疾患は、異種性II型コラーゲンの投与によって、多くの種におい
て誘発でき[Courtenayら、(1980) Nature, 283:665、Cathcartら,(1986) Lab. Invest., 54:26]、これはこの疾患研究のために認容されているモデルである。
コラーゲンで免疫することによって誘発される。肉眼的に明白な関節炎は、免疫後28〜35日目の間に発症し、数ヶ月間持続して関節が強直する。CIAは、単核細胞浸潤および骨と軟骨破壊を伴う滑膜細胞過形成を含むRAに共通するいくつかの組織病理学的特徴を有する。RAとCIAの両方において、疾患感受性は、MHCクラスII対立遺伝子によって限定され、自己反応性T細胞は、関節に目立って存在する。これらの類似性のために、CIAはRAの実験モデルとして広く使用されている。典型的に、CIAは、6〜7週齢オスマウスにおいて1日目に、完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化したM. tuberculosis(結核菌)2.0mg/mlを補充したウシまたはニワトリのコラーゲンII(CII)を尾の付け根真皮内に注射することによって誘発される。21日目に、マウスは、尾の付け根真皮内に、不完全フロイントアジュバントに加えたCIIの投与を受ける。疾患の臨床重症度を4日ごとに評価する。各足の炎症スコアを0〜4スケールで記録する:0,正常、1,紅斑および足首、または足根、または個々の指に限局する軽度の腫れ、2、中等度の紅斑および足根と足首の腫れ、3,重篤な紅斑および足首、足根ならびに指の軽度な腫れ、4,重篤な紅斑および足首、足根ならびに指の重篤な腫れ。それぞれのマウスについての毎日の合計スコアは、4つの足全部のスコアを加算することによって求める。60日目にマウスを安楽死させて、前肢の重量を計測する。組織検査のために、足を10%ホルマリンで固定し、Decal(Fisher)で脱灰し、パラフィンに包埋して、5μm切片をヘマトキシリン/エオシンで染色する。
非肥満糖尿病(NOD)マウスへのFTY720の投与は、糖尿病の発症を防止することが示されている。また、明らかに糖尿病のNODマウスにおいてFTY720を連続経口投与した結果、糖尿病の逆転を生じることができる。Makiら前出を参照。生理活性脂質の有効濃度を低下させる、抗S1P抗体のような薬剤は、糖尿病に対して同様な効果があるはずであると考えられている。これは、標準方法を用いて、標準NODマウスモデルで試験する。
身体を衰弱させるような後天性結合組織の疾患である強皮症は、特に皮膚と肺の線維症によって特徴づけられる。強皮症についてのマウスの強皮症移植片対宿主疾患(Scl GVHD)モデルが、線維性疾患とGVHDを起こす免疫学的メカニズムそのものを研究するために開発された。このモデルは、皮膚の肥厚、肺線維症、および単球浸潤およびTGF−1mRNAの上方制御に先行される皮膚コラーゲンmRNAの上方制御を含む強皮症の重要な特徴を再現する。McCormick, L.L. (1999) J. Immunol. 163: 5693−5699.簡単に説明するならば、レシピエントマウスを致死量放射線照射してから、同種間ドナーの脾臓と骨髄細胞懸濁液を注射する。皮膚の強皮症性肥厚が、BMT後21日目に、一般組織病理切片の画像分析によって検出される。強皮症のその他の動物モデルについては、Varga: Lakos G, Takagawa S, Varga J. (2004) Methods Mol Med.102:377−93による総説において考察されている。
心臓の同種移植:
抗S1P抗体および生理活性脂質の有効濃度を低下させるその他の薬剤の同種移植片拒絶における治療効果を判定するために、マウス血管新生異所性心臓移植モデルにおいて、これらの化合物の活性を試験する。Balb/cマウス由来の心臓を、基本的にIsobeら、Circulation 1991, 84, 1246−1255によって説明されるように、血管新生した一次移植片として、C3Hマウスの腹腔内に移植する。試験化合物を、尾静脈内注射、または連続ポンプによって投与し、同種移植片生存時間を、二次心拍の検出によってモニターする。同種移植片の平均生存時間は、抗S1P抗体または生理活性脂質の有効濃度を低下させるその他の薬剤によって増加することが予測される。
腎臓の同種移植:
角膜の同種移植:
糸球体腎炎のような糸球体の免疫疾患は、末期腎臓病の主要な原因に数えられる。これらの疾患は共通して、尿細管間質性コンパートメントの線維症と炎症によって特徴づけられる進行過程をたどる。解説については、Petersら、(2004), Kidney Intl. 66: 1434−1443を参照。抗S1P抗体またはその他の生理活性シグナル伝達脂質の有効濃度を低下させる薬剤などは、瘢痕形成と自己免疫および/または炎症性コンポーネントの両方によって特徴づけられる状態に特に有効なはずであると考えられる。
(1. イントロダクション)
本実施例は、生理活性シグナル伝達脂質スフィンゴシン1−リン酸(S1P)に対して反応性のある、ヒト化モノクローナル抗体LT1009を含有するいくつかの製剤の安定性を評価する実験を説明する。LT1009は、2本の同一な軽鎖と2本の同一な重鎖を含む工学設計された完全長のIgG1Kアイソタイプ抗体であり、150kDaの総分子量を有する。軽鎖と重鎖の相補性決定領域(CDR)は、S1Pに対して産生されたマウスモノクローナル抗体に由来し、さらにCDRの1つにCysからAlaへの置換を含んでいる。LT1009では、ヒトフレームワーク領域が、高い親和性と特異性でS1Pに結合する、この抗体の総アミノ酸配列の約95%を占めている。
(a.LT1009)
製剤サンプル(各〜0.6mL)は、24mMリン酸ナトリウム、148mMNaCl、pH6.5中にLT1009を42mg/mL含有する水性ストック溶液から生成した。24mMリン酸ナトリウム、148mMNaCl、pH6.5溶液を使って、水性ストック溶液を所望する濃度に希釈することによって、LT1009を11mg/mL含有するサンプルを調製した。異なるpH値を有するサンプルを調製するには、LT1009(11mg/mLおよび42mg/mL)の各濃度のpHを、0.1M HClまたは0.1M NaOHをそれぞれ使用して、当初の6.5の値から、6.0または7.0に調整した。異なるNaCl濃度を有するサンプルを調製するには、塩濃度を、当初の148mMから300mMまたは450mMに上げるために、5M NaClをサンプルに添加した。異なる非イオン系界面活性剤濃度を有するサンプルを調製するには、最終濃度が、200ppmまたは500ppmになるように、ポリソルベート−80をサンプルに添加した。サンプルは全て、0.22μmのPVDF膜シリンジフィルターを通して、滅菌済みの発熱物質を取り除いた10mLの血清バイアル中に無菌的に濾過した。バイアルはそれぞれ、次に低剥離性のPTFEで裏打ちされたストッパーで密封して、汚染物から保護し固定するようにキャップをクリンピングした。安定性チェンバーに置く前に、バイアルを短時間2〜8℃で保管し、その後、3つの特定した保存条件に合わせて調節した安定性チェンバー内に垂直に置いた。40℃(±2℃)/75%(±5%)相対湿度(RH)、25℃(±2℃)/60%(±5%)RH、または5℃(±3℃)/大気RH。試験された製剤の変量の概要を以下の表3に示す。
表3.製剤の概要
各製剤のサンプルを、以下の表4に記載のスケジュールに従って分析した。全時点について、各保存条件についてバイアル1瓶を使用した。サンプルが取り出される日に、バイアルを各安定性チェンバーから取り出して、各サンプルの150μLをそれぞれ対応するラベルがついた別個のバイアル中に移して、試験前に1時間ベンチの上に静置した。試験するアリコートを抜き取った後、元のバイアルは、すぐに定められた安定性チェンバーに戻した。
表4.医薬品製剤試験安定性マトリックス
所定の時点について、各サンプルからのアリコートを使って、目視観察、注射器適性、pH、SDS−PAGE(還元および非還元条件)、SE−HPLC、およびIEFを含む一連の標準分析を実施した。タンパク質濃度は、UV分光測定法によって測定した(OD−280)。円二色性(CD)試験も実施した。
分析した全サンプルについて、目視による外観に経時的な変化はなかった。同様に、注射適性検査で、サンプルは、30ゲージ注射針を備えたシリンジに問題なく吸入されることが実証された。様々な分析検査の結果は一貫しており、SE−HPLCは、LT1009の優れた安全性評価法であることが明らかになった。これらの結果は、塩濃度が上昇すると、凝集物の生成と小さな非凝集不純物の生成のどちらも減少することを示した。また、pHを低下すると、凝集物と不純物形成を低下することも発見された。さらに、ポリソルベート−80濃度を200ppm以上に上昇させると、それ以上LT1009を安定化しないことが明らかになった。図Xは、LT1009を11mg/mL含有するサンプルで実施されたSE−HPLC実験結果を示す。LT1009を42mg/mL含有するサンプルについても類似の結果が得られたが、LT1009濃度が低い方が、高濃度と比較して凝集物形成の可能性が低いことを示し、これは抗体が、高濃度で試験した全ての条件下では、僅かに安定性が低いことを示している。
Claims (8)
- 動物の循環リンパ球または脾臓CD4+T細胞の割合を低減する医薬を製造するための、スフィンゴシン−1−リン酸に結合し、前記スフィンゴシン−1−リン酸の有効濃度を低下させるマウスモノクローナル抗体LT1002またはヒト化モノクローナル抗体LT1009の使用。
- 動物の多発性硬化症治療用医薬を製造するための、スフィンゴシン−1−リン酸に結合し、前記スフィンゴシン−1−リン酸の有効濃度を低下させるマウスモノクローナル抗体LT1002またはヒト化モノクローナル抗体LT1009の使用。
- 脱髄を軽減するか、又は、脱髄疾患若しくは脱髄症状を有するか若しくは有すると考えられる動物の麻痺、運動失調、四肢麻痺、若しくは軸索損傷を軽減する医薬を製造するための、スフィンゴシン−1−リン酸に結合し、前記スフィンゴシン−1−リン酸の有効濃度を低下させるマウスモノクローナル抗体LT1002またはヒト化モノクローナル抗体LT1009の使用。
- 前記動物がヒトである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
- 前記ヒトが、多発性硬化症を罹患している、または罹患していると考えられる、請求項4に記載の使用。
- スフィンゴシン−1−リン酸に結合するマウスモノクローナル抗体LT1002またはヒト化モノクローナル抗体LT1009が、多発性硬化症またはその症状の治療のために投与される治療薬と併用投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
- 前記治療薬が、多発性硬化症治療のための疾患調節薬、副腎皮質ステロイドまたは多発性硬化症の一次または二次症状の治療のために投与される治療薬である、請求項6に記載の使用。
- 多発性硬化症治療のための疾患調節薬が、免疫調節薬または免疫抑制薬であり、前記免疫調節薬がβインターフェロン1b、βインターフェロン1a、グラチラマー酢酸塩またはナタリズマブであり、また前記免疫抑制薬がミトキサントロンまたはFTY720である、請求項7に記載の使用。
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