JP5883240B2 - 水素製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水を原料として水に浸漬する事により効率よく水素を製造可能な水素発生剤に関するものであって、更には、該水素発生剤を用いる水素の製造方法に関する。
現在、世界では推定年間5000億Nm以上の水素が製造されている。そして、このうち97%は化石燃料を燃焼させることにより製造され、残りは水を電気分解等することにより製造されている。製造された水素は、アンモニアやメタノール等の化学合成や、石油精製の分野で広く使用されている。
また、水素は、無色・無臭であること、燃焼温度が3000℃と高いこと、燃焼しても二酸化炭素や有害なガスを発生しないこと等の特徴を有していることから、特に近年はクリーンなエネルギー源として活用することの検討が進められている。しかしながら、エネルギー源としての水素は、その製造コストが高価であることから実用化があまり進んでいない。
上記のように、水素の発生方法には、化石燃料を燃焼させる方法と水を電気分解等させる方法とがあるが、前者は大量の二酸化炭素を排出するので地球環境の面で問題がある。このため、水素をクリーンなエネルギー源として活用していくためには、化石燃料に頼らないで、安価に、しかも大量に水素を発生させる方法を見つけ出す必要がある。
化石燃料を使用せずに水から水素を発生させる従来の方法としては、特許文献1には、常温の水中でアルミニウムまたはアルミニウム合金を切削/研削加工することにより酸化膜に覆われていない新生面を生成し、その新生面と水とを反応させることにより水素を発生させる方法が開示されている。
特許文献2には、アルミニウム粉末、またはアルミニウム粉末及びアルミニウムよりもイオン化傾向の小さい金属粉末(例えば、亜鉛粉末)からなる混合粉末と水とを反応させることにより、水素を発生させる方法が開示されている。
特許文献3には、アルミニウム粉末と酸化力ルシウム粉末とからなる水素発生剤が開示されている。この水素発生剤を水に浸漬させると、酸化力ルシウムと水とが反応して水酸化カルシウムが生成され、さらにこの水酸化カルシウムとアルミニウム粉末が反応して水素が発生する。
特開2001‐31401号公報 特開2002‐104801号公報 特開2004‐231466号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、水を外部から加熱しないと十分な反応速度が得られないため、水素を大量に発生させることはできなかった。
また、特許文献2に記載の方法は、アルミニウム粉末または亜鉛アルミニウム粉末を得るための溶射装置を必要とするので、装置の大型化、複雑化が避けられず、安価に水素を発生させることはできなかった。
特許文献3に記載の水素発生剤では、Alの使用効率が悪く大量の水素を発生することができず、携帯電話の駆動に必要となる電力しか発生させることができなかった。また、水素を発生するためには、CaOの水和による発熱反応を利用することが必須である。
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、安価かつ大量に水素を発生させることができる水素発生剤、並びにこの水素発生剤を用いた水素製造方法を提供することにある。
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、Al金属及び水酸化カルシウムを主成分として構成され、Al金属、水酸化カルシウムの重量比率が80/20から98/2である水素発生剤が効率的な水素発生剤となりうることを見出し、発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記〔1〕に記載の事項をその特徴とするものである。
〔1〕 水に接触すると水素を発生させる水素発生剤を用いて水素を製造する方法であって、前記水素発生剤は、Al金属及び水酸化カルシウムにより構成され、Al金属と水酸化カルシウムの重量比率が80/20から95/5であり、前記Al金属と前記水酸化カルシウムの粒径比が10/1から200/1であり、前記水素発生剤と水を混合してpHを7以上に保持して撹拌することにより水素を発生することを特徴とする水素製造方法。
本発明によれば、安価かつ大量に水素を発生させることができる水素発生剤、及びこの水素発生剤を用いた水素製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、化石燃料を燃焼させる必要がないので、地球環境に負担をかけることなく水素を発生させることができる。
詳細は不明であるが、本発明の水素発生剤を用いる事で、通常のAlと水の反応で形成する不溶相が、水酸化カルシウムとの反応によるカトアイトの形成により可溶化し、結果として加熱処理などが不要な効率の良い水素発生が可能となったと考えられる。また、Al粒子の水酸化カルシウムに対する粒径比を10/1から200/1にすることで、水酸化カルシウムとAl表面の不溶層の反応性が向上し、効率的な水素発生が可能になったと考えられる。
実施例1、2、比較例2の水素形成速度の径時変化 実施例1、2、比較例2の水素発生量の径時変化 水素発生材中のAlに対する水素発生効率
本発明は、Al金属及び水酸化カルシウムを主成分として構成され、Al金属、水酸化カルシウムの重量比率が80/20から98/2である水素発生剤である。
Al金属、水酸化カルシウムの粒径比が10/1(Al/Ca(OH))から200/1であることが好ましい。
本発明の水素発生剤は、水素発生剤を水に添加後にpHが7以上に保持されことにより、外部からの過熱することなく水素製造が可能である。好ましくは、pHは10から13に保持される。
水素は、水素発生剤中のAlと水の反応(反応式1)により形成されが、通常アルミ酸化物又は水酸化物の不動体層がAl表面に形成されるために反応は進行しない。

2Al + 6HO → 2Al(OH) + 3H (1)
水酸化カルシウムが共存し、pHが7以上である場合、水酸化カルシウムとAl金属表面に存在する水酸化アルミと反応(反応式2)し、未反応のAl金属面が形成され、結果として反応式1の反応が進行する事で水素が継続的に生成する。pHが10より小さい場合、反応式2の反応速度が遅いため好ましくない。また、Alと水酸化カルシウム粒径比が、10/1から200/1である場合に効率的に反応式2の反応が進行し、金属Al表面の形成が促進され、結果として反応式1の反応が完全に進行し水素発生効率がほぼ100%と大幅に向上する。

2Al(OH) + 3Ca(OH) → CaAl(OH)12 (2)

水素製造の過程において、以上の反応により構造式CaAl(OH)12で示される組成物(カトアイト)を形成伴うことにより水素を効率よく発生する事が可能な水素製造方法である。
本発明に用いられるAlは、特に限定されず、純Al、各種Al合金であっても良い。
Al金属、水酸化カルシウムの重量比率が80/20から98/2である事が好ましい。より好ましくは、Al金属、水酸化カルシウムの重量比率が85/15から95/5である。Al金属、アルカリ土類化合物の重量比率が80/20よりAl量が少ないとAlの総量が少なくなるため結果として単位量の水素発生材からの水素発生量が少なくなるため好ましくない。水素発生剤あたりの水素発生量を多くするためには、Al比率を可能な限り多くすることがより好ましい。98/2よりAl量が多い場合、カトアイトの形成量が少なくなるために、Alを完全に消費することが出来ず、水素発生効率が低下する。
Al金属、水酸化カルシウムの粒径比は特に限定されないが、10/1から200/1である事が好ましい。
Al金属の粒径は、100nmから数150μmである事が好ましい。より好ましくは500nmから100μmである。100nmより小さくなるとAlの反応性が高くなり粉塵爆発などの危険を伴うため好ましくない。150μmを超えると水素の発生効率が低下するため好ましくない。
水酸化カルシウムの粒径は特に限定されないが、10nmから10μmが好ましい。10μmを超えるとアルミ酸化物や水酸化物との反応性が低下する。効率的なカトアイトの形成を促進するため、水素発生剤中では、Alも周りに均質に存在することが好ましい。
水素発生剤を水に添加後にpHが7以上に維持されることが必要である。pHが10から13であることがより好ましい。pHが7より小さくなるとカトアイトの形成が阻害されるため好ましくない。
本発明の水素発生剤を用いれば、水中に水素発生剤を添加し、pHを7以上に維持する事で、過熱することなく効率的な水素製造が可能となる。
〔実施例1〕
アトマイズアルミニウム粉末(高純度化学研究所製、4Nup、粒径:45μm以下)と水酸化カルシウム粉末(キシダ化学製、特級試薬、SEM観察による平均粒径;0.8μm)の重量比率を90/10とし秤取し乳鉢で混合し、水素発生剤とした。水素発生剤18gを室温で蒸留水200mlをガラス容器の中に投入し、攪拌子を用いマグネチックスターラーで攪拌した。pHは12であった。
発生したガスは、シリコンチューブを通して一旦水中にバブリングし、乾燥剤と通して水蒸気成分を取り除いたあと、ガスフローメーターを通して1分あたりの発生ガス量を測定し、総水素発生量を計測した。水素発生速度及び水素発生量の時間変化を各々図1と図2に示す。最終的な総水素発生量は使用したAl重量から予測される値とほぼ同量であった。
反応後の生成物は、濾紙を通してろ過後に80℃で乾燥し、生成物の同定を行った。粉末X線回折の結果、カトアイトであるCaAl(OH)12が主生成物である事が確認された。
〔実施例2〕
実施例1に用いたと同様のアトマイズアルミニウム粉末と水酸化カルシウム粉末の重量比率を80/20とし、実施例1と同様の試験を行い(pH=12)、Al重量から予測される値とほぼ同量水素発生を確認した。また、反応生成物からカトアイトの生成を確認した。
〔実施例3〕
実施例1に用いたと同様のアトマイズアルミニウム粉末と水酸化カルシウム粉末の重量比率を95/5とし、実施例1と同様の試験を行い(pH=12)、Al重量から予測される値とほぼ同量水素発生を確認した。また、反応生成物からカトアイトの生成を確認した。
〔実施例4〕
実施例1に用いたと同様のアトマイズアルミニウム粉末と水酸化カルシウム粉末の重量比率を85/15とし、実施例1と同様の試験を行い(pH=12)、Al重量から予測される値とほぼ同量水素発生を確認した。また、反応生成物からカトアイトの生成を確認した。
〔実施例5〕
粒径100μmのアトマイズアルミニウム粉末(ミナルコ製、#245)と粒径0.8μmの水酸化カルシウム粉末の重量比率を90/10とし、同様の試験を行った(pH=12)。水素の発生速度が、実施例1に比べ若干遅くなるが、Al重量から予測される値とほぼ同量水素発生を確認した。また、反応生成物からカトアイトの生成を確認した。
〔比較例1〕
アトマイズアルミニウム粉末のみを用い同様の実験を行ったが、水素の発生は認められなかった。
〔比較例2〕
実施例1に用いたと同様のアトマイズアルミニウム粉末と水酸化カルシウム粉末の重量比率を70/30とし、実施例1と同様の試験を行い(pH=12)水素発生を確認したが、Al重量から予測される値の66%の水素発生しか確認できなかった。
〔比較例3〕
実施例1に用いたと同様のアトマイズアルミニウム粉末と水酸化カルシウム粉末の重量比率を50/50とし、実施例1と同様の試験を行い(pH=12)水素発生を確認したが、Al重量から予測される値の53%の水素発生しか確認できなかった。
本発明のAl比率の範囲では(実施例1〜5)、Alの利用効率が100%であったのに対し、Al比率が100%(比較例1)、70%以下(比較例2、3)の場合は各々0%、66%、53%とAlの利用効率が小さくなり、本発明の優位性が確認された(図3)。
本発明の水素発生剤、及び水素製造方法は、特に、100℃以下の低温において、簡便で効率よくかつ安定的に水素を製造でき、従来のように大規模な装置を必要とせず、産業上幅広く利用可能である。また、水素発生剤を用いた水素製造方法は水素を燃料とする燃料電池を備えた燃料電池システムに連動する事が可能であり、設置型の大型燃料電池だけでなく、小型携帯機器用燃料電池への水素供給元として幅広く利用可能である。

Claims (1)

  1. 水に接触すると水素を発生させる水素発生剤を用いて水素を製造する方法であって、前記水素発生剤は、Al金属及び水酸化カルシウムにより構成され、Al金属と水酸化カルシウムの重量比率が80/20から95/5であり、前記Al金属と前記水酸化カルシウムの粒径比が10/1から200/1であり、前記水素発生剤と水を混合してpHを7以上に保持して撹拌することにより水素を発生することを特徴とする水素製造方法。
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