JP5881765B2 - マルチモードイオン化装置 - Google Patents

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Description

この発明は、マルチモードイオン化装置に関し、特に質量分析計での使用に適合したマルチモードイオン化装置に関する。
質量分析計は、イオン化された被検体を発生させ、かつそれらの質量電荷比を測定することによって機能する。被検体をイオン化するにはいくつかのアプローチがあり、かつ異なる種類の被検体のイオン化に対しては、異なるアプローチが適している。例えば、エレクトロスプレーイオン化装置は、ペプチド、タンパク質などのような極性分子をイオン化するのに適しているが、しかし飽和炭化水素、多環式芳香族炭化水素などのような非極性分子をイオン化するのには適していない。大気圧化学イオン化装置は、非極性分子をイオン化するのに適しているが、しかし極性分子をイオン化するのには適していない。したがって、極性分子および非極性分子を含む試料を分析する場合、異なるイオン化装置を備えた異なる質量分析計を別々に使用して試料を分析する必要がある。そのため、異なる性質の被検体をイオン化するために、マルチモードイオン化装置を提供する必要性がある。
図1を参照すると、米国特許第7078681号明細書はマルチモードイオン化源を開示しているが、これは、エレクトロスプレーイオン化源(ESI源)5と、ESI源5の下流に配設される大気圧化学イオン化源(APCI源)6とを含む。ESI源5は、噴霧器51と乾燥装置52とを含む。被検体を含む液状媒質50は、噴霧器51へ導入され、かつオリフィス511へ輸送され、ここから帯電したエアロゾルが生成され、イオン化領域70へ移動する。乾燥装置52は、イオン化領域70で帯電したエアロゾルにスイープガスを供給するために、スイープガス導管521を有する。噴霧器51の噴霧器先端512と第1電極53との間の第1電位差は、噴霧器先端512で帯電したエアロゾルを生成するための電界を作り出し、その一方で、第2電極54と導管8との間の第2電位差は、イオンを導管8の方に向け、かつ案内するための電界を作り出す。APCI源6は、コロナニードル61を含む。コロナ放電は、コロナニードル61での高電界によって生成される。電界は、コロナニードル61と導管8との間の電位差によって顕著に生成される。この場合、帯電したエアロゾルがイオン化領域70へ移動する際、帯電したエアロゾルは、コロナ放電によってさらにイオン化され得る。
それゆえに、本発明の目的は、マルチモードイオン化装置を提供することであり、この装置は、被検体を同時にかつ同じ場所でイオン化するための2つのイオン化ユニットを含み、それによって、極性および非極性の被検体が、より効率的かつ効果的にイオン化されることが可能である。
本発明によれば、マルチモードイオン化装置は、質量分析計での使用に適合しており、この質量分析計は、試料から引き出されかつ質量分析計によって分析されるべきイオン化された被検体を自身の中に収容するべく配設された受けユニットを含む。マルチモードイオン化装置は、
液状エレクトロスプレー媒質を供給するための貯留槽と、貯留槽の下流に配置され、かつ自身のところで液状エレクトロスプレー媒質のエレクトロスプレープルームを形成するように構成されるノズルとを含むエレクトロスプレーユニットであって、ノズルが自身の間で進行経路を規定するように受けユニットから一定の間隔を置いて配設される、エレクトロスプレーユニットと、
液状エレクトロスプレー媒質が、自身の中に収容されるべき受けユニットに向かって進むためのエレクトロスプレープルームとしてノズルを離れることが可能となるように、液状エレクトロスプレー媒質がノズルに駆け寄る際、液状エレクトロスプレー媒質に複数の電荷を負わせるように構成された電荷発生ユニットと、
プラズマプルームを発生させ、かつこれを案内するように構成されたプラズマ供給ユニットであって、プラズマプルームは、合流ゾーンにおいてプルーム結合体が形成されるようにエレクトロスプレープルームと混合し、この合流ゾーンは、進行経路の直線的に伸びる端部ゾーンの上流にあり、かつこの合流ゾーンは、少なくとも1つの被検体が、直線的に伸びる端部ゾーンに沿って受けユニットへ進行するプルーム結合体の中で運ばれることが可能となるように方向付けられ、それによって、直線的に伸びる端部ゾーンに沿う受けユニットへの接近の結果として、プルーム結合体の中で運ばれる前記少なくとも1つの被検体に対してプルーム結合体の電荷が渡され、したがって、イオン化された被検体の対応する1つが形成される、プラズマ供給ユニットと、を含む。
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を以下に詳しく説明する中で、明白となるであろう。
図1は、米国特許第7078681号明細書に開示された従来のマルチモードイオン化源の断面図である。 図2は、本発明の第1の好ましい実施形態によるマルチモードイオン化装置の断片的な断面図である。 図3は、図2の断片的な拡大図である。 図4は、本発明の第2の好ましい実施形態によるマルチモードイオン化装置の断片的な断面図である。 図5は、本発明の第3の好ましい実施形態によるマルチモードイオン化装置の断片的な断面図である。 図6は、本発明の第4の好ましい実施形態によるマルチモードイオン化装置の断片的な断面図である。 図7は、図6の断片的な拡大図である。 図8は、本発明の第5の好ましい実施形態によるマルチモードイオン化装置の断片的な断面図である。 図9は、本発明の第6の好ましい実施形態によるマルチモードイオン化装置の断片的な断面図である。 図10は、本発明の第7の好ましい実施形態によるマルチモードイオン化装置の断片的な断面図である。 図11(a)は、エレクトロスプレーイオン化源(ESI源)および大気圧化学イオン化源(APCIプラズマ源)の両方が動作している状態で、図9のマルチモードイオン化装置を用いて取られた第1試料のスペクトルを示す。 図11(b)は、ESI源だけが動作している状態で、図9のマルチモードイオン化装置を用いて取られた第1試料のスペクトルを示す。 図11(c)は、APCIプラズマ源だけが動作している状態で、図9のマルチモードイオン化装置を用いて取られた第1試料のスペクトルを示す。 図12(a)は、ESI源およびAPCIプラズマ源の両方が動作している状態で、図9のマルチモードイオン化装置を用いて取られた第2試料のスペクトルである。 図12(b)は、APCIプラズマ源だけが動作している状態で、図9のマルチモードイオン化装置を用いて取られた第2試料のスペクトルを示す。 図12(c)は、ESI源だけが動作している状態で、図9のマルチモードイオン化装置を用いて取られた第2試料のスペクトルを示す。
本発明がより詳細に説明される前に、ここで注意するべきことは、本明細書を通して、同類の要素を表すのに同じ参照符号が用いられていることである。
図2および図3を参照すると、本発明の第1の好ましい実施形態によるマルチモードイオン化装置3は、質量分析計2での使用に適合する。
質量分析計2は、受けユニット21と検出器22とを含む。受けユニット21は、試料から引き出され、かつ質量分析計2によって分析されるべきイオン化された被検体を、自身の中に収容するように配設されている。受けユニット21は、イオン化された被検体を分析するための質量分析器211を含む。質量分析器211は、イオン化された被検体が入るための入口ポート212を備えて形成される。検出器22は、質量分析器211によるイオン化された被検体の分析結果として発生された信号を受け取るように配設され、それによって、質量分析結果、すなわち質量スペクトルを発生させる。
マルチモードイオン化装置3は、エレクトロスプレーユニット31を含み、これは、エレクトロスプレーイオン化源(ESI源)と、大気圧化学イオン化源(APCI源)の性質を持つプラズマ供給ユニット32と、電荷発生ユニット4とで構成される。
エレクトロスプレーユニット31は、液状エレクトロスプレー媒質を供給するための貯留槽310と、貯留槽310の下流に配設され、かつ自身のところで液状エレクトロスプレー媒質の複数のエレクトロスプレープルームを連続的に形成するために構成されるノズル303とを含む。ノズル303は、自身の間で進行経路(X)を規定するように、受けユニット21から一定の間隔を置いて配設される。
好ましくは、エレクトロスプレーユニット31は、長さ方向に伸びて互いに反対にある第1管端部301および第2管端部302で終止する案内管316をさらに含む。第1管端部301は貯留槽310と流体連通しており、かつ第2管端部302はノズル303の役目をする。この実施形態では、案内管316は毛細管であり、かつ硬質管317によって強化されている。
液状エレクトロスプレー媒質が、自身の中に収容されるべき受けユニット21に向かって進むためのエレクトロプルームとしてノズル303を離れることが可能となるように、液状エレクトロスプレー媒質がノズル303に駆け寄る際、電荷発生ユニット4は、液状エレクトロスプレー媒質に複数の電荷を負わせるように構成される。この好ましい実施形態では、電荷発生ユニット4は電圧供給部材41を含み、電圧供給部材41は、エレクトロスプレーユニット31と受けユニット21との間に、液状エレクトロスプレー媒質に複数の電荷を負わせるための強度で、しかも液状エレクトロスプレー媒質がエレクトロスプレープルームとしてノズル303を離れることを強制するための強度の電位差を確立するように配設される。
プラズマ供給ユニット32は、複数のプラズマプルームを連続して発生させ、かつ合流ゾーン(X1)でプルーム結合体を形成するために、各プラズマプルームを案内してエレクトロスプレープルームと混合するように構成され、合流ゾーン(X1)は、進行経路(X)の直線的に伸びる端部ゾーン(X2)の上流にあり、かつ合流ゾーン(X1)は、少なくとも1つの被検体が、直線的に伸びる端部ゾーン(X2)に沿って受けユニット21へ進行するプルーム結合体の中で運ばれることが可能となるように方向付けられ、それによって、直線的に伸びる端部ゾーン(X2)に沿って受けユニット21に接近するプルーム結合体のサイズ縮小の結果として、プルーム結合体の中で運ばれる前記少なくとも1つの被検体に対して、プルーム結合体の電荷が渡され、したがって、イオン化された被検体の対応する1つが形成される。
好ましくは、プラズマ供給ユニット32は案内導管323を含み、案内導管323は、長さ方向に伸びて、互いに反対にある第1および第2導管端部321、322で終止する。第1導管端部321はノズル303から遠位にあり、かつ第2導管端部322は、第1導管端部321の反対側で、しかもノズル303に対して近位にあり、それによって、プラズマ形成ガスから発生された各プラズマプルームは、第2導管端部322を通って案内導管323を離れ、したがって、合流ゾーン(X1)でエレクトロスプレープルームと混合することが可能となる。プラズマ形成ガスは、空気、窒素ガス、ヘリウムガスなどであることができ、かつ不活性ガスが好ましい。
この実施形態では、案内導管323は、案内管316と同軸であり、しかも案内管316を囲んで環状空隙326を規定し、それによって、環状空隙の中に導入されるプラズマ形成ガスが、プラズマプルームを発生させるために、第1導管端部321を通って環状空隙の中に案内される。
好ましくは、プラズマ供給ユニット32は、プラズマ発生部材324をさらに含む。プラズマ発生部材324は、案内導管323の外側導管表面上で、しかも第1導管端部321と第2導管端部322との間に配設され、かつプラズマプルームを発生させるように、プラズマ形成ガスに高電圧を印加するように構成される。この実施形態では、プラズマ発生部材324は、案内導管323上にそでが付けられた環状電極3241を有し、かつプラズマプルームを発生させるように、環状空隙326を通過するプラズマ形成ガスをイオン化するために、高電圧が環状電極3241に印加される。
好ましくは、マルチモードイオン化装置3は、加圧されたガス供給ユニット33を含む。加圧されたガス供給ユニット33は、第1導管端部321と流体連通するように構成された出口330を有し、それによって、プラズマ形成ガスが環状空隙326の中に導入されることが可能になる。この実施形態では、加圧されたガス供給ユニット33は、加圧されたプラズマ形成ガスを供給するためのガス供給器(図示せず)と、3つのポート332、333、334を有するガス案内T字型パイプ331とを含む。ポート332は、ポート332を通って、加圧されたプラズマ形成ガスをガス案内T字型パイプ331の中に導入するためのガス供給器と連通している。ポート333は出口330を有し、かつ第1導管端部321と連通している。ポート334は、硬質管317の外側表面に封着される。
そのうえ、エレクトロスプレーユニット31は、3つのポート312、313および315を有する液体案内T字型パイプ311をさらに含む。ポート312は、液状エレクトロスプレー媒質が、ポート312を通ってT字型パイプ311に流入することを可能にする貯留槽310と連通している。ポート315は、液状エレクトロスプレー媒質が、案内管316に流入するのを案内するための第1管端部301に固定される。ポート313は、液状エレクトロスプレー媒質と接触した状態で配設され、かつ電圧供給部材41と電気的に接続されている電極314に取り付けられる。電圧供給部材41はまた、受けユニット21と電気的に接続される。したがって、電圧供給部材41によって、エレクトロスプレーユニット31のノズル303と受けユニット21との間に電位差が確立され得る。
この実施形態では、被検体は液状エレクトロスプレー媒質の中で分散され、かつ進行経路(X)は直線的に伸びる。図2および図3をさらに参照すると、動作中は、エレクトロスプレープルームが連続的に発生され、これらの各々は、合流ゾーン(X1)でプラズマプルームと混合され、したがって、少なくとも1つの被検体をそれぞれ運ぶプルーム結合体を連続的に形成する。プルーム結合体は、エレクトロスプレーユニット31のノズル303と受けユニット21との間の電位差によって、進行経路(X)の直線的に伸びる端部ゾーン(X2)に沿って、連続的に受けユニット21の方に強制的に向けられる。各プルーム結合体が受けユニット21に接近すると、各プルームのサイズは縮小し、かつプルーム結合体の電荷は、プルーム結合体の中の前記少なくとも1つの被検体の上に渡り、したがって、イオン化された被検体が形成されるであろう。イオン化された被検体は、入口ポート212を通って質量分析器211に入った後、質量分析器211によって分析される。質量分析器211による、イオン化された被検体分析の結果として発生される信号は、その信号に基づいて質量スペクトルを発生させるために、検出器22によって受け取られる。
図4は、本発明の第2の好ましい実施形態によるマルチモードイオン化装置3を例示する。第2の好ましい実施形態は、次の点を除いて、第1の好ましい実施形態と類似しているが、次の点とは、第2の好ましい実施形態におけるマルチモードイオン化装置3が、案内導管323および環状電極3241の周りに配設される加熱部材325を、さらに含むことである。この実施形態において、試料9は、合流ゾーン(X1)の下流で、しかも直線的に伸びる端部ゾーン(X2)の上流に配設される。図4を参照すると、エレクトロスプレープルームが連続的に発生されると、それらの各々は加熱されたプラズマプルームと混合され、かつ加熱されたプラズマプルームによってプルーム結合体を形成するように導かれ、さらにこのプルーム結合体は試料9に衝突するように導かれ、それによって、試料9に含まれる少なくとも1つの被検体が、プルーム結合体の中で運ばれるように脱着される。その後、連続的に形成されたプルーム結合体は、エレクトロスプレーユニット31のノズル303と受けユニット21との間の電位差によって、進行経路(X)の直線的に伸びる端部ゾーン(X2)に沿って、受けユニット21の方に強制的に向けられる。
図5は、本発明の第3の好ましい実施形態によるマルチモードイオン化装置3を例示する。第3の好ましい実施形態は、加圧されたガス供給ユニット33が省略されていること、およびプラズマ供給ユニット32が、受けユニット21の質量分析器211に隣接して配設されていることを除いて、第1の好ましい実施形態に類似している。
この実施形態では、入口ポート212は入口軸(Z)を規定し、かつマルチモードイオン化装置3は、管状延長部34を含むが、管状延長部34は、入口ポート212と流体連通するように構成され、かつ入口ポート212から入口軸(Z)に沿って合流ゾーン(X1)に向けて伸びる。案内導管323は、管状延長部34を取り囲むように配設されて、取り囲み空隙341を規定し、それによって、第1導管端部321を通って取り囲み空隙341の中に導入されるプラズマ形成ガスが、プラズマプルームの連続的な発生のために、取り囲み空隙341の中に案内されることが可能になる。この実施形態では、プラズマ形成ガスは、加圧されたガス供給ユニット(図示せず)によって、第1導管端部321を通って取り囲み空隙341の中に強制的に入れられる。プラズマ形成ガスが取り囲み空隙341および環状電極3241を通過する際、高電圧が環状電極3241に印加され、プラズマプルームを発生させるために、プラズマ形成ガスをイオン化する。プラズマプルームは、合流ゾーン(X1)に向けられてエレクトロスプレープルームと混合され、それによって、プルーム結合体が得られる。プルーム結合体は、エレクトロスプレーユニット31のノズル303と受けユニット21との間の電位差によって、進行経路(X)の直線的に伸びる端部ゾーン(X2)に沿って、受けユニット21の方に強制的に向けられる。
図6および図7は、本発明の第4の好ましい実施形態によるマルチモードイオン化装置3を例示する。第4の好ましい実施形態は、次の点を除いて、第3の好ましい実施形態に類似しているが、次の点とは、第4の好ましい実施形態におけるマルチモードイオン化装置3が、加圧されたガス供給ユニット33と加熱部材325とをさらに含むことである。
この実施形態では、加圧されたガス供給ユニット33は、3つのポート332、333、334を有するガス案内T字型パイプ331と、管状ダクト336を有する案内部材335とを含む。ポート332は、ポート332を通ってガス案内T字型パイプ331の中に加圧されたガスを導入するためのガス供給器(図示せず)と連通している。ポート333は、案内部材335と流体連通している。ポート334は、案内管316に封着される。管状ダクト336は、これ自身を案内管316が通過することが可能であるように構成され、かつ加圧されたガスが、ダクト出口337を通って排出されることが可能となるように、ノズル303のすぐ上流に配設されるダクト出口337で終止するように伸び、それによって、エレクトロスプレープルームが合流ゾーン(X1)の方に向けられ、合流ゾーン(X1)に配設された試料9に、合流ゾーン(X1)でのプラズマプルームと共に衝突する。したがって、試料9の中に含まれる少なくとも1つの被検体は脱着され、それによって、合流ゾーン(X1)で形成されるプルーム結合体の中で運ばれる。連続的に形成されるプルーム結合体は、エレクトロスプレーユニット31のノズル303と受けユニット21との間の電位差によって、進行経路(X)の直線的に伸びる端部ゾーン(X2)に沿って、受けユニット21の方に強制的に向けられる。加熱部材325は、加圧されたガスの温度を上昇させるために、ガス案内部材335の周りに配設される。
図8は、本発明の第5の好ましい実施形態によるマルチモードイオン化装置3を例示する。第5の好ましい実施形態は、第5の好ましい実施形態におけるマルチモードイオン化装置3が、試料9にエネルギーを加えるのに適合した脱着ユニット23を含み、それによって、試料9の中に含まれる少なくとも1つの被検体が脱着されて、進行経路(X)と交差する飛行経路(Y)に沿って飛行し、その結果、前記少なくとも1つの被検体が、プルーム結合体の中で運ばれることが可能となる点を除いて、第1の好ましい実施形態に類似している。
脱着ユニット23は、レーザー脱着装置、熱脱着装置、レーザー誘起音響脱着装置などのような、被検体の脱着を可能にする任意の公知の装置であり得る。
この実施形態では、連続的なイオン化と分析のために、異なる試料9を回転可能な試料台24の上に取り付けることができる。
図9は、本発明の第6の好ましい実施形態によるマルチモードイオン化装置3を例示する。第6の好ましい実施形態は、次の点を除いて、第3の好ましい実施形態と類似であるが、次の点とは、第6の好ましい実施形態におけるマルチモードイオン化装置3が、第5の好ましい実施形態の脱着ユニット23をさらに含むことである。
注意すべきことであるが、上記の好ましい実施形態においては、エレクトロスプレープルームは、電圧供給部材41によって発生される電位差によって形成されてはいるが、エレクトロスプレープルームは、音波スプレー装置、熱スプレー装置、AC電圧エレクトロスプレーイオン化装置、イオンスプレー装置などで使用されるような、任意の公知スプレー技術によって発生させることができる。
例えば、図10は、本発明の第7の好ましい実施形態によるマルチモードイオン化装置3を例示する。第7の好ましい実施形態では、電荷発生ユニット4は、イオン発生室42と高速ガスの源43とを含む音波スプレーイオン化装置である。イオン発生室42は、ノズル303の上流に配設された出口と、原料を有する内側表面422とを有する。高速ガスの源43は、内側表面422と流体的に連通するように配設され、その結果、高速ガスと原料との間の物理的相互作用によって、液状エレクトロスプレー媒質が負うべき電荷を生成することが可能になる。
実施例の以下の説明では、プロトン化イオン(MH)は、自身に付けられたプロトンを有する被検体の分子を指し、ラジカル(M・)は、自身から逃れた電子を有する被検体の分子を指し、かつプロトン化イオン(M+2H)2+または(M+3H)3+は、自身に付けられた2つまたは3つのプロトンを有する被検体の分子を指す。
図11(a)は、カルバゾールを含む第1試料のスペクトル例を示す。このスペクトルは、図9のマルチモードイオン化装置3を用いて得られたが、図の中で、脱着ユニット23は、レーザー脱着装置である。この実施例では、エレクトロスプレーユニット(ESI源)31およびプラズマ供給ユニット(APCI源)32が動作している。カルバゾールのプロトン化イオン(MH,m/z=168.2)およびラジカル(M・,m/z=167.2)に対する信号が観察された。図11(b)に示されるように、エレクトロスプレーユニット31(ESI源)だけが動作している場合、カルバゾールのプロトン化イオン(MH)に対する信号だけが観察された。図11(c)に示されるように、プラズマ供給ユニット32(APCI源)だけが動作している場合、カルバゾールのラジカル(M・)に対する信号だけが観察された。
図12(a)は、インドール、フェロセン、リドカインおよびアンギオテンシンIを含む第2試料のスペクトル例であり、このスペクトルは、図9のマルチモードイオン化装置を用いて得られたが、図9で脱着ユニット23はレーザー脱着装置である。この実施例では、エレクトロスプレーユニット(ESI源)31およびプラズマ供給ユニット(APSI源)32の両方が動作していた。インドール(m/z=118.3)のプロトン化イオン(MH)、リドカイン(m/z=235.3)のプロトン化イオン(MH)、フェロセン(m/z=186.1)のラジカル(M・)、アンギオテンシンI(m/z=433.2)のプロトン化イオン(M+3H)3+およびアンギオテンシンI(m/z=649.2)のプロトン化イオン(M+2H)2+に対する信号が観察された。
図12(b)を参照すると、プラズマ供給ユニット32(APCI源)だけが動作している場合、インドール(m/z=118.2)、フェロセン(m/z=186.1)およびリドカイン(m/z=235.2)に対する信号だけが観察された。図12(c)を参照すると、エレクトロスプレーユニット31(ESI源)だけが動作している場合、インドール(m/z=118.3)、リドカイン(m/z=235.2)およびアンギオテンシンI(m/z=433.1,649.0)に対する信号だけが観察された。
上記から明らかなことは、エレクトロスプレーユニット(ESI源)31およびプラズマ供給ユニット(APCI源)32の両方が使用される場合、2つの異なるイオン化源が、被検体をイオン化するために、同時に使用され得ることである。
本発明は、最も実際的かつ好ましい実施形態と考えられることに関連して説明されてきたが、その一方で理解されることは、本発明は、開示された実施形態だけに限定されるものではなく、最も広範な解釈および等価的配置という精神および範囲の中に含まれる様々な配置に及ぶように意図されていることである。

Claims (14)

  1. 質量分析計(2)での使用に適合したマルチモードイオン化装置(3)であって、
    前記質量分析計(2)が、試料から引き出されかつ前記質量分析計(2)によって分析されるべきであるイオン化された被検体を自身の中に収容するように配設された受けユニット(21)を含み、
    当該マルチモードイオン化装置(3)は、
    液状エレクトロスプレー媒質を供給するための貯留槽(310)と、前記貯留槽(310)の下流に配設され、かつ前記液状エレクトロスプレー媒質のエレクトロスプレープルームを自身のところで形成するように構成されるノズル(303)とを含むエレクトロスプレーユニット(31)であって、前記ノズル(303)が、自身の間に進行経路(X)を規定するように、前記受けユニット(21)から一定の間隔を置いて配設される、エレクトロスプレーユニット(31)と、
    前記液状エレクトロスプレー媒質が前記ノズルに駆け寄る際、前記液状エレクトロスプレー媒質に複数の電荷を負わせるように構成されており、それによって、前記液状エレクトロスプレー媒質が、自身の中に収容されるべき受けユニット(21)に向かって進むための前記エレクトロスプレープルームとして前記ノズル(303)を離れることを可能とする電荷発生ユニット(4)と、
    プラズマプルームを発生させ、かつこれを案内するように構成されるプラズマ供給ユニット(32)であって、このプラズマプルームは、合流ゾーン(X1)においてプルーム結合体が形成されるように前記エレクトロスプレープルームと混合し、この合流ゾーン(X1)は、進行経路(X)の直線的に伸びる端部ゾーン(X2)の上流にあり、かつこの合流ゾーン(X1)は、少なくとも1つの被検体が、前記直線的に伸びる端部ゾーン(X2)に沿って前記受けユニット(21)へ進行する前記プルーム結合体の中で運ばれることが可能となるように方向付けられ、それによって、前記直線的に伸びる端部ゾーン(X2)に沿う前記受けユニット(21)への接近の結果として、前記プルーム結合体の中で運ばれる前記少なくとも1つの被検体に対して、前記プルーム結合体の電荷が渡され、したがって、前記イオン化された被検体の対応する1つが形成される、プラズマ供給ユニット(32)と、を備える、マルチモードイオン化装置。
  2. 前記電荷発生ユニット(4)が、前記エレクトロスプレーユニット(31)と前記受けユニット(21)との間に、ある強度の電位差を確立するように配設された電圧供給部材(41)を含み、それによって、前記液状エレクトロスプレー媒質に前記複数の電荷を負わせ、かつ前記液状エレクトロスプレー媒質が、前記エレクトロスプレープルームとして前記ノズル(303)を離れることを強制する、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチモードイオン化装置。
  3. 前記電荷発生ユニット(4)が、前記ノズル(303)の上流に配設された出口(421)を有するイオン発生室(42)と、原料を有する内側表面(422)と、前記内側表面(422)と流体的に連通するように配設された高速ガスの源(43)とを含み、その結果、高速ガスと前記原料との間の物理的相互作用によって、前記液状エレクトロスプレー媒質に負わされるべき電荷の生成が可能になる、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチモードイオン化装置。
  4. 前記エレクトロスプレーユニット(31)が、長さ方向に伸びて互いに反対にある第1および第2の管端部(301,302)で終止する案内管(316)をさらに含み、前記第1管端部(301)が前記貯留槽(310)と流体連通しており、前記第2管端部(302)が前記ノズル(303)の役目を果たし、かつ、
    前記プラズマ供給ユニット(32)が案内導管(323)を含み、案内導管(323)は長さ方向に伸びて、前記ノズル(303)から遠位にある第1導管端部(321)と、前記第1導管端部(321)と反対にあり、かつ前記ノズル(303)に対して近位にある第2導管端部(322)とで終止し、それによって、プラズマ形成ガスから発生される前記プラズマプルームが、前記第2導管端部(322)を通って前記案内導管(323)を離れ、前記合流ゾーン(X1)で前記エレクトロスプレープルームと混合することが可能になる、ことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のマルチモードイオン化装置。
  5. 前記案内導管(323)が前記案内管(316)と同軸である、ことを特徴とする請求項4に記載のマルチモードイオン化装置。
  6. 前記案内導管(323)が、環状空隙(326)を規定するために前記案内管(316)を取り囲み、それによって、環状空隙(326)の中に導入される前記プラズマ形成ガスが、前記第1導管端部(321)を通って、前記プラズマプルームの発生のために、環状空隙(321)の中に案内されることが可能になる、ことを特徴とする請求項5に記載のマルチモードイオン化装置。
  7. 前記受けユニット(21)が、入口軸(Z)を規定する入口ポート(212)を有し、前記マルチモードイオン化装置(3)が、前記入口ポート(21)と流体連通するように構成され、かつ前記入口ポート(21)から前記入口軸(Z)に沿って前記合流ゾーン(X1)に向けて伸びる管状延長部(34)を備え、前記案内導管(323)が、取り囲み空隙(341)を規定するために前記管状延長部(34)を取り囲むように配設され、それによって、取り囲み空隙(341)の中に導入される前記プラズマ形成ガスが、連続的なプラズマプルームの発生のために、前記第1導管端部(321)を通って取り囲み空隙(341)内に案内されることが可能になる、ことを特徴とする請求項4に記載のマルチモードイオン化装置。
  8. 前記マルチモードイオン化装置(3)が、前記第1導管端部(321)と流体連通するように構成された出口(330)を有する加圧されたガス供給ユニット(33)をさらに備え、それによって、前記プラズマ形成ガスが前記環状空隙(326)内に案内されることが可能になる、ことを特徴とする請求項6に記載のマルチモードイオン化装置。
  9. 前記マルチモードイオン化装置(3)が、管状ダクト(33)を有するガス案内部材(335)を含む加圧されたガス供給ユニット(33)をさらに備え、前記管状ダクト(336)が、前記案内管(316)が管状ダクト(336)を通過できるように構成され、かつ前記管状ダクト(336)が伸びて、加圧されたガスがダクト出口(337)から排出され得るように、前記ノズル303のすぐ上流に配設される前記ダクト出口(337)で終止し、それによって、前記エレクトロスプレープルームが前記合流ゾーン(X1)の方に向けられ、したがって、前記合流ゾーン(X1)での前記プラズマプルームと共に前記試料に衝突する、ことを特徴とする請求項7に記載のマルチモードイオン化装置。
  10. 前記プラズマ供給ユニット(32)がプラズマ発生部材(324)をさらに含み、プラズマ発生部材(324)が、前記案内導管(323)の外側導管表面上で、しかも前記第1導管端部(321)と第2導管端部(322)との間に配設され、かつ前記プラズマプルームを発生させるように、前記プラズマ形成ガスに高電圧を印加するように構成される、ことを特徴とする請求項4に記載のマルチモードイオン化装置。
  11. 前記マルチモードイオン化装置(3)が、前記プラズマプルームを加熱するために、前記案内導管(323)の周りに配設される加熱部材(325)をさらに備える、ことを特徴とする請求項6に記載のマルチモードイオン化装置。
  12. 前記マルチモードイオン化装置(3)が、加圧されたガスを加熱するために、前記ガス案内部材(335)の周りに配設される加熱部材(325)をさらに備える、ことを特徴とする請求項9に記載のマルチモードイオン化装置。
  13. 前記進行経路(X)が直線的に伸びる、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチモードイオン化装置。
  14. 前記マルチモードイオン化装置(3)が、前記試料(9)にエネルギーを加えるのに適合した脱着ユニット(23)をさらに備え、それによって、前記試料(9)に含まれる前記少なくとも1つの被検体が脱着されて、前記進行経路(X)と交差する飛行経路(Y)に沿って飛行し、それによって、前記少なくとも1つの被検体が、前記プルーム結合体の中で運ばれることが可能になる、ことを特徴とする請求項13に記載のマルチモードイオン化装置。
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