JP4164569B2 - 質量分析等に用いるジェット流放電大気圧イオン化方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基本的には、ペニング効果のあるガスと質量分析計に供給する被測定化合物のイオンを形成する被測定化合物を含有する流体とを、前記ペニング効果のあるガスと前記被測定化合物を含有する流体とが十分混合されたジェット流とすること、かつ、該ジェット流が拡散・膨張することなく細流として、放電電極に供給されると共に、高電流化において形成される放電が細長くなるように、前記ジェット流形成ペニング効果のあるガスの供給手段を取り囲んでシースガス供給手段を配置すること、更に、前記細流が高電流下に、前記被測定化合物成分を破壊することなく、効率的にイオン化されるように、上流側が接地電極である前記放電電極を配置したことを特徴とする、被測定化合物を含有する流体を前記ペニング効果のあるガスによりジェット流化しながら前記流体を構成する被測定化合物をイオン化し質量分析計に供給するイオン化インターフェース装置および被測定化合物を含有する流体を前記ペニング効果のあるガスによりジェット流化しながら前記流体を構成する被測定化合物をイオン化し質量分析計に供給する方法に関する。これらにより、感度が2桁以上改善された被測定化合物の分析が実現できた。
【0002】
【従来の技術】
質量分析において被測定試料の構成化合物をイオン化して分析する方法は、所謂イオン化法と呼ばれている。化合物のイオン化には、1,電子イオン化(electron ionization;EI)法、2,化学イオン化法(chemical Ionization;CI)法、3,高速原子衝撃(Fast Atom Bombardment;FAB)法、4,プラズマ(ICP)法、5,レーザー脱離(Laser Desorption;LD)法、6,サーモスプレー(Thermospray)法、7,電子スプレーイオン化(Electrospray Ionization;ESI)法、8大気圧化学イオン化法(Atmospheric Pressure Chemical Ionization;APCI)法など種々の方法が提案されている。
【0003】
また、更に被測定試料の分析の精度および感度をより向上させるために、質量分析による検出手段を他の被測定物質の分離手段と組み合わせて用いる複合型の分析方法が盛んに利用されている。前記何れの技術においても、被測定試料の効果的なイオン化は分析の精度と感度の向上のために技術的に意味があることは明らかである。特に前記後半の複合型の分析においては、質量分析計は被測定試料の分離手段、例えばガスクロマトグラフ(GC)、液体クロマトグラフ(LC)、キャピラリー電気泳動(CE)などに結合して設けることが多い。前記結合による改善のためには、前記質量分析計の前の分離手段により分離された被測定試料中の被測定化合物をできる限り破壊されることなく効率的にそれぞれの化学成分のイオンとすることができる手段〔「インターフェイス装置」という場合がある〕が付属していることが重要である。
【0004】
液体クロマトグラフ(LC)、キャピラリー電気泳動(CE)などガスクロマトグラフ(GC)以外の装置と組み合わせて用いられる効率の良いイオン化法は、前記0002に掲げる電子スプレーイオン化(Electrospray Ionization;ESI)法および大気圧化学イオン化法(Atmospheric Pressure Chemical Ionization;APCI)法であるが、これらの方法では、極性物質は比較的低いイオン化電位を持つためにイオン化が容易であるが、非極性の化合物ではイオン化が困難な場合が多い。大気圧化学イオン化法は気化した溶媒がコロナ放電でイオン化し、物質のイオン化を容易にする作用をするため非極性化合物の一部もイオン化できるが、エレクトロスプレーイオン化法は、被測定試料を霧化する領域に高い電場をかけることによりイオン化する方法で、溶媒中で電荷を受け取り難い非極性化合物のイオン化は困難である。前記イオン化の困難を改善するために、ヘリウム、アルゴンなどを用いたイオン化の方法が提案されている。
前記現象を利用して質量分析特性を向上させる技術としては、例えば、特開2001−108656(文献1)に開示されたものがある。
ここでは、従来技術である電子スプレーイオン化方法では、イオン化されない、例えば、非極性分子のダイオキシンやPCBの微量成分ではイオン化が困難なため、このような成分の検出はほとんど不可能であったことが述べられている。
【0005】
そこで、前記文献1の発明者は、基本的には前記イオン化の効率を上げるためのイオン化手段としてマイクロ波共振器により発生する高周波プラズマを採用することを提案し、更に、そこで利用される液体の霧化(spray)器に、分離した試料の導入部の周りに試料の気化を容易にするシース液供給部と共にヘリウムガスやアルゴンガスの導入部を併設して、前記ガスの導入により試料成分のイオン化効率を向上させることを提案している(文献1の〔0009〕を参照)。
そして、前記ガスの導入は、これらガスのプラズマを生成し、従来イオン化ポテンシャルが高いためにイオン化できなかった化合物のイオン化を向上させることが説明されている(文献1の〔0015〕を参照)。ここでは、ヘリウムガスやアルゴンガスは励起状態ではなくプラズマとして働いているので、ペニング効果ではないことが推測できる。
【0006】
前記ペニング効果の原理を利用して、他の分離手段で分離された被測定試料のイオン化を容易にして、イオン化された被測定試料を質量分析系に供給して、被測定試料のイオン化効率を高めるため技術として、例えばZhu(米国特許第5,192,865号明細書、1993年3月9日特許)の開発したものがあり、この方法はコイル付きの長い管状の放電室を用いている、また、Bertrand等の開発した方法(米国特許第6,124,675号明細書、2000年9月26日特許)ではガス混合用と放電用の2つのチャンバーを用いるなど、質量分析計に接続する専用のインターフェイスを持っている。そのため、質量分析の主要なイオン化方法であるコロナ放電電極を用いる大気圧化学イオン化(APCI)法、電子スプレーイオン化(ESI)法などとの装置の共用化が難しい、という不都合がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ペニング効果のあるガスを用いてイオン化の効率化を図りつつ質量分析の主要なイオン化方法である大気圧化学イオン化(APCI)法、電子スプレーイオン化(ESI)法との共用あるいは交互利用ができるイオン化の方法を提供することである。
前記課題を解決するために、本発明者らは、被測定試料を構成する化合物を含む流体とペニング効果を示すガスとが充分混合され、放電電極に供給されれば、前記化合物のイオン化を向上させることができるのではないかとの発想に基づいて、前記被測定試料を構成する化合物を含む流体のジェット流化に、ペニング効果を示すガスを用いることを発想した。一方、ジェット流化による混合においてジェット流の拡散は広範囲の放電を引き起こし、前記被測定試料を構成する化合物の分解をもたらし、効果的なイオン化を阻害することが考えられたので、前記ペニング効果の向上とジェット流の拡散の弊害の除去を同時に満足されるように、前記形成されたジェット流の拡散を防ぐシースガス流(カーテンガス流とも言う場合がある。)前記ジェット流を取り囲んで流すことを発想し、前記発想の下に被測定流体の供給口を囲むようにジェット流形成(霧化;spraying)にペニング効果のあるガスを供給する供給口を設け、更に前記ペニング効果のあるガスを供給する供給口を囲むように前記形成されたジェット流の拡散を抑える、いわばエアーカーテンの機能をする、シースガス供給口を設けたジェット流細流の形成装置を設計し、これを利用して、質量分析計に供給するイオン化化合物を形成する方法を試みたところ、前記課題を解決できることを確認し、本発明を完成することができた。
また、形成されたジェット流を構成するペニング効果のあるガスを励起する放電電極としては、前記ジェット流に先端を露出して前記ジェット流方向に配置しジェット流供給口(04)と電気的に接続された上流側の電極を接地電位とした対向放電電極、特に定電流制御の放電電極を用いた。また、特に、被測定流体中に液体が含まれている場合、ペニング効果のあるガスの供給手段の外周および/またはシースガス供給手段外周に前記各ガスを加熱させる手段を設けることにより被測定試料中に含まれる被測定化合物のイオン化を向上させることができることを確認した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、被測定化合物を含む流体を供給する供給口、前記流体を供給する供給口を取囲み前記供給口からの流体をジェット流化するペニング効果のあるガス(01)の吹出し口を有するペニング効果のあるガスの供給手段、ジェット流供給口(04)と電気的に接続された接地電極(06)と前記ジェット流進行方向に配置され前記接地電極に対向する電圧印加電極(07)からなる少なくとも前記ジェット流中のペニング効果のあるガスを励起する放電電極(06−07)に、前記ジェット流を細流として供給させるジェット化流拡散抑制シースガス流(02)を形成するシースガス吹出し口を有するシースガス供給手段および前記接地電極と前記ジェット流進行方向に配置され前記接地電極に対向する電圧印加電極からなり、前記接地電極のジェット流露出は前記シースガス供給手段の外側壁と電気的に絶縁している配置である放電電極、を基本構造とする前記流体を前記ペニング効果のあるガスによりジェット流化しながら前記流体を構成する被測定化合物成分を前記励起されたペニング効果のあるガスによりイオン化し質量分析計(MS)に供給する方法である。好ましくは、ペニング効果のあるガスの供給手段の外周および/またはシースガス供給手段外周に前記各ガスを加熱する手段を設けたことを特徴とする前記被測定化合物を含む流体をペニング効果のあるガスによりジェット流化しながら前記流体を構成する被測定化合物をイオン化し質量分析計に供給する方法である。
【0009】
また、第1の態様は、前記流体がクロマトグラフ、キャピラリー電気泳動により分離された液体、または超臨界条件で処理された液体であることを特徴とする前記各流体を構成する被測定化合物をイオン化し質量分析計に供給する方法であり、好ましくは、ペニング効果を示すガスがヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする前記各流体を構成する被測定化合物をイオン化し質量分析計に供給する方法である。
【0010】
第2の態様は、前記流体がガス−液体混合物であることを特徴とする前記流体を構成する被測定化合物をイオン化し質量分析計に供給する方法であり、好ましくは、ペニング効果を示すガスがヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする前記流体を構成する被測定化合物をイオン化し質量分析計に供給する方法である。
【0011】
第3の態様は、前記流体がガス状物であることを特徴とする前記流体を構成する被測定化合物成分をイオン化し質量分析計に供給する方法であり、好ましくは、前記ガスがガスクロマトグラフからの分離試料であることを特徴とする前記流体を構成する被測定化合物をイオン化し質量分析計に供給する方法であり、より好ましくは、ペニング効果を示すガスがヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする前記各流体を構成する被測定化合物をイオン化し質量分析計に供給する方法である。
【0012】
本発明の第2は、被測定化合物を含む流体を供給する供給口を有する流体供給手段、前記流体を供給する供給口を取囲み前記供給口からの流体をジェット流化するペニング効果のあるガス(01)の吹出し口を有するペニング性ガス供給手段、ジェット流供給口(04)と電気的に接続された接地電極(06)と前記ジェット流進行方向に配置され前記接地電極に対向する電圧印加電極(07)からなる少なくとも前記ジェット流中のペニング効果のあるガスを励起する放電電極(06−07)に、前記ジェット流を細流として供給させるジェット化流拡散抑制シースガス流(02)を形成するシースガス吹出し口を有するシースガス供給手段および前記接地電極と前記ジェット流進行方向に配置され前記接地電極に対向する電圧印加電極からなり、前記接地電極のジェット流露出部先端近傍は前記シースガス供給手段の外側壁と電気的に絶縁して配置され、両電極は所望電圧印加手段を介して電気的に接続された放電電極を基本構造とする前記流体中の被測定化合物成分を前記励起されたペニング効果のあるガスによりイオン化し質量分析計に供給するイオン化インターフェース装置であり、好ましくは、ペニング性ガス供給手段の外周および/またはシースガス供給手段外周に前記各ガスを加熱する手段を設けたことを特徴とする前記被測定化合物成分をイオン化し質量分析計に供給するイオン化インターフェース装置である。
【0013】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
A.本発明の特徴を図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一態様を説明する概略図である。
例えば、高速液体クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動法(05)により分離された被測定化合物分子を含む流体を、大気圧下で、ジェット流化ガスとしてペニング効果性を示すガス(01)を、前記流体供給部周囲に供給し導入してジェット流化した。その際、ペニング効果性ガスは1〜3mm内径(I.D.)程度のステンレス(SUS)あるいは四フッ化エチレン樹脂製の管の供給手段を用いて供給される。ヒータ(11)は供給される前記液体を加熱し、前記液体を霧化し易くする。シースガス(02)を前記ペニング効果を示すガスを取り囲むように供給し、形成された霧化ジェット流の拡散を小さくすることにより、ペニング効果を示すガスが充分混合されたジェット流が形成される。その際、シースガスは1〜3mm内径(I.D.)程度のステンレス(SUS)あるいは四フッ化エチレン樹脂製の管の供給手段を用いて供給される。
前記ジェット流中に電極の先端を露出する電極間に数十ボルト〜数十キロボルトの電圧を印加した、上流側がジェット流供給口(04)と電気的に接続されて接地され、かつ、前記シースガスを供給する手段の外側壁と電気的に絶縁して配置されている放電電極を用いて放電することで、被測定化合物分子とペニング効果性ガスが充分混合されたジェット流中の被測定化合物分子を、分解することなく効率的にイオン化する。生成した被測定化合物のイオンは、放電電極と質量分析計(MS)の入り口のピンホール間に設けたリペラー電極(08)によりMSに誘導され検出される。
【0014】
B.本発明の特徴は、ジェット流化ガス(spraying gas)としてペニング効果性を示すガスを用いたことである。
前記、ペニング効果性を示すガスの効果を調節するために、前記ペニング効果性を示すガスに、少なくとも1つ以上の、添加物、例えばクロロホルムなどの有機物質を添加するように変形することができる。これらは、イオン化マトリクスと呼ばれ、溶媒の機能もこれに類似する。
【0015】
C.本発明の更なる特徴は、霧化したジェット流を流体供給体の先端またはその近傍とジェット流の下流に設けた単数或いは複数(複数の構成とする場合先端は、上流側電極と等距離に配置し、全ての電極が効率よくイオン化に働くようにすることが肝要である)の電極間に数マイクロアンペアから数十ミリアンペアの定電流が流れるように放電(定電流放電)させることである。この際、ペニング効果を調節するために数十ボルトから数十キロボルトの電圧を印加して放電させるような変形も可能である。
本発明のイオン化手段のような大きな放電電流を実現して、それによりペニングイオン化に用いる励起状態のガスを多量に発生させ、被測定化合物分子の分解などを起こさない好ましいイオン化を実現することは、先行技術のAPCIでは不可能であった。本発明は、前記大きな放電電流によるペニングイオン化用励起ガス大量生成とそれらと被測定物質のジェット流による急速な混合によりS/N比の改善された被測定化合物の効率的なイオン化を可能とすることにより、高感度な測定が可能となった。
更に好ましいイオン化インターフェースの実現には、生成イオンを更に下流に設けたリペラーにより質量分析計に誘導することである。
【0016】
D.本発明は、流体供給体の先端から供給するジェット化流体は、室温から数千度のガスで加熱することにより行うが、ジェット化ガス、シースガスの一方または両方に液化ガスを用いて0〜−180℃のような低温でイオン化しても良い。すなわち、被測定化合物の状態温度を考慮した変形が可能である。
シースガス(カーテンガス)としては、高電流化において形成される放電が細長くなるようペニング効果の低いシースガスを流すことが重要であり、そのような特性を持つシースガスとして、乾燥窒素ガス、純空気のような、イオン化効率を妨げないものを挙げることができる。
更に、数十マイクロアンペアー以下程度の少量の放電によりペニングイオン化を行う場合は、シースガスとしてペニング性のあるガスを用いても細長い放電が可能であるので、シースガスとしてヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどを用いることができる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、この例示により本発明が限定的に解釈されるものではない。
実施例1
ここでは、被測定試料として1−ニトロナフタレンの100ppm標準溶液10μLを固定相がC18(Waters Xterra−C18;化学組成オクタデシルシラン)カラムとした高速液体クロマトグラフ(HPLC)(Waters社製、Alliance 2690)に注入し、水/アセトニトリルが20/80の移動相を用いて分離し、前記カラムから流出する移動相を、本発明の図1に記載の被測定化合物成分をイオン化し質量分析計(MS:Waters社製、ZQ−4000)に供給する装置と、図4に示す従来のAPCI装置(Waters社製、ZQ−4000に付属)に供給してイオン化し、それぞれの装置でイオン化したものを同一質量走査条件(質量スペクトルを繰り返し連続的に測定する条件。測定対象物質に固有の特定質量の強度を時間軸に対してプロットすると、その物質の量の時間変化を表すクロマトグラムが得られる。そのピークの高さまたは面積は試料量に比例する。イオン化の感度とはこのピーク高さ、面積あるいはS/N(信号/ノイズ)比を意味する。)で測定した。得られたクロマトグラムを図2に示す。上段は、イオン化電流4μA、シースガスを窒素とし、供給窒素の温度を450℃、流量を513L/1時間の条件、ジェットガスも窒素とし、流量6L/1時間の条件のAPCI装置と連結した場合のクロマトグラムである。下段は、イオン化電流30μA、シースガスをアルゴンとし、供給アルゴンの温度を450℃、流量を513L/1時間の条件、ジェットガスもアルゴンとし、流量6L/1時間の条件の本発明の装置と連結した場合のクロマトグラムである。これらのピークのS/N比を比較すると、本発明の装置と連結した場合には約50倍の感度改善されたことが分かる。
なお、図4に示す従来のAPCI装置において、01bは1〜3mm内径(I.D.)程度のステンレス(SUS)あるいは四フッ化エチレン樹脂製管の霧化ガス供給手段であり、08bは霧化された被測定化合物分子をイオン化するコロナ放電電極である。本発明の被測定化合物分子のイオン化インターフェース装置との違いは、ジェット流化のペニング効果性ガスとシースガスの組み合わせと、放電電極の配置と構造にある。
【0018】
図2において、上段の、1219AP12はデータ番号を、S/N:RMS=8.66はS/N比を、5:ScanAPは質量検出条件を、114.923は測定イオンの質量を、そして8.94e6は8.9×10であり、信号強度のフルスケール検出量をそれぞれ意味する。また、下段の、1228AP112はデータ番号を、S/N:RMS=406.47はS/N比を、4:ScanAPは質量検出条を、144.005は測定イオンの質量を、そして2.76e8は2.76×10であり、検出信号強度のフルスケールをそれぞれ意味する。なお、図2において上段と下段の測定イオンの質量数が異なるが、一般にイオン化法が異なると同一物質でも生成するイオンが異なり、実施例1ではそれぞれのイオン化法で最高のS/N比を得るようなイオンを用いたためである。
【0019】
実施例2
被測定試料として2−ニトロフルオレンの100ppm標準溶液10μLを固定相がC30(野村化学社製 Develosil RP−fllerene;化学組成トリアコンチルシラン)カラムとした高速液体クロマトグラフ(HPLC)(Waters社製、Alliance 2690)に注入し、水/メタノールが10/90の移動相として分離し、前記Bカラムから流出する移動相を、本発明の図1に記載の被測定化合物成分をイオン化し質量分析計(MS:Waters社製、ZQ−4000)に供給する装置と、図4に示す従来のAPCI(Micromass社製、Quattro Ultimaに付属)装置に供給してイオン化し、それぞれの装置でイオン化したものを同一質量走査条件で測定した。得られたクロマトグラムを図3に示す。上段は、イオン化電流2.5μA、シースガスを窒素とし、供給窒素の温度を480℃、流量を499L/1時間の条件、ジェットガスも窒素とし、流量5.6L/1時間の条件のAPCI装置と連結した場合のクロマトグラムである。下段は、イオン化電流700μA、シースガスを窒素とし、供給窒素の温度を480℃、流量を482L/1時間の条件、ジェットガスはアルゴンとし、流量5.6L/1時間の条件の本発明の装置と連結した場合のクロマトグラムである。これらのピークのS/N比を比較すると、本発明の装置と連結した場合には約200倍の感度改善されたことが分かる。
【0020】
図2において、上段の、0514ap07はデータ番号を、S/N:RMS=22.73はS/N比を、4:ScanAPは質量検出条件を、210.145は測定イオンの質量を、そして6.60e5は6.60×10であり、検出信号強度のフルスケールをそれぞれ意味する。また、下段の、0528pe07はデータ番号を、S/N:RMS=4184.35はS/N比を、4:ScanAPは質量検出条件を、182.205は測定イオンの質量を、そして4.31e8は4.31×10であり、検出信号強度のフルスケールをそれぞれ意味する。なお、図3において上段と下段の測定イオンの質量数が異なるが、一般にイオン化法が異なると同一物質でも生成するイオンが異なり、実施例2ではそれぞれのイオン化法で最高のS/N比を得るようなイオンを用いたためである。
【0021】
なお、前記各被測定化合物は代謝としてエストロゲン作用および抗アンドロゲン作用を示す有害環境汚染物質であり、微量の検出が必要な化合物である。
【0022】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の改良された被測定化合物成分をイオン化し質量分析計(MS)に供給する装置および方法は、従来の質量分析計(MS)に被測定化合物成分をイオン化して供給するイオン化インターフェースに比べて格段に優れた装置および方法を提供することができた点で、格別の効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の流体中の被測定化合物成分をイオン化して質量分析計に供給するイオン化インターフェース装置の概略図
【図2】実施例1および図4のAPCIを用いた被測定試料中の1−ニトロナフタレンの分析感度の比較
【図3】実施例2および図4のAPCIを用いた被測定試料中の2−ニトロフルオレンの分析感度の比較
【図4】従来のAPCIの概略図
【符号の説明】
01:ペニング効果を示すガス 02;シースガス 03:ジェット流形成ノズル
04:ジェット流供給口 05:流体入り口(高速液体クロマトグラフなどから),06:放電電極(接地側) 07:放電電極(陽極) 08:リペラー電極
09:質量分析計導入用差動排気部(スキマー) 10:質量分析計
11:ジェット流加熱用円筒ヒーター 12:シースガス加熱用環状ヒーター,
01b:霧化ガス 08b:コロナ放電電極

Claims (11)

  1. 被測定化合物を含む流体を供給する供給口、前記流体を供給する供給口を取囲み前記供給口からの流体をジェット流化するペニング効果のあるガス(01)の吹出し口を有するペニング効果のあるガスの供給手段、ジェット流供給口(04)と電気的に接続された接地電極(06)と前記ジェット流進行方向に配置され前記接地電極に対向する電圧印加電極(07)からなる少なくとも前記ジェット流中のペニング効果のあるガスを励起する放電電極(06−07)に、前記ジェット流を細流として供給させるジェット化流拡散抑制シースガス流(02)を形成するシースガス吹出し口を有するシースガス供給手段および前記接地電極(06)と前記ジェット流進行方向に配置され前記接地電極(06)に対向する電圧印加電極(07)からなり、前記接地電極のジェット流露出端部側は前記シースガス供給手段の外側壁と電気的に絶縁している配置である放電電極、を基本構造とする前記流体を前記ペニング効果のあるガスによりジェット流化しながら前記流体を構成する被測定化合物成分を前記励起されたペニング効果のあるガスによりイオン化し質量分析計(MS)に供給する方法。
  2. ペニング効果のあるガスの供給手段の外周および/またはシースガス供給手段外周に前記各ガスを加熱する手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の被測定化合物を含む流体をペニング効果のあるガス(01)によりジェット流化しながら前記流体を構成する被測定化合物成分をイオン化し質量分析計(MS)に供給する方法。
  3. 被測定化合物を含む流体がクロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動により分離された液体、または超臨界条件で処理された液体であることを特徴とする請求項1または2に記載の前記流体を構成する被測定化合物成分をイオン化し質量分析計に供給する方法。
  4. ペニング効果のあるガスがヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1、2または3に記載の流体を構成する被測定化合物成分をイオン化し質量分析計に供給する方法。
  5. 被測定化合物を含む流体がガス−液体混合物であることを特徴とする請求項1に記載の流体を構成する被測定化合物成分をイオン化し質量分析計に供給する方法。
  6. ペニング効果のあるガスがヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項5に記載の流体を構成する被測定化合物成分をイオン化し質量分析計に供給する方法。
  7. 被測定化合物を含む流体がガス状物であることを特徴とする請求項1に記載の流体を構成する被測定化合物成分をイオン化し質量分析計に供給する方法。
  8. 前記ガスがガスクロマトグラフからの分離試料であることを特徴とする請求項7に記載の流体を構成する被測定化合物成分をイオン化し質量分析計に供給する方法。
  9. ペニング効果のあるガスがヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項6または7に記載の流体を構成する被測定化合物成分をイオン化し質量分析計に供給する方法。
  10. 被測定化合物を含む流体を供給する供給口を有する流体供給手段、前記流体を供給する供給口を取囲み前記供給口からの流体をジェット流化するペニング効果のあるガス(01)の吹出し口を有するペニング効果のあるガスの供給手段、ジェット流供給口(04)と電気的に接続された接地電極(06)と前記ジェット流進行方向に配置され前記接地電極に対向する電圧印加電極(07)からなる少なくとも前記ジェット流中のペニング効果のあるガスを励起する放電電極(06−07)に、前記ジェット流を細流として供給させるジェット化流拡散抑制シースガス流(02)を形成するシースガス吹出し口を有するシースガス供給手段および前記接地電極(06)と前記ジェット流進行方向に配置され前記接地電極に対向する電圧印加電極(07)からなり、前記接地電極のジェット流露出部側先端近傍は前記シースガス供給手段の外側壁と電気的に絶縁して配置され、両電極は所望電圧印加手段を介して電気的に接続された放電電極を基本構造とする前記流体中の被測定化合物成分を前記励起されたペニング効果のあるガスによりイオン化し質量分析計(MS)に供給するイオン化インターフェース装置。
  11. ペニング効果のあるガスの供給手段の外周および/またはシースガス供給手段外周に前記各ガスを加熱する手段(11、12)を設けたことを特徴とする請求項10に記載の被測定化合物成分をイオン化し質量分析計(MS)に供給するイオン化インターフェース装置。
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