JP5881515B2 - プレート式熱交換器およびその製造方法並びにヒートポンプ装置 - Google Patents
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Description
プレート式熱交換器は、伝熱面積を拡大するために波形状の絞り部を持った伝熱プレートが複数枚積み重なって構成されており、またヒートポンプシステムにおいて吐出された冷媒が初めに到達する冷媒回路部品であるため、潤滑油の溜まりこみを起こしやすい冷媒回路部品である。
そこで、溜まりこむ潤滑油を回収する技術として、潤滑油を圧縮機へ戻すためのポートを持ったプレート式熱交換器が特許文献1や特許文献2に示されている。
図1は、本発明の実施の形態1に係るヒートポンプ装置2の構成図である。また、図1中に、冷媒7、潤滑油8、出湯水10、上水11のそれぞれの流れを各種態様の矢印で示す。
図1に示すヒートポンプ装置(ヒートポンプユニット)2は、圧縮機3、凝縮器4(第1の熱交換器)、電子膨張弁5、蒸発器6(第2の熱交換器)を備えており、これらの機器を順に配管15で接続することにより冷媒7が循環する冷凍回路が構成されている。また、図1では、プレート式熱交換器1は、凝縮器4(第1の熱交換器)として使用する例が示されているが、これに限られない。そして、凝縮器4(第1の熱交換器)としてのプレート式熱交換器1から分離して流出する潤滑油8は油配管16を介して圧縮機3に戻るようになっている。油配管16は、後述するプレート式熱交換器1に設けられた油回収ポートと圧縮機3の吸入口とを接続している。
なお、図示はしていないが、ヒートポンプ装置2は、その他、余剰な冷媒7を貯めるレシーバ等の付属部品を備えてもよい。
なお、このプレート式熱交換器1には、給湯機器、暖房機器の一方または両方を有する水回路9を接続するものでもよい。
実施の形態1に係るプレート式熱交換器1は、複数の伝熱プレート100(100a、100b)が積層され、最も外側の伝熱プレート100の両側にはサイドプレート105と補強用プレート(耐圧プレート)104とが積層され、これらのプレート100、105、104がロウ付けにより接合される方式の熱交換器である。以下では、プレート100、105、104の積層体をプレート組立体120と呼ぶものとする。
そして、プレート組立体120の一端側に位置する補強用プレート104aの長手方向の四隅部には、第1流体としての冷媒7の冷媒流入口103aと冷媒流出口103bが、第2流体としての例えば水10の水流入口103cと水流出口103dが、それぞれ設けられている。また、プレート組立体120の構成については、さらに図7から図13に示されている。
図3に矢印で示すように、冷媒7は、冷媒流入口103aより流入し、冷媒流入口103aに連通する孔より各隣接の伝熱プレート100bと伝熱プレート100aとの間隙に流入し、その伝熱面間を例えば下降流となって流れる。一方、水10は、水流入口103cより流入し、水流入口103cに連通する孔より各隣接の伝熱プレート100aと伝熱プレート100bとの間隙に流入し、その伝熱面間を例えば上昇流となって流れる。このように、冷媒7の下降流と水10の上昇流を各伝熱プレート100a、100b間で繰り返すことで、高温の伝熱プレート100aから低温の伝熱プレート100bへ熱が効率よく伝わり、この伝熱によって水10が高温に加熱される。なお、冷媒7と水10は対向流で流れると説明したが、水10の流入口と流出口の位置を図2と反対側に設けることにより、並行流としてもよい。
図7に示すように、プレート式熱交換器1は、冷媒流入口103a、冷媒流出口103b、水流入口103c、水流出口103d(以下、これらの冷媒流入出口、水流入出口を総称して、ノズル103と称する)であるノズル103が取り付けられる補強用プレート104aから順に、サイドプレート105a、伝熱プレート100a、伝熱プレート100b・・・伝熱プレート100a、伝熱プレート100b、サイドプレート105b、補強用プレート104bが積層され、かつ、ロウ付けにより接合される。ここで、補強用プレート104bはサイドプレート105bが被さった状態であるため、図7では図示されていない。
プレート式熱交換器1は、使用に際しては、図2に示すように、ノズル103a、103dを上にし、ノズル103b、103d、油回収ポート103eを下にして、設置される。
この実施の形態1に係るプレート式熱交換器1では、図4に示すように、油回収ポート103eに連通する油回収穴200が各伝熱プレート100の下部に設けられている。油回収穴200は、長円の一端が他端よりも小さい半径の小円弧状に、いわば雨だれ状に形成されており、その小円弧状の最下端部200aが油回収ポート103eの下側口縁部に臨ませてある。
このように構成することによって、潤滑油8が整流絞り部201の略水平部分201aから油回収穴200の小円弧状最下端部200aの方へスムーズに流れていき、さらに油回収ポート103eへと流出する。
図5、図6から分かるように、潤滑油8を含む冷媒7は、それぞれ隣り合う波形の伝熱面を有する伝熱プレート100aと伝熱プレート100bとの流路間隙を伝って流れ落ちる。その際、潤滑油8が冷媒7よりも密度が大きいので、密度の差により、冷媒7は上に、潤滑油8は下の方へ分離する。各伝熱プレート100の下部に設けられた油回収穴200に落下した潤滑油8は、図5の従来例の場合、さらに下側にデッドスペース202(図5の点線部で囲まれた空間部)が存在するため、このデッドスペース202に、回収しきれなかった潤滑油8が溜まり続けることになる。
一方、本実施の形態1の場合は、図6に示すように、油回収穴200の直下に、遮蔽壁203(図6の点線で囲まれた先端部が閉じた部分)が設けられている。この遮蔽壁203は、隣同士の伝熱プレート100の整流絞り部201を接触させ、該接触部をロウ付けすることにより形成されているので、遮蔽壁203によってデッドスペース202の上部が閉鎖されている。つまり、遮蔽壁203がデッドスペース202を隔離している。そのため、潤滑油8はデッドスペース202に浸入することなく、油回収ポート103eに向かって流出する。
また、整流絞り部201と遮蔽壁203により、プレート式熱交換器1に流入した潤滑油8は、流れに従い、油回収ポート103eに導かれるので、効率的な油回収が可能となる。
図11に示す伝熱プレート100a、伝熱プレート100bの大きさ、板厚は同様のものである。伝熱プレート100aと伝熱プレート100bとは四隅に流路孔106a〜106dを持つ。長手方向の流路孔106a、106bと、流路孔106c、106dとの間に流体を攪拌するための波形状の伝熱部107a,107bを持つ。伝熱プレート100aの伝熱部107aと伝熱プレート100bの伝熱部107bとは180度反転した形状である。すなわち、波形状107bは伝熱部107aに対して、伝熱部107aを点Pを中心に矢印方向に180度回転させたような形状を持つ関係にある。
伝熱プレート100aと伝熱プレート100bとが積層されることで、伝熱部107aの波形状と伝熱部107bの波形状とが点接触する。この点接触の部分が、ロウ付けされることで流路を形成する「柱」になる。例えば、伝熱プレート100aは水(純水、水道水あるいは不凍液を混合した水など)の流路を形成し、伝熱プレート100bは冷媒7(例えば、R410Aを代表とした、空気調和機に使用される冷媒)の流路を形成する。伝熱プレート100aと伝熱プレート100bとを各1枚ずつ積層することで水の流路が形成され、更に伝熱プレート100aを積層することで、「水−冷媒」の層が形成される。以下、伝熱プレートの積層枚数を増やすことで、「水−冷媒−水−冷媒・・・」と交互に流路が形成(図3参照)される。これら積層された複数の伝熱プレートによって、図10に示すような伝熱積層体108が構成される。
各伝熱プレート100の下部には、図4に示すように、長円の一端が他端よりも小さい半径の小円弧状をなす油回収穴200が形成される。さらに、油回収穴200の周囲は、伝熱プレート100の流路間隙の半分だけ絞り加工され、隣の伝熱プレート100の油回収穴200の周囲の絞り部と当接するように形成される。
伝熱プレート100の下部縁部に沿ってL字状の絞り部(整流絞り部)201を形成する。この整流絞り部201は、油回収穴200の周囲の絞り加工と同様に、伝熱プレート100の流路間隙の半分だけ絞り加工することで、形成される。整流絞り部201の水平部は、若干傾斜させて、潤滑油8が、図4に示すように、油回収穴200の小円弧状最下端部200aに向かって整流の流れとなるように形成する。これにより、図4の矢印のように上部から流れてきた潤滑油8が整流絞り部201に沿って流れ、油回収穴200の小円弧状最下端部200aに到達し、そこからスムーズに油回収穴200に流入する。
伝熱プレート100に形成された整流絞り部201は、伝熱プレート100が積層されることにより、前後の伝熱プレート100の整流絞り部201と接触する。その後、整流絞り部201同士をロウ付けすることにより、図6に示すように、油回収ポート103eの下部に、デッドスペース202を隔離するように遮蔽壁203を形成する。これにより、潤滑油8の溜まりこみが最小になり、効率的な油回収が可能になる。
図12は、サイドプレート105の概念図である。先に図10に示したように、伝熱積層体108の上下部を挟み込むサイドプレート105aとサイドプレート105bとは、大きさ、板厚が伝熱プレート100と同様であり、四隅に流路孔106a〜106dを持ち、波形状の伝熱部107の無い平面構造のプレートである。また、図3に示すように、サイドプレート105aは伝熱積層体108の上部(一方側の最外側)に配置され、サイドプレート105bは伝熱積層体108の下部(他方側の最外側)に配置されて、伝熱プレート100の積層体を構成する。
また、図10、図11に示すように、サイドプレート105a、105bの流路孔106a、106bの周囲には円形の絞り形状部110aがあり、絞り形状部110aは隣の伝熱プレート100a、100bの流路孔106a、106bに接触する。
図10、図12に示すように、サイドプレート105aは、流路孔106a、106bの周辺に絞り加工によって形成された凹状の絞り形状部110aを、サイドプレート105bは、流路孔106aの周辺に絞り加工によって形成された凸状の絞り形状部110bと、流路孔106bの周辺に絞り加工によって形成された凸状の絞り形状部110cを有する。これは、伝熱プレート100a、100bの流路孔106a、106bにロウ付けされることにより、伝熱プレート100とサイドプレート105の流路孔周りに柱を形成し、強度を向上することを可能にするためである。
図10に示すように、伝熱積層体108の上部に補強用プレート104a(外側プレート)が取り付けられ、下部に補強用プレート104bが取り付けられる。補強用プレートすなわち耐圧プレート104は、伝熱プレート100及びサイドプレート105に対して約5倍の厚みを持つ。プレート式熱交換器1では、補強用プレート104aは、図8に示すように5つの流路孔(ノズル103)を持つ。また、補強用プレート104bは、図9に示すように流路孔を持たない。耐圧プレート104a,104bにより、プレート式熱交換器1は、伝熱積層体108に流れる流体によって発生する圧力の変動疲労およびプレート式熱交換器1の圧力と大気圧との差により生じる力に耐えることが可能になる。
耐圧プレート104aの5つの流路孔のそれぞれには、冷媒および水を伝熱積層体108に流入させるためのノズル103a〜103dと、潤滑油8を排出するための油回収ポート103eが取り付けられる。ノズル103の取付位置(取付箇所)は、補強プレート104a、104bの流路孔の数によって決まる。1枚の補強プレートに最大4つの流路孔を設ければ、1台のプレート式熱交換器1に対して、合計8つのノズル103を取り付けることになる。
ノズル103aは、端部に補強用プレート104aの流路孔とはまり合う押し込み部112を有している。押し込み部112の先端は、補強プレート104aの下よりも1mm以上出るように構成されている。プレート式熱交換器1をロウ付けで接合する工程の前に、ノズル103aの押し込み部112を耐圧プレート104aの流路孔に挿し込み、押し込み部112をカシメ加工する。同様にノズル103b〜103dおよび油回収ポート103eをカシメ加工する。このカシメ加工により補強プレート104aとノズル103、油回収ポート103eとを仮固定した状態で、補強プレート104aがサイドプレート105aを挟んで伝熱積層体108に積層され、プレート式熱交換器1全体が仮組みされて、仮組みのプレート式熱交換器1がロウ付け工程に送られる。
仮組み状態のプレート式熱交換器1では、伝熱プレート100aと伝熱プレート100bとの間、および伝熱積層体108と各サイドプレート106a、106bとの間、各サイドプレート106a、106bと各補強用プレート104a、104bとの間に、それぞれロウ材として用いられる銅条が挟みこまれる。更に補強用プレート104aとノズル103との間にもロウ材である銅が配置される。ロウ材が配置された仮組み状態のプレート式熱交換器1はロウ付け工程において真空加熱炉に入れられ、真空状態でのロウ付が行われる。このロウ付け工程で銅が融解し、各要素の接合面に浸透する。浸透した銅が冷えることにより各要素同士が半永久的に接着され、プレート式熱交換器1が形成される。
Claims (10)
- 複数の積層された伝熱プレートを含むプレートの積層体であるプレート組立体と、
前記プレート組立体に設けられた第1流体の流入口および流出口と、
前記プレート組立体に設けられた第2流体の流入口および流出口と、
前記プレート組立体の下部に設けられた前記第1流体の流出口よりも下方位置に設けられ、前記第1流体が含有する油を取り出す油回収ポートと、
を備えたプレート式熱交換器において、
前記油回収ポートに連通する油回収穴が、前記プレート組立体内の下部に設けられ、
前記伝熱プレートの前記油回収穴と前記伝熱プレートの下部縁部との間の油の流路幅を狭める絞り部を、前記油が前記油回収穴に向かって整流となるように、前記複数の伝熱プレートの下部縁部に沿ってそれぞれに形成した
ことを特徴とするプレート式熱交換器。 - 前記絞り部は、前記各伝熱プレートの下部縁部に沿ってL字状に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のプレート式熱交換器。 - 前記油が、前記各伝熱プレートの下部に設けられたデッドスペースへ浸入するのを防止する遮蔽壁が、前記油回収穴の下部に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のプレート式熱交換器。 - 前記遮蔽壁は、隣同士の前記伝熱プレートの前記絞り部が接触した接触部を有し、該接触部が接合されている
ことを特徴とする請求項3記載のプレート式熱交換器。 - 前記油回収穴は、長円の一端が他端よりも小さい半径の小円弧状に形成され、その小円弧状の最下端部が前記絞り部の略水平部分に接近して形成されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプレート式熱交換器。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載のプレート式熱交換器の製造方法であって、
伝熱プレートの下部に油回収穴を形成する工程と、
前記伝熱プレートの下部縁部に沿って、前記伝熱プレートの前記油回収穴と前記伝熱プレートの下部縁部との間の油の流路幅を狭めるL字状の絞り部を形成する工程と、
前記絞り部を前記伝熱プレートの流路間隙の半分だけ絞り加工することによって、隣の伝熱プレートの絞り部と接触させ、その後、該接触部をロウ付けする工程と、
を少なくとも有する
ことを特徴とするプレート式熱交換器の製造方法。 - 前記ロウ付けの工程において、
前記油回収穴の周囲を前記伝熱プレートの流路間隙の半分だけ絞り加工することによって、隣の伝熱プレートの油回収穴の周囲の絞り部と接触させ、その後、該接触部をロウ付けする
ことを特徴とする請求項6記載のプレート式熱交換器の製造方法。 - 前記油回収穴の形成工程において、
前記油回収穴を、長円の一端が他端よりも小さい半径の小円弧状に形成し、その小円弧状の最下端部を前記絞り部の略水平部分に接近するように形成する
ことを特徴とする請求項6または7記載のプレート式熱交換器の製造方法。 - 圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器を環状に配管で接続した冷凍回路を有するヒートポンプ装置において、
前記凝縮器または前記蒸発器として、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプレート式熱交換器を使用し、
このプレート式熱交換器に設けた油回収穴を前記圧縮機の吸入口に配管で接続した
ことを特徴とするヒートポンプ装置。 - 請求項9において、
プレート式熱交換器に、給湯機器、暖房機器の一方または両方を有する水回路が接続されている
ことを特徴とするヒートポンプ装置。
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