JP5880562B2 - 触媒インクの製造方法、および、燃料電池の製造方法、燃料電池 - Google Patents

触媒インクの製造方法、および、燃料電池の製造方法、燃料電池 Download PDF

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Description

この発明は、触媒が担持された触媒電極およびそれを備える燃料電池に関する。
燃料電池は通常、電解質膜の両面に電極が配置された発電体である膜電極接合体を備える。膜電極接合体の電極は、燃料電池反応を促進するための触媒が担持された触媒電極として形成される。触媒電極は、一般に、触媒を導電性を有する粒子に担持させた触媒担持粒子とアイオノマーとを有機溶媒又は無機溶媒に分散させたスラリーである触媒インクを塗布・乾燥させることにより形成される(下記特許文献1等)。
ここで、燃料電池の発電性能や耐久性を向上させるために、触媒電極は、電極面における発電分布が均一化されることや、電極面の損傷や劣化が抑制されること、反応ガスの透過性・拡散性が向上されることなどが望ましい。これまで、触媒電極の性能の向上のために、触媒インクに対して、触媒担持粒子が均一に分散されているなどの構造的均質性や、乾燥後にひび割れや微小穴などのクラックが生じにくいこと、乾燥後に多孔質な状態を確保しやすいことなどが要求されてきた。
特開2010−257929号公報 特開平9−075698号公報
本発明は、触媒電極の性能を向上させることができる触媒インクを提供することを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
触媒電極の形成に用いられる触媒インクの製造方法であって、
(a)触媒が担持された導電性粒子である触媒担持粒子を溶媒に分散させて触媒分散液を生成する工程と、
(b)アイオノマーと揮発性溶媒とを混合してゲル体を作成する工程と、
(c)前記触媒分散液と、前記ゲル体とを攪拌混合して触媒インクを作成する工程と、
を備える、製造方法。
この製造方法によれば、触媒担持粒子の分散性が高く、適切な粘性を有する塗布性能の高い触媒インクを効率的に製造することができる。そのため、触媒インクの塗布性能が向上し、触媒電極の構造的均質化が促進されるとともに、その耐久性や発電性能が向上する。
また、この製造工程によって製造された触媒インクであれば、乾燥の際に、ゲル体中でアイオノマーに包含されていた揮発性溶媒が揮発することにより、そのアイオノマーに包含された細孔空間が形成されるものと推察される。従って、その触媒インクで形成された塗膜は多孔質になりやすく、ガスの透過性・拡散性の高い触媒電極を簡易に得ることができる。このように、この適用例の製造方法で製造された触媒インクであれば、高い発電性能や耐久性を有する触媒電極を容易に形成することができる。
[適用例2]
適用例1記載の製造方法であって、前記工程(a)は、前記触媒担持粒子の分散性を向上させるための界面活性剤を添加する工程を含み、前記界面活性剤は、前記工程(b)で用いられるアイオノマーと同種のアイオノマーである、製造方法。
この製造方法によれば、触媒インクの主材料であるアイオノマーを触媒担持粒子の分散を促進させる分散促進剤としても機能させることができ、触媒電極における触媒担持粒子の分散性が向上する。
ここで、分散促進剤として、アイオノマーではない別の物質を添加した場合には、触媒電極中に不純物が残留してしまう原因となる可能性がある。しかし、この適用例の製造方法であれば、もともと触媒電極に含有されるべきアイオノマーを分散促進剤として用いているため、そうした触媒電極における不純物の残留の可能性が低減される。
[適用例3]
適用例2記載の製造方法であって、前記工程(c)において作成される前記触媒インクに含有されるアイオノマーの重量に対する、前記工程(a)において前記触媒分散液に添加されるアイオノマーの重量の比率Wpは、約5%≦Wp≦約25%である、製造方法。
この製造方法であれば、アイオノマーによる触媒担持粒子の分散性の促進効果をより増大させることができる。また、工程(c)において、ゲル体の含有材料として投入されるアイオノマーの量を適切に確保することができ、触媒インクの塗膜強度の低下を抑制できる。
[適用例4]
適用例1〜3のいずれか一つに記載の製造方法であって、前記工程(b)は、加熱により前記ゲル体を増粘させる工程を含む、製造方法。
この製造方法であれば、加熱処理によって、容易に、ゲル体に所望の粘弾性を持たせることができる。ゲル体が適切な粘弾性を有することにより、触媒インクに適切な塗膜強度を持たせることができる。従って、より塗布性能の高い触媒インクを簡易に作成することが可能となる。
[適用例5]
適用例1〜4のいずれか一つに記載の製造方法であって、前記工程(b)は、せん断力を印加することにより前記ゲル体を増粘させる工程を含む、製造方法。
この製造方法であれば、せん断力の印加処理によって、容易に、ゲル体に所望の粘弾性を持たせることができる。従って、より塗布性能の高い触媒インクを簡易に作成することが可能となる。
[適用例6]
適用例1〜5のいずれか一つに記載の製造方法であって、前記工程(b)は、前記揮発性溶媒はアルコール溶液であり、前記アルコール溶液におけるアルコールの濃度を調整することにより、前記ゲル体の粘弾性を調整する工程を含む、製造方法。
この製造方法であれば、ゲル体の主材料であるアルコールの濃度の調整によって、所望の粘弾性を有するゲル体を容易に得ることができる。従って、塗布性能が向上した触媒インクを簡易に作成することが可能となる。
[適用例7]
適用例1〜6のいずれか一つに記載の製造方法であって、前記工程(b)において作成されるゲル体の貯蔵弾性率G1は、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量が1%のときに、約125Pa≦G1≦約425Paである、製造方法。
この製造方法であれば、ゲル体が適切な粘弾性を有するように貯蔵弾性率が適切に調整されているため、より高い塗布性能を有する触媒インクを得ることができる。
[適用例8]
適用例1〜7のいずれか一つに記載の製造方法であって、前記工程(c)は、前記触媒分散液と、前記ゲル体とを容器内に供給し、前記容器内において回転する回転子により生じる遠心力を利用して、前記触媒分散液と前記ゲル体との混合流体に対して、前記容器の側面方向に向かう力を印加して、前記混合流体を前記側面に薄膜状に張り付かせた状態で攪拌することにより、前記触媒インクの粘度を調整する工程を含む、製造方法。
この製造方法によれば、触媒分散液とゲル体との混合処理において、効率的に、触媒担持粒子の分散性を向上させることができるとともに、触媒インクの粘度を適切に調整することができる。
[適用例9]
適用例1〜8のいずれか一つに記載の製造方法であって、前記工程(c)は、前記触媒分散液と前記ゲル体との混合体に対して異なるせん断力を印加する複数の攪拌処理を含む、製造方法。
この製造方法によれば、触媒インクにおける触媒担持粒子と、ゲル体として混合されたアイオノマーの分散性を向上させることができる。
[適用例10]
適用例9記載の製造方法であって、前記複数の攪拌処理は、低いせん断力を印加する第1の攪拌処理と、前記第1の攪拌処理の後に実行される、高いせん断力を印加する第2の攪拌処理とを含み、前記第1の攪拌処理の実行後における前記混合体の貯蔵弾性率G2は、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量が1%のときに、約0Pa<G2≦約10Paである、製造方法。
この製造方法によれば、触媒インクにおけるアイオノマーの分散性をより適切に調整することができる。
[適用例11]
適用例10記載の製造方法であって、前記工程(b)において作成されるゲル体の貯蔵弾性率G1は、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量が1%のときに、約150Pa≦G1≦約300Paである、製造方法。
この製造方法によれば、第1と第2の攪拌処理においてゲル体をより適切に分散させることができる。
[適用例12]
適用例2記載の製造方法であって、前記工程(c)では、前記触媒分散液に含まれるアイオノマーの重量に対する、前記ゲル体に含まれるアイオノマーの重量の比Wriが、Wri≧約9となるように、前記触媒分散液と前記ゲル体とを混合する、製造方法。
この製造方法によって製造された触媒インクであれば、触媒電極における亀裂の発生を抑制できる。
[適用例13]
適用例1〜12のいずれか一つに記載の製造方法であって、前記工程(c)において作成される触媒インクの貯蔵弾性率Giは、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量が1%のときに、約5Pa≦Gi≦約30Paである、製造方法。
この製造方法であれば、塗布性能の高い触媒インクを製造することができる。
[適用例14]
燃料電池の製造方法であって、適用例1〜13のいずれか一つに記載の製造方法によって作成された触媒インクを、ダイコート法により塗布して、触媒電極を形成する触媒電極を形成する工程を備える、製造方法。
この製造方法によれば、燃料電池の製造工程において、高性能の触媒電極を効率的に形成することができる。また、この製造方法であれば、帯状の電解質膜に対して、間欠的に触媒インクを塗出することにより、複数の触媒電極を連続的に形成することが可能であり、燃料電池の大量生産が容易となる。
[適用例15]
燃料電池であって、適用例1〜14のいずれか一つに記載の製造方法によって作成された触媒インクを用いて形成された触媒電極を備える、燃料電池。
この燃料電池であれば、高性能な触媒電極によって、高い発電性能や、耐久性を得ることができる。
[適用例16]
触媒電極の形成に用いられる触媒インクの製造方法であって、
(a)触媒が担持された導電性粒子である触媒担持粒子を溶媒に分散させて触媒分散液を生成する工程と、
(b)アイオノマーと揮発性溶媒とを混合した混合流体を加熱する工程と、
(c)前記触媒分散液と、前記混合流体とを混合して触媒インクを作成する工程と、
を備える、製造方法。
この製造工程であれば、触媒インク中に、加熱によりアイオノマーと溶媒分子とが互いに吸着した分子の集まりが分散して存在することになる。その塗膜が乾燥したときに、その分子の集まりが細孔を形成するため、ガスの透過性・拡散性の高い触媒電極を形成することができる。
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能である。例えば、触媒電極を形成するための触媒インクの製造方法、その触媒インクの製造方法を備える膜電極接合体や燃料電池の製造方法、それらの製造方法の工程を実行する装置、その装置を制御する制御プログラム、その制御プログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。また、本発明は、触媒インク、その触媒インクを用いて形成された膜電極接合体、その膜電極接合体を備えた燃料電池、その燃料電池を備えた燃料電池システム、その燃料電池システムを搭載した車両等の形態で実現することができる。
燃料電池の構成の一例を示す概略図。 膜電極接合体の製造工程の手順を示す説明図。 触媒インクの製造工程を詳細に説明するための説明図。 ゲル体に対する加熱温度とゲル体の貯蔵弾性率との関係を説明するための説明図。 攪拌装置の構成を示す概略図。 本実施形態の製造工程によって得られる触媒インクの特性を説明するための模式図。 参考例としての触媒インクを説明するための模式図。 第1の電極の形成工程を説明するための模式図。 第2の電極の形成工程を説明するための模式図。 触媒分散液に添加されるアイオノマーによる触媒担持粒子の分散効果を検証した実験の実験結果を示す説明図。 ゲル体の貯蔵弾性率と触媒インクの塗布性能の関係を検証した実験の実験結果を示す説明図。 本実施形態の製造工程によって得られた膜電極接合体について、発電性能を検証した実験の実験結果を示す説明図。 第2実施形態としての触媒インクの製造工程を説明するための説明図。 第3実施形態としての触媒インクの製造工程を説明するための説明図。 第4実施形態としての触媒インクの製造工程を説明するための説明図。 第5実施形態としての膜電極接合体の製造工程の手順を示す説明図。 第5実施形態における触媒インクの製造工程を示す説明図。 第5実施形態の製造工程によって得られた触媒インクを用いて作成された触媒電極のガス拡散性の向上を検証した実験の実験結果を示す説明図。 第6実施形態としての触媒インクの製造工程を示す説明図。 第6実施形態の製造工程によって得られた触媒インクを用いて作成された膜電極接合体の発電性能を検証した実験の実験結果を示す説明図。 実験により得られた、ゲル体の貯蔵弾性率と触媒電極における空隙率との関係を示す説明図。 異なる貯蔵弾性率を有するゲル体を用いて作成された触媒電極の表面を撮影した画像を示す説明図。 第7実施形態としての触媒インクの製造工程を示す説明図。 実験により得られた、アイオノマー比と触媒電極に亀裂が発生する度合いとの関係を示す説明図。 アイオノマー比の増加に伴って触媒電極における亀裂の発生が抑制される理由を説明するための模式図。
A.第1実施形態:
図1は本発明の一実施形態としての燃料電池の構成の一例を示す概略図である。この燃料電池100は、反応ガスとして水素と酸素の供給を受けて発電する固体高分子形燃料電池である。燃料電池100は、複数の単セル10が積層されたスタック構造を有する。
単セル10は、膜電極接合体5と、膜電極接合体5を狭持する第1と第2のセパレータ7,8とを備える。なお、各単セル10には、流体の漏洩を防止するシール部や、膜電極接合体5に反応ガスを供給するためのマニホールドなどが設けられるが、その図示および説明は省略する。
膜電極接合体5は、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示す電解質膜1の両面にそれぞれ、第1と第2の電極2,3が配置された発電体である。電解質膜1は、イオン伝導性を有するポリマー(以下、「アイオノマー」と呼ぶ)の薄膜によって構成することができ、例えば、フッ素樹脂系のイオン交換膜によって構成することができる。より具体的には、電解質膜1は、ナフィオン(Nafion:登録商標)など、側鎖末端に−SO3H基を有するパーフルオロスルホン酸ポリマーを用いることができる。
第1と第2の電極2,3は、燃料電池反応を促進するための触媒(例えば白金(Pt)など)が担持された触媒電極であり、ガス透過性およびガス拡散性を有する。第1と第2の電極2,3はそれぞれ、燃料電池100の運転時には、酸素および水素の供給を受けて、カソードおよびアノードとして機能する。
第1と第2の電極2,3は、水溶性溶媒または有機溶媒に、電解質膜1に含まれるアイオノマーと類似又は同じアイオノマーと、導電性粒子に触媒を担持させた触媒担持粒子と、を溶媒に分散させた触媒インクを塗布・乾燥させることによって形成される。本実施形態において第1と第2の電極2,3の形成に用いられる触媒インクについては、後述する膜電極接合体5の製造工程の説明において、詳細に説明する。
なお、第1と第2の電極2,3の外側にそれぞれ、反応ガスを電極面に行き渡らせるためのガス拡散層が配置されるものとしても良い。ガス拡散層としては、炭素繊維や黒鉛繊維など、導電性およびガス透過性・ガス拡散性を有する多孔質の繊維基材や、発泡金属、エキスパンドメタルなどの多孔質に加工された金属板などを用いることができる。
第1と第2のセパレータ7,8は、導電性を有するガス不透過の板状部材(例えば金属板)によって構成することができる。第1のセパレータ7は、膜電極接合体5の第1の電極2側に配置され、第2のセパレータ8は、第2の電極3側に配置される。各セパレータ7,8の、膜電極接合体5と対向する側の面には、反応ガスのための流路溝9が発電領域全体に渡って形成されている。なお、流路溝9は省略されるものとしても良い。
図2は、膜電極接合体5の製造工程の手順を示すフローチャートである。この製造工程では、ステップS10〜S30の工程によって触媒インクを作成し、ステップS40,S50の工程において、その触媒インクを用いて、電解質膜1の外表面に第1と第2の電極2,3を形成し、膜電極接合体5を製造する。
図3は、ステップS10〜S30の触媒インクの製造工程を詳細に説明するための説明図である。本実施形態における触媒インクは、触媒担持粒子が分散された触媒分散液と、アイオノマーを用いて作成された粘弾性を有するゲル体とを攪拌して混合することにより、所望の粘性を有するように作成される。具体的には、以下の通りである。
<ステップS10の工程内容>
触媒担持粒子を溶媒に分散させて触媒分散液を作成する。具体的には、まず、触媒担持粒子(例えば、白金担持カーボン)と水とを混合した分散水溶液に、さらに、アルコールを投入する。ここで、触媒担持粒子と水とを先に混合して、触媒担持粒子を水に浸漬させておくことにより、アルコールを添加したときの発火を抑制することができる。
本実施形態では、上記の触媒担持粒子とアルコールとが混合された溶媒液に、ステップS20で用いるのと同種のアイオノマーを含むアイオノマー溶液を添加する。このアイオノマーは、触媒担持粒子の分散を促進させるための界面活性剤として機能するものである。
アイオノマー溶液を添加した後に、この触媒担持粒子と、アルコールと、アイオノマーとが混合された混合溶液を、超音波分散機などを用いて攪拌する。なお、この工程では、アルコールが投入される前の触媒担持粒子の分散水溶液に、アイオノマー溶液が添加されるものとしても良い。
<ステップS10の好適な処理条件>
・触媒担持粒子における触媒の重量比率:40〜60wt%
・水の添加量:分散される触媒担持粒子の重量の1〜5倍程度の重量
・アルコールの添加量:分散される触媒担持粒子の重量の3〜5倍程度の重量
・アイオノマーの添加量:完成した触媒インクに含有されるべきアイオノマーの量に応じて決定されるが、その詳細は後述する。
<ステップS20の工程内容>
アイオノマーと、揮発性溶媒とを混合することにより、ゲル体を作成する。具体的には、アイオノマー溶液と揮発性溶媒とを混合した混合溶液を作成し、その混合溶液に対して増粘処理を施し増粘させることにより、所定の粘弾性を有するゲル体を作成する。なお、本実施形態では、揮発性溶媒としてはアルコール溶液を用い、増粘処理としては、加熱処理を実施するものとする。加熱処理は、エバポレータや、オートクレーブによって実行することができる。
<ステップS20の好適な処理条件>
・アイオノマーのEW(Equivalent Weight)値:500〜900g/mol
・混合溶液におけるアルコールの重量比率:5〜20wt%
・加熱温度:60〜90℃
・加熱時間:50〜70分
なお、「アイオノマーのEW値」とは、イオン交換当量を意味し、イオン交換基1molあたりのアイオノマーの乾燥重量を示す値である。EW値が500g/mol未満のアイオノマーを用いた触媒インクにより触媒電極を形成すると、触媒電極における水分の移動性が低下し、発電性能が低下する可能性が高くなる。また、EW値が500g/mol未満のアイオノマーは熱水(例えば、80℃以上の水)に溶けやすいため、そのアイオノマーを用いた触媒インクにより形成された触媒電極は、運転中の燃料電池内部のような高温多湿の環境に対する耐久性が低下してしまう可能性がある。一方、EW値が900g/molより大きいアイオノマーを用いると、ゲル体を、以下に説明する粘弾性を有するように増粘させることが困難となる。
<ゲル体の好適な粘弾性>
ここで、本発明の発明者は、この工程で作成されるゲル体は、以下のような粘弾性を有することが好ましいことを見出した。
・ゲル体の貯蔵弾性率G1は、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量が1%のときに、
125Pa ≦ G1 ≦ 425Pa
であることが好ましく、
150Pa ≦ G1 ≦ 400Pa
であることがより好ましい。
上記の貯蔵弾性率G1が125Pa未満のゲル体、特に、貯蔵弾性率G1が150Pa未満のゲル体を用いて触媒インクを形成した場合には、触媒インクの塗布工程において、十分な塗膜強度を得られず、触媒電極の劣化の可能性が高くなる。一方、上記の貯蔵弾性率G1が425Paより大きいゲル体、特に、貯蔵弾性率G1が400Paより大きいゲル体を用いて触媒インクを形成した場合には、ステップS30において分散される触媒担持粒子の分散性が低下する可能性が高くなる。なお、ゲル体の貯蔵弾性率G1は、以下のように調整することが可能である。
図4は、本発明者の実験によって得られた、ゲル体に対する加熱温度と、ゲル体の貯蔵弾性率との関係の一例を示すグラフである。この実験では、所定量のアイオノマーとアルコールとを混合した混合溶液に対して、加熱時間を60分として、加熱処理を施し、アントンパール社製の測定器を用いて、ゲル体の粘弾性を測定した。
このように、アイオノマーと揮発性溶媒とを用いて作成されたゲル体の粘弾性は、加熱温度に応じて変化する。従って、実験等により、図4に示すグラフのような、ゲル体の貯蔵弾性率と加熱温度との関係を予め取得しておくことにより、加熱温度の調整により、ゲル体の粘弾性を調整することが可能である。なお、ゲル体の粘弾性は加熱時間によって調整されるものとしても良い。
<ステップS30の工程内容>
ステップS10で得た触媒分散液と、ステップS20で得たゲル体とを攪拌・混合することにより、所望の粘度を有する触媒インクを得る。なお、本実施形態では、触媒分散液と、ゲル体とをほぼ1:1の質量比で混合し、その攪拌量を調整することにより、触媒インクの粘度を調整する。本実施形態では、触媒インクは、以下の粘度を有するように調整される。
<触媒インクの粘度μ>
・せん断速度が200(1/sec)のときに、
0.4 Pa・s≦μ≦0.9 Pa・s
であることが好ましく、
0.5 Pa・s≦μ≦0.8 Pa・s
であることがより好ましい。
この好適範囲内の粘度μを有する触媒インクであれば、ダイコート法による塗布工程に適している。なお、触媒インクが、このような粘度を有するように攪拌するためには、以下に説明するような構成を有する攪拌装置を用いることが好ましい。
図5は、ステップS30の工程に好適な攪拌装置の構成を示す概略図である。この攪拌装置200は、容器201と、攪拌部210とを備える。容器201は、円筒状の中空容体である。容器201の底面202には、攪拌・混合処理の対象を容器201内に供給するための第1と第2の供給配管221,222が接続されている。また、容器201の側面203の上側の位置には、攪拌・混合処理された攪拌生成物を導出するための導出配管223が接続されている。
攪拌部210は、ロータ211と、回転軸213と、駆動モータ214とを備える。ロータ211は、羽根状の回転子であり、容器201の内部中央において、容器201の底面202に沿って高速回転可能なように、回転軸213を介して駆動モータ214と連結されて垂下されている。ロータ211の両端部には、容器201の側面203に沿って配置された板状の攪拌子212が設けられている。なお、攪拌子212と容器201の側面203との間には、薄膜が形成可能な程度の隙間が設けられている。
本実施形態の製造工程では、攪拌装置200の容器201内に、第1と第2の供給配管221,222を介して、触媒分散液と、ゲル体とが供給される。そして、攪拌装置200は、ロータ211を高速回転させることにより、攪拌対象である触媒分散液とゲル体との混合流体MFを回転流動させる。これによって、混合流体MFは、容器201の外側に向かって押し出され、容器201の側面203に張り付いて薄膜状になる。
このように、この攪拌装置200では、混合流体MFは、ロータ211の高速回転によって生じる遠心力によって、容器201の側面203に向かって圧力を受けつつ回転流動し、攪拌される。なお、混合流体MF中の触媒担持粒子と、ゲル体とは、攪拌子212と容器201の側面203との間の隙間の距離に応じて微粉化・微細化が促進される。混合流体MFは、容器201の側面203に沿って回転しつつ、容器201の上方へと流れ、導出配管223から容器201の外部へと導出される。
ここで、この攪拌装置200によれば、ロータ211の回転速度(周速)と、第1と第2の供給配管221,222からの触媒分散液およびゲル体の供給速度によって、その攪拌量を制御でき、攪拌生成物である触媒インクの粘度を調整することが可能である。例えば、周速を増大させるほど触媒インクの粘度を増大させることができる。また、混合材料の供給速度を低下させるほど、触媒インクの粘度を増大させることができる。なお、具体的な、攪拌装置200の処理条件は、以下の通りである。
<攪拌装置の処理条件>
・周速:5〜25m/min
・触媒分散液およびゲル体の供給速度:5〜25g/min
このように、ステップS10〜S20の工程によって、所望の粘性を有する触媒インクを得ることができる。ところで、一般に、触媒電極の性能は、触媒インクに含有されるアイオノマーの量によって変わってくる。本実施形態では、触媒インクに含まれるアイオノマーの量を以下のように調整している。
<触媒インクに含まれるアイオノマー量>
触媒電極では、アイオノマーが、そのプロトン伝導性を担保し、触媒担持粒子が、その導電性を担保する。また、アイオノマーの含有量が、触媒電極における水分の移動性や、触媒電極と電解質膜との接合性などに影響する。そのため、一般に、触媒インクでは、触媒電極に含有されるアイオノマーの質量(I)と、触媒の担持体である導電性粒子の質量(C)との比(I/C)が、燃料電池の性能向上に好適な所望の値となるように調整される。なお、本実施形態では、I/Cの値は、ほぼ1.0となるように調整するものとする。
ところで、本実施形態では、ステップS10において、触媒分散液にアイオノマーが添加されており、ステップS20において、アイオノマーを用いてゲル体が作成されている。従って、ステップS30において得られる触媒インクに含まれるアイオノマーの量は、触媒分散液に含まれるアイオノマーの量と、ゲル体に含まれるアイオノマーの量の合計である。そのため、触媒インクのI/Cを所望の値とするためには、最終的に触媒インクに含まれるべきアイオノマーの量に応じて、ステップS10,S20のそれぞれの工程において用いられるアイオノマーの量が調整されることが好ましい。
また、本願発明の発明者は、ステップS10において、アイオノマーによって触媒担持粒子の分散性を促進させるためには、触媒分散液に含有される触媒担持粒子の量に対して、ある量以上のアイオノマーが添加されることが好ましいことを、実験により見出した。そして、本願発明の発明者は、触媒分散液に添加するアイオノマーの量をある量より増大させて、ステップS30において、ゲル体として混合されるアイオノマーの量を減少させた場合には、十分な塗膜強度を有する触媒インクが得られなくなることを見出した。
これらのことから、本願発明の発明者は、ステップS10におけるアイオノマーの添加量について、以下のような知見を得た。即ち、ステップS10において添加されるアイオノマーの量の下限は、触媒インクに含有させる触媒担持粒子の量に応じて決定されることが好ましく、その上限は、ステップS20におけるアイオノマーの使用量を確保できるように決定されることが好ましい。具体的に、好適なアイオノマーの添加量は、以下の通りである。
<ステップS10におけるアイオノマー添加量の好適値>
ステップS10において、添加されるアイオノマーは、触媒分散液に含有される触媒担持粒子の質量、即ち、触媒インクに含有される触媒担持粒子の質量の5%より大きい質量を有していることが好ましく、10%以上の質量を有していることがより好ましい。この質量を有するアイオノマーを触媒分散液に添加すれば、触媒担持粒子の分散性を十分に促進させることができる。
また、ステップS10において添加されるアイオノマーは、最終的に触媒インクに含有されるアイオノマーの質量の25%より小さい質量を有していることが好ましく、20%以下の質量を有していることがより好ましい。このように、触媒分散液に添加されるアイオノマーの量を制限すれば、ステップS20において、ゲル体として使用されるアイオノマーの量を適切に確保することができる。従って、触媒インクにおいて、十分な塗膜強度を得ることができ、形成される触媒電極において、ひび割れや微小穴などのクラックが生じることを抑制できる。
ここで、アイオノマーについての3つの値Ia,Ib,Icと、触媒担持粒子についての値Ccを以下のように定義する。
・Ia:ステップS10において添加されるアイオノマーの質量
・Ib:ステップS20においてゲル体の作成に用いられるアイオノマーの質量
・Ic:ステップS30において得られる触媒インクに含まれるアイオノマーの質量
・Cc:ステップS30において得られる触媒インクに含まれる触媒担持粒子の質量
なお、前記したとおり、Ic=Ia+Ibである。
このとき、上述したIaの好適範囲は、以下のように表される。
0.05×Cc < Ia < 0.25×Ic …(1)
より好ましくは、
0.1×Cc ≦ Ia ≦ 0.2×Ic …(1a)
なお、触媒インクを、I/C=α(αは0より大きい任意の実数)となるように作成する場合には、α=Ic/Ccであるため、上述のIaの好適範囲は、以下のように表すことができる。
0.05×Ic/α < Ia < 0.25×Ic …(2)
より好ましくは、
0.1×Ic/α ≦ Ia ≦ 0.2×Ic …(2a)
即ち、本実施形態のように、触媒インクを、I/C=1.0となるように作成する場合には、Iaの好適範囲は、以下のように表すことができる。
0.05×Ic < Ia < 0.25×Ic …(3)
より好ましくは、
0.1×Ic ≦ Ia ≦ 0.2×Ic …(3a)
ここで、触媒インクに含有されるアイオノマーの重量に対する触媒分散液に添加されるアイオノマーの重量の比率Wpは、Wp=Ia/Ic×100として表すことができる。このとき、上記の不等式(3),(3a)はそれぞれ、以下の不等式(3’),(3a’)のように書き換えることができる。
5% ≦ Wp ≦ 25% …(3’)
10% ≦ Wp ≦ 20% …(3a)
図6は、本実施形態の製造工程によって得られる触媒インクの特性を説明するための模式図である。なお、図6では、水やアルコールなどの溶媒分子の種類については区別することなく図示してある。
図6(A)は、ステップS20において得られるゲル体の構造を模式的に示した概略図である。上述したとおり、ゲル体20は、ステップS20の工程において、溶媒分子22と、アイオノマー21とが混合されるとともに、増粘されて形成される。
ここで、ゲル体20が粘弾性を有するのは、溶媒分子22とアイオノマー21とが互いの分子間力によって物理的に架橋し、アイオノマー21が周りに吸着し、アイオノマー21によってくるまれた状態の溶媒分子22が存在しているためであると推察される。以後、アイオノマー21によってくるまれた状態、即ち、アイオノマー21によって捕捉された状態の溶媒分子22を、特に、「捕捉溶媒分子22c」とも呼ぶ。
図6(B)は、ステップS30で得られる触媒インクの構造を模式的に示した概略図である。触媒インク25は、ゲル体20に含まれていた、捕捉溶媒分子22cを含む溶媒分子22と、ステップS10で作成された触媒分散液に含まれていたアイオノマー21と、溶媒分子22と、触媒担持粒子24とが攪拌混合されて、分散された状態となっている。このように、本実施形態の触媒インク25では、捕捉溶媒分子22cが適切な量や度合いで分散されていることにより、その粘度が確保される。
図6(C)は、本実施形態の製造工程によって得られた触媒インクを乾燥させて形成された触媒電極の構造を模式的に示す概略図である。触媒電極27は、触媒インク25に含まれていた溶媒分子22が揮発して除去され、アイオノマー21と、触媒担持粒子24とが残留した状態である。なお、触媒インク25の乾燥の際には、アイオノマー21が吸着していない溶媒分子22が揮発した後に、アイオノマー21にくるまれた捕捉溶媒分子22cが揮発するものと推察される。
捕捉溶媒分子22cが揮発した後の触媒電極27には、捕捉溶媒分子22cが存在していた、アイオノマー21によって囲まれた空間26が残留する。この残留空間26は、触媒電極27において、反応ガスのための通路として機能する細孔を構成する。即ち、本実施形態の触媒インク25であれば、乾燥後に多孔質な構造となるため、反応ガスの通気性・拡散性が向上された触媒電極を形成することが可能である。
図7は、参考例としての触媒インクを説明するための模式図である。図7(A)は、参考例の触媒インク25aの構造を模式的に示す概略図であり、図7(B)は、参考例の触媒インク25aを乾燥して形成された触媒電極27aの構造を模式的に示す概略図である。この参考例の触媒インク25aは、触媒担持粒子を溶媒中に分散させた触媒分散液を作成した後に、その触媒分散液にアイオノマー溶液を混合することにより作成される。
参考例の触媒インク25aは、アイオノマー21と、溶媒分子22と、触媒担持粒子24とが分散された状態である(図7(A))。この参考例の触媒インク25aは、超音波分散機などを用いて、触媒担持粒子24の凝集を抑制しつつ、加熱することにより、その粘度を調整することが可能である。しかし、そうした方法によって、参考例の触媒インク25aが増粘するのは、アイオノマー21の触媒担持粒子24への吸着や、溶媒分子21の減少によるものである。
即ち、参考例の触媒インク25aを増粘させた場合でも、本実施形態の触媒インク25(図6(B))のような、適切な量や度合いで捕捉溶媒分子22cが分散して存在する状態とはならない。そのため、参考例の触媒インク25aを乾燥させて形成された触媒電極27aでは、本実施形態の触媒インク25によって形成された触媒電極27よりも、目が詰まった状態で形成されてしまい、反応ガスの通気性や拡散性が低くなってしまう。
なお、触媒電極を多孔質に形成する方法としては、スプレー法により触媒電極を形成する方法や、触媒インクに、ナフタレンなどの造孔剤を添加する方法などが知られている。しかし、スプレー法により触媒電極を形成する場合には、触媒インクの噴霧による塗布を複数回繰り返すことになり、工程時間の長大化などを引き起こす可能性がある。また、造孔剤を触媒インクに添加する場合には、触媒電極中に造孔剤の一部が残留してしまうなど、触媒電極への不純物の混入の原因となる可能性がある。
しかし、本実施形態の触媒インクであれば、後述するようなダイーコート法などの、触媒インクの連続的塗出による塗膜形成に適している。また、そうしたダイコート法によって触媒電極を形成した場合であっても、触媒電極の多孔質性を確保することができる。そして、造孔剤などの添加を省略できるため、触媒電極への不純物の混入が抑制され、触媒電極の劣化や耐久性の低下が抑制される。
このように、本実施形態の触媒インクの製造工程であれば、触媒分散液の作成工程において、触媒担持粒子の分散性を確保することができ、ゲル体の粘弾性や、ステップS30における攪拌量の調整によって、触媒インクの粘度の調整を行うことができる。即ち、より簡易な工程によって、触媒担持粒子の高い分散性と、所望の粘度とを有する触媒インクを作成することが可能である。そして、この工程で作成された触媒インクを用いれば、触媒電極における反応ガスの透過性や拡散性など、触媒電極の性能を向上させることができる。
図8は、ステップS40(図2)における第1の電極2の形成工程を説明するための模式図である。この工程では、ダイコート法により、電解質膜に触媒インクを直接的に塗布して、第1の電極2を形成する。図8には、この工程の実行に好適な触媒インクの塗布装置300の一例を図示してある。この塗布装置300は、搬送路305と、膜供給部310と、インク塗工部320と、乾燥部330とを備える。
膜供給部310は、帯状の電解質膜1aがロール状に巻き取られた電解質膜ロール301がセッティングされており、駆動ローラ311によって、電解質膜ロール301から電解質膜1aを、搬送路305に送出する。搬送路305は、複数の搬送ローラ306を備えており、電解質膜1aを所定の速度で、その長手方向に搬送する。
インク塗工部320と乾燥部330とは、搬送路305の途中に設けられている。インク塗工部320は、塗工具であるダイコータ321を備え、ステップS10〜S30の工程によって作成された触媒インク25を、搬送中の電解質膜1の外表面に向かって、帯状に塗出する塗布工程を、搬送速度に応じた周期で断続的に実行する。これによって、電解質膜1aには、複数の触媒インク25の塗膜が連続して形成される。なお、上述したように、本実施形態の触媒インク25は、このダイコータ321による塗布工程に適した粘度に調整されている。
乾燥部330は、触媒インク25の塗布膜をヒータなどの加熱部によって加熱して乾燥させて、第1の電極2とする。このように、塗布装置300によれば、複数の第1の電極2を、帯状の電解質膜1aに連続的に形成することが可能である。なお、この工程の後に、電解質膜1aは切断され、複数の第1の電極2はそれぞれ、互いに分離される。
図9は、ステップS50(図2)における第2の電極3の形成工程を説明するための模式図である。なお、第2の電極3は、切断前の帯状の電解質膜1aに対して形成されるものとしても良いし、切断後の電解質膜1に形成されるものとしても良い。また、第1の電極2が形成される前の電解質膜1aに形成されるものとしても良い。図9では、第1の電極2が形成された後の、切断前の帯状の電解質膜1aに対して第2の電極3を形成する場合を例示して説明する。
この工程では、まず、ポリテトラフルオロエチレン (PTFE,polytetrafluoroethylene)などの樹脂材料によって構成されたフィルム基材402の外表面に、ダイコータ401などによって触媒インク25を帯状に塗布して塗布膜403を形成する(図9(A))。そして、その塗布膜403を、電解質膜1の第1の電極2が形成された面とは反対側の面に転写して、第2の電極3とする(図9(B))。これによって、膜電極接合体5が完成する。
なお、この塗布膜403の転写工程は、図8で説明した塗布装置200の後段側において、搬送されている電解質膜1aに対して連続的に実行されるものとしても良い。これによって、複数の膜電極接合体5を連続的に完成させることが可能である。
ところで、フィルム基材402から転写されて形成された第2の電極3の方が、塗布膜403の転写の際に押圧される分だけ、電解質膜1に触媒インク25を直接的に塗布して形成された第1の電極2よりも、内部の細孔が圧縮されている可能性が高い。従って、燃料電池100における反応ガスの配流性の低下を抑制するために、第2の電極3に移動性の高い水素を供給してアノードとして機能させることが好ましい。また、燃料電池100における排水性の低下を抑制するために、細孔が圧縮されていない第1の電極2に酸素を供給してカソードとして機能させることが好ましい。
さらに、第1と第2の電極2,3では、それぞれの触媒担持量を異ならせることが好ましい。具体的には、カソードとして機能させる第1の電極2の方を、アノードとして機能させる第2の電極3よりも、単位面積あたりの触媒の担持量が大きくなるように、触媒インクの塗布量を変えるものとしても良い。例えば、第1の電極2については、単位面積あたりの触媒(白金)の担持量を0.5mgとし、第2の電極3については、単位面積あたりの触媒(白金)の担持量を0.1mgとしても良い。これによって、燃料電池100の発電性能の低下を抑制しつつ、触媒の使用量を低減させることが可能である。
このように、本実施形態における製造工程であれば、ダイコート法による触媒電極の形成に適した粘度を有するとともに、触媒担持粒子の分散性が向上された触媒インクを用いて、反応ガスの透過性および拡散性の高い触媒電極を連続的に形成することができる。従って、燃料電池を効率的に製造できるとともに、燃料電池の性能を向上させることができる。
図10は、ステップS10において触媒分散液に添加されるアイオノマーによる触媒担持粒子の分散効果を検証するために、本発明の発明者が行った実験の実験結果を示す説明図である。図10には、紙面上段と紙面下段にそれぞれ、横軸をアイオノマー使用率(wt%)とし、縦軸を触媒粒子径(μm)とするグラフを図示してある。
ここで、グラフ横軸の「アイオノマー使用率」とは、触媒分散液に含まれる触媒の担持体である導電性粒子の重量に対する、触媒分散液に添加されるアイオノマーの重量の比率を意味する。なお、この触媒分散液をI/C=1.0となる触媒インクの作成に用いる場合には、アイオノマー使用率は、前記した、触媒インクに含まれるアイオノマーの重量に対する触媒分散液に含まれるアイオノマーの重量の比率Wpと等しくなる。
また、グラフ縦軸の「触媒粒子径」とは、レーザー回折法により計測された触媒担持粒子の粒径の計測値である。なお、紙面上段のグラフでは、d50における粒径を示しており、紙面下段のグラフでは、d95における粒径を示している。ここで、「d50における粒径」とは、その粒径以下の粒径を有する粒子の重量の積算値が粒子全体の重量の50%を占める粒径を意味する。同様に、「d95における粒径」とは、その粒径以下の粒径を有する粒子の重量の積算値が粒子全体の重量の95%を占める粒径を意味する。
なお、本発明の発明者は、触媒分散液を以下のように作成した。
(1)触媒担持粒子として、白金の重量比率が50wt%の白金担持カーボンを、その重量の4倍の重量のイオン交換水に浸漬させた。
(2)さらに、そのイオン交換水に、白金担持カーボンの重量の4倍の重量のn−プロパノールを添加した。
(3)EW値600〜850のアイオノマーを含有する濃度20wt%のアイオノマー溶液を、界面活性剤として添加した。
(4)上記の混合溶液を、約10分間、攪拌した後に、超音波分散機により、30分間の分散処理を実行して、触媒分散液とした。
図10のグラフが示すとおり、アイオノマー使用率が5%〜10%の間において、アイオノマーの使用率が高くなるほど、触媒粒子径が小さくなっており、触媒担持カーボンの分散性が著しく向上した。そして、アイオノマー使用率が10%以上のときに、触媒粒子径はほぼ一定となり、触媒担持カーボンの分散性が最も高くなった。このことから、触媒担持カーボンの分散性を向上させるためには、アイオノマー使用率が5%より大きいことが好ましく、10%以上であることが、より好ましいことがわかる。
この実験では、さらに、アイオノマー使用率が20%より大きい触媒分散液を作成し、その触媒分散液を用いて、以下のように、触媒電極を形成した。
(5)上記のアイオノマー溶液にn−プロパノールを加えて濃度8.5wt%とし、エバポレータにより、約70℃、60分間環流/加熱してゲル体を作成した。なお、このゲル体の貯蔵弾性率G1は、アントンパール社製の測定器を用いて、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量が1%のときの歪依存性を測定したところ、150〜400Paであった。
(6)I/C=1.0となるように、上記の触媒分散液とゲル体とを混合した。具体的には、図5で説明したのと同様な攪拌処理を実行可能な装置として、プライミックス社製のフィルミックス(56−50型)を用いて、周速:10m/min、材料の供給速度:30 g/minとして、約10分間、攪拌した。なお、得られた触媒インクの粘度μは、せん断速度が200(1/sec)のときに、0.5〜0.8Pa・sであった。
(7)触媒インクを、単位面積あたりの触媒担持量が0.5mgとなるように、電解質膜に直接塗布して、触媒電極を形成した。また、触媒インクを、単位面積あたりの触媒担持量が0.1mgとなるように、PTFEのフィルム基材に塗布した後、電解質膜に転写して触媒電極を形成した。
この結果、形成されたいずれの触媒電極についてもクラックが発生してしまった。特に、アイオノマー使用率が25%以上の触媒分散液を用いた触媒インクにより触媒電極を形成した場合には、クラックによる触媒電極の劣化の度合いが著しかった。これは、触媒分散液の作成に用いたアイオノマーの量を増大させたことにより、ゲル体を構成するアイオノマーの量が減少したため、触媒インクにおいて適切な塗膜強度が得られなかったためであると推察される。
このことから、触媒インクの塗布性能を確保するためには、アイオノマー使用率は、25%より小さいことが好ましく、20%以下であることがより好ましいことがわかる。なお、このことは、換言すれば、ステップS20においてゲル体の作成に用いられるアイオノマーの質量は、触媒インクに含有されるアイオノマーの質量の75%以上であることが好ましく、80%より大きいことがより好ましいことを意味している。
図11は、ゲル体の貯蔵弾性率G1と触媒インクの塗布性能の関係を検証するために、本発明の発明者が行った実験の実験結果を示す説明図である。図11には、異なる貯蔵弾性率G1を有するゲル体を用いて形成された触媒電極の撮影画像を配列してある。具体的には、紙面上側から順番に、貯蔵弾性率G1が100Pa,150Pa,200Pa,400Pa,450Paのゲル体を用いて形成された触媒電極の撮影画像を配置してある。ここで、この貯蔵弾性率G1は、アントンパール社製の測定器を用いて、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量が1%のときの歪依存性を測定したときの測定値である。
なお、図11の各画像の左上の角には、触媒電極にクラックなどの損傷・劣化が観察されたものには「×」を表示し、観察されなかったものには「○」を表示してある。また、図11の各画像は同一の縮尺を有しており、その縮尺を示すために、最上段に配置された画像の右下の角には、500μmの長さに相当する線分を図示してある。
本発明の発明者は、以下のように触媒電極を作成した。
(1)アイオノマー使用率を15%として、図10の実験と同様な条件で触媒分散液を作成した。
(2)n−プロパノールを加えて、濃度8.5wt%としたアイオノマー溶液(EW値600〜850)を、エバポレータにより環流・加熱することにより、上記の貯蔵弾性率G1を有する5種類のゲル体を作成した。
(3)I/C=1.0となるように、上記の触媒分散液とゲル体とを混合した。具体的には、図5で説明したのと同様な攪拌処理を実行可能な装置として、プライミックス社製のフィルミックス(56−50型)を用い、周速:10m/min、材料の供給速度:30 g/minとして、約10分間、攪拌して、触媒インクを得た。
(4)触媒電極の単位面積あたりの白金重量が0.5mgとなるように(0.5mg/cm2)、触媒インクを塗布した。
ここで、いずれの触媒インクも、その粘度μは、せん断速度が200(1/sec)のときに、0.5〜0.8Pa・sであった。なお、フィルミックスの設定を、周速:20m/min、材料の供給速度:20g/minとした場合も、周速:30m/min、材料の供給速度:10g/minとした場合も、触媒インクの粘度は同様であった。
図11の撮影画像が示すように、ゲル体の貯蔵弾性率G1が100Paのときには、触媒電極にクラックが生じてしまった。また、ゲル体の貯蔵弾性率G1が、450Paのときには、触媒電極に多数のピンホールが発生した。これは、ゲル体の貯蔵弾性率G1が高すぎたために、触媒分散液とゲル体とが十分に混合されず、触媒インクの均一分散性が低下してしまったためであると推察される。一方、ゲル体の貯蔵弾性率G1が150Pa〜400Paのときには、触媒電極はクラックやピンホールなどの劣化を生じることなく、構造的に均質で、良好な触媒電極が形成された。
このことから、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量が1%のときのゲル体の貯蔵弾性率G1の好適範囲を表す上限値と下限値は、下限値が、100Pa以上、かつ、150Pa以下の値であり、上限値が、400Pa以上、かつ、450Pa以下の値であれば良いことがわかる。即ち、ゲル体の貯蔵弾性率G1は、
125Pa ≦ G1 ≦ 425Pa
であることが好ましく、
150Pa ≦ G1 ≦ 400Pa
であることが、より好ましい。
図12は、本実施形態の製造工程によって得られた膜電極接合体について発電性能を検証した実験の実験結果を示す説明図である。図12図には、本発明者が作成した2つの膜電極接合体のサンプルA,Bについて得られた発電特性を示すグラフを図示してある。本発明の発明者は、本実施形態の実施例としての膜電極接合体のサンプルAと、参考例としての膜電極接合体のサンプルBとをそれぞれ、以下のように作成した。
<サンプルAの作成>
(1)アイオノマー使用率を15%として、図10の実験と同様な条件で、触媒分散液Aを作成した。
(2)n−プロパノールを加えて、濃度8.5wt%としたアイオノマー溶液(EW値600〜850)を、エバポレータにより、約70℃の温度で、約60分間、環流・加熱してゲル体Aを作成した。なお、このゲル体Aの貯蔵弾性率G1は、アントンパール社製の測定器を用いて、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量を1%としたときの歪依存性を測定したところ、150〜400Paの範囲内であった。
(3)I/C=1.0となるように、上記の触媒分散液Aとゲル体Aとを、プライミックス社製のフィルミックス(56−50型)を用いて攪拌して(周速:10m/min、材料の供給速度:30 g/min、処理時間:約10分間)、触媒インクAを得た。なお、この触媒インクAの粘度μは、せん断速度が200(1/sec)のときに、0.5〜0.8Pa・sであった。
(4)上記の触媒インクAを用いて、電解質膜の両面に触媒電極を形成することにより、膜電極接合体のサンプルAを得た。このとき、カソードについては、ダイコータを用いて、触媒インクAを電解質膜に直接的に塗布して形成した。アノードについては、ダイコータを用いて、PTFEのフィルム基材に触媒インクAの塗布膜を形成した後に、その塗布膜を、電解質膜に転写することにより形成した。なお、カソードおよびアノードにおける単位面積あたりの白金担持量は以下の通りとした。
カソードの白金担持量:0.25mg/cm2
アノードの白金担持量:0.1mg/cm2
<サンプルBの作成>
(1)白金の重量比率が50wt%の白金担持カーボンを、その重量の4倍の重量のイオン交換水に浸漬させた後、白金担持カーボンの4倍の重量のn−プロパノールを添加して触媒分散液Bを作成した。
(2)上記の触媒分散液Bに対して、I/C=1.0となるように、EW値600〜850のアイオノマー溶液を添加して、超音波分散機により、分散処理を実行し、触媒インクBを得た。なお、この触媒インクBは、加熱処理により、サンプルAに用いた触媒インクAと同様の粘度とした。
(3)触媒インクAに換えて、触媒インクBを用いた点以外は、膜電極接合体のサンプルAと同様な条件で、膜電極接合体のサンプルBを得た。
本発明の発明者は、膜電極接合体のサンプルA,Bの両極に無加湿な反応ガスを供給し、運転温度を約75℃として発電させた。この結果、2つのサンプルA,Bに同じ電流密度を出力させたときには、サンプルAの方が、サンプルBよりも常に高い電圧を出力した。また、電流密度が大きいほど、サンプルAとサンプルBの出力電圧の差が大きくなった。
このように、触媒分散液とゲル体とを攪拌・混合して粘度を調整した触媒インクによって触媒電極を形成した方が、触媒分散液にアイオノマー溶液を混合した後に粘度を調整した触媒インクによって触媒電極を形成した場合よりも発電性能が向上した。この発電性能の差は、図6,図7で説明したような、触媒電極における反応ガスの拡散性能の差によって生じたものであると考えられる。
B.第2実施形態:
図13は、本発明の第2実施形態としての触媒インクの製造工程を示す説明図である。図13は、ステップS20において、加熱処理に換えてせん断力の印加処理が設けられている点以外は、図1とほぼ同じである。なお、この第2実施形態における触媒インクの製造工程は、以下に説明する点以外は、上記第1実施形態において説明した製造工程と同様である。
ここで、アイオノマーと揮発性溶媒の混合溶液は、高いせん断力を印加されるほど増粘することを本発明の発明者は見出した。即ち、ゲル体の作成工程における増粘処理としては、第1実施形態で説明した加熱処理に換えて、当該混合溶液に対するせん断力の印加処理によって実行することも可能である。せん断力の印加処理は、例えば、図5で説明したような攪拌装置によって行うものとしても良い。なお、この第2実施形態の場合にも、ゲル体の貯蔵弾性率G1は、上記第1実施形態と同様な値に調整されることが望ましい。
C.第3実施形態:
図14は、本発明の第3実施形態としての触媒インクの製造工程を示す説明図である。図14は、ステップS20において、アイオノマーと揮発性溶媒の混合溶液の増粘処理が設けられていない点以外は、図1とほぼ同じである。なお、この第3実施形態における触媒インクの製造工程は、以下に説明する点以外は、上記第1実施形態において説明した製造工程と同様である。
ここで、本発明の発明者は、アイオノマーとアルコールの混合溶液に粘弾性を持たせるためには、混合溶液におけるアルコールの濃度を、例えば、20wt%以上となるように、アルコールを添加することによって可能であることを見出した。そして、混合溶液におけるアルコールの濃度を、さらに増大させことにより、その粘弾性を増大させることが可能であることを見出した。即ち、ステップS30で作成されるゲル体の粘弾性は、ゲル体の作成工程におけるアルコールの添加量によって調整することも可能である。なお、この第3実施形態の場合にも、ゲル体の貯蔵弾性率G1は、上記第1実施形態と同様な値に調整されることが望ましい。
D.第4実施形態:
図15は、本発明の第4実施形態としての触媒インクの製造工程を示す説明図である。図15は、ステップS10において、触媒分散液にアイオノマーが添加されていない点以外は、図1とほぼ同じである。第4実施形態の触媒インクの製造工程では、ステップS10において、界面活性剤としてのアイオノマーを添加することなく、触媒分散液が形成される点以外は、上記第1実施形態と同様な工程で触媒インクが作成される。
第4実施形態の製造工程であっても、触媒担持粒子が分散された触媒分散液と、アイオノマーを含有するゲル体との混合によって、所望の粘度を有する触媒インクを作成することが可能である。また、その触媒インクであっても、図6で説明したように、触媒電極において反応ガスの透過性や拡散性を向上させることが可能である。なお、第4実施形態の製造工程では、ステップS10において、アイオノマー以外の他の界面活性剤が触媒分散液に添加されるものとしても良い。
E.第5実施形態:
図16は、本発明の第5実施形態としての膜電極接合体5の製造工程を示すフローチャートである。第5実施形態の膜電極接合体5の製造工程では、触媒インクの製造工程において、触媒分散液とゲル体との攪拌・混合を、異なるせん断力を印加する複数の攪拌処理によって行う(ステップS35)。以下では、第5実施形態における触媒インクの製造工程の内容を説明するが、ステップS40,S50の工程については、上記の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
図17は、ステップS10〜S35の触媒インクの製造工程を詳細に説明するための説明図である。図17は、ステップS30の工程内容に換えてステップS35の工程内容が図示されている点以外は、図3とほぼ同じである。ステップS10,S20では、第1実施形態で説明したのと同様な工程によって、触媒分散液とゲル体とを作成する。なお、ステップS10における混合溶液の攪拌処理は、超音波分散機や湿式媒体攪拌ミル(ビーズミル)によって行うものとしても良い。また、ステップS20における混合溶液の増粘処理は加熱処理によって行うが、その加熱温度は、50℃以上であれば良い。
ステップS35では、ステップS10で作成した触媒分散液とステップS20で作成した貯蔵弾性率G1のゲル体とを混合して低せん断力を印加する第1の攪拌処理を実行し、所定の貯蔵弾性率G2を有する、触媒分散液とゲル体との混合体を作成する。この第1の攪拌処理は、ゲル体を細かく分解して、混合体中に分散させるために行う。具体的に、第1の攪拌処理としては、例えば、ヘリカル形状の攪拌羽根を用いた攪拌処理が実行されるものとしても良い。なお、第1の攪拌処理では、ゲル体の分解・分散に伴い、混合体の貯蔵弾性率G2は、比較的低い値となる。
ステップS35では、さらに、第1の攪拌処理で得られた所定の貯蔵弾性率G2を有する混合体に対して、高せん断力を印加する第2の攪拌処理を実行し、所定の貯蔵弾性率Giを有する触媒インクを作成する。この第2の攪拌処理は、ゲル体をさらに細かく分散させるとともに、ゲル体を構成する高分子の分子鎖同士の絡み合いを形成させ、完成後の触媒インクに所定の粘弾性を持たせるために行う。
第2の攪拌処理は、例えば、図5で説明した攪拌装置200を用いて実行することができる。具体的には、容器201に第1の攪拌処理によって作成された混合体を供給し、ロータ211の高速回転によって生じる遠心力を利用して攪拌する。なお、前記したとおり、第2の攪拌処理では、ゲル体を構成する高分子の分子鎖同士の絡み合いが形成されるため、この攪拌処理により得られる触媒インクの貯蔵弾性率Giは、混合体の貯蔵弾性率G2より高くなる。
このように、第5実施形態の触媒インクの製造工程では、ステップS35において、第1の攪拌処理によって混合体のゲル体を細かく分散させた上で、第2の攪拌処理を実行する。そのため、図6で説明した、触媒インクにおける触媒担持粒子や、捕捉溶媒分子を含むアイオノマーの分散性を向上させることができ、触媒電極における発電分布の均一性やガス拡散性を向上させることができる。また、触媒インクの貯蔵弾性率Giが適切に調整されるため、触媒インクの塗布性が向上する。
ステップS35における好適な処理条件は以下の通りである。なお、以下に説明する貯蔵弾性率G2,Giは、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量が1%のときの計測値である。
<第1の攪拌処理の好適な処理条件>
・攪拌羽根の回転速度:50〜200rpm
・処理時間:1〜2時間程度
・作成される混合体の貯蔵弾性率G2: 0Pa < G2 ≦ 10Pa
第1の攪拌処理によって、混合体の貯蔵弾性率G2を上記の好適範囲内まで低下させておくことにより、ゲル体の分散性が適切に調整され、触媒インクにおける触媒担持粒子やアイオノマーの分散性を向上させることができる。なお、混合体の貯蔵弾性率G2は、攪拌羽根の回転速度や攪拌時間によって調整することができる。
<第2の攪拌処理の好適な処理条件>
・ロータの周速:5〜15m/s
・処理時間:1〜10分程度
・触媒インクの貯蔵弾性率Gi: 5Pa ≦ Gi ≦ 10Pa
触媒インクの貯蔵弾性率Giを、上記の好適範囲内に調整しておくことにより、触媒担持粒子やアイオノマーの分散性を向上させつつ、触媒インクの良好な塗布性能を得ることができる。なお、触媒インクの貯蔵弾性率Giは、ロータの周速や処理時間、混合体の供給速度によって調整することが可能である。
図18は、第5実施形態の製造工程によって得られた触媒インクを用いて作成された触媒電極におけるガス拡散性の向上を検証した実験の実験結果を示す説明図である。図18には、横軸を対数表示によって表示された貯蔵弾性率とし、縦軸をガス拡散抵抗とするグラフを図示してある。
本発明の発明者は、以下に説明する製造工程により、本発明の実施例としての複数の膜電極接合体をそれぞれ、混合体の貯蔵弾性率G2を変えて作成した触媒インクを用いて作成した。そして、それぞれの膜電極接合体について、以下に説明するヘリオックス法によって、触媒電極におけるガス拡散抵抗を計測した。図18には、各実施例の膜電極接合体における、混合体の貯蔵弾性率G2に対するガス拡散抵抗の計測値に基づいて得られた実線グラフG1を図示してある。なお、実施例としての膜電極接合体の具体的な製造条件は以下の通りである。
<実施例としての膜電極接合体の具体的な製造工程>
(1)触媒分散液の作成:
カーボンに白金コバルト(PtCo)を担持させた触媒担持粒子に蒸留水を加えた後に、エタノールや1−プロパノールなどの揮発性溶媒を添加し、界面活性剤としてのアイオノマーを、触媒担持粒子に対する重量比が0.1〜0.2となるように加えた。その後、超音波分散器によって分散処理を行い、触媒分散液を得た。
(2)ゲル体の作成:
アイオノマー溶液にエタノールや1−プロパノールなどの揮発性溶媒を加えた混合溶液を、少なくとも1時間程度、50℃以上の温度で加熱して、貯蔵弾性率G2が、150Pa≦G2≦400Paであるゲル体を得た。
(3)第1の攪拌処理:
上記の触媒分散液に、上記のゲル体を、触媒担持粒子に対する重量比が0.5〜0.8となるように混合し、その混合体に対して、ヘリカル形状の攪拌羽根を用いて低せん断力を印加し、異なる貯蔵弾性率G2を有する複数の混合体を作成した。なお、攪拌羽根の回転速度は、50〜200rpmの範囲内で制御し、攪拌時間は1〜2時間程度とした。
(4)第2の攪拌処理:
第1の攪拌処理によって得られた各混合体に対して、プライミックス社製のフィルミックスを用いて、周速:10m/sで、約5分間、高せん断力を印加した。なお、この処理によって得られた各触媒インクの貯蔵弾性率Giは、5〜30Paの範囲内であった。
(5)触媒電極の作成:
上記工程によって得られた各触媒インクを、ドクターブレード式のアプリケータによって、テフロン(登録商標)のフィルム基材上に塗布し、100℃で加熱して乾燥させることにより触媒電極を作成した。
(6)触媒電極の電解質膜への転写:
ナフィオン112の薄膜の両面に、上記の触媒電極を130℃のホットプレスにより、フィルム基材から転写して接合した。
<貯蔵弾性率の測定方法>
第1の攪拌処理において得られた混合体の貯蔵弾性率G2は、アントンパール社製の動的粘弾性測定装置によって測定した。なお、測定治具には、コーンプレートCP50−1を用いた。
<ヘリオックス法によるガス拡散抵抗の計測>
(1)計測対象である膜電極接合体の触媒電極の外側に、撥水層(PTFE)を設けたカーボン繊維基材をガス拡散層として配置した。
(2)膜電極接合体のアノード側に水素、カソード側に空気と窒素の混合ガス、または、空気とヘリウムの混合ガスを、両極ともに80%RHの湿潤度で供給して発電させた。
(3)供給ガス中の酸素濃度を低下させていき、発電不能になる電流の限界値を計測した。
(4)その計測結果を用いて、触媒電極におけるガス拡散抵抗を算出した。
また、本発明の発明者は、本発明の比較例として、上記の製造工程と同様に作成した触媒分散液に、ゲル体ではないアイオノマー溶液を混合した混合溶液にせん断力を印加することにより、貯蔵弾性率の異なる複数の触媒インクを作成した。そして各触媒インクを用いて形成した触媒電極を備える、比較例としての膜電極接合体を作成し、それぞれの膜電極接合体について、上述のヘリオックス法によって、触媒電極におけるガス拡散抵抗を計測した。
なお、比較例の触媒インク中に含有される触媒担持粒子やアイオノマーの量は上記実施例において作成した触媒インクと同様とした。また、比較例の膜電極接合体は、触媒インクの製造工程が異なる点以外は、上記実施例の膜電極接合体の製造工程と同様とした。図18には、各比較例の膜電極接合体における、触媒インクの貯蔵弾性率Giに対するガス拡散抵抗の計測値に基づいて得られた一点鎖線グラフG2を図示してある。
図18のグラフに示されているように、触媒分散液とゲル体との混合溶液に対して第1と第2の攪拌処理を実行する工程によって得られた実施例の膜電極接合体では、触媒電極におけるガス拡散抵抗は、比較例の膜電極接合体よりも常に低い値が得られた。これは、図6で説明したように、ゲル体を用いて作成した触媒電極には、捕捉溶媒分子の揮発により、ガス拡散性を向上させる細孔が形成されるためであると考えられる。
また、実施例の膜電極接合体では、第1の攪拌処理によって得られる混合体の貯蔵弾性率G2が10Pa以下のときに、ガス拡散抵抗がほぼ一定の最小値に保持されていた。このように、第1の攪拌処理によって得られる混合体の貯蔵弾性率G2を、0Pa<G2≦大きく、10Pa以下とすることにより、触媒電極におけるガス拡散性を向上させることができる。
以上のように、第5実施形態の膜電極接合体の製造工程では、触媒分散液とゲル体とを、低せん断力を印加する第1の攪拌処理と高せん断力を印加する第2の攪拌処理によって混合・攪拌する。これによって、触媒インクにおける触媒担持粒子や、捕捉溶媒分子を含むアイオノマーの分散性が向上されるため、触媒電極のガス拡散性が向上し、膜電極接合体の発電性能が向上する。
F.第6実施形態:
図19は、本発明の第6実施形態としての触媒インクの製造工程を示す説明図である。図19は、ステップS20において作成されるゲル体の貯蔵弾性率G1の好適範囲が異なる点以外は、図17とほぼ同じである。第6実施形態の触媒インクの製造工程は、以下に説明する点以外は、第5実施形態で説明した製造工程と同様である。また、以下において説明する貯蔵弾性率はいずれも、計測対象に1Hzの周波数の振動を印加し、その歪み量を1%としたときの値である。
第6実施形態の触媒インクの製造工程では、ステップS20において作成されるゲル体の貯蔵弾性率G1を、
150Pa ≦ G1 ≦ 300Pa
となるように調整する。これによって、触媒電極における空隙率を確保することができるとともに、触媒電極中の細孔の分散性を向上させることができる。従って、触媒電極のガス拡散性をより確実に向上させることができ、膜電極接合体の発電性能を向上させることができる。
図20は、第6実施形態の製造工程によって得られた触媒インクを用いて作成した膜電極接合体の発電性能を検証した実験の実験結果を示す説明図である。図20には、異なる貯蔵弾性率G1を有するゲル体を用いて作成した触媒電極を備える膜電極接合体のそれぞれについて、一定の電流値で発電させているときの、運転温度の変化に対する出力電圧の変化を示すグラフを図示してある。
図20には、貯蔵弾性率G1が150〜300Paの範囲内にあるゲル体を用いて作成した膜電極接合体についての計測結果を示すグラフをそれぞれ、実線、一点鎖線、二点鎖線で図示してある。また、貯蔵弾性率G1が100Pa,350Paのゲル体を用いて作成した触媒電極を備える膜電極接合体についての計測結果を示すグラフをそれぞれ、ピッチの異なる破線で図示してある。
<膜電極接合体の製造条件>
第6実施形態において説明した、実施例としての膜電極接合体の製造工程と同様な工程によって、計測対象である膜電極接合体を作成した。なお、ゲル体の貯蔵弾性率G1は、増粘処理における加熱温度や加熱時間を変えることにより調整した。
<貯蔵弾性率G1の測定方法>
ゲル体の貯蔵弾性率G1は、アントンパール社製の動的粘弾性測定装置によって、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量が1%のときの値を計測した。なお、測定治具には、プレートPP25を用いた。
<膜電極接合体の発電条件>
膜電極接合体の触媒電極の外側に、撥水層(PTFE)を設けたカーボン繊維基材をガス拡散層として配置し、アノード側に水素、カソード側に、空気と窒素の混合ガス、または、空気とヘリウムの混合ガスを、両極ともに80%RHの湿潤度で供給して発電させた。
貯蔵弾性率G1が100Pa,350Paのゲル体を用いた膜電極接合体では、運転温度が低下すると電圧の計測値も次第に低下してしまった。これに対して、貯蔵弾性率G1が150〜300Paの範囲内にあるゲル体を用いた膜電極接合体では、運転温度が低いときでも、電圧の変動が少なかった。これは、後者の膜電極接合体では、触媒電極における空隙率と細孔の分散性とが十分に確保されており、運転温度が低下して、液水として存在する水分量が増大しても、触媒電極における反応ガスの拡散が阻害されなかったためである。
図21は、実験によって得られた、ゲル体の貯蔵弾性率G1と、そのゲル体を用いて作成された触媒電極における空隙率との関係を示す説明図である。図21には、ゲル体の貯蔵弾性率G1を横軸とし、触媒電極の空隙率を縦軸とするグラフを図示してある。なお、図21のグラフでは、空隙率の各計測値に対して±10程度の誤差範囲を図示してある。
本発明の発明者は、上記の実験において作成した膜電極接合体のそれぞれについて、触媒電極の空隙率を、以下のように計測した。なお、ゲル体の貯蔵弾性率G1は、上記の実験において、各膜電極接合体について計測した値である。
<空隙率の測定方法>
触針式膜圧計を用いて、触媒電極の厚みを計測し、触媒電極の密度を求め、触媒担持粒子やアイオノマーなどの触媒電極の構成部材に対する比重に基づき、触媒電極の空隙率を算出した。
ゲル体の貯蔵弾性率G1が150Pa以上の触媒インクによって形成された触媒電極では、空隙率はほぼ一定であり、60%以上であった。これに対して、ゲル体の貯蔵弾性率G1が150Paより小さい触媒インクによって形成された触媒電極では、空隙率が40%近くまで著しく低下してしまった。このように、貯蔵弾性率G1が150Pa以上のゲル体を用いて作成した触媒インクであれば、触媒電極における空隙率を確保することができる。
図22は、異なる貯蔵弾性率を有するゲル体を用いて作成された触媒電極の表面を撮影した画像を示す説明図である。図22には、上記実験において作成された膜電極接合体が備える触媒電極の代表的な2枚の撮影画像を表示してある。具体的に、図22には、紙面上段に、貯蔵弾性率G1が100〜300Paの範囲内のゲル体を用いた触媒電極の撮影画像を示し、紙面下段に、貯蔵弾性率G1が350Paのゲル体を用いた触媒電極の撮影画像を示してある。
貯蔵弾性率G1が300Pa以下のゲル体を用いて作成された触媒電極は、比較的平坦で均質な表面を有していた。一方、貯蔵弾性率G1が350Paのゲル体を用いて作成された触媒電極では、その表面に、ゲル体が固化した粒状のアイオノマーの塊MIが分散していることが観察できた。触媒電極中に、このようなアイオノマーの塊MIが存在すると、反応ガスの拡散性が低下したり、触媒電極における発電分布が不均一になったり、燃料電池を構成したときに、触媒電極とセパレータとの間の接触抵抗が増大する原因となる。
以上のように、触媒インクの製造の際に作成されるゲル体の貯蔵弾性率G1は、
150Pa ≦ G1 ≦ 300Pa
であることが。より好ましい。これによって、触媒電極における空隙率や、アイオノマーおよび細孔の分散性を、十分に確保することができ、膜電極接合体の発電性能を向上させることができる。
G.第7実施形態:
図23は、本発明の第7実施形態としての触媒インクの製造工程を示す説明図である。図23は、後述するアイオノマー比Wriについての記載が追加されている点以外は、図19とほぼ同じである。第7実施形態の触媒インクの製造工程は、以下に説明する点以外は、第6実施形態で説明した製造工程と同様である。
上記実施形態でも説明したように、ステップS10において触媒分散液を作成する際には、界面活性剤としてのアイオノマーを添加し、ステップS20では、アイオノマー溶液を用いてゲル体を作成する。本発明の発明者は、ステップS35では、触媒分散液に含まれるアイオノマーの重量Xに対する、ゲル体に含まれるアイオノマーの重量Yの比(以下、「アイオノマー比」と呼ぶ)Wriが9以上となるように、触媒分散液とゲル体とを混合することが望ましいことを見出した。
Wri(=Y/X)≧9
ここで、触媒電極に亀裂などが生じている場合には、燃料電池を構成したときに、その亀裂にガス拡散層を構成する繊維基材の毛羽が入り込み、電解質膜を損傷させる可能性が高くなる。また、膜電極接合体のカソード側では、その亀裂の発生箇所において、アノード側から透過してきた水素量が増大し、電解質膜を劣化させる原因物質となる過酸化水素が生じる可能性が高くなる。しかし、上述したアイオノマー比Wriで触媒分散液とゲル体とを混合して触媒インクを作成し、ゲル体として触媒インク中に添加されるアイオノマーの量を確保することにより、以下に説明するように、触媒電極における亀裂の発生を抑制することが可能となる。
ところで、上記第1実施形態では、触媒担持粒子の分散性を十分に促進させるために、ステップS10において添加されるアイオノマーの質量は、触媒インクに含まれるアイオノマーの質量の10%以上であることが好ましいことを説明した(上記不等式(3a),(3a’))。しかしながら、触媒分散液における触媒担持粒子の分散性は、界面活性剤としてのアイオノマーの量が不足する場合であっても、触媒分散液を作成する際の攪拌処理における攪拌力や攪拌量によって確保することも可能である。
即ち、ステップS10において添加されるアイオノマーの量が、上記不等式(3a),(3a’)に示した好適範囲から外れて少なくなる場合であっても、ステップS10における攪拌処理によって、触媒分散液における触媒担持粒子の分散性を確保することが可能である。そこで、この第7実施形態の製造工程では、ステップS10において、上記の不等式(4)を満たす量のアイオノマーをゲル体として、触媒インク中に混合させることにより、触媒電極における亀裂の発生を抑制する。一方、触媒分散液における触媒担持粒子の分散性については、触媒分散液に対する攪拌処理によって担保する。
図24は、実験により得られた、触媒インクを作成する際のアイオノマー比Wriと、触媒電極に亀裂が発生する度合いとの関係を示す説明図である。図24には、横軸をアイオノマー比Wriとし、縦軸を触媒電極における亀裂の発生度合いを示す亀裂面積比率とするグラフを図示してある。ここで、「亀裂面積比率」とは、触媒電極全体の面積に対する触媒電極に発生している亀裂の面積の比率を意味する。
本発明の発明者は、以下のように実施例としての膜電極接合体を作成して、その触媒電極における亀裂面積比率を計測した。なお、以下では、触媒インクを形成した後の工程(触媒電極の作成工程と、触媒電極の電解質膜への転写工程)は、第5実施形態の実施例としての膜電極接合体の製造工程において説明した工程と同様であるため、その説明は省略する。
<実施例としての膜電極接合体の製造工程>
(1)触媒分散液の作成:
カーボンに白金コバルト(PtCo)を担持させた触媒担持粒子に蒸留水を加えた後に、エタノールや1−プロパノールなどの揮発性溶媒を添加した。さらに、界面活性剤としてのアイオノマーを、最終的に触媒インクに含有させるアイオノマーの重量に対して、10%未満となる重量で添加した。その後、超音波分散器やビーズミルによって分散処理を行って触媒分散液を得た。
(2)ゲル体の作成:
アイオノマー溶液にエタノールや1−プロパノールなどの揮発性溶媒を加えた混合溶液を、少なくとも1時間程度、50℃以上の温度で加熱しゲル体を得た。なお、ゲル体の貯蔵弾性率G1は、ほぼ200Paであった。
(3)第1の攪拌処理:
上記の触媒分散液に、上記のゲル体を混合して、ヘリカル形状の攪拌羽根を用いて低せん断力を印加することにより、異なるアイオノマー比Wriで作成された、所定の貯蔵弾性率G2を有する複数の混合体を得た。なお、攪拌羽根の回転速度は、50〜200rpmの範囲内で制御し、攪拌時間は1〜2時間程度とした。
(4)第2の攪拌処理:
第1の攪拌処理を行った後の各混合体に対して、プライミックス社製のフィルミックス56−50型を用いて、周速:10m/sで、約5分間、高せん断力を印加することにより、混合体のアイオノマー比Wriごとに70gの触媒インクを得た。なお、この処理によって得られた触媒インクの貯蔵弾性率Giは、5〜30Paの範囲内であった。
<貯蔵弾性率の測定方法>
貯蔵弾性率は、アントンパール社製の動的粘弾性測定装置によって、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量を1%をとして計測した。なお、ゲル体の貯蔵弾性率G1の測定には、測定治具として、プレートPP25を用い、触媒インクの貯蔵弾性率Giの測定には、測定治具として、コーンプレートCP50−1を用いた。
図24のグラフが示すように、触媒電極における亀裂面積比率は、アイオノマー比Wriが0〜9の範囲において指数関数的に減少した。亀裂面積比率は、特に、アイオノマー比Wriが0〜1の範囲のときに、著しく低下した。そして、亀裂面積比率は、アイオノマー比Wriが9以上のときに、ほぼ0に収束した。このように、ステップS35において、アイオノマー比Wriが9以上となるように、触媒分散液とゲル体とを混合することにより、触媒電極における亀裂の発生を抑制することができる。
図25(A),(B)は、アイオノマー比Wriの増加に伴って触媒電極における亀裂の発生が抑制される理由を説明するための模式図である。図25(A),(B)にはそれぞれ、紙面上段に、電解質膜1に塗布された乾燥前の触媒インク25を図示してあり、紙面下段に、その触媒インク25が乾燥して触媒電極27となった状態を図示してある。図25(A)は、アイオノマー比Wriが9よりも著しく小さい触媒インク25を用いたときの例であり、図25(B)は、アイオノマー比Wriが9以上の触媒インク25を用いたときの例である。
アイオノマー比Wriが著しく小さい触媒インク25(図25(A))では、ゲル体として添加されたアイオノマー21の量が少ないため、分子鎖同士の絡み合いを形成しているアイオノマー21が比較的少ない。従って、このような触媒インク25では、触媒インク25を乾燥させたときに、アイオノマー21が収縮する度合いが高く、触媒担持粒子24の表面に吸着されるアイオノマー21の量も多くなる。従って、触媒電極25が形成されたときに、分散して存在する触媒担持粒子24の集合同士の間に亀裂CRが生じやすくなる。
これに対して、アイオノマー比Wriが比較的大きい触媒インク25(図25(B))では、ゲル体として、分子鎖同士の絡み合いが形成されたアイオノマー21が多く存在する。そのため、触媒インク25が乾燥したときアイオノマー21の収縮や、触媒担持粒子24の表面への吸着が抑制され、触媒電極27における亀裂の発生が抑制される。
以上のように、第7実施形態の製造工程であれば、触媒インク中にゲル体として混合されるアイオノマー量を適切に確保することができる。従って、触媒電極において亀裂が発生してしまうことを抑制でき、燃料電池における電解質膜の劣化を抑制することができる。
H.変形例:
なお、この発明は上記の実施形態や実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。例えば、上記実施形態で例示した以外の材料を採用することも可能である。例えば、触媒として白金以外の材料を採用するものとしても良いし、触媒の担持体としてカーボン以外の導電性粒子を採用するものとしても良い。また、揮発性溶媒としてアルコール溶液以外の溶液を用いても良いし、アルコールとして、n−プロパノール以外のアルコール(例えば、エタノール)を用いるものとしても良い。さらに、次のような変形も可能である。
H1.変形例1:
上記実施形態では、カソードとして機能する第1の電極2は、触媒インク25を電解質膜1に直接的に塗布することにより形成され、アノードとして機能する第2の電極3は、フィルム基材402に形成された触媒インク25の塗布膜を転写することによって形成されていた。しかし、上記の第1と第2の電極2,3の形成方法は入れ替えられても良い。また、第1と第2の電極2,3は、ともに同じ方法で形成されるものとしても良い。即ち、第1と第2の電極2,3をともに、電解質膜への触媒インクの直接的な塗布によって形成するものとしても良いし、電解質膜への触媒インクの塗布膜の転写によって形成されるものとしても良い。
H2.変形例2:
上記実施形態では、攪拌装置200(図5)を用いて、触媒分散液とゲル体とを攪拌・混合していた。しかし、触媒分散液とゲル体との攪拌・混合は、攪拌装置200によって実行されなくとも良く、他の手段によって実行されるものとしても良い。例えば、プラネタリーミキサや、ビーズミル、ジェットミルなどによって実行されるものとしても良い。ただし、攪拌装置200であれば、効率的にゲル体の供給を行うことができるとともに、生成された触媒インクの収集も容易である。また、周速や材料供給速度の調整により、攪拌量の制御が容易に実行できる。
H3.変形例3:
上記の第1〜第3実施形態では、それぞれ異なる方法によって、アルコールとアイオノマーとの混合溶液に粘弾性を持たせてゲル体を作成していた。しかし、第1〜第3実施形態のそれぞれの方法を組み合わせて、アルコールとアイオノマーとの混合溶液に粘弾性を持たせるものとしても良い。例えば、アルコールとアイオノマーとの混合溶液を加熱するとともに、せん断力を印加して増粘させるものとしても良い。また、混合溶液に対するアルコールの添加量を増大させるとともに、混合溶液を加熱して粘弾性を調整するものとしても良い。さらに、アルコールとアイオノマーとの混合溶液を増粘できるのであれば、他の方法によって増粘させるものとしても良い。
H4.変形例4:
上記実施形態では、アイオノマーと揮発性溶媒とを混合した混合溶液を増粘させてゲル体を作成していた。しかし、その混合溶液を、増粘処理によってゲル状の状態にまで到達させることなく、触媒分散液と混合させるものとしても良い。即ち、アイオノマーと揮発性溶媒とを混合して加熱した後に、その混合溶液を触媒分散液と混合するものとしても良い。あるいは、アイオノマーと揮発性溶媒とを混合して、せん断力を印加した後に、その混合溶液を触媒分散液と混合するものとしても良い。
H5.変形例5:
上記実施形態では、触媒分散液に界面活性剤として添加されるアイオノマーと、ゲル体を作成するために用いられるアイオノマーとは、同じアイオノマーであった。しかし、触媒分散液に添加されるアイオノマーと、ゲル体を構成するアイオノマーとは、同一のアイオノマーでなくとも良く、構造的に異なっていても、同程度のイオン伝導性やEW値を有するような、同種のアイオノマーであれば良い。なお、この場合のI/Cは、それら互いに同種のアイオノマーの質量の合計を用いて算出される。
H6.変形例6:
上記実施形態では、触媒分散液とゲル体とを攪拌混合して触媒インクを作成していた。しかし、触媒分散液とゲル体に加えて、さらに、アイオノマー溶液を追加的に混合することにより、触媒インクを作成するものとしても良い。
H7.変形例7:
上記実施形態では、触媒電極のI/Cが1.0となるように触媒インクが作成されていた。しかし、触媒電極のI/Cは他の値であっても良い。
H8.変形例8:
上記実施形態では、ゲル体が所望の粘弾性を有するように調整されていた。しかし、ゲル体の粘弾性は調整されなくとも良い。ただし、ゲル体の粘弾性を調整すれば、触媒インクの塗布性能を、より確実に向上させることができるため好ましい。
H9.変形例9:
上記実施形態では、ダイコート法によって第1の電極2を形成していた。しかし、粘度の低い触媒インクを作成して、スプレー法により第1の電極2を形成するものとしても良い。この場合には、触媒インクは、スプレー法に適した粘度を有するように作成されることが好ましい。また、第1と第2の電極2,3を多孔質に形成するために、触媒インクに造孔剤を添加するものとしても良い。
H10.変形例10:
上記第5〜第7実施形態の製造工程では、加熱処理によって、アイオノマー溶液と揮発性溶媒との混合溶液を増粘させて、ゲル体を作成していた。しかし、上記第5〜第7実施形態の製造工程では、加熱処理以外の他の方法を用いてゲル体を作成するものとしても良い。例えば、上記第2〜第4で説明した方法により、ゲル体を作成するものとしても良い。
H11.変形例11:
上記第5〜第7実施形態の製造工程では、ステップS35において、高せん断力を印加する第1の攪拌処理と、低せん断力を印加する第2の攪拌処理とを実行していた。しかし、ステップS35では、さらに複数段階で異なるせん断力を印加する攪拌処理が実行されるものとしても良い。
H12.変形例12:
上記第1〜第4実施形態では、触媒インクの粘度μが、0.5Pa・s≦μ≦0.8Pa・sとなるように調整していた。しかし、上記第1〜第4実施形態においても、上記第5〜第7実施形態のように、触媒インクの貯蔵弾性率Giを、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量が1%のときに、5Pa≦Gi≦30Paとなるように調整するものとしても良い。
1…電解質膜
1a…電解質膜
2…第1の電極
3…第2の電極
5…膜電極接合体
7…第1のセパレータ
8…第2のセパレータ
9…流路溝
10…単セル
20…ゲル体
21…アイオノマー
22…溶媒分子
22c…捕捉溶媒分子
24…触媒担持粒子
25…触媒インク
25a…触媒インク
26…残留空間
27…触媒電極
27a…触媒電極
100…燃料電池
110…単セル
200…攪拌装置
201…容器
202…底面
203…側面
210…攪拌部
211…ロータ
212…攪拌子
213…回転軸
214…駆動モータ
221,222…第1と第2の供給配管
223…導出配管
300…塗布装置
301…電解質膜ロール
305…搬送路
306…搬送ローラ
310…膜供給部
311…駆動ローラ
320…インク塗工部
321…ダイコータ
330…乾燥部
401…ダイコータ
402…フィルム基材
403…塗布膜
MF…混合流体

Claims (15)

  1. 触媒電極の形成に用いられる触媒インクの製造方法であって、
    (a)触媒が担持された導電性粒子である触媒担持粒子を溶媒に分散させて触媒分散液を生成する工程と、
    (b)アイオノマーと揮発性溶媒とを混合してゲル体を作製する工程と、
    (c)前記触媒分散液と、前記ゲル体とを攪拌混合して触媒インクを作製する工程と、
    を備える、製造方法。
  2. 請求項1記載の製造方法であって、
    前記工程(a)は、前記触媒担持粒子の分散性を向上させるための界面活性剤を添加する工程を含み、
    前記界面活性剤は、前記工程(b)で用いられるアイオノマーと同種のアイオノマーである、製造方法。
  3. 請求項2記載の製造方法であって、
    前記工程(c)において作製される前記触媒インクに含有される前記導電性粒子の質量に対する、前記触媒インクに含有される前記アイオノマーの質量の比をαとするとき、
    前記工程(c)において作製される前記触媒インクに含有されるアイオノマーの重量に対する、前記工程(a)において前記触媒分散液に添加されるアイオノマーの重量の比率Wpは、5%≦Wp・α≦25・α%である、製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法であって、
    前記工程(b)は、加熱により前記ゲル体を増粘させる工程を含む、製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法であって、
    前記工程(b)は、せん断力を印加することにより前記ゲル体を増粘させる工程を含む、製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法であって、
    前記工程(b)は、前記揮発性溶媒はアルコール溶液であり、前記アルコール溶液におけるアルコールの濃度を調整することにより、前記ゲル体の粘弾性を調整する工程を含む、製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法であって、
    前記工程(b)において作製されるゲル体の貯蔵弾性率G1は、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量が1%のときに、125Pa≦G1≦425Pa である、製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法であって、
    前記工程(c)は、
    前記触媒分散液と、前記ゲル体とを容器内に供給し、
    前記容器内において回転する回転子により生じる遠心力を利用して、前記触媒分散液と前記ゲル体との混合流体に対して、前記容器の側面方向に向かう力を印加して、前記混合流体を前記側面に薄膜状に張り付かせた状態で攪拌することにより、前記触媒インクの粘度を調整する工程を含む、製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法であって、
    前記工程(c)は、前記触媒分散液と前記ゲル体との混合体に対して異なるせん断力を印加する複数の攪拌処理を含む、製造方法。
  10. 請求項9記載の製造方法であって、
    前記複数の攪拌処理は、低いせん断力を印加する第1の攪拌処理と、前記第1の攪拌処理の後に実行される、高いせん断力を印加する第2の攪拌処理とを含み、
    前記第1の攪拌処理の実行後における前記混合体の貯蔵弾性率G2は、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量が1%のときに、0Pa<G2≦10Pa である、製造方法。
  11. 請求項10記載の製造方法であって、
    前記工程(b)において作製されるゲル体の貯蔵弾性率G1は、1Hzの周波数の振動を印加し、歪み量が1%のときに、150Pa≦G1≦300Pa である、製造方法。
  12. 請求項2記載の製造方法であって、
    前記工程(c)では、前記触媒分散液に含まれるアイオノマーの重量に対する、前記ゲル体に含まれるアイオノマーの重量の比Wriが、Wri≧9 となるように、前記触媒分散液と前記ゲル体とを混合する、製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造方法であって、
    前記工程(c)において作製される触媒インクの貯蔵弾性率Giは、1Hzの振動の周波数を印加し、歪みが1%のときに、5Pa≦Gi≦30Pa である、製造方法。
  14. 燃料電池の製造方法であって、
    請求項1〜13のいずれか一項に記載の製造方法によって作製された触媒インクを、ダイコート法により塗布して触媒電極を形成する工程を備える、製造方法。
  15. 燃料電池の製造方法であって、
    請求項1〜1のいずれか一項に記載の製造方法によって作製された触媒インクを用いて触媒電極を形成する工程を備える、製造方法
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