JP2012142151A - 触媒ペーストの製造装置及び触媒ペーストの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高性能であり、かつ性能の個体差が小さい燃料電池用触媒ペーストの製造方法を提供する。
【解決手段】製造装置は、湿式ジェットミル1と、溶液供給ユニット3と、制御装置5を備えている。湿式ジェットミル1は、触媒と水との第1混合物を粉砕して第1粉砕物とする。また、湿式ジェットミル1は、第1粉砕物と、溶液供給ユニット3より供給された高分子電解質の溶液と混合して第2混合物とする。制御装置5は、湿式ジェットミル1に対し、第2混合物の粘度を調整しつつ、第2混合物を混練させる。これらにより、この製造装置では触媒ペーストを得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池のカソード極やアノード極といった電極を構成する触媒ペーストの製造装置及び触媒ペーストの製造方法に関する。
従来、特許文献1に示されているような膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)90を用いた燃料電池システムが知られている。このMEA90は、図3に示すように、ナフィオン(登録商標、Nafion(Du pont社製))等の固体高分子膜からなる電解質膜91と、この電解質膜91の一面に接合されて空気が供給されるカソード極93と、電解質膜91の他面に接合されて水素等の燃料が供給されるアノード極92とを有している。
カソード極93は、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等のガス透過性のある基材93bと、この基材の一面に形成されたカソード触媒層93aとからなる。カソード極93におけるカソード触媒層93a以外の部分は、基材93bであり、ここは非電解質側でカソード触媒層93aに空気を拡散するカソード拡散層とされている。
また、アノード極92も、上記の基材92bと、この基材92bの一面に形成されたアノード触媒層92aとからなる。アノード極92におけるアノード触媒層92a以外の部分も基材92bであり、ここは非電解質側でアノード触媒層92aに燃料を拡散するアノード拡散層とされている。
カソード触媒層93aやアノード触媒層92aは、図4に示すように、カーボンブラックからなる担体81aに白金(Pt)等の触媒金属微粒子81bを担持してなる無数の触媒81と、高分子電解質82とを含むものである。高分子電解質82としては電解質膜91と同様のものが用いられる。
また、カソード触媒層93aやアノード触媒層92aを形成する触媒ペーストは、例えば、触媒81と水とが混合された第1混合物と、高分子電解質82の溶液とを混練することにより得ることができる。この触媒ペーストでは、図4に示すように、触媒81の周りを覆うように高分子電解質81による層が形成される。また、触媒81と高分子電解質82の層との間には、親水層83が形成される。この触媒ペーストを上記の基材93b、92bの一面に塗布することにより、カソード触媒層93aやアノード触媒層92aが得られている。
そして、このMEA90を図示しないセパレータで挟むことにより最小発電単位である燃料電池のセルが構成され、このセルが多数積層されて燃料電池スタックが構成される。カソード触媒層93aには空気供給手段によって空気が供給され、アノード触媒層92aには水素供給手段等によって水素等が供給されるようになっている。こうして燃料電池システムが構成される。
このMEA90では、アノード触媒層92aにおける電気化学的反応により、燃料から水素イオン(H+;プロトン)と電子とが生成される。そして、プロトンは水分子を伴ったH3+の形で電解質膜91内をカソード触媒層93aに向かって移動する。この際、プロトンは親水層83を伝って移動する。また、電子は、燃料電池システムに接続された負荷を通り、カソード触媒層93aに流れる。一方、カソード触媒層93aにおいては、空気中に含まれる酸素とプロトンと電子とから水が生成される。このような電気化学的反応が連続して起こることにより、燃料電池システムは起電力を連続して発生することができる。
特開2009−104905号公報
上記のように、燃料電池システムに起電力を好適に発生させるためには、MEA90におけるカソード触媒層93aやアノード触媒層92aにおいて、電気化学的反応が円滑に行われる必要がある。このためには、電気化学的反応を円滑に行い得るカソード触媒層93aやアノード触媒層92aを得る必要がある。つまり、性能が高い触媒ペーストが求められる。
さらに、電気化学的反応を円滑に行うためには、カソード触媒層93aやアノード触媒層92aにおける電気化学反応についての個体差を可及的に小さくすることが必要となる。このため、触媒ペーストには、個々の性能にバラツキが少ないことも求められる。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、高性能であり、かつ性能の個体差が小さい触媒ペーストを製造することを解決すべき課題としている。
本発明の触媒ペーストの製造装置は、燃料電池用電極の触媒層を構成する触媒ペーストの製造装置であって、
触媒と水との第1混合物を粉砕して第1粉砕物とする粉砕手段と、
該第1粉砕物と高分子電解質の溶液との第2混合物を混練して触媒ペーストとする混練手段と、
該混練手段を制御して該第2混合物の粘度を調整する制御手段とを備えていることを特徴とする(請求項1)。
本発明の製造装置では、粉砕手段により、触媒と水との第1混合物を好適に粉砕することが可能となる。このため、第1粉砕物は、混練手段により、高分子電解質の溶液と好適に混合され易くなる。このため、この製造装置によって得られた触媒ペーストで形成された触媒層中では、触媒と高分子電解質の層とが共に好適な状態で存在し易くなる。
さらに、発明者の研究によれば、触媒ペーストの粘度が低すぎれば、高分子電解質の側鎖が多方向に向かって延び、触媒層中で親水層が分散して形成されると推察される。このため、このような触媒層においては、プロトン及び水が移動し難く、電気化学的反応が円滑に行われ難いこととなる。
この点、この製造装置では、制御手段が第2混合物の粘度を調整するため、得られた触媒ペーストでは粘度が好適な状態となる。このため、この製造装置によって得られた触媒ペーストでは、触媒と高分子電解質の層との間に親水層が連続して形成され易くなる。このため、カソード触媒層やアノード触媒層では、電気化学反応時において、連続した親水層を伝うことで、プロトンがより移動し易く、電気化学的反応が円滑に行われることとなる。
また、この製造装置によれば、触媒ペーストの粘度等の相違による性能のバラツキも生じ難くなる。このため、カソード触媒層やアノード触媒層における電気化学反応時の個体差を可及的に小さくすることができる。
したがって、本発明の製造装置によれば、高性能であり、かつ性能の個体差が小さい触媒ペーストを製造することが可能となる。
発明者の研究によれば、第1混合物中に含まれる水の量は、触媒が流動限界に近い状態なる量に基づくことがより好ましい。このような状態にある第1混合物によれば、より性能の高い触媒ペーストを得ることができる。
また、制御手段は、粉砕手段を制御して第1粉砕物の最大粒子径を調整することが好ましい(請求項2)。第1粉砕物の最大粒子径を調整することにより、第1粉砕物の粉砕状態を調整することが可能となる。このため、この製造装置では、触媒ペースト中における触媒の粒子径を調整することで、得られた触媒ペーストにおける性能のバラツキをより抑制することが可能となる。また、第1粉砕物の最大粒子径を調整することで、触媒ペーストの性能を任意に変化させることも可能となる。このため、この製造装置では、目的に応じて、性能が異なる触媒ペーストを製造することも可能となる。
粉砕手段としては、例えば、超音波ホモジナイザ等を採用することが可能である。また、混練手段としては、例えば、ボールミルや、スターラ、ビーズミル、ロールミル及びチャンバーを有する自転/公転式遠心攪拌機等を採用することができる。
さらに、粉砕手段と混練手段とで同じものを採用することができる。この場合、粉砕手段及び混練手段は湿式ジェットミルからなることが好ましい(請求項3)。湿式ジェットミルによれば、第1混合物を混合しつつ粉砕することが可能となる。また、湿式ジェットミルによれば、第1粉砕物と高分子電解質の溶液とをより効率よく混練することが可能となる。これらのため、高性能であり、かつ性能の個体差が小さい触媒ペーストをより大量に効率よく得ることが可能となるとともに、製造コストの低廉化も可能となる。
本発明の製造方法は、燃料電池用電極の触媒層を構成する触媒ペーストの製造方法であって、
触媒と水との第1混合物を粉砕して第1粉砕物とする粉砕工程と、
該第1粉砕物と高分子電解質の溶液との第2混合物を混練して触媒ペーストとする混練工程とを備え、
該混練工程中に該第2混合物の粘度を調整することを特徴とする(請求項4)。
本発明の製造方法によれば、触媒ペースト中に触媒と高分子電解質とが共に好適な状態で存在し易くなる。また、この製造方法によれば、触媒ペーストの粘度が好適な状態となる。また、この製造方法によれば、カソード触媒層やアノード触媒層における電気化学反応時の個体差を可及的に小さくすることができる。
したがって、本発明の製造方法によれば、高性能であり、かつ性能の個体差が小さい触媒ペーストを製造することが可能となる。
本発明の製造方法においては、粉砕工程中に第1粉砕物の最大粒子径を調整することが好ましい(請求項5)。この場合には、得られた触媒ペーストの性能のバラツキをより抑制することが可能となる。また、触媒ペースト中における触媒の大きさを変更することにより、目的に応じて性能が異なる触媒ペーストを製造することも可能となる。
実施例の製造装置を示す模式構造図である。 実施例の製造装置における、触媒ペーストの製造フロー図である。 従来及び実施例におけるMEAを示す模式断面図である。 従来及び実施例におけるMEAを示す模式拡大断面図である。 比較例の製造装置における、触媒ペーストの製造フロー図である。
以下、本発明を具体化した実施例及び比較例を図面を参照しつつ説明する。
(実施例)
実施例の製造装置は、図1に示すように、湿式ジェットミル1と、溶液供給ユニット3と、制御装置5を備えている。この湿式ジェットミル1が粉砕手段及び混練手段に相当する。また、制御装置5が制御手段に相当する。
湿式ジェットミル1は、原料タンク7と、粉砕ユニット9と、開閉弁11と、第1圧縮ポンプ13と、第1圧力計15と、粘度計16と、第1、2切替弁17、18と、粒度分布計24とを有している。開閉弁11、第1圧縮ポンプ13、第1圧力計15、粘度計16、第1、2切替弁17、18及び粒度分布計24にはそれぞれ公知のものが採用されており、第1、2切替弁17、18は分岐弁である。原料タンク7内には、後述の第1混合物や第1粉砕物の他、第2混合物を貯留可能になっている。粉砕ユニット9には流入口9aと流出口9bとが形成されている。また、粉砕ユニット9内には第1内部流路9dと第2内部流路9eとが設けられている。
原料タンク7と粉砕ユニット9の流入口9aとは上流流路19によって接続されている。この上流流路19には、開閉弁11と、第1圧縮ポンプ13と、第1圧力計15とが設けられている。第1圧力計15は、上流流路19内を流通する第1粉砕物や第2混合物の流通圧力を計測可能になっている。
また、粉砕ユニット9の流出口9bと第1切替弁17とは、第1下流流路20によって接続されている。第1下流流路20には、粘度計16が設けられており、第1下流流路20内を流通する第2混合物の粘度を計測可能になっている。また、第1切替弁17には、第1枝流路21aの一端側が接続されており、第1枝流路21a他端側は、粒度分布計24に接続されている。粒度分布計24は、第1枝流路21a内を流通する第1粉砕物の粒子径及び第1粉砕物中における粒子の分布を計測可能になっている。また、粒度分布計24には、第2枝流路21bの他端側が接続されている。
第1切替弁17と第2切替弁18とは第2下流流路22によって接続されている。第2切替弁18と原料タンク7とは接続流路23によって接続されている。第2下流流路22には、第2枝流路21bの一端側が接続されている。また、第2切替弁18には、抽出口25が接続されており、抽出口25の直下には、ペースト貯留タンク27が設けられている。
第1内部流路9d及び第2内部流路9eは、それぞれ粉砕ユニット9内の上流において、上流流路19と接続している。また、第1内部流路9d及び第2内部流路9eは、それぞれ粉砕ユニット9内の下流において、第1下流流路20と接続している。第2内部流路9eには、第3切替弁29が設けられている。第3切替弁29には供給流路31の一端側が接続されている。なお、第3切替弁29は、第1切替弁17と同じ構成である。
溶液供給ユニット3は、溶液貯留タンク33と、第2圧縮ポンプ35と第2圧力計37と、上記の供給流路31とで構成されている。溶液貯留タンク33内には、後述の高分子電解質82の溶液が貯留可能となっている。この溶液貯留タンク33は供給流路31の他端側が接続している。供給流路31には、第2圧縮ポンプ35と第2圧力計37とが設けられている。第2圧力計37は、供給流路31内を流通する高分子電解質82の溶液の流通圧力を計測可能になっている。なお、第2圧縮ポンプ35及び第2圧力計37は、それぞれ第1圧縮ポンプ13及び第1圧力計15と同じ構成である。
制御装置5には、上記の開閉弁11と、第1、2圧縮ポンプ13、35と、第1、2圧力計15、37と、第1〜3切替弁17、18、29と、粘度計16と、粒度分布計24とがそれぞれ回路39〜48を介して電気的に接続されている。制御装置5は、開閉弁11及び第1、2圧縮ポンプ13、35の作動制御を行う。また制御装置5は、粘度計16が計測した値を基に第2混合物の粘度を計測可能になっている。さらに、制御装置5は、粒度分布計24が計測した値を基に、第1粉砕物中における10μm以上の粗大粒子の含有率を計測可能になっている。制御装置5は、計測された上流流路19内の流通圧力や、第1粉砕物中における粗大粒子の含有率や、第2混合物の粘度を基に、第1圧縮ポンプ13の作動量の制御を行う。また、制御装置5は、第2圧力計37が計測した供給流路31内の流通圧力を基に第2圧縮ポンプ35の作動量の制御を行う。
以上のように構成された製造装置によれば、図2に示す製造フローに従い触媒ペーストを得ることが可能となる。
図2のステップS1に示すように、触媒ペーストを得るにあたり、まず、第1混合物を用意する。この第1混合物は、触媒81と水とで得られている。より具体的には、触媒81は、図4に示すように、カーボンブラックからなる担体81aに対し、Pt微粒子からなる触媒金属微粒子81bを担持密度50wt%で担持することで得られている。そして、触媒81の10倍の重量に相当する量の水を加えることで、この第1混合物が得られている。なお、上記の水の量が触媒81における流動限界の水量に相当する。この第1混合物を上記の原料タンク7内に注入する。
また、上記の溶液貯留タンク33内に貯留される高分子電解質82の溶液を用意する。この高分子電解質82の溶液は、溶液中の高分子電解質82の濃度が5質量%とされたものが用いられている。
図2に示すステップS2において、湿式ジェットミル1により第1混合物を粉砕する。具体的には、制御装置5が開閉弁11及の開制御を行うとともに、第1圧縮ポンプ13を作動させる。また、制御装置5は第1切替弁17を作動させ、第1下流流路20と第1枝流路21aとを連通させて、第1下流流路20及び第1枝流路21aと第2下流流路22とを直接的には非連通とさせる。さらに、制御装置5は第2切替弁18を作動させ、第2下流流路22と接続流路23とを連通させて、第2下流流路22及び接続流路23と抽出口25とを非連通とさせる。そして、制御装置5は、第3切替弁29を作動させ、開閉弁11と第2内部流路9eとを連通させて、開閉弁11及び第2内部流路9eと供給流路31とを非連通とさせる。
これにより第1混合物は、上流流路19内、第1下流流路20内、第1枝流路21a内、粒度分布計24内、第2枝流路21b内、第2下流流路22内及び接続流路23内の順で流通する(図1中の実線矢印参照)。この際、第1圧縮ポンプ13により、第1混合物は増圧され、高速で上流流路19内、第1下流流路20内、第1枝流路21a内、粒度分布計24内、第2枝流路21b内、第2下流流路22内及び接続流路23内を流通する。そして、上流流路19内を流通して粉砕ユニット9内に至った第1混合物は、第1内部流路9dと第2内部流路9eとに分岐して粉砕ユニット9内を流通する。第1、2内部流路9d、9eをそれぞれ流通した第1混合物は、粉砕ユニット9内の下流において合流する。この際、第1、2内部流路9d、9eをそれぞれ流通してきた第1混合物が互いに衝突する。これにより、第1混合物の粉砕が行われ、第1粉砕物が得られる。この第1粉砕物は第1下流流路20等を経て粒度分布計24に至り、上記の計測が行われることとなる。粒度分布計24による計測の後、第1粉砕物は接続流路23等を経て再び原料タンク7に至る。なお、原料タンク7と粉砕ユニット9との間を循環する過程において、第1混合物や第1粉砕物は同時に撹拌も行われることとなる。
そして、ステップS3において、制御装置5は粒度分布計24の計測値を基に、第1粉砕物における10μm以上の粗大粒子の含有率が0.5%以下であるか否かを判断する。この結果、第1粉砕物における10μm以上の粗大粒子の含有率が0.5%より大きい場合(ステップS3:NO)には、引き続き、ステップS2における湿式ジェットミル1による粉砕が行われる。
一方、第1粉砕物における10μm以上の粗大粒子の含有率が0.5%以下となった場合(ステップS3:YES)には、高分子電解質82の溶液の添加が行われる(ステップS4)。具体的には、制御装置5が、第3切替弁29を作動させ、供給流路31と第2内部流路9eとを連通させて、供給流路31及び第2内部流路9eと開閉弁11とを非連通とさせる。そして、制御装置5は第2圧縮ポンプ35を作動させる。この際、制御装置5は第2圧力計が計測した供給流路31内の流通圧力を基に第2圧縮ポンプ35の作動量を調整する。こうして、第1粉砕物中における触媒81と高分子電解質82の溶液中の高分子電解質82とが重量比で1:1となるように、高分子電解質82の溶液の添加を行う。なお、この状態において、制御装置5は、第1切替弁17を作動させて、第1下流流路20と第2下流流路22とを連通させて、第1下流流路20及び第2下流流路22と第1枝流路21aとを直接的には非連通とさせても良い。
これにより、溶液貯留タンク33内に貯留された高分子電解質82の溶液と、第1内部流路9d内を流通してきた第1粉砕物とが粉砕ユニット9内の下流において合流し、混練される(ステップS5)。こうして、第2混合物が得られる。なお、所定量の高分子電解質82の溶液の添加が終了した後は、制御装置5が再度、第3切替弁29を作動させ、開閉弁11と第2内部流路9eとを連通させて、開閉弁11及び第2内部流路9eと供給流路31とを非連通とさせる。また同時に、制御装置5は第2圧縮ポンプ35の作動を停止させる。
制御装置5は、粘度計16が計測した値を基に、第2混合物の粘度が設定範囲内であるか否かを判断する(ステップS6)。第2混合物の粘度が設定値の範囲外である場合(ステップS6:NO)には、引き続き、ステップS5における湿式ジェットミル1による混練が行われる。
一方、第2混合物の粘度が設定範囲内となった場合(ステップS6:YES)には、触媒ペーストが完成する(ステップS7)。触媒ペーストが完成することにより、制御装置5は、第2切替弁18を作動させる。これにより、第2下流流路22と抽出口25とが連通され、第2下流流路22及び抽出口25と接続流路23とが非連通とされる。こうして触媒ペーストが抽出口25から抽出され、ペースト貯留タンク27内に貯留される。
こうして得られた触媒ペーストを図3に示す基材93bに塗布し、カソード触媒層93aを形成した。基材93bは、PTFEで撥水処理を行ったカーボンブラックと、電子伝導性を有するカーボンクロスとを積層することで得られている。なお、カーボンペーパー等の上に、カーボンブラックとPTFEとの混合物からなる撥水層を設けて基材93bを構成することもできる。また、上記の触媒ペーストを基材93bへ塗布する方法としては、スクリーン印刷、スプレー法、インクジェット法等の手段を採用することができる。
そして、触媒ペーストが塗布された基材93bを乾燥させてカソード極93を得た。また、アノード極92も同様の工程によって製造した。
そして、アノード極92、電解質膜(ナフィオン膜:NR211)91及びカソード極93の順でこれらを積層し、140°C、加圧力40kgf/cm2でホットプレスして接合した。こうしてMEA90を製造した。
さらにこのMEA90を複数用意し、公知の方法によってこれらのMEA90積層させることにより燃料電池スタックを構成し、燃料電池システムを完成させた。
以上のように、この製造装置によれば、湿式ジェットミル1により、触媒81と水との第1混合物を好適に粉砕することが可能となっている。このため、第1粉砕物は、湿式ジェットミル1により、高分子電解質82の溶液と好適に混合され易くなる。このため、この製造装置によって得られた触媒ペーストで形成された触媒層中では、触媒81と高分子電解質81の層とが共に好適な状態で存在し易くなる。
さらに、この製造装置では、制御装置5が第2混合物の粘度を調整するため、得られた触媒ペーストでは粘度が好適な状態となっている。このため、この触媒ペーストで形成された触媒層中では、高分子電解質82の側鎖が触媒81に配向し、触媒層中で親水層83が連続して形成され易くなる。このため、この触媒ペーストで形成されたカソード触媒層93aやアノード触媒層92aでは、電気化学反応時において、連続した親水層83を伝うことで、プロトンがより移動し易く、電気化学的反応が円滑に行われることとなる。
また、この製造装置によれば、触媒ペーストの粘度等の相違による性能のバラツキも生じ難くなる。このため、カソード触媒層93aやアノード触媒層92aにおける電気化学反応時の個体差を可及的に小さくすることができ、ひいてはMEA90の個体差を可及的に小さくすることができる。
したがって、本発明の製造装置によれば、高性能であり、かつ性能の個体差が小さい触媒ペーストを製造することが可能となる。
(比較例)
比較例として、図5に示す製造フローに従い触媒ペーストを得た。まず、ステップS11として、第1混合物を用意した。この第1混合物は、上記の図2に示すステップS1において用意したものと同一の構成である。また、高分子電解質82の溶液も実施例と同じ構成のものを用意した。
次に、図5のステップS12に示すように、第1混合物の遠心撹拌を行う。この遠心撹拌を行うにあたっては、自転/公転式遠心攪拌機(キーエンス社製の「ハイブリッドミキサーHM−500」)を使用した。そして、遠心撹拌の後、第1混合物に対し、第1混合物中の触媒81の重量比190倍の水量の水を添加して、第1混合物の水量調節を行った(ステップS13)。さらに、水量調節を行った第1混合物に対し、超音波ホモジナイザを用いた湿式粉砕を開始し、第1混合物を第1粉砕物とした(ステップS14)。なお、このステップS14が粉砕工程に相当する。
続くステップS15では、上記の湿式粉砕の結果、第1粉砕物における10μm以上の粗大粒子の含有率が0.5%以下であるか否かを判断する。第1粉砕物における10μm以上の粗大粒子の含有率が0.5%より大きい場合(ステップS15:NO)には、引き続き、超音波ホモジナイザによる湿式粉砕が行われる。
一方、第1粉砕物における10μm以上の粗大粒子の含有率が0.5%以下となった場合(ステップS15:YES)には、湿式粉砕を終了し、第1粉砕物を3時間静置する。これにより、第1粉砕物中の触媒81等が沈澱し、上記のステップS13において添加した水が上澄み液となる。ステップS16では、この上澄み液の除去を行い、第1粉砕物の水量調整を行なう。
次に、水量調整を行った第1粉砕物について、上記の自転/公転式遠心攪拌機による遠心撹拌を行う(ステップS17)。この遠心撹拌を行なった後、第1粉砕物に対し、実施例と同じ割合で高分子電解質82の溶液の添加を行ない(ステップS18)、自転/公転式遠心攪拌機による遠心撹拌を行った(ステップS19)。こうして第2混合物を得た。なお、ステップS18及びステップS19が混練工程に相当する。
ステップS20では、第2混合物の粘度が設定範囲内であるか否かを判断する。第2混合物の粘度が設定値の範囲外である場合(ステップS20:NO)には、引き続き、ステップS19における自転/公転式遠心攪拌機による遠心撹拌を行なう。一方、第2混合物の粘度が設定範囲内となることで(ステップS20:YES)、触媒ペーストが完成する(ステップS21)。
こうして得られた触媒ペーストを用いて、実施例と同様の方法によりMEA90を製造した。また、このようにして得られたMEA90を複数用意し、公知の方法によってこれらのMEA90積層させることにより燃料電池スタックを構成し、燃料電池システムを完成させた。
この比較例の製造方法によっても、高性能であり、かつ性能の個体差が小さい触媒ペーストを製造することが可能である。その一方で、図2に示す、実施例の製造装置による触媒ペーストの製造フローと比較すると、実施例の製造装置による場合の方が触媒ペーストの製造における工程数(ステップ数)が少なくなっている。
実施例の製造装置では、粉砕手段及び前記混練手段として湿式ジェットミルを採用することにより、実施例の製造装置では、第1混合物の撹拌と粉砕とが同時に行われることなる。また、湿式ジェットミルを採用することにより、第1粉砕物質に対する高分子電解質82の溶液の混練も同時に行われることとなる。さらに、湿式ジェットミルを採用することにより、比較例の製造方法におけるステップS13、S16のように、第1混合物又は第1粉砕物に対する水量調整も別途に行う必要がなくなる。これらのため、粉砕手段及び前記混練手段として湿式ジェットミルを採用することにより、高性能であり、かつ性能の個体差が小さい触媒ペーストをより大量に効率よく得ることが可能となっており、ひいては、高性能のMEA90や燃料電池システムの製造コストの低廉化も可能となっている。
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
本発明は、電気自動車等の移動用電源、あるいは据え置き用電源に利用可能である。
92a、93a…触媒層(92a…アノード触媒層、93a…カソード触媒層)
81…触媒
1…湿式ジェットミル(粉砕手段、混練手段)
82…高分子電解質
5…制御装置(制御手段)

Claims (5)

  1. 燃料電池用電極の触媒層を構成する触媒ペーストの製造装置であって、
    触媒と水との第1混合物を粉砕して第1粉砕物とする粉砕手段と、
    該第1粉砕物と高分子電解質の溶液との第2混合物を混練して触媒ペーストとする混練手段と、
    該混練手段を制御して該第2混合物の粘度を調整する制御手段とを備えていることを特徴とする触媒ペーストの製造装置。
  2. 前記制御手段は、前記粉砕手段を制御して前記第1粉砕物の最大粒子径を調整する請求項1記載の触媒ペーストの製造装置。
  3. 前記粉砕手段及び前記混練手段は湿式ジェットミルからなる請求項1又は2記載の触媒ペーストの製造装置。
  4. 燃料電池用電極の触媒層を構成する触媒ペーストの製造方法であって、
    触媒と水との第1混合物を粉砕して第1粉砕物とする粉砕工程と、
    該第1粉砕物と高分子電解質の溶液との第2混合物を混練して触媒ペーストとする混練工程とを備え、
    該混練工程中に該第2混合物の粘度を調整することを特徴とする触媒ペーストの製造方法。
  5. 前記粉砕工程中に前記第1粉砕物の最大粒子径を調整する請求項5記載の触媒ペーストの製造方法。
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