JP2009104905A - 燃料電池の電極用ペースト、電極及び膜電極接合体並びに燃料電池システムの製造方法。 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】触媒担持カーボンを真空乾燥した後、(水の重量)/(触媒金属を除いたカーボンのみの重量)の値が16〜27の範囲となるように添加割合を制御しながら加え、公転しながら自転する遠心撹拌装置によって混合撹拌する(第1工程)。これにより、各触媒担持カーボンの表面から空気が強制的に追い出され、カーボン粉末の隙間にも水が充填される。そして、さらに第2工程として、ナフィオン溶液を添加し、同様の撹拌を行って、電極用ペーストを得る。
【選択図】図1
Description
また、触媒担持カーボン側に配向し、かつ連通する親水性のパスが形成されていないため、カソード触媒層で生成した水が固体電解質膜側へ逆拡散し難くなる。このため、水がカソード触媒層内に滞留し、ガス拡散を阻害する要因となる。
さらには、触媒担持カーボンと高分子固体電解質とが大きな凝集塊(アグロメレート)となりやすく、アグロメレート内部の触媒担持カーボンが電極反応に寄与できなくなり、無駄となってしまう。
また、高分子電解質の疎水性部分は空孔側に配向して空孔側が疎水性になるため、水が溜まり難く、ブラッディングが防止され、ガス拡散が阻害され難くなる。このため、燃料電池システムは、MEAのアノード極、電解質膜及びカソード極でH3Oが良好に移動し、軽加湿又は無加湿でありながら高出力が得られる。
これを用いて燃料電池を製造した場合の出力が十分に得られない場合があった。
カーボン粉末に触媒金属を担持してなる触媒担持カーボンと、各該触媒担持カーボンを互いに結合するとともにガス透過性を有する基材に結合するための高分子電解質の溶液とを混合して電極用ペーストを得る燃料電池の電極用ペーストの製造方法であって、
前記触媒担持カーボンと水とを、(水の重量)/(触媒金属を除いたカーボンのみの重量)の値に基づいて添加割合を制御しながら混合する第1工程と、
該第1工程で得られた混合物に前記高分子電解質の溶液を混合し、電極用ペーストを得る第2工程と、を備えていることを特徴とする。
ここで、触媒担持カーボンに添加される水は、触媒を担持しているカーボンの表面に吸着させて親水性とするために加えられるものであり、そのために必要な水の添加量は、触媒金属を除いたカーボンのみの重量に比例すると考えられる。また、水はカーボンの表面に吸着することから、水の必要な添加量はカーボンの比表面積にも影響されると考えられる。このため、(水の重量)/(触媒金属を除いたカーボンのみの重量)の値に基づいて添加割合を制御すれば、触媒担持カーボンの表面を親水性とするのに十分な量の水が確保されるとともに、余分な水が極力少ない状態とすることができる。
しかも、(水の重量)/(触媒金属を除いたカーボンのみの重量)の値に基づいて添加割合を制御することにより、触媒担持カーボンの触媒金属の重量比が異なる触媒を使用した場合でも、同じ条件の電極ペーストが作製できるので、高分子電解質のプロトン交換基が配向して連続した親水層が形成された構造の燃料電池の電極を安定して形成することができる。
(水の重量)/(触媒金属を除いたカーボンのみの重量)の値が16未満では、カーボンの表面を十分に親水性にすることができない。このため、カーボンの粒子表面に、高分子電解質のプロトン交換基が高度に配向した状態で付着させることができず、連続した親水層が形成されたず、生成水のカソード触媒層内に滞留し、フラッディングや逆拡散不足による乾燥によって性能の低下を招く。
また、(水の重量)/(触媒金属を除いたカーボンのみの重量)の値が27を超えても燃料電池の出力が低下する。この理由は、次のように考えられる。すなわち、(水の重量)/(触媒金属を除いたカーボンのみの重量)の値が27を超えた場合、触媒担持カーボンの表面を親水性とするための水以外の余分な水が多くなり、余分な水の存在により、高分子電解質自体が凝集してカーボン担体に対して十分広がらず連続性のある親水層が形成できなかったり、さらには、触媒担持カーボンを内包した凝集塊を形成して電気的に孤立した触媒担持カーボンが増加するなど、目的とする触媒層構造を形成できなくなる。その結果、同様にフラッディングや乾燥により、性能の低下を招く。
以上のように、添加する水の量すなわち、(水の重量)/(触媒金属を除いたカーボンのみの重量)の値が16未満や27を超えた場合には、連続性ある親水層が形成されないことが原因による、フラッディングによるガス供給不足や、乾燥によるプロトン伝導性低下が発生し、燃料電池の出力が低下する。
上記電極用ペーストを前記基材の一面に塗布して電極を得ることを特徴とする。塗布のためには印刷等の手段を採用することができる。
<空気極側電極用ペーストの製造>
燃料電池に用いる空気極側電極用ペーストは、図1に示すフローチャートに従って製造した。
まず、ステップS1において、触媒担持カーボンとして、Pt担持率60wt%のケッチエンブラック600JD担体を用意した。
実施例1の燃料電池に用いる水素極側電極用ペーストは、触媒担持カーボンとしてPt40wt%担持率のケッチエンブラックEC担体を用い、この触媒担持カーボン1gに対して水を12g添加した。その他の製造条件については、上記空気極側電極用ペーストの製造方法と同様であり、説明を省略する。
実施例2では、触媒担持カーボンとして、Pt担持率40wt%のケッチエンブラック600JD担体を用いた。そして、空気極側電極用ペーストの製造における上記ステップS2において、触媒担持カーボン1gに対して水12gを添加した。その他の条件については実施例1と同様であり、説明を省略する。また、水素極側電極用ペーストについても、実施例1と同じ製造方法であり、説明を省略する。
比較例1では、空気極側電極用ペーストの製造における上記ステップS2において、触媒担持カーボン1gに対して水4gを添加した。その他の条件については、実施例1における空気極側電極用ペーストの製造方法と同様であり、説明を省略する。また、水素極側電極用ペーストは、実施例1と同じ方法によって製造した。
比較例2では、空気極側電極用ペーストの製造における上記ステップS2において、触媒担持カーボン1gに対して水12gを添加した。その他の条件については、実施例1における空気極側電極用ペーストの製造方法と同様であり、説明を省略する。また、水素極側電極用ペーストは、実施例1と同じ方法によって製造した。
比較例3では、触媒担持カーボンとして、Pt担持率40wt%のケッチエンブラック600JD担体を用いた。また、空気極側電極用ペーストの製造における上記ステップS2において、触媒担持カーボン1gに対して水12gを添加した。その他の条件については、実施例1における空気極側電極用ペーストの製造方法と同様であり、説明を省略する。また、水素極側電極用ペーストは、実施例1と同じ方法によって製造した。
上記空気極側電極用ペースト及び水素極側電極用ペーストを用いて燃料電池単層セルを製造し、その評価を行った。
すなわち、上記の方法で得られた空気極側電極用ペーストをカーボンクロスの表面にPt担持量が0.2〜0.5mg/cm2となるように印刷して、乾燥する。こうして空気極側拡散層を得た。同様の方法により、水素極側電極用ペーストを用いて水素極側拡散層を製造した。
なお、拡散層の上に印刷して反応層を形成するかわりに、ポリテトラフルオロエチレン製のシート上に上記触媒ペーストで印刷し、乾燥後、剥離させて自立した反応層膜を作製し、これを拡散層と熱圧着させて反応層を形成してもよい。
(実施例1と比較例1,2との比較)
上記実施例1及び比較例1,2で製造した燃料電池用電極ペーストを用い、上記のようにして構成した燃料電池単層セル20の電流とセル電圧との関係を測定した。測定環境はセル温度50℃、湿度100%RH(以下「フル加湿状態」という)とした。
その結果、実施例1では比較例1,2と比較して、セル電圧の低下割合が少なく、低加湿状態でのセル電圧は、フル加湿状態でのセル電圧のおよそ85%を維持していた。
上記実施例2及び比較例3で製造した燃料電池用電極ペーストを用い、上記のようにして構成した燃料電池スタックの電流とセル電圧との関係をフル加湿状態にて測定した。
その結果、図9に示すように、比較例3は実施例2と比較して、セル電圧が低く、特に低加湿状態においてその傾向が著しかった。
その結果、実施例2では比較例3と比較して、セル電圧が高く、低加湿状態でのセル電圧は、フル加湿状態でのセル電圧のおよそ70%を維持していた。
また、実施例2と比較例2とを比較した場合、触媒担持カーボン1gあたりの水添加量は12gと同じであるにもかかわらず、比較例2ではセル電圧の低下を招いており(図7、図9参照)、触媒担持カーボンの重量と水との割合で制御を行っても、高出力が安定して得られる燃料電池の電極用ペーストを製造することはできないことが分かった。
上記実施例1〜3の電極ペースト用いて、次のようにMEAを製造することができる。まずガス透過性を有する基材としてカーボンクロスを用意し、両面にカーボンブラックとPTFEとの混合物からなる撥水層を付与した拡散層を形成する。この後、上記電極用ペーストを用いてカソード触媒層及びアノード触媒層の印刷を行なう。そして、印刷後の基材を乾燥させ、溶液のアルコール及び水を蒸発させてカソード極及びアノード極を得る。
こうして得られたMEAを用いて、次のような燃料電池システムを構築することができる。この燃料電池システムでは、図11に示すセル70が複数用いられている。各セル70は膜電極接合体(MEA)71と一対のセパレータ72とを備えている。
また、カソード極75は、電解質膜73側に設けられるカソード触媒層75aと、カソード触媒層75aの非電解質膜側に接合され、カソード触媒層75aに空気を拡散するカソード拡散層75bとからなる。
10…チャンバー
50…電極用ペースト
12…水
2、13… 電極(2…アノード極、13…カソード極)
11…電解質膜
10…膜電極接合体(MEA)
74b…アノード拡散層
75b…カソード拡散層
79、77…空気供給手段、水素供給手段(79…ブロア、77…空気室)
78、76…燃料供給手段(78… 水素ボンベ、76… 水素室
Claims (9)
- カーボン粉末に触媒金属を担持してなる触媒担持カーボンと、各該触媒担持カーボンを互いに結合するとともにガス透過性を有する基材に結合するための高分子電解質の溶液とを混合して電極用ペーストを得る燃料電池の電極用ペーストの製造方法であって、
前記触媒担持カーボンと水とを、(水の重量)/(触媒金属を除いたカーボンのみの重量)の値に基づいて添加割合を制御しながら混合する第1工程と、
該第1工程で得られた混合物に前記高分子電解質の溶液を混合し、電極用ペーストを得る第2工程と、を備えていることを特徴とする燃料電池の電極用ペーストの製造方法。 - 前記第1工程において、(水の重量)/(触媒金属を除いたカーボンのみの重量)の値が16〜27となるように添加割合を制御することを特徴とする請求項1記載の燃料電池の電極用ペーストの製造方法。
- 前記第1工程において、(水の重量)/(触媒金属を除いたカーボンのみの重量)の値に基づく添加割合の管理範囲を、カーボン粉末の比表面積に比例する値を乗じて補正することを特徴とする請求項1記載の燃料電池の電極用ペーストの製造方法。
- 前記第1工程は、触媒担持カーボンと水とを収容したチャンバーを公転させることによって混合物に遠心力を付与しつつ、該チャンバーを自転させることによって該混合物を自身の自重で撹拌混合することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の燃料電池の電極用ペーストの製造方法。
- 請求項1乃至4の方法により製造してなることを特徴とする燃料電池の電極用ペースト。
- ガス透過性を有する基材と、該基材の一面に形成された触媒層とを有し、該触媒層は、カーボン粉末に触媒金属を担持してなる触媒担持カーボンと、各該触媒担持カーボンを互いに結合するとともに該基材に結合する高分子電解質とを含む燃料電池の電極の製造方法であって、
請求項5記載の電極用ペーストを前記基材の一面に塗布して電極を得ることを特徴とする燃料電池の電極の製造方法。 - 電解質層と、該電解質層の一面に接合されて空気が供給されるカソード極と、該電解質層の他面に接合されて燃料が供給されるアノード極とを有する燃料電池の膜電極接合体の製造方法において、
請求項6記載の電極を前記カソード極及びアノード極の少なくとも一方に用いることを特徴とする燃料電池の膜電極接合体の製造方法。 - 前記カソード極及び前記アノード極の少なくとも一方は、前記基材の他面に形成され、前記空気又は前記燃料を拡散する拡散層を有することを特徴とする請求項7記載の燃料電池の膜電極接合体の製造方法。
- 膜電極接合体と、前記カソード極に空気を供給する空気供給手段と、前記アノード極に前記燃料を供給する燃料供給手段とを備えた燃料電池システムの製造方法において、
請求項7又は8記載の膜電極接合体を用いることを特徴とする燃料電池システムの製造方法。
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