JP5879161B2 - 水蒸気分離膜及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、水蒸気分離膜及びその製造方法に関する。
水及び有機物の混合溶液から水を除去するプロセス(以下、脱水プロセス)は、様々な化学プロセスにおいて、多く用いられてきた。
従来、その脱水プロセスとして、蒸留による脱水方法が用いられている。しかし、水と、エタノール又はイソプロパノール等の有機化合物との混合物から、水を蒸留により分離する場合、有機化合物の濃度が一定濃度以上になると、共沸状態となるため、通常の蒸留法では分離が十分でないという問題がある。また、共沸状態となる場合は、ベンゼンのようなエントレーナーを使用した共沸蒸留法を用いる必要があるが、共沸蒸留法は、第3成分が必要となることに加えて、エネルギーコストも高くなる傾向がある。
そのため、蒸留法に代わる分離方法として、水蒸気分離膜を用いた分離方法である、パーベーパレーシヨン(以下、PV法)法や、ベーパーパーミエーション(以下、VP法)法が新たな分離法として注目されている。
PV法とは、膜の一次側(原液側)に分離対象である液体の混合物を供給し、膜の二次側(透過側)を減圧にすること、又はキヤリヤガスを通気することによって、分離すべき物質を気体の状態で、膜を透過させる分離方法である。
他方、VP法とは、浸透気化法における液体の混合物を、その液体混合物の沸点以上に加熱し、膜の一次側に混合蒸気として供給する方法である。膜を透過した気体又は蒸気は、二次側にて、冷却、凝縮させることによって、液体として分離回収されることになる。
PV法、VP法ともに、水蒸気分離膜を用いた分離法であり、気体の状態における膜の透過速度が、分離対象物によって、差があることを利用した分離方法である。このPV法やVP法に好適な水蒸気分離膜として、様々な材質が提案されている。
非特許文献1では、PV法用の水蒸気分離膜として、高分子膜が提案されている。また、ゼオライト膜等の無機材料からなる水蒸気分離膜が注目されている(特許文献1、非特許文献2等参照)。
特開平7−185275号公報
Peter D. Chapman他,"Membranes for dehydration of solvent by pervapoation",Journal of Membrane Science,318,(2008),5−37 Shiguang Li 他,"Pervaporation of Water/THF Mixtures Using Zeolite Membranes",Ind.Eng.Chem.Res.,2001,40,457
しかしながら、水蒸気分離膜には、繰り返しの使用に対しても分離性能を保つことが求められている。さらに、分離性能が高く、かつ、透過流速が十分な水蒸気分離膜が求められている。
そこで、本発明は、耐久性に優れ、分離性能が高く、かつ、透過流速が十分な水蒸気分離膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、多孔性支持膜に水蒸気分離性樹脂層が積層された水蒸気分離膜であり、多孔性支持膜は、有機高分子樹脂と無機物粒子からなり、多孔性支持膜の水蒸気分離性樹脂層が積層されている面に開孔が形成され、無機物粒子が少なくともこの開孔に存在することを特徴とする水蒸気分離膜とすることで、水蒸気分離性樹脂が薄く、かつ、均一であり、さらに、耐久性が高いことを見出し、本発明を成すに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]多孔性支持膜と、多孔性支持膜上に積層された水蒸気分離性樹脂層とを備える水蒸気分離膜であり、多孔性支持膜は、有機高分子樹脂と無機物粒子とを含み、多孔性支持膜の水蒸気分離性樹脂層が積層されている面に開孔が形成され、無機物粒子の少なくとも一部が開孔に存在し、多孔性支持膜の水蒸気分離性樹脂層が積層されている面における開孔率(A)に対する、無機物粒子が水蒸気分離性樹脂側の面に占める面積率(B)の比(B/A)が、0.2〜4であり、水蒸気分離性樹脂層は、窒素の透過係数が1〜900barrerであり、かつ、窒素に対する水素の分離係数が2〜15である、水蒸気分離膜。
[2]多孔性支持膜が内部に連通孔を有し、連通孔の一部が開孔を形成している、[1]に記載の水蒸気分離膜。
[3]多孔質支持膜が、無機物粒子を25〜85質量%含む、[1]又は[2]に記載の水蒸気分離膜。
[4]多孔性支持膜は、窒素透過速度が3500GPU以上であり、バブルポイント法による圧力が650kPa以上である、[1]〜[3]のいずれか一つに記載の水蒸気分離膜。
[5]無機物粒子は、平均一次粒径が0.005〜0.5μmであり、比表面積が30m/g以上500m/g以下である、[1]〜[4]のいずれか一つに記載の水蒸気分離膜。
[6]無機物粒子が、シリカである、[1]〜[5]のいずれか一つに記載の水蒸気分離膜。
[7]有機高分子樹脂が、熱可塑性樹脂である、[1]〜[6]のいずれか一つに記載の水蒸気分離膜。
[8]熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン及びハロゲン化ポリオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、[7]に記載の水蒸気分離膜。
[9]水蒸気分離性樹脂が、フッ素樹脂を含む、[1]〜[8]のいずれか一つに記載の水蒸気分離膜。
[10]フッ素樹脂が、パーフルオロ2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールとテトラフロオロエチレンとの共重合体、ポリパーフルオロメチルビニルエーテル、ポリ弗化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、及び、ポリクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種である、[9]に記載の水蒸気分離膜。
[11]水蒸気分離膜の形状が中空状である、[1]〜[10]のいずれか一つに記載の水蒸気分離膜。
[12]窒素に対する水素の分離係数が3以上15未満である、[1]〜[11]のいずれか一つに記載の水蒸気分離膜。
[13][1]〜[12]のいずれか一つに記載の水蒸気分離膜を用いたパーベーパレーション用水蒸気透過膜。
[15][1]〜[13]のいずれか一つに記載の水蒸気分離膜の製造方法であって、有機高分子樹脂、無機物粒子及び可塑剤を含む混合物を溶融混練する工程と、溶融混練した混合物を成形して成形体を得る工程と、成形体から、可塑剤を抽出して多孔性支持膜を得る工程と、多孔性支持膜の表面に、水蒸気分離性樹脂層を積層する工程と、を含む水蒸気分離膜の製造方法。
本発明によれば、耐久性に優れ、分離性能が高く、かつ、透過流速が十分な水蒸気分離膜及びその製造方法を提供することができる。また、本発明の水蒸気分離膜は、PV法やVP法用の水蒸気分離膜として好適に使用することができる。
本実施形態の水蒸気分離膜の概念断面図である。 本実施形態の水蒸気分離膜の概念表面図である。 実施例で用いた測定装置の概念図である。 実施例で用いた測定装置の概念図である。 実施例で得られた多孔性支持膜のSEM写真である。 実施例で得られた多孔性支持膜のSEM写真である。 実施例で得られた多孔性支持膜のSEM写真である。 実施例で得られた水蒸気分離膜のSEM写真である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。また、添付図面は実施形態の一例を示したものであり、形態はこれに限定して解釈されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。なお、図面中上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本実施形態の水蒸気分離膜は、多孔性支持膜と、該多孔性支持膜上に積層された水蒸気分離性樹脂層とを備え、多孔性支持膜は、有機高分子樹脂と無機物粒子とを含み、多孔性支持膜の水蒸気分離性樹脂層が積層されている面に開孔が形成され、無機物粒子の少なくとも一部が開孔に存在することを特徴とする水蒸気分離膜である。
〔多孔性支持膜〕
本実施形態において、多孔性支持膜は、有機高分子樹脂と無機物粒子とを含み、多孔質構造を有する。多孔性支持膜の表面には、開孔が形成され、その開孔に無機物粒子の一部が存在している構造を有する。
〔有機高分子樹脂〕
本実施形態において、有機高分子樹脂は、多孔性支持膜の多孔質構造の骨格部分となる。本実施形態において、この有機高分子樹脂を含む骨格同士の間に、後述する連通孔が形成されることが好ましい。
この多孔質構造は、後述する製造方法において、有機高分子樹脂を溶融することで形成することが可能である。有機高分子樹脂としては、熱可塑性樹脂であることが好ましい。ここで、熱可塑性樹脂とは、ガラス転移温度又は融点まで加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる樹脂のことである。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン及びハロゲン化ポリオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。
ポリオレフィンは、熱可塑性ゆえに取り扱い性に優れ、かつ強靱であるため機械的強度に優れることから、多孔性支持膜の構造を形成する基材として好ましい。ポリオレフィンの原料である単量体のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン等が挙げられる。本実施形態において、ポリオレフィンは、上記単量体単独の重合体であっても、2種以上を含む共重合体であってもよい。
また、ポリオレフィンは、上記オレフィン単量体と、他の単量体との共重合体であってもよい。他の単量体としては、ビニルアルコール、テトラフルオロエチレン、ヘキサン、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレン等が挙げられる。
上記ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの混合物が好ましい。これらのポリオレフィンは、結晶性が高いため、耐水性(湿潤したときの機械的強度)が高く、さらに、疎水性、機械的強度、化学的安定性(耐薬品性等)が高い。加えて、成形性も良好であり、製造が容易となる。特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び両者の混合物は、成形性がより良好であり、かつ、ハロゲンを含まないために廃棄処理が容易であるため、特に好ましい。
ハロゲン化ポリオレフィンは、上記ポリオレフィンの水素原子の一部又は全部がハロゲン原子に置換されたポリマーである。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましく、フッ化ポリオレフィンとして、具体的には、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。
本実施形態において、有機高分子樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、10000以上、1000000未満であることが好ましい。有機高分子樹脂のMwが、10000以上であれば、得られる多孔性支持膜の伸度が大きく、機械的強度が高くなる。Mwが、1000000未満であれば、溶融時の流動性が高く成形性しやすい傾向にある。
また、有機高分子樹脂として、ポリオレフィンを用いる場合、このポリオレフィンの数平均分子量(Mn)は15000以上であり、Mwは600000以下であることがより好ましい。
また、有機高分子樹脂として、ハロゲン化ポリオレフィンを用いる場合、Mwが100000以上1000000未満であることが特に好ましい。特に、ハロゲン化ポリオレフィンが、ポリフッ化ビニリデン樹脂、又はフッ化ビニリデン共重合体を含むときは、Mwが100000以上1000000未満であることが特に好ましい。
〔無機物粒子〕
本実施形態の無機物粒子は、いずれの無機化合物からなる粒子であってもよい。例えば、金属の酸化物、金属の複合酸化物、金属、炭素、炭化金属等である。なお、本実施形態に係る金属には、珪素及びゲルマニウムも包含される。金属の酸化物としては、具体的には酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化第一鉄、酸化セシウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、燐酸亜鉛、酸化ホルミウム等が挙げられる。金属の複合酸化物としては、具体的にはゼオライト、タルク等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはシリカ、タルク、アルミナ、マイカである。これら無機化合物粒子は1種類で使用されても、2種類以上で使用されてもいずれであってもよい。上記無機物粒子は従来公知の製造方法で得られるものであれば、いずれであってもよい。例えば気相法、液相法、及び/又はこれらの方法で得られた無機化合物を粉砕することで無機物粒子が得られてもよい。勿論これ以外の方法であってもよい。
好ましい無機物粒子の一つであるシリカを具体例として、更に詳細に説明する。
一般に、シリカは、天然シリカと合成シリカに分類される。
合成シリカの製造方法としては、大別すると湿式法と乾式法の二種類の合成方法がある。湿式法とは、珪酸ソーダと鉱酸との反応により合成する方法であり、例えば、アルコキシシランの加水分解によるもの等がある。乾式法とは、ハロゲン化珪素の酸水素炎中での高温加水分解により合成する方法等がある。合成シリカとしては、非晶質であることが好ましい。
非晶質シリカは、水とアルカリ金属シリケートとの混合物に60〜90℃で酸を添加することにより製造されることが好ましい。水及び/又はアルカリ金属シリケートは別々に加熱してもよいし、同時に混合して加熱してもよい。アルカリ金属シリケートは、メタ又はジシリケートのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩等であり、特に制限されない。また反応媒体として硫酸ナトリウム等の電解質を用いることが好ましい。
本実施形態において、好ましい合成シリカのもう一つの具体例として、ヒュームドシリカが挙げられる。このようなヒュームドシリカは、特開2000−86227号公報等に記載のように、四塩化珪素と水素、酸素、水を用いて高温加水分解する乾式法により製造することができる。具体的には、揮発性珪素化合物を原料として、これを可燃ガス及び酸素を含有する混合ガスと共にバーナーに供給して燃焼させた火炎中で1000〜2100℃の高温で加熱分解することにより得られる。
原料となる揮発性珪素化合物としては、例えば揮発性のハロゲン化珪素化合物が好ましく、SiH、SiCl、CHSiCl、CHSiHCl、HSiCl、(CHSiCl、(CHSiCl、(CHSiH、(CHSiH、アルコキシシラン等が挙げられる。また、可燃ガス及び酸素を含有する混合ガスは水を生成するものが好ましく、水素やメタン、ブタン等が適当であり、酸素含有ガスとして酸素、空気等が用いられる。
揮発性珪素化合物と混合ガスの量比は、揮発性珪素化合物のモル当量を1モル当量として、酸素及び可燃性ガスである水素を含む混合ガス中の酸素のモル当量2.5〜3.5及び水素のモル当量を1.5〜3.5の範囲に調整する。なお、ここで酸素と水素についてのモル当量とは、原料化合物である揮発性珪素化合物と反応する化学量論的な当量を指している。また、メタン等の炭化水素燃料を用いる場合は、水素換算のモル当量を指す。
また、ヒュームドシリカの中でも、疎水性ヒュームドシリカがより好ましい。本実施形態において、疎水性ヒュームドシリカとは、粉体の状態で、完全に濡れるメタノールの容量%(MW値)が30%以上であることを意味する。なお、ここで規定する「粉体の状態で、完全に濡れるメタノールの容量%(MW値)とは、メタノールウエッタビリティー法により測定した値である。
疎水性ヒュームドシリカを用いることにより、シリカ同士の凝集がなくなるため、多孔性支持膜中に均一に存在させることができる。また、親水性のシリカを用いる場合に比べて、疎水性である有機高分子樹脂や、製造する際に使用する可塑剤との親和性が増加するので、無機物粒子がミクロに均一に分散される。その結果、より微細で均一な多孔質構造が、三次元に形成される。微細で均一な多孔質構造とは、例えば、マクロボイドと呼ばれる孔の大きさが大きいものが存在する構造や、ダイラインと呼ばれるクラック状の溝が存在する構造を含まないことである。
本実施形態において、米国ナノフェーズテクノロジー社が製造した合成シリカや、米国Hybrid Plastics社が有機−無機ハイブリッド法により製造しているPolyhedral Oligomeric Silsesquioxane(POSS)もまた好ましい合成シリカの具体例である。
本実施形態において、無機物粒子が、珪素含有化合物で表面被覆されているものも好ましい。無機物粒子を珪素含有化合物で表面被覆する方法は、従来公知の方法であればいずれの方法であっても差し支えない。
珪素含有化合物の表面被覆剤の具体例として、シランカップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤の具体例としては、ジメチルジクロロシラン処理、ヘキサメチルジシラザン処理、オクチルシラン処理、メタクリロキシシラン処理、アミノシラン処理、ヘキサメチルジシラザン処理、ジメチルシリコーンオイル処理、ジフェニルジクロロシラン処理、ヘキサフェニルジシラザン処理、フェニルアルキルシラン処理、フェニルメタクリロキシシラン処理、フェニルアミノシラン処理、フェニル基含有シリコーンオイル処理したものが挙げられる。勿論これ以外であっても無機化合物の表面を被覆する珪素含有化合物であればいずれであってもよい。
上記米国Hybrid Plastics社のPOSSは、低分子化合物又は重合体で表面被覆された合成シリカを含んでおり、例えば、アルコール、フェノール、アミン、クロロシラン、エポキシ、エステル、フルオロアルキル、ハライド、イソシアネート、メタクリレート、アクリレート、シリコーン、ニトリル、ノルボレニル、オレフィン、ホスフィン、シラン、チオール、ポリスチレン等の各種低分子化合物又は各種重合体で表面被覆されているものも含まれている。
本実施形態において、無機物粒子は、平均一次粒径が0.005〜0.5μmであり、比表面積が30m/g以上500m/g以下であることが好ましい。これによって、多孔性支持膜の窒素透過速度が、3500GPU以上であり、多孔性支持膜のバブルポイント法による圧力、すなわちバブルポイント(B.P)が650kPa以上となる。当該圧力が650kPa未満とは、多孔性支持膜の最大孔径が、0.095μm以上であることを意味しており、水蒸気分離性樹脂を薄く、かつ、均一に積層することが困難になる。また、多孔性支持膜の窒素透過速度が3500GPUを下回れば、多孔性支持膜としての機能を果たさず、水蒸気分離性樹脂を積層した際に、著しくガス透過性能が低下する。
ここで、透過速度は単位時間、単位面積、単位分圧差における気体透過量で表され、単位としてGPU(Gaspermeation unit)=10−6cm(STP)/cm・sec・cmHgが広く使用されている。
〔多孔性支持膜の構造〕
本実施形態において、多孔性支持膜は、水蒸気分離性樹脂層が積層されている面に開孔が形成され、無機物粒子の少なくとも一部が上記開孔に存在する構造を有する。
本実施形態においては、開孔に無機物粒子が存在していることによって、水蒸気分離性樹脂が、多孔性支持膜の表面に均一に、かつ、薄く塗布することができる。それにより、水蒸気分離膜としての耐久性が向上し、さらに、分離性能及び透過性能も向上する。
また、本実施形態における多孔性支持膜において、多孔性支持膜の内部に連通孔が形成され、この連通孔の一部は上記開孔を形成していることが好ましい。連通孔は、多孔性支持膜の多孔質構造を形成する骨格同士の間に形成されることが好ましい。また、この骨格は有機高分子樹脂を含む。このような構造であることにより、水蒸気分離膜の透過性能がより向上する。特に、連通孔が多孔性支持膜の内部から外表面まで連続して繋がっていることがより好ましい。
本実施形態における多孔性支持膜の構造について、図1を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態の水蒸気分離膜の一部を模式的に示した概念断面図である。
水蒸気分離膜1は、多孔性支持膜3に水蒸気分離性樹脂層2が積層され、水蒸気分離性樹脂層2が積層されている多孔性支持膜3の表面に開孔4を有している。そして、少なくともその開孔に無機物粒子5が存在している。また、膜内部に連通孔6が形成され、その連通孔6が多孔性支持膜3の水蒸気分離性樹脂層2が積層されている面まで伸びて開孔4が形成される構造であることが好ましい。
本実施形態において、多孔性支持膜の水蒸気分離性樹脂層が積層されている面における開孔率(A)に対する、無機物粒子が多孔性支持膜の水蒸気分離性樹脂層側の面に占める面積率(B)の比(B/A)は、0.2〜4であり、0.8〜3.5がより好ましく、1.2〜3.3であることがさらに好ましい。
以下で、図2を用いて、開孔率(A)及び面積率(B)について説明する。
図2は、多孔性支持膜を上面視したときの概念図である。多孔性支持膜3の表面には、開孔4が形成され、開孔4に無機物粒子5が存在している。領域αでは、開孔4の中に無機物粒子5が位置している状態である。また、領域βでは、無機物粒子5が開孔4を横切るように位置している状態であり、領域γでは、無機物粒子5が開孔4を覆い被さるように位置している。
このとき、開孔率(A)とは、多孔性支持膜の水蒸気分離性樹脂層が積層されている面において、開孔が占める面積の割合のことである。例えば、図2において、領域γでは、無機物粒子5が開孔を覆っている状態であるが、この部分にある開孔の面積も含めて開孔率(A)を計算する。すなわち、開孔率(A)は、膜表面から無機物粒子を除いたときに、表面に存在する開孔の面積を、多孔質支持膜の投影面積で除した値のことである。したがって、図2において、すべての開孔4の面積を、多孔性支持膜の投影面積で除した値が開孔率(A)となる。
なお、本実施形態において、多孔性支持膜の外表面の開孔率(A)は、多孔性支持膜を20wt%NaOH水溶液中に70℃にて1時間浸漬して、膜の開孔及び表面に存在する無機物粒子を、抽出除去した後、水洗し、乾燥した後、外表面の電子顕微鏡写真を、外表面に存在する孔部分と非孔部分とに黒白2値化処理し、下記式から求めることができる。
外表面開孔率(A)[%]=100×(孔部分面積)/{(孔部分面積)+(非孔部分面積)}
用いる電子顕微鏡写真の倍率は、多孔性支持膜の水蒸気分離性樹脂層が積層されている面に存在する孔がはっきりとその形状が認識できる程度に大きい必要がある一方、写真画面内に写る面積はできるだけ大きくしてできるだけ平均化された開孔率を測定する必要があるため、あまり大きすぎても不適当である。撮影倍率の目安は、開孔の孔径の面積的主体(面積累積値50%に相当する孔径)が1〜10μm程度であれば1000〜5000倍、0.1〜1μm程度であれば5000〜20000倍、0.03〜0.1μm程度であれば10000〜50000倍である。
黒白2値化処理をする場合には、これらの倍率で撮影した電子顕微鏡写真を、コピー機その他の手段を用いて拡大してから用いてもよい。なお、市販の画像解析システムを用いれば、電子顕微鏡写真又はそのコピーから直接システムの機器内にて黒白2値化処理を行うことが可能であるが、通常の電子顕微鏡写真では孔周辺部のエッジが白く光ったり、また撮影時のコントラストの付け方では無機粒子でない部分が無機粒子と似た黒さになる場合がある等、黒白2値化処理の段階での誤認が原因で開口率測定に誤差が生じやすく、不適切である。加えて、電子顕微鏡写真又はそのコピーからのシステム機器内による直接の黒白2値化は、実際には表面部位ではないが表面の開口部からのぞき見ることのできる膜厚部の構造を、表面部位の構造と誤認してしまい、無機粒子の表面積率測定に誤差を生じさせるおそれもあり、この点からも不適切である。したがって、黒白2値化処理をして無機粒子表面積率を測定する場合には、用いる電子顕微鏡写真又はそのコピーに対し、その上に透明シートを重ねて置き、表面に存在する孔の部分を無色透明シート上に黒マジックペン等を用いて黒く塗りつぶし(転写し)、その転写シートを白紙にコピーすることにより、無機粒子部分は黒、非無機粒子部分は白と明確に区分し、その後に、市販の画像解析システム等を利用して、表面積率を求める必要がある。
次に、面積率(B)とは、多孔性支持膜の投影面積において、無機物粒子が占める面積の割合のことである。したがって、図2において、すべての無機物粒子5の面積を、多孔性支持膜の投影面積で除した値が(B)となる。
ここで、面積率(B)は、多孔性支持膜の水蒸気分離性樹脂層が積層されている面の走査型電子顕微鏡反射電子像について、この面に存在する無機粒子部分と非無機粒子部分とに2値化処理し、下記式から求めることができる。
面積率(B)[%]=100×(無機粒子部分面積)/{(無機粒子部分面積)+(非無機粒子部分面積)}
用いる電子顕微鏡像の倍率は、表面に存在する無機粒子の形状が明瞭に認識できる程度に高くする必要がある一方、1視野内の面積は可能な限り大きくし、極力平均化された無機粒子を測定する必要があるため、あまり高過ぎても不適当である。撮影倍率の目安は、表面無機粒子の面積的主体(面積累積値50%に相当する無機粒子)が1〜10μm程度であれば1000〜5000倍、0.1〜1μm程度であれば5000〜20000倍、0.03〜0.1μm程度であれば10000〜50000倍である。
2値化処理をする場合には、これらの倍率で撮影した電子顕微鏡像を、コピー機その他の手段を用いて拡大してから行ってもよい。なお、市販の画像解析システムを用いる場合の注意点は、前述と同様である。
本実施形態において、例えば、無機物粒子の含有量を増減したり、可塑剤抽出時の温度を上下することで、(B/A)は0.2〜4の範囲内に調整することができる。例えば、有機高分子樹脂に対する無機物粒子の重量比を増加させると、B/Aの値が大きくなり、逆に、有機高分子樹脂に対する無機物粒子の重量比を減少させると、B/Aの値が小さくなる。また、無機物粒子の含有量を増減させる場合ほどの大きな変化は見られないが、可塑剤抽出時の温度を上げることにより、B/Aの値を小さくすることが可能であり、逆に、可塑剤抽出時の温度を下げることによって。B/Aの値を僅かに大きくすることが可能である。なお、B/Aが1とは、開孔の面積と無機物粒子が占める面積とが同じであることを意味しており、B/Aが1を超えると、無機物粒子が占める面積が、開孔の面積よりも大きいことを意味している。
開孔の孔径としては、0.001〜1μmが好ましく、0.05〜0.5μmがより好ましい。開孔の孔径とは多孔性支持膜に存在する孔の平均孔径である。膜の平均孔径は、ASTM:F316−86記載の方法(別称:ハーフドライ法)にしたがって決定することができる。なお、このハーフドライ法によって決定されるのは、膜の最小孔径層の平均孔径であり、厳密には開孔の平均孔径とは異なる。しかし、本発明の多孔質支持膜は均質構造をしているため、開孔の平均孔径が膜の最小孔径層の平均とする。
本実施形態においては、ハーフドライ法による平均孔径の測定は、使用液体にエタノールを用い、25℃、昇圧速度0.001MPa/秒での測定を標準測定条件とした。平均孔径[μm]は、下記式より求まる。
平均孔径[μm]=(2860×表面張力[mN/m])/ハーフドライ空気圧力[Pa]
エタノールの25℃における表面張力は21.97mN/mである(日本化学会編、化学便覧基礎編改訂3版、II−82頁、丸善(株)、1984年)ので、本発明における標準測定条件の場合は、
平均孔径[μm]=62834.2/(ハーフドライ空気圧力[Pa])
にて求めることができる。
膜の最大孔径は、ハーフドライ法において膜から気泡が初めて出てくる時の圧力から求めることができる(バブルポイント法)。上記のハーフドライ法標準測定条件の場合、中空糸膜から気泡が初めて出てくる時の圧力から、
最大孔径[μm]=62834.2/(気泡発生空気圧力[Pa])
より求めることができる。
また、本実施形態において、多孔性支持膜内部の連通孔内部にも、無機物粒子が充填されていることが好ましい。無機物粒子が、連通孔に充填されていることによって、優れた機械的強度と耐熱性を有する多孔性支持膜が得られる。
好ましくは、無機物粒子が、多孔質支持膜全体に対して、25〜85質量%で充填されていることである。より好ましくは35〜75質量%であり、さらに好ましくは40〜70質量%である。
なお、本実施形態において、無機物粒子が充填されている質量分率(%)は、以下の式で定義される。
質量分率(%)={(多孔性支持膜中の全無機物粒子の質量)/(多孔性支持膜の質量)}×100
〔水蒸気分離性樹脂層〕
本実施形態の水蒸気分離性樹脂層は、水蒸気分離性樹脂から形成された層である。水蒸気分離性樹脂とは、気体を分離する機能を有する樹脂のことである。水蒸気分離性樹脂としては、フッ素樹脂が好ましく、加工性を考えると有機溶剤に溶解又は分散可能な樹脂であることが好ましい。
本実施形態で用いられるフッ素樹脂として、市販品のテフロン(登録商標)AFシリーズ(デュポン社製)、フルオンシリーズ(旭硝子社製)、ハイフロンシリーズ(ソルベイ・ソレクシス社製)、サイトップ(旭硝子社製)、THVシリーズ(住友スリーエム社製)、ネオフロンシリーズ(ダイキン社製)、カイナーシリーズ(アルケマ社製)、テドラーシリーズ(デュポン社製)、ダイニオンシリーズ(ダイニオン社製)等が挙げられる。これらは、一種を単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
水蒸気分離性樹脂を溶解又は分散する有機溶剤としては、CFCHOH、F(CFCHOH、(CFCHOH、F(CFCHOH、F(CFOH、H(CFCHOH、H(CFCHOH、H(CFCHOH等の含フッ素アルコール系溶剤;パーフルオロベンゼン、メタキシレンヘキサフルオライド等の含フッ素芳香族系溶剤;CF(HFC−14)、CHClF(HCFC−22)、CHF(HFC−23)、CHCF(HFC−32)、CFCF(PFC−116)、CFClCFCl(CFC−113)、CHClF(HCFC−225)、CHFCF(HFC−134a)、CHCF(HFC−143a)、CHCHF(HFC−152a)、CHCClF(HCFC−141b)、CHCClF(HCFC−142b)、C(PFC−C318)等のフルオロカーボン系溶剤等;キシレン、トルエン、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ヘキサン等の炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコール、酢酸ジエチレングリコール等のエステル系溶剤;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤;N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホン酸エステル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(重合度3〜100)等が例示される。これらの溶剤は、一種を単独で又は二種以上を混合して用いることができる。これらのうち、溶解能、塗膜外観及び貯蔵安定性の点から、上記各種のフッ素系溶剤、ケトン系溶剤及びエステル系溶剤が好ましく、特にメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、セロソルブアセテート、酢酸ブチル、酢酸エチル、パーフルオロベンゼン、メタキシレンヘキサフルオライド、HCFC−225、CFC−113、HFC−134a、HFC−143a及びHFC−142bがより好ましい。
水蒸気分離性樹脂層の厚みとしては、気体透過速度を最大にするという観点からは薄い方が好ましく、10μm以下であり、更に好ましくは1μm以下である。
水蒸気分離性樹脂層の機能としては、窒素の透過係数が1barrer〜900barrerである。ここで、透過係数は、単位時間、単位面積、単位厚さ、単位圧力(差圧)当たりの気体透過速度であり、その材料固有の物理定数である。透過係数の単位はbarrerであり、barrer=10−10cm(STP)cm/cm・sec・cmHgである。
窒素の透過係数が1barrer未満であると、PV法に用いた場合、十分な水透過速度が得られない傾向にある。また、透過流速が極めて低くなる傾向にある。
透過係数が900barrer超であると、例えばIPAと水とを分離する場合に、その分離性が低下する傾向にある。
また、窒素透過速度に対する水素透過速度の比である、窒素に対する水素の分離係数(以下、「水素/窒素分離係数」という。)が、2〜15であり、好ましくは、2.5〜7.0である。上記水素/窒素分離係数が15を上回ると、PV法による水透過速度が低下する傾向がある。上記水素/窒素分離係数が2を下回ると、PV法に用いた場合、例えばIPAと水を分離する場合に、その分離性が低下する傾向がある。本実施形態の水蒸気分離性樹脂層では、透過速度が高いことが必要である。したがって、窒素の透過係数が1barrer〜900barrerであり、水素/窒素分離係数が、2〜15であることが必要である。
水蒸気分離性樹脂の透過性能は、窒素透過係数と、水素/窒素分離係数で表現することができる。水蒸気分離性樹脂の窒素透過係数及び水素/窒素分離係数は、水蒸気分離性樹脂を層状にしたときの層の厚み等に左右されずに素材そのものに固有の値である。そのため、水蒸気分離性樹脂の窒素透過係数及び水素/窒素分離係数を測定するには、厚みが既知で、欠陥が無い膜を用いる必要がある。そこで、まず20μm〜100μm程度の厚みになるように水蒸気分離性樹脂をキャストして、素材それ自身のみからなり、平滑で気泡を含まない自立膜を作製する。得られた膜をJIS Z−1707に基づいて測定することにより、窒素透過係数及び水素/窒素分離係数を求めることができる。なお、一般的に、気体分離膜の水素/窒素分離係数をα’とすると、
α’=fH[GPU]/fN[GPU]
で表記される。ここで、fHは気体分離膜自体の水素透過速度であり、fNは気体分離膜自体の窒素透過速度である。これらの気体分離膜自体の気体透過速度には、気体の溶解拡散による流束と、ピンホールによるクヌーセン流の両者が含まれており、実際の気体分離モジュールの設計では、これらの気体分離膜自体の気体透過速度を使用するのがよい。この場合の分離係数α’は材料固有の値(物理定数ではなく、気体分離膜自体について決まる見かけの値になる。クヌーセン流が無ければ、上記のα’は理想分離係数αに等しくなる。
水蒸気分離性樹脂層の窒素の透過係数及び水素/窒素分離係数は材料固有の物理定数であるので、窒素の透過係数及び水素/窒素分離係数が上記規定の範囲内になるよう、適宜材料を選択する。
〔水蒸気分離膜〕
水蒸気分離性樹脂層と多孔性支持体から構成される複合材料としての水蒸気分離膜の気体透過性能は、窒素透過速度及び水素/窒素分離係数で表現される。本実施形態の水蒸気分離膜は、窒素透過速度が、20GPU〜18,000GPUであることが好ましい。また、水素/窒素分離係数が3以上15未満であることが好ましい。水蒸気分離膜の形状としては、中空糸状、平膜状等が挙げられる。中空糸状であることが好ましい。
水蒸気分離膜の窒素透過速度は、多孔性支持膜の窒素透過速度を勘案しつつ水蒸気分離性樹脂層の厚さを調節することで、上記規定の範囲となる。ここで、水蒸気分離性樹脂層が厚くなるほど水蒸気分離膜の窒素透過速度は低下するが、窒素透過係数の高い水蒸気分離性樹脂に比べ窒素透過係数の低い水蒸気分離性樹脂は、層の厚さに対する窒素透過速度の低下の度合いが大きい。また、水蒸気分離膜の水素/窒素分離係数は、水蒸気分離性樹脂と多孔性支持膜とを適宜組み合わせることで、上記規定の範囲となる。
〔製造方法〕
本実施形態の水蒸気分離膜の製造方法は、有機高分子樹脂と、可塑剤と、無機物粒子とを含む混合物を溶融混練する工程と、溶融混練した混合物を成形して成形体を得る工程と、該成形体から、可塑剤を抽出して多孔性支持膜を得る工程と、多孔性支持膜の表面に、水蒸気分離性樹脂を積層する工程と、を含む方法である。以下、本実施形態の製造方法について、詳細に説明する。
〔溶融混練する工程〕
本実施形態の溶融混練する工程では、有機高分子樹脂と、可塑剤と、無機物粒子とを含む混合物を溶融混練する。
無機物粒子、可塑剤、及び有機高分子樹脂の配合量としては、無機物粒子、可塑剤、及び有機高分子樹脂の混合物の合計容量に対して、以下の範囲が好ましい。すなわち、無機物粒子は3〜60質量%が好ましく、7〜42質量%がより好ましく、15〜30質量%がさらに好ましい。可塑剤は20〜85質量%が好ましく、30〜75質量%がより好ましく、40〜70質量%がさらに好ましい。有機高分子樹脂は5〜80質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、15〜30質量%がさらに好ましい。
無機物粒子が3質量%以上であれば、無機物粒子が可塑剤を十分に吸着することができ、混合物が粉末又は顆粒の状態に保つことができ、成形し易くなる。また、60質量%以下であれば、溶融する際の混合物の流動性が良く、成形性が高くなる。加えて、得られる成形品の強度が向上する。
可塑剤が20質量%以上であれば、可塑剤の量が十分であり、十分に発達した連通孔が形成され、連通孔が十分に形成された多孔質構造とすることができる。また、85質量%を以下であれば、成形し易くなり、機械的強度の高い多孔性支持膜が得られる。
有機高分子樹脂が5質量%以上であれば、多孔質構造の幹を形成する有機高分子樹脂の量が十分であり、強度や、成形性が向上する。また、80質量%以下であれば、連通孔が十分に形成された多孔性支持膜とすることができる。
無機物粒子、可塑剤及び有機高分子樹脂の混合法としては、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー等の配合機を用いた通常の混合法が挙げられる。混合の順序としては、無機物粒子、可塑剤及び有機高分子樹脂を同時に混合する方法、及び、無機物粒子と可塑剤とを混合して無機物粒子に可塑剤を充分に吸着させ、次に有機高分子樹脂を配合して混合する方法等が挙げられる。後者の順序で混合すると、溶融する際の成形性が向上し、得られる多孔性支持膜の連通孔が十分に発達し、さらに機械的強度も向上する。
混合の温度は、均質な三成分組成物を得るために、混合物が溶融状態になる温度範囲、すなわち有機高分子樹脂の溶融軟化温度以上、熱分解温度以下の温度範囲にある。ただし、混合の温度は、有機高分子樹脂のメルトインデックス、可塑剤の沸点、無機物粒子の種類、さらには加熱混練装置の機能等によって適当に選択すべきである。
〔可塑剤〕
本実施形態において、可塑剤とは、沸点が150℃以上の液体を指す。可塑剤は、溶融混練した混合物を成形する際に、多孔質構造を形成するのに寄与し、最終的には、抽出して取り除かれる。可塑剤としては、低温(常温)では有機高分子樹脂と相溶しないが、溶融成形時(高温)では、有機高分子樹脂と相溶するものであることが好ましい。
可塑剤は、溶解度パラメーター(SP:δ)が15〜21[(MPa)1/2]の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、18〜19[(MPa)1/2]の可塑剤である。
溶解度パラメーターが15〜21[(MPa)1/2]の可塑剤の例としては、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)等のフタル酸エステルやリン酸エステル等が挙げられる。これらのうち、特にフタル酸ジオクチル(δ=18.3[(MPa)1/2](分散成分δD=16.6、極性成分δP=7.0、水素結合成分δH=3.1))、フタル酸ジブチル(δ=20.2[(MPa)1/2](δD=17.8、δP=8.6、δH=4.1))(J.BRANDRUP and E.H.IMMERGUT,POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION,ページVII−542,1989を参照)、及びこれらの混合物が好ましい。なお、フタル酸ジオクチルは、2つのエステル部分の炭素数がそれぞれ8の化合物の総称であり、例えば、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルが含まれる。
ここで、2種以上の可塑剤を混合する場合、以下の方法により、混合した可塑剤の溶解度パラメーターを算出することができる。
例えば、可塑剤(A)のSPがδ(A)であり、δ(A)の分散成分、極性成分、水素結合成分がそれぞれδD(A)、δP(A)、δH(A)であり、可塑剤(B)のSPがδ(B)であり、δ(B)の分散成分、極性成分、水素結合成分がそれぞれδD(B)、δP(B)、δH(B)である場合において、可塑剤(A)及び(B)をm:nの比で混合した混合物(C)のSPであるδ(C)は、δ(C)の分散成分δD(C)、極性成分δP(C)、水素結合成分δH(C)をそれぞれ求めてから、決定することができる。
δD(C)={mδD(A)+nδD(B)}/(m+n)
δP(C)={mδP(A)+nδP(B)}/(m+n)
δH(C)={mδH(A)+nδH(B)}/(m+n)
δ(C)=[{δD(C)}2+{δP(C)}2+{δH(C)}2]1/2。
この混合した可塑剤のSPであるδ(C)が、15〜21[(MPa)1/2]の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、混合する可塑剤のSPが、共に15〜21[(MPa)1/2]の範囲にあることである。
本実施形態において、可塑剤を適宜選択することによって、多孔性支持膜の開孔の大きさを制御することができる。水蒸気透過性の観点からは、開孔は大きい方がよく、膜表面においては、その大きい開孔に無機物粒子が存在することで、膜表面に均一に水蒸気分離性樹脂を積層することができる。具体的には、例えば、多孔性支持膜の有機高分子樹脂としてポリエチレンを含む場合は、DBPを可塑剤として使用し、PVDFを含む場合は、DOPを可塑剤として使用することで、大きな孔を有する多孔性支持膜が得られる。
また、本発明の効果を大きく阻害しない範囲で、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、成形助剤等を必要に応じて添加してもよい。
〔成形体を得る工程〕
本実施形態の成形体を得る工程では、溶融混練した混合物を成形する。溶融混練した混合物を成形する方法としては、Tダイ法、インフレーション法、中空のダイスを用いた方法等の押出成形、カレンダー成形、圧縮成形、射出成形等が挙げられる。また、混合物を押出機、ニーダールーダー等の混練・押出両機能を有する装置により、直接成形することも可能である。
成形する際に、成形体の厚みが0.01〜50mmとなるように成形することが好ましい。より好ましくは、0.01〜30mmであり、さらに好ましくは、0.02〜0.5mmである。厚みを薄くする場合には、前記押出成形による成形方法が好適である。また、成形方法を適宜選択することで、成形体を中空糸状、平膜状等の形状にすることができる。
〔多孔性支持膜を得る工程〕
本実施形態の多孔性支持膜を得る工程では、上記の成形体から、溶剤を用いて可塑剤の抽出を行う。これにより、有機高分子樹脂が開孔及び連通孔を具備する多孔質構造を形成し、無機物粒子の少なくとも一部が開孔に存在する多孔性支持膜が得られる。なお、形成される多孔性支持膜では、連通孔の一部が開孔を形成していてもよい。抽出に用いる溶剤は、可塑剤を溶解し得るものであり、かつ、有機高分子樹脂を実質的に溶解しないものである。抽出に用いられる溶剤としては、メタノール、アセトン、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。特に、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロルエチレン等のハロゲン系炭化水素が好ましい。
抽出は、回分法や向流多段法等の一般的な抽出方法により抽出することができる。可塑剤の抽出後に、必要に応じて溶剤の乾燥除去を行ってもよい。
なお、可塑剤を除去する方法は、上記した抽出によるものに限定されるものではなく、一般的に行われている種々の方法を採用することができる。
〔延伸・収縮工程〕
本実施形態においては、可塑剤の除去前又は除去後に、成形体を延伸し、その後収縮させる工程を有していることが好ましい。それによって、使用中に延伸時最大糸長まで伸ばした際にも切れることがなく、機械的強度が向上する。
特に、成形体が中空糸状であるときは、糸の長さ方向に沿って延伸して、その後収縮させることが好ましい。この際、延伸及び収縮させる程度については、下記式で表される糸長収縮率が、0.3以上0.9以下の範囲であることが好ましい。
糸長収縮率={(延伸時最大糸長)−(収縮後糸長)}/{(延伸時最大糸長)−(元糸長)}
例えば、10cmの糸を延伸して20cmにし、その後14cmにさせた時は、上記式より、糸長収縮率(20−14)/(20−10)=0.6となる。糸長収縮率が0.9以下であれば、気体透過性が高い。0.3以上であれば、引っ張り弾性率を低く抑えることができる。糸長収縮率は、0.50以上0.85以下であることがより好ましい。
また、破断伸度の保障の程度を表す割合Zは、0.2以上1.5以下であることが好ましい。Zは、延伸倍率をX、延伸による糸長増分に対する糸長収縮率をYとしたとき、以下の式で定義できる。
Z=(延伸時最大糸長−収縮後糸長)/収縮後糸長=(XY−Y)/(X+Y−XY)
Zは、値が小さすぎると破断伸度の保障が少なくなり、大きすぎると延伸時の破断の可能性が高くなり、さらに気体透過性も低くなる。延伸及び収縮させる工程を含むことにより、引っ張り破断伸度は低伸度での破断が極めて少なくなり、引っ張り破断伸度の分布を狭くすることができる。より好ましくは、Zは0.3以上1.0以下である。
また、延伸し、次いで収縮させる工程における空間温度は、収縮の時間や物性の点から、0℃以上160℃以下の範囲が好ましい。より好ましくは0℃以上100℃以下である。0℃より低いと収縮に時間がかかり実用的でなく、160℃を越えると破断伸度の低下及び気体透過性が低くなる。
〔水蒸気分離性樹脂を積層する工程〕
水蒸気分離性樹脂を積層する工程では、多孔性支持膜の表面に、ディップコーティング法等により水蒸気分離性樹脂を積層する。
〔水蒸気分離膜の用途〕
本実施形態の水蒸気分離膜は、PV法やVP法等の分離方法に好適に用いられる。その他にも、各種水蒸気分離用の膜として使用可能である。条件によっては強度と耐熱性、及び、耐熱条件下での水蒸気分離性を維持しうる水蒸気分離膜を得ることも可能である。このように優れた性能を有する水蒸気分離膜は、例えば、内燃機関システムで用いるガス浄化用の水蒸気分離膜として利用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[B.P法による多孔性支持膜の圧力測定]
多孔性支持膜のB.P法による圧力は、ハーフドライ法において膜から気泡が初めて出てくる時の圧力であり、以下の方法で行った。すなわち、使用液体にエタノールを用い、25℃、昇圧速度0.001MPa/秒での測定を標準測定条件とした。エタノールの25℃における表面張力は21.97mN/mである(日本化学会編、化学便覧基礎編改訂3版、II−82頁、丸善(株)、1984年)ので、本発明における標準測定条件の場合は、下記式により最大孔径を推定することができる。
最大孔径[μm]=62834.2/(気泡発生空気圧力[Pa])
[多孔性支持膜及び水蒸気分離膜のガス透過速度及び水素/窒素分離係数の測定方法]
1本の中空糸状の多孔性支持膜と、ステンレスパイプと、エポキシ樹脂系接着剤とを使用して有効長が20cmの透過性能評価用のペンシルモジュールとした。図3に、ペンシルモジュール10の模式図を示す。ペンシルモジュール10は、流体供給口11aと流体排出口11bとを有するステンレスパイプ11から構成される。ステンレスパイプ11の内部には、透過性能評価用サンプル(多孔性支持膜又は水蒸気分離膜)12が配置され、透過性能評価用サンプル12の両端部は接着剤13により固定されている。ステンレスパイプ11の流体排出口11b側の端部では、接着剤13により透過性能評価用サンプル12の端部の開口部とステンレスパイプ11の開口部とが塞がれている。ステンレスパイプ11の流体供給口11a側の端部では、接着剤13によりステンレスパイプ11の開口部は塞がれているが、透過性能評価用サンプル12の開口部は塞がれておらず、透過流体排出口11cが形成されている。なお、図示していないが、透過流体排出口11cには、透過した流体の流量を測定する測定装置が接続されている。
ペンシルモジュール10を用いて、中空糸状の透過性能評価用サンプル12の外側に、25℃の温度、35kPaの圧力で窒素ガスを流体供給口11aから供給した。供給した窒素ガスのうち、中空糸状の透過性能評価用サンプル12の内側に透過しなかった窒素ガスは流体排出口11bから排出され、透過性能評価用サンプル12の内側に透過したガスは、透過流体排出口11cから排出される。透過流体排出口11cから排出された流量を測定した。測定した透過流量、供給側の圧力(35kPa)、透過側圧力及び有効膜面積から、窒素透過速度を算出した。
また、透過した流量、気温、大気圧から標準状態における水蒸気分離膜の気体透過速度を計算し、水素と窒素の気体透過速度の比から水素/窒素分離係数を計算した。
[PV性能の評価方法]
PV法によってIPA水溶液から水を選択的に分離する試験を、図3に示すペンシルモジュール10を備える、図4に示す装置を用いて行い、PV性能を評価した。図4に示す装置において、ペンシルモジュール10内には、透過性能評価用サンプル12として中空糸状の水蒸気分離膜が配置されている。PV性能の評価においては、タンク15に貯液されたIPA50質量%の水溶液を、75℃の状態で循環ポンプ16により配管14bを通り流量計17を介してペンシルモジュール10の流体供給口に供給する。このとき、ペンシルモジュール10内の水蒸気分離膜の内側は真空ポンプ25により減圧されている。供給された水溶液のうち、ペンシルモジュール10内に配置された水蒸気分離膜の外側から内側に透過した流体は、真空ポンプ25により吸引されて、配管21aを通って液体窒素によって冷却されている冷却トラップ23内に集められる。配管21aには真空計22が備えられている。一方、供給された水溶液のうち、水蒸気分離膜を透過しなかった流体は配管14aを通ってタンク15に戻される。
この一連の操作を100分間行い、これを一操作単位とした。そして、100分間に集められた冷却トラップ23中の水の質量を測定し、膜の単位面積及び単位時間当たりの透過量を求めることにより透過流束(Q)[kg/m/hr]を求めた。また、トラップされた水に含まれるIPA濃度を屈折率計(デジタルイソプロピルアルコール濃度計PR−60PA:アタゴ社製)を用いて測定することにより、IPAに対する水の分離係数(以下、「水/IPA分離係数」という。)を求めた。具体的には、供給側のIPAと水の質量濃度(初期濃度)をそれぞれ、X1質量%、X2質量%とし、透過側であるトラップ中のIPAと水の濃度をそれぞれ、Y1質量%、Y2質量%とすると、水/IPA分離係数は以下の式により計算される。
水/IPA分離係数=(X1/X2)/(Y1/Y2)
以上の測定を12回繰り返し行い、一回目の水透過流量を100%とした時の、12回目の水透過流量の値を水透過流量保持率(%)とし、耐久性の指標とした。また、被評価物の透過流速及び水/IPA分離係数の評価値は、12回の測定の平均値とした。
[実施例1]
無機物粒子として微粉シリカ(日本アエロジル社製:R−972)25.5質量部と、可塑剤としてフタル酸ジブチル(DBP)50.5質量部とをヘンシェルミキサーで混合し、これに有機高分子樹脂として高密度ポリエチレン(旭化成工業製:SH800)24.0質量部を添加し、再度ヘンシェルミキサーで混合した。この混合物を、2軸混練押し出し機で混合しペレット化し、得られたペレットを220℃で溶融混練した。
押し出し機先端のヘッド内の押し出し口に装着された、中空糸成形用紡口の押し出し面がある溶融物押し出し用円環穴(外径1.40mm、内径0.70mm)から、上記溶融混練した混合物を押し出し、溶融物押し出し用円環穴の内側にある中空部形成流体吐出用の円形穴(直径0.6mm)から、中空部形成流体として窒素ガスを吐出させ、中空糸状押し出し物の中空部内に注入し、10m/分の速度で巻き取って、中空糸状物を得た。
得られた中空糸状物を、溶剤として塩化メチレン中に浸漬し、可塑剤であるDBPを抽出除去した後、乾燥させて、多孔性支持膜を得た。得られた多孔性支持膜を、SEMで観察したところ、膜表面に開孔が形成され、開孔にシリカが存在していることがわかった(図5(b))。また、多孔性支持膜の断面をSEMで観察したところ、膜内部に連通孔が形成され、その連通孔内部にシリカが存在していることがわかった(図5(a))。また、連通孔が膜表面まで繋がって開孔を形成しており、開孔にシリカが存在していることもわかった。
次に、水蒸気分離性樹脂A(デュポン社製:テフロンAF1600)1.2質量%を、フッ素系溶剤のNovec7300(住友3M製)98.8質量%に溶解して、塗工溶液とした。この塗工溶液を用いて、多孔性支持膜の外表面に引き上げ速度2.5m/分、乾燥条件が120℃で3分の条件で、デップ塗工し、水蒸気分離性樹脂Aが積層された水蒸気分離膜を得た。得られた水蒸気分離膜を、SEMで観察した結果を図8に示す。水蒸気分離性樹脂層が均一に形成されていることがわかる。用いた水蒸気分離性樹脂Aの性能、並びに、得られた多孔性支持膜、及び水蒸気分離膜の性能を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、微粉シリカを8質量部、DBPを68質量部、高密度ポリエチレンを24質量部とした以外は実施例1と同様に、多孔性支持膜及び水蒸気分離膜を製造した。得られた多孔性支持膜及び水蒸気分離膜の性能を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、微粉シリカを69質量部、DBPを7質量部、高密度ポリエチレンを24質量部とした以外は実施例1と同様に、多孔性支持膜及び水蒸気分離膜を製造した。得られた多孔性支持膜及び水蒸気分離膜の性能を表1に示す。
[比較例1]
無機物粒子である微粉シリカは添加せず、DBPを76.0質量部とした以外は実施例1と同様に、多孔性支持膜及び水蒸気分離膜を製造した。得られた多孔性支持膜を、SEM用いて観察したところ、膜表面に開孔が形成されているが、開孔にシリカが存在していないことがわかった(図6(a)、(b))。得られた多孔性支持膜及び水蒸気分離膜の性能を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、微粉シリカを5質量部、DBPを71質量部、高密度ポリエチレンを24質量部とした以外は実施例1と同様に、多孔性支持膜及び水蒸気分離膜を製造した。
比較例1に示すように、無機物粒子を添加しない場合、得られる多孔質支持体膜のB.P.が650kPaを下回り、結果として得られる水蒸気分離膜のB.P.が650を下回ることとなり、得られる水蒸気分離膜は水蒸気分離性(水素/窒素)やPV法による水/IPAの分離性が低い。一方、比較例2に示す様に、無機物粒子の添加量が十分でない場合も、膜表面の開孔に無機物粒子はほとんど存在せず(B/Aが0.1)、得られる水蒸気分離膜は、水素/窒素の分離性、PVによる水/IPAの分離性が低く、また、耐久性が十分ではなく、水透過流量保持率が80%を大きく下回ってしまう。
それに対して、実施例1〜3は、透過流速が十分であり、耐久性が高く、かつ、分離性が高い。
[実施例4]
無機物粒子として微粉シリカ(日本アエロジル社製:R−972)23.0質量部と、可塑剤としてフタル酸ジオクチル30.8質量%とフタル酸ジブチル6.2質量%(二者の混合液のSP:18.59(MPa)1/2)と、をヘンシェルミキサーで混合し、これに有機高分子樹脂として質量平均分子量290000のポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業(株)製:KFポリマー#1000(商品名))40質量%を添加し、再度ヘンシェルミキサーで混合した。得られた混合物を48mmφ二軸押し出し機で更に溶融混練し、ペレットにした。
このペレットを30mmφ二軸押し出し機に連続的に投入し、押し出し機先端にとりつけた円環状ノズルより、中空部内にエアーを供給しつつ、240℃にて溶融押し出しした。押し出し物を、約20cmの空中走行を経て40℃の水槽中に20m/分の紡速で通過させることで冷却固化して中空繊維を得た。
この中空繊維を連続的に一対の第一の無限軌道式ベルト引き取り機で20m/分の速度で引き取り、空間温度40℃に制御した第一の加熱槽(0.8m長)を経由して、更に第一の無限軌道式ベルト引き取り機と同様な第二の無限軌道式ベルト引き取り機で40m/分の速度で引き取り2.0倍に延伸した。そして更に、空間温度80℃に制御した第二の加熱槽(0.8m長)を出た後に、中空繊維を第三の無限軌道式ベルト引き取り機で30m/分の速度で引き取り1.5倍まで収縮させた後、周長約3mのカセで巻き取った。いずれの無限軌道式ベルト引き取り機の無限軌道式ベルトも繊維強化ベルトの上にシリコーンゴム製の弾性体が接着一体化されたベルトであり、中空繊維に接する外表面側のシリコーンゴム製弾性体の厚みは11mmで厚み方向の圧縮弾性率は0.9MPaであった。延伸による糸長増分に対する糸長収縮率は0.5である。
次いで、この中空繊維を束として30℃の塩化メチレン中に1時間浸漬させ、これを5回繰り返してフタル酸ジオクチル及びフタル酸ジブチルを抽出した後、乾燥させ多孔性支持膜を得た。得られた多孔性支持膜を、SEM用いて観察したところ、膜表面に開孔が形成され、開孔にシリカが存在していることがわかった(図7(b))。また、多孔性支持膜の断面をSEMで観察したところ、膜内部に孔が形成され、その孔内部にもシリカが存在していることがわかった(図7(a))。また、膜表面に開孔が形成されており、開孔にシリカが存在していることもわかった。
上記以外は実施例1と同様にして、水蒸気分離膜を製造した。用いた水蒸気分離性樹脂Aの性能、並びに、得られた多孔性支持膜及び水蒸気分離膜の性能を表2に示す。
[実施例5]
実施例4において、水蒸気分離性樹脂A(テフロンAF1600)に変えて、水蒸気分離性樹脂B(デュポン社製:テフロンAF2400)としたこと以外は、実施例4と同様にして水蒸気分離膜を得た。用いた水蒸気分離性樹脂Bの性能、並びに、得られた多孔性支持膜及び水蒸気分離膜の性能を表2に示す。
[実施例6]
実施例4において、水蒸気分離性樹脂A(テフロンAF1600)に変えて、水蒸気分離性樹脂C(旭硝子社製:Cytop CTL−107MK)1.2質量%とCT−SOLV100K98.8質量%からなる塗工液としたこと以外は、実施例4と同様にして水蒸気分離膜を得た。用いた水蒸気分離性樹脂Cの性能、並びに、得られた多孔性支持膜、及び水蒸気分離膜の性能を表2に示す。
[比較例3]
実施例4において、水蒸気分離性樹脂A(テフロンAF1600)に変えて、ポリスルホンP−3500(ソルベイ社製)1.2質量%とN−メチル−2−ピロリドン98.8質量%からなる塗工液としたこと以外は、実施例4と同様にして水蒸気分離膜を得た。用いた水蒸気分離性樹脂Dの性能、並びに、得られた多孔性支持膜及び水蒸気分離膜の性能を表1に示すれた多孔性支持膜、及び水蒸気分離膜の性能を表2に示す。
実施例4〜6に示すように、所定の条件で製造された多孔性支持膜を用いると、様々な異なる水蒸気分離性樹脂の塗工が可能であり、得られる水蒸気分離膜の物性も、十分な水素/窒素性を示し、PV法による水/IPAの分離性、耐久性共に実用化に耐えうる性能を示した。一方、比較例3は、水蒸気分離性樹脂の窒素透過速度が低く、水蒸気分離膜の透過流速が極めて低い。
1…水蒸気分離膜、2…水蒸気分離性樹脂層、3…多孔性支持膜、4…開孔、5…無機物粒子、6…連通孔、10…ペンシルモジュール、11…ステンレスパイプ、11a…ガス供給口、11b…ガス排出口、11c…透過ガス排出口、12…多孔性支持膜、13…接着剤、14a…配管、14b…配管、15…タンク、16…循環ポンプ、17…流量計、21a…配管、21b…配管、22…真空計、23…冷却トラップ、25…真空ポンプ。

Claims (14)

  1. 多孔性支持膜と、該多孔性支持膜上に積層された水蒸気分離性樹脂層とを備える水蒸気分離膜であり、
    前記多孔性支持膜は、有機高分子樹脂と無機物粒子とを含み、
    前記多孔性支持膜の前記水蒸気分離性樹脂層が積層されている面に開孔が形成され、前記無機物粒子の少なくとも一部が前記開孔に存在し、
    前記多孔性支持膜の前記水蒸気分離性樹脂層が積層されている面における開孔率に対する、前記無機物粒子が前記水蒸気分離性樹脂側の面に占める面積率の比が、0.2〜4であり、
    前記水蒸気分離性樹脂層は、窒素の透過係数が1〜900barrerであり、かつ、窒素に対する水素の分離係数が2〜15である、水蒸気分離膜。
  2. 前記多孔性支持膜が内部に連通孔を有し、該連通孔の一部が前記開孔を形成している、請求項1に記載の水蒸気分離膜。
  3. 前記多孔性支持膜が、前記無機物粒子を25〜85質量%含む、請求項1又は2に記載の水蒸気分離膜。
  4. 前記多孔性支持膜は、窒素透過速度が3500GPU以上であり、バブルポイント法による圧力が650kPa以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水蒸気分離膜。
  5. 前記無機物粒子は、平均一次粒径が0.005〜0.5μmであり、比表面積が30m/g以上500m/g以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水蒸気分離膜。
  6. 前記無機物粒子が、シリカである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水蒸気分離膜。
  7. 前記有機高分子樹脂が、熱可塑性樹脂である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水蒸気分離膜。
  8. 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン及びハロゲン化ポリオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項7に記載の水蒸気分離膜。
  9. 前記水蒸気分離性樹脂層が、フッ素樹脂を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の水蒸気分離膜。
  10. 前記フッ素樹脂が、パーフルオロ2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールとテトラフロオロエチレンとの共重合体、ポリパーフルオロメチルビニルエーテル、ポリ弗化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、及び、ポリクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の水蒸気分離膜。
  11. 前記水蒸気分離膜の形状が中空状である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の水蒸気分離膜。
  12. 窒素に対する水素の分離係数が3以上15未満である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の水蒸気分離膜。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の水蒸気分離膜を用いたパーベーパレーション用水蒸気透過膜。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の水蒸気分離膜の製造方法であって、
    前記有機高分子樹脂、前記無機物粒子及び可塑剤を含む混合物を溶融混練する工程と、
    前記溶融混練した混合物を成形して成形体を得る工程と、
    前記成形体から、前記可塑剤を抽出して多孔性支持膜を得る工程と、
    前記多孔性支持膜の表面に、水蒸気分離性樹脂層を積層する工程と、
    を含む水蒸気分離膜の製造方法。
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