JP5878534B2 - 空気入りタイヤおよび、空気入りタイヤの製造方法 - Google Patents
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Description
この場合において、リボン状ストリップの、ビードコア素材の周方向に隣接して巻回されるストリップ部分、特に、平行して延びる内部のコードの重なり合いに起因する、形成される有機繊維コード層素材の表面性状の悪化を防止するため、図7に、ストリップを巻回したビードコア素材を、側面図で示すように、ストリップ100は、周方向に隣接するストリップ部分100a、100bの相互を重ね合わせずに螺旋状に巻回する必要がある。
なおここで、「ビードコアの横断面中心線」とは、ビードコアのタイヤ幅方向断面の中心を通って、ビードコアの周方向に延びる環状の線をいう。
ここでいう「適応リム」とは、タイヤサイズに応じて下記の規格に規定されたリムをいい、「規定内圧」とは、下記の規格において、最大負荷能力に対応して規定される空気圧をいい、「最大負荷能力」とは、下記の規格でタイヤに負荷されることが許容される最大の質量をいう。
そして、その規格とは、タイヤが生産または使用される地域に有効な産業規格によって決められたものであり、例えば、アメリカ合衆国では、“THE TIRE AND RIM ASSOCIATION INC.のYEAR BOOK”であり、欧州では、“The European Tyre and Rim Technical OrganizationのSTANDARDS MANUAL”であり、日本では日本自動車タイヤ協会の“JATMA YEAR BOOK”である。
なお、ビードコアを、一本もしくは複数本のスチール製等のコードを、タイヤ幅方向に複数列に巻き回すとともに、タイヤ半径方向に複数段に巻き重ねて形成する場合は、ここでいう、カーカスプライ本体部とビードコア角部との距離は、ビードコアの、前記本体部側の角部に位置するコードの表面と、カーカスプライのプライコードの表面との、タイヤ幅方向の最短距離を意味する。
そして、外層側の有機繊維補強層を、前記隙間の少なくとも一部を覆うように設けることで、ビードコアの周面全体にわたってゴム層の厚みを確保することができる。
これはすなわち、カーカスプライ本体部とビードコア角部との距離を2mm未満とした場合は、カーカスプライ本体部の、ビードコア角部からの距離が小さいことによって、カーカスプライへの応力集中を十分に軽減できないおそれがあり、この一方で、前記距離を、3mmを超えるものとした場合は、ビードコアによる、カーカスプライの係留力が低下する懸念があることの他、ゴムボリュームの増大によって、ビード部での発熱量の増大を招くおそれもある。
つまり、ビードコアの、タイヤ半径方向長さに対するタイヤ幅方向長さの比を、1.2を超えるものとした場合は、ビードコアの、カーカスプライ本体部側の角部の開き角度が小さくならないことから、カーカスプライへの応力集中を軽減する効果を十分に得ることができないおそれがある。この一方で、ビードコアの前記長さの比を、0.8未満とした場合は、ビード部の剛性が低下する結果、操縦安定性が低下する恐れがある。
これがため、製造されるタイヤで、ビードコアの周囲に形成される二層以上の有機繊維補強層によって、ビードコアの周面が全体にわたって、十分に厚いゴム厚みで被覆されることになるので、カーカスプライへの応力集中を有効に軽減できるタイヤを製造することができる。
図1に例示する空気入りタイヤ1は、ビード部2に埋設配置した一対の環状のビードコア3と、一対のビードコア3間にトロイダルに延在する本体部4aおよび、本体部4aに連続して、ビードコア3の周りで、ここでは、タイヤ幅方向内側から外側に折り返してなる折り返し部4bを有するカーカスプライ4と、カーカスプライ4のクラウン域の外周側に配設した、たとえば二層のベルト層からなるベルト5と、ベルト5の外周側に配設したトレッドゴム6とを具えてなる。
この場合は、図3に模式図で示すように、ビードコア3の、カーカスプライ本体部4a側の角部3aの開き角度、すなわち、六角形状をなすビードコア3の角部3aでの内角θが、図に仮想線で示す従来のものよりも大きくなって、この角部3aに押圧されるカーカスプライ本体部4aへの応力集中をより一層軽減できる他、ビードコア3のタイヤ幅方向断面の中心位置よりもタイヤ半径方向外側に存在するカーカスプライ本体部4aのカーカスラインの、タイヤ幅方向に対する鋭角側の立上がり角度αが、従来のものより大きくなることから、カーカスプライ4への、図に矢印で示す向きの引張力Tの作用に起因して、カーカスプライ本体部4aがビードコア角部3aから受ける押圧反力Fを軽減することができ、これがため、カーカスプライ4の耐久性の低下をより効果的に防止することができる。
なお、カーカスラインの前記立上がり角度αは、たとえば、60°〜70°の範囲内とすることができる。
また、カーカスラインの前記立上がり角度αを計測するに当たっては、規定内圧を充填した無負荷状態の下、図示のタイヤ幅方向断面で、ビードコア3の中心Cおよび、ビードコア3の径方向最外側点のそれぞれを通る、タイヤ幅方向に平行な二直線のそれぞれを引き、そして、それらの二直線のそれぞれとカーカスプライの本体部4aとの二個の交点の相互を結んだ直線の、タイヤ幅方向に対する鋭角側の角度を測定することにより行うことができる。
また、ベルト5は、たとえば、スチールコード等を、タイヤ赤道面に対して、20°〜60°の範囲内の角度で傾斜させて延在させてなる、図では二層のベルト層で構成することができ、ここでは、これらのベルト層のそれぞれのコードを、トレッド周方向に対して相互に逆方向に延在させる。
これにより、有機繊維補強層の内層側に含まれる有機繊維コードが重なり合うことを防止して、ビードコアからカーカスプライに局所的に大きな力が加わることを防止することができる。
また、後述する二層目(外層側)以降の補強層素材の形成に際しても、隣り合うストリップ部分を相互に重ね合わせずにストリップを巻回して、それぞれの補強層素材での、コードの平行な重なり合いを防止することで、最外層の補強層素材の表面性状を十分に適正なものとすることができ、それによって、最外層補強層素材の表面性状が、それの周囲に配設されるカーカスプライ素材等に及ぼす影響を十分に小さくすることができる。
なお、この明細書において、内層側の補強層素材の隙間Sの間隔I1O、I1I及び後述する外層側(二層目以降)の補強層素材の隙間Sの間隔I2O、I2Iとは、タイヤ周方向の全周のそれぞれの隙間での間隔の平均値で表すものとする。
二層目の補強層素材24を形成するに当っては、上述した一層目の形成で、環状ビードコア素材20の周方向に隣接するストリップ部分21a、21bを相互に重ね合わせずに巻回したことによって、それらの相互間に生じた隙間Sを極力、好ましくは完全に、覆うように、一層目の補強層素材22の前記隙間Sの外周側で、ストリップ23を延在させる。これにより、ビードコアの周面全体にわたってゴム層の厚みを確保することができる。
また、一層目と二層目の補強層素材22、24の層間での、有機繊維コードの平行な重なり合いをも防止するため、二層目を形成するストリップ23は、図5に拡大平面図で示すように、一層目のストリップ21の延在方向と交差する方向に巻回する。
二層目の補強層素材24を形成するにあたり、タイヤ径方向内側の間隔I2Iを、たとえば0mm<I2I≦10mm の範囲内で設けて、リボン状ストリップ23を巻回することが、補強層素材のカーカスプライに近い層で、有機繊維コードが重なり合うことを防止して、ビードコアからカーカスプライに局所的に大きな力が加わることを防止する点で好ましい。なお好ましくは、0mm<I2I≦5mm とする。
そして、図示は省略するが、三層以上の補強層素材を形成する場合も同様にして、外層側のストリップを、内層側のストリップ部分の相互間の外周側で、内層側のストリップの延在方向に交差させ、好ましくは間隔I2O、I2Iを設けて巻回することで行うことができる。
供試タイヤのサイズは、実施例タイヤおよび従来例タイヤのそれぞれについて、11.00R20および12.00R20の二種類とした。
また、実施例タイヤ1のビードコアは、図6(a)に示すように、タイヤ幅方向のコードの整列本数を、タイヤ半径方向内側から外側に向かうに従い、6、7、8、9、10、9、8、7、6の順に増減させて、9段巻き重ねて形成し、タイヤ半径方向の長さとタイヤ幅方向の長さの比を1:1.5とした。
なお、実施例タイヤ1では、カーカスプライ本体部と、ビードコアの角部とのタイヤ幅方向距離を2.2mmとし、カーカスラインの立上がり角度を65°とした。
そして、実施例タイヤ1では、図4に示す内層側及び外層側の補強層素材の隙間Sのタイヤ径方向外側での間隔I1O、I2Oを3mmとし、タイヤ径方向内側の間隔I1I、I2Iを2mmとした。
実施例タイヤ4、5は、実施例タイヤ1の、カーカスプライ本体部とビードコア角部とのタイヤ幅方向距離を、それぞれ1.9mm、3.3mmとし、カーカスラインの立上がり角度を、それぞれ66°、63°とした。また、実施例タイヤ5は、有機繊維補強層を3層とした。なお二層目と三層目の補強層素材の構成は、有機繊維コードの延在方向を除いて同一である。
実施例タイヤ6は、タイヤサイズが11.00R20であり、ビードコアのタイヤ幅方向のコード整列本数を、図6(b)に示すように、タイヤ半径方向外側に向けて、5、6、7、8、9、8、7、6、5の順に増減させてビードコアを形成して、それの、タイヤ半径方向の長さとタイヤ幅方向の長さとの比を1:1とし、カーカスラインの立上がり角度を70°としたことを除いて、実施例タイヤ1と同様の構造を有するものとした。
実施例タイヤ7は、ビードコアのタイヤ半径方向の長さとタイヤ幅方向の長さとの比を1:0.7とし、カーカスラインの立上がり角度を75°とした。
実施例タイヤ8は、実施例タイヤ7の、内層側及び外層側の補強層素材の隙間Sのタイヤ径方向外側の間隔I1O、I2Oを11mmとし、タイヤ径方向内側の間隔I1I、I2Iを10mmとした。
また、従来例タイヤ2は、タイヤサイズが11.00R20であり、ビードコアのタイヤ幅方向のコード整列本数を、図6(c)に示すように、タイヤ半径方向外側に向けて、7、8、9、10、9、8、7の順に増減させてビードコアを形成して、それの、タイヤ半径方向の長さとタイヤ幅方向の長さとの比を1:2とし、カーカスラインの立上がり角度を60°としたことを除いて、従来例タイヤ1と同様の構造を有するものとした。
この結果を、各供試タイヤの諸元とともに表1に示す。表1のPLY残留力は、従来例タイヤ2を基準とした指数値で表したものであり、この数値が大きいほど、カーカスプライの耐久性が低下していないことを意味する。
2 ビード部
3 ビードコア
4 カーカスプライ
4a 本体部
4b 折り返し部
5 ベルト
6 トレッドゴム
7、8 有機繊維補強層
20 ビードコア素材
21、23 リボン状ストリップ
21a、21b ストリップ部分
22、24 補強層素材
C ビードコア横断面中心線
C1 ビードコア素材の横断面中心線
D カーカスプライ本体部とビードコア角部とのタイヤ幅方向距離
θ ビードコアの角部での内角
α カーカスラインの立上がり角度
β 内外層のストリップの交差角度
T カーカスプライへの引張力
F カーカスプライ本体部への押圧反力
S 隙間
I1O、I1I、I2O、I2I 間隔
Claims (4)
- ビード部に埋設配置した一対の環状のビードコアと、
一対のビードコア間にトロイダルに延びる本体部および、該本体部に連続してビードコアの周りで折り返してなる折り返し部を有する少なくとも一枚のカーカスプライからなるカーカスと、
該カーカスのクラウン域の外周側に配設したトレッドゴムとを具え、
前記ビードコアの、タイヤ幅方向の断面形状を、カーカスプライの本体部側に一箇所以上の角部を有する多角形としてなる空気入りタイヤであって、
前記ビードコアの周囲に、ビードコアの横断面中心線に対して傾斜させて螺旋状に巻き回された形に構成され、ゴムで被覆された、一本もしくは複数本の有機繊維コードを含む、少なくとも二層積層されている有機繊維補強層を有し、
ビードコアの周囲の、内外に隣接する前記有機繊維補強層のそれぞれの有機繊維コードを、ビードコアの横断面中心線に対して互いに交差する向きに延在させ、
前記内外に隣接する有機繊維補強層のうち、内層側の有機繊維補強層は、前記ゴムで被覆された有機繊維コードがタイヤ周方向に重なり合うことなく、少なくとも一部にタイヤ周方向の隙間を設けて巻回され、外層側の有機繊維補強層は、前記ゴムで被覆された有機繊維コードがタイヤ周方向に重なり合うことがなく、前記隙間の少なくとも一部を覆うように設けられてなる空気入りタイヤ。 - カーカスプライの本体部と、ビードコアの、該本体部側の角部との、タイヤ幅方向の距離を、2mm以上かつ3mm以下としてなる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- タイヤ幅方向断面にて、前記ビードコアの、タイヤ半径方向の長さと、タイヤ幅方向の長さとの比を、1:0.8〜1.2とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
- 空気入りタイヤを製造する方法であって、
環状をなすビードコア素材の周囲に、二層以上の有機繊維補強層素材を形成するに当り、
ビードコア素材の周囲に、有機繊維コードに未加硫ゴムを被覆してなるリボン状ストリップを、ビードコア素材の横断面中心線に対して傾斜させて延在させるとともに、
該リボン状ストリップを、前記ビードコア素材の周方向に隣接するストリップ部分を相互に重ね合わせずに螺旋状に巻き回して、内層側の補強層素材を形成し、
しかる後、内層側の補強層素材の周囲に、リボン状ストリップを、内層側の補強層素材の、前記ストリップ部分の相互間に生じる隙間の外周側で、内層側の補強層素材のストリップ延在方向と交差する方向に、前記ビードコア素材の周方向に隣接するストリップ部分を相互に重ね合わせずに螺旋状に巻き回して、外層側の補強層素材を形成する、空気入りタイヤの製造方法。
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