JP5876833B2 - 抗1本鎖iv型コラーゲンポリペプチド抗体、並びに該抗体を含む医薬、及び腫瘍の診断薬、予防薬、又は治療薬 - Google Patents
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Description
<1> Anti NK−Antigen monoclonal antibody #141(受託番号:FERM BP−11300)のハイブリドーマ株により産生され、1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドに特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体である。
<2> H鎖が配列番号5〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含み、L鎖が配列番号8〜10のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含む前記<1>に記載のモノクローナル抗体である。
<3> H鎖が配列番号11〜13のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含み、L鎖が配列番号14〜16のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含む前記<1>に記載のモノクローナル抗体である。
<4> GIGIPGLRG(配列番号41)で表されるアミノ酸配列を含むエピトープを認識する前記<1>から<3>のいずれかに記載のモノクローナル抗体である。
<5> 前記<1>に記載のモノクローナル抗体が有する相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)を含むことを特徴とするモノクローナル抗体である。
<6> 前記<2>に記載のモノクローナル抗体が有する、H鎖が配列番号5〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含み、L鎖が配列番号8〜10のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とするモノクローナル抗体である。
<7> 前記<3>に記載のモノクローナル抗体が有する、H鎖が配列番号11〜13のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含み、L鎖が配列番号14〜16のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とするモノクローナル抗体である。
<8> 前記<4>に記載のモノクローナル抗体が認識する、GIGIPGLRG(配列番号41)で表されるアミノ酸配列を含むエピトープを認識することを特徴とするモノクローナル抗体である。
<9> ヒト型化されてなる前記<5>から<8>のいずれかに記載のモノクローナル抗体である。
<10> 前記<1>に記載のモノクローナル抗体が有する相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)をヒト抗体へ移植してなることを特徴とするモノクローナル抗体である。
<11> H鎖が配列番号5〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含み、L鎖が配列番号8〜10のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とするモノクローナル抗体である。
<12> H鎖が配列番号11〜13のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含み、L鎖が配列番号14〜16のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とするモノクローナル抗体である。
<13> GIGIPGLRG(配列番号41)で表されるアミノ酸配列を含むエピトープを認識することを特徴とするモノクローナル抗体である。
<14> ヒト型化されてなる前記<11>から<13>のいずれかに記載のモノクローナル抗体である。
<15> Anti NK−Antigen monoclonal antibody #141(受託番号:FERM BP−11300)であることを特徴とするハイブリドーマ株である。
<16> 前記<1>から<14>のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含むことを特徴とする医薬である。
<17> 前記<1>から<14>のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含むことを特徴とする腫瘍の診断薬、予防薬又は治療薬である。
<18> 腫瘍が、1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドを発現している癌細胞を含む腫瘍である前記<17>に記載の腫瘍の診断薬、予防薬又は治療薬である。
<19> 前記<1>、<2>、<4>から<6>、<8>から<11>、<13>、及び<14>のいずれかに記載のモノクローナル抗体の部分構造であって、
前記モノクローナル抗体が有する相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)を含み、前記CDRが、配列番号5〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含み、且つ配列番号8〜10のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とするモノクローナル抗体の部分構造である。
<20> 前記<1>、<3>から<5>、<7>から<10>、及び<12>から<14>のいずれかに記載のモノクローナル抗体の部分構造であって、
前記モノクローナル抗体が有する相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)を含み、前記CDRが、配列番号11〜13のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含み、且つ配列番号14〜16のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とするモノクローナル抗体の部分構造である。
本発明のモノクローナル抗体(以下、「抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体」、「NK46141」などと称することがある)は、以下の第1〜第3の形態を含む。
前記第1の形態としての前記モノクローナル抗体は、Anti NK−Antigen monoclonal antibody #141(受託番号:FERM BP−11300)のハイブリドーマ株により産生され、1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドに特異的に結合する抗体である。前記Anti NK−Antigen monoclonal antibody #141は、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに国際寄託されているハイブリドーマ株である(受領日2010年10月5日)。
前記第2の形態としての前記モノクローナル抗体は、H鎖が、配列番号5〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含み、L鎖が配列番号8〜10のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含むモノクローナル抗体、又は、H鎖が配列番号11〜13のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含み、L鎖が配列番号14〜16のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含むモノクローナル抗体である。
前記第3の形態としての前記モノクローナル抗体は、GIGIPGLRG(配列番号41)で表されるアミノ酸配列を含むエピトープを認識するモノクローナル抗体である。
なお、前記第1〜第3の形態のモノクローナル抗体は、いずれも1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドに特異的に結合する抗体である。また、前記第1〜第3の形態に係るモノクローナル抗体は、前記特徴を有する限り、それぞれ同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
前記第1の形態に係る抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体は、前記Anti NK−Antigen monoclonal antibody #141(受託番号:FERM BP−11300)のハイブリドーマ株により産生される抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体そのものの他、例えば、該抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体の部分構造を含むキメラ抗体、ヒト型化抗体、ヒト抗体、マウス抗体なども、本発明の範囲内として含まれる。これらの中でも、ヒト型化抗体、ヒト抗体が特に好ましい。
前記CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、抗体の抗原への結合親和性が高い抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じて、抗体の抗原への結合親和性が高い抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるFRのアミノ酸を置換してもよい。
なお、前記第1の形態に係る抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体の前記CDRにおける配列番号5〜16で表されるアミノ酸配列の少なくともいずれかは、1個若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列であってもよい。
前記部分構造としては、前記1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドを特異的に認識する前記抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体の一部であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抗原(1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド)と結合する、Fab、F(ab’)2、V領域、相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)、scFv(一本鎖抗体)等を含む部分構造などが挙げられる。
前記第2の形態に係る抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体は、H鎖が配列番号5〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含み、L鎖が配列番号8〜10のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含むモノクローナル抗体、又は、H鎖が配列番号11〜13のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含み、L鎖が配列番号14〜16のいずれかで表されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1種を含むモノクローナル抗体である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第2の形態に係る抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体には、前記H鎖及び前記L鎖を含む、キメラ抗体、ヒト型化抗体、ヒト抗体、マウス抗体なども、本発明の範囲内として含まれる。これらの中でも、ヒト型化抗体、ヒト抗体が特に好ましい。
なお、前記第2の形態に係る抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体において、前記配列番号5〜16で表されるアミノ酸配列の少なくともいずれかは、1個若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列であってもよい。
前記部分構造としては、前記1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドを特異的に認識する前記抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体の一部であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抗原(1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド)と結合する、Fab、F(ab’)2、V領域、CDR、scFv(一本鎖抗体)等を含む部分構造などが挙げられる。
前記第3の形態に係る抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体は、GIGIPGLRG(配列番号41)で表されるアミノ酸配列を含むエピトープを認識する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第3の形態に係る抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体には、前記配列番号41で表されるアミノ酸配列を認識する、キメラ抗体、ヒト型化抗体、ヒト抗体、マウス抗体なども、本発明の範囲内として含まれる。これらの中でも、ヒト型化抗体、ヒト抗体が特に好ましい。
なお、前記エピトープにおいて、前記配列番号41で表されるアミノ酸配列は、1個若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列であってもよい。
前記部分構造としては、前記1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドを特異的に認識する前記抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体の一部であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抗原(1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド)と結合する、Fab、F(ab’)2、V領域、CDR、scFv(一本鎖抗体)等を含む部分構造などが挙げられる。
前記1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドを産生するヒト細胞株より調製したtotal RNAを用いて、IV型コラーゲンα1遺伝子(COL4A1、NCBI Gene ID:1282)の全長をクローニングし、COL4A1発現ベクター(野生型)を作製する。次に、クローニングしたCOL4A1のcDNAをテンプレートとして、様々なCOL4A1の変異体の発現ベクター(変異型)も併せて作製する。前記作製した野生型又は変異型COL4A1発現ベクターを適当な培養細胞株(例えば、ヒト細胞株)に導入し、野生型又は変異型1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドを一過性に過剰発現させる。野生型又は変異型1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドを一過性に発現させた培養細胞の上清あるいは細胞抽出液を用いて、1次抗体として前記抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体を用いたウエスタンブロッティングを実施することにより、抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体が認識する1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドのエピトープの同定が可能である。
前記第1〜第3の形態の抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体の作製方法としては、特に制限はなく、公知の手法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、免疫学的手法、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法などが挙げられる。これらの中でも、免疫学的手法が好ましい。
例として、免疫学的手法による抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体の作製を次に示す。
次に、得られた抗体産生細胞と骨髄腫細胞株とを融合してハイブリドーマを得る。続いて、このハイブリドーマをモノクローナル化した後、前記1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドに対して高い特異性を有する抗体を産生するクローンを選択する。選択されたクローンの培養液を精製することによって目的の抗体が得られる。
本発明のハイブリドーマ株は、Anti NK−Antigen monoclonal antibody #141株と呼ばれ、受託番号:FERM BP−11300(受領日2010年10月5日)として独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に国際寄託されている。
前記ハイブリドーマ株は、前記抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体を産生することができる。
本発明の医薬は、本発明の前記抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体及び/又はその部分構造を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の成分を含む。本発明において前記部分構造は、1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドのCDR又はエピトープを認識する部分、即ち抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体の抗原結合部位を含むことが好ましい。
本発明の医薬は、後述する本発明の腫瘍の診断薬、予防薬又は治療薬(例えば、抗癌剤など)として好適に用いられる。
前記医薬に用いられる担体の具体例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ブドウ糖、グリセリン、エタノールなどの1種以上、並びにそれらの組み合わせなどが挙げられる。多くの場合、組成物内に等張性の物質、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、又は塩化ナトリウムが含まれることが好ましい。医薬に用いられる担体が、湿潤剤若しくは乳化剤、防腐剤又は緩衝剤などの微量の補助的物質を更に含んでもよく、これらのものは、抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体又は該抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体の部分構造の保存性又は有効性を高める点で有利である。
前記医薬の剤形は、特段限定されない。例えば、液体、半固体及び固形の剤形であり、具体的には、溶液(例えば、注射可能な溶液及び不溶性の溶液)、分散液若しくは懸濁液、錠剤、丸薬、粉剤、リポソーム、座薬などが挙げられる。
前記剤形は、投与経路や適応症に応じて適宜選択されるが、好ましくは、注射可能な剤形である。注射可能な剤形の好ましい組成としては、注射可能な溶液又は不溶性の溶液の剤形が挙げられ、筋肉内注射、好ましくは、皮下注射に適したものが挙げられる。
前記医薬の投与経路は、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内等の非経口が好ましい。好ましくは皮下であるが、注射の他、インプラント、経皮貼布、及びマイクロカプセル化送達システムを含めた制御放出製剤((Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems)、ジェイ・アール・ロビンソン(J.R.Robinson)編、マルセル・デッカー社(Marcel Dekker、Inc.)、ニューヨーク、1978を参照)などの、前記抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体及び/又は又はその部分構造を急激な放出から保護するような担体を用いて活性化合物を調製してもよい。エチレン酢酸ビニル、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などの生物分解性、生物適合性ポリマーを用いることができる。
例えば、前記医薬を、硬質又は軟質のゼラチンカプセル内に封入及び/又は圧縮して錠剤としてもよい。また、不活性な希釈剤又は吸収可能な食用になる担体と共に経口投与してもよい。更には被験体の食物に直接組み込んでもよい。治療のための経口投与に関して、前記抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体及び/又は又はその部分構造を賦形剤と一緒に組み込んで、そして摂取用の錠剤、舌下錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、カシェ剤などの剤形で用いてもよい。
また、実際の投与量は、個体の病状、年齢、性別及び体重等に応じて適宜調整される。なお、本発明においての予防のための投与とは、術後の再発防止、又は疾患の初期段階で増悪を抑制するための投与を指す。
本発明の腫瘍の診断薬、予防薬又は抗癌剤は、前記抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体を少なくとも含む。前記腫瘍の診断薬は、診断用キットの形態で提供される場合があり、前記キットも本発明に含まれる。
前記腫瘍の診断用キットは、前記抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体を少なくとも含み、必要に応て、そのほかに、標識物質、あるいは抗1本鎖IV型コラーゲンポリペプチド抗体又はその標識物を固定した固相化試薬などを含んでもよい。
前記抗原量の検出は、公知の免疫学的測定法に従って行えばよく、例えば、免疫沈降法、免疫凝集法、標識免疫測定法、免疫比懸濁法、ウエスタンブロット法、フローサイトメトリー法などを用いることができる。
前記腫瘍の有無を評価するには、前記検出結果に基づき、所定の基準値を境界として腫瘍に罹患しているか否かを判断する。腫瘍の悪性度は、癌がどの程度進行しているのかを示す指標となるものであり、前記検出結果に基づき、病期(Stage)を分類して評価したり、あるいは早期癌、進行癌を分類して評価したりすることも可能である。例えば、上記検査結果を指標として早期癌又は進行癌であると評価することも可能である。前記腫瘍の転移は、前記検出結果を指標として、原発巣の位置から離れた部位に新生物が出現しているか否かにより評価する。前記腫瘍の再発は、間欠期又は寛解の後に検出結果が再び所定の基準値を超えたか否かにより評価する。
10容量%胎児牛血清(Tissue Culture Biologicals社製)を添加したRPMI1640培地(Mediatech社製)を用いて、ヒト肝癌細胞株HLF(RIKEN CELL BANKより入手)及びヒト腎臓癌細胞株UO31(National Cancer Institute製)を、それぞれ37℃、5%CO2の条件下で培養した。細胞がコンフルエントになった時点で、無血清RPMI1640培地に交換後48時間培養し、その後培養上清を回収した。この培養上清に4×泳動サンプル用緩衝液〔8(質量/容量)%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、40(容量)% glycerol、20(容量)% 2−mercaptoethanol、0.008(質量/容量)% bromphenol blue、0.25M Tris−HCl、pH6.8、(以下の実施例において、泳動サンプル用緩衝液は、同様の組成のものを使用した)〕を1/4量(体積比)を加え、90℃で5分間加熱してサンプルを作製した〔還元処理(+)〕。また、前記4×泳動サンプル用緩衝液に2−mercaptoethanolを含まないこと以外は同様の操作を行ったサンプルも作製した〔還元処理(−)〕。
ヌードラット(F344/N−rnu/rnu、7週齢、日本クレア社製)皮下で継代したヒト肺癌Lu65A(JCRB:Japanese Collection of Research Bioresourcesより入手)腫瘍塊を約3mm角のブロックにし、套管針を用いてヌードラットの背側部皮下に移植し、腫瘍体積がおよそ200mm3以上になった時点で、癌組織を採取した。組織抽出緩衝液(pH7.4、0.1M NaCl/PBS、5mM EDTA、protease inhibitor cocktail(Roche社製)、1mM PMSF)を湿重量の4倍量を加えてホモジェナイズした。その後、12,000回転で5分間遠心し、遠心上清を回収した。この上清に4×泳動サンプル用緩衝液を1/4量(体積比)を加え、90℃で5分間加熱してサンプルを作製した〔還元処理(+)〕。また、前記4×泳動サンプル用緩衝液に2−mercaptoethanolを含まないこと以外は同様の操作を行ったサンプルも作製した〔還元処理(−)〕。
実施例1において、ヒト肝癌細胞株HLF及びヒト腎臓癌細胞株UO31から、ヒト癌細胞株〔Lu65A(JCRB:Japanese Collection of Research Bioresourcesより入手)、NCI−H460(National Cancer Institute製)、NCI−H226(National Cancer Institute製)、MDA−MB−157(ATCC:American Type Culture Collectionより入手)、A498(ATCCより入手)、Panc−1(東北大学加齢医学研究所附属医用細胞資源センターより入手)、OVCAR3(東北大学加齢医学研究所附属医用細胞資源センターより入手)、又はHT1080(大日本製薬株式会社製)〕に変えた以外は、実施例1と同様の方法で各ヒト癌細胞株における1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドの発現を確認した。
また、実施例2において、ヒト肺癌Lu65Aから、HLF(RIKEN CELL BANKより入手)に変えたこと以外は、実施例2と同様の方法で、ヌードラット皮下移植ヒト腫瘍組織における1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドの発現を確認した。
さらにヒト臨床肺癌組織(Asterand社製、Sample ID:110443A1、112523A1、107811A1、111540B1、112294A1及び111541A1)、又は肺癌患者より得られたヒト臨床正常肺組織(Asterand社製、Sample ID:98859B2、112279B1及び112301B1)は、組織抽出緩衝液(pH7.4、0.1M NaCl/PBS、5mM EDTA、protease inhibitor cocktail(Roche社製)、1mM PMSF)を湿重量の4倍量を加えてホモジェナイズした。その後、12,000回転で5分間遠心し、遠心上清を回収した。この上清に前記4×泳動サンプル用緩衝液に2−mercaptoethanolを含まない前記4×泳動サンプル用緩衝液を1/4量(体積比)を加え、90℃で5分間加熱してサンプルを作製した〔還元処理(−)〕。
ヒト臨床肺癌組織及び肺癌患者より得られたヒト臨床正常肺組織における1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドの発現では、内部標準としてβ−アクチン量を調べるために、抗β−アクチン抗体(SIGMA社製)を用いた。
なお、前記ヒト臨床組織において、癌組織及び正常肺組織は、専門医が病理学的に判別したものである。
表1に示すように、10種のヒト癌細胞株及び2種のヌードラット皮下移植ヒト腫瘍組織で1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドの発現が確認された。また、図3に示すように、6例の全てのヒト臨床肺癌組織で1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドの高発現が確認された。一方、肺癌患者より得られたヒト臨床正常肺組織での1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドの発現は僅かであった。
<1本鎖IV型コラーゲンα1ポリペプチドの調製>
−細胞と細胞培養−
ヒト肝癌細胞株HLF(RIKEN CELL BANK)を10容量%胎児牛血清(Tissue Culture Biologicals社製)を添加したRPMI1640培地(Mediatech社製)を用いて、37℃、5%CO2の条件下で培養し、維持した。
Takahashi,Sらの方法(Takahashi,S.et al.“Connective Tissue”(1999)vol.31;p.161−168)を参考に、1本鎖IV型コラーゲンα1ポリペプチドを、無血清RPMI1640培地(Mediatech社製)中で7日間培養したヒト肝癌HLF細胞の培地から、イムノアフィニティー精製した。
簡潔に記載すると、先ずHiTrap NHS−activated HPカラム(GE Healthcare社製)に4.2mgのJK132抗体を固定化することで、JK132アフィニティーカラムを作製した。JK132アフィニティーカラムは、0.2M glycin−HCl、pH2.5で洗浄した。
<モノクローナル抗体(NK46141)のスクリーニング>
−免疫−
実施例4で調製した1本鎖IV型コラーゲンα1ポリペプチド(抗原)を用いてメスのBalb/cマウス(日本エスエルシー株式会社)を腹腔注射により免疫した。初回免疫は、一匹あたりFreundの完全アジュバント(DIFCO社製)中の100μg若しくは20μgの1本鎖IV型コラーゲンα1ポリペプチドを投与し、以降は、RIBIアジュバント(Corixa社製)中の20μg〜50μgの1本鎖IV型コラーゲンα1ポリペプチドを投与した。免疫は、それぞれ2週間〜3週間の間隔で行った。最後に免疫の7日間後に25μgの1本鎖IV型コラーゲンα1ポリペプチドを含む食塩加リン酸バッファー(PBS)で追加免疫することにより動物の抗体価を高めた。
追加免疫の3日間後、免疫した高抗体価の動物から脾臓細胞を常法により調製し、該脾臓細胞と、P3.X63−Ag8.653マウス骨髄腫細胞(ATCCより入手、#CRL−1580)とを、ポリエチレングリコール4000(SIGMA社製)を用いて融合した。公知のKohler及びMilsteinの技術を用いて、ハイブリドーマ細胞をHAT培地〔FBS(Hyclone社製)10質量%、D(+)−Glucose(和光純薬工業株式会社製)500μM、ペニシリン−ストレプトマイシン(Invitrogen社製)2質量%、ヒポキサンチンナトリウム(Invitrogen社製)100μM、アミノプテリン(Invitrogen社製)0.1μM、及びチミジン(Invitrogen社製)16μMをRPMI1640(Invitrogen社製)に懸濁して作製;以下の実施例においても同様の組成のものを使用した。〕中のマイクロタイタープレート(NUNC社製)で選択した。
前記免疫した動物の抗体価を、下記に示すELISA法を用いた血清中の抗体価の測定により選択した。先ず、マイクロタイタープレート(NUNC社製)を1本鎖IV型コラーゲンα1ポリペプチド(抗原)でコートした。次いで1(質量/容量)%BSA/TBS(20mM Tris−HCl、150mM・NaCl、pH7.5)−0.05(容量)% Tween20でブロッキングしたウェルに連続希釈した血清を添加しインキュベートした。1本鎖IV型コラーゲンα1ポリペプチド(抗原)に結合した抗体をマウス免疫グロブリンに対するパーオキシターゼ結合抗体で検出した。
1本鎖IV型コラーゲンα1ポリペプチド(抗原)(50mM炭酸バッファー中1μg/ml濃度)を96ウェルマイクロタイタープレート(NUNC社製)に室温で2時間固定した。次いでプレートをTBS/0.05容量)% Tween20で洗浄し、プレート表面のフリーの吸着部分を1(質量/容量)% BSA/TBS−0.05(容量)% Tween20を用いてブロックし(室温で30分間)、再びTBS/0.05(容量)% Tween20で洗浄した。ハイブリドーマ培養上清をそれぞれウェルに加え、室温で1時間反応させた。その後、プレートをTBS/0.05(容量)% Tween20で洗浄し、次いで1(質量/容量)% BSA/TBS−0.05(容量)% Tween20中に希釈したパーオキシターゼ結合マウス抗IgG抗体(BETHYL Laboratories、#E90−131)を50μL/ウェル加えた。室温で1時間インキュベートした後、プレートをTBS/0.05(容量)% Tween20で洗浄し、基質溶液(クエン酸バッファー(pH5)、0.05(質量/容量)% o−フェニレンジアミン、0.03容量% H2O2)をウェルに100μL/ウェルで加えた。20分間〜30分間後、2N硫酸で反応を止め、分光光度計で490nmの吸光度を測定した。
このようにして得られたハイブリドーマ株は、Anti NK−Antigen monoclonal antibody #141(以下、「#141株」と称することがある)として、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに国際寄託した(受領日2010年10月5日)。
前記抗体産生ハイブリドーマ#141株を、HAT培地を用いて、37℃、5%CO2の条件下で培養した培養上清を調製した。また、前記抗体産生ハイブリドーマ#141株を腹腔内投与し、7日間〜10日間後に採取したマウス腹水をフィルターでろ過して不溶物を除去した。
前記抗体産生ハイブリドーマ培養上清、若しくは前記マウス腹水を、常法に従ってProtein G−sepharose4B(GE Helthecare)を充填したカラムに通して抗体成分を吸着させた後、非特異吸着分を除去してから酸性条件におくことで、遊離したモノクローナル抗体を回収し精製抗体とした。得られた精製抗体は、100倍量(体積比)のPBS緩衝液に透析して置換した。本発明者らは、このモノクローナル抗体を「NK46141」と名付けた。
サンドイッチELISA法を用いて、NK46141のアイソタイプを測定した。抗マウスIgGヤギポリクローナル抗体(DAKO社製)50μl(固相抗体、50mM炭酸バッファーで1,000倍希釈)を96ウェルマイクロタイタープレート(NUNC社製)6ウェルに分注し、室温で2時間固定した。次いでウェルをTBS/0.05(容量)% Tween20で洗浄し、ウェル表面のフリーの吸着部分を1(質量/容量)% BSA/TBS−0.05(容量)% Tween20を用いてブロックし(室温で30分間)、再びTBS/0.05(容量)% Tween20で洗浄した。
この各ウェルにNK46141産生ハイブリドーマの培養上清を50μl添加し、室温で1時間反応させた。その後、ウェルをTBS/0.05(容量)% Tween20で洗浄し、1(質量/容量)% BSA/TBS−0.05(容量)% Tween20で1,000倍に希釈した6種類の検出用抗体(HRP標識抗マウスIgG1ヤギ抗体、HRP標識抗マウスIgG2aヤギ抗体、HRP標識抗マウスIgG2bヤギ抗体、HRP標識抗マウスIgG3ヤギ抗体、HRP標識抗マウスIgAヤギ抗体、HRP標識抗マウスIgGMヤギ抗体;全てBETHYL社製)をウェルごとに1種類ずつ50μL加えた。室温で1時間インキュベートした後、TBS/0.05(容量)% Tween20で洗浄し、基質溶液(クエン酸バッファー(pH5.0)、0.05(質量/容量)% o−フェニレンジアミン、0.03容量%H2O2)を各ウェルに100μ加えた。20分間〜30分間後、2N硫酸で反応を止め、分光光度計で490nmの吸光度を測定した。
その結果NK46141のアイソタイプはIgG2bであることが判明した。
免疫沈降分析は、0.5μgの精製モノクローナル抗体(NK46141)と、実施例1と同様の方法で培養した、500μlの1本鎖IV型コラーゲンα1ポリペプチドを発現しているヒト肝癌胞株HLFの培養上清とを4℃でローテーションしながら30分間インキュベートした。陽性対照としては、NK46141に代えてJK132を用いたこと以外は、前記同様の操作を行った。アイソタイプ対照としては、NK46141に代えてMouse IgG2b(Isotype Control)(Functional Grade、MBL社製、M077−3M2)を用いたこと以外は、前記同様の操作を行った。また、陰性対照としては、免疫沈降用の1次抗体を含まないPBSのみを用いたこと以外は、前記同様の操作を行った。
次に、Dynabeads M−280 Sheep anti−Mouse IgG二次抗体(dynabeads結合ヤギ抗マウスIgG、ベリタス社製、#DB11201)を10μl加え、4℃でローテーションしながら1時間インキュベートした。また、陰性対照として、ヒト肝癌胞株HLFの培養上清にDynabeads M−280 Sheep anti−Mouse IgG二次抗体を加え、同様にインキュベートした。
マグネットに2分間静置し、上清を除き、500μlのwash buffer(PBS中に0.05(容量)% Tween20、2mM EDTAを含む)で、Dynabeadsを3回洗浄した。Dynabeadsに50μlの2−mercaptoethanolを含まない1×泳動サンプル用緩衝液を添加し、90℃で5分間加熱し、サンプルを調製した。このサンプルに対して、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動及びPVDF膜への転写を行った。そしてPVDF膜をAb6586でインキュベーションし、実施例1と同様に分析した。
<モノクローナル抗体NK46141の結合親和性>
Djavadi−Ohaniance L.らの方法〔Djavadi−Ohaniance L.、et al.(1996)In Antibody Engineering(Eds.:McCafferty J.、et al.)、Chapter 4、pp.77−97.IRL Press、Oxford.〕を参考に、ELISA法を用いて、精製モノクローナル抗体NK46141の解離定数を求めた。
簡潔に記載すると、予め1本鎖IV型コラーゲンα1ポリペプチド(抗原)を固相化したイムノプレート(Nunc社製)を準備した。一方、一定濃度(0.10μg/ml)のJK132及びNK46141を様々な濃度の抗原と平衡に達するまでの充分な時間インキュベーションした。このインキュベーション液をELISAウェルに添加して、Free抗体の量を求めた。抗原抗体反応は、質量作用の法則により、下記式1に実測値を当てはめ、下記式2のX及びYを求めてグラフを描くことにより、その傾き(1/Kd)から解離定数を求めた。
x/[全抗体濃度]×1/[Free抗原]=(1−x/[全抗体濃度])×1/Kd
ここで、
X=x/[全抗体濃度]、Y=x/([全抗体濃度]×[Free抗原]
とおくと、
(式2)
Y=(1−X)×1/Kd
その結果を表2に示す。
<モノクローナル抗体NK46141が認識するエピトープ部位の解析>
サンドイッチELISA法を用いて、抗原(1本鎖IV型コラーゲンα1ポリペプチド)に対する反応性を評価した。実施例5で精製したモノクローナル抗体NK46141(固相抗体、50mM炭酸バッファー中5μg/ml濃度)を96ウェルマイクロタイタープレート(NUNC社製)に室温で2時間固定した。次いでプレートをTBS/0.05(容量)% Tween 20で洗浄し、プレート表面のフリーの吸着部分を1(質量/容量)% BSA/TBS−0.05(容量)% Tween20を用いてブロックし(室温で30分間)、再びTBS/0.05(容量)% Tween20で洗浄した。抗原として1本鎖IV型コラーゲンα1ポリペプチド(1(質量/容量)% BSA/TBS−0.05(容量)% Tween 20中1μg/ml)をウェルに加え、室温で1時間反応させた。その後、プレートをTBS/0.05(容量)% Tween20で洗浄し、次いでPeroxidase Labeling Kit−SH(WAKO社製)を用いて検出用にHRP標識抗体とした単クローン抗体を50μL/wellで加えた。室温で1時間インキュベートした後、プレートをTBS/0.05(容量)% Tween20で洗浄し、基質溶液(クエン酸バッファー(pH5)、0.05(質量/容量)% o−フェニレンジアミン、0.03容量%H2O2)をウェルに100μL/ウェルで加えた。20分間〜30分間後、2N硫酸で反応を止め、分光光度計で490nmの吸光度を測定した。その結果を表3に示す。
<ヌードマウス移植ヒト肺癌細胞株に対する抗腫瘍効果>
ヒト肺癌細胞株Lu65A(JCRBより入手)を10容量%胎児牛血清(Tissue Culture Biologicals社製)を添加したRPMI1640培地(Mediatech社製)を用いて、37℃、5%CO2の条件下で培養し、維持した。注射筒を用いて2×106個/0.2mlのLu65A細胞懸濁液をヌードマウス(Balb/cAJcl−nu/nu、9週齢、日本クレア社製)の背側部皮下に移植した。
モノクローナル抗体NK46141を腫瘍の移植前日、移植後3日目、7日目、10日目、及び14日目の計5回、尾静脈に投与した。NK46141は、生理食塩水(大塚製薬株式会社製)で稀釈して用いた。対照群には生理食塩水を用いた。
Lu65A移植後7日目、10日目、14日目、17日目、及び21日目の腫瘍体積を測定した。なお、腫瘍体積は、腫瘍の長径(Lmm)及び短径(Wmm)を計測し、(L×W2)/2により算出した。
結果を図6に示す。ヒト肺癌細胞Lu65A皮下移植マウスモデルにおいて、NK46141(30mg/kg)投与群は、NK46141を投与しなかった対照群に比べて有意(p値<0.05、t検定)に腫瘍体積が小さかったことから、NK46141が腫瘍組織の増殖を抑制することが明らかとなった。
<NK46141のCDR配列の決定>
ハイブリドーマ#141株より、RNeasy(QIAGEN社製)を用いてtotal RNAを得た。得られたtotal RNAから、5’‐RACE PCR法により、NK46141のH鎖及びL鎖の可変領域のcDNAを増幅しクローニングを行った。DNAシーケンシング及びN末端アミノ酸配列分析により、NK46141のH鎖若しくはL鎖の可変領域の遺伝子配列(配列番号1及び2)及びアミノ酸配列(配列番号3及び4)を決定した。
NK46141のCDRは、NK46141のアミノ酸配列と既知抗体のCDRアミノ酸配列とを比較して決定した。即ち、IMGT Repertoireデータベース(http://www.imgt.org/IMGTrepertoire/)、IMGTデータベース(IMGT/LIGM−DBデータベース(http://www.imgt.org/IMGTlect/)及びKabatデータベース(http://www.kabatdatabase.com)を用いて、NK46141と相同性の高い既知抗体遺伝子を検索し、この抗体遺伝子のCDRアミノ酸配列情報からNK46141のCDRを決定した。
<NK46141が認識するエピトープ配列の同定>
NK46141が認識するエピトープ部位の絞込みを実施するために、以下に示す方法で、様々な変異型1本鎖IV型コラーゲンペプチドを作製した。
1本鎖IV型コラーゲンペプチドを産生するヒト肝癌細胞HLF細胞株より、RNeasy(QIAGEN社製)を用いてtotal RNAを得た。得られたtotal RNAから、逆転写酵素(SuperscriptIII,Invitrogen社製)を用いてHLF細胞由来のcDNAを調製した。HLF細胞由来のcDNAをテンプレートとして、配列番号17及び18で表されるプライマー配列を用いて、野生型IV型コラーゲンα1遺伝子(COL4A1、NCBI Gene ID:1282)をPCRにより増幅し、クローニングを行った。クローニングした野生型COL4A1は、DNAシーケンシングにより、変異がないことを確認した。
前記野生型COL4A1を、pENTR1A(Invitrogen社製)へサブクローニングし、LR clonase(Invitrogen社製)を用いて、野生型COL4A1発現ベクターを作製した。
1本鎖IV型コラーゲンα1ポリペプチドの第29残基〜第488残基のアミノ酸を欠失させた変異型COL4A1組換えタンパク質を得るため、以下の方法で変異型COL4A1発現ベクター1を作製した。
前記1本鎖IV型コラーゲンペプチドの第29残基〜第488残基のアミノ酸欠失部位に相当する塩基を欠失させるため、前記野生型COL4A1発現ベクターをテンプレートとし、配列番号19及び20で表されるプライマー配列を用いてPCRによりcDNAを増幅させた。次いで、前記野生型COL4A1発現ベクターの作製において、野生型COL4A1を前記PCR産物に変えたこと以外は、前記野生型COL4A1発現ベクターの作製と同様の方法で変異型COL4A1発現ベクター1を作製した
前記変異型COL4A1発現ベクター1の作製において、配列番号19及び20で表されるプライマー配列を、配列番号21及び22で表されるプライマー配列に変えたこと以外は、前記変異型COL4A1発現ベクター1の作製と同様の方法で変異型COL4A1発現ベクター2を作製した。
前記変異型COL4A1発現ベクター2は、前記1本鎖IV型コラーゲンペプチドの第29残基〜第989残基のアミノ酸欠失部位に相当する塩基を欠失させた発現ベクターである。
前記変異型COL4A1発現ベクター1の作製において、配列番号19及び20で表されるプライマー配列を、配列番号23及び24で表されるプライマー配列に変えたこと以外は、前記変異型COL4A1発現ベクター1の作製と同様の方法で変異型COL4A1発現ベクター3を作製した。
前記変異型COL4A1発現ベクター3は、前記1本鎖IV型コラーゲンペプチドの第29残基〜第1,066残基のアミノ酸欠失部位に相当する塩基を欠失させた発現ベクターである。
そこで、作製した野生型COL4A1発現ベクター及び変異型COL4A1発現ベクター1〜3を、それぞれヒト胎児腎細胞由来293FT細胞(Invitrogen社製)に導入して一過性に野生型あるいは変異型の1本鎖IV型コラーゲンペプチドを発現させた。以下、野生型COL4A1発現ベクターを用いて発現させた、1本鎖IV型コラーゲンペプチドのアミノ酸配列の全長を有する野生型組換えタンパク質を「FL」、変異型COL4A1発現ベクター1を用いて発現させた変異型組換えタンパク質を「Δ29〜488」、変異型COL4A1発現ベクター2を用いて発現させた変異型組換えタンパク質を「Δ29〜989」、変異型COL4A1発現ベクター3を用いて発現させた変異型組換えタンパク質を「Δ29〜1,066」と称することがある。
図7Aは、野生型1本鎖1本鎖IV型コラーゲンペプチド(FL)又は3種類の変異型1本鎖IV型コラーゲンペプチド(Δ29〜488、Δ29〜989、及びΔ29〜1,066)を示す概略説明図である。
前記変異型COL4A1発現ベクター1の作製において、テンプレートとしての野生型COL4A1発現ベクターを、前記変異型COL4A1発現ベクター2に変え、配列番号19及び20で表されるプライマー配列を、配列番号25及び26で表されるプライマー配列に変えたこと以外は、前記変異型COL4A1発現ベクター1の作製と同様の方法で変異型COL4A1発現ベクター4を作製した。次いで、変異型COL4A1発現ベクター4のC末端に、常法によりmycエピトープを付加した。
前記変異型COL4A1発現ベクター4は、前記1本鎖IV型コラーゲンペプチドの第29残基〜第989残基及び第1,067残基〜第1,669残基のアミノ酸欠失部位に相当する塩基を欠失させた発現ベクターである。
前記変異型COL4A1発現ベクター4の作製において、配列番号25及び26で表されるプライマー配列を、配列番号27及び28で表されるプライマー配列に変えたこと以外は、前記変異型COL4A1発現ベクター4の作製と同様の方法で変異型COL4A1発現ベクター5を作製した。次いで、変異型COL4A1発現ベクター5のC末端に、常法によりmycエピトープを付加した。
前記変異型COL4A1発現ベクター5は、前記1本鎖IV型コラーゲンペプチドの第29残基〜第989残基及び第1,020残基〜第1,669残基のアミノ酸欠失部位に相当する塩基を欠失させた発現ベクターである。
前記変異型COL4A1発現ベクター4の作製において、テンプレートとしての変異型COL4A1発現ベクター2を、前記変異型COL4A1発現ベクター4に変え、配列番号25及び26で表されるプライマー配列を、配列番号29及び30で表されるプライマー配列に変えたこと以外は、前記変異型COL4A1発現ベクター4の作製と同様の方法で変異型COL4A1発現ベクター6を作製した。次いで、変異型COL4A1発現ベクター6のC末端に、常法によりmycエピトープを付加した。
前記変異型COL4A1発現ベクター6は、前記1本鎖IV型コラーゲンペプチドの第29残基〜第1.019残基及び第1,067残基〜第1,669残基のアミノ酸欠失部位に相当する塩基を欠失させた発現ベクターである。
図9は、3種類の変異型1本鎖IV型コラーゲンペプチド(990〜1,066myc、990〜1,019myc、及び1,020〜1,066myc)を示す概略説明図である。
前記変異型COL4A1発現ベクター1の作製において、配列番号19及び20で表されるプライマー配列を、配列番号31及び32で表されるプライマー配列に変えたこと以外は、前記変異型COL4A1発現ベクター1の作製と同様の方法で変異型COL4A1発現ベクター7を作製した。
前記変異型COL4A1発現ベクター7は、前記1本鎖IV型コラーゲンペプチドの第1,020残基〜第1,066残基のアミノ酸欠失部位に相当する塩基を欠失させた発現ベクターである。
前記変異型COL4A1発現ベクター1の作製において、配列番号19及び20で表されるプライマー配列を、配列番号33及び34で表されるプライマー配列に変えたこと以外は、前記変異型COL4A1発現ベクター1の作製と同様の方法で変異型COL4A1発現ベクター8を作製した。
前記変異型COL4A1発現ベクター8は、前記1本鎖IV型コラーゲンペプチドの第1,020残基〜第1,049残基のアミノ酸欠失部位に相当する塩基を欠失させた発現ベクターである。
前記変異型COL4A1発現ベクター1の作製において、配列番号19及び20で表されるプライマー配列を、配列番号35及び36で表されるプライマー配列に変えたこと以外は、前記変異型COL4A1発現ベクター1の作製と同様の方法で変異型COL4A1発現ベクター9を作製した。
前記変異型COL4A1発現ベクター9は、前記1本鎖IV型コラーゲンペプチドの第1,050残基〜第1,066残基のアミノ酸欠失部位に相当する塩基を欠失させた発現ベクターである。
図9Aは、3種類の変異型1本鎖IV型コラーゲンペプチド(Δ1,020〜1,066、Δ1,020〜1,049、及びΔ1,050〜1,066)を示す概略説明図である。
その結果、NK46141が認識するエピトープは、IV型コラーゲンα1ポリペプチドのアミノ酸配列の第1,056残基〜第1,064残基に存在するアミノ酸配列“GIGIPGLRG”(配列番号41)で表されるペプチドであることが明らかとなった(図10の#5)。
Claims (17)
- Anti NK−Antigen monoclonal antibody #141(受託番号:FERM BP−11300)のハイブリドーマ株により産生され、1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドに特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体。
- 配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域と、を含む請求項1に記載のモノクローナル抗体。 - 配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号13で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号14で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号15で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号16で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域と、を含む請求項1に記載のモノクローナル抗体。 - GIGIPGLRG(配列番号41)で表されるアミノ酸配列を含むエピトープを認識する請求項1から3のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
- 請求項2に記載のモノクローナル抗体が有するCDRを含むモノクローナル抗体であって、
重鎖可変領域が、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含み、且つ
軽鎖可変領域が、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含み、
1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドに特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体。 - 請求項3に記載のモノクローナル抗体が有するCDRを含むモノクローナル抗体であって、
重鎖可変領域が、配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号13で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含み、且つ
軽鎖可変領域が、配列番号14で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号15で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号16で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含み、
1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドに特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体。 - 請求項4に記載のモノクローナル抗体が認識する、GIGIPGLRG(配列番号41)で表されるアミノ酸配列を含むエピトープを認識することを特徴とするモノクローナル抗体。
- ヒト型化されてなる請求項5から7のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
- 配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域と、を含み、
1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドに特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体。 - 配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号13で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号14で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号15で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号16で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域と、を含み、
1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドに特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体。 - ヒト型化されてなる請求項9から10のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
- Anti NK−Antigen monoclonal antibody #141(受託番号:FERM BP−11300)であることを特徴とするハイブリドーマ株。
- 請求項1から11のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含むことを特徴とする医薬。
- 請求項1から11のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含むことを特徴とする腫瘍の診断薬、予防薬又は治療薬。
- 腫瘍が、1本鎖IV型コラーゲンポリペプチドを発現している癌細胞を含む腫瘍である請求項14に記載の腫瘍の診断薬、予防薬又は治療薬。
- 請求項1、2、4、5、7から9、及び11のいずれかに記載のモノクローナル抗体の部分構造であって、
前記モノクローナル抗体が有する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域が、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含み、且つ
前記軽鎖可変領域が、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含むことを特徴とするモノクローナル抗体の部分構造。 - 請求項1、3、4、6〜8、10、及び11のいずれかに記載のモノクローナル抗体の部分構造であって、
前記モノクローナル抗体が有する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域が、配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号13で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含み、且つ
前記軽鎖可変領域が、配列番号14で表されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号15で表されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号16で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含むことを特徴とするモノクローナル抗体の部分構造。
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