配列表の簡単な説明
配列番号:1は、ヒト補体受容体2(CR2)の完全アミノ酸配列である。
配列番号:2は、ヒトCR2のショートコンセンサスリピート(SCR)ドメイン1および2の完全アミノ酸配列である。
配列番号:3は、ヒトCD59タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:4は、マウス補体受容体1関連遺伝子/タンパク質y(Crry)の完全アミノ酸配列である。
配列番号:5は、ヒトH因子のアミノ酸配列である。
配列番号:6は、ヒトASP/C3adesArgのアミノ酸配列である。
配列番号:7は、ヒトASP/C3adesArg受容体(C5L2)のアミノ酸配列である。
配列番号:8は、マウスCD59Aタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:9は、マウスCD59Bタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:10は、マウスH因子のアミノ酸配列である。
配列番号:11は、ヒト補体受容体1(CR1)のアミノ酸配列である。
配列番号:12は、ヒト膜補因子タンパク質(MCP)のアミノ酸配列である。
配列番号:13は、ヒト崩壊促進因子(DAF/CD55)のアミノ酸配列である。
配列番号:14は、マウス崩壊促進因子(DAF/CD55)のアミノ酸配列である。
配列番号:15は、ヒトクラスタリンタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:16は、マウスクラスタリンタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:17は、ヒトビトロネクチンタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:18は、マウスビトロネクチンタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:19は、ヒトC1インヒビタータンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:20は、マウスC1インヒビタータンパク質のアミノ酸配列である。
発明の詳細な説明
補体阻害は、肝臓IRIに対する防御のための潜在的治療ストラテジーであるが、肝再生における補体の重要な役割は、IRIが再生障害と関連しているにもかかわらず、補体阻害が肝切除およびSFS肝移植術の状況において実行可能な治療ストラテジーでない可能性があることを示唆する。本明細書に提示した本実施例のデータにより、補体依存性機構および肝再生と対比したIRIにおける補体の相対的寄与、ならびに肝臓のIRIと再生の関係のより良好な理解が得られよう。また、このデータは、肝広範囲切除またはSFS肝移植術後の転帰を改善するための補体調節アプローチを示す。
肝広範囲切除またはサイズ不足肝移植術後に肝臓が再生されないと、多くの場合、肝機能不全および臓器不全または移植片不全がもたらされる。肝臓を損傷させ、再生を障害する肝虚血およびその後の再灌流(I/R)は、かかる複雑な外科処置の際には不可避である。IRIに関与する病原性の機構は複雑で多面的であるが、補体の活性化が枢要な起始め事象であることは明白である。C3欠損と補体阻害の両方により、I/R後の肝臓の損傷および炎症が防御される。
C3とC5の欠損により、中毒性障害または部分肝切除術(PHx、肝切除と類似)のいずれかの後で肝再生障害がもたらされることが示されている。再生における補体の活性化生成物C3aおよびC5aの役割が、C3a受容体(C3aR)欠損マウスの使用、C3aRおよびC5aRのアンタゴニストでのマウスの処置、ならびに再構築実験によって示されている(13〜15)。データは、C3aおよびC5aが、TNFaとIL−6の発現ならびにその後の転写因子NF−κBとSTAT3の活性化に対する効果により、増殖応答の早期プライミング事象に寄与していることを示す(14)。
肝脂肪症の有意な増大はC3欠損と関連している(実施例参照)。C3切断生成物であるC3aは肝再生に役割を果たしているため、およびC3aの分解形態であるアシル化刺激タンパク質(ASP、またはC3adesArg)は脂質の代謝に役割を果たしているため、本発明者らは、PHx後のC3−/−マウスにおけるASP/C3adesArg再構築の効果を調べた。先の研究により、肝臓の増殖応答は、反復用量のC3aで再構築させたC3−/−マウスにおいて回復されること(14)、および肝再生はC3aR−/−マウスでは障害されることが示されている(13)。しかしながら、ASP/C3adesArgはC3aRに結合しない。ASP/C3adesArgの唯一の既知受容体であるC5L2(23〜26,34,35)もC3a(およびC5a/C5adesArg)に結合し、トリグリセリドの合成とクリアランスに重要な役割を果たす(25,26)。15μgのASP/C3adesArgをPHx後のC3−/−マウスに投与すると、肝脂肪症が有意に低減され、損傷が防御され、BrdU取込み(細胞増殖の尺度)が野生型マウスで見られるレベルまで回復し、C3−/−マウスで見られたSTAT3リン酸化の減少が逆転された。したがって、増殖応答における補体の関与はC3aRシグナル伝達に非依存性であるかもしれず、ASP/C3adesArgがPHx後の肝臓保護と肝再生に枢要な役割を果たしていることが示される。
予期に反して、PHx後に高用量のASP/C3adesArg(50μg)でC3−/−マウスに再構築させると、肝再生は回復せず、重度の損傷が誘導された。さらに、低用量または高用量いずれかのASP/C3adesArgで処置した野生型マウスでは、未処置野生型動物と比べて、再生障害を伴う肝臓損傷の有意な増大が示された。C3aおよびASP/C3adesArgはどちらも肝再生に役割を果たしているとともに、どちらのペプチドも炎症促進特性を有しているが、C末端ArgをC3aから除去すると一部のものは不活化される(26,38)。肝臓MPO活性およびTNFaとIL−6の血清レベルで見られたC3−/−マウスにおける高用量ASP/C3adesArg処置と関連する有意な増大は、ASP/C3adesArgの炎症促進特性を証明しており、PHx後の最適な肝再生には補体の活性化、C3a、およびASP/C3adesArg生成に閾値が存在することを示す。実際、TNFaとIL−6は肝再生に重要な役割を果たしているが、これらのサイトカインは、明らかに損傷と肝臓保護および再生とに二元的役割を果たしている(27,39)。IL−6依存性のプロセスは、主に保護的応答と関連しているが、TNFaの発現は、炎症および損傷と明白に関連しており、これらのサイトカインが互いの発現を調節しているのかもしれない。
したがって、本発明者らは、IRIと肝再生障害の関連における補体依存性の均衡を確認し、PHx後の最適な肝再生には補体の活性化、C3a、およびASP/C3adesArg生成に閾値が存在し、該閾値より上にC3a、ASP/C3adesArgおよび他の補体活性化生成物のレベルが増大すると、均衡が損傷および再生障害に傾くことを示す。この所見により、肝広範囲切除またはサイズ不足肝移植術を受けた患者が、補体阻害のモジュレーションの恩恵を受けられるかもしれないことが示唆される。
補体調節タンパク質
補体を調節するいくつかの内因性の可溶性膜結合型タンパク質が同定されている。このような補体調節タンパク質としては、限定されないが、膜補因子タンパク質(MCP)、崩壊促進因子(DAF/CD55)、CD59、マウス補体受容体1関連遺伝子/タンパク質y(Crry)、ヒト補体受容体1(CR1)およびH因子が挙げられる。
膜補因子タンパク質は、CD46(MCP/CD46)(配列番号:12)としても知られた、広く分布しているC3b/C4b結合性細胞表面糖タンパク質であり、宿主細胞上で補体の活性化を阻害する。いくつかの他の補体調節タンパク質と同様、MCPは、ショートコンセンサスリピート(SCR)と称されるおよそ60個のアミノ酸のいくつかの反復モチーフを含む。MCPは、アミノ末端から始めて、4つのSCRドメイン、セリン/トレオニン/プロリンリッチ領域、機能が不明の領域、膜貫通疎水性ドメイン、細胞質アンカーおよび細胞質テールで構成されている。
崩壊促進因子は、CD55(DAF/CD55)(配列番号:13および配列番号:14)としても知られた、約70キロダルトン(kDa)の膜結合型糖タンパク質であり、宿主細胞上で補体の活性化を阻害する。いくつかの他の補体調節タンパク質と同様、DAFは、ショートコンセンサスリピート(SCR)と称されるおよそ60個のアミノ酸のいくつかの反復モチーフを含む。アミノ末端から始めて、DAFは、4つのSCRドメイン、重度O−グリコシル化セリン/トレオニンリッチドメイン、およびグリコシルホスファチジルイノシトールアンカーを含む。DAFは、補体の第二経路および古典的経路のC3変換酵素とC5変換酵素の両方の組織化を抑制し、崩壊を促進させる。
CD59(配列番号:3、配列番号:8および配列番号:9)は、C8とC9に結合することによりMACの組織化をブロックするが、補体オプソニンまたはC3aおよびC5aの生成には影響を及ぼさない補体の膜結合型インヒビターである。CD59の可溶性形態(sCD59)が生成されているが、これは、一般的に、特に血清の存在下ではインビトロでの機能活性が低く、非修飾型sCD59には治療有効性がほとんどまたは全くないことを示す。例えば、S.Meriら、“Structural composition and functional characterization of soluble CD59:heterogeneity of the oligosaccharide and glyophosphoinositol(GPI)anchor revealed by laser−desorption mass spectrometric analysis,” Biochem.J.:923−935(1996)を参照のこと。
マウスタンパク質補体受容体1関連遺伝子/タンパク質y(Crry)(配列番号:4)は、宿主組織上に沈着したC3bおよびC4bを切断するセリンプロテアーゼである補体因子Iの補因子としての機能を果たすことにより補体の活性化を調節する補体の膜結合型インヒビターである。また、Crryは、崩壊促進因子としての機能も果たし、補体カスケードの増幅変換酵素のC4bC2aとC3bBbの形成を妨げる。
補体受容体1(CR1)(配列番号:11)タンパク質は、補体オプソニン作用性免疫複合体のプロセッシングとクリアランスのための主要な系である。CR1は、補体カスケードを負に調節し、免疫付着とファゴサイトーシスを媒介し、補体の古典的経路と第二経路の両方を阻害する。CR1タンパク質は、47個のアミノ酸のシグナルペプチド、1930個のアミノ酸の細胞外ドメイン、25個のアミノ酸の膜貫通ドメイン、および43個のアミノ酸のC末端細胞質領域を有する。CR1の大きな細胞外ドメイン(25個の潜在的N−グリコシル化部位を有する)は、各々が60〜70個のアミノ酸を有する30個のショートコンセンサスリピート(SCR)ドメイン(補体制御タンパク質 リピートまたはスシドメインとしても知られている)に分けられ得る。この30個のSCRドメインは、さらに、長鎖相同リピート(LHR)と称される4つの長鎖領域に分類され、該領域は、各々がおよそ45kDのタンパク質をコードしており、LHR−A、−B、−C、および−Dで指定される。
H因子(配列番号:5および配列番号:10)は、一連のビーズのような連続様式で配列され、かつ短いリンカー配列(各々、2〜6個のアミノ酸)で分断されたおよそ60個のアミノ酸の20個のSCRドメインで構成された血漿糖タンパク質である。H因子はC3bに結合し、第二経路のC3変換酵素(C3bBb)の崩壊を促進させ、C3bのタンパク質分解性不活化の補因子としての機能を果たす。H因子の存在下では、C3bのタンパク質分解 によりC3bの切断がもたらされる。H因子は、SCR1〜4、SCR5〜8およびSCR19〜20に存在する少なくとも3つの相違するC3bに対する結合ドメインを有する。H因子の各部位は、C3bタンパク質内の相違する領域に結合する:N末端部位は天然C3bに結合し;H因子の中央領域に存在する第2部位はC3c断片に結合し、SCR19〜20内に存在する部位はC3d領域に結合する。また、H因子はヘパリンに対する結合部位も含み、該部位は、SCR7、SCR5〜12およびSCR20内に存在し、一部はC3b結合部位と重複している。H因子の補体阻害活性のためのドメインは、最初の4つのN末端SCRドメインSCR1〜4に存在している。
補体インヒビターを補体活性化部位および疾患部位にターゲット送達することにより、その有効性が改善され得る。補体は、宿主の防御と免疫の形成、ならびに免疫恒常性の機構(免疫複合体の異化およびアポトーシス細胞のクリアランスなど)に重要な役割を果たしているため、補体インヒビターのターゲット送達により、全身性補体阻害、特に、長期補体阻害に起因する潜在的に重篤な副作用が低減される。
補体タンパク質C3はチモーゲンである。インタクトなC3は高濃度(1〜2mg/ml)で循環している。M.Janziら、Mol.Cell.Proteomics(2005)4(12):1942−1947。補体の活性化中、完全体のC3が切断されてC3bが形成され、これが標的表面に共有結合される。内因性の補体調節タンパク質よって組織結合型C3bが不活性化されてiC3bが形成され、最終的に35キロダルトン(「kD」)のC3d断片になる。C3d断片は、組織に固定されたままであり、補体媒介性炎症の耐久性マーカーとしての機能を果たす。I.Leivoら、J.Cell.Biol。(1986)103:1091−1100。
ヒト補体受容体2は、CD21(CR2/CD21)(配列番号:1および配列番号:2)としても知られた、C3結合タンパク質ファミリーの約145kDの膜貫通タンパク質であり、かかるタンパク質に特徴的な構造的単位ショートコンセンサスリピート(SCR)ドメインを15個または16個含む。CR2は、成熟B細胞および濾胞樹状細胞上で発現され、体液性免疫に重要な役割を果たしている。J.Hannanら、Biochem.Soc.Trans.(2002)30:983−989;K.A.Youngら,J.Biol.Chem.(2007)282(50):36614−36625。CR2タンパク質は、インタクトなC3タンパク質には結合しないが、その分解生成物、例えば、C3b、iC3bおよびC3d切断断片には、CR2タンパク質の最初の2つのアミノ末端ショートコンセンサスリピート(「SCR1〜2」)内に存在する結合部位によって結合する。そのため、CR2のSCR1〜2ドメインにより、C3の切断(すなわち、活性化)形態とインタクトな循環C3が識別される。したがって、標的化基として、CR2のSCR1〜2は、循環C3と補体の活性化中に生成されたC3断片を識別することができるものである。C3dに対するCR2の親和性は、わずか620〜658nMである(J.Hannanら,Biochem.Soc.Trans.(2002)30:983−989;J.M.Guthridgeら、Biochem.(2001)40:5931−5941)が、クラスター化C3dに対するCR2のアビディティにより、補体活性化部位に分子を標的化させる有効な方法となる。
C3の切断により、まず、活性化されている細胞表面上でのC3bの生成と沈着がもたらされる。C3b断片は、補体カスケードを増幅させる酵素性複合体の生成に関与している。細胞表面上では、C3bは、特に、補体活性化の調節因子を含む宿主表面上に沈着している場合(すなわち、ほとんどの宿主組織)、不活性なiC3bに速やかに変換される。膜結合型補体調節因子の非存在下であっても、血清H因子の作用のため、相当なレベルのiC3bが形成される。続いて、iC3bは膜結合型断片C3dgに消化され、次いで、I因子および他のプロテアーゼによってC3dに消化されるが、このプロセスは比較的遅い。このため、CR2のC3リガンドは、生成されたら比較的長寿命であり、補体活性化部位に高濃度で存在する。
定義
「組成物(“the composition”または“compositions”)」に対する一般的な言及は、本発明の組成物を包含し、本発明の組成物に適用され得る。
本明細書で用いる場合、単数形の冠詞「a」、「an」および「the」は、特に記載のない限り、複数の指示対象物を包含する。例えば、語句「生物学的に活性なCR2断片(a biologically active CR2 fragment)」は、1つ以上の生物学的に活性なCR2断片を包含する。
本明細書における「約」の値またはパラメータに対する言及は、該値またはパラメータ自体に関する実施形態を含む(を示す)。例えば、「約X」に言及した記載は「X」の記載を含む。
本明細書に記載の発明の態様および実施形態には、該態様および該実施形態からなるもの、および/または本質的に該態様および該実施形態からなるものが含まれることは理解されよう。
本明細書で用いる場合、用語「個体」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトをいう。哺乳動物としては、限定されないが、研究用動物、飼養動物、家畜、競技用動物、愛玩動物、霊長類、マウスおよびラットが挙げられる。一部の特定の実施形態では、個体はヒトである。一部の特定の実施形態では、個体はヒト以外の個体である。一部の特定の実施形態では、個体は、補体第二経路が関与している疾患の研究のための動物モデルである。
組成物
本明細書において、肝再生の刺激方法における使用のための組成物を提供する。一部の特定の実施形態では、組成物は、ターゲット型補体インヒビターを含むものである。一部の特定の実施形態では、組成物は、非ターゲット型補体インヒビターを含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターおよび非ターゲット型補体インヒビターは、補体の古典的経路および補体第二経路を阻害する。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターおよび非ターゲット型補体インヒビターは、補体第二経路を特異的に阻害する。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターおよび非ターゲット型補体インヒビターは、終末補体および細胞膜傷害複合体(MAC)の形成を阻害する。
一部の特定の実施形態では、組成物は、ASP/C3adesArgアンタゴニストを含むものである。一部の特定の実施形態では、組成物は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストを含むものである。
ターゲット型補体インヒビター
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2部分と補体インヒビター部分を含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、標的化部分と補体インヒビター部分を含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、完全長のヒト(配列番号:3)もしくはマウス(配列番号:8もしくは配列番号:9)CD59タンパク質またはその生物学的に活性な断片もしくはホモログを含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、完全長マウスCrryタンパク質(配列番号:4)またはその生物学的に活性な断片もしくはホモログを含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、完全長のヒト(配列番号:5)もしくはマウス(配列番号:10)H因子(配列番号:5)またはその生物学的に活性な断片もしくはホモログを含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、ヒト補体受容体1(CR1)(配列番号:11)またはその生物学的に活性な断片もしくはホモログを含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、ヒト膜補因子タンパク質(MCP)(配列番号:12)またはその生物学的に活性な断片もしくはホモログを含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、完全長のヒト(配列番号:13)もしくはマウス(配列番号:14)崩壊促進因子(DAF)またはその生物学的に活性な断片もしくはホモログを含むものである。
一部の特定の実施形態では、CR2部分は、完全長CR2タンパク質(配列番号:1)またはその生物学的に活性な断片を含むものである。CR2は、主に成熟B細胞上および濾胞樹状細胞上で発現される膜貫通タンパク質である。CR2は、C3結合タンパク質ファミリーの構成員である。CR2の天然リガンドとしては、例えば、iC3b、C3dg、およびC3d、ならびにCR2(配列番号:2)の2つのN末端SCRドメインに結合するC3bの細胞結合型分解断片が挙げられる。C3の切断により、まず、C3bの生成と、活性化されている細胞表面へのこのC3bの共有結合がもたらされる。C3b断片は、補体カスケードを増幅させる酵素性複合体の生成に関与している。細胞表面上では、C3bは、特に、補体活性化の調節因子を含む宿主表面上に沈着している場合(すなわち、ほとんどの宿主組織)、不活性なiC3bに速やかに変換される。膜結合型補体調節因子の非存在下であっても、相当なレベルのiC3bが形成される。続いて、iC3bは膜結合型断片C3dgに消化され、次いで、血清プロテアーゼによってC3dに消化されるが、このプロセスは比較的遅い。このため、CR2のC3リガンドは、生成されたら比較的長寿命であり、補体活性化部位に高濃度で存在する。したがって、CR2は、分子を補体活性化部位に結合させるための強力な標的化媒体としての機能を果たし得る。
CR2は、ショートコンセンサスリピート(SCRドメイン)として知られる15または16個の反復単位を有する細胞外部分を含む。SCRドメインは、典型的には、高度に保存された残基(例えば、4つのシステイン、2つのプロリン、1つのトリプトファンおよびいくつかの他の一部保存グリシン)と疎水性残基のフレームワークを有する。配列番号:1は、15個のSCRドメインを有する完全長ヒトCR2タンパク質配列を表す。配列番号:1のアミノ酸1〜20はリーダーペプチドを含み、配列番号:1のアミノ酸23〜82はSCR1を含み、配列番号:1のアミノ酸91〜146はSCR2を含み、配列番号:1のアミノ酸154〜210はSCR3を含み、配列番号:1のアミノ酸215〜271はSCR4を含む。活性部位(C3d結合部位)は、SCR1〜2(最初の2つのN末端SCRドメイン)(配列番号:2)に存在している。これらのSCRドメインは、スペーサーとしての機能を果たす種々の長さの短い配列によって分断されている。開示したペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質には種および系統の異形体が存在すること、ならびに本明細書に記載のCR2またはその断片には、あらゆる種および系統の異形体が包含されることは理解されよう。
一部の特定の実施形態では、CR2部分は、CR2タンパク質のリガンド結合部位の一部または全部を含むポリペプチドを含むものであり、限定されないが、完全長CR2タンパク質(配列番号:1に示すヒトCR2など)、可溶性CR2タンパク質(CR2の細胞外ドメインを含むCR2断片など)、CR2の他の生物学的に活性な断片、SCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2断片、または天然に存在するCR2の任意のホモログもしくはその断片(以下に詳細に記載する)が挙げられる。一部の実施形態では、CR2部分は、CR2の(or)以下の特性:(1)C3dに結合する能力、(2)iC3bに結合する能力、(3)C3dgに結合する能力、(4)C3dに結合する能力、および(5)CR2の2つのN末端SCRドメインに結合するC3bの1種類以上の細胞結合型断片に結合する能力の少なくとも1つを有する。
一部の特定の実施形態では、CR2部分は、CR2(配列番号:2)の最初の2つのN末端SCRドメインを含むものである。一部の特定の実施形態では、CR2部分は、CR2の最初の3つのN末端SCRドメインを含むものである。一部の特定の実施形態では、CR2部分は、CR2の最初の4つのN末端SCRドメインを含むものである。一部の特定の実施形態では、CR2部分は、CR2の少なくとも最初の2つのN末端SCRドメイン(例えば、CR2の少なくとも最初の3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個などのいずれかの個数のSCRドメイン)を含む(一部の実施形態では、該ドメインからなる、または本質的に該ドメインからなる)ものである。
一部の特定の実施形態では、CR2部分は、CR2タンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片を含むものである。CR2タンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片としては、天然に存在するCR2(またはCR2断片)と、少なくとも1個または数個のアミノ酸が欠失(例えば、ペプチドもしくは断片などの該タンパク質の切断型)、挿入、逆転、置換および/または誘導体化されている点(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミテート化(palmitation)、アミド化および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加によって)で異なるが、1種類以上の天然に存在するCR2リガンドに結合する能力を保持しているタンパク質が挙げられる。一部の特定の実施形態では、CR2ホモログは、天然に存在するCR2(例えば、配列番号:1)のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一、例えば、天然に存在するCR2(例えば、配列番号:1)のアミノ酸配列と少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかの割合で同一であるアミノ酸配列を有する。CR2ホモログまたはその断片は、好ましくは、天然に存在するCR2のリガンド(例えば、C3dまたはCR2結合能を有する他のC3断片)に結合する能力を保持している。例えば、CR2ホモログ(またはその断片)は、C3dに対して、CR2(またはその断片)の結合親和性の少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%である結合親和性を有するものであり得る。
一部の特定の実施形態では、CR2部分は、ヒトCR2の少なくとも最初の2つのN末端SCRドメイン(ヒトCR2(配列番号:1)の少なくともアミノ酸23〜146を含むアミノ酸配列を有するCR2部分など)を含むものである。一部の特定の実施形態では、CR2部分は、ヒトCR2(配列番号:1)のアミノ酸23〜146と少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかの割合で同一であるアミノ酸配列を有するヒトCR2の少なくとも最初の2つのSCRドメインを含むものである。
一部の特定の実施形態では、CR2部分は、ヒトCR2の少なくとも最初の4つのN末端SCRドメイン、ヒトCR2(配列番号:1)の少なくともアミノ酸23〜271を含むアミノ酸配列を有するCR2部分など)を含むものである。一部の特定の実施形態では、CR2部分は、ヒトCR2(配列番号:1)のアミノ酸23〜271と少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかの割合で同一であるアミノ酸配列を有するヒトCR2の少なくとも最初の4つのSCRドメインを含むものである。
例えば、参照配列(配列番号:1など)と少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列は、該アミノ酸配列に、参照配列のアミノ酸100個ごとに5箇所までの改変が含まれ得ること以外は、参照配列と同一である。このような5箇所までの改変は欠失、置換(例えば、保存的置換)、付加であり得、配列内のどの箇所に存在していてもよく、参照配列のアミノ酸において個々に、または参照配列内の1箇所以上の連続した群のいずれかで散在したものであり得る。
一部の特定の実施形態では、CR2部分は、CR2タンパク質のリガンド結合部位の一部または全部を含むものである。一部の特定の実施形態では、CR2部分は、さらに、結合部位の3次元構造を維持するのに必要とされる配列を含むものであり得る。CR2のリガンド結合部位は、CR2の結晶構造(米国特許出願公開番号2004/0005538に開示されたヒトおよびマウスのCR2の結晶構造など)に基づいて容易に決定され得る。例えば、一部の特定の実施形態では、CR2部分は、CR2のSCR2のB鎖とB−Cループを含むものである。一部の特定の実施形態では、CR2部分は、配列番号:1と比較して、セグメントG98−G99−Y100−K101−I102−R103−G104−S105−T106−P107−Y108を含むCR2 SCRのB鎖上の一部位とB−Cループを含むものである。一部の特定の実施形態では、CR2部分は、配列番号:1と比較して、K119位を含むCR2 SCR2のB鎖上の一部位を含むものである。一部の特定の実施形態では、CR2部分は、配列番号:1と比較して、V149−F150−P151−L152を含むセグメントを含むものである。一部の特定の実施形態では、CR2部分は、T120−N121−F122を含むCR2 SCR2のセグメントを含むものである。一部の特定の実施形態では、CR2−FH分子は、これらの部位の2つ以上を有するものである。例えば、一部の特定の実施形態では、CR2部分は、配列番号:1と比較して、G98−G99−Y100−K101−I102−R103−G104−S105−T106−P107−Y108およびK119を含む部分を含むものである。これらの部位の他の組合せも想定される。
一部の特定の実施形態では、標的化部分は非CR2標的化部分を含む。一部の特定の実施形態では、非CR2標的化部分は、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体断片である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト化抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト抗体である。
本明細書で用いる場合、用語「膜補因子タンパク質」、「MCP」または「CD46」は、広く分布しているC3b/C4b結合性細胞表面糖タンパク質をいい、これは、宿主細胞での補体の活性化を阻害し、C3bおよびC4b(そのホモログを含む)のI因子媒介性切断のための補因子としての機能を果たす。T.J.Oglesbyら、J.Exp.Med.(1992)175:1547−1551。MCPは、補体活性化調節因子(「RCA」)として知られているファミリーに属する。このファミリー構成員は、種々の数のショートコンセンサスリピート(SCR)ドメイン(これは、典型的には、60〜70アミノ酸長である)を含む特定の構造上の特徴を共有している。MCPは、4つのSCR、セリン/トレオニン/プロリン富化領域、機能が不明の領域、膜貫通疎水性ドメイン、細胞質アンカーおよび細胞質テールを含む。開示したペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質には種および系統の異形体が存在すること、ならびにヒトMCPまたはその生物学的に活性な断片には、あらゆる種および系統の異形体が包含されることは理解されよう。
配列番号:12は完全長ヒトMCPアミノ酸配列を表す(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P15529参照)。アミノ酸1〜34はシグナルペプチドに対応し、アミノ酸35〜343は細胞外ドメインに対応し、アミノ酸344〜366は膜貫通ドメインに対応し、アミノ酸367〜392は細胞質ドメインに対応する。細胞外ドメインでは、アミノ酸35〜96がSCR1に対応し、アミノ酸97〜159がSCR2に対応し、アミノ酸160〜225がSCR3に対応し、アミノ酸226〜285がSCR4に対応し、アミノ酸302〜326がセリン/トレオニンリッチドメインに対応する。開示したペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質には種および系統の異形体が存在すること、ならびにMCPまたはその生物学的に活性な断片には、あらゆる種および系統の異形体が包含されることは理解されよう。本明細書で用いる場合、MCPの「生物学的に活性な」断片という用語は、細胞質ドメインと膜貫通ドメインの両方がなく、1、2、3もしくは4個のSCRドメインを含む、本質的に該ドメインからなる、もしくは該ドメインからなる断片を含み、セリン/トレオニンリッチドメインを有するか、または有しない、かつ完全長ヒトMCPタンパク質の補体阻害活性の一部または全部を有する任意の可溶性断片をいう。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、完全長ヒトMCP(配列番号:12のアミノ酸35〜392)、ヒトMCPの細胞外ドメイン(配列番号:12のアミノ酸35〜343)、またはヒトMCPのSCR1〜4(配列番号:12のアミノ酸35〜285)を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2部分とMCP部分を含むものである。該融合タンパク質のCR2部分は、当該組成物をIRI部位および/または再生部位(例えば、肝臓部位)に、該部位に存在しているCR2リガンド(すなわち、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d))に選択的に結合することにより送達し、一方、当該ターゲット型補体インヒビターのMCP部分は補体活性を阻害する。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、非CR2標的化部分とMCP部分を含むものである。該融合タンパク質の非CR2標的化部分は、当該組成物をIRI部位および/または再生部位(例えば、肝臓部位)に、該部位に存在しているCR2リガンド(すなわち、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d))に選択的に結合することにより送達し、一方、当該ターゲット型補体インヒビターのMCP部分は補体活性を阻害する。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトMCPタンパク質(配列番号:12のアミノ酸35〜392)と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトMCPの細胞外ドメイン(配列番号:12のアミノ酸35〜343)を含むMCPタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトMCPのSCR1〜4(配列番号:12のアミノ酸35〜285)と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトMCPタンパク質(配列番号:12のアミノ酸35〜392)と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトMCPの細胞外ドメイン(配列番号:12のアミノ酸35〜343)を含むMCPタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトMCPのSCR1〜4(配列番号:12のアミノ酸35〜285)を含むMCPタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトMCPタンパク質(配列番号:12のアミノ酸35〜392)、ヒトMCPの細胞外ドメイン(配列番号:12のアミノ酸35〜343)を含むMCPタンパク質の生物学的に活性な断片、またはヒトMCPのSCR1〜4(配列番号:12のアミノ酸35〜285)を含むMCPタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させた非CR2標的化部分を含むものである。
一部の特定の実施形態では、非CR2標的化部分は、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体断片である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト化抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、ヒトMCPタンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片を含むものである。ヒトMCPタンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片としては、天然に存在するヒトMCP(またはその生物学的に活性な断片)と、少なくとも1個または数個、限定されないが、1個または数個のアミノ酸が欠失(例えば、ペプチドもしくは断片などの該タンパク質の切断型)、挿入、逆転、置換および/または誘導体化されている点(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミテート化、アミド化および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加によって)で異なるタンパク質が挙げられる。例えば、ヒトMCPホモログは、天然に存在するヒトMCP(例えば、配列番号:12)のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一、例えば、天然に存在するヒトMCP(例えば、配列番号:12)のアミノ酸配列と少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかの割合で同一であるアミノ酸配列を有するものであり得る。一部の特定の実施形態では、ヒトMCPのホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトMCP(またはその生物学的に活性な断片)の補体第二経路の阻害活性の全部を保持している。一部の特定の実施形態では、ヒトMCPのホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトMCP(またはその生物学的に活性な断片)の補体阻害活性の少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%または95%のいずれかの割合を保持している。
本明細書で用いる場合、用語「崩壊促進因子」、「DAF」または「CD55」は、4つのショートコンセンサスリピート(SCR)ドメイン、続いて、膜表面から分子を上昇させる重度O−グリコシル化セリン/トレオニンリッチドメインをC末端に含む70キロダルトン(「kD」)の膜糖タンパク質をいう(そのホモログを含む)。DAFは、グリコシルホスファチジルイノシトール(「GPI」)アンカーによって細胞膜にアンカーリングされている。DAFは、補体タンパク質C3の切断および補体第二カスケードの増幅に必要とされる膜結合型C3変換酵素を解離させることにより、細胞表面を補体活性化から保護する。
配列番号:13は、完全長ヒトDAFアミノ酸配列を表し(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P08173参照);配列番号:14は、完全長マウスDAFアミノ酸配列を表す(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号Q61475参照)。ヒトDAF配列において、アミノ酸1〜34はシグナルペプチドに対応し、アミノ酸35〜353は成熟タンパク質に見られ、アミノ酸354〜381は翻訳後に当該ポリペプチドから除去される。成熟タンパク質では、アミノ酸35〜96がSCR1に対応し、アミノ酸96〜160がSCR2に対応し、アミノ酸161〜222がSCR3に対応し、アミノ酸223〜285がSCR4に対応し、アミノ酸287〜353はO−グリコシル化セリン/トレオニンリッチドメインに対応する。GPIアンカーは、ヒトDAFの353位のセリンに結合される。マウスDAF配列では、アミノ酸1〜34がシグナルペプチドに対応し、アミノ酸35〜362が成熟タンパク質に見られ、アミノ酸363〜390が翻訳後にポリペプチドから除去される。成熟タンパク質では、アミノ酸35〜96がSCR1に対応し、アミノ酸97〜160がSCR2に対応し、アミノ酸161〜222がSCR3に対応し、アミノ酸223〜286がSCR4に対応し、アミノ酸288〜362はO−グリコシル化セリン/トレオニンリッチドメインに対応する。GPIアンカーは、マウスDAFの362位のセリンに結合される。開示したペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質には種および系統の異形体が存在すること、ならびにDAFまたはその生物学的に活性な断片には、あらゆる種および系統の異形体が包含されることは理解されよう。本明細書で用いる場合、DAFの「生物学的に活性な」断片という用語は、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−353)が欠損しており、1、2、3もしくは4個のSCRドメインを含む、本質的に該ドメインからなる、もしくは該ドメインからなる完全長のDAFタンパク質の任意の断片を含み、O−グリコシル化セリン/トレオニンリッチドメインを有するか、または有しない、かつ完全長のDAFタンパク質の補体阻害活性の一部または全部を有するDAFの任意の断片をいう。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2部分とDAF部分を含むものである。該融合タンパク質のCR2部分は、当該組成物をIRI部位および/または再生部位(例えば、肝臓部位)に、該部位に存在しているCR2リガンド(すなわち、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d))に選択的に結合することにより送達し、一方、ターゲット型補体インヒビターのDAF部分は補体活性を阻害する。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、非CR2標的化部分とDAF部分を含むものである。該融合タンパク質の非CR2標的化部分は、当該組成物をIRI部位および/または再生部位(例えば、肝臓部位)に、該部位に存在しているCR2リガンド(すなわち、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d))に選択的に結合することにより送達し、一方、ターゲット型補体インヒビターのDAF部分は補体活性を阻害する。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒト崩壊促進因子(DAF)(配列番号:13)と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長マウス崩壊促進因子(DAF)(配列番号:14)と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−353)がないヒト成熟DAFタンパク質(配列番号:13のアミノ酸35〜353)を含むヒトDAFの生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−362)がないマウス成熟DAFタンパク質(配列番号:14のアミノ酸35〜362)を含むマウスDAFの生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトDAFのショートコンセンサスリピート配列1〜4(SCR1〜4)(配列番号:13のアミノ酸35〜285)を含むヒトDAFの生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長マウスDAFのショートコンセンサスリピート配列1〜4(SCR1〜4)(配列番号:14のアミノ酸35〜286)を含むマウスDAFの生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒト崩壊促進因子(DAF)(配列番号:13)と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長マウス崩壊促進因子(DAF)(配列番号:14)と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−353)がないヒト成熟DAFタンパク質(配列番号:13のアミノ酸35〜353)を含むヒトDAFの生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−362)がないマウス成熟DAFタンパク質(配列番号:14のアミノ酸35〜362)を含むマウスDAFの生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトDAFのショートコンセンサスリピート配列1〜4(SCR1〜4)(配列番号:13のアミノ酸35〜285)を含むヒトDAFの生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長マウスDAFのショートコンセンサスリピート配列1〜4(SCR1〜4)(配列番号:14のアミノ酸35〜286)を含むマウスDAFの生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒト崩壊促進因子(DAF)(配列番号:13)、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−353)がないヒト成熟DAFタンパク質(配列番号:13のアミノ酸35〜353)を含むヒトDAFの生物学的に活性な断片、あるいは完全長ヒトDAFのショートコンセンサスリピート配列1〜4(SCR1〜4)(配列番号:13のアミノ酸35〜285)を含むヒトDAFの生物学的に活性な断片と融合させた非CR2標的化部分を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長マウス崩壊促進因子(DAF)(配列番号:14)、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−362)がないマウス成熟DAFタンパク質(配列番号:14のアミノ酸35〜362)を含むマウスDAFの生物学的に活性な断片、あるいは完全長マウスDAFのショートコンセンサスリピート配列1〜4(SCR1〜4)(配列番号:14のアミノ酸35〜286)を含むマウスDAFの生物学的に活性な断片と融合させた非CR2標的化部分を含むものである。
一部の特定の実施形態では、非CR2標的化部分は、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体断片である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト化抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、ヒトもしくはマウスのDAFタンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片を含むものである。ヒトもしくはマウスのDAFタンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片としては、天然に存在するヒトもしくはマウスのDAF(またはその生物学的に活性な断片)と、少なくとも1個または数個、限定されないが、1個または数個のアミノ酸が欠失(例えば、ペプチドもしくは断片などの該タンパク質の切断型)、挿入、逆転、置換および/または誘導体化されている点(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミテート化、アミド化および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加によって)で異なるタンパク質が挙げられる。例えば、ヒトまたはマウスのDAFホモログは、天然に存在するヒトまたはマウスのDAF(例えば、配列番号:13もしくは配列番号:14)のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一、例えば、天然に存在するヒトまたはマウスのDAF(例えば、配列番号:13もしくは配列番号:14)のアミノ酸配列と少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかの割合で同一であるアミノ酸配列を有するものであり得る。一部の特定の実施形態では、ヒトもしくはマウスのDAFのホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトもしくはマウスのDAF(またはその生物学的に活性な断片)の補体阻害活性の全部を保持している。一部の特定の実施形態では、ヒトもしくはマウスのDAFのホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトもしくはマウスのDAF(またはその生物学的に活性な断片)の補体阻害活性の少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%または95%のいずれかの割合を保持している。
本明細書で用いる場合、用語「CD59」は、潜在的に補体の細胞膜傷害複合体(MAC)を阻害する128個のアミノ酸の膜結合型糖タンパク質をいう(そのホモログを含む)。CD59は、MACの組織化の際にC8成分および/またはC9成分に結合し、最終的に、MACの心臓部の浸透圧調整性細孔の完全な形成に必要とされる多コピーのC9の取込みを妨げることにより作用する。CD59は、N−グリコシル化型とO−グリコシル化型の両方がある。N−グリコシル化は、主に、ラクトサミンと外側腕部フコース残基を有する、および有しない、一部の部位に可変的シアリル化が存在するビ−またはトリ−アンテナ構造を含む。DAFと同様、CD59は、グリコシルホスファチジルイノシトール(「GPI」)アンカー(これは、アミノ酸102のアスパラギンに結合される)によって細胞膜にアンカーリングされている。
配列番号:3は、完全長ヒトCD59アミノ酸配列を表し(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P13987参照);配列番号:8は、完全長マウスCD59配列のアイソフォームAを表し(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号O55186参照);配列番号:9は、完全長マウスCD59配列のアイソフォームBを表す(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P58019参照)。ヒトCD59配列において、配列番号:3のアミノ酸1〜25はリーダーペプチドに対応し、配列番号:3のアミノ酸26〜102は成熟タンパク質に対応し、配列番号:3のアミノ酸103〜128は翻訳後に除去される。GPIアンカーは、CD59の配列番号:3の102位のアスパラギンに結合される。マウスCD59配列のアイソフォームAでは、配列番号:8のアミノ酸1〜23がリーダーペプチドに対応し、配列番号:8のアミノ酸24〜96が成熟タンパク質に対応し、配列番号:8のアミノ酸97〜123が翻訳後に除去される。GPIアンカーは、CD59の配列番号:8の96位のセリンに結合される。マウスCD59配列のアイソフォームBでは、配列番号:9のアミノ酸1〜23がリーダーペプチドに対応し、配列番号:9のアミノ酸24〜104が成熟タンパク質に対応し、配列番号:9のアミノ酸105〜129が翻訳後に除去される。GPIアンカーは、CD59の配列番号:9の104位のアスパラギンに結合される。開示したペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質には種および系統の異形体が存在すること、ならびにCD59またはその生物学的に活性な断片には、あらゆる種および系統の異形体が包含されることは理解されよう。本明細書で用いる場合、ヒトCD59の「生物学的に活性な」断片という用語は、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−102)が欠損しており、かつ完全長のCD59タンパク質の補体阻害活性の一部または全部を有する完全長ヒトCD59タンパク質の任意の断片を含むヒトCD59の任意の断片をいい;マウスCD59の「生物学的に活性な」断片という用語は、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、アイソフォームAのSer−96、もしくはアイソフォームBのAsp−104)が欠損しており、かつ完全長のCD59タンパク質の補体阻害活性の一部または全部を有するいずれかの完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームの任意の断片を含むマウスCD59のアイソフォームAまたはアイソフォームBの任意の断片をいう。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターはCR2部分とCD59部分を含むものである。ターゲット型補体インヒビターのCR2部分は、当該組成物をIRI部位および/または再生部位(例えば、肝臓部位)に、該部位に存在しているCR2リガンド(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d)に選択的に結合することにより送達し、一方、ターゲット型補体インヒビターのCD59部分は、終末補体経路の活性と細胞膜傷害複合体(MAC)の組織化を阻害する。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、非CR2標的化部分とCD59部分を含むものである。該融合タンパク質の非CR2標的化部分は、当該組成物をIRI部位および/または再生部位(例えば、肝臓部位)に、該部位に存在しているCR2リガンド(すなわち、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d))に選択的に結合することにより送達し、一方、ターゲット型補体インヒビターのCD59部分は、終末補体とMACの組織化を阻害する。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトCD59タンパク質(配列番号:3)、完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームA(配列番号:8)、または完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームB(配列番号:9)と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−102)が欠損したヒトCD59の細胞外ドメイン(配列番号:3のアミノ酸26〜102)を含むCD59タンパク質の生物学的に活性な断片、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−96)が欠損したマウスCD59アイソフォームAの細胞外ドメイン(配列番号:8のアミノ酸24〜96)を含むマウスCD59タンパク質アイソフォームAの生物学的に活性な断片、あるいはGPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−104)が欠損したマウスCD59アイソフォームBの細胞外ドメイン(配列番号:9のアミノ酸24〜104)を含むマウスCD59タンパク質アイソフォームBの生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトCD59タンパク質(配列番号:3)、完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームA(配列番号:8)、または完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームB(配列番号:9)と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−102)が欠損したヒトCD59の細胞外ドメイン(配列番号:3のアミノ酸26〜102)を含むCD59タンパク質の生物学的に活性な断片、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−96)が欠損したマウスCD59アイソフォームAの細胞外ドメイン(配列番号:8のアミノ酸24〜96)を含むマウスCD59タンパク質アイソフォームAの生物学的に活性な断片、あるいはGPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−104)が欠損したマウスCD59アイソフォームBの細胞外ドメイン(配列番号:9のアミノ酸24〜104)を含むマウスCD59タンパク質アイソフォームBの生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトCD59タンパク質(配列番号:3)、完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームA(配列番号:8)、または完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームB(配列番号:9)と融合させた非CR2標的化部分を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−102)が欠損したヒトCD59の細胞外ドメイン(配列番号:3のアミノ酸26〜102)を含むCD59タンパク質の生物学的に活性な断片、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−96)が欠損したマウスCD59アイソフォームAの細胞外ドメイン(配列番号:8のアミノ酸24〜96)を含むマウスCD59タンパク質アイソフォームAの生物学的に活性な断片、あるいはGPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−104)が欠損したマウスCD59アイソフォームBの細胞外ドメイン(配列番号:9のアミノ酸24〜104)を含むマウスCD59タンパク質アイソフォームBの生物学的に活性な断片と融合させた非CR2標的化部分を含むものである。
一部の特定の実施形態では、非CR2標的化部分は、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体断片である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト化抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、ヒトもしくはマウスのCD59タンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片を含むものである。ヒトもしくはマウスのCD59タンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片としては、天然に存在するヒトもしくはマウスのCD59(またはその生物学的に活性な断片)と、少なくとも1個または数個、限定されないが、1個または数個のアミノ酸が欠失(例えば、ペプチドもしくは断片などの該タンパク質の切断型)、挿入、逆転、置換および/または誘導体化されている点(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミテート化、アミド化および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加によって)で異なるが、終末補体(すなわち、MACの形成)を阻害する能力を保持しているタンパク質が挙げられる。例えば、ヒトもしくはマウスのCD59ホモログは、天然に存在するヒトまたはマウスのCD59(例えば、配列番号:3、配列番号:8または配列番号:9)のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一、例えば、天然に存在するヒトまたはマウスのCD59(例えば、配列番号:3、配列番号:8または配列番号:9)のアミノ酸配列と少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかの割合で同一であるアミノ酸配列を有するものであり得る。一部の特定の実施形態では、ヒトもしくはマウスのCD59のホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトもしくはマウスのCD59(またはその生物学的に活性な断片)の補体第二経路の阻害活性の全部を保持している。一部の特定の実施形態では、ヒトもしくはマウスのCD59のホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトもしくはマウスのCD59(またはその生物学的に活性な断片)の補体阻害活性の少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%または95%のいずれかの割合を保持している。
本明細書で用いる場合、用語「マウス補体受容体1関連遺伝子/タンパク質y」または「Crry」は、補体の活性化を調節する膜結合型マウス糖タンパク質をいう(そのホモログを含む)。Crryは、宿主組織上に沈着したC3bおよびC4bを切断するセリンプロテアーゼである補体因子Iに対して補因子としての機能を果たすことにより、補体の活性化を調節する。また、Crryは、崩壊促進因子としての機能も果たし、補体カスケードの増幅変換酵素C4b2aとC3bBbの形成を妨げる。
配列番号:4は、完全長のマウスCrryタンパク質のアミノ酸配列を表す。アミノ酸1〜40はリーダーペプチドに対応し、配列番号:4のアミノ酸41〜483は、細胞外ドメインに対応する配列番号:4のアミノ酸41〜405、膜貫通ドメインに対応する配列番号:4のアミノ酸406〜426、および細胞質ドメインに対応する配列番号:4のアミノ酸427〜483を含む成熟タンパク質に対応する。細胞外ドメインでは、配列番号:4のアミノ酸83〜143がSCR1に対応し、配列番号:4のアミノ酸144〜205がSCR2に対応し、配列番号:4のアミノ酸206〜276がSCR3に対応し、配列番号:4のアミノ酸277〜338がSCR4に対応し、配列番号:4のアミノ酸339〜400がSCR5に対応する。開示したペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質には種および系統の異形体が存在すること、ならびにマウスCrryタンパク質またはその生物学的に活性な断片には、あらゆる種および系統の異形体が包含されることは理解されよう。本明細書で用いる場合、マウスCrryタンパク質の「生物学的に活性な」断片という用語は、膜貫通ドメインと細胞質ドメインが欠損しており、1、2、3、4または5個のSCRドメインを含む、本質的に該ドメインからなる、または該ドメインからなる断片を含み、かつ完全長のCrryタンパク質の補体阻害活性の一部または全部を有する完全長のマウスCrryタンパク質の任意の断片を含む、マウスCrryの任意の可溶性断片をいう(refers to refers to)。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターはCR2部分とマウスCrry部分を含むものである。ターゲット型補体インヒビターのCR2部分は、当該組成物をIRI部位および/または再生部位(例えば、肝臓部位)に、該部位に存在しているCR2リガンド(例えば、iC3d、C3dg、およびC3d)に選択的に結合することにより送達し、一方、ターゲット型補体インヒビターのマウスCrry部分は補体活性を阻害する。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、非CR2標的化部分とマウスCrry部分を含むものである。該融合タンパク質の非CR2標的化部分は、当該組成物をIRI部位および/または再生部位(例えば、肝臓部位)に、該部位に存在しているCR2リガンド(すなわち、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d))に選択的に結合することにより送達し、一方、ターゲット型補体インヒビターのCrry部分は補体活性を阻害する。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長マウスCrry(配列番号:4)と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスCrryの細胞外ドメイン(配列番号:4のアミノ酸41〜405)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスCrryのSCR1〜4(配列番号:4のアミノ酸83〜338)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスCrryのSCR1〜5(配列番号:4のアミノ酸83〜400)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長のマウスCrryタンパク質(配列番号:4)と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスCrryの細胞外ドメイン(配列番号:4のアミノ酸41〜405)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスCrryのSCR1〜4(配列番号:4のアミノ酸83〜338)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスCrryのSCR1〜5(配列番号:4のアミノ酸83〜400)を含むマウスCrryの生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長のマウスCrryタンパク質(配列番号:4)、マウスCrryの細胞外ドメイン(配列番号:4のアミノ酸41〜405)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片、マウスCrryのSCR1〜4(配列番号:4のアミノ酸83〜338)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片、またはマウスCrryのSCR1〜5(配列番号:4のアミノ酸83〜400)を含むマウスCrryの生物学的に活性な断片と融合させた非CR2標的化部分を含むものである。
一部の特定の実施形態では、非CR2標的化部分は、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体断片である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト化抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、マウスCrryタンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片を含むものである。マウスCrryタンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片としては、天然に存在するマウスCrryタンパク質(またはその生物学的に活性な断片)と、少なくとも1個または数個、限定されないが、1個または数個のアミノ酸が欠失(例えば、ペプチドもしくは断片などの該タンパク質の切断型)、挿入、逆転、置換および/または誘導体化されている点(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミテート化、アミド化および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加によって)で異なるが、補体を阻害する能力を保持しているタンパク質が挙げられる。例えば、マウスCrryタンパク質のホモログは、天然に存在するマウスCrryタンパク質(例えば、配列番号:4)のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一、例えば、天然に存在するマウスCrryタンパク質(例えば、配列番号:4)のアミノ酸配列と少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかの割合で同一であるアミノ酸配列を有するものであり得る。一部の特定の実施形態では、マウスCrryタンパク質のホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、マウスCrryタンパク質(またはその生物学的に活性な断片)の補体第二経路の阻害活性の全部を保持している。一部の特定の実施形態では、マウスCrryタンパク質のホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、マウスCrryタンパク質(またはその生物学的に活性な断片)の補体阻害活性の少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%または95%のいずれかの割合を保持している。
本明細書で用いる場合、用語「補体受容体1」、「CR1」または「CD35」は、推定分子量が220キロダルトン(「kD」)である2039個のアミノ酸のタンパク質(そのホモログを含む)をコードしているヒト遺伝子をいう。この遺伝子は、主に、赤血球、単球、好中球およびB細胞上で発現されるが、一部のTリンパ球、肥満細胞および糸球体有足突起にも存在している。CR1タンパク質は、典型的には100〜1000コピー/細胞で発現される。完全長CR1タンパク質は、42個のアミノ酸のシグナルペプチド、1930個のアミノ酸の細胞外ドメイン、25個のアミノ酸の膜貫通ドメイン、および43個のアミノ酸のC末端の 細胞質ドメインを含む。CR1の細胞外ドメインは、25個の潜在的N−グリコシル化シグナル配列を有し、30個のショートコンセンサス(「SCR」)ドメイン(補体制御タンパク質(CCP)リピートとしても知られている)またはスシ(sushi)ドメイン(各々、60〜70アミノ酸長)を含む。SCR間の配列相同性は60〜99パーセントの範囲である。この30個のSCRドメインは、さらに、長鎖相同リピート(long homologous repeat)(「LHR」)と称される4つの長鎖領域に分類され、各領域は、LHR−A、−B、−C、および−Dで指定されるCR1タンパク質のおよそ45kDのセグメントをコードしている。最初の3つは各々、7つのSCRドメインを含むが、LHR−Dは9つのSCRドメインを含む。CR1タンパク質の細胞外ドメイン上の活性部位は、アミノ酸42〜295を含むSCR1〜4内のC3bに対する親和性が低いC4b結合部位、アミノ酸490〜745を含むSCR8〜11内のC4bに対する親和性が低いC3b結合部位、アミノ酸940〜1196を含むSCR15〜18内のC4bに対する親和性が低いC3b結合部位、およびアミノ酸1394〜1842を含むSCR22〜28内のC1q結合部位を含む。
配列番号:11は、完全長ヒトCR1アミノ酸配列を表す(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P17927参照)。アミノ酸1〜41はシグナルペプチドに対応し、アミノ酸42〜2039は、細胞外ドメインに対応するアミノ酸42〜1971、膜貫通ドメインに対応するアミノ酸1972〜1996、および細胞質ドメインに対応するアミノ酸1997〜2039を含む成熟タンパク質に対応する。細胞外ドメインでは、アミノ酸42〜101がSCR1に対応し、102〜163がSCR2に対応し、アミノ酸164〜234がSCR3に対応し、アミノ酸236〜295がSCR4に対応し、アミノ酸295〜355がSCR5に対応し、アミノ酸356〜418がSCR6に対応し、アミノ酸419〜489がSCR7に対応し、アミノ酸491〜551がSCR8に対応し、アミノ酸552〜613がSCR9に対応し、アミノ酸614〜684がSCR10に対応し、アミノ酸686〜745がSCR11に対応し、アミノ酸745〜805がSCR12に対応し、アミノ酸806〜868がSCR13に対応し、アミノ酸869〜939がSCR14に対応し、アミノ酸941〜1001がSCR15に対応し、アミノ酸1002〜1063がSCR16に対応し、アミノ酸1064〜1134がSCR17に対応し、アミノ酸1136〜1195がSCR18に対応し、アミノ酸1195〜1255がSCR19に対応し、アミノ酸1256〜1318がSCR20に対応し、アミノ酸1319〜1389がSCR21に対応し、アミノ酸1394〜1454がSCR22に対応し、アミノ酸1455〜1516がSCR23に対応し、アミノ酸1517〜1587がSCR24に対応し、アミノ酸1589〜1648がSCR25に対応し、アミノ酸1648〜1708がSCR26に対応し、アミノ酸1709〜1771がSCR27に対応し、アミノ酸1772〜1842がSCR28に対応し、アミノ酸1846〜1906がSCR29に対応し、アミノ酸1907〜1967がSCR30に対応する。開示したペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質には種および系統の異形体が存在すること、ならびにCR1タンパク質またはその生物学的に活性な断片には、あらゆる種および系統の異形体が包含されることは理解されよう。本明細書で用いる場合、CR1タンパク質の「生物学的に活性な」断片という用語は、膜貫通ドメインと細胞質ドメインが欠損しており、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個のSCRドメインを含む、本質的に該ドメインからなる、または該ドメインからなる断片を含み、かつ完全長CR1タンパク質の補体阻害活性の一部または全部を有する完全長CR1タンパク質の任意の断片を含むCR1の任意の可溶性断片をいう。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターはCR2部分とCR1部分を含むものである。ターゲット型補体インヒビターのCR2部分は、当該組成物をIRI部位および/または再生部位(例えば、肝臓部位)に、該部位に存在しているCR2リガンド(例えば、iC3d、C3dg、およびC3d)に選択的に結合することにより送達し、一方、ターゲット型補体インヒビターのCR1部分は補体活性を阻害する。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、非CR2標的化部分とCR1部分を含むものである。該融合タンパク質の非CR2標的化部分は、当該組成物をIRI部位および/または再生部位(例えば、肝臓部位)に、該部位に存在しているCR2リガンド(すなわち、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d))に選択的に結合することにより送達し、一方、ターゲット型補体インヒビターのCR1部分は補体活性を阻害する。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長のヒトCR1(配列番号:11)と融合させた完全長CR2(配列番号:1)またはCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトCR1の完全細胞外ドメイン(SCR1〜30)(配列番号:11のアミノ酸42〜1971)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)またはCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、SCR1〜4(配列番号:11のアミノ酸42〜295)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)またはCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、SCR1〜11(配列番号:11のアミノ酸42〜745)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)またはCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、SCR1〜18(配列番号:11のアミノ酸42〜1195)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)またはCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長のヒトCR1(配列番号:11)、ヒトCR1の完全細胞外ドメイン(SCR1〜30)(配列番号:11のアミノ酸42〜1971)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片、SCR1〜4(配列番号:11のアミノ酸42〜295)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片、SCR1〜11(配列番号:11のアミノ酸42〜745)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片、またはSCR1〜18(配列番号:11のアミノ酸42〜1195)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片と融合させた非CR2標的化部分を含むものである。
一部の特定の実施形態では、非CR2標的化部分は、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体断片である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト化抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、ヒトCR1タンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片を含むものである。ヒトCR1タンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片としては、天然に存在するヒトCR1(またはその生物学的に活性な断片)と、少なくとも1個または数個、限定されないが、1個または数個のアミノ酸が欠失(例えば、ペプチドもしくは断片などの該タンパク質の切断型)、挿入、逆転、置換および/または誘導体化されている点(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミテート化、アミド化および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加によって)で異なるタンパク質が挙げられる。例えば、ヒトCR1ホモログは、天然に存在するヒトCR1(例えば、配列番号:11)のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一、例えば、天然に存在するヒトCR1(例えば、配列番号:11)のアミノ酸配列と少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかの割合で同一であるアミノ酸配列を有するものであり得る。一部の特定の実施形態では、ヒトCR1のホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトCR1(またはその生物学的に活性な断片)の補体第二経路の阻害活性の全部を保持している。一部の特定の実施形態では、ヒトCR1のホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトCR1(またはその生物学的に活性な断片)の補体阻害活性の少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%または95%のいずれかの割合を保持している。
本明細書で用いる場合、用語「補体因子H」、「H因子」または「FH」は、一本鎖のポリペプチド鎖の血漿糖タンパク質(そのホモログを含む)である補体因子Hをいう。このタンパク質は、一連のビーズのような連続様式で配列され、かつ短いリンカー配列(各々、2〜6個のアミノ酸)で分断されたおよそ60個のアミノ酸の20個の保存されたショートコンセンサスリピート(SCR)ドメインで構成されている。H因子はC3bに結合し、第二経路のC3変換酵素(C3bBb)の崩壊を促進させ、C3bのタンパク質分解性不活化の補因子としての機能を果たす。H因子の存在下では、C3bのタンパク質分解 によりC3bの切断がもたらされる。H因子は、SCR1〜4、SCR5〜8およびSCR19〜20に存在する少なくとも3つの相違するC3bに対する結合ドメインを有する。H因子の各部位は、C3bタンパク質内の相違する領域に結合する:N末端部位は天然C3bに結合し;H因子の中央領域に存在する第2部位はC3c断片に結合し、SCR19〜20内に存在する部位はC3d領域に結合する。さらに、H因子はまた、ヘパリンに対する結合部位も含み、該部位は、H因子のSCR7、SCR5〜12およびSCR20内に存在し、C3b結合部位のものと重複している。構造および機能の解析により、H因子の補体阻害活性のためのドメインは、最初の4つのN末端SCRドメイン内に存在していることが示されている。
配列番号:5は、完全長ヒトH因子アミノ酸配列を表し(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P08603参照);配列番号:10は、完全長マウスH因子アミノ酸配列を表す(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P06909参照)。ヒトH因子配列において、配列番号:5のアミノ酸1〜18はシグナルペプチドに対応し、配列番号:5のアミノ酸19〜1231は成熟タンパク質に対応する。このタンパク質では、配列番号:5のアミノ酸21〜80がSCR1に対応し、配列番号:5のアミノ酸85〜141がSCR2に対応し、配列番号:5のアミノ酸146〜205がSCR3に対応し、配列番号:5のアミノ酸210〜262がSCR4に対応し、配列番号:5のアミノ酸267〜320がSCR5に対応する。マウスH因子配列では、配列番号:10のアミノ酸1〜18がシグナルペプチドに対応し、配列番号:10のアミノ酸19〜1234が成熟タンパク質に対応する。このタンパク質では、配列番号:10のアミノ酸19〜82がSCR1に対応し、配列番号:10のアミノ酸83〜143がSCR2に対応し、配列番号:10のアミノ酸144〜207がSCR3に対応し、配列番号:10のアミノ酸208〜264がSCR4に対応し、配列番号:10のアミノ酸265〜322がSCR5に対応する。開示したペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質には種および系統の異形体が存在すること、ならびにH因子またはその生物学的に活性な断片には、あらゆる種および系統の異形体が包含されることは理解されよう。
本明細書で用いる場合、H因子の「生物学的に活性な」断片という用語は、完全長のH因子タンパク質の補体阻害活性の一部または全部を有するH因子タンパク質の任意の部分をいい、限定されないが、SCR1〜4、SCR1〜8、SCR1〜18、SCR19〜20を含むH因子断片、または天然に存在するH因子の任意のホモログもしくはその断片(以下に詳細に記載する)が挙げられる。一部の特定の実施形態では、H因子の生物学的に活性な断片は、以下の特性:(1)C反応性タンパク質(CRP)に対する結合性、(2)C3bに対する結合性、(3)ヘパリンに対する結合性、(4)シアル酸に対する結合性、(5)内皮細胞表面に対する結合性、(6)細胞内インテグリン受容体に対する結合性、(7)病原体に対する結合性、(8)C3b補因子活性、(9)C3b崩壊促進活性、および(10)補体第二経路の阻害性の1つ以上を有するものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターの補体インヒビター部分は、完全長のヒト(配列番号:5)またはマウス(配列番号:10)のH因子を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターの補体インヒビター部分は、ヒトまたはマウスのH因子の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ヒトまたはマウスのH因子の生物学的に活性な断片は、H因子の最初の4つのN末端SCRドメインを含むものである。一部の特定の実施形態では、ヒトまたはマウスのH因子の生物学的に活性な断片は、H因子の最初の5つのN末端SCRドメインを含むものである。一部の特定の実施形態では、ヒトまたはマウスのH因子の生物学的に活性な断片は、H因子の最初の6つのN末端SCRドメインを含むものである。一部の特定の実施形態では、ヒトまたはマウスのH因子の生物学的に活性な断片は、H因子の最初の8つのN末端SCRドメインを含むものである。一部の特定の実施形態では、ヒトまたはマウスのH因子の生物学的に活性な断片は、H因子の最初の18個のN末端SCRドメインを含むものである。一部の特定の実施形態では、ヒトまたはマウスのH因子の生物学的に活性な断片はH因子のSCR1〜4を含むものである。一部の特定の実施形態では、ヒトまたはマウスのH因子の生物学的に活性な断片はH因子のSCR1〜5を含むものである。一部の特定の実施形態では、ヒトまたはマウスのH因子の生物学的に活性な断片はH因子のSCR1〜8を含むものである。一部の特定の実施形態では、ヒトまたはマウスのH因子の生物学的に活性な断片はH因子のSCR1〜18を含むものである。一部の特定の実施形態では、ヒトまたはマウスのH因子の生物学的に活性な断片は、H因子の少なくとも最初の4つのN末端SCRドメイン(H因子の例えば、少なくとも最初の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18個などのいずれかの個数、またはそれ以上の個数のN末端SCRドメイン)を含む(一部の特定の実施形態では、該ドメインからなる、または本質的に該ドメインからなるものである。
一部の特定の実施形態では、H因子の生物学的に活性な断片は、野生型H因子に由来するものである。一部の特定の実施形態では、H因子の生物学的に活性な断片は、H因子の天然に存在する保護的バリアントに由来するものである。
一部の特定の実施形態では、H因子の生物学的に活性な断片はヘパリン結合部位が欠損しているものである。これは、例えば、H因子の生物学的に活性な断片上のヘパリン結合部位の変異によって、またはヘパリン結合部位を含まない生物学的に活性なH因子断片を選択することによって得られ得る。一部の特定の実施形態では、H因子の生物学的に活性な断片は、加齢性黄斑変性に対して保護的な多型を有するものである。Hagemanら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 102(20):7227。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2部分とヒトまたはマウスのH因子部分を含むものである。ターゲット型補体インヒビターのCR2部分は、当該組成物をIRI部位および/または再生部位(例えば、肝臓部位)に、該部位に存在しているCR2リガンド(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d)に選択的に結合することにより送達し、一方、ターゲット型補体インヒビターのヒトまたはマウスのH因子部分は補体第二経路の活性を阻害する。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、非CR2標的化部分とヒトまたはマウスのH因子部分を含むものである。該融合タンパク質の非CR2標的化部分は、当該組成物をIRI部位および/または再生部位(例えば、肝臓部位)に、該部位に存在しているCR2リガンド(すなわち、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d))に選択的に結合することにより送達し、一方、ターゲット型補体インヒビターのヒトまたはマウスのH因子部分は補体活性を阻害する。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトH因子(配列番号:5)と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトH因子の最初の4つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜262)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトH因子の最初の5つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜320)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトH因子の最初の6つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜386)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトH因子の最初の8つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜507)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトH因子の最初の18個のN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜1104)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長マウスH因子(配列番号:10)と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスH因子の最初の4つのN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜264)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスH因子の最初の5つのN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜322)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスH因子の最初の6つのN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜386)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスH因子の最初の8つのN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜624)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスH因子の最初の18個のN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜1109)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトH因子(配列番号:5)、ヒトH因子の最初の4つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜262)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片、ヒトH因子の最初の5つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜320)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片、ヒトH因子の最初の6つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜386)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片、ヒトH因子の最初の8つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜507)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片、またはヒトH因子の最初の18個のN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜1104)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片と融合させた非CR2標的化部分を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長マウスH因子(配列番号:10)、マウスH因子の最初の4つのN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜264)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片、マウスH因子の最初の5つのN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜322)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片、マウスH因子の最初の6つのN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜386)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片、マウスH因子の最初の8つのN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜624)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片、またはマウスH因子の最初の18個のN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜1109)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片と融合させた非CR2標的化部分を含むものである。
一部の特定の実施形態では、非CR2標的化部分は、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体断片である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト化抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、ヒトもしくはマウスのH因子タンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片を含むものである。ヒトもしくはマウス(human or mouse)のH因子タンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片としては、天然に存在するヒトもしくはマウスのH因子(またはその生物学的に活性な断片)と、少なくとも1個または数個、限定されないが、1個または数個のアミノ酸が欠失(例えば、ペプチドもしくは断片などの該タンパク質の切断型)、挿入、逆転、置換および/または誘導体化されている点(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミテート化、アミド化および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加によって)で異なるが、補体第二経路を阻害する能力を保持しているタンパク質が挙げられる。例えば、ヒトまたはマウスH因子ホモログは、天然に存在するヒトまたはマウスのH因子(例えば、配列番号:5または配列番号:10)のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一、例えば、天然に存在するヒトまたはマウスのH因子(例えば、配列番号:5または配列番号:10)のアミノ酸配列と少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかの割合で同一であるアミノ酸配列を有するものであり得る。一部の特定の実施形態では、ヒトもしくはマウスのH因子のホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトもしくはマウスのH因子(またはその生物学的に活性な断片)の補体第二経路の阻害活性の全部を保持している。一部の特定の実施形態では、ヒトもしくはマウスのH因子のホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトもしくはマウスのH因子(またはその生物学的に活性な断片)の補体阻害活性の少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%または95%のいずれかの割合を保持している。
本明細書に記載の任意の実施形態において、CR2部分またはその生物学的に活性な断片と、ヒトCD59、マウスCD59アイソフォームA、マウスCD59アイソフォームB、マウスCrryタンパク質、ヒトH因子、マウスH因子、ヒトCR1、ヒトMCP、ヒトDAFもしくはマウスDAFまたはその生物学的に活性な断片を含む補体インヒビター部分とを含む融合タンパク質には、CR2部分と補体インヒビター部分(例えば、ヒトCD59、マウスCD59アイソフォームA、マウスCD59アイソフォームB、マウスCrryタンパク質、ヒトH因子、マウスH因子、ヒトCR1、ヒトMCP、ヒトDAFもしくはマウスDAFまたはその生物学的に活性な断片)とを連結するアミノ酸リンカー配列も含まれる。リンカー配列の例は当該技術分野で知られており、例えば、(Gly4Ser)、(Gly4Ser)2、(Gly4Ser)3、(Gly3Ser)4、(SerGly4)、(SerGly4)2、(SerGly4)3、および(SerGly4)4が挙げられる。また、該連結配列は、種々の補体因子のドメイン間に見られる「天然」連結配列を含むものであってもよい。例えば、ヒトCR2の最初の2つのN末端ショートコンセンサスリピートドメイン間の連結配列であるVSVFPLEが使用され得る。一部の実施形態では、ヒトCR2の4番目と5番目のN末端ショートコンセンサスリピートドメイン間の連結配列(EEIF)が使用される。
非ターゲット型補体インヒビター
一部の特定の実施形態では、組成物は非ターゲット型補体インヒビターを含むものである。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、補体の古典的経路と補体第二経路を阻害する。一部の特定の実施形態では、補体の古典的経路と補体第二経路を阻害する非ターゲット型補体インヒビターは、C1インヒビタータンパク質またはその生物学的に活性な断片もしくはホモログである。
本明細書で用いる場合、用語「C1インヒビター」または「C1エステラーゼインヒビター」は、古典的経路のC3変換酵素(C4b2a)の形成を阻害するセリンプロテアーゼインヒビター(500個アミノ酸(ヒト)または504個のアミノ酸(マウス)のタンパク質である「セルピンタンパク質」)をいう。C1インヒビターは、ほぼ0.25g/Lのレベルで血中を循環しており、炎症時は、そのレベルのほぼ2倍に上昇する。C1インヒビターは、補体の古典的経路のC1複合体内のC1rおよびC1sプロテイナーゼに不可逆的に結合して不活化させ、また、レクチン経路のMASP−1およびMASP−2プロテイナーゼも不活化させる。したがって、C1インヒビターは、後のC1およびマンノース結合性レクチンによる補体成分C4およびC2のタンパク質分解的切断を抑制する。例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P05155(ヒトC1インヒビタータンパク質;配列番号:19)またはUniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P97290(マウスC1インヒビタータンパク質;配列番号:20)を参照のこと。
一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヒトもしくはマウスのC1インヒビタータンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片を含むものである。ヒトもしくはマウスのC1インヒビタータンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片としては、天然に存在するヒトもしくはマウスのC1インヒビター(またはその生物学的に活性な断片)と、少なくとも1個または数個、限定されないが、1個または数個のアミノ酸が欠失(例えば、ペプチドもしくは断片などの該タンパク質の切断型)、挿入、逆転、置換および/または誘導体化されている点(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミテート化、アミド化および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加によって)で異なるが、古典的経路のC3変換酵素(C4bC2a)の形成を阻害する能力を保持しているタンパク質が挙げられる。例えば、ヒトまたはマウスのC1インヒビターホモログは、天然に存在するヒトまたはマウスのクラスタリン(例えば、配列番号:19または配列番号:20)のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一、例えば、天然に存在するヒトまたはマウスのC1インヒビター(例えば、配列番号:19または配列番号:20)のアミノ酸配列と少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかの割合で同一であるアミノ酸配列を有するものであり得る。一部の特定の実施形態では、ヒトもしくはマウスのC1インヒビターのホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトもしくはマウスのC1インヒビター(またはその生物学的に活性な断片)の補体の古典的経路の阻害活性の全部を保持している。一部の特定の実施形態では、ヒトもしくはマウスのC1インヒビターのホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトもしくはマウスのC1インヒビター(またはその生物学的に活性な断片)の補体阻害活性の少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%または95%のいずれかの割合を保持している。
一部の特定の実施形態では、補体の古典的経路と補体第二経路を阻害する非ターゲット型補体インヒビターは抗C3抗体である。一部の特定の実施形態では、抗C3抗体またはその抗原結合断片は、補体タンパク質C3に選択的に結合し、C3aおよびC3bへのC3の切断を抑制する。
本明細書で用いる場合、用語「C3」または「補体タンパク質C3」は、C3が補体系の活性化に中心的な役割を果たす3つのすべての補体経路の一成分をいう。古典的経路(C4bC2a)または第二経路(C3bBb)の変換酵素によるC3の切断は、補体の古典的経路および第二経路の両方において中心的な反応である。C3の切断により活性断片C3bが生成され、これは、その反応性チオエステルを介して細胞表面の糖質または免疫凝集体に共有結合する。例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P01024(ヒト)およびUniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P01027(マウス)を参照のこと。
一部の特定の実施形態では、抗C3抗体またはその抗原結合断片は、非補体活性化アイソタイプまたはサブクラスのものである。一部の特定の実施形態では、その抗原結合断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗C3抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは補体第二経路を特異的に阻害する。一部の特定の実施形態では、補体第二経路を特異的に阻害する非ターゲット型補体インヒビターは抗B因子抗体を含むものである。一部の特定の実施形態では、抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、3番目のショートコンセンサスリピート(SCR)ドメイン内のB因子に選択的に結合し、米国特許出願第11/057,047号(引用により本明細書に組み込まれる、特に、抗B因子抗体の記載に関して)に記載のC3bBb複合体の形成を抑制する。一部の特定の実施形態では、抗B因子抗体は、3番目のショートコンセンサスリピート(SCR)ドメイン内のB因子に選択的に結合し、D因子によるB因子の切断を抑制または阻害する。別の態様では、該抗体または抗原結合断片は、ヒトB因子の3番目のショートコンセンサスリピート(SCR)ドメインに結合する。一部の特定の実施形態では、抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、多くの哺乳動物種(例えば、ヒトならびに非ヒト霊長類、マウス、ラット、ブタ、ウマおよびウサギからなる群より選択される動物)に由来するB因子に選択的に結合する。
本明細書で用いる場合、用語「B因子」または「FB」は、D因子が2つの断片:BaとBbに切断される補体第二経路の一タンパク質成分をいう。セリンプロテアーゼであるBbは、次いで、補体タンパク質C3の切断生成物C3bと結合し、C3またはC5変換酵素を生成させる。例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P00751(ヒト)およびUniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P04186(マウス)を参照のこと。
一部の特定の実施形態では、抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、非補体活性化アイソタイプまたはサブクラスのものである。一部の特定の実施形態では、その抗原結合断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。一部の特定の実施形態では、該抗体はモノクローナル抗体1379である(ATCC寄託番号PTA−6230によって生成)。
一部の特定の実施形態では、補体第二経路を特異的に阻害する非ターゲット型補体インヒビターは、プロパージンに選択的に結合する抗プロパージン抗体を含むものである(
米国特許第7,423,128号(引用により本明細書に組み込まれる、特に、抗プロパージン抗体に関する記載に関して)に記載のものなど)。本明細書で用いる場合、用語「プロパージン」または「補体因子P」は、C3b(補体タンパク質C3のタンパク質分解断片)と複合体を形成し、第二経路のC3変換酵素(C3bBb)を安定化させ、さらに多くのC3が生成されるのを可能にし、それにより補体第二カスケードを増幅させる補体第二経路の一成分をいう。例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P27918(ヒトプロパージン)および受託番号P11680(マウスプロパージン)を参照のこと。
一部の特定の実施形態では、抗プロパージン抗体は、Bb、C3aおよびC5aの1種類以上の生成を阻害するものである。一部の特定の実施形態では、抗プロパージン抗体またはその抗原結合断片は、非補体活性化アイソタイプまたはサブクラスのものである。一部の特定の実施形態では、その抗原結合断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗プロパージン抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、補体第二経路を特異的に阻害する非ターゲット型補体インヒビターは、D因子に選択的に結合する抗D因子抗体を含むものである。本明細書で用いる場合、用語「D因子」は、B因子がC3b因子に結合されるとB因子を切断し、第二経路の変換酵素(C3bBb)を活性化させる血清プロテアーゼをいう。例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P00746(ヒトD因子)および受託番号P03953(マウスD因子)を参照のこと。D因子は、補体第二経路において、補体の古典的経路におけるC1sと同じ機能を果たす。
一部の特定の実施形態では、抗D因子抗体は、Bb、C3a、C5aおよびsC5b−9の1種類以上の生成を阻害するものである。一部の特定の実施形態では、抗D因子抗体またはその抗原結合断片は、非補体活性化アイソタイプまたはサブクラスのものである。一部の特定の実施形態では、その抗原結合断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗D因子抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。一部の特定の実施形態では、該抗体は、モノクローナル抗体(mAb)166−32(ATCC寄託受託番号HB−12476によって生成)。
一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、終末補体および細胞膜傷害複合体(MAC)の形成を阻害する。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、終末補体の活性化および細胞膜傷害複合体(MAC)の形成を阻害する抗C5抗体またはその抗原結合断片である。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片は、補体タンパク質C5(C5)の切断を阻害する。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片は、細胞膜傷害複合体(MAC)の組織化を阻害する。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、またはヒト化型である。一部の特定の実施形態では、抗原結合断片は、Fab、Fab’、およびF(ab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片はポリクローナルである。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片はモノクローナルである。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片はキメラである。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片はヒト化型である。一部の特定の実施形態では、ヒト化抗C5抗体またはその抗原結合断片はエクリズマブまたはパキセリズマブである。
一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヘテロ二量体アポリポタンパク質であるクラスタリンである。一部の特定の実施形態では、クラスタリンは、終末補体および細胞膜傷害複合体(MAC)の組織化を阻害する。一部の特定の実施形態では、クラスタリンは、C5b−8およびC5b−9上での補体タンパク質C9の組織化を阻害するか、またはC5b−7に結合して膜結合を抑制する。
本明細書で用いる場合、用語「クラスタリン」は、80キロダルトン(kD)のヘテロ二量体アポリポタンパク質をいう(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot受託番号P10909(配列番号:15)またはUniProtKB/Swiss−Prot 受託番号Q06890)(配列番号:16)。ヒトクラスタリンは、449個のアミノ酸のタンパク質として生成され、そのうち、アミノ酸1〜22はシグナルペプチドを構成し、アミノ酸23〜449は成熟ペプチドを構成し、これは、アミノ酸227と228の間のタンパク質分解的切断によってさらなるプロセッシングを受け、クラスタリンα鎖(配列番号:15のアミノ酸228〜449)とクラスタリンβ鎖(配列番号:15のアミノ酸23〜227)が生成される。マウスクラスタリンは、448個のアミノ酸のタンパク質として生成され、そのうち、アミノ酸1〜21はシグナルペプチドを構成し、アミノ酸22〜448は成熟ペプチドを構成し、これは、アミノ酸226と227の間のタンパク質分解的切断によってさらなるプロセッシングを受け、クラスタリンα鎖(配列番号:16のアミノ酸227〜447)とクラスタリンβ鎖(配列番号:16のアミノ酸22〜226)が生成される。
一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヒトもしくはマウスのクラスタリンタンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片を含むものである。ヒトもしくはマウスのクラスタリンタンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片としては、天然に存在するヒトもしくはマウスのクラスタリン(またはその生物学的に活性な断片)と、少なくとも1個または数個、限定されないが、1個または数個のアミノ酸が欠失(例えば、ペプチドもしくは断片などの該タンパク質の切断型)、挿入、逆転、置換および/または誘導体化されている点(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミテート化、アミド化および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加によって)で異なるが、終末補体経路およびMACの組織化を阻害する能力を保持しているタンパク質が挙げられる。例えば、ヒトまたはマウスのクラスタリンホモログは、天然に存在するヒトまたはマウスのクラスタリン(例えば、配列番号:15もしくは配列番号:16)のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一、例えば、天然に存在するヒトまたはマウスのクラスタリン(例えば、配列番号:15もしくは配列番号:16)のアミノ酸配列と少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかの割合で同一であるアミノ酸配列を有するものであり得る。一部の特定の実施形態では、ヒトもしくはマウスのクラスタリンのホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトもしくはマウスのクラスタリン(またはその生物学的に活性な断片)の終末補体経路の阻害活性の全部を保持している。一部の特定の実施形態では、ヒトもしくはマウスのクラスタリンのホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトもしくはマウスのクラスタリン(またはその生物学的に活性な断片)の補体阻害活性の少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%または95%のいずれかの割合を保持している。
一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、タンパク質ビトロネクチンまたはその生物学的に活性な断片もしくはホモログである。一部の特定の実施形態では、ビトロネクチンは、終末補体および細胞膜傷害複合体(MAC)の組織化を阻害する。一部の特定の実施形態では、ビトロネクチンC5b−7の膜結合をブロックし、C9の重合を抑制する。
本明細書で用いる場合、用語「ビトロネクチン」は、75kDaのタンパク質(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P04004(配列番号:17);またはUniProtKB/Swiss−Prot.受託番号P29788(配列番号:18)をいう。ヒトビトロネクチンは、478個のアミノ酸のタンパク質として生成され、そのうち、アミノ酸1〜19はシグナルペプチドを含み、アミノ酸20〜478は成熟タンパク質を含む。該成熟ヒトタンパク質は、75kDaのタンパク質として単量体形態で、およびアミノ酸398と399の間のタンパク質分解性プロセッシングにより生成した65kDaサブユニット(配列番号:17のアミノ酸20〜398)と10kDaサブユニット(配列番号:17のアミノ酸399〜478)が互いにジスルフィド結合によって保持されたヘテロ二量体形態として存在する。また、マウスビトロネクチンも478個のアミノ酸のタンパク質として生成され、そのうち、アミノ酸1〜19はシグナルペプチドを含み、アミノ酸20〜478は成熟タンパク質を含む。しかしながら、ヒトビトロネクチンとは異なり、マウス成熟タンパク質は、一般的に、配列番号:18のアミノ酸20〜478を含む75kDaのタンパク質として単量体形態で存在する。
一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヒトもしくはマウスのビトロネクチンタンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片を含むものである。ヒトもしくはマウスのビトロネクチンタンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片としては、天然に存在するヒトもしくはマウスのクラスタリン(またはその生物学的に活性な断片)と、少なくとも1個または数個、限定されないが、1個または数個のアミノ酸が欠失(例えば、ペプチドもしくは断片などの該タンパク質の切断型)、挿入、逆転、置換および/または誘導体化されている点(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミテート化、アミド化および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加によって)で異なるが、終末補体経路およびMACの組織化を阻害する能力を保持しているタンパク質が挙げられる。例えば、ヒトもしくはマウスのビトロネクチンホモログは、天然に存在するヒトもしくはマウスのビトロネクチン(例えば、配列番号:17もしくは配列番号:18)のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一、例えば、天然に存在するヒトもしくはマウスのビトロネクチン(例えば、配列番号:17もしくは配列番号:18)のアミノ酸配列と少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかの割合で同一であるアミノ酸配列を有するものであり得る。一部の特定の実施形態では、ヒトもしくはマウスのビトロネクチンのホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトもしくはマウスのビトロネクチン(またはその生物学的に活性な断片)の終末補体経路の阻害活性の全部を保持している。一部の特定の実施形態では、ヒトもしくはマウスのビトロネクチンのホモログ(またはその生物学的に活性な断片)は、ヒトもしくはマウスのビトロネクチン(またはその生物学的に活性な断片)の補体阻害活性の少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%または95%のいずれかの割合を保持している。
アシル化刺激タンパク質(ASP/C3adesArg)およびASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニスト
本明細書で用いる場合、用語「アシル化刺激タンパク質」、「ASP」、「C3adesArg」または「ASP/C3adesArg」は、脂肪細胞でのトリグリセリド(TG)合成とグルコース輸送を刺激する脂肪組織由来ホルモンをいう。ASP/C3adesArgは、Gタンパク質共役型受容体である受容体C5L2を介して、TG合成経路の律速酵素ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼの活性(DGAT)、およびグルコース輸送を刺激する機能を果たす。配列番号:6はヒトASP/C3adesArgのアミノ酸配列を表し、補体タンパク質C3の切断生成物であるヒトC3aには存在しているCOOH末端アスパラギンが欠損している。C3aの強力なアナフィラトキシン活性は、COOH末端アスパラギンに大きく依存しており;カルボキシペプチダーゼAによる該アスパラギンの除去により該活性が解消される。
ASP/C3adesArgは、脂肪組織内のアジプシン(D因子)、補体タンパク質C3およびB因子(FB)の分化依存性発現に基づいて補体の活性化の第二経路によって生成される。Baldo,A.D.ら(1993)J.Clin.Invest.92:1543−57。C3b、FBおよびD因子(アジプシン)の相互作用によって形成されるタンパク質分解性複合体である第二経路のC3変換酵素は、補体タンパク質C3を2つの断片C3aとC3bに切断する。C3aは、その受容体C3aRと相互作用する強力なアナフィラトキシンである。しかしながら、循環系内では、C3aの末端アルギニンがカルボキシペプチダーゼBによって速やかに切断され、アナフィラトキシン機能が不活化され、ASP/C3adesArgが生成する。ASP/C3adesArgおよびC3aはともに、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)と相互作用して培養脂肪細胞内でTG合成を有効に刺激する。
一部の特定の実施形態では、組成物はASP/C3adesArgアンタゴニストを含むものである。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArgアンタゴニストは、ASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArg受容体(C5L2)への結合を妨げる抗体またはその抗原結合断片、およびASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArg受容体(C5L2)への結合を妨げる可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArgアンタゴニストは、ASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArg受容体(C5L2)への結合を妨げる抗体またはその抗原結合断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArg受容体(C5L2)への結合を妨げる抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラまたはヒト化型である。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArg受容体(C5L2)への結合を妨げる抗原結合断片は、Fab、Fab’、およびF(ab’)2断片からなる群より選択される。
ASP/C3adesArgは、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)であるC5L2を介して作用する。本明細書で用いる場合、用語「C5L2」、「ASP受容体」またはASP/C3adesArg受容体(C5L2)」は、ASP/C3adesArgに特異的に結合するGタンパク質共役型受容体をいい、ヒト脂肪組織、肝臓、脳、脾臓、腸、ヒト皮膚線維芽細胞および3T3−L1細胞において発現される。ヒトC5L2で安定的にトランスフェクトさせたヒトHEK−293細胞での機能獲得試験では、ASP/C3adesArgが刺激されると、非トランスフェクト細胞と比べてTG合成およびグルコース輸送が有意に増大されることが示された。機能喪失試験では、C5L2を内因的に発現する細胞をアンチセンス核酸またはC5L2に特異的な低分子干渉RNAで処理すると、ASP/C3adesArg応答が低減することが示された。また、原形質膜へのASP/C3adesArg誘導性β−アレスチンのトランスロケーションによるC5L2の活性化およびC5L2のリン酸化。C5L2のシグナル伝達に関与していることが示されている分子としては、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ、Akt、およびプロテインキナーゼCが挙げられる。
配列番号:7は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)のアミノ酸配列を表す(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot.受託番号Q9P296参照)。ASP/C3adesArg受容体(C5L2)は、いくつかの細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインまたは細胞質ドメインを含む複雑な構造を有する。配列番号:7のアミノ酸1〜38は最初の細胞外ドメイン(ECD1)を含み; 配列番号:7のアミノ酸39〜61は最初の膜貫通ドメイン(TM1)を含み;配列番号:7のアミノ酸62〜72は最初の細胞質ドメイン(CPD1)を含み;配列番号:7のアミノ酸73〜95は2番目の膜貫通ドメイン(TM2)を含み;配列番号:7のアミノ酸96〜114は2番目の細胞外ドメイン(ECD2)を含み;配列番号:7のアミノ酸115〜137は3番目の膜貫通ドメイン(TM3)を含み;配列番号:7のアミノ酸138〜149は2番目の細胞質ドメイン(CPD2)を含み;配列番号:7のアミノ酸150〜172は4番目の膜貫通ドメイン(TM4)を含み;配列番号:7のアミノ酸173〜202は3番目の細胞外ドメイン(ECD3)を含み;配列番号:7のアミノ酸203〜225は5番目の膜貫通ドメイン(TM5)を含み;配列番号:7のアミノ酸226〜237は3番目の細胞質ドメイン(CPD3)を含み;配列番号:7のアミノ酸238〜260は6番目の膜貫通ドメイン(TM6)を含み;配列番号:7のアミノ酸261〜274は4番目の細胞外ドメイン(ECD4)を含み;配列番号:7のアミノ酸275〜294は7番目の膜貫通ドメイン(TM7)を含み;配列番号:7のアミノ酸295〜337は4番目の細胞質ドメイン(CPD4)を含む。
一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArgアンタゴニストは、ASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArgがASP/C3adesArg受容体(C5L2)に結合するのを妨げる可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片である。一部の特定の実施形態では、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)(配列番号:7)のアミノ酸1〜38(ECD1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)(配列番号:7)のアミノ酸96〜114(ECD2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)(配列番号:7)のアミノ酸173〜202(ECD3)を含むものである。一部の特定の実施形態では、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)(配列番号:7)のアミノ酸261〜274(ECD4)を含むものである。
一部の特定の実施形態では、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)(配列番号:7)のアミノ酸1〜38(ECD1)とアミノ酸96〜114(ECD2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)(配列番号:7)のアミノ酸1〜38(ECD1)とアミノ酸173〜202(ECD3)を含むものである。一部の特定の実施形態では、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)(配列番号:7)のアミノ酸1〜38(ECD1)とアミノ酸261〜274(ECD4)を含むものである。一部の特定の実施形態では、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)(配列番号:7)のアミノ酸96〜114(ECD2)とアミノ酸173〜202(ECD3)を含むものである。一部の特定の実施形態では、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)(配列番号:7)のアミノ酸96〜114(ECD2)とアミノ酸261〜274(ECD4)を含むものである。一部の特定の実施形態では、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)(配列番号:7)のアミノ酸173〜202(ECD3)とアミノ酸261〜274(ECD4)を含むものである。
一部の特定の実施形態では、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)(配列番号:7)のアミノ酸1〜38(ECD1)、アミノ酸96〜114(ECD2)、およびアミノ酸173〜202(ECD3)を含むものである。一部の特定の実施形態では、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)(配列番号:7)のアミノ酸1〜38(ECD1)、アミノ酸96〜114(ECD2)、アミノ酸173〜202(ECD3)、およびアミノ酸261〜274(ECD4)を含むものである。一部の特定の実施形態では、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)(配列番号:7)のアミノ酸1〜38(ECD1)、アミノ酸173〜202(ECD3)、およびアミノ酸261〜274(ECD4)を含むものである。一部の特定の実施形態では、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)(配列番号:7)のアミノ酸96〜114(ECD2)、アミノ酸173〜202(ECD3)、およびアミノ酸261〜274(ECD4)を含むものである。
本明細書に記載の任意の実施形態において、可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片は、さらに、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)部分を一緒に連結する1つ以上のアミノ酸リンカー配列を含むものである。リンカー配列の例は当該技術分野で知られており、例えば、(Gly4Ser)、(Gly4Ser)2、(Gly4Ser)3、(Gly3Ser)4、(SerGly4)、(SerGly4)2、(SerGly4)3、および(SerGly4)4が挙げられる。また、該連結配列は、種々の補体因子のドメイン間に見られる「天然」連結配列を含むものであってもよい。例えば、ヒトCR2の最初の2つのN末端ショートコンセンサスリピートドメイン間の連結配列であるVSVFPLEが使用され得る。
一部の特定の実施形態では、組成物は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストを含むものである。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストは、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)に特異的に結合してASP/C3adesArgの結合を妨げる抗体またはその抗原結合断片、およびASP/C3adesArg受容体(C5L2)に特異的に結合するが該受容体を活性化させないASP/C3adesArgまたはその断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストは、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)に特異的に結合してASP/C3adesArgの結合を妨げる抗体またはその抗原結合断片である。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)に特異的に結合してASP/C3adesArgが該受容体に結合を妨げる抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、またはヒト化型である。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArg受容体(C5L2)への結合を妨げる抗原結合断片は、Fab、Fab’、およびF(ab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストは、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)に特異的に結合するが該受容体を活性化させないASP/C3adesArgまたはその断片である。
本明細書で用いる場合、用語「〜に特異的に結合する」または「〜に選択的に結合する」は、あるタンパク質の別のタンパク質への(例えば、抗体またはその抗原結合断片の抗原への、あるいは受容体のリガンドへの)特異的結合であって、任意の標準的なアッセイ(例えば、イムノアッセイ)によって測定されるその結合レベルがアッセイのバックグラウンド対照よりも統計学的に有意に高いものをいう。例えば、イムノアッセイを行なう場合、対照としては、典型的には、抗体またはその抗原結合断片のみを内包している(すなわち、抗原の非存在下の)反応ウェルまたはチューブが挙げられ、この場合、抗原の非存在下における該抗体またはその抗原結合断片による反応性(例えば、該ウェルに対する非特異的結合)の量はバックグラウンドとみなされる。結合は、当該技術分野において標準的なさまざまな方法、例えば限定されないが:ウエスタンブロット、イムノブロット、酵素免疫測定法(「ELISA」)、ラジオイムノアッセイ(「RIA」)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、リン光、免疫組織化学的解析、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(「MALDI−TOF」)質量分析、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡検査、蛍光標示式細胞分取(「FACS」)、およびフローサイトメトリーを用いて測定され得る。
本明細書で用いる場合、用語「ASP/C3adesArgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片」は、ASP/C3adesArgに特異的または選択的に結合する抗体、またはASP/C3adesArgに特異的もしくは選択的に結合し、好ましくは、その対応する受容体ASP/C3adesArg受容体(C5L2)への結合を妨げる能力を保持しているかかる抗体の断片をいう。同様に、本明細書で用いる場合、用語「ASP/C3adesArg受容体(C5L2)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片」は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)に特異的または選択的に結合する抗体、またはASP/C3adesArg受容体(C5L2)に特異的もしくは選択的に結合し、好ましくは、その対応するリガンドASP/C3adesArgの結合を妨げる能力を保持しているかかる抗体の断片をいう。
抗体は、免疫グロブリン(Ig)ドメインを含み、Igタンパク質スーパーファミリーの構成員である。一般的に、抗体分子は、2つの型の鎖:重鎖あるいはH鎖と軽鎖あるいはL鎖を含む。軽鎖は可変ドメイン(VL)と定常ドメイン(CL)を含み、一方、重鎖は、可変ドメイン(VH)と3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3)を含み、CH1ドメインとCH2ドメインはヒンジ領域によって分断されている。各アイソタイプの弁別的特徴は、免疫グロブリンの定常ドメイン内の配列によって規定される。各抗体分子は、典型的には2つのH鎖と2つのL鎖を含む。2つのH鎖はジスルフィド結合によって連結されて一緒になっており、各H鎖はジスルフィド結合によってL鎖に連結されている。L鎖には、ラムダ(λ)鎖およびカッパ(κ)鎖と称される2つの型しかない。対照的に、H鎖にはアイソタイプと称される5つの主な類型がある。この5つの類型としては、IgM(μ)、IgD(δ)、IgG(λ)、IgA(α)、およびIgE(またはε)が挙げられる。ヒト免疫グロブリン分子には、9つのアイソタイプ:IgM、IgD、IgE、IgGの4つのサブクラス(例えば、IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)およびIgG4(γ4)など)、ならびにIgAの2つのサブクラス(例えば、IgA1(α1)およびIgA2(α2)など)が含まれる。
総合すると、1つのH鎖と1つのL鎖が、免疫グロブリンの可変領域を有する免疫グロブリン分子のアームを形成している。完全な免疫グロブリン分子は、ジスルフィド結合された2つのアームを含む。したがって、完全体の免疫グロブリンの各アームはVH+L領域とCH+L領域を含む。本明細書で用いる場合、可変領域あるいはV領域は、Igタンパク質のVH+L領域(Fv断片としても知られている)、VL領域またはVH領域をいう。また、本明細書で用いる場合、定常領域あるいはC領域という用語はCH+L領域、CL領域またはCH領域をいう。
種々の異なるプロテアーゼによるIgタンパク質の制限消化により、いくつかの断片が生成され、そのうちの一部のものだけが、抗原に対する結合能を保持している。抗原結合断片はFab、Fab’、またはF(ab’)2断片と称される。抗原に結合する能力が欠損している断片はFc断片と称される。Fab断片は、VH領域およびCH1領域と対になったL鎖(VL+CLドメイン)を含む免疫グロブリン分子の1つのアームを構成している。Fab’断片は、CH1ドメインに結合されたヒンジ領域の部分を有するFab断片に対応する。F(ab’)2断片は、通常、ジスルフィド結合によって、典型的にはヒンジ領域内で互いに共有結合された2つのFab’断片に対応する。
また、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片は「キメラ」抗体であってもよい。キメラ抗体では、重鎖および/または軽鎖の一部分は、特定の種(例えば、ヒトもしくはマウスなど)に由来する抗体、あるいは特定の抗体クラスまたはサブクラス(例えば、IgG1など)に属する抗体の対応する配列と同一または相同であるが、該鎖(1つまたは複数)の残部は、別の種に由来する抗体、あるいは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体、ならびにかかる抗体の断片(該断片が所望の生物学的活性を示す限り)の対応する配列と同一または相同である。米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,81:6851−55(1984)。本明細書において重要なキメラ抗体としては、例えば、対応する非キメラ抗体とは別の免疫グロブリンサブタイプ由来のFcドメインを含み、該非キメラ抗体よりも短い、または長い循環血漿半減期を有するものが挙げられ得る。
また、本明細書に記載のASP/C3adesArg抗体、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)抗体、またはかかる抗体の断片はヒト化抗体であってもよい。ヒト化抗体は、非ヒト種の免疫グロブリンに由来する抗原結合部位を有する分子であって、該分子の残りの免疫グロブリン由来部分は、当該タンパク質の免疫原性を低下させるためにヒト免疫グロブリン由来である分子である。抗原結合部位は、ヒト定常ドメインと融合させた完全な可変領域、または可変ドメイン内の適切なヒトフレームワーク領域にグラフティングさせた相補性決定領域(CDR)のみのいずれかを含むものであり得る。ヒト化抗体は、例えば、抗体の可変ドメインをモデル設計し、遺伝子操作手法(CDRグラフティングなど)を用いて抗体を作製することにより作製され得る。ヒト化抗体の作製のための種々の手法の説明は、例えば、Morrisonら、(1984)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 81:6851−55;Whittleら、(1987)Prot.Eng.1:499−505;Coら、(1990)J.Immunol.148:1149−1154;Coら、(1992)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 88:2869−2873;Carterら、1992)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:4285−4289;Routledgeら、(1991)Eur.J.Immunol.21:2717−2725ならびにPCT特許出願公開公報番号WO91/09967;WO91/09968およびWO92/113831において知得される。
本発明の完全体の抗体は、ポリクローナルであってもモノクローナルであってもよい。あるいはまた、完全体の抗体の機能的等価体、例えば、1つ以上の抗体ドメインが切断されているか、あるいは存在しない抗原結合断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、もしくはF(ab)2断片)、ならびに遺伝子操作された抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、一本鎖抗体、ヒト化抗体(上記に論考)、1つより多くのエピトープに結合することができる抗体(例えば、二重特異性抗体)、または1種類以上の異なる抗原に結合することができる抗体(例えば、二重もしくは多重特異性抗体)もまた、標的化基として使用され得る。
特定の抗原(すなわち、ASP/C3adesArgまたはASP/C3adesArg受容体(C5L2))に特異的または選択的に結合するポリクローナル抗体の作製方法は当該技術分野で知られている。一般的に、抗体の作製では、適当な実験動物(例えば、限定されないが、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、マウス、ラットまたはニワトリなど)を、抗体が所望される対象の抗原(すなわち、ASP/C3adesArgまたはASP/C3adesArg受容体(C5L2))に曝露する。典型的には、動物は、有効量の抗原(これは、該動物に注射される)で免疫処置される。抗原の有効量は、動物による抗体の生成が誘導されるのに必要とされる量をいう。その後、動物の免疫機構が所定の期間にわたって応答することが可能になる。免疫処置プロセスは、免疫機構によって抗原に対する抗体が生成されていることがわかるまで反復され得る。抗原に特異的なポリクローナル抗体を得るため、血清を、所望の抗体を含む動物から収集する(またはニワトリの場合は、抗体は卵から収集され得る)。かかる血清は試薬として有用である。ポリクローナル抗体は血清(または卵)から、例えば、血清を硫酸アンモニウムで処理し、該抗体を沈降させることにより、さらに精製され得る。
特定の抗原(すなわち、ASP/C3adesArgまたはASP/C3adesArg受容体(C5L2))に特異的または選択的に結合するモノクローナル抗体の作製方法は当該技術分野で知られている。例えば、モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein(Nature(1975)256:495−497)の方法論に従って作製され得る。例えば、免疫処置した動物のBリンパ球を脾臓(または任意の適当な組織)から回収し、次いで骨髄腫細胞と融合させて、適当な培養培地での連続培養が可能なハイブリドーマ細胞の集団を得る。所望の抗体を産生するハイブリドーマは、ハイブリドーマによって産生された抗体が所望の抗原に結合する能力を、例えば、酵素免疫測定法または当該技術分野で知られた他の常套的な方法にて試験することにより選択される。
本発明の抗体を作製するための好ましい方法は、(a)動物に有効量のタンパク質またはペプチド(例えば、ASP/C3adesArgタンパク質もしくはペプチド、あるいはASP/C3adesArg受容体(C5L2)タンパク質もしくはペプチド)を投与し、抗体を生成させること、(b)該抗体を回収することを含む。別の方法では、本発明の抗体を組換え産生させる。例えば、本発明による抗体を発現する細胞株(例えば、ハイブリドーマ)が得られたら、該細胞株でcDNAをクローニングし、所望の抗体をコードする可変領域の遺伝子(例えば、CDRをコードする配列)を同定することすることが可能である。該細胞株から、本発明による抗体および抗原結合断片は、少なくとも、該抗体の重鎖または軽鎖の可変ドメインをコードするDNA配列と、任意選択で所望により、該重鎖および/または軽鎖の残りの部分をコードする他のDNA配列とを含む1種類以上の複製可能な発現ベクター調製し、該抗体の産生が行なわれる適切な宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションすることにより得られ得る。好適な発現宿主としては、細菌(例えば、大腸菌株)、真菌(特に、酵母、例えば、ピキア、サッカロミセスもしくはクルイベロマイセス(Kluyveromyces)属の構成員)および哺乳動物細胞株、例えば、非産生性骨髄腫細胞株(マウスNSO系統またはCHO細胞など)が挙げられる。効率的な転写および翻訳を得るためには、各ベクター内のDNA配列に、適切な調節配列、特に、可変ドメイン配列に作動可能に連結させたプロモーターおよびリーダー配列を含めるのがよい。このようにして抗体を作製するための具体的な方法は、一般的によく知られており、常套的に使用されている。例えば、基礎分子生物学の手順は、Maniatisら(Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1989)に記載されており;DNAの配列決定は、Sangerら(Proc.Nat’l Acad.Sci.USA(1977)74:5463)およびAmersham International plc sequencing handbookに記載のようにして行なうことができ;部位特異的変異誘発は、Kramerら(Nucl.Acids Res.(1984)12:9441)およびAnglian Biotechnology Ltd.Handbookの方法に従って行なうことができる。さらに、DNAの操作、発現ベクターの創出および適切な細胞の形質転換による抗体の調製に適した手法が記載された数多くの刊行物(特許明細書を含む)が存在し、例えば、Mountain,A.およびAdair,J.R.,in Biotechnology and Genetic Engineering Reviews(Tombs,M P編,10,第1章,1992,Intercept,Andover,UK)に概説されている。
医薬組成物および用量
また、本明細書において、本明細書に記載のターゲット型補体インヒビター、非ターゲット型補体インヒビター、ASP/C3adesArgアンタゴニスト、またはASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストのいずれか1種類以上、および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物も提供する。
本明細書に記載の任意の実施形態において、医薬組成物は個体への投与に適したものである。一部の特定の実施形態では、個体は脊椎動物である。一部の特定の実施形態では、脊椎動物は哺乳動物である。一部の特定の実施形態では、哺乳動物は研究用動物または飼養動物である。一部の特定の実施形態では、哺乳動物はヒトである。本明細書に記載の任意の実施形態において、医薬組成物は、さまざまな投与様式(例えば、全身性または局所投与など)に適したものである。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は注射用液剤の形態であって、全身投与(例えば、静脈内投与など)に適したものである。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は注射用液剤の形態であって、局所投与に適したものである。任意の実施形態において、医薬組成物液状または固形の形態であって、経口投与に適したものである。本明細書に記載の任意の実施形態において、医薬組成物単一の投薬単位または反復投薬形態にパッケージングされ得る。
臨床用語において、本明細書に記載の任意の医薬組成物(ターゲット型補体インヒビターおよび非ターゲット型補体インヒビターを含む)の投与のための治療有効投薬量は、低用量で開始し、患者をモニタリングしながら、所望の補体依存性増殖応答の徴候(5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)取込み;還元型形態のグルタチオン(GSH)レベルの増大;グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX1)の増大;マロンジアルデヒド(MDA)の減少;IL−6レベルの増大;および/またはTNFaレベルの低下など)が観察されるまで投薬量を増大させる用量設定(titration)によって決定され得る。
所望により、医師は、補体依存性増殖応答が維持されることを確実にするために患者をモニタリングしながら、さらに、望ましくない補体依存性損傷の徴候(血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの増大;GSHおよびGPX1の低減;MDAの増大;肝臓ミエロペルオキシダーゼ(MPO)含有量の増大;IL−6レベルの低下;ならびにTNFaレベルの増大など)の出現について患者をモニタリングしながら、投薬量をさらに増大させてもよい。このような補体依存性損傷の徴候が観察された場合、医師は、投薬量の増大を止める選択をしてもよく、さらには投薬量を少なくしてもよい。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長ヒトMCP(配列番号:12のアミノ酸35〜392)と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、ヒトMCPの細胞外ドメイン(配列番号:12のアミノ酸35〜343)を含むMCPタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、ヒトMCPのSCR1〜4(配列番号:12のアミノ酸35〜285)と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長ヒトMCP(配列番号:12のアミノ酸35〜392)と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、ヒトMCPの細胞外ドメイン(配列番号:12のアミノ酸35〜343)を含むMCPタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、ヒトMCPのSCR1〜4(配列番号:12のアミノ酸35〜285)と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長ヒトDAF(配列番号:13)または完全長マウスDAF(配列番号:14)と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長ヒトDAF(配列番号:13)または完全長マウスDAF(配列番号:14)と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長ヒトDAF(配列番号:13)または完全長マウスDAF(配列番号:14)と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長ヒトDAF(配列番号:13)または完全長マウスDAF(配列番号:14)と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−353)がないヒト成熟DAFタンパク質(配列番号:13のアミノ酸35〜353)を含むヒトDAFの生物学的に活性な断片あるいは、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−362)がないマウス成熟DAFタンパク質(配列番号:14のアミノ酸35〜362)を含むマウスDAFの生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長ヒトDAFのショートコンセンサスリピート配列1〜4(SCR1〜4)(配列番号:13のアミノ酸35〜285)を含むヒトDAFの生物学的に活性な断片、または完全長マウスDAFのショートコンセンサスリピート配列1〜4(SCR1〜4)(配列番号:14のアミノ酸35〜286)を含むマウスDAFの生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長ヒトCD59タンパク質(配列番号:3)、完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームA(配列番号:8)、または完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームB(配列番号:9)と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−102)が欠損したヒトCD59の細胞外ドメイン(配列番号:3のアミノ酸26〜102)を含むCD59タンパク質の生物学的に活性な断片、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−96)が欠損した完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームAの細胞外ドメイン(配列番号:8のアミノ酸24〜96)を含むCD59タンパク質の生物学的に活性な断片、あるいはGPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−104)が欠損した完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームBの細胞外ドメイン(配列番号:9のアミノ酸24〜104)を含むCD59タンパク質の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長ヒトCD59タンパク質(配列番号:3)、完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームA(配列番号:8)、または完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームB(配列番号:9)と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−102)が欠損したヒトCD59の細胞外ドメイン(配列番号:3のアミノ酸26〜102)を含むCD59タンパク質の生物学的に活性な断片、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−96)が欠損した完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームAの細胞外ドメイン(配列番号:8のアミノ酸24〜96)を含むCD59タンパク質の生物学的に活性な断片、あるいはGPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−104)が欠損した完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームBの細胞外ドメイン(配列番号:9のアミノ酸24〜104)を含むCD59タンパク質の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長マウスCrry(配列番号:4)と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、マウスCrryの細胞外ドメイン(配列番号:4のアミノ酸41〜405)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、マウスCrryのSCR1〜4(配列番号:4のアミノ酸83〜338)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、マウスCrryのSCR1〜5(配列番号:4のアミノ酸83〜400)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長のマウスCrryタンパク質(配列番号:4)と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、マウスCrryの細胞外ドメイン(配列番号:4のアミノ酸41〜405)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、マウスCrryのSCR1〜4(配列番号:4のアミノ酸83〜338)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、マウスCrryのSCR1〜5(配列番号:4のアミノ酸83〜400)を含むマウスCrryの生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長ヒトH因子(配列番号:5)と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、H因子の最初の4つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜262)を含むH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、H因子の最初の5つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜320)を含むH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、H因子の最初の6つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜386)を含むH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、H因子の最初の8つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜507)を含むH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、H因子の最初の18個のN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜1104)を含むH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長ヒトH因子(配列番号:5)と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、H因子の最初の4つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜262)を含むH因子の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、H因子の最初の5つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜320)を含むH因子の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、H因子の最初の6つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜386)を含むH因子の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、H因子の最初の8つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜507)を含むH因子の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、H因子の最初の18個のN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜1104)を含むH因子の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長のヒトCR1(配列番号:11)と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、ヒトCR1の完全細胞外ドメイン(SCR1〜30)(配列番号:11のアミノ酸42〜1971)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、SCR1〜4(配列番号:11のアミノ酸42〜295)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、SCR1〜11(配列番号:11のアミノ酸42〜745)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、SCR1〜18(配列番号:11のアミノ酸42〜1195)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、完全長のヒトCR1(配列番号:11)と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、ヒトCR1の完全細胞外ドメイン(SCR1〜30)(配列番号:11のアミノ酸42〜1971)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、SCR1〜4(配列番号:11のアミノ酸42〜295)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、SCR1〜11(配列番号:11のアミノ酸42〜745)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、SCR1〜18(配列番号:11のアミノ酸42〜1195)を含む完全長のヒトCR1の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。
本明細書に記載の任意の実施形態において、ターゲット型補体インヒビターは非CR2標的化部分を含むものである。本明細書に記載の任意の実施形態において、非CR2標的化部分は、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むものである。本明細書に記載の任意の実施形態において、該抗体はポリクローナル抗体である。本明細書に記載の任意の実施形態において、該抗体はモノクローナル抗体である。本明細書に記載の任意の実施形態において、該抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体断片である。本明細書に記載の任意の実施形態において、該抗体またはその抗原結合断片はヒト化抗体である。本明細書に記載の任意の実施形態において、該抗体またはその抗原結合断片はヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、非ターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヒトC1インヒビタータンパク質(配列番号:19)またはマウスC1インヒビタータンパク質(配列番号:20)である。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヒトC1インヒビタータンパク質のホモログもしくはマウスC1インヒビタータンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片である。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、非ターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは抗C3抗体またはその抗原結合断片である。一部の特定の実施形態では、抗C3抗体またはその抗原結合断片は、補体タンパク質C3に選択的に結合し、C3aおよびC3bへのC3の切断を抑制する。一部の特定の実施形態では、抗C3抗体またはその抗原結合断片は、非補体活性化アイソタイプまたはサブクラスのものである。一部の特定の実施形態では、その抗原結合断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗C3抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、非ターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、抗B因子抗体またはその抗原結合断片である。一部の特定の実施形態では、抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、3番目のショートコンセンサスリピート(SCR)ドメイン内のB因子に選択的に結合し、C3bBb複合体の形成を抑制する。一部の特定の実施形態では、抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、非補体活性化アイソタイプまたはサブクラスのものである。一部の特定の実施形態では、その抗原結合断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。一部の特定の実施形態では、該抗体はモノクローナル抗体1379である(ATCC寄託番号PTA−6230によって生成)。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、非ターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは抗プロパージン抗体またはその抗原結合断片である。一部の特定の実施形態では、抗プロパージン抗体は、Bb、C3aおよびC5aの1種類以上の生成を阻害するものである。一部の特定の実施形態では、抗プロパージン抗体またはその抗原結合断片は、非補体活性化アイソタイプまたはサブクラスのものである。一部の特定の実施形態では、その抗原結合断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗プロパージン抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、非ターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは抗D因子抗体またはその抗原結合断片である。一部の特定の実施形態では、抗D因子抗体は、Bb、C3a、C5aおよびsC5b−9の1種類以上の生成を阻害するものである。一部の特定の実施形態では、抗D因子抗体またはその抗原結合断片は、非補体活性化アイソタイプまたはサブクラスのものである。一部の特定の実施形態では、その抗原結合断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗D因子抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。一部の特定の実施形態では、該抗体はモノクローナル抗体(mAb)166−32である(ATCC寄託受託番号HB−12476によって生成)。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、非ターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、終末補体および細胞膜傷害複合体(MAC)の形成を阻害する。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、終末補体の活性化および細胞膜傷害複合体(MAC)の形成を阻害する抗C5抗体またはその抗原結合断片である。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片は、補体タンパク質C5(C5)の切断を阻害する。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片は、細胞膜傷害複合体(MAC)の組織化を阻害する。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、またはヒト化型である。一部の特定の実施形態では、抗原結合断片は、Fab、Fab’、およびF(ab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片はポリクローナルである。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片はモノクローナルである。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片はキメラである。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片はヒト化型である。一部の特定の実施形態では、ヒト化抗C5抗体またはその抗原結合断片はエクリズマブまたはパキセリズマブである。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、非ターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、終末補体および細胞膜傷害複合体(MAC)の形成を阻害する。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヘテロ二量体アポリポタンパク質であるクラスタリンである。一部の特定の実施形態では、クラスタリンは、C5b−8およびC5b−9上での補体タンパク質C9の組織化を阻害するか、またはC5b−7に結合して膜結合を抑制する。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヒトクラスタリンタンパク質(配列番号:15)またはマウスクラスタリンタンパク質(配列番号:16)である。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヒトもしくはマウスのクラスタリンタンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片を含むものである。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、非ターゲット型補体インヒビターと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、終末補体および細胞膜傷害複合体(MAC)の形成を阻害する。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、タンパク質ビトロネクチンまたはその生物学的に活性な断片もしくはホモログである。一部の特定の実施形態では、ビトロネクチンC5b−7の膜結合をブロックし、C9の重合を抑制する。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターはヒトビトロネクチンタンパク質(配列番号:17)またはマウスビトロネクチンタンパク質(配列番号:18)である。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヒトもしくはマウスのビトロネクチンタンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片を含むものである。
本明細書に記載の任意の実施形態において、個体は脊椎動物である。本明細書に記載の任意の実施形態において、脊椎動物は哺乳動物である。本明細書に記載の任意の実施形態において、哺乳動物は研究用動物または飼養動物である。本明細書に記載の任意の実施形態において、哺乳動物はヒトである。本明細書に記載の任意の実施形態において、医薬組成物は、さまざまな投与様式(例えば、全身性または局所投与など)に適したものである。本明細書に記載の任意の実施形態において、医薬組成物は注射用液剤の形態であって、全身投与(例えば、静脈内投与など)に適したものである。本明細書に記載の任意の実施形態において、医薬組成物は注射用液剤の形態であって、局所投与に適したものである。本明細書に記載の任意の実施形態において、医薬組成物液状または固形の形態であって、経口投与に適したものである。本明細書に記載の任意の実施形態において、医薬組成物単一の投薬単位または反復投薬形態にパッケージングされ得る。
一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、ASP/C3adesArgアンタゴニストと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、ASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArg受容体(C5L2)への結合を妨げる抗体またはその抗原結合断片を含むASP/C3adesArgアンタゴニストと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、ASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArg受容体(C5L2)への結合を妨げるASP/C3adesArg受容体(C5L2)の1つ以上の細胞外ドメインを含む可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片を含むASP/C3adesArgアンタゴニストと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、ASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArg受容体(C5L2)への結合を妨げる本明細書において提供する可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片の1種類以上の任意の組合せを含むASP/C3adesArgアンタゴニストと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)に特異的に結合してASP/C3adesArgの結合を妨げる抗体またはその抗原結合断片を含むASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)に特異的に結合するが、該受容体を活性化させないASP/C3adesArgまたはその断片を含むASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストと、個体への投与に適した薬学的に許容され得る担体を含む。
一部の特定の実施形態では、個体は脊椎動物である。一部の特定の実施形態では、脊椎動物は哺乳動物である。一部の特定の実施形態では、哺乳動物は研究用動物または飼養動物である。一部の特定の実施形態では、哺乳動物はヒトである。本明細書に記載の任意の実施形態において、医薬組成物は、さまざまな投与様式(例えば、全身性または局所投与など)に適したものである。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は注射用液剤の形態であって、全身投与(例えば、静脈内投与など)に適したものである。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は注射用液剤の形態であって、局所投与に適したものである。任意の実施形態において、医薬組成物液状または固形の形態であって、経口投与に適したものである。本明細書に記載の任意の実施形態において、医薬組成物単一の投薬単位または反復投薬形態にパッケージングされ得る。
一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のターゲット型補体インヒビターを含む任意の医薬組成物は、3.2mg/kg〜およそ20mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のターゲット型補体インヒビターを含む任意の医薬組成物は、4mg/kg〜およそ18mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のターゲット型補体インヒビターを含む任意の医薬組成物は、6mg/kg〜およそ16mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のターゲット型補体インヒビターを含む任意の医薬組成物は、8mg/kg〜およそ14mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のターゲット型補体インヒビターを含む任意の医薬組成物は、10mg/kg〜およそ12mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のターゲット型補体インヒビターを含む任意の医薬組成物は、3.2mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、4.5mg/kg、5.0mg/kg、5.5mg/kg、6.0mg/kg、6.5mg/kg、7.0mg/kg、7.5mg/kg、8.0mg/kg、8.5mg/kg、9.0mg/kg、9.5mg/kg、10.0mg/kg、11.0mg/kg、12.0mg/kg、13.0mg/kg、14.0mg/kg、15.0mg/kg、16.0mg/kg、17.0mg/kg、18.0mg/kg、19.0mg/kg、または20.0mg/kgの用量で投与される。
一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のASP/C3adesArgアンタゴニストを含む任意の医薬組成物は、3.2mg/kg〜およそ20mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のASP/C3adesArgアンタゴニストを含む任意の医薬組成物は、4mg/kg〜およそ18mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のASP/C3adesArgアンタゴニストを含む任意の医薬組成物は、6mg/kg〜およそ16mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のASP/C3adesArgアンタゴニストを含む任意の医薬組成物は、8mg/kg〜およそ14mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のASP/C3adesArgアンタゴニストを含む任意の医薬組成物は、10mg/kg〜およそ12mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のASP/C3adesArgアンタゴニストを含む任意の医薬組成物は、3.2mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、4.5mg/kg、5.0mg/kg、5.5mg/kg、6.0mg/kg、6.5mg/kg、7.0mg/kg、7.5mg/kg、8.0mg/kg、8.5mg/kg、9.0mg/kg、9.5mg/kg、10.0mg/kg、11.0mg/kg、12.0mg/kg、13.0mg/kg、14.0mg/kg、15.0mg/kg、16.0mg/kg、17.0mg/kg、18.0mg/kg、19.0mg/kg、または20.0mg/kgの用量で投与される。
一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストを含む任意の医薬組成物は、3.2mg/kg〜およそ20mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストを含む任意の医薬組成物は、4mg/kg〜およそ18mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストを含む任意の医薬組成物は、6mg/kg〜およそ16mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストを含む任意の医薬組成物は、8mg/kg〜およそ14mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストを含む任意の医薬組成物は、10mg/kg〜およそ12mg/kgの用量で投与される。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストを含む任意の医薬組成物は、3.2mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、4.5mg/kg、5.0mg/kg、5.5mg/kg、6.0mg/kg、6.5mg/kg、7.0mg/kg、7.5mg/kg、8.0mg/kg、8.5mg/kg、9.0mg/kg、9.5mg/kg、10.0mg/kg、11.0mg/kg、12.0mg/kg、13.0mg/kg、14.0mg/kg、15.0mg/kg、16.0mg/kg、17.0mg/kg、18.0mg/kg、19.0mg/kg、または20.0mg/kgの用量で投与される。
液状組成物は、一般的に、米食品医薬品局の適正製造基準(GMP)の規定のすべてが充分に遵守された実質的に等張性の滅菌液剤として製剤化される。一部の特定の実施形態では、組成物は病原体を含まない。注射用には、医薬組成物は、例えば、生理学的に適合性のあるバッファー(例えば、ハンクスの緩衝塩類溶液、リン酸緩衝整理食塩水またはリンゲル液)中の液状の液剤の形態であり得る。また、本明細書において提供する医薬組成物は、固形形態であり、使用直前に再溶解または再懸濁させるものであり得る。凍結乾燥組成物も想定される。
経口投与のためには、医薬組成物は、例えば、結合剤(例えば、アルファー化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微晶質セルロースもしくはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクもしくはシリカ);崩壊剤(例えば、イモデンプンもしくはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容され得る賦形剤を用いて、慣用的な手段によって調製される錠剤またはカプセル剤の形態が採用され得る。経口投与のための液状調製物には、例えば、液剤、シロップ剤もしくは懸濁剤の形態が採用され得るか、または使用前に水もしくは他の適当なビヒクルで構成するための乾燥製剤として提示され得る。かかる液状調製物は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水添食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アチオンド(ationd)油、油性エステル、エチルアルコールまたは分別植物油);および保存料(例えば、安息香酸メチルもしくはプロピル−p−ヒドロキシまたはソルビン酸)などの薬学的に許容され得る添加剤を用いて、慣用的な手段によって調製され得る。また、該調製物に、適宜、緩衝塩類、フレーバー剤、着色剤および甘味剤を含めてもよい。
一部の特定の実施形態では、組成物は、注射に適合された医薬組成物として常套的な手順に従って製剤化される。一部の特定の実施形態では、本明細書において提供する医薬組成物は、静脈内、腹腔内または眼内注射のために製剤化される。典型的には、注射用の組成物は、滅菌された等張性水性バッファー中の液剤である。また、必要な場合は、組成物に、可溶化剤および注射部位での痛みを緩和するための局所麻酔剤(リグノカインなど)を含めてもよい。一般的に、該成分は、別個に、または単位投薬形態で(例えば、密封されたシール容器内(活性薬剤の量を表示したアンプルもしくはサシェ(sachette)など)に凍結乾燥粉末もしくは無水濃縮液として)一緒に混合していずれかで供給される。組成物は、注入によって投与されることが意図される場合、滅菌された医薬等級水または生理食塩水を内包した注入ボトルにて施薬され得る。組成物が注射によって投与される場合、滅菌された注射用水または生理食塩水のアンプルが、諸成分が投与前に混合され得るように提供され得る。
医薬組成物には、さらに、さらなる成分、例えば、保存料、緩衝剤、等張化剤、酸化防止剤および安定剤、非イオン性湿潤剤または清澄化剤、粘度向上剤などが含まれ得る。
液剤における使用のための好適な保存料としては、ポリクオタニウム−1、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、二ナトリウム−EDTA、ソルビン酸、塩化ベンゼトニウム、などが挙げられる。典型的には(必ずしもそうでないが)、かかる保存料は0.001%〜1.0%(重量基準)のレベルで使用される。
好適なバッファーとしては、ホウ酸、ナトリウムおよびカリウムの重炭酸塩、ナトリウムおよびカリウムのホウ酸塩、ナトリウムおよびカリウムの炭酸塩、酢酸ナトリウム、重リン酸ナトリウムなどが挙げられる(pHが約pH6〜pH8、好ましくは約pH7〜pH7.5に維持されるのに充分なの量)。
好適な等張化剤としては、デキストラン40、デキストラン70、デキストロース、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウムなどが挙げられる(注射用液剤の塩化ナトリウム相当量が0.9±0.2%の範囲となるように)。
好適な酸化防止剤および安定剤としては、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ亜硫酸ナトリウム、チオ尿素などが挙げられる。好適な湿潤剤および清澄化剤としては、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー282およびチロキサポールが挙げられる。好適な粘度向上剤としては、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ワセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
医薬組成物は、本明細書に記載のさまざまな投与様式(例えば、全身性または局所投与など)に適したものであり得る。医薬組成物は、注射用液剤の形態または経口投与に適したの形態であり得る。本明細書に記載の医薬組成物は、単一の投薬単位または反復投薬形態にパッケージングされ得る。一部の特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の任意の投与経路(例えば、経口投与または静脈内注射)により個体、脊椎動物、哺乳動物またはヒトへの投与に適したものである。
肝再生の刺激方法
本明細書において、肝再生を必要とする個体において肝再生を刺激する方法を提供する。本明細書に記載の任意の実施形態において、該方法により、肝再生の刺激および虚血/再灌流障害の低減が、それを必要とする個体において行なわれる。本明細書に記載の任意の実施形態において、該方法により、肝再生の刺激および肝脂肪症の低減が、それを必要とする個体において行なわれる。本明細書に記載の任意の実施形態において、該方法により、肝再生の刺激、虚血/再灌流障害の低減および肝脂肪症の低減が、それを必要とする個体において行なわれる。
本明細書に記載の任意の実施形態において、個体は脊椎動物である。一部の特定の実施形態では、脊椎動物は哺乳動物である。本明細書に記載の任意の実施形態において、哺乳動物は研究用動物または飼養動物である。本明細書に記載の任意の実施形態において、哺乳動物はヒトである。本明細書に記載の任意の実施形態において、該個体は、部分肝切除術または肝切除を受けたことがある個体である。本明細書に記載の任意の実施形態において、部分肝切除術または肝切除により、質量基準で、個体の肝臓の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%が除去されている。体積基準で、本明細書に記載の任意の実施形態において、部分肝切除術または肝切除により、個体の肝臓の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%が除去されている。本明細書に記載の任意の実施形態において、個体は肝移植を受けたことがある個体である。本明細書に記載の任意の実施形態において、個体はサイズ不足肝移植片を受けたことがある個体である。本明細書に記載の任意の実施形態において、個体は、中毒性障害、外傷性損傷、小滴性脂肪症または大滴性脂肪症によって引き起こされた肝臓のダメージを有する。本明細書に記載の任意の実施形態において、中毒性障害は、四塩化炭素(CCl4)への曝露、細菌内毒素、静脈内薬物もしくは処方薬の使用もしくは誤用、化学療法、過剰なアルコール消費、またはA型、B型もしくはC型肝炎ウイルスによる感染に起因するものである。本明細書に記載の任意の実施形態において、外傷性損傷は、外科的切除または鈍的外傷(blunt force trauma)(自動車事故で起こるものなど)に起因するものである。
本明細書で用いる場合、用語「小滴性脂肪症」は、その組織学的特徴が、よりずっと一般的な大滴性脂肪症とは対照的な肝脂肪蓄積の異型形態をいう。その病状は、最初は、いくつかの生化学的および臨床的特徴:妊娠時の急性脂肪肝、ライ症候群、ジャマイカ嘔吐病、バルプロ酸ナトリウム毒性、高用量テトラサイクリン毒性および尿素回路酵素の一部の特定の先天性欠損を共有する病状と関連して報告された。該障害は、最初は、いわゆる「小滴性脂肪の疾患」を構成していると考えられていた。近年、小滴性脂肪症は、多種多様な病状、例えば、アルコール中毒症、いくつかの投薬物毒性、デルタ肝炎ウイルス感染(主に、南アメリカおよび中央アフリカ)、幼児突然死、脂肪酸β酸化の先天性欠損、コレステロールエステル蓄積症、ウォルマン病ならびにアルパーズ症候群で観察されている。小滴性脂肪症の病因に関して多くはわかっていないが、多くの場合、主な欠陥はミトコンドリア病変と思われる(が、ミトコンドリアでの脂肪酸のβ酸化の阻害が最も高頻度に関与している欠陥である)。例えば、M.L.Hautekeeteら、(1990)Acta Clin.Belg.45(5):311−326を参照のこと。
本明細書で用いる場合、用語「大滴性脂肪症」は、脂肪酸および/またはトリグリセリドの合成および排出の正常なプロセスの障害を反映する細胞内の脂質の異常な貯留をいう。過剰な脂質は、小胞状に蓄積され、これが細胞質と置き換わる。「大滴性脂肪症」では、小胞が、細胞の核を変形させるのに充分に大きくなる。その病状は、軽度の症例では細胞に対して特に有害ではないが、大量に蓄積されると細胞構成要素が破壊されることがあり得、重度の症例では、細胞が破裂することさえあり得る。多くの異なる機構により、細胞を介する正常な脂質の移動が破壊され、脂肪症が引き起こされ得る。該機構は、脂質の過剰供給または脂質分解不全がもたらされるかどうかに基づいて分類され得る。脂質の過剰供給は、数ある病状の中でも、肥満、インスリン抵抗性またはアルコール中毒症に起因し得る。一部の特定の毒素、とりわけ、アルコール、四塩化炭素、アスピリンおよびジフテリア毒素などが、脂質代謝に関与している細胞機構を障害する。また、一部の特定の代謝病は脂質代謝の欠陥を特徴とする。例えば、ゴーシェ病では、リソソームにより糖脂質が分解されず、脂肪症がもたらされる。
本明細書で用いる場合、用語「部分肝切除術」、「外科的切除」または「肝切除」は、典型的には、肝臓の癌または他の重篤な損傷のため肝臓の一部を除去する外科処置をいう。肝切除術または肝切除の程度は、癌性病変の大きさ、数および位置、または他の肝臓損傷の程度に依存する。また、肝機能が依然として充分かどうかにも依存する。外科医により、腫瘍を含む肝臓部分、葉全体、またはさらに大きな肝臓部分が除去され得る。部分肝切除術では、外科医は、典型的には、肝臓の機能が維持されるように縁部の健常な肝臓組織を残す。
本明細書で用いる場合、用語「サイズ不足」肝移植または「SFS」肝移植は、ドナー肝臓を2つ以上の断片に分け、その各々を、その後、異なるレシピエントに移植する外科的手法をいう。充分な肝再生は、SFS移植を受けた患者(ほとんどは慢性病状態であり、肝再生が始まるには重度に肝機能が障害されている)の回復に必須であり、再生が不充分だと、不充分な胆汁生成、難治性腹水および長期胆汁鬱滞を特徴とし、外科的および敗血性合併症と密接に関連する「サイズ不足移植片症候群」がもたらされることがあり得る。
一部の特定の実施形態では、肝再生を必要とする個体において肝再生を刺激する方法は、該個体においてアシル化刺激タンパク質(ASP/C3adesArg)の循環濃度が低減されるのに有効な量の組成物を該個体に投与することを含む。一部の特定の実施形態では、肝再生の刺激および虚血/再灌流障害の低減を、それを必要とする個体において行なう方法は、該個体においてアシル化刺激タンパク質(ASP/C3adesArg)の循環濃度が低減されるのに有効な量の組成物を該個体に投与することを含む。一部の特定の実施形態では、肝再生の刺激および肝脂肪症の低減を、それを必要とする個体において行なう方法は、該個体においてアシル化刺激タンパク質(ASP/C3adesArg)の循環濃度が低減されるのに有効な量の組成物を該個体に投与することを含む。一部の特定の実施形態では、肝再生の刺激、虚血/再灌流障害の低減および肝脂肪症の低減を、それを必要とする個体において行なう方法は、該個体においてアシル化刺激タンパク質(ASP/C3adesArg)の循環濃度が低減されるのに有効な量の組成物を該個体に投与することを含む。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArgの循環濃度は2μg/ml〜8μg/mlまで低減される。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArgの循環濃度は、該個体から採取された生物学的試料において測定される。一部の特定の実施形態では、生物学的試料は血液、血漿または血清である。一部の特定の実施形態では、生物学的試料は生検によって得られた肝臓試料であり、ASP/C3adesArgの濃度は肝臓ホモジネートにおいて測定される。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArgの循環濃度は、ウエスタンブロット、イムノブロット、酵素免疫測定法(「ELISA」)、ラジオイムノアッセイ(「RIA」)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、リン光、またはマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(「MALDI−TOF」)質量分析によって測定される。
一部の特定の実施形態では、組成物は、補体インヒビター、ASP/C3adesArgアンタゴニストおよびASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストからなる群より選択される。
一部の特定の実施形態では、補体インヒビターはターゲット型補体インヒビターである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2またはその生物学的に活性な断片を含む補体受容体2(CR2)部分;および補体インヒビター部分を含む融合タンパク質である。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、CD59、マウスCrry、ヒトH因子、およびその生物学的に活性な断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、CR2部分は、CR2の少なくとも最初の2つのN末端ショートコンセンサスリピート(SCR)ドメインを含むものである。一部の特定の実施形態では、CR2部分は、CR2の少なくとも最初の4つのN末端SCRドメインを含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は完全長ヒトCD59を含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、GPIアンカーが欠損したヒトCD59の細胞外ドメインを含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−102)が欠損したヒトCD59の細胞外ドメインを含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は、完全マウスCrryの細胞外ドメインタンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分はマウスCrryタンパク質のSCR1〜4を含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分はマウスCrryタンパク質のSCR1〜5を含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分は完全長ヒトH因子を含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分はヒトH因子のSCR1〜4を含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分はヒトH因子のSCR1〜5を含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分はヒトH因子のSCR1〜8を含むものである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビター部分はヒトH因子のSCR1〜18を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の2つのN末端SCRドメインと、GPIアンカーが欠損したヒトCD59の細胞外ドメインとを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の2つのN末端SCRドメインと、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−102)が欠損したヒトCD59の細胞外ドメインとを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の4つのN末端SCRドメインと、GPIアンカーが欠損したヒトCD59の細胞外ドメインとを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の4つのN末端SCRドメインと、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−102)が欠損したヒトCD59の細胞外ドメインとを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の2つのN末端SCRドメインと、完全マウスCrryの細胞外ドメインタンパク質とを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の2つのN末端SCRドメインと、マウスCrryタンパク質のSCR1〜4とを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の2つのN末端SCRドメインと、マウスCrryタンパク質のSCR1〜5とを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の4つのN末端SCRドメインと、完全マウスCrryの細胞外ドメインタンパク質とを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の4つのN末端SCRドメインと、マウスCrryタンパク質のSCR1〜4とを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の4つのN末端SCRドメインと、マウスCrryタンパク質のSCR1〜5とを含む融合タンパク質を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の2つのN末端SCRドメインと、完全長ヒトH因子とを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の2つのN末端SCRドメインと、ヒトH因子のSCR1〜4とを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の2つのN末端SCRドメインと、ヒトH因子のSCR1〜5とを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の2つのN末端SCRドメインと、ヒトH因子のSCR1〜8とを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の2つのN末端SCRドメインと、ヒトH因子のSCR1〜18とを含む融合タンパク質を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の4つのN末端SCRドメインと、完全長ヒトH因子とを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の4つのN末端SCRドメインと、ヒトH因子のSCR1〜4とを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の4つのN末端SCRドメインと、ヒトH因子のSCR1〜5とを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の4つのN末端SCRドメインと、ヒトH因子のSCR1〜8とを含む融合タンパク質を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、CR2の少なくとも最初の4つのN末端SCRドメインと、ヒトH因子のSCR1〜18とを含む融合タンパク質を含むものである。
本明細書に記載の任意の実施形態において、ターゲット型補体インヒビターは非CR2標的化部分を含むものである。本明細書に記載の任意の実施形態において、非CR2標的化部分は、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むものである。本明細書に記載の任意の実施形態において、該抗体はポリクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。本明細書に記載の任意の実施形態において、該抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体断片である。本明細書に記載の任意の実施形態において、該抗体またはその抗原結合断片はヒト化抗体である。本明細書に記載の任意の実施形態において、該抗体またはその抗原結合断片はヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArgアンタゴニストは、ASP/C3adesArgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、およびASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArgが該受容体に結合するのを妨げる可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArgアンタゴニストは、ASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArgが該受容体に結合するのを妨げる抗体またはその抗原結合断片である。一部の特定の実施形態では、該抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラまたはヒト化型抗体である。一部の特定の実施形態では、抗原結合断片は、Fab、Fab’、およびF(ab’)2断片からなる群より選択される。
一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArgアンタゴニストは、ASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArgが該受容体に結合するのを妨げる可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片である。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArgアンタゴニストは、ASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArg受容体(C5L2)への結合を妨げるASP/C3adesArg受容体(C5L2)の1つ以上の細胞外ドメインを含む可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片である。一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArgアンタゴニストは、ASP/C3adesArgに特異的に結合してASP/C3adesArg受容体(C5L2)への結合を妨げる本明細書において提供する可溶性ASP/C3adesArg受容体(C5L2)断片の1種類以上の任意の組合せを含むものである。
一部の特定の実施形態では、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニストは、ASP/C3adesArg受容体(C5L2)に特異的に結合して該受容体の活性化を抑制する抗体またはその抗原結合断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、該抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラまたはヒト化型抗体である。一部の特定の実施形態では、抗原結合断片は、Fab、Fab’、およびF(ab’)2断片からなる群より選択される。
一部の特定の実施形態では、肝再生を必要とする個体において肝再生を刺激する方法は、補体の活性化が低減されるのに有効な量の組成物を投与することを含む。一部の特定の実施形態では、組成物は補体インヒビターである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビターはターゲット型補体インヒビターである。一部の特定の実施形態では、補体インヒビターは非ターゲット型補体インヒビターである。
本明細書に記載の任意の実施形態において、個体は脊椎動物である。本明細書に記載の任意の実施形態において、脊椎動物は哺乳動物である。本明細書に記載の任意の実施形態において、哺乳動物は研究用動物または飼養動物である。本明細書に記載の任意の実施形態において、哺乳動物はヒトである。本明細書に記載の任意の実施形態において、該個体は、部分肝切除術または肝切除を受けたことがある個体である。本明細書に記載の任意の実施形態において、部分肝切除術または肝切除により、質量基準で、個体の肝臓の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%が除去されている。体積基準で、本明細書に記載の任意の実施形態において、部分肝切除術または肝切除により、個体の肝臓の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%が除去されている。本明細書に記載の任意の実施形態において、個体は肝移植を受けたことがある個体である。本明細書に記載の任意の実施形態において、個体はサイズ不足肝移植片を受けたことがある個体である。本明細書に記載の任意の実施形態において、個体は、中毒性障害、外傷性損傷、小滴性脂肪症または大滴性脂肪症によって引き起こされた肝臓のダメージを有する。本明細書に記載の任意の実施形態において、中毒性障害は、四塩化炭素(CCl4)への曝露、細菌内毒素、静脈内薬物もしくは処方薬の使用もしくは誤用、化学療法、過剰なアルコール消費、またはA型、B型もしくはC型肝炎ウイルスによる感染に起因するものである。本明細書に記載の任意の実施形態において、外傷性損傷は、外科的切除または鈍的外傷(自動車事故で起こるものなど)に起因するものである。
一部の特定の実施形態では、肝再生を必要とする個体において肝再生を刺激する方法は、該個体に、補体の古典的経路、レクチン経路または第二経路の1つ以上の活性化が低減または抑制されるのに有効な量の組成物を投与することを含む。一部の特定の実施形態では、組成物はターゲット型補体インヒビターを含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長マウスCrry(配列番号:4)と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスCrryの細胞外ドメイン(配列番号:4のアミノ酸41〜405)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスCrryのSCR1〜4(配列番号:4のアミノ酸83〜338)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスCrryのSCR1〜5(配列番号:4のアミノ酸83〜400)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2(配列番号:1)を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長のマウスCrryタンパク質(配列番号:4)と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスCrryの細胞外ドメイン(配列番号:4のアミノ酸41〜405)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスCrryのSCR1〜4(配列番号:4のアミノ酸83〜338)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスCrryのSCR1〜5(配列番号:4のアミノ酸83〜400)を含むマウスCrryの生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2の生物学的に活性な断片を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長のマウスCrryタンパク質(配列番号:4)、マウスCrryの細胞外ドメイン(配列番号:4のアミノ酸41〜405)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片、マウスCrryのSCR1〜4(配列番号:4のアミノ酸83〜338)を含むマウスCrryタンパク質の生物学的に活性な断片、またはマウスCrryのSCR1〜5(配列番号:4のアミノ酸83〜400)を含むマウスCrryの生物学的に活性な断片と融合させた非CR2標的化部分を含むものである。一部の特定の実施形態では、非CR2標的化部分は、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体断片である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト化抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、組成物は非ターゲット型補体インヒビターを含むものである。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヒトC1インヒビタータンパク質(配列番号:19)またはマウスC1インヒビタータンパク質(配列番号:20)である。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヒトC1インヒビタータンパク質のホモログもしくはマウスC1インヒビタータンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片である。
一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、抗C3抗体またはその抗原結合断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、抗C3抗体またはその抗原結合断片は、補体タンパク質C3に選択的に結合し、C3aおよびC3bへのC3の切断を抑制する。一部の特定の実施形態では、抗C3抗体またはその抗原結合断片は、非補体活性化アイソタイプまたはサブクラスのものである。一部の特定の実施形態では、その抗原結合断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗C3抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、肝再生を必要とする個体において肝再生を刺激する方法は、該個体に、補体第二経路の活性化が低減または抑制されるのに有効な量の組成物を投与することを含む。一部の特定の実施形態では、組成物はターゲット型補体インヒビターを含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトH因子(配列番号:5)と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトH因子の最初の4つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜262)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトH因子の最初の5つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜320)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトH因子の最初の6つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜386)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトH因子の最初の8つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜507)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、ヒトH因子の最初の18個のN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜1104)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長マウスH因子(配列番号:10)と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスH因子の最初の4つのN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜264)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスH因子の最初の5つのN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜322)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスH因子の最初の6つのN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜386)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスH因子の最初の8つのN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜624)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、マウスH因子の最初の18個のN末端SCRドメイン(配列番号:10のアミノ酸19〜1109)を含むマウスH因子の生物学的に活性な断片と融合させた完全長のヒトCR2(配列番号:1)またはヒトCR2のSCR1〜2(配列番号:2)を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトH因子(配列番号:5)、ヒトH因子の最初の4つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜262)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片、ヒトH因子の最初の5つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜320)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片、ヒトH因子の最初の6つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜386)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片、ヒトH因子の最初の8つのN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜507)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片、またはヒトH因子の最初の18個のN末端SCRドメイン(配列番号:5のアミノ酸21〜1104)を含むヒトH因子の生物学的に活性な断片と融合させた非CR2標的化部分を含むものである。
一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、抗B因子抗体またはその抗原結合断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、3番目のショートコンセンサスリピート(SCR)ドメイン内のB因子に選択的に結合し、C3bBb複合体の形成を抑制する。一部の特定の実施形態では、抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、非補体活性化アイソタイプまたはサブクラスのものである。一部の特定の実施形態では、その抗原結合断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗B因子抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。一部の特定の実施形態では、該抗体はモノクローナル抗体1379である(ATCC寄託番号PTA−6230によって生成)。
一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、抗プロパージン抗体またはその抗原結合断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、抗プロパージン抗体は、Bb、C3aおよびC5aの1種類以上の生成を阻害するものである。一部の特定の実施形態では、抗プロパージン抗体またはその抗原結合断片は、非補体活性化アイソタイプまたはサブクラスのものである。一部の特定の実施形態では、その抗原結合断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗プロパージン抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、抗D因子抗体またはその抗原結合断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、抗D因子抗体は、Bb、C3a、C5aおよびsC5b−9の1種類以上の生成を阻害するものである。一部の特定の実施形態では、抗D因子抗体またはその抗原結合断片は、非補体活性化アイソタイプまたはサブクラスのものである。一部の特定の実施形態では、その抗原結合断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗D因子抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。一部の特定の実施形態では、該抗体はモノクローナル抗体(mAb)166−32である(ATCC寄託受託番号HB−12476によって生成)。
一部の特定の実施形態では、肝再生を必要とする個体において肝再生を刺激する方法は、該個体において終末補体の活性化および細胞膜傷害複合体(MAC)の形成が低減または抑制されるのに有効な量の組成物を該個体に投与することを含む。一部の特定の実施形態では、組成物はターゲット型補体インヒビターである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトCD59タンパク質(配列番号:3)、完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームA(配列番号:8)、または完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームB(配列番号:9)と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−102)が欠損したヒトCD59の細胞外ドメイン(配列番号:3のアミノ酸26〜102)を含むCD59タンパク質の生物学的に活性な断片、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−96)が欠損したマウスCD59アイソフォームAの細胞外ドメイン(配列番号:8のアミノ酸24〜96)を含むマウスCD59タンパク質アイソフォームAの生物学的に活性な断片、あるいはGPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−104)が欠損したマウスCD59アイソフォームBの細胞外ドメイン(配列番号:9のアミノ酸24〜104)を含むマウスCD59タンパク質アイソフォームBの生物学的に活性な断片と融合させた完全長CR2タンパク質(配列番号:1)を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトCD59タンパク質(配列番号:3)、完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームA(配列番号:8)、または完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームB(配列番号:9)と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−102)が欠損したヒトCD59の細胞外ドメイン(配列番号:3のアミノ酸26〜102)を含むCD59タンパク質の生物学的に活性な断片、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−96)が欠損したマウスCD59アイソフォームAの細胞外ドメイン(配列番号:8のアミノ酸24〜96)を含むマウスCD59タンパク質アイソフォームAの生物学的に活性な断片、あるいはGPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−104)が欠損したマウスCD59アイソフォームBの細胞外ドメイン(配列番号:9のアミノ酸24〜104)を含むマウスCD59タンパク質アイソフォームBの生物学的に活性な断片と融合させたSCR1〜2(配列番号:2)を含むCR2タンパク質の生物学的に活性な断片を含むものである。
一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、完全長ヒトCD59タンパク質(配列番号:3)、完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームA(配列番号:8)、または完全長マウスCD59タンパク質アイソフォームB(配列番号:9)と融合させた非CR2標的化部分を含むものである。一部の特定の実施形態では、ターゲット型補体インヒビターは、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−102)が欠損したヒトCD59の細胞外ドメイン(配列番号:3のアミノ酸26〜102)を含むCD59タンパク質の生物学的に活性な断片、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Ser−96)が欠損したマウスCD59アイソフォームAの細胞外ドメイン(配列番号:8のアミノ酸24〜96)を含むマウスCD59タンパク質アイソフォームAの生物学的に活性な断片、あるいは、GPIアンカーおよび/または結合対象アミノ酸(すなわち、Asn−104)が欠損したマウスCD59アイソフォームBの細胞外ドメイン(配列番号:9のアミノ酸24〜104)を含むマウスCD59タンパク質アイソフォームBの生物学的に活性な断片と融合させた非CR2標的化部分を含むものである。
一部の特定の実施形態では、組成物は非ターゲット型補体インヒビターである。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、終末補体および細胞膜傷害複合体(MAC)の形成を阻害する。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、終末補体の活性化および細胞膜傷害複合体(MAC)の形成を阻害する抗C5抗体またはその抗原結合断片である。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片は、補体タンパク質C5(C5)の切断を阻害する。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片は、細胞膜傷害複合体(MAC)の組織化を阻害する。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、またはヒト化型である。一部の特定の実施形態では、抗原結合断片は、Fab、Fab’、およびF(ab’)2断片からなる群より選択される。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片はポリクローナルである。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片はモノクローナルである。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片はキメラである。一部の特定の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片はヒト化型である。一部の特定の実施形態では、ヒト化抗C5抗体またはその抗原結合断片はエクリズマブまたはパキセリズマブである。
一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、終末補体および細胞膜傷害複合体(MAC)の形成を阻害する。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヘテロ二量体アポリポタンパク質であるクラスタリンである。一部の特定の実施形態では、クラスタリンは、C5b−8およびC5b−9上での補体タンパク質C9の組織化を阻害するか、またはC5b−7に結合して膜結合を抑制する。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヒトクラスタリンタンパク質(配列番号:15)またはマウスクラスタリンタンパク質(配列番号:16)である。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヒトもしくはマウスのクラスタリンタンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片を含むものである。
一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、終末補体および細胞膜傷害複合体(MAC)の形成を阻害する。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、タンパク質ビトロネクチンまたはその生物学的に活性な断片もしくはホモログである。一部の特定の実施形態では、ビトロネクチンC5b−7の膜結合をブロックし、C9の重合を抑制する。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターはヒトビトロネクチンタンパク質(配列番号:17)またはマウスビトロネクチンタンパク質(配列番号:18)である。一部の特定の実施形態では、非ターゲット型補体インヒビターは、ヒトもしくはマウスのビトロネクチンタンパク質のホモログまたはその生物学的に活性な断片を含むものである。
本明細書に記載の任意の実施形態において、個体は脊椎動物である。本明細書に記載の任意の実施形態において、脊椎動物は哺乳動物である。本明細書に記載の任意の実施形態において、哺乳動物は研究用動物または飼養動物である。本明細書に記載の任意の実施形態において、哺乳動物はヒトである。
本明細書に記載の任意の実施形態において、非CR2標的化部分は、補体タンパク質C3のタンパク質分解断片(例えば、iC3b、C3dg、およびC3d)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むものである。本明細書に記載の任意の実施形態において、該抗体はポリクローナル抗体である。一部の特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。本明細書に記載の任意の実施形態において、該抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群より選択されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体断片である。本明細書に記載の任意の実施形態において、該抗体またはその抗原結合断片はヒト化抗体である。本明細書に記載の任意の実施形態において、該抗体またはその抗原結合断片はヒト抗体である。
本明細書に記載の任意の実施形態において、個体に投与される組成物は、一般的に使用されている任意の投与経路(例えば、本明細書に記載のもの)による個体への投与に適した医薬組成物である。
配列
配列番号:1[補体受容体2(CR2)の完全アミノ酸配列]:
配列番号:2[CR2のショートコンセンサスリピート(SCR)ドメイン1および2のアミノ酸配列]:
配列番号:3[ヒトCD59タンパク質のアミノ酸配列]:
配列番号:4[マウス補体受容体1関連遺伝子/タンパク質y(Crry)のアミノ酸配列]:
配列番号:5[ヒトH因子のアミノ酸配列]:
配列番号:6[ヒトASP/C3adesArgのアミノ酸配列]:
配列番号:7[ヒトASP/C3adesArg受容体(C5L2)のアミノ酸配列]:
配列番号:8[マウスCD59Aタンパク質のアミノ酸配列]:
配列番号:9[マウスCD59Bタンパク質のアミノ酸配列]:
配列番号:10[マウスH因子のアミノ酸配列]:
配列番号:11[ヒト補体受容体1(CR1)のアミノ酸配列]:
配列番号:12[ヒト膜補因子タンパク質(MCP)のアミノ酸配列]:
配列番号:13[ヒト崩壊促進因子(DAF/CD55)のアミノ酸配列]:
配列番号:14[マウス崩壊促進因子(DAF/CD55)のアミノ酸配列]:
配列番号:15[ヒトクラスタリンタンパク質のアミノ酸配列]:
配列番号:16[マウスクラスタリンタンパク質のアミノ酸配列]:
配列番号:17[ヒトビトロネクチンタンパク質のアミノ酸配列]:
配列番号:18[マウスビトロネクチンタンパク質のアミノ酸配列]:
配列番号:19[ヒトC1インヒビタータンパク質のアミノ酸配列]:
配列番号:20[マウスC1インヒビタータンパク質のアミノ酸配列]:
実施例1 ターゲット型補体インヒビターCR2−Crryでの補体阻害により、肝温IRI、70%PHxおよびPHx+IRIのマウスモデルにおいて肝再生が改善される
材料および方法
動物試験:C3−/−マウスおよび野生型対照はJackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から取得した。C5L2−/+ヘテロ接合型のマウスは、Regeneron Pharmaceuticals Inc.のJoseph Sorrentino(Tarrytown,NY)博士のご厚意によりご提供頂いた。C5L2−/−および野生型の同腹子は、PCR遺伝子型分類によって判定した。マウスはすべてC57BL/6バックグラウンドであり、8〜10週齢で体重が22.5g〜25gのものを使用した。マウスにはペレット型飼料を水とともに随意に摂取させ、12時間の明/暗サイクルで維持した。すべての手順で、マウスは、0.05ml/10g体重の「ケタミンカクテル」(ケタミン(13mg/ml)、キシラジン(2.6mg/ml)およびアセプロマジン(0.15mg/ml)と滅菌した通常生理食塩水からなる)の腹腔内注射で麻酔した。動物を、以下の3つの異なる処置:(i)肝IRI;(ii)70%部分肝切除術(PHx);および(iii)IRIとPHxの組合せのうちの1つに供した。
肝IRI:マウスを、既報のとおりに全肝温虚血および再灌流(I/R)に供した(43)。門脈および肝臓動脈を、小動脈瘤クランプにより30分間閉塞させて肝虚血を誘導した後、6時間の再灌流を行なった。一部の実験では、本発明者らは、肝部分温IRIモデルも使用した(補足データ参照)。非侵襲的微小血管クランプを血管茎に適用することにより、マウスを肝臓の左側葉および中葉の閉塞に供した(44)。90分間の部分温虚血後、クランプを外し、肝臓の再灌流を開始させた。IRI試験ではすべて、CR2−Crryまたは通常生理食塩水(NS)は、虚血直後にi.p.投与した。マウスを再灌流後の所定の時点で致死させ、血清および肝臓の試料採取を行なった。70%部分肝切除術(PHx)。外科処置は既報のとおりに行ない(45、46)、肝臓の中葉および左側葉を切除した。I/RとPHxの組合せ.上記の肝臓I/RとPHx処置の両方を組み込んだモデルを開発した。門脈と肝臓動脈を30分間閉塞させ、虚血期間中に70%PHxを行なった。外科処置後、マウスを致死させ、肝臓を、IRIモデルでは再灌流の6時間後、PHxおよびIRI+PHxモデルでは切除の48時間後に回収した。また、PHxおよびIRI+PHxモデルでは血液も大静脈から収集し、致死の時点および6時間目に血清調製を行なった。回収した肝臓は、再生の評価のために重量を測り、一部の肝臓組織を、組織学的評価のために10%中性(neutralized)ホルマリン中に固定するか、または液体窒素中でスナップ凍結して種々の生化学的アッセイのためのホモジネーションまで−80℃で維持するかのいずれかとした。補体阻害による治療プロトコルでは、CR2−Crryまたは通常生理食塩水(NS)を手術直後に腹腔内(i.p.)注射によって投与した。CR2−Crryは、腸および脳の既報のIRI試験での有効な保護に基づき(47、48)、0.25mgの用量、および3分の1の用量0.08mgで投与した。CR2−Crryは既報のとおりに調製した(47)。ラットで行なわれた既報の試験に基づき(49)、ヤギ抗マウス−IL−6抗体(R&D Systems,Minneapolis,MN)(200μg/kg体重でi.p注射)を用いてIL−6遮断を行なった。IL−6抗体または通常のヤギIgG(対照)は、手術直後、CR2−Crry投与の直前にi.p.注射した。
アシル化刺激タンパク質/C3adesArgの再構築:オリジナルの手順(50)の変形法により、アミノ末端のHis−タグを用いて組換えヒトASP/C3adesArgを調製し、精製した。精製は、まずNi−Sepharoseカラムにおいて、続いてHPLCによって行なった。ASP/C3adesArgの不活化を回避するため、精製のいずれの段階でも変性剤は使用しなかった。ASP/C3adesArgは、マウス1匹あたり200μlの生理食塩水中、15μgまたは50μgのいずれかの用量で、i.p.注射によりPHx直後に投与した。ASP/C3adesArg調製物の内毒素レベルをLimulus Amebocyte Lysateアッセイ(E−Toxateキット;Sigma Chemicals,St.Louis,MO)によって解析し、25μg/μlのASP/C3adesArg(使用濃度より100倍高い濃度)は試験の結果、内毒素陰性であった。マウスASP/C3adesArgとヒトASP/C3adesArgは同一でないが、ヒトASP/C3adesArgは、マウスASP/C3adesArg受容体(C5L2)と相互作用し、マウス細胞を活性化させ、食後のトリグリセリドクリアランスを増強することが、野生型およびC3−/−マウスモデルにおいて示されている(26)。
顕微鏡検査:組織学的検査のため、組織塊を10%緩衝ホルムアルデヒド溶液中に48時間入れた後、パラフィンに包埋した。肝臓組織学を、ヘマトキシリン−およびエオシン−染色(H&E染色)した4μm切片の光学顕微鏡検査(Olympus BH−2 Olympus America,Melville,NY)により、盲検的に評価した。各スライド上の10個の無作為の視野を、壊死について標準的な形態学的基準(構造の欠損、空胞形成、核溶解、好酸球増加症の増大)によって評価し、壊死の程度を、既報のとおりに0〜4段階の重症度スコアをつけることによって半定量的に評価した(51)(なし,0;軽度,1;中等度,2;重度,3;および完全な壊死性の肝臓崩壊,4)。このスコアを使用し、IRIおよび/またはPHx後の肝臓損傷を異なる試験群間で比較した。脂肪症を、既報のとおりにオイルレッドO染色によって評価した(52)。肝臓試料中のC3沈着を、既報のとおりに、抗マウスC3d−FITC抗体(DakoCytomation,Carpenteria,CA)を用いた免疫蛍光によって調べた(18)。
生化学的および免疫学的アッセイ:アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)および総ビリルビンの血清レベルを、Sigma Chemicals(St.Louis,MO)製の解析キットを製造業者の使用説明書に従って用いて測定した。TNFaおよびIL−6の血清レベルを、ELISAによりeBiosciences(San Diego,CA)製のキットを用いて測定した。肝臓のTNFaとIL−6のレベルの測定のため、凍結肝臓試料を、抽出バッファー(50mmol/L Tris,pH7.2,150mmol/L NaCl,Triton X−100およびプロテアーゼインヒビターカクテル)中でホモジナイズした。ホモジネートを10,000gおよび4℃で8分間遠心分離し、上清み中のTNFaとIL−6のレベルを、ELISAによりeBiosciences(San Diego,CA)製のキットを用いて測定した。肝臓実質への好中球浸潤の定量的評価のため、肝臓ミエロペルオキシダーゼ含有量を、HbtマウスMPO ELISA Kit(Hycult Biotechnology(Uden,Netherlands)製)を製造業者の使用説明書に従って用いて評価した。肝臓試料を調製し、試料の肝臓トリグリセリド含有量を、トリグリセリド試験キットを製造業者(Stanbio,Boerne,TX)による説明のとおりに用いて測定した。肝臓試料中の還元形態のグルタチオン(GSH)およびマロンジアルデヒド(MDA)レベルを、市販のキット(OXISResearch,Portland,OR)により既報のとおりに分光測光的に測定した(43)。脂質の過酸化生成物の計算値濃度をタンパク質濃度によって標準化し、nmol/mgタンパク質で示した。
肝臓再生の評価:肝再生の3種類の独立したマーカーを使用した。肝臓の再構築重量は、肝臓総重量に対する再生肝質量の割合で示し、既報のとおりに計算した(53)。肝増殖の評価のため、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)をi.p.注射し(50mg/kg)、2時間後に肝臓を回収した。肝臓切片中のBrdU取込みを、既報のとおりに免疫組織化学的染色によって測定した(54)。陽性細胞および陰性細胞を、10個の無作為に選択した視野において光学顕微鏡検査(40倍の対物レンズを使用)により計数した。定常的に増殖している腸陰窩上皮をBrdU取込みおよび染色の陽性対照として供した。H&E染色切片において、以下のとおりの有糸分裂の既報の基準:細胞膜が完全にない、核のわずかな好酸性染色、核紡錘マトリックスの形成、核小体がない、および細胞の大きさのわずかな増大を使用し、有糸分裂指数を求めた(55)。有糸分裂指数は、陽性細胞/1000個の肝細胞/HPFの割合で示した。解析はすべて、実験群に対して盲検的な検査員によって行なわれた。
病的状態の評価:病的状態の臨床スコアを、PHxの48時間後に既報のとおりにして評価した(56)。各マウスを姿度、被覆および活性について、0〜3(0,普通;1,わずかに影響;2,中等度の影響;および3,重度の影響)で等級化した。スコアを併合し、0〜9段階の最終スコアを得た。
肝臓ATP含有量の測定:およそ50mgの凍結肝臓組織を、プロテアーゼインヒビターカクテル(Pierce,Rockford,IL)を加えた500μlの氷冷組織溶解バッファー(Sigma−Aldrich Inc.,St.Louis,MO)中でホモジナイズした。ホモジネートを10,000×gで8分間、4℃にて遠心分離し、1.5%トリクロロ酢酸を用いて上清み中のATPを抽出した。次いで、上清みをTris−酢酸バッファー(pH7.85)中で1:150に希釈し、100μlの希釈試料に、100μlの再構成したルシフェリン−ルシフェラーゼ溶液(Enliten(登録商標),Promega,Madison,WI)を添加した。ルシフェラーゼ活性を直ちにルミノメトリーにより評価した。試料中のATP含有量を、同時の標準曲線との比較により測定した。また、タンパク質濃度も測定し、ATP含有量の計算値濃度をタンパク質濃度によって標準化し、mmol/mgタンパク質で示した。
GPX1およびSTAT3およびAktの活性化のウエスタンブロット解析:肝臓試料を氷上にて、プロテアーゼインヒビターカクテル(Pierce,Rockford,IL)を含有する溶解バッファー(Sigma−Aldrich Inc.,St.Louis,MO)中でホモジナイズした。ホモジネートを超音波処理し、10,000×g、4℃で遠心分離し、細胞残屑を除去した。タンパク質濃度を測定した。等量のタンパク質を等容量の試料バッファー中に含む試料を、4%〜15%のTris−HClポリアクリルアミド勾配のゲル中で分離させ、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜(BIO−RAD,Hercules,CA)に移した。非特異的結合部位を、5%の脱脂粉乳を含有するTris緩衝生理食塩水を用いて室温で1時間ブロックした。次いで、膜を、GPX1、Akt、ホスホ−Akt、STAT3、ホスホ−STAT3に対する抗体(すべて、Cell Signaling Technology,Danvers,MA)製)またはGAPDHに対する抗体(Santa Cruz Biotechnology Inc.,Santa Cruz,CA)とともに、0.1%のTween 20を含むTris緩衝生理食塩水中でインキュベートした。膜を洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼにコンジュゲートさせた二次抗体ともにインキュベートした。免疫反応性タンパク質を化学発光の増強によって検出した。
統計解析:データを平均±SDで示す。群間の有意差を、連続変数および多数の群に対してボンフェローニ補正を用いた分散解析(ANOVA)によって求めた。2つの群間の正規分布した連続変数の比較には、スチューデントのT−検定を使用した。生存率の試験のため、カプラン−マイヤーのログランク解析を行なった。差はすべて、p値が<0.05の場合、統計学的に有意とみなした。
結果
肝虚血再灌流障害:マウス肝臓IRIにおける補体の役割を、C3−/−マウスを使用し、異なる用量の補体インヒビターCR2−Crry(0.08mgまたは0.25mgのいずれか)で処置した野生型マウスにおいて調べた。30分間の肝虚血および6時間または24時間いずれかの再灌流の後、生存率、肝臓の損傷および局所炎症を評価した。マウスはすべて、再灌流後の観察期間中、生存していた。血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを肝機能の尺度として測定した。ALTレベルは、I/Rを行なったすべての群で、ベースラインまたは偽手術マウスと比べて有意に上昇していた(図1A)。しかしながら、ALTレベルは、再灌流後、I/R後の野生型マウスでは、C3−/−マウスまたはいずれかの用量のインヒビターで処置したマウスと比べて有意に高かった。0.08mg用量のCR2−Crryは、再灌流後6時間目において0.25mg用量よりも保護性が低かったが、再灌流後24時間目のALTレベルは有意に異ならなかった。また、損傷の組織学的評価も、C3−/−マウスおよび補体阻害マウスにおいて、I/R後6時間目と24時間目の両方で有意に低く(図1B〜C)、どちらの解析時点でも高用量阻害の方が良好は保護がもたらされた。好中球漸増に対する補体の活性化の効果を評価するため、肝臓ホモジネートのミエロペルオキシダーゼ(MPO)レベルを測定した。MPOレベルは、再灌流後のすべての試料で、ベースラインおよび偽手術対照と比べて上昇していたが、C3欠損マウスおよび補体阻害マウスのMPOレベルは、再灌流後6時間目と24時間目の両方において、対照野生型マウスと比べて有意に低かった(図1D)。しかしながら、MPOレベルは、すべての群で、再灌流後の6時間目と比べて24時間目の方が高く、これは、再灌流後の6時間目と比べて24時間目にALTおよび損傷スコアが低いことと相関していなかった。また、炎症サイトカインTNFaとIL−6のレベルも、C3欠損マウスおよび補体阻害マウスにおいて、再灌流後の両方の時点で野生型対照と比べて有意に低下しており、再灌流後の6時間目と比べて24時間目では有意に低いレベルであった(図1E〜F)。I/R後の6時間目と24時間目での損傷および回復マーカーの総合比較により、C3欠損および高用量での補体阻害では、低用量での補体阻害と比べて、回復および修復が遅延されることが示された。臨床的意義のため、本発明者らは、肝臓の外科処置で多くの場合に使用される臨床処置であるプリングル法と類似した全肝虚血のモデルを使用した。それにもかかわらず、このデータは、補体の欠損および阻害により、腸静脈の鬱血(補体が活性化され得、内毒素血症が引き起こされ得る病状)のリスクがない部分肝虚血のモデルにおいても、IRIが防御されることも示す(図12)。
部分肝切除術と肝再生:先に公表されたデータ(14)と大きく整合して、このデータから、血清ALT、ビリルビン、巣状肝臓壊死および死亡率の増大によって測定されるように、C3欠損により、70%PHx後に損傷の増大がもたらされることが示された。また、BrdU取込みの有意な低減、有糸分裂指数スコアの減少および肝臓重量の回復の低減により、C3−/−マウスにおける再生応答障害が示された(図13)。また、組織学的検査およびトリグリセリド含有量によって評価されるように、PHx後のC3−/−マウスでは、野生型マウスと比べて肝臓脂肪症の有意な増大も観察された。肝臓再生は、肝臓脂質の一過性蓄積、およびPHx後の野生型マウスにおいて発症する軽度の大滴性脂肪症と関連している。しかしながら、C3欠損は、中等度から重度の大滴性および小滴性脂肪症の発症と関連していた(図2)。これは、特に、C3aが肝再生に重要な役割を果たしていることが示されており(14)、その分解形態C3adesArg(アシル化刺激タンパク質またはASP/C3adesArgとしても知られている)が脂質代謝に役割を果たしていることに鑑みると、補体、脂肪症および再生の間に機構的関連性がある可能性を示唆する。ASP/C3adesArgは、トリグリセリド合成の増大および細胞内脂肪分解の低減によって脂肪細胞内への脂肪蓄積を増大させる(19)。
C3が欠損している(したがって、ASP/C3adesArgを生成することができない)マウスではトリグリセリドクリアランスが遅延されたため(20〜22)、本発明者らは、ASP/C3adesArgをPHx後のC3−/−マウスに投与し、肝再生と脂肪症に対するASP/C3adesArgの効果を評価した。15μg用量の組換えASP/C3adesArgでC3−/−マウスに再構築させると、脂肪症および肝臓の損傷が有意に低減され、増殖応答(BrdU取込みおよび肝臓重量の回復によって測定)が完全に回復され、生存率が有意に改善された(図2および3)。TNFaおよびIL−6は、NF−κBおよびSTAT3の活性化に対するその効果によって肝再生のプライミング事象に関与しているサイトカインである。先のデータ(14)を確認すると、C3欠損では、PHx後のSTAT3活性化は有意に低かった(図3F)。しかしながら、15μgのASP/C3adesArgでC3−/−マウスに再構築させると、STAT3活性化が野生型レベルまで回復し、ASP/C3adesArgによって肝再生がモジュレートされ得る推定経路が確認された。
ASP/C3adesArgの同定されている唯一の受容体はC5L2であり(23〜26)、C5L2は、トリグリセリドの合成とクリアランスに重要な役割を果たしている(25、26)。肝再生におけるC5L2の役割および再生におけるASP/C3adesArgとC5L2間の推定される関連性を調べるため、本発明者らは、PHx後の肝臓の損傷と再生に対するC5L2欠損の効果を調べた。C5L2−/−マウスは、PHxに対してC3−/−マウスと同様に応答し、野生型マウスと比べて有意に増大した肝臓の損傷、増大した死亡率および障害された肝再生を示した(図3)。また、C5L2−/−マウスでは、PHx後に中等度から重度の肝脂肪症も示された(図2)。また、C3−/−マウスと同様、PHx後のC5L2−/−マウスでは、野生型マウスおよびASP/C3adesArg再構築マウスと比べて、STAT3活性化は有意に少なかった。本発明者らは、さらに、PHx後のC5L2−/−マウスにASP/C3adesArgを投与する効果を調べた。PHx後における15μgのASP/C3adesArgでのC5L2−/−マウスの処置は、このマウスにおいて、損傷または再生のいずれのパラメータにも効果はなく(図3A〜E)、STAT3シグナル伝達にも影響はなかった(図3F)。総合すると、このデータは、ASP/C3adesArgがSTAT3活性化のC5L2モジュレーションを伴う機構によって再生をモジュレートするという仮説と整合する。それにもかかわらず、既報の試験では、STAT3活性化と肝再生におけるC5aとC5aRのシグナル伝達の枢要な役割が示されており(14)、重要なことに、肝臓切片におけるC3沈着によって示されるように、補体の活性化は、PHx後のC5L2−/−マウスと野生型マウスとで類似していた(図14)。PHx後に高用量のASP/C3adesArg(50μg)でC3−/−マウスに再構築させると、予測に反して再生応答は回復せず、損傷は防御されなかった(図3)。なぜ低用量と高用量のASP/C3adesArgで、PHx後のC3−/−マウスにおける肝再生と損傷に対して反対の効果がもたらされるのかは不明であった。しかしながら、補体の活性化生成物であるC3aとC5aは、肝再生のプライミング段階において、TNFaおよびIL−6の発現に対する効果によって枢要な役割を果たしていることが示されているものの、これらのサイトカインは肝細胞の再生と損傷に二元的役割を果たしているのかもしれず、これらの炎症サイトカインの発現の増大および長期化は肝臓の損傷と関連している(27〜29)。
したがって、本発明者らは、TNFaおよびIL−6の発現レベルならびにPHx後の肝臓の好中球浸潤(MPO活性)に対する高用量と低用量(対比)のASP/C3adesArgの効果を調べた。PHx後6時間目、TNFaとIL−6のレベルは、高用量または低用量いずれのASP/C3adesArgで処置したC3−/−マウスにおいても、生理食塩水処置C3−/−マウスと比べて有意に上昇していた(図4)。しかしながら、どちらのサイトカインのレベルも、15μgのASP/C3adesArgで処置したマウスと比べて、50μgのASP/C3adesArgで処置したマウスで有意に高かった。また、高用量のASP/C3adesArgは、PHx後の好中球浸潤(MPO活性によって測定)の有意な増大と相関していた。したがって、高用量のASP/C3adesArgは、PHx後の有意に高い炎症性負荷と関連している。また、本発明者らは、野生型マウスでは、PHx後に低用量または高用量のいずれのASP/C3adesArgで処置しても損傷が有意に増大し、増殖応答が障害され、ASP/C3adesArgの用量が高いほど、損傷と再生に対してより著しい効果を有すると判定した(データ表示せず)。総合すると、上記のデータは、ASP/C3adesArgはPHx後の肝再生の枢要な因子であるが、PHx誘導性の補体活性化のためASP/C3adesArgのレベルが通常内因的に生成されるレベルよりも高くなると、肝臓の炎症および損傷の増大ならびに再生応答障害がもたらされることを示す。このデータにより、PHx後の最適な肝再生には補体の活性化とC3a/ASP/C3adesArgの生成に閾値が存在することが示唆される。
補体阻害と肝再生:上記の結果を、より臨床的に考えるため、本発明者らは、PHx後の肝臓の損傷と再生に対する異なる用量の補体インヒビターの効果を野生型マウスにおいて調べた。この試験のため、本発明者らは、0.08mgまたは0.25mgの用量のCR2−Crryを使用し、同用量を上記のIRI試験において使用した。C3−/−マウスでの結果と同様(図13に表示)、PHx後に0.25mg用量のCR2−Crryで処置した野生型マウスでは、生理食塩水処置対照と比べて有意に増大した肝臓の損傷および増殖応答障害が示された(図5)。また、この補体阻害マウスでは対照処置マウスと比べて高い死亡率が認められた(それぞれ、40%に対して0%,7日間の期間にわたってモニタリング)。肝再生における補体活性化の重要な役割を考慮すると予測され得るように、CR2−Crryの用量が低いほど、高用量CR2−Crry処置と比べて損傷は少なく、BrdU取込みは増大していた。
しかしながら、予測に反して、低用量での補体阻害では、生理食塩水処置対照と比べて有意に少ない肝臓損傷および有意に向上した増殖応答がもたらされた(図5)。さらなるデータにより、低用量CR2−Crryで処置すると、PHx後の多数の時点で再生の改善と加速がもたらされることが示された。PHx後7日までに、標準重量までほぼ完全に肝臓が回復し、生理食塩水で処置したマウスと低用量CR2−Crryで処置したマウス間に有意差は認められなかった(図15A〜B)。0.08mgのCR2−Crryまたは生理食塩水で処置したマウスでは死亡は認められなかったが、ALT上昇および組織学スコアに基づくと、PHx後の対照マウスでは、一部、軽微な損傷が認められた。また、対照マウスでは低用量Crry処置マウスと比べて、高い病的状態スコアが認められた(図15C)。ALTレベルは、PHx後72時間までに正常まで低下した(図15D)。ALTレベルは、PHx後24時間目および48時間目において、低用量CR2−Crryで処置したマウスでは、生理食塩水処置対照と比べて有意に低かった。
肝臓切片の抗C3d免疫蛍光顕微鏡検査を使用し、異なる用量のCR2−Crryの効果を補体活性化レベルおよび肝臓の損傷/再生と相関させた。PHx後48時間目、野生型マウスから単離した肝臓において、C3dは、主に肝細胞膜と洞様毛細血管内皮に沈着していた。野生型マウスの試料では、0.08mg CR2−Crryで処置したマウスの試料と比べて、C3dが、より強い強度で沈着しており、より広く分布していた。0.25mg CR2−Crryで処置したマウスの試料では、検出可能なC3d沈着は認められなかった(図6)。
総合すると、このデータにより、PHx後の肝再生における補体依存性損傷と補体依存性増殖応答間のバランスの概念が裏付けられる。したがって、臨床場面では、切除またはサイズ不足移植術後の肝再生障害はIRI後の過剰な補体活性化および炎症の帰結であり得ると考えられる。
虚血再灌流障害と部分肝切除術の組合せモデルにおける補体阻害:肝臓I/Rによって有意なレベルの補体活性化と補体依存性損傷がもたらされるため(図1参照)、本発明者らは、IRIと70%PHxの両方を組み込んだモデル(プリングル法での肝広範囲切除に使用される処置を模倣するモデル)における補体阻害の効果を調べた。野生型またはC3−/−マウスを30分間の肝虚血に供し、この期間中に70%PHxを行なった。野生型マウスを0.08mg CR2−Crryまたは0.25mg CR2−Crryのいずれかで、手術直後に処置した。C3−/−マウスでは、外科処置後48時間生存していたのは20%だけであったのに比べて、野生型マウスの生存率は90%であった(図7A)。野生型マウスと比べ、生存C3−/−マウスでは、肝臓の損傷および増殖応答障害が有意に増大していた(図7B〜E)。注目すべきことに、組合せ外科処置を行なった野生型マウスは、肝臓の損傷および肝細胞増殖に関して、70%PHx単独を行なった野生型マウスよりも不良な転帰を有した(図3参照)。また、野生型マウスを、IRIに対して高度に防御的な用量0.25mgのCR2−Crryで処置すると、組合せモデルでは有意に不良な転帰がもたらされ、外科処置後48時間目では、対照動物と比べて肝臓の損傷が増大し、BrdU取込みが減少し、肝臓重量が減った(図7)。対照的に、低用量CR2−Crryでの処置では死亡はもたらされず、他のすべての群(重要なことには、野生型対照を含む)と比べた場合、肝臓の損傷および肝再生に関して有意に改善された転帰がもたらされた。肝臓の損傷レベルは、MPO活性によって測定される好中球浸潤と相関していた(図7F)。また、本発明者らは、TNFaとIL−6のレベルに対する補体阻害の効果も調べた。再灌流後の6時間目において、この組合せモデルでは、血清TNFaレベルは肝臓の損傷と正に相関していた。他方、血清IL−6レベルは損傷と負に相関し、0.08mg CR2−Crryで処置したマウスでは、他のすべての群と比べて有意に高いIL−6レベルがみられた(図8A〜B)。これは、再生応答におけるIL−6の重要な役割と整合し、TNFaレベルは、0.08mg CR2−Crry処置マウスでは他の試験群と比べて低かったが、偽手術マウスと比較すると、なお有意に高かった。
興味深いことに、再灌流後の48時間目ではIL−6の状況が逆転されており、低用量CR2−Crryで処置したマウスの血清IL−6レベルは、C3−/−マウスまたは高用量CR2−Crryで処置したマウスよりも有意に低かった。血清TNFaレベルは、低用量CR2−Crryで処置したマウスでは、他のすべての群と比べて有意に低いままであった(図8C〜D)。TNFaおよびIL−6は、再生応答のプライミング期に重要であると考えられており、これらのサイトカインの肝臓発現は、それぞれ、PHx後、1〜2時間目頃および3〜6時間目頃にピークになる。したがって、本発明者らはまた、IRI+PHx後3時間目のTNFaとIL−6の肝臓レベルも調べた。野生型マウスと比べ、C3欠損および高用量での補体阻害では、肝臓において、TNFaおよびIL−6のレベルの有意な低減がもたらされた(図8E〜F)。対照的に、低用量CR2−Crryは、野生型を含む他のすべての群と比べて、両サイトカインの有意な肝臓レベルの増大と相関していた。したがって、低用量での補体阻害および肝再生の増強は、これらのサイトカインの肝臓での生成が早期に増大すること、および他のすべての群と比べてPHx後48時間目までに該炎症サイトカインの全身レベルが減衰することと関連している。
IRIおよびPHx後のシグナル伝達経路、ATPレベルおよび酸化的損傷に対する補体欠損および補体阻害の効果。CR2−Crry処置マウスにおける肝臓の保護および再生の潜在的機構をさらに解明するため、さらなる試験を行なった。STAT3活性化の調節に加え、IL−6はまた、PHx後の早期再生応答に重要な役割を果たしていること、および再生時のG1期の進行を調節していることが示されている経路であるPI3K/Akt生存経路を活性化させる(30)。したがって、本発明者らは、高レベルの早期IL−6発現が、STAT3およびAktの活性化の増大と相関している低用量での補体阻害と関連しているかどうかを調べた。IRI+PHx後のSTAT3およびAktのリン酸化を、補体欠損マウスおよび補体阻害マウスから単離した肝臓において調べた。C3欠損および高用量での補体阻害では、生理食塩水処置マウスおよび低用量での補体阻害で処置したマウスと比べて、IRI+PHx後のSTAT3活性化が顕著に低減された(図9A)。さらに、低用量CR2−Crryで処置したマウスでは、IRI+PHx後3時間目および6時間目のどちらにおいても、生理食塩水対照と比べてSTAT3活性化が認められた。また、低用量CR2−Crryでの処置は、IRI+PHx後6時間目のAktリン酸化の増大とも関連していた(図9A)。
I/R後、また広範切除後にも肝臓でミトコンドリア機能不全および酸化的損傷が起こる。また、細胞内ATP蓄積は、エネルギーを供給し、サイクリンD−1/cdk複合体の転写後活性化を調節することにより、肝再生に重要な役割を果たしていることが示されている(31〜33)。肝臓保護および肝再生に対する補体阻害の効果が肝臓ATPレベルと関連しているかどうかを調べるため、すべての群の肝臓試料中のATP濃度をIRI+PHx後の種々の時点で測定した。IRI+PHx後6時間目、すべての群で肝臓ATPの著しい低減が認められた(図9B)。C3−/−マウスおよび高用量CR2−Crryで処置したマウスではATPレベルは低いままであったが、低用量CR2−Crryで処置したマウスでは、ATP蓄積は、IRI+PHx後48時間までにほぼ術前レベルまで回復した。
反応性酸素種の生成および脂質の過酸化は、I/Rおよび極度の肝切除後の肝損傷の主要な機構と考えられている。IRI+PHx後の肝臓の酸化的損傷に対する補体阻害の効果を、肝臓のグルタチオン(GSH)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX1)およびマロンジアルデヒド(MDA)のレベルを測定することにより調べた。IRI+PHx後の生理食塩水処置動物では、GSH(酸化防止剤)のレベル低下およびMDA(脂質の過酸化の指標)のレベル増大が認められ、これは、該臓器が酸化的ストレス下にあったことを示す(図10A、B)。また、IRI+PHx後の生理食塩水処置動物では、フリーラジカルスカベンジャーGPX1のレベルも低下していた(図10C)。対照的に、有意なGSHとGPX1のレベル増大およびMDAのレベル低下によって示されるように、IRI+PHx後に0.08mg CR2−Crryでマウスを処置すると酸化的ストレスが防御された。
IRI+PHx後のIL−6遮断および補体阻害:最後に、低用量での補体阻害によりIRI+PHx後のIL−6レベルが増大したため、およびIL−6シグナル伝達は肝再生のプライミング期に必須であるため、本発明者らは、低用量での補体阻害の肝臓保護効果および再生促進(proregenerative)効果とIL−6発現との間に関連性があるかどうかを明らかにしようとした。抗IL−6抗体の投与によるIL−6遮断とともにCR2−Crry処置を行なうと、IRI+PHx後3時間目にIL−6の肝臓レベルが約65%低下し、IRI+PHx後6時間目にIL−6の血清レベルが約50%低下した(図11A〜B)。さらに、IL−6遮断により、IRI+PHx後のリン酸化STAT3のレベルが有意に低下し、これは、IL−6のレベル増大とSTAT3活性化との直接的な関係を示す(図11C)。IRI+PHxに供し、低用量CR2−Crryで処置したマウスでは、IL−6遮断により、肝臓の損傷(血清ALTによってアッセイ)の有意な増大および再生応答(BrdU取込みによってアッセイ)の有意な障害がもたらされた(図11D〜E)。また、抗IL−6抗体およびCR2−Crryを受けた10匹のマウスのうち4匹だけが、IRI+PHx後48時間より長く生存した(データ表示せず)。したがって、IRI+PHx後の低用量での補体阻害の保護効果は、補体インヒビター処置をIL−6遮断と組み合わせると失われた。総合すると、このような結果は、低用量(高用量ではない)での補体阻害の肝臓保護効果は、IL−6発現およびその後の再生応答のプライミングにおける補体の役割によるものであることを示唆する。
実施例2 ターゲット型補体インヒビターCR2−CD59での補体阻害により、肝温IRI、70%PHx、90%PHx、エタノール誘導性肝臓損傷、およびエタノール誘導性損傷+70%PHxのマウスモデルにおいて肝再生が改善される
材料および方法
動物試験:8〜10週齢の野生型C57BL/6マウス、C3欠損(C3−/−)およびCD59欠損(CD59−/−)C57BL/6マウスをこの試験に使用した。マウスにペレット型飼料と水を随意に摂取させ、12時間の明/暗サイクルで維持した。マウスを、0.05ml/10g体重の「ケタミンカクテル」(ケタミン(13mg/ml)、キシラジン(2.6mg/ml)およびアセプロマジン(0.15mg/ml)と滅菌した通常生理食塩水からなる)の腹腔内(i.p.)注射によって麻酔した。動物を、以下の4つの異なる処置:(i)肝臓IRI;(ii)70%部分肝切除術(PHx);(iii)90%PHx;および(iv)エタノール誘導性損傷後に70%PHxのうちの1つに供した。
肝IRI:マウスを、既報のとおりに全肝温虚血および再灌流(I/R)に供した。簡単には、マウスを麻酔し、小創垂直切開により側腹切開を行なった。肝臓の外科的露出後、門脈および肝臓動脈を小動脈瘤クランプにより30分間閉塞させて肝虚血を誘導した後、6時間の再灌流を行なった。70%部分肝切除術(PHx)。外科処置は、既報のとおりに行なった。簡単には、正中切開により側腹切開を行ない、肝臓の中葉および左側葉を切除した。90%PHx。90パーセント肝切除術は、既報のとおりに行なった。該処置は、一重結紮を用いて左側葉と中葉を除去し(70%PH)、その後、右側葉(20%)を切除し、尾状葉のみを残して行なった。エタノール誘導性損傷後に70%PHx。野生型、B因子−/−、C3−/−、およびCD59−/−マウスに、以下のような漸増エタノール濃度のエタノール含有飼料:(1)1%(v/v)を2日間;(2)2%(v/v)を2日間;(3)4%(v/v)エタノールを7日間;および最後に(4)5%(v/v)エタノールをさらに4週間を自由に摂取させた。5週間と4日後、野生型、B因子−/−、C3−/−、およびCD59−/−エタノール給餌動物を70%PHxに供した。
外科処置後、マウスを異なる時点で致死させ、肝臓試料と血液試料を収集した。回収した肝臓は、再生の評価のために重量を測り、一部の肝臓組織を、組織学的評価のために10%中性ホルマリン中に固定するか、または液体窒素中でスナップ凍結して種々の生化学的アッセイのためのホモジネーションまで−80℃で維持するかのいずれかとした。補体阻害による治療プロトコルでは、CR2−Crry、CR2−CD59または通常生理食塩水(NS)を手術直後にi.p.投与した。
補体インヒビターでの治療プロトコル:臨床的意義のため、および限定的または一時的な補体阻害が異なる効果を有し得るという事実のため、本発明者らはまた、補体インヒビターCR2−Crry(これは、補体をC3レベルで阻害する)、およびCR2−CD59(これは、終末補体をMAC形成レベルで阻害する)で処置した野生型マウスにおいてパラレル実験を行なった。インヒビターは既報のとおりに調製した。再生に対する補体の欠損および阻害の効果を、以下に記載するようにして解析した。インヒビター(CR2−CrryとCR2−CD59)または通常生理食塩水(NS)は手術直後に投与した。インヒビターの用量は以下に記載のとおりに投与した。
結果
肝臓のIRIと再生における終末補体の役割:終末補体経路の活性化により補体タンパク質C6、C7、C8および(C9)nの逐次組織化がもたらされて細胞溶解性の細胞膜傷害複合体(MAC)が形成され、これが直接的な細胞溶解を引き起こし、また、溶解レベル以下で形成された場合は、炎症促進性分子を放出するように細胞を刺激する。これまでに、肝臓のIRIと再生におけるMACの役割に関する報告はない。宿主細胞膜における終末補体経路とMAC形成の制御はCD59の活性によってもたらされる。CD59は、MAC(C5b−9)の組織化の際にC8とC9に結合し、C9のアンフォールディングと膜挿入を妨げることにより機能を発揮する。
この実験では、IRIおよび肝再生におけるMACの役割を、CD59−/−マウスを用いて調べた。CD59が存在しないことにより、補体系の終末部分の制御不能な活性化がもたらされる。30分間の虚血および6時間の再灌流に供したCD59−/−マウスでは、野生型動物と比べてALTレベルと肝臓損傷の有意な増大が示された。CD59−/−動物を0.4mgのCR2−CD59で処置すると、該損傷は有意に低減された(図16〜17)。CR2−CD59処置野生型マウスのALTレベルは、NS対照動物と比べて有意に低かった(p<0.01)。
さらに、70%PHxに供したCD59−/−マウスでは、血清ALTレベルの有意な増大(図18)、広範な壊死、炎症性の細胞浸潤の増大(図19)、BrdU取込みの全廃(図20)および有意に高い死亡率(図21)を特徴とする重度の肝再生障害が示された。CD59発現が再構成されるのに充分な用量である0.2mgのCR2−CD59で処置すると、血清ALTレベル(図18)、肝臓の病態(図19)、BrdU取込み(図20)および全体的な生存率(図21)によって示されるように、有意に肝臓損傷が低減され、再生が改善された。このデータにより、終末経路、特にMACが肝再生とIRIに重要な役割を果たしていること、および過剰な補体活性化は肝臓における再生プロセスを有意に障害することが示唆される。
肝再生に対する効果は、補体経路内の種々の時点で選択的に阻害された:補体欠損マウスを用いて得られたデータは、補体が一時的に阻害された試験で得られる結果と常に整合するとは限らない。本発明者らは、次に、補体の活性化の低減の効果を、補体インヒビターCR2−Crry(これは、補体をC3レベルで阻害する)、および補体インヒビターCR2−CD59(これは、終末補体を阻害してMACの組織化をさまたげる)で処置した野生型マウスにおいて調べた。本発明者らは、まず、肝臓IRIについて、0.25mg用量のCR2−Crry、および0.2mg CR2−CD59で処置した野生型マウスを用いてパラレル実験を行なった。動物を、30分間の全肝温虚血および6時間の再灌流に供した後、生存率、肝臓の損傷および局所炎症を評価した。CR2−CrryまたはCR2−CD59での処置を用いた補体阻害野生型マウスのALTレベルは、NS対照と比べて有意に低かった(図22)。CR2−Crryで処置した群とCR2−CD59で処置した群間に有意差は観察されなかった。
再灌流後の先天免疫エフェクター細胞による虚血性組織の浸潤は充分報告されている。補体が肝臓における好中球漸増に、どの程度の役割を果たしているのかを評価するため、本発明者らは、肝臓ホモジネート中のMPOレベルを定量した。MPOレベルは、6時間目、すべての再灌流後試料において、ベースラインおよび偽手術対照と比べて上昇していた。CR2−CrryおよびCR2−CD59での補体阻害はどちらも、NS対照と比べて有意なMPOの減少と関連しており(それぞれ、p<0.05)、NS対照のMPOレベルが34.8±6.5ng/mgであったのに対して、それぞれ、0.25mg CR2−Crryで処置した動物では16.8±4.0ng/mg、および0.2mg CR2−CD59で処置した動物では7.9±2.8ng/mgであった。
再生試験では、70%PHx直後にi.p.投与した0.25mg用量で処置したマウス CR2−Crryでは、重度の肝臓ダメージが発生し(図23〜24)、肝再生障害が示された(図24)。しかしながら、驚いたことに、PHx直後にi.p.注射によって投与した0.08mg用量のCR2−Crryで処置したマウスでは、肝臓ダメージの発生は有意に少なく(図23〜24)、野生型対照と比べてBrdU取込みの著しい増大が示された(図25)。さらに興味深いことに、0.45mgおよび0.15mgのCR2−CD59で処置したマウスでは、ともに肝臓損傷の有意な低減および肝再生の劇的な改善が示された(図23〜25)。
90%PHx後の野生型マウスにおける急性肝不全のCR2−CD59での予防:肝広範囲切除は、多くの場合、肝不全および死に至り、肝臓腫瘍を有する患者に対する治療的肝切除の大きな制限となっている。90%PHxのマウスモデルを使用し、本発明者らは、終末補体阻害が転帰を改善する能力を試験した。マウスを90%PHxに供し、次いで、外科処置直後にi.p.注射によって、0.1mg CR2−CD59、0.08mg CR2−CrryまたはNSで処置した。NS対照マウスでは、90%PHxにより早期に、重度の肝臓の損傷および機能不全(高い血清ALTレベルによって示される)(図26)、肝臓実質の広範な壊死、重度の小滴性脂肪症(図27)、BrdU取込みの全廃(図28)、ならびに3日以内の100%の死亡率(図29)が誘導された。CR2−CD59処置により、肝臓損傷の生化学的および組織学的徴候の低減ならびにBrdU取込みの増大および生存率の有意な改善がもたらされた(図26〜29)。驚いたことに、CR2−Crryでの処置では治療的影響はなく、損傷プロフィールは、NS処置動物と有意に異ならなかった。
補体の活性化の悪化は、アルコール性肝臓疾患(ALD)モデルにおいて肝臓の損傷に関与している:補体系はアルコール性肝臓疾患(ALD)において活性化されることがわかっているが、アルコール性肝臓の損傷の病因におけるその役割はまだはっきりしていない。ここで、本発明者らは、アルコール性肝臓の損傷における補体の活性化の役割を調べた。野生型マウスおよびB因子(FB−/−)、C3(C3−/−)またはCD59(CD59−/−)が欠損したマウスにエタノール含有飼料を摂取させた。マウスにはエタノール含有飼料を自由に摂取させ、エタノールの濃度を以下のように増大し:1%(v/v)エタノールを2日間、2%(v/v)エタノールを2日間、4%(v/v)エタノールを7日間、および最後に5%(v/v)エタノールをさらに4週間、各々は対照飼料とペアフィードとし、補体再構築およびターゲット補体阻害の効果を調べた。エタノール給餌野生型マウスは、軽度の小滴性および大滴性の脂質蓄積ならびにトリグリセリド含有量の増大、血清ALTレベルの増大を特徴とする肝脂肪症を発症した(図30〜31)。エタノール飼料下のFB−/−およびC3−/−マウスは、脂肪症を発症せず、わずかなALTレベルの増大が示されたにすぎなかった。対照的に、エタノール含有飼料下のCD59−/−マウスは、野生型マウスと比べて、より重大な肝脂肪症を発症し、肝臓トリグリセリドレベルが増大し、より重度の肝臓の損傷が発生した(図30〜31)。
第2の組の実験では、肝再生に対するターゲット型補体インヒビターの効果を、同じエタノール含有飼料を摂取させた野生型マウス、および70%PHxを行なった対照動物において調べた。0.08μg用量のターゲット型補体インヒビターCR2−Crryを、手術直後にi.p.注射によって投与し、ヘマトキシリン−およびエオシン−染色によって肝再生を評価した。肝再生は、エタノール給餌野生型マウスの脂肪症肝臓では、通常の飼料を与えたペアフィードマウスと比べて有意に抑制された。興味深いことに、ターゲット補体阻害により、対照マウスと比べて、生存率の改善および増殖応答の有意な増強がもたらされた(図32)。
考察
中毒性障害またはPHx後の肝再生を制限する機構の特定は、サイズ不足肝移植術および肝広範囲切除に対する制限を解放する鍵と考えられる。肝広範囲切除およびサイズ不足肝移植術は、虚血再灌流障害(IRI)および肝再生の抑制に対するレムナント/移植片の易罹患性が増大するため、臨床的課題を有する。補体は両方のプロセスに関与している。肝温IRIのマウスモデルにおいて、本発明者らは、CD59欠損により、野生型マウスと比べて広範な損傷がもたらされることが示した。CR2−CD59で処置すると、CD59−/−マウスおよびIRI後の野生型マウスでは、ALTレベルおよび組織学スコアの減少によって示されるように、肝臓の損傷が有意に低減される。
野生型マウスは70%肝切除術に耐えられ得、切除から完全に回復するのに充分な肝再生が行なわれ得る。対照的に、70%PHx後のCD59−/−マウスでは、血清ALTレベルの有意な増大、肝臓実質の広範な壊死、炎症性の細胞浸潤の増大、BrdU取込みの全廃、およびC9沈着の有意な増大によって示されるように、肝再生は重度に障害された。CR2−CD59で再構築させると、70%PHx後のCD59−/−マウスにおいて、有意に実質のダメージが低減され、肝臓再生応答が増大し、生存率が改善された。CR2−Crry処置およびCR2−CD59処置では、ともに、野生型マウスにおいてIRI処置によって誘導された損傷が有意に低減された。C3欠損マウスと同様、70%PHx後にi.p.注射によって0.25mg CR2−Crryで処置した野生型マウスでは、肝再生障害が示された。しかしながら、低い方の用量0.08mgのCR2−Crryでは、70%PHx後の野生型マウスの肝再生はNS対照と比べて有意に改善された。しかしながら、驚いたことに、70%PHx後にi.p.注射によって0.45mgおよび0.15mgのCR2−CD59で処置した野生型マウスでは、ともに、肝臓損傷の有意な低減および肝再生の劇的な改善が示された。
最後に、90%PHx後、野生型マウスは、小滴性脂質蓄積、トリグリセリドレベルの増大、血清ALTレベルの顕著な増大、および肝臓レムナントにおける重度の肝再生障害を特徴とする重度の肝脂肪症を発症した。対照的に、70%PHx後、野生型マウスは軽度の大滴性脂肪症を発症し、ALTレベルの増大はわずかにすぎなかった。興味深いことに、終末補体(すなわち、MAC組織化)をCR2−CD59で遮断すると、90%PHx後の野生型マウスにおいて生存率が有意に増大し、肝再生が回復した。実際、CR2−CD59処置野生型マウスから外科処置後、最初の数時間に回収した肝臓レムナントでは、再生促進サイトカインTNFαおよびIL−6の発現の増大、ならびにSTAT3活性化の増大が示された。
このデータは、広範肝切除術と関連する細胞死促進機構のモジュレーションにおける終末補体およびMAC組織化の中心的な役割を強調するものであり、ターゲット型補体インヒビターCR2−CD59での終末補体およびMAC組織化の遮断は、広範に損傷された肝臓において再生を促進させるための新規なストラテジーであることが示唆される。
実施例3 毒性学試験およびヒト等価用量の決定
本明細書において例示した医薬組成物をマウスに、およそ3.2mg/kg〜およそ20mg/kgの範囲の用量で投与した。
偽手術マウスと種々の度合のPHxおよび中毒性障害後のマウスの両方における無毒性量(有意な有害効果がもたらされない最高用量レベル)を決定するため、マウスにおいて、さらなる毒物学的試験を行なう。したがって、野生型C57BL/6マウスの群をJackson Laboratory(Bar Harbor,ME)または他の市販の供給元から取得する。マウスにペレット型飼料を摂取させ、水を自由に摂取させ、12時間の明/暗サイクルで維持する。マウスは、8〜10週齢で体重が22.5g〜25gのものを使用する。マウスを適切な数(すなわち、n=5〜10匹またはそれ以上)の群に分け、上記のようにIRI、70%PHxまたはIRI+70%PHxに供し、次いで、漸増用量のターゲット型補体インヒビター(例えば、CR2−CD59、CR2−Crry、もしくはCR2−FH)、ASP/C3adesArgアンタゴニスト、またはASP/C3adesArg受容体(C5L2)アンタゴニスト(所望の経路(例えば、腹腔内注射)によって投与)で、外科処置の直後に処置する。適切な時間後、マウスを失血させ、毒性を評価し、有意な有害効果(血清ALT、MPOおよびBrdU取込みを測定することにより評価される肝再生障害および肝臓損傷の増大によって規定される)がもたらされない最高用量レベルを決定する。該データから、無毒性量(NOAEL)をマウスについて決定する。次いで、体表面積に基づいて、マウスNOAELをヒト等価用量に変換する。例えば、Rick Ng,DRUGS:FROM DISCOVERY TO APPROVAL(第2版,John Wiley & Sons,Hoboken,NJ)の第158〜161頁を参照のこと。計算値のヒトNOAELを、適切な用量を決定するための起点として、ヒトで行なう毒性試験および有効性試験に使用する。
引用した参考文献
前述の発明は、明瞭な理解の目的のための実例および一例としてある程度詳細に記載しているが、当業者には、一定の軽微な変更および修正が行なわれることが自明であろう。したがって、本記載および実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。