以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態では、多方向入力操作装置101及び多方向入力操作装置101を用いた車両用シフト装置600について説明する。先ず、多方向入力操作装置101を用いた車両用シフト装置600について説明を行う。図1は、本発明の第1実施形態に係わる多方向入力操作装置101を用いた車両用シフト装置600を説明する斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態の係わる多方向入力操作装置101を用いた車両用シフト装置600を説明する図であって、図2(a)は、図1に示すY2側から見た正面図であり、図2(b)は、図1に示すX1側から見た側面図である。図3は、本発明の第1実施形態に係わる多方向入力操作装置101を用いた車両用シフト装置600を説明する図であって、図1に示すZ1側から見た上面図である。図4は、本発明の第1実施形態に係わる多方向入力操作装置101を用いた車両用シフト装置600を説明する分解斜視図である。図5は、本発明の第1実施形態に係わる多方向入力操作装置101を用いた車両用シフト装置600の操作を具体的に説明する図であって、図5(a)は、車両のシフトの配置を示した平面図であり、図5(b)は、シフトノブ60Nのポジション位置を示した平面図である。
本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置101を用いた車両用シフト装置600は、図1ないし図3に示すような外観を呈し、図4に示すように、操作者によって把持されるシフトノブ60Nと、操作者によるシフトノブ60Nの傾倒操作を受けて多方向への操作が行える多方向入力操作装置101と、多方向入力操作装置101からの信号を受けて車両側機器に信号を送信する制御部60Cと、を備えて構成されている。他に、車両用シフト装置600には、多方向入力操作装置101の上面を覆うように配設された箱状のケースK61と、多方向入力操作装置101の下面を覆うカバーK62と、多方向入力操作装置101に収容され制御部60Cが搭載された配線基板29と、を有している。そして、この車両用シフト装置600は、車両に搭載され、第1方向D1(図3に示すX方向)と第1方向D1と直交する第2方向D2(図3に示すY方向)との傾倒操作が行える、車両のシフト操作のために用いられる。
車両用シフト装置600のシフトノブ60Nは、図4に示すように、操作者によって把持し易いように細長い形状で形成され、図1ないし図3に示すように、図4に示す多方向入力操作装置101の操作部材21の操作部21tを覆うようにして係合されて配設されている。
車両用シフト装置600の制御部60Cは、集積回路(IC、Integrated Circuit)を用いて構成され、図4に示すように、多方向入力操作装置101に収容された配線基板29に搭載されている。そして、制御部60Cは、図示していないコネクタを介して車両側機器に接続され、シフトノブ60Nの傾倒操作を受けて操作がされた位置情報信号を車両側機器に送信している。この位置情報信号を受けて、車両側では、シフトパターンに対応した動作を行うとともに、シフトパターンにおけるシフトノブ60Nのポジションをインストルメントパネル等に設けられた表示部に表示するようにしている。
車両用シフト装置600のケースK61は、合成樹脂材を成形して作製されており、図4に示すように、箱状に成形されており、中央に開口K61hを有して構成され、多方向入力操作装置101の上面を覆うように配設されている。その際に、図4に示すように、多方向入力操作装置101の操作部材21の操作部21tが、開口K61hを貫通して、ケースK61から露出している。
車両用シフト装置600のカバーK62は、合成樹脂材を成形して作製されており、図4に示すように、多方向入力操作装置101の下面を覆う平板状の形状で形成されている。また、カバーK62には、複数のリブが形成されており、このリブに配線基板29が支持されて固定されている。
車両用シフト装置600の配線基板29は、プリント配線板(printed wiring board)を用いており、図4に示すように、前述したように、制御部60Cが搭載されている。また、配線基板29には、図示はしていないが、位置検出手段5Sとの電気的接続のためのフレキシブルプリント基板が接続されているとともに、外部機器との接続のためのコネクタが搭載されている。なお、図4に示す配線基板29には、位置検出手段5Sの磁電変換素子15と位置判断部55が制御部60Cとともに搭載されているが、後述する多方向入力操作装置101で詳細に説明を行う。
以上のように構成された本発明の第1実施形態の車両用シフト装置600は、シフトノブ60Nが変速機に直接接続されている機械制御方式の車両ではなく、電子制御方式の車両に適用される。故に、多方向入力操作装置101から送信されるシフト位置の情報信号だけで、車両のシフト操作が行われる。この車両のシフト位置は、前述したインストルメントパネル等に設けられた表示部に表示される。
ここで、本発明の第1実施形態における、多方向入力操作装置101を用いた車両用シフト装置600のシフト操作について、図5を用いて具体的に説明する。図5は、本発明の第1実施形態に係わる多方向入力操作装置を用いた車両用シフト装置の操作を具体的に説明する図であって、図5(a)は、車両のシフトの配置(シフトパターン)を示した平面図であり、図5(b)は、シフトノブのポジション位置を示した平面図である。なお、図5(a)に示すシフトパターンは、適用される車両によって異なるので、ここでは、便宜的に英数字で表している。そして、このシフトパターンは、前述したインストルメントパネル等に設けられた表示部に表示されるか、或いはシフトノブの天面に表示される。また、図5(b)に示すポジション位置は、車両用シフト装置600のシフトノブ(操作部材)が操作されて、多方向入力操作装置101の操作部材が移動した位置を模式化したものである。
例えば、シフトノブ60Nが図5(b)に示す操作部材21の第2ポジションP2に位置し、シフト位置が図5(a)に示すシフト“B”に位置する場合、シフトノブ60NをY1方向に傾倒操作して、図5(b)に示す前段ポジションS21にすると、図5(a)に示すシフト“A”にシフト位置が移動したと、情報信号が車両側に送信され、車両のシフト操作が行われる。そして、操作者は、操作が完了したためシフトノブ60Nから手を離すので、シフトノブ60Nが自動復帰して、第2ポジションP2に戻るようになる。
また、その後の操作で、第2ポジションP2に位置するシフトノブ60NをY2方向に傾倒操作し、図5(b)に示す後段ポジションS23に操作すると、シフト“A”にあったシフト位置が、図5(a)に示すシフト“B”へと移動する。この操作を受けて、図5(a)に示すシフト“B”にシフト位置が移動したと、情報信号が車両側に送信され、車両のシフト操作が行われる。そして、操作者は、操作が完了したためシフトノブ60Nから手を離すので、シフトノブ60Nが自動復帰して、第2ポジションP2に戻るようになる。
このようにして、車両用シフト装置600は、シフト“A”及びシフト“B”を有する操作に対して、基準位置であるシフト“A”或いはシフト“B”を多方向入力操作装置101の操作部材21の第2ポジションP2に割り付けて使用している。この際に、前述したように、シフト“B”からシフト“A”に切り換えるため、多方向入力操作装置101の操作部材21は、図5(b)に示す第2ポジションP2から前段ポジションS21へとY1方向に傾倒操作できるようになっている。同様にして、シフト“A”からシフト“B”に切り換えるため、多方向入力操作装置101の操作部材21は、第2ポジションP2から後段ポジションS23へとY2方向に傾倒操作できるようになっている。なお、多方向入力操作装置101の操作部材21のY方向への移動方向、所謂傾倒方向を、車両のシフト操作の第2方向D2として割り付けを行っている。
一方、例えば、図5(a)に示すシフト“B”にシフト位置がある場合、第2ポジションP2に位置するシフトノブ60NをX2方向に傾倒操作し、図5(b)に示す操作部材21の第1ポジションP1にすると、シフト“B”にあったシフト位置が、図5(a)に示すシフト“D”に移動する。この際に、操作者がシフトノブ60Nから手を離しても、操作部材21(シフトノブ60N)は、第1ポジションP1に留まり、操作部材21の傾倒状態をそのまま維持している。
また、その後の操作で、シフト“D”にシフト位置がある場合、第1ポジションP1に位置するシフトノブ60NをY1方向に傾倒操作し、図5(b)に示す前方ポジションS11にすると、図5(a)に示すシフト“C”にシフト位置が移動したと、情報信号が車両側に送信され、車両のシフト操作が行われる。そして、操作者がシフトノブ60Nから手を離と、シフトノブ60Nが自動復帰して、第1ポジションP1に戻るようになる。
また、シフト“D”にシフト位置がある場合、第1ポジションP1に位置するシフトノブ60NをY2方向に傾倒操作し、図5(b)に示す後方ポジションS13にすると、図5(a)に示すシフト“E”にシフト位置が移動したと、情報信号が車両側に送信され、車両のシフト操作が行われる。そして、操作者がシフトノブ60Nから手を離と、シフトノブ60Nが自動復帰して、第1ポジションP1に戻るようになる。
また、同様にして、シフト“C”からシフト“D”へのシフト位置の移動は、第1ポジションP1から後方ポジションS13へのY2方向の傾倒操作で行い、シフト“E”からシフト“D”へのシフト位置の移動は、第1ポジションP1から前方ポジションS11へのY1方向の傾倒操作で行うようにしている。
このようにして、車両用シフト装置600は、シフト“C”及びシフト“E”を有する操作に対して、基準位置であるシフト“D”を多方向入力操作装置101の操作部材21の第1ポジションP1に割り付けて使用している。なお、多方向入力操作装置101の操作部材21が第1ポジションP1と第2ポジションP2とを移動するX方向への移動方向、所謂傾倒方向を、車両のシフト操作の第1方向D1として割り付けを行っている。また、図2及び図4でも、説明を分かり易くするため、傾倒操作の第1方向D1及び第2方向D2を図示している。
次に、多方向入力操作装置101について説明を行う。図6は、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置101を説明する斜視図である。図7は、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置101を説明する図であって、図7(a)は、図6に示すY2側から見た正面図であり、図7(b)は、図7(a)の枠体22Cを省略した正面図である。図8は、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置101を説明する図であって、図8(a)は、図6に示すX1側から見た側面図であり、図8(b)は、図8(a)の枠体22Cを省略した側面図である。図7及び図8は、操作部材21が第2ポジションP2に位置する状態を示している。図9は、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置101を説明する図であって、図6に示すZ1側から見た上面図である。図10は、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置101を説明する図であって、図9に示すX−X線における断面図である。図11は、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置を説明する図であって、可動側磁性体MMと対向側磁性体TMの部分を示す斜視図である。図12は、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置を説明する図であって、枠体22Cの斜視図である。図13は、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置を説明する図であって、図4に示す配線基板29をZ1側から見た配線基板29の上面図である。
本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置101は、図6、図7(a)及び図8(b)に示すような外観を呈し、図7及び図8に示すように、操作者の操作を受けて傾倒動作可能な操作部材21と、操作部材21を傾倒動作可能に支持する支持体22と、操作部材21とともに傾倒動作する複数の可動側磁性体MMと、複数の可動側磁性体MMのそれぞれと対向して配置された複数の対向側磁性体TMと、傾倒操作を受けて操作部材21が位置する複数のポジションを検出する位置検出手段5Sと、を備えて構成されている。他に、多方向入力操作装置101には、対向側磁性体TMの傾倒動作を止めるストッパー部26(図12を参照)を有している。そして、多方向入力操作装置101は、操作者の傾倒操作を受けて、操作部材21が第1ポジションP1及び第2ポジションP2(図5(b)を参照)間を移動する第1方向D1(図6及び図7(b)に示すX1方向及びX2方向)の傾倒動作と、第1方向D1と直交する第2方向D2(図6及び図8(b)に示すY1方向及びY2方向)の傾倒動作と、が行える多方向への操作が可能な装置となっている。
多方向入力操作装置101の操作部材21は、図6に示すように、支持体22と係合され垂直方向(図6に示すZ方向)に延設された柱状の操作軸21jと、操作軸21jの一端側にねじ止めされて係合している操作部21tと、図7(b)及び図8(b)に示すように、操作軸21jの他端側に設けられ操作軸21jの軸中心が貫く平面に広がる平板状の基部21k及び平板状の基体部21dと、を有して構成されている。そして、操作部材21の操作部21tには、前述したように、車両用シフト装置600のシフトノブ60Nが覆われて配設されている。
操作部材21の基部21kは、合成樹脂材を成形して作製されており、図7(b)に示すように、中央部分が少し曲げられた平板形状をしている。そして、支持体22と係合されて、操作部21tの第1方向D1(図7に示すX方向)への傾倒動作に伴って、基部21kも連動して傾倒動作を行うように構成されている。
操作部材21の基体部21dは、鉄等の軟磁性体からなり、図7(b)及び図8(b)に示すように、平面形状をしており、操作軸21jと基部21kとの間に配設されている。そして、支持体22と係合されて、操作部21tの第2方向D2(図8に示すY方向)への傾倒動作に伴って、基体部21dも連動して傾倒動作を行うように構成されている。なお、第2方向D2への傾倒動作に伴って、基部21kも連動して傾倒動作を行うように構成されている。
また、本発明の第1実施形態では、基体部21dが軟磁性体からなるので、図11に示すように、複数の可動側磁性体MMや複数の対向側磁性体TMを一体にして、この基体部21dを形成している。この一体に形成された複数の可動側磁性体MM及び複数の対向側磁性体TMについては、可動側磁性体MM及び対向側磁性体TMの説明の際に合わせて行う。
多方向入力操作装置101の支持体22は、合成樹脂材を成形して作製されており、図6に示すように、操作部材21の傾倒操作に応じて回動する第1連動部材22Aと、操作部材21の傾倒操作に応じて回動するとともに軸線方向が第1連動部材22Aと直交する第2連動部材22Bと、第1連動部材22Aを支持している枠体22Cと、から構成されている。
支持体22の第1連動部材22Aは、合成樹脂材を成形して作製されており、図6、図7及び図11に示すように、方形の筒状に形成された外壁部22Aaと、対向する外壁部22Aaの一対からそれぞれ延設して設けられた第1傾倒軸22Aeと、を有して構成されている。そして、この第1傾倒軸22Aeは、多方向入力操作装置101が組み立てられた際には、枠体22Cの対向する一対の側壁部22Cpに設けられた穴部22Ch(図12を参照)に挿通されて、回動可能に枠体22Cに支持されている。これにより、この第1傾倒軸22Aeを回動中心として、第1連動部材22Aが回動できるようになっている。
また、支持体22の第2連動部材22Bは、合成樹脂材を成形して作製されており、図6に示すように、ブロック状のベース部22Bgと、ベース部22Bgから上方に延設された結合部(図示はしていない)と、ベース部22Bgを貫いて配設されている第2傾倒軸22Bjと、を有して構成されている。そして、多方向入力操作装置101が組み立てられた際には、第2連動部材22Bが第1連動部材22Aの外壁部22Aaに囲まれた空間に挿入され、第2傾倒軸22Bjが一対の外壁部22Aaの孔部22Ad(図11を参照)に挿通されて、回動可能に第1連動部材22Aに支持されている。この第2傾倒軸22Bjは、第1傾倒軸22Aeと軸方向が直交している。
また、図示しない結合部が操作部材21の操作軸21jに挿入されて係合している。これにより、第1連動部材22A、第2連動部材22B及び枠体22Cを用いて、支持体22が操作軸21j(操作部材21)を傾倒動作可能に支持していることとなる。具体的には、第2連動部材22Bの第2傾倒軸22Bjを回動軸として、操作部材21が第1方向D1への回動ができ、第1連動部材22Aの第1傾倒軸22Aeを回動軸として、操作部材21が第2方向D2への回動ができようになっている。
多方向入力操作装置101の可動側磁性体MMは、永久磁石EM4と永久磁石EM4の3面を囲むように配設されたヨークYM4とからなる磁石体と、前述した基体部21dと一体に形成された複数の可動側磁性体MMと、から構成されている。また、可動側磁性体MMの磁石体は、図7(b)に示す第1傾倒磁石K14及び第2傾倒磁石K24とから構成されており、一体に形成された複数の可動側磁性体MMは、図8(b)に示す第1可動磁性体M14及び第2可動磁性体M24と、から構成されている。この可動側磁性体MMは、後述する対向側磁性体TMと組み合わせて機能される。
可動側磁性体MMの第1傾倒磁石K14及び第2傾倒磁石K24は、図7(b)に示すように、第2傾倒軸22Bjを挟んで操作部材21の基部21kに配設されて固定されており、操作部材21の第1方向D1への傾倒動作と連動して傾倒動作を行うように構成されている。そして、第1傾倒磁石K14は、操作部材21が第1ポジションP1に移動した際に、軟磁性体の基体部21dと当接または近接し、第2傾倒磁石K24は、操作部材21が第2ポジションP2に移動した際に(図7(b)の状態)、基体部21dと当接または近接するようになる。なお、第1傾倒磁石K14及び第2傾倒磁石K24を配設する際には、基体部21dと対向する対向面以外の部分をヨークYM4が永久磁石EM4を覆うようにした向きで配設する。
可動側磁性体MMの第1可動磁性体M14及び第2可動磁性体M24は、図8(b)に示すように、第1傾倒軸22Aeを挟んで操作部材21の基体部21dと一体となって形成されており、操作部材21の第2方向D2への傾倒動作と連動して傾倒動作を行うように構成されている。なお、本発明の第1実施形態では、第1傾倒軸22Aeを挟んだ一組の可動側磁性体MMを用いて構成したが、これに限るものではない。
多方向入力操作装置101の対向側磁性体TMは、可動側磁性体MMのそれぞれと対向して配置された磁性体であり、第1傾倒磁石K14及び第2傾倒磁石K24と対向した軟磁性体の基体部21d(図7(b)を参照)と、第1可動磁性体M14及び第2可動磁性体M24と対向して配設された第1対向磁石T14及び第2対向磁石T24(図8(b)を参照)と、から構成されている。
対向側磁性体TMの基体部21dは、前述したように、基体部21dと一体に形成された複数の対向側磁性体TMを構成しており、図7(b)に示すように、第1傾倒磁石K14と対向した第1固定磁性体R14と、第2傾倒磁石K24と対向した第2固定磁性体R24と、を有している。そして、前述したように、操作部材21が第1ポジションP1に移動した際に、第1傾倒磁石K14が第1固定磁性体R14と当接または近接し、操作部材21が第2ポジションP2に移動した際に(図7(b)の状態)、第2傾倒磁石K24が第2固定磁性体R24と当接または近接するようになる。なお、本発明の第1実施形態では、軟磁性体の基体部21dを第1固定磁性体R14及び第2固定磁性体R24して好適に用いたが、これに限るものではなく、例えば永久磁石EM4(ヨークYM4を更に用いても良い)を用いて、磁石体である対向側磁性体TMとしても良い。これにより、より強い引き合う力を生じさせることができる。
対向側磁性体TMの第1対向磁石T14及び第2対向磁石T24は、可動側磁性体MMと同様に、図8(b)に示すように、永久磁石EM4と永久磁石EM4の3面を囲むように配設されたヨークYM4とからなる磁石体であり、可動側磁性体MMと対向側磁性体TMとが対向する対向面以外の部分を、ヨークYM4が永久磁石EM4を覆うようにした向きで配設している。
また、対向側磁性体TMのヨークYM4には、図11に示すように、ヨークYM4の長手方向(図11に示すX方向)に延設された突設部が設けられており、この突設部が、操作部材21が傾倒された際に、後述するストッパー部26と当接する当接部TTqとなる。つまり、第1対向磁石T14には当接部TTq1、第2対向磁石T24には当接部TTq2がそれぞれ両側に設けられている。
多方向入力操作装置101のストッパー部26は、図10及び図12に示すように、支持体22の枠体22Cの対向する一対の側壁部22Cpに、それぞれ2つ(26a、26b)設けられている。このストッパー部26は、第1傾倒軸22Aeを挟んで、操作部材21がY1方向(傾倒方向)に傾倒動作する側にストッパー部26a、操作部材21がY2方向(傾倒方向)に傾倒動作する側にストッパー部26bを配設している。そして、操作部材21が基準位置(第1ポジションP1或いは第2ポジションP2)に位置する際に、ストッパー部26aが第1対向磁石T14の当接部TTq1と対向するとともに、図10に示すように、ストッパー部26bが第2対向磁石T24の当接部TTq2と対向するようになる。
なお、後述する動作の説明で詳細に説明するが、このストッパー部26は、操作者による基準位置からの傾倒操作を受けて、操作部材21が位置する複数のポジションのそれぞれに対応して設けられている。つまり、図5(b)に示す前方ポジションS11及び前段ポジションS21にはストッパー部26a、後方ポジションS13及び後段ポジションS23にはストッパー部26bが対応して設けられている。
最後に、多方向入力操作装置101の位置検出手段5Sについて説明する。位置検出手段5Sは、永久磁石EM4の発生する磁気を検出する磁電変換素子15と、磁電変換素子15からの検出信号に基づいて操作部材21の位置を判断する位置判断部55と、を有して、構成されている。
位置検出手段5Sの磁電変換素子15は、永久磁石EM4の発生する磁気を検出する素子であって、例えば、ホール素子を用い、図4及び図13に示すように、熱硬化性の合成樹脂でパッケージングして、4つの磁電変換素子15(15a、15b、15c、15d)を配線基板29に配置している。この磁電変換素子15は、垂直方向(図4に示すZ方向)の磁界の変化を検出信号として出力するようにしている。
また、4つの磁電変換素子15(15a、15b、15c、15d)は、図13に示すように、一組の磁石体に対応してそれぞれ配設している。つまり、第1対向磁石T14には磁電変換素子15a及び磁電変換素子15b、第2対向磁石T24には磁電変換素子15c及び磁電変換素子15dをそれぞれ配設している。また、磁電変換素子15a、磁電変換素子15b、磁電変換素子15c及び磁電変換素子15dのそれぞれは、所定の距離を有して配設されている。
これにより、磁電変換素子15のそれぞれが受ける永久磁石EM4からの磁気の強さがそれぞれ異なることとなり、それぞれの磁電変換素子15のからの検出信号が異なるようになる。更に、第1傾倒軸22Aeによる操作部材21の一方向(図8(b)に示すY1方向)の傾倒動作に伴い、一方の対向側磁性体TM(第1対向磁石T14)は一方の磁電変換素子15(磁電変換素子15a及び磁電変換素子15b)に近づき、他方の対向側磁性体TM(第2対向磁石T24)は他方の磁電変換素子15(磁電変換素子15c及び磁電変換素子15d)から離れるようになる。このため、磁電変換素子15のそれぞれが受ける永久磁石EM4からの磁気の強さが確実に異なり、磁電変換素子15のそれぞれからの検出信号の強度差が大きくなる。なお、言うまでもないが、他方向(図8(b)に示すY2方向)の傾倒動作についても、同様である。
また、本発明の第1実施形態では、図13に示すように、第1傾倒軸22Aeと第2傾倒軸22Bjを平面視して、第1傾倒軸22Aeの第1軸線L1と第2傾倒軸22Bjの第2軸線L2とで仕切られる4つの領域に対して、それぞれ磁電変換素子15(15a、15b、15c、15d)が配設されている。これにより、第1傾倒軸22Ae及び第2傾倒軸22Bjによる操作部材21の傾倒動作に対応して、4つの領域に配設された磁電変換素子15(15a、15b、15c、15d)のそれぞれが受ける永久磁石EM4からの磁気の強さが確実に異なり、磁電変換素子15のそれぞれからの検出信号の強度差が確実に大きくなる。
また、このように配設すると、図13に示すように、第2傾倒軸22Bjを挟んで配設された一組の磁石体である可動側磁性体MM(第1傾倒磁石K14と第2傾倒磁石K24)に対応して、第1傾倒磁石K14には磁電変換素子15a及び磁電変換素子15d、第2傾倒磁石K24には磁電変換素子15b及び磁電変換素子15cをそれぞれ配設することにもなる。これにより、第2傾倒軸22Bjによる操作部材21の一方向(図7(b)に示すX1方向)の傾倒動作に伴い、一方の可動側磁性体MM(第1傾倒磁石K14)は一方の磁電変換素子15(磁電変換素子15a及び磁電変換素子15d)に近づき、他方の可動側磁性体MM(第2傾倒磁石K24)は他方の磁電変換素子15(磁電変換素子15b及び磁電変換素子15c)から離れるようになる。そして、他方向(図7(b)に示すX2方向)の傾倒動作についても、同様の作用が期待できる。このため、磁電変換素子15のそれぞれが受ける永久磁石EM4からの磁気の強さがそれぞれ異なることとなり、それぞれの磁電変換素子15のからの検出信号が異なるようになる。このため、磁電変換素子15のそれぞれが受ける永久磁石EM4からの磁気の強さが確実に異なり、磁電変換素子15のそれぞれからの検出信号の強度差が大きくなる。
位置検出手段5Sの位置判断部55は、集積回路(IC)を用いて構成され、図4及び図13に示すように、配線基板29に搭載され、配線基板29の配線(図示していない)により、4つ磁電変換素子15(15a、15b、15c、15d)と電気的に接続されている。なお、位置検出手段5Sの磁電変換素子15及び位置判断部55の配設に、車両用シフト装置600の配線基板29を好適に共用しているが、別途、配線基板を設ける構成でも良い。
そして、位置判断部55は、磁電変換素子15からの検出信号に基づいて、操作部材21が前述したどのポジション(第1ポジションP1、前方ポジションS11、後方ポジションS13、第2ポジションP2、前段ポジションS21、後段ポジションS23)に位置しているのかを判断している。これにより、従来例のように新たな部品であるマグネット(911、920)を準備すること無しに、操作部材21が位置する複数のポジションを検出することができる。更に、多方向入力操作装置101の製造コストを低く抑えることができるとともに、多方向入力操作装置101の小型化もはかることができる。
また、本発明の第1実施形態では、4つの磁電変換素子15(15a、15b、15c、15d)が、永久磁石EM4を有した磁石体に対応してそれぞれ配設されているので、操作部材21の傾倒動作に伴い、4つの磁電変換素子15からの検出信号の強度が大きく異なる。このことにより、位置判断部55は、それら検出信号に基づく判断がし易くなり、各ポジションの位置の検出精度を向上させることができる。
次に、以上のように構成された多方向入力操作装置101の動作について説明する。図14は、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置101における動作を説明する図であって、図14(a)は、第1ポジションP1の状態の図であり、図14(b)は、第2ポジションP2の状態の図である。図15は、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置101における動作を説明する模式図であって、図15(a)は、基準位置の状態の図であり、図15(b)は、Y1方向に傾倒した状態の図であり、図15(c)は、Y2方向に傾倒した状態の図である。
先ず、操作部材21が第1ポジションP1と第2ポジションP2とを移動する第1方向D1の動きについて図14を用いて説明する。
先ず、操作者によりX2方向に傾倒操作がされて、基準位置である第2ポジションP2から基準位置である第1ポジションP1(図14(a)に示す状態)に操作部材21が位置した際に、第1固定磁性体R14(基体部21d)と第1傾倒磁石K14(可動側磁性体MM)とは対向して配置されているので、第1傾倒磁石K14と第1固定磁性体R14(基体部21d)とが引き合うようになる。そして、操作部材21が第1ポジションP1に留まり、操作部材21の傾倒状態がそのまま維持されるようになる。同時に、第2ポジションP2で互いに引き合っていた第2傾倒磁石K24(可動側磁性体MM)と第2固定磁性体R24(基体部21d)とが引き剥がされるので、操作者に対して、吸引状態から離反状態への変化による節度感を与えることができる。
次に、基準位置である第1ポジションP1から、操作者によりX1方向に傾倒操作がされて基準位置である第2ポジションP2(図14(b)に示す状態)に操作部材21が位置した際に、同様に第2固定磁性体R24(基体部21d)と第2傾倒磁石K24(可動側磁性体MM)とは対向して配置されているので、第2傾倒磁石K24と第2固定磁性体R24(基体部21d)とが引き合うようになる。そして、操作部材21が第2ポジションP2に留まり、操作部材21の傾倒状態がそのまま維持されるようになる。同時に、第1ポジションP1で互いに引き合っていた第1傾倒磁石K14と第1固定磁性体R14(基体部21d)とが引き剥がされるので、操作者に対して、吸引状態から離反状態への変化による節度感を与えることができる。
このように、可動側磁性体MMの永久磁石EM4と対向側磁性体TMの基体部21dという簡単な部品で、強い吸引力を生じさせることができ、操作部材21を第1ポジションP1及び第2ポジションP2に容易に固定することができる。更に、この永久磁石EM4がヨークYM4で覆われているので、簡単な構成で、より強い吸引力を生じさせることができる。
次に、第1方向D1とは別な第2方向D2への動きについて、図5及び図15を用いて説明する。
第2方向D2に移動する動きについては、この第1ポジションP1或いは第2ポジションP2を基準位置として(図5(b)を参照)、操作者の傾倒操作によって行われる。ここでは、第2ポジションP2を基準位置とした動きについて詳細に説明する。なお、第1ポジションP1を基準位置とした第2方向D2の動きについては、以下説明する動きと同様であるので、説明を省略する。
先ず、操作部材21が第2ポジションP2の基準位置にある際には、図15(a)に示すように、操作部材21の基体部21dは、Y方向に対して平行が保たれており、この基体部21dに吸着した一組の可動側磁性体MM(第1可動磁性体M14と第2可動磁性体M24)及び2つの対向側磁性体TM(磁石体である第1対向磁石T14と第2対向磁石T24)も平行が保たれている。
また、操作部材21が基準位置(第2ポジションP2)にある場合には、第1対向磁石T14の当接部TTq1及び第2対向磁石T24の当接部TTq2は、枠体22Cに設けられた2つのストッパー部26(26a、26b)と離間している。
次に、操作者によりY1方向への傾倒操作がされると、第1傾倒軸22Aeを回動軸として操作部材21の回動が行われ、操作部材21が基準位置(第2ポジションP2)から傾倒されて前段ポジションS21(図5(b)を参照)に位置するようになる。そして、その回動に伴って、基体部21dがY1方向に傾倒動作するようになり、図15(b)に示す位置まで傾倒される。その前段ポジションS21に位置する際には、第1対向磁石T14の当接部TTq1とストッパー部26aとが当接し、このストッパー部26aが第1対向磁石T14の傾倒動作を止めるようになる。一方、第1対向磁石T14と対向した部分の第1可動磁性体M14(基体部21d)は、そのまま傾倒動作が継続されるので、第2ポジションP2で互いに引き合っていた第1対向磁石T14と第1可動磁性体M14(基体部21d)とは、引き剥がされて離反するようになる。従って、この吸引状態から離反状態への変化により、第2ポジションP2から前段ポジションS21に移動する際の節度感(クリック感)が得られるようになる。なお、言うまでもないが、図15(b)に示すように、反対側の第2対向磁石T24は、基体部21dのY1方向に傾倒動作に伴って、ストッパー部26bと離間する方向に移動している。
また、本発明の第1実施形態では、操作部材21を傾倒させて、図15(b)に示すように、Y1方向に傾倒動作する側に配設された可動側磁性体MM(第1可動磁性体M14)と対向側磁性体TM(第1対向磁石T14)が離反した際に、可動側磁性体MMと対向側磁性体TMがそれぞれの間に働く吸引力が消失しない位置に可動側磁性体MMと対向側磁性体TMを配設している。これにより、前段ポジションS21おいて、操作者による傾倒操作の力が取り除かれたときに、引き剥がされた可動側磁性体MMと対向側磁性体TMとが互いの吸引力により再び吸引することとなる。このことにより、自動復帰のための付勢部材を使用しなくても、操作部材21を基準位置に自動復帰させることができる。
また、本発明の第1実施形態では、対向側磁性体TM(第1対向磁石T14)が永久磁石EM4で、この永久磁石EM4がヨークYM4で覆われているので、簡単な構成で、可動側磁性体MM(第1可動磁性体M14)と対向側磁性体TMとの引き剥がしの強い力、或いは引き合う強い力を、簡単に生じさせることができる。このことにより、操作者に対して強い操作感触と節度感を与えることができる。
以上のようなY1方向への動きは、操作者によるY2方向への傾倒操作の際にも、同様に行われる。
つまり、操作部材21が図15(a)に示す基準位置(第2ポジションP2)から傾倒されて後段ポジションS23(図5(b)を参照)に位置すると、第2対向磁石T24の当接部TTq2とストッパー部26bとが当接して、第2対向磁石T24の傾倒動作が止められ、一方、第2可動磁性体M24(基体部21d)の傾倒動作がそのまま継続される(図15(c)に示す状態)。これにより、第2ポジションP2で互いに引き合っていた第2対向磁石T24と第2可動磁性体M24(基体部21d)とが引き剥がされて離反するようになり、この吸引状態から離反状態への変化で、第2ポジションP2から後段ポジションS23に移動する際の節度感(クリック感)が得られるようになる。
また、Y2方向に傾倒動作する側に配設された可動側磁性体MM(第2可動磁性体M24)と対向側磁性体TM(第2対向磁石T24)も、それぞれの間に働く吸引力が消失しない位置に配設されている。これにより、後段ポジションS23において、操作者による傾倒操作の力が取り除かれたときに、引き剥がされた可動側磁性体MMと対向側磁性体TMとが互いの吸引力により再び吸引することとなる。このことにより、自動復帰のための付勢部材を使用しなくても、操作部材21を基準位置に自動復帰機構させることができる。
以上に説明したように、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置101は、第2方向D2への傾倒動作を節度感(クリック感)が得られながら行うことができる。つまり、操作部材21が基準位置から傾倒されて複数のポジションに位置する際には、各複数のポジションに対応したストッパー部26(26a、26b)をそれぞれ有しているので、対向側磁性体TM(第1対向磁石T14或いは第2対向磁石T24)の傾倒動作が止められる。具体的には、基準位置(第2ポジションP2)から次のポジション(前段ポジションS21或いは後段ポジションS23)への切り換えに際し、それぞれに設けられたストッパー部26(26a或いは26b)により対向側磁性体TM(第1対向磁石T14或いは第2対向磁石T24)の傾倒動作が止められる。例えば操作部材21が第1ポジションP1(基準位置)に位置する際には、基準位置(第1ポジションP1)から次のポジション(前方ポジションS11或いは後方ポジションS13)への切り換えに際し、それぞれに設けられたストッパー部26(26a或いは26b)により対向側磁性体TM(第1対向磁石T14或いは第2対向磁石T24)の傾倒動作が止められる。
これにより、各ポジション(前段ポジションS21或いは前方ポジションS11、後段ポジションS23或いは後方ポジションS13)において、可動側磁性体MMと対向側磁性体TMが引き剥がされて離反するようになり、その際の吸引状態から離反状態への変化で節度感を出すことができる。このことにより、従来例と比較して、節度感を生じさせる部分に摺動機構がないため、多方向入力操作装置101の耐久性が優れている。
最後に、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置101は、図5(a)に示すシフトの配置(シフトパターン)を有した車両用シフト装置600に好適に適用することができる。これにより、多方向入力操作装置101の各ポジション(前方ポジションS11或いは前段ポジションS21、第1ポジションP1或いは第2ポジションP2、後方ポジションS13或いは後段ポジションS23)を車両用シフト装置600のシフトの配置(シフトパターン)に好適に適用することができ、節度感を有したシフト操作を行うことができるとともに、簡単な構成でシフトノブ60Nの位置の検出精度が高い車両用シフト装置600を提供することができる。しかも従来例と比較して、節度感を生じさせる部分に摺動機構がないため、耐久性が優れた車両用シフト装置600を提供することができる。
以上のように構成された本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置101における、効果について、検証結果を交えながら、以下に纏めて説明する。また、車両用シフト装置600における、効果についても、以下に纏めて説明する。
図16は、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置における効果を説明する図であって、図16(a)は、検証実験に用いたモデルのX1側から見た側面模式図であって、図16(b)は、モデルのY2側から見た側面模式図である。図16中のX軸は第1傾倒軸22Aeの第1軸線L1であり、Y軸は第2傾倒軸22Bjの第2軸線L2であり、Z軸は操作軸21jの軸中心であるとともに第1軸線L1と第2軸線L2とそれぞれ直交する直交線である。そして、図16中には、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の座標が記されている。また、図16中には、検証実験で用いた磁電変換素子M15a、磁電変換素子M15b、磁電変換素子M15c及び磁電変換素子M15dが配設されている位置を示している。つまり、磁電変換素子M15aは、操作部材21の傾倒軸中心から、X1方向に+15(mm)、Y1方向に+10(mm)、Z2方向に−15(mm)のところに配設し、磁電変換素子M15bは、操作部材21の傾倒軸中心から、X2方向に−15(mm)、Y1方向に+10(mm)、Z2方向に−15(mm)のところに配設し、磁電変換素子M15cは、操作部材21の傾倒軸中心から、X2方向に−15(mm)、Y2方向に−10(mm)、Z2方向に−15(mm)のところに配設し、磁電変換素子M15dは、X1方向に+15(mm)、Y2方向に−10(mm)、Z2方向に−15(mm)のところに配設した。図17は、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置における効果を説明する図であって、図17(a)は、検証実験結果のグラフである。図17の横軸には、図5(b)に示す各ポジションを配置し、図17の縦軸には、そのポジションでのZ方向の磁束密度を示している。なお、また、図中のMAは、磁電変換素子M15aの検証実験結果であり、図中のMBは、磁電変換素子M15bの検証実験結果であり、図中のMCは、磁電変換素子M15cの検証実験結果であり、図中のMDは、磁電変換素子M15dの検証実験結果である。
平面視して第2ポジションP2と前段ポジションS21との間に配設された磁電変換素子M15aの結果(図中のMA)では、図17に示すように、例えば、操作部材21が第2ポジションP2に位置する状態から前段ポジションS21に位置した際に、磁電変換素子M15aは、磁束密度の増加を検知し、第2ポジションP2に位置する状態から後段ポジションS23に位置した際に、磁束密度の低下を検知する。同様にして、操作部材21が第2ポジションP2に位置する状態から第1ポジションP1に位置し、第1ポジションP1から前方ポジションS11或いは後方ポジションS13に位置した際に、磁電変換素子M15aは、磁束密度の大幅な低下を検知した後、磁束密度の増加或いは低下を検知する。このようにして、位置検出手段5Sの磁電変換素子M15aが永久磁石EM4の発生する磁気を検出して、位置検出手段5Sの位置判断部55が、この検出信号に基づいて、操作部材21が位置する複数のポジションを検出することができる。
また、平面視して第2傾倒軸22Bjの第2軸線L2を挟んで磁電変換素子M15aと対称位置にある磁電変換素子M15bの結果(図中のMB)では、図17に示すように、
例えば、操作部材21が第2ポジションP2に位置する状態から前段ポジションS21に位置した際に、磁電変換素子M15bは、磁束密度の増加を検知し、第2ポジションP2に位置する状態から後段ポジションS23に位置した際に、磁束密度の低下を検知する。同様にして、操作部材21が第2ポジションP2に位置する状態から第1ポジションP1に位置し、第1ポジションP1から前方ポジションS11或いは後方ポジションS13に位置した際に、磁電変換素子M15bは、磁束密度の大幅な増加を検知した後、磁束密度の増加或いは低下を検知する。このようにして、位置検出手段5Sの磁電変換素子M15bが永久磁石EM4の発生する磁気を検出して、位置検出手段5Sの位置判断部55が、この検出信号に基づいて、操作部材21が位置する複数のポジションを検出することができる。
同様にして、平面視して第1傾倒軸22Aeの第1軸線L1を挟んで磁電変換素子M15bと対称位置にある磁電変換素子M15cの結果(図中のMC)や磁電変換素子M15aと対称位置にある磁電変換素子M15dの結果(図中のMD)でも、図17に示すように、磁電変換素子M15aが各ポジションに対して磁束密度の変化を検知しているので、位置検出手段5Sの位置判断部55が、この検出信号に基づいて、操作部材21が位置する複数のポジションを検出することができる。
また、磁電変換素子M15a、磁電変換素子M15b、磁電変換素子M15c及び磁電変換素子M15dのそれぞれは、図16(a)に示すように、所定の距離を有して配設されているので、図17に示すように、磁電変換素子15(M15a、M15b、M15c、M15d)のそれぞれが受ける永久磁石EM4からの磁気の強さがそれぞれ異なっている。このため、それぞれの磁電変換素子15(M15a、M15b、M15c、M15d)のからの検出信号が異なり、位置判断部55がそれら検出信号に基づいて各ポジションの位置を判断するようになる。このことにより、1個の場合と比較して、各ポジションの位置の検出精度を向上させることができる。
更に、磁電変換素子15(M15a、M15b、M15c、M15d)のそれぞれが、図16(a)に示すように、第1傾倒軸22Ae或いは第2傾倒軸22Bjを挟んで配設されているので、操作部材21の傾倒動作に伴い、磁電変換素子15(M15a、M15b、M15c、M15d)が検知する磁束密度の変化が違ってくる。例えば、操作部材21が第2ポジションP2に位置する状態から前段ポジションS21に位置した際に、図17に示すように、磁電変換素子M15aは、高い磁束密度の値で更に増加を検知し、磁電変換素子M15aは、低い磁束密度の値ながら増加を検知している。一方、磁電変換素子M15cは、低い磁束密度の値で更に低下を検知し、磁電変換素子M15dは、高い磁束密度の値で低下を検知している。また、第2ポジションP2に位置する状態から後段ポジションS23に位置した際には、図17に示すように、磁電変換素子15(M15a、M15b、M15c、M15d)のそれぞれは、操作部材21が前段ポジションS21に位置した際とは逆の磁束密度の変化を検知するようになる。このように、磁電変換素子15のそれぞれが受ける永久磁石EM4からの磁気の強さが確実に異なり、電変換素子15のそれぞれからの検出信号の強度差が大きくなる。このことにより、位置判断部55がそれら検出信号に基づく判断がし易くなり、各ポジションの位置の検出精度をより向上させることができる。
また、本発明の第1実施形態では、磁電変換素子15を4つ用い、平面視して、第1傾倒軸22Aeと第2傾倒軸22Bjとで仕切られる4つの領域に4つの磁電変換素子15(15a、15b、15c、15d)をそれぞれ配設している。これにより、図17の検証実験の結果から明らかなように、第1傾倒軸22Ae及び第2傾倒軸22Bjによる操作部材21の傾倒動作に対応して、4つの領域に配設された磁電変換素子15(15a、15b、15c、15d)のそれぞれが受ける永久磁石EM4からの磁気の強さが確実に異なる。このため、磁電変換素子15のそれぞれからの検出信号の強度差が確実に大きくなる。このことにより、位置判断部55がそれら検出信号に基づく判断がよりし易くなり、各ポジションの位置の検出精度をより一層向上させることができる。
以上のように、本発明の第1実施形態の多方向入力操作装置101は、操作部材21の傾倒動作に伴い、傾倒動作する一組の可動側磁性体MM(第1可動磁性体M14と第2可動磁性体M24、或いは磁石体である第1傾倒磁石K14と第2傾倒磁石K24)と対向して配置された2つの対向側磁性体TM(磁石体である第1対向磁石T14と第2対向磁石T24、或いは第1固定磁性体R14と第2固定磁性体R24)とが引き剥がされて、あるポジションに操作部材21が位置するように構成した。このため、あるポジションへの操作の際に、操作者に対して節度感(クリック感)を与えることができる。そして、位置検出手段5Sの磁電変換素子15がこの永久磁石EM4の発生する磁気を検出して、位置検出手段5Sの位置判断部55が検出信号に基づいてポジションの位置を判断するので、従来例のように新たな部品であるマグネット(911、920)を準備すること無しに、操作部材21が位置する複数のポジションを検出することができる。これらのことにより、簡単な構成で節度感を有する多方向入力操作装置101を提供することができる。
本発明の第1実施形態の車両用シフト装置600は、各ポジション(前方ポジションS11或いは前段ポジションS21、第1ポジションP1或いは第2ポジションP2、後方ポジションS13或いは後段ポジションS23)への操作が行える多方向入力操作装置101を車両用シフト装置600のシフトの配置(シフトパターン)に好適に適用することができる。これにより、節度感を有したシフト操作を行うことができるとともに、簡単な構成でシフトノブ60Nの位置の検出精度が高い車両用シフト装置600を提供することができる。しかも従来例と比較して、節度感を生じさせる部分に摺動機構がないため、耐久性が優れた車両用シフト装置600を提供することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
<変形例1><変形例2>
図18は、本発明の第1実施形態に係わる多方向入力操作装置101の変形例1を説明する図であって、枠体22Cを省略した図8(b)と比較した、多方向入力操作装置C101の側面図である。上記第1実施形態では、軟磁性体である基体部21dの一部を一組の可動側磁性体MM(第1可動磁性体M14、第2可動磁性体M24)として好適に構成したが、これに限らず、図18に示すように、基体部C21dを挟んで磁石体である第1可動磁石C14及び第2可動磁石C24を配設し可動側磁性体MMとして構成しても良い。その際には、基体部C21dは軟磁性体で無くても良い。また、図示はしないが、可動側磁性体MMの第1可動磁石C14及び第2可動磁石C24を対向側磁性体TM側の基体部C21dに配設して固定し、第1可動磁石C14と第1対向磁石T14と、第2可動磁石C24と第2対向磁石T24と、が引き合うように対向するように構成しても良い。
<変形例3>
上記第1実施形態では、基体部21dを挟んで上方側(図8(b)に示すZ1側)に対向側磁性体TM、下方側(図8(b)に示すZ2側)に可動側磁性体MMを配設した構成にしたが、これに限るものではない。例えば、対向側磁性体TMと可動側磁性体MMとを上下逆に配設しても良いし、対向側磁性体TMと可動側磁性体MMを片側に混在させて上下に配設しても良い。
<変形例4>
上記第1実施形態では、磁電変換素子15を4つ用い、第1傾倒軸22Aeと第2傾倒軸22Bjとで仕切られる4つの領域に配設するように構成したが、これに限るものではなく、1つの磁電変換素子15であっても良いし、2つ、3つ、或いは4つ以上であっても良い。
<変形例5>
上記第1実施形態では、磁電変換素子15としてホール素子を好適に用いたが、これに限らず、例えば、磁気抵抗効果素子(GMR(Giant Magneto Resistive)素子、MR(Magneto Resistive)素子、AMR(Anisotropic Magneto Resistive)素子、TMR(Tunnel Magneto Resistive)素子)であっても良い。
<変形例6>
上記第1実施形態では、磁電変換素子15を熱硬化性の合成樹脂でパッケージングして、配線基板29に実装したが、磁電変換素子15をそのまま配線基板29に実装、所謂ベアチップ実装しても良い。
<変形例7>
上記実施形態では、多方向入力操作装置101を電子制御方式の車両用シフト装置600に好適に適用したが、これに限るものではなく、機械制御方式の車両用シフト装置にも適用できる。また、車両用シフト装置に限らず、ゲーム機等の入力装置にも適用できる。
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。