JP5866977B2 - 画像形成装置および画像形成システム - Google Patents

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本発明は、画像形成装置および画像形成システムに関するものである。
電子写真プロセスを利用したフルカラー複写機やフルカラープリンタでは、記録媒体としての用紙や記録シートなどの上に複数色(通常は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、の4色)のトナー像を重ねて配置し、このトナー像を定着手段において加熱・加圧することで、記録シート上に固定している。
前記のトナーは、ポリエステル樹脂・スチレン/アクリル共重合体・スチレン/ブタジエン共重合体などの熱可塑性の樹脂を主成分として着色材である顔料を分散させて形成される、1〜10μmの粒子に対して、平均粒径5〜100nm程度の微粒子、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム等の無機微粒子を外添して構成されている。
トナー中に分散される顔料は、Y(イエロー)としては、ジスアゾイエロー、ファストイエロー、イソインドリンイエロー、など、M(マゼンタ)としては、ブリリアントカーミン6B、キナクリドンマゼンタ、ローダミン6Gレーキ、など、C(シアン)としては、フタロシアニンブルーなど、K(ブラック)としては、カーボンブラック、アニリンブラックなど、が用いられている。
上記の定着手段の1例としては、加熱ローラ、加圧ローラと呼ばれるローラ対から構成されたものが提案されている。この加熱ローラ内部にはハロゲンランプなどの加熱源が配置されている。この一対の定着ローラ間に、トナー像を形成した記録シートを通過させることで、カラートナーを熱溶融して記録シート上に定着する。
通常では、記録シートに4色分のトナー像を形成した後に定着手段を通過させることで、記録シート上にトナー像を定着する。上記4色分の未定着のトナー像を1回の定着手段通過で記録シート上の画像として定着させることになる。
このような電子写真プロセスを使用した画像形成装置を応用して、より付加価値の高い画像形成をおこなうさまざまな手法が考案されてきている。そうした高付加価値画像の1つの形態として、「偽造防止」を含む「情報の保護」を目的として、「情報の不可視状態での埋め込み」など、隠し文字などの不可視画像を形成する手法が提案されている。
例えば特許文献1では、蛍光材を含有している記録シート上に紫外線吸収無色トナーを用いて文字や画像を印刷する方法を開示している。このようにして印刷された記録シートに紫外線を照射すると、文字や画像の印刷部分では紫外線を吸収するため、蛍光で浮き出る背景地の中に沈んだ無色の印字部を識別できるようなる。また紫外線吸収無色トナーは可視光域では無色であるため、可視光のもとでの通常の視認条件では印刷部分を視認することはできない。このことを利用して、通常は視認できない隠し文字などの印刷用途として、当該技術を使用することができるとしている。
一方、発明者らの検討によると、特許文献1のように記録シート上に紫外線吸収無色トナーを形成した場合には、隠し文字などが完全に視認できないわけではなく、一般的な室内照明灯などの照明条件下においても、隠し文字の内容が判別できる程度に識別が可能である、ことが明らかになった。つまり、ブラックライトなどの特殊な照明条件下でなくとも、隠し文字を判別できてしまう場合がある。
当然のことであるが、こうした隠し文字を作成する際にどの程度の判別の容易さ(或いは困難さ)が要求されるかといった点については、隠し文字の用途・目的によって大きく異なり、隠し文字が一般的な照明条件下で判別できてしまうことが必ずしも問題となるわけではない。その一方で、用途・目的によっては、やはり、こうした一般的な照明条件下では隠し文字が判別できないことが望ましい場合が存在する。
隠し文字を判別できないことが望ましい場合に相当する事例としては、隠し文字が付与された印刷物に関し、集客効果や受け取り手への印刷内容の印象付けを強くする効果、を期待しての用途が考えられる。
これは隠し文字を付与してある印刷物を受け取ったお客様は、通常照明下では隠し文字の内容が判別しないため、「どんな内容が書いてあるのか?」とった期待を抱くことになり、隠し文字の内容を知覚するために、隠し文字の判別を可能にする特殊な条件下まで印刷物をわざわざ持ち運ぶことになる。
こうした一見わずらわしい作業を経ることによって、かえって印刷内容を強く印象付け、集客効果(広告効果)や受け取り手への印刷内容の印象付けを強くするといった効果を得るとされる事例である。
発明者らの検討によれば、引用文献1に開示の技術では、一般的な照明条件下で隠し文字の内容が判別できてしまうと考えられる。その理由を以下に記す。
[第1の理由]
引用文献1で開示されている隠し文字では、隠し文字を構成するトナー像の表面状態と、隠し文字の背景地肌部に相当する記録シートの表面状態とが異なっている。つまり、トナーは樹脂を中心とした組成をもつためトナー像の表面構造は、隙間のない樹脂で形成された表面構造となる。一方、記録シートの方は紙繊維が絡み合い、内部に空気が多く取り込まれた構造になっている。
このため、トナーの表面状態と記録シートの表面状態とでは根本的に異なる表面状態となっている。このように表面状態が根本的に異なる両者の見た目を完全に一致させることが困難である。従って、観者はトナー像と該トナー像の背景地肌である記録シートとの間に差異を感じてしまい、隠し文字の有無が判別されてしまう。
見た目を一致させるための要点は、両表面からの各反射光の特性を一致させることに相当すると考えられるが、トナー像と記録シートのような表面状態が大きく異なる両者間では、これら各表面からの反射光の特性を完全に一致させることはできない。
例えば、トナー像の方は、定着時の温度などの定着条件を変えることで表面状態を変化させることができるため、「特定の観察位置」からといった限定された条件下では記録シートの見た目と一致させることができると考えられる。
しかしながら、トナー像の表面状態を調整しても、別の観察位置からではトナー像と記録シートとの見た目は一致しない。つまり、表面状態が大きく異なる両者間ではすべての観察位置からの見た目を一致させることまではできない。このため、表面反射特性の違いから、一般の照明下で観察位置を少し変えることなどによって比較的簡単に、隠し文字による情報の内容を識別されてしまう。
[第2の理由]
無色・透明トナーとはいえども記録シート上にトナー像を形成した場合には、透過率が100%となるわけではないため、少し暗くなってしまう。発明者らの検討によると、無色・透明トナーを形成した記録シートの反射率は、記録シートそのものよりも1.0〜3.0%程度の反射率低下が避けられない状況である。こうした反射率の違いによっても、やはり、一般照明下での観察によって隠し文字の内容が識別できてしまう。
なお、用紙や記録シートなどの記録媒体に形成する不可視情報としては隠し文字に限らず、隠し図、など視覚で感知できる情報を広く包含されることから、以下では、記録媒体の一例として記録シート、隠し情報の一例として隠し文字を例に発明を説明する。
本発明は前記背景技術で明らかにした隠し文字の判別可能性の問題に鑑み、一般的な照明条件下では識別することができず、特殊な条件下でのみ識別が可能な隠し情報を記録媒体に形成することができる手段を提供することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するため、以下の構成とした。
(1):第1の手段として、複数色のトナー像を記録媒体上に重ねて画像を形成する画像形成装置であって、前記トナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも1色は蛍光色のトナー(以下、蛍光トナーという。)であり、別の1色のトナー像を形成するトナーは、可視光域において透明かつ光非吸収、紫外域において光吸収特性を示すトナー(以下、透明トナーという。 )であり、前記蛍光トナーと前記透明トナーとを重ねて前記記録媒体上に形成したトナー像の光沢度(60度光沢度)が40%以下とする(請求項1)。
(2):第2の手段として、第1の手段に記載の画像形成装置において、前記蛍光トナーと前記透明トナーとを重ねた前記記録媒体上のトナー像は、前記蛍光トナーを上層(記録媒体から遠い側)、透明トナーを下層(記録媒体に近い側)となるように形成されることとする(請求項2)。
(3):第3の手段として、第1の手段に記載の画像形成装置において、前記蛍光トナーと前記透明トナーとを重ねた前記記録媒体上のトナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも2色については前記蛍光トナーであって、かつ、最下層(記録媒体に近い側)および最上層(記録媒体に遠い側)に形成され、前記透明トナーが中間層(最上層と最下層の中間)となるように形成されることとする(請求項3)。
(4):第4の手段として、複数色のトナー像を記録媒体上に重ねて画像を形成する画像形成装置であって、前記トナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも1色は蛍光色のトナー(以下、蛍光トナーという。 )であり、別の1色のトナー像を形成するトナーは、可視光域において透明かつ光非吸収、紫外域において光吸収特性を示すトナー(以下、透明トナーという。 )であり、
前記蛍光トナーと前記透明トナーとを重ねた前記記録媒体上のトナー像は、前記蛍光トナーを上層(記録媒体から遠い側)、透明トナーを下層(記録媒体に近い側)となるように形成されることとする(請求項4)。
5):第5の手段として、複数色のトナー像を記録媒体上に重ねて画像を形成する画像形成装置であって、前記トナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも1色は蛍光色のトナー(以下、蛍光トナーという。 )であり、別の1色のトナー像を形成するトナーは、可視光域において透明かつ光非吸収、紫外域において光吸収特性を示すトナー(以下、透明トナーという。 )であり、
前記蛍光トナーと前記透明トナーとを重ねた前記記録媒体上のトナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも2色については前記蛍光トナーであって、かつ、最下層(記録媒体に近い側)および最上層(記録媒体に遠い側)に形成され、前記透明トナーが中間層(最上層と最下層の中間)となるように形成されることとする(請求項5)。
(6):第6の手段は、第1の手段乃至第5の手段の何れか1つに記載の画像形成装置を有する画像形成システムであって、
前記蛍光トナーおよび前記透明トナーの記録媒体上における配置位置の指定を可能とする配置位置入力手段を有することとする(請求項6)。
(7):第7の手段として、第1の手段乃至第5の手段の何れか1つに記載の画像形成装置を有する画像形成システムまたは第6の手段に記載の画像形成システムであって、
記録媒体上に形成された蛍光トナーおよび透明トナーによる画像を視覚可能とする紫外線照射の照明装置を備えることとする(請求項7)。
また、以下の構成とすることもできる。
:複数色のトナー像を記録媒体上に重ねて画像を形成する画像形成装置であって、前記トナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも1色は蛍光色のトナー(以下、蛍光トナーという。)であり、別の1色のトナー像を形成するトナーは、可視光域において透明かつ光非吸収、紫外域において光吸収特性を示すトナー(以下、透明トナーという。)とする
:(イ)に記載の画像形成装置において、前記蛍光トナーと前記透明トナーとを重ねて前記記録媒体上に形成したトナー像の光沢度(60度光沢度)が40%以下とする
:(イ)又は(ロ)に記載の画像形成装置において、前記蛍光トナーと前記透明トナーとを重ねた前記記録媒体上のトナー像は、前記蛍光トナーを下層(記録媒体に近い側)、前記透明トナーを上層(記録媒体から遠い側)となるように形成されることとする
:(イ)又は(ロ)に記載の画像形成装置において、前記蛍光トナーと前記透明トナーとを重ねた前記記録媒体上のトナー像は、前記蛍光トナーを上層(記録媒体から遠い側)、透明トナーを下層(記録媒体に近い側)となるように形成する
:(イ)又は(ロ)に記載の画像形成装置において、前記蛍光トナーと前記透明トナーとを重ねた前記記録媒体上のトナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも2色については前記蛍光トナーであって、かつ、最下層(記録媒体に近い側)および最上層(記録媒体に遠い側)に形成され、前記透明トナーが中間層(最上層と最下層の中間)となるように形成する
:複数色のトナー像を記録媒体上に重ねて形成することにより所望の画像を提供する画像形成方法において、トナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも1色については蛍光トナー、別の1色のトナー像を形成するトナーについては透明トナーを用い、記録媒体上に蛍光トナーにより隠し情報の周辺部領域を構成し、この周辺部領域内に前記蛍光トナー層に重ねて隠し情報を前記透明トナーにより作成する。
:(イ)乃至(ホ)の何れか1に記載の画像形成装置を有する画像形成システムであって、前記蛍光トナーおよび前記透明トナーの記録媒体上における配置位置の指定を可能とする配置位置入力手段を有することとする
:(イ)乃至(ホ)の何れか1に記載の画像形成装置を有する画像形成システムまたは(ト)に記載の画像形成システムであって、記録媒体上に形成された蛍光トナーおよび透明トナーによる画像を視覚可能とする紫外線照射の照明装置を備えることとする
本発明では、一般的な照明条件下では識別することができず、特殊な条件下でのみ識別が可能な隠し情報を記録媒体に形成することができる画像形成装置および画像形成システムを提供できる。
画像形成装置の概略構成を説明した図である。 画像形成装置のカラープリント部の構成を拡大して示した図である。 画像データ処理の手順を示した図である。 隠し情報のしくみを説明した図である。 画像形成装置のカラープリント部の別例を拡大して示した図である。 隠し情報のしくみを説明した図である 画像形成装置のカラープリント部の別例を拡大して示した図である。 隠し情報のしくみを説明した図である。 画像データ処理の手順を示した図である。 紫外線照射の照明装置の配置状態を示した図である。
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付すことにより、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
[第1実施形態]
以下では、隠し情報を含む画像を出力する画像形成装置の主要な構成と作用について説明する。
(全体構成の概要):
図1は、第1実施形態にかかる画像形成装置10の概略構成を示す。図1において、画像形成装置10の下部に配置された給紙カセット1、2には記録シートSが収容されている。
給紙カセット1、2に収納されている記録シートSは所謂用紙であり、一般的に複写機やプリンタなどに使用されるOA用紙(普通紙)とよばれる情報用紙などのほかに、キャストコート紙・アート紙・微塗工紙などの塗工紙、上質紙・中質紙・下級紙などの非塗工紙など、どのようなものであっても構わない。
画像記録に際して、これら給紙カセット1、2の何れかより記録シートSが排出され、破線で示す鉛直方向の搬送経路に従って画像形成装置10の上部へ向けて搬送されてレジストローラ18で一旦停止して送り出しのタイミングを調整されてから再送される。
上記再送された記録シートSは、搬送経路上、上下方向に送り方向を設定されて配置された搬送ベルト3に至り、該搬送ベルト3に保持されて搬送される。搬送ベルト3の上下方向の中間部であって、該搬送ベルト3の内側には転写器(2次転写器)17が配置されている。この転写器17には搬送ベルト3を介してカラープリント部4−1の中間転写ベルト8の一端側が横方向から、該中間転写ベルとの支持ローラを介して接触配置されている。
中間転写ベルト8は横方向の一端部を前記支持ローラで支持され、他端部を他の支持ローラで支持されたエンドレスベルトであり、透明(T)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)のトナーによる色重ねトナー像を担持して回転することができる。
前記レジストローラ18から送り出しのタイミングを調整されて、搬送ベルト3による再送が開始された記録シートSは、搬送の途中で転写器(2次転写器)17の部位で中間転写ベルト8上の色重ねのトナー像と会合し、ここで、中間転写ベルト8上の色重ねトナー像が記録シート3へと転写される。
この転写によりトナー像を担持した記録シートSは、表面にトナー層を保持した状態でさらに搬送ベルト3によって上向きの矢印に沿って進み、定着器5を通過する際にトナー像が加熱・加圧され、当該記録シートS上に定着される。記録シートS上に定着されたトナー像は、さらに搬送経路に従って上に進み、途中で横向きに進路を変えて、排出ローラ6を経て排紙部7に排出される。
(カラープリント部):
図2は、画像形成装置10におけるカラープリント部4−1の概略図である。カラープリント部4−1については従来のカラープリント部と比較して透明トナーを使用する点でこれに関連する部分が異なるだけで、他は従来からのカラー画像プリント部に準じて構成される。
カラープリント部4―1では、透明(T)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の5種類のトナーに対応する画像を中間転写ベルト8上で重ね合わせて画像を形成できるような構成になっている。
カラープリント部4―1には、T、Y、C、M、Kの各色やトナー成分に対応して、5つの画像形成ユニットが矢印で示す反時計回りの向きに沿って上流側から下流側に向けて9T、9Y、9C、9M、9Kの順に配置されている。各画像形成ユニット9T、9Y、9C、9M、9Kで形成された各色成分トナー像は、これら5つの画像形成ユニット9T、9Y、9C、9M、9Kの各感光体ドラムに当接して配置されている中間転写ベルト8に順次転写されて色重ねトナー像となり、該中間転写ベルト8上に担持される。
中間転写ベルト8上での各色トナーの重ね順は、該中間転写ベルト8の表面に近い方から、T、Y、C、M、Kの順になる。
中間転写ベルト8は、不図示の駆動手段によって所定のタイミングで矢印の向きに回転しており、5つの画像形成ユニット9T、9Y、9C、9M、9Kにおける各色成分トナー像が所定の位置で重ね合わされるようになっている。中間転写ベルト8上に形成された各色成分トナー像は、図1と共に前述した搬送ベルト3上の記録シートSへと転写され、記録シートS上のトナー像となる。本例では、記録シートS上のトナー像の重ね順は、「(記録シートから遠い側)T→Y→C→M→K(記録シートに近い側)」の各色成分トナーの配列順となる。
(画像形成ユニット):
カラープリント部4−1において、上記5色対応する各色画像形成ユニット9T、9Y、9C、9M、9Kは使用するトナーが異なるだけで機械的な構成は何れも共通しているので、代表として、画像形成ユニット9Kを任意に選択しその詳細説明を行う。
画像形成ユニット9Kは、図2に示すように、感光体ドラム11と、この感光体ドラムを所望の電位に帯電する帯電器12、所望の電位に帯電された感光体ドラム11に出力用画像データ(後述する画像処理を施した画像データに基づきビデオ信号処理部において書き込み用信号に変換された信号)に対応して書き込みを行うレーザ光学ユニット13、レーザ光学ユニット13による書き込みによって感光体ドラム11上に形成された静電潜像を各色成分に対応するトナーによって現像する現像器14、現像器14によって感光体ドラム11上に現像されたトナー像を中間転写ベルト8上へと転写する転写器(1次転写器)15、中間転写ベルト8へ転写されずに感光体ドラム11上に残った未転写トナーをクリーニングするクリーナー16等から構成されている。
(トナー):
トナーについての説明を行う。トナーは重合法によって製造される、いわゆる重合トナーである。また、定着時にオイルレス定着を実現することができるように、トナー内部に離型剤であるWAXを内包している。
トナーの粒径は、体積平均粒径が5.5μmとなるように製造されている。トナー粒径の測定は、コールターエレクトロニクス社製の粒度測定器「コールターカウンターTAII」を用い、アパーチャー径100μmで測定した。そして、ほぼ同一の製法により、透明(T)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の5色分のトナーについて製造を行っている。なお、上記製法は本発明のトナーの仕様を限定するものではなく、上記製法のほか、分散重合法、あるいは粉砕法などによって製造したトナーでもかまわない。
ここでは、記録媒体上に隠し情報を作成する一例として、記録シート上に隠し文字を作成する例を述べる。隠し文字の作成には、可視光域において透明かつ光非吸収であり、紫外域において光吸収特性を示す透明(T)トナー(以下、透明トナーTtという。)を用いる。この透明トナーTtは、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製、紫外線吸収材TINUVIN 900)をトナー中に含有させることによって製造したものである。紫外線吸収材としては、これ以外のものであってかまわない。例として、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、などの紫外線吸収剤を透明トナーTt中に含有させることで本発明の目的にかなう透明トナーとして供することができる。
さらに、本例では、隠し文字を作成するのに、有色トナーであるイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の5色分のトナーのうち、少なくとも1色については紫外線を吸収して蛍光色の光を放射する特性を示すトナー(以下、蛍光トナーという。)を用いる。本例では、イエロー(Y)トナーについて、紫外線を吸収してイエロー色の光を放射する蛍光トナーとして例示し、Y色蛍光トナーFtで表す。
このY色蛍光トナーFtは、イエロー蛍光顔料(シンロイヒ株式会社、FZ-5050)をトナー中に含有させることによって製造したものである。イエロー蛍光顔料としては、これ以外のものを使用することももちろん可能である。市販されているイエロー蛍光顔料を使用することでも発明の目的を達成することが可能である。
本例では、Y色蛍光トナーFt以外の、シアン(C)トナー、マゼンタ(M)トナー、ブラック(K)トナーについては、既存の電子写真方式の画像形成装置(例として、(株)リコー製MP C5001)で使用されているトナーをそのまま使用することができる。
(画像データ処理部):
画像データの処理は図3に示す画像処理装置19で行われる。画像処理装置19は図1に示した画像形成装置10に装備されている。画像処理装置19は、画像形成装置10が外部機器、例えばパーソナルコンピューターと接続されてプリンタとして機能する場合がある。その場合、その外部機器が保有する原稿情報が入力画像データとして、画像処理装置19のMTF処理部20に入力される。この入力画像データとしては、隠し情報を含まない通常のカラー画像を構成するR(Redの略)、G(Greenの略)、B(Blueの略)による原稿の場合と、これらR、G、Bに隠し情報用の透明(T)を加えた原稿の場合がある。
画像処理装置19は外部機器から入力画像データを受け取り、画像形成装置10における出力用画像データを得るためのデータ処理を行う。画像処理装置19はMTF処理部20のほか、複数のデータ処理部を有している。
図3を参照して画像処理装置19におけるデータ処理を説明する。隠し文字を形成せずに通常のカラー画像を出力する場合には、図3において隠し情報用の透明(T)の画像データが無い従来の画像形成装置におけると同じ処理フローとなる。
画像形成装置19がスキャナ部を備えている場合は該スキャナ部からの入力データや、また画像形成装置19がプリンタとして機能する場合にはその外部機器である例えばパーソナルコンピューターなどからの入力データは、RGB多値(多くの場合8bit)画像であり、画像処理部の中の、MTFフィルタ処理部20において強調処理される。
MTFフィルタ処理部20の次に、色変換処理部21および色分解処理部22を経ることでRGB色空間からCMYK色空間に分割される。このCMYK色空間に分割された画像データは、それぞれの色毎に、階調補正処理部(γ変換部)23において、予め設定されている階調を実現するための濃度制御がなされる。これらの処理の過程で、色変換処理部21はカラープロファイル21aと情報の授受を行う。また、階調処理部23は階調補正テーブル23aと情報の授受を行うようになっている。
階調補正処理部(γ変換部)23において濃度制御がなされた画像データは次に、擬似中間調処理部24において、プリンタ特性に合うように擬似中間調処理が施され、出力用画像データCMYK(600dpi、4bitデータ)を得る。この出力用画像データは、画像出力系(ビデオ信号処理部25)へと送られる。
以上の手順により隠し情報を含まない通常のカラー画像を形成する場合におけるCMYKの各色トナーに対応する画像データの作成が行われる。
一方、隠し情報を有するカラー画像を出力する場合には、図3における各処理部に付記した各色画像データ、RGBやCMYKに透明(T)に係る画像データが加わる。この点について以下に述べる。
画像形成装置10では、通常のカラー画像の他に隠し文字、隠し画像などの隠し情報を記録することができる。記録された隠し情報は、一般照明下では認識できないが、例えば紫外線を照射することで肉眼でも知覚できる。
隠し情報は、透明トナーFt(但し、可視光域においては光吸収がないが紫外域においては吸収特性を示す。)とY色蛍光トナーFt(但し、イエロー蛍光顔料により構成される。)を重ね合わせることにより作成する。
隠し情報のしくみを図4に示す。図4において、隠し情報としての隠し文字「ABC」の文字そのものの部分は、記録シートSの上に透明トナーTtとY色蛍光トナーFtとの両方のトナーを配置するように形成する。また、隠し文字「ABC」の周辺部分であって矩形輪郭線26で囲んだ領域はY色蛍光トナーFtのみを配置するようにする。なお、矩形輪郭線26は本例の説明のために描いた補助線であり画像形成しないものとする。
このようなトナーで形成した隠し文字「ABC」は、一般照明下では、透明トナーTtにおける可視光に対する透明性によって、透明トナーTtの有無が知覚されることがないため知覚されない。これに対して、ブラックライトによって紫外線を照射した場合には、透明トナーTtが配置されている部位では紫外線吸収の作用が働くため、Y色蛍光トナーFtに含まる蛍光原料による光放射は発生しない(光放射が弱まる)ようになり、一方で、矩形輪郭線26の枠内であって透明トナーTtが配置されていない隠し文字「ABC」の周辺部では、Y色蛍光トナーFtに含まる蛍光原料による光放射が発生する。こうして、透明トナーTtの有無に対応して、蛍光トナーでの光放射にコントラストが生じるため、隠し文字「ABC」を知覚することができるようになる。
このように隠し情報を構成するため、原稿上の指定された領域で、隠し文字のそのものの部分「ABC」を透明トナーTtとY色蛍光トナーFtの両方で画像形成を行うように透明(T)トナー用の画像データを作成する。かつ、隠し文字の周辺部分はY色蛍光トナーFtのみで画像形成を行うように画像データを作成する。
また、通常のカラー画像と同じように、透明トナーTtおよびY色蛍光トナーFtで作製するトナー像でも擬似中間調処理を施した画像出力を行うことが可能となるようにしている。透明トナーTtおよびY色蛍光トナーFtで作製するトナー像においても擬似中間処理部24で擬似中間調処理を施して、600dpi4bitなどの出力画像データを作成する。
なお、図2のT,Y,C,M,Kの各画像形成ユニットをもつ構成でのカラー画像形成装置10において、図4で例示されるように、隠し文字の周辺部についてY色蛍光トナーFt、隠し文字部では透明トナーTt+透明トナーTtで画像形成され、『隠し文字部および隠し文字の周辺部以外の画像領域』では、画像データに従いY,C,M,Kのトナーを適宜組み合わせた通常のフルカラー画像が形成される。
以上が、透明トナーTtおよびCMYKトナーに対応した各色の画像データの作成方法である。
(画像書き込み部):
このようにして、画像処理装置19で作成された通常のカラー画像に対応する画像データと隠し文字に対応する画像データとを含む、CMYKT色それぞれに対応する画像データは、次に図3に示したビデオ信号処理部25で処理され、レーザの変調信号へと変換される。ここでは1色分(仮にY色と考える)のデータの流れだけの説明を行う。他のTCMK4色分についても同様の処理が施されるため、ここでは1色分のデータの流れを説明する。
ビデオ信号処理部25では擬似中間調処理部24の出力画像用データを受け取り、CMYKTの各色1光源として発光点(レーザーダイオード:LD)の個数である5個分のデータをラインメモリ上に記憶し、走査手段であるポリゴンミラーの回転に同期した信号(いわゆる同期信号)に合せて、各画素に対応する該ラインメモリ上のデータを所定のタイミング(画素クロック)で、PWM制御部27へと引き渡す。
PWM制御部27では、このデータがパルス幅変調(PWM)信号へと変換され、5個のLDドライバ28へと引き渡される。LDドライバ28では、このパルス幅変調信号に対応して所定の光量でLD素子29(又はLDアレイ)を光変調駆動する。本例では、各色成分の出力用画像データに対応して、パルス幅変調(PWM)制御を行い、レーザの光変調駆動を行うようにしている。
出力画像データに対応して光変調されたデータは、図2に示したレーザ光学ユニット13を介して作像エンジン部の感光体ドラム11へと照射される。レーザ光学ユニット13については従来のカラープリント部における光書き込み手段と比較して特徴的な部分があるわけではなく、従来からのカラープリント部を問題なく用いることができる。
以下、従来のカラープリント部の一例を図2に示したレーザ光学ユニット13で説明する。レーザ光学ユニット13には図3に示したLD素子29が配置されているが紙面奥行き方向で図示が煩雑なため図示していない。LD素子29からの発光光は、レーザ光学ユニット13内のコリーメートレンズにおいて平行光を形成するようになり、アパーチャーにより所望のビーム径に対応する光束に切り取られる。アパーチャー通過後の光束はシリンドリカルレンズを通過し、ポリゴンミラー30へと入射される。
ポリゴンミラー30で反射されることにより走査光となった光束は、走査レンズ(f−θレンズ)によって集光されて、折り返しミラーで折り返され、各画像形成ユニット9T、9Y、9C、9M、9Kの各感光体ドラム11上で、画像データに応じた静電潜像を形成する。これら光の経路を破線で示している。
各感光体ドラム11上に形成された静電潜像は該感光体ドラム11の回転とともに各現像器14を通過する間にそれぞれトナーで現像されてトナー像となる。各感光体ドラム11上のトナー像は、各画像形成ユニット9T、9Y、9C、9M、9Kの転写器(1次転写器)15の部位で、回転する中間転写ベルト8上に順次重ね転写されて色重ねトナー画像となる。色重ねトナー画像は、転写器(2次転写器)17の部位で記録シートSに一括して転写され、記録シートS上に原稿画像を表したカラー画像を再現する。
(定着部):
図1、図2に示した転写器(2次転写器)17の部位で記録シートS上に、TYCMK5色分のトナーによって形成されたトナー像は、定着器5において加熱・加圧されることで記録シートS上に定着され画像形成が完了する。本例の定着器5は、定着ローラ5a(トナー像側)と加圧ローラ5b(非トナー像側)とを有する。
定着ローラ5aは直径が30mmに形成され、アルミ素管上に液状シリコーンゴムの弾性層を形成し、表層には離型層としてフッ素樹脂であるPTFE層を形成してある。また加圧ローラ5bは、直径が30mmに形成され、アルミ芯金上にシリコーンゴムの弾性層を形成し、表層にはフッ素系樹脂(PTFE)を離型層として形成してある。
本例ではこの定着器5の定着ローラ5aの温度を170°Cになるように設定し、線速200mm/secで記録シートS通過させることで、トナー像を記録シートS上に定着(1次定着)する。
上述した定着器5の構成以外の構成をもつ定着器を用いてもよい。従来から用いられている定着器を使用することも可能である。記録シート上に蛍光トナーや透明トナーなど本発明に係るトナー像を定着することができるものであればどのようなものであってもよい。
(例1:蛍光トナーと透明トナーを用いたトナー像を出力する画像形成装置:請求項1関連):
例1では、第1実施形態例で述べたように、複数色のトナー像を記録媒体上に重ねて画像を形成する画像形成装置10について、トナー像を形成する有色トナーのうち1色はY色蛍光トナーFtであり、別の1色のトナー像を形成するトナーは、可視光域において透明かつ光非吸収、紫外域において光吸収特性を示す透明トナーTtである。
前記背景技術の項で説明したように、従来の印刷方法では、一般的な照明下であっても隠し文字の内容が識別できてしまい、この結果として隠し文字としての意義が薄れてしまうといった問題があった。一般的な照明したであっても隠し文字の内容が識別されてしまう理由は、用紙の表面状態とトナー像の表面状態が本質的に異なるために、両者の表面反射光の状態を完全に同一とすることができないためであった。
これに対して、例1では、図4を用いて説明したように、Y色蛍光トナーFtと透明トナーTtの2種類のトナーを使用して隠し文字「ABC」を形成している。
隠し文字「ABC」そのものに相当する部分は下層のY色蛍光トナーFtと上層の透明トナーTtとの2種類のトナーを配置したトナー像とし、隠し文字「ABC」の周辺部であって矩形輪郭線26内はY色蛍光トナーTtのみを配置したトナー像構成にしている。
このようにすることで、隠し文字そのものに相当する部分と隠し文字以外の部分(周辺部分)を共に、トナーというほぼ同一の材料(樹脂を主成分とした材料)によって形成された表面とすることができるため、背景技術で述べた例とは異なり一般的な照明下において隠し文字の内容が識別できてしまうといった問題を解消することができた。
なお、当然ではあるが隠し文字とその周辺部とでは、透明トナーの有無といった相違はある。しかし、共に、樹脂を主成分とする材料である点で共通であり、隠し文字そのものと周辺部とがほぼ同じ材料によって形成されることになるので、両者の表面反射光の状態を一致させることができた。このことは、一般的に照明下において隠し文字の内容が識別できてしまうという背景技術における問題を解消して、一般照明下においては、隠し文字の内容が識別されにくい画像の形成を可能としことになる。
また、Y色蛍光トナーFtと透明トナーTtを用いた隠し情報に係る画像は、ブラックライト照明下(紫外線照明下)において、隠した内容を識別できるようになる。隠し文字そのものの部分は、先述したように紫外線域では吸収特性を有する透明トナーが配置されているために、ブラックライトからの紫外線はこの透明トナーによって吸収される。つまり、ブラックライトからの紫外線は蛍光トナーまで届かない構成になっている。
一方で隠し文字の周辺部分には紫外線を吸収する透明トナーは無いためブラックライトからの紫外線が蛍光トナーに到達し可視光となって放出される。このため、観者からは、隠し文字そのものの部分では可視光の発光(放射)がなく、隠し文字の周辺部分では可視光の発光(放射)が生じるために、こうしたコントラストから隠し文字の内容を知覚することができる。
以上の通り、蛍光トナーと透明トナーを用いた隠し情報の構成によって、一般照明下においては隠し文字の情報が知覚できてしまうといった背景技術の問題を解決した上で、ブラックライト照明下においては隠し文字の内容を識別できるような、隠し情報の画像を実現できた。
(例2:トナー画像の光沢を限定した:請求項1,,3関連):
2は、Y色蛍光トナーFtと透明トナーTtとを重ねて記録媒体である記録シートS上に形成したトナー像の光沢度(60度光沢度)を40%以下とする。
1は、隠し情報の内容が一般的な照明下であっても比較的簡単に識別できてしまうといった課題の解決を目的とし、この課題解決を実現するために、Y色蛍光トナーFtと透明トナーTtとの2種類のトナーを用いて隠し情報を形成することとしている。
発明者らの検討によると、記録シートS上にY色蛍光トナーFtのみ形成した画像領域と該記録シート上にY色蛍光トナーFtと透明トナーTtとの両方を形成した画像領域との境界部分において、透明トナーTtの有無による微妙な段差感が発生する場合があることが判明した。
電子写真方式で作成したトナー像では、トナー像の厚みが1〜5μm(1色あたり)と他の画像形成方式と比較して大きくなっていることが特徴であるが、こうした大きなトナー像の厚みのためにトナー層の厚みが変化する部位、つまり、《図4における隠し文字の周辺部に相当するトナー層が1色(1層)の箇所》から、《隠し文字部に相当する箇所[透明トナーTt+Y色蛍光トナーFtの2色(2層)]の箇所》へ変化するような部位が目視によって知覚されてしまうのである。
こうした段差感は一般照明下であっても知覚されてしまうために、やはり使用者に隠し情報の内容が比較的簡単(一般的な照明下においても)知覚されてしまうことにつながる。この結果、隠し文字の秘匿性が劣ることの原因となってしまう。
2は1を前提とし、透明トナーの有無によって生じる段差感によって隠し情報の内容が知覚されてしまうといった課題の解決を図る。
前記した段差感は、電子写真方式に特有に見られる厚みの大きなトナー像(トナー像厚みが1〜5μm)に起因すると考えられるが、発明者らの検討によれば、こうした課題に対して、トナー像の光沢度によって知覚される段差感に差異があることが判明した。すなわち、厚みが大きなトナー像であっても段差感を知覚することがない条件が存在する。
こうした点に着目して、発明者らは定着条件を変更することでトナー像の光沢度を変更して隠し文字の形成を行い、この段差感が知覚できるか否かの検証実験を行った。検証実験の結果を表1に示す。
Figure 0005866977
表1の第1列目は条件1〜条件6までを示す。同第2列目(T+Yパッチの欄)は、透明トナーTtとY色蛍光トナーFtとを重ね合わせたトナー像を所定の定着条件で記録シートS上に定着して形成したパッチ画像(2cm四方)に対して、光沢度計(コニカミノルタ社:GM−268)にて60度光沢度を測定した結果である。
同第3列目は、前記パッチ画像を作成した際の定着温度、線速である。同第4列目は透明トナーTtとY色蛍光トナーFtとを使用して隠し文字を形成し、段差感の有無を目視評価によって評価を行った結果である。
評価結果の表示は、(○:段差感を知覚できない、△:段差感をわずかに知覚できる、×:段差感を知覚できる)としている。
隠し文字としては、Y色蛍光トナーFtのベタ領域上に30pt(ポイント)の透明トナーTtによる文字を形成することにより隠し文字を形成し、段差感の有無を目視評価している。
表1において、該表1の2列目の光沢度の値が40%以下の場合には、隠し文字の段差感を知覚できない状態で隠し文字を形成することができている。つまり、条件《Y色蛍光トナーFtと透明トナーTtを重ね合わせてトナー像を記録シートS上に形成したトナー像の光沢度(60度光沢度)が40%以下であること》を満たすことによって、隠し文字における文字そのものの部分と文字の周辺部分との境界における段差感を知覚することのないトナー像を実現することができた。そこで、この構成を以って例2の発明の例とした。
例2も、例1と同じように、有色トナーのうち1色は蛍光色(Y色蛍光トナーFt)のトナーであって、かつ、別の1色のトナーは可視光域においては透明(非吸収)であり紫外域においては吸収特性を示す透明トナーTtである、といった構成になっている。そして、両発明の差異は、例2の発明では蛍光トナーおよび透明トナーを重ね合わせて記録媒体上に形成したトナー像の光沢度(60度光沢度)が40%以下となるようにしてある点である。
例2においても例1と同じように、蛍光トナーと透明トナーとの2種類のトナーを使用して隠し文字を作成している。このことによって、透明トナーを形成した部分と形成しない部分とで、紫外線を照射した場合にコントラストを生じることになるため、紫外線照射下において知覚することが可能となる隠し文字を形成する。そして、隠し文字そのものの部分と隠し文字の周辺部分とのどちらの部分もトナーによって表面を形成し、2つの領域を表面反射光の状態をほぼ一致させることができる。
上記のことから、例2においても例1と同じように、隠し文字の内容が容易には知覚することができない画像形成を実現し、一般照明下であって隠し文字の内容が知覚できてしまう背景技術の懸念を解消している。
さらに、例2では、蛍光トナーおよび透明トナーを重ね合わせて記録媒体上に形成したトナー像の光沢度(60度光沢度)を40%以下となるようにすることで、蛍光トナーと透明トナーとの2つのトナーを用いて作成する隠し文字そのものの分と、蛍光トナーのみを用いて作成する隠し文字の周辺部分との、境界で発生する前記段差感の知覚を解消している。
段差感は、電子写真方式の画像形成装置のようにトナー像の厚み(トナー像厚みがトナー1色分につき1〜5μm)が大きな画像において特に発生しやすい。また、この段差感は、表1からわかるように、蛍光トナーおよび透明トナーを重ね合わせて記録媒体上に形成したトナー像の光沢度(60度光沢度)が小さくなるに従って知覚されなくなるという特徴がある。さらに、この検証結果によると、蛍光トナーおよび透明トナーを重ね合わせて記録媒体上に形成したトナー像の光沢度(60度光沢度)が40%以下となるように画像形成をおこなうことで、段差感が知覚されることがないことが判明している。
なお、光沢度が大きく(トナー像の表面が平滑)なるに従って、段差感が知覚されやすくなる理由は十分に判明しているとはいえない状況である。しかしながら、光沢度の大きなトナー像では、トナー像表面での正反射光は広がらずに一方向に集中する。このため、トナー層厚みの異なる境界の部分においてわずかな傾斜が生じることで反射位置が変化しても、視覚位置での正反射光の強度が変化してしまうため、段差感を知覚するようになると考える。逆の表現をすれば、光沢度が小さくなるに従って、段差感が知覚されにくくなる。
このように、例2では例1における利点に加えて、2種類のトナーを使用することで隠し文字を作成する場合において特有に発生する段差感によって隠し文字が知覚されてしまうといった課題を解決することができる。これにより、使用者にとって通常照明下において秘匿性の高い隠し文字を形成することを可能とする画像形成装置を実現することができる。
(例3:トナーの重ね順に係る参考例):
例3では、蛍光トナーと透明トナーとを重ねた、記録媒体たる記録シート上のトナー像は、蛍光トナーを下層(記録媒体に近い側)、透明トナーを上層(記録媒体から遠い側)となるように形成される。
第1実施形態では、図2に示したカラープリント部4−1の構成により、図4に示したように、記録シートS上におけるY色蛍光トナーFtと透明トナーTtとの重ね状態は、蛍光トナーFtを下層(記録シートSに近い側)、透明トナーTtを上層となるように形成されて透明トナーTtで隠し文字そのものを形成している。
図4に示す隠し文字「ABC」が形成される手順を説明する。
図2において、画像形成ユニット9T、9Y、9C、9M、9Kの各感光体ドラム11には画像データに従い静電潜像が形成され、それぞれの現像器14が有するトナーにより現像が行われてトナー像が担持されているものとする。
図2に示すように、画像形成ユニット9T、9Y、9C、9M、9Kは、中間転写ベルト8の移動方向上流から下流に向けて、9T→9Y→9C→9M→9Kの配列なので、この順に従い、中間転写ベルト8上には、該ベルト表面に近い側から、透明トナーTt→Y色蛍光トナーFt→シアン(C)→マゼンタ(M)→ブラック(K)の順にトナーが積層される。
但し、画像データに従うので、これら全てが常に完全に重なるのではなく、場所によって欠落する部位もあり、これによりフルカラー画像が形成される。
<隠し文字の作成プロセス>
図4のように形成される隠し文字の作成プロセスを、図2を参照しつつ説明する。画像形成ユニット9Tの感光体ドラム11には透明トナーTtによる隠し文字「ABC」が担持されている。先ず、回転する中間転写ベルト8に、該透明トナーTtによる隠し文字「ABC」のトナー像が転写される。次に、中間転写ベルト8上の該透明トナーTtによる隠し文字「ABC」が画像形成ユニット9Yまで移動した際に、画像形成ユニット9Yの感光体ドラム11に予め担持されているY色蛍光トナーFtによるトナー像(矩形輪郭線26内を埋めるベタ像)が、中間転写ベルト8上に既に転写されている透明トナーTtによる隠し文字部「ABC」覆うようにして転写される。
こうして、中間転写ベルト8上には、下層に透明トナーTtによる隠し文字「ABC」が載り、この隠し文字「ABC」を構成している透明トナーTtを覆うようにしてY色蛍光トナーFtが載った状態となる。よって、隠し文字部のみ2層で、隠し文字の周辺部はY色蛍光トナーFtのみの単層となっている。
中間転写ベルト8上にかかる構成で載っているトナー像は、転写器(2次転写器)17の部位で記録シートSに転写される。これにより、各トナー像は上下位置を逆転し、記録シートSの上面にY色蛍光トナーFtがベタ状に載り、このベタ状のY色蛍光トナーFt上に透明トナーTtによる隠し文字「ABC」が位置する状態となる。これは図4に示した状態である。かかるトナー像は定着器5を経て記録シートSに定着される。
図4では、隠し文字「ABC」そのものについては記録シートSの上面に近い側から、Y色蛍光トナーFt、その上に透明トナーTt、の合計2層による重ねトナー像の構成である。また、隠し文字の周辺領域については、Y色蛍光トナーFtのみの単層によるトナー像の構成である。
なお、記録シートS上には、かかる隠し文字「ABC」形成領域の外側にほかの文字や画像も並行して形成されるが、それは通常のカラー画像の形成プロセスと変わることなく画像形成ユニット9Y、9C、9M、9Kなどにより適宜形成なされるものとする。
例3では隠し文字部が、蛍光トナーと透明トナーを用いたトナー像からなり、例1の発明の内容を含んで実施される場合は例1の発明における利点を全て包含する。或いは例2の発明の内容を含んで実施される場合は、例1で述べた利点に加えて、例2で述べた利点も包含する。その上で、例3の発明固有の利点を有する。
例3では、隠し文字部について、透明トナーTtがY色蛍光トナーFtの上層に配置される構成であり、紫外線を照射した際に透明トナーTtに紫外線吸収の特性を持たせてあるため、紫外線が下層として形成してあるY色蛍光トナーFtにまで到達することがなくなり、Y色蛍光トナーFtからの可視光の放射は起こらない。
一方で透明トナーTtが上層に配置されていない箇所では、紫外線が下層として配置してあるY色蛍光トナーFtまで到達し、この結果としてY色蛍光トナーFt層から可視光が放射される。このように、例3の発明では透明トナーTtの有無に応じて、紫外線を照射したときに、可視光放射のコントラストが得られるために、隠し文字を知覚できるようになる。
例3では例1〜2の発明における利点に加えて、紫外線の照射によって得られる可視光放射のコントラストが大きな隠し文字の形成を実現することができるという固有の利点がある。
つまり、一般照明下では、隠し文字部について、透明トナーTtにおける可視光に対する透明性によって、透明トナーの有無が知覚されることがないため隠し文字の内容も知覚されることがない。これに対して、ブラックライトによって紫外線を照射した場合には、透明トナーTtが配置されている場所では紫外線吸収の作用が働くため、例えばY色蛍光トナーFtに含まる蛍光原料による光放射は発生しない(光放射が弱まる)ようになり、一方で隠し文字周辺の透明トナーTtが配置されていない場所では、Y色蛍光トナーFtに含まる蛍光原料による光放射が発生する。つまり、透明トナーTtの有無に対応して、Y色蛍光トナーFtでの光放射にコントラストが生じるため、隠し文字の内容を知覚することができる。
[第2実施形態](例4:トナーの重ね順に係る発明:請求項2、4関連):
例4は、蛍光トナーと透明トナーとを重ねた、記録媒体たる記録シート上のトナー像は、蛍光トナーを上層(記録シートから遠い側)、透明トナーを下層(記録シートに近い側)となるように形成される。
例4における画像形成装置の構成は、大部分は第1実施形態における画像形成装置10の構成と同じである。第1実施形態との相違点は、カラープリント部におけるトナーの重ね順が異なる点である。
図5は、第2実施形態の画像形成装置におけるカラープリント部4−2の概略図である。カラープリント部4−2では、TYCMKの5種類のトナーを使用する点は第1実施形態と同じであるが、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)、透明(T)、の作像順で中間転写ベルト上に重ね合わせて画像を形成できるような構成となっている。
カラープリント部4―2には、T、Y、C、M、Kの各色やトナー成分に対応して、5つの画像形成ユニットが矢印で示す反時計回りの向きに沿って上流側から下流側に向けて9Y、9C、9M、9K、9Tの順に配置されている。各画像形成ユニット9Y、9C、9M、9K、9Tで形成された各色成分トナー像は、これら5つの画像形成ユニット9Y、9C、9M、9K、9Tの各感光体ドラムに当接して配置されている中間転写ベルト8に順次転写されて色重ねトナー像となり、該中間転写ベルト8上に担持される。
中間転写ベルト8上での各色トナーの重ね順は、該中間転写ベルト8の表面に近い方から、Y、C、M、K、Tの順になる。
中間転写ベルト8は、不図示の駆動手段によって所定のタイミングで矢印の向きに回転しており、5つの画像形成ユニット9Y、9C、9M、9K、9Tにおける各色成分トナー像が所定の位置で重ね合わされるようになっている。中間転写ベルト8上に形成された各色成分トナー像は、図1と共に前述した搬送ベルト3上の記録シートSへと転写され、記録シートS上のトナー像となる。本例では、記録シートS上のトナー像の重ね順は、「(記録シートから遠い側)Y→C→M→K→T(記録シートに近い側)」の各色成分トナーの配列順となる。
例4の発明では、透明トナーTtとY色蛍光トナーFtとを使用して形成する隠し文字において、透明トナーTtとY色蛍光トナーFtとの重ね順が、第1実施形態における例3に対して逆転した構成となっている。この様子を図6に示す。
例4では、図5を用いて説明したように、Y色蛍光トナーFtと透明トナーTtの2種類のトナーを使用して隠し文字「ABC」を形成している。
図6に示すように、隠し文字「ABC」そのものに相当する部分は上層のY色蛍光トナーFtと下層の透明トナーTtとの2種類のトナーを配置したトナー像とし、隠し文字「ABC」の周辺部であって矩形輪郭線26内はY色蛍光トナーTtのみを配置したトナー像の構成にしている。
<隠し文字の作成プロセス>
図6のように形成される隠し文字の作成プロセスを、図5を参照しつつ説明する。画像形成ユニット9Yの感光体ドラム11にはY色蛍光トナーFtによるトナー像(矩形輪郭線26内を埋めるベタ像)が担持されている。先ず、回転する中間転写ベルト8に、Y色蛍光トナーFtによるトナー像(矩形輪郭線26内を埋めるベタ像)が転写される。次に、中間転写ベルト8上の該Y色蛍光トナーFtによるトナー像が画像形成ユニット9Tまで移動した際に、画像形成ユニット9Tの感光体ドラム11に予め担持されている透明トナーTtによる隠し文字「ABC」が、中間転写ベルト8上に既に転写されているY色蛍光トナーFtによる、矩形輪郭線26内を埋めるベタ像の範囲に収まる位置に転写される。
こうして、中間転写ベルト8上には、下層にY色蛍光トナーFtによるベタトナー像、その上には透明トナーTtによる隠し文字「ABC」がY色蛍光トナーFtに積層された状態となる。これらのトナー像は、転写器(2次転写器)17の部位で記録シートSに転写される。これにより、各トナー像は上下位置を逆転し、記録シートSの上面に透明トナーTtによる隠し文字「ABC」が載り、さらにこの隠し文字「ABC」を覆うようにしてベタ状のY色蛍光トナーFtが積層される。これは図6に示した積層状態と同じである。かかるトナー像は定着器5を経て記録シートSに定着される。
図6では、隠し文字「ABC」そのものについては記録シートSの上面に近い側から、透明トナーTt、その上にY色蛍光トナーFtの合計2層による重ねトナー像の構成である。また、隠し文字の周辺領域については、Y色蛍光トナーFtのみの単層によるトナー像の構成である。
なお、記録シートS上には、かかる隠し文字「ABC」形成領域の外側にほかの文字や画像も並行して形成されるが、それは通常のカラー画像の形成プロセスと変わることなく画像形成ユニット9Y、9C、9M、9Kなどにより適宜形成なされるものとする。
例4では、例3と同じように、有色トナーのうち1色は蛍光色のトナーであって、かつ、別の1色のトナーは、可視光域においては透明(非吸収)でありかつ紫外域においては吸収特性を示すトナーである、といった構成になっている。そして、例4と3との差異は、例4では、Y色蛍光トナーFtが上層(記録シートSから遠い側)、そして透明トナーTtが下層(記録シートSに近い側)となるようにトナー層を形成した、点にある。
例4においても例3と同じように、Y色蛍光トナーFtと透明トナーTtとの2種類のトナーを使用して隠し文字「ABC」を作成している。このことによって、透明トナーTtを形成した部分と形成しない部分とで、紫外線を照射した場合にコントラストを生じることになるため、紫外線照射下において知覚することが可能となる隠し文字「ABC」を形成することができる。
隠し文字「ABC」そのものの部分と隠し文字「ABC」の周辺部分とのどちらの部分も樹脂を主成分としたトナーによって表面を形成している。これら2つの領域における表面反射の状態をほぼ一致させている。これにより、例4においても例3と同じように、隠し文字の内容が容易には知覚することができない。一般照明下では知覚することができない画像形成を実現する。
例4では透明トナーTtが下層に配置される構成である。形成した画像(隠し文字ABC)に紫外線を照射した際には、上層として配置してあるY色蛍光トナーFtによって紫外線は吸収されて可視光が放射されることになるが、画像に照射された紫外線は全て蛍光トナーFtによって吸収されるわけではなく、紙などの記録シートSにまで到達してそこで反射し再度蛍光トナー層へと進入する成分もある。
例4ではY色蛍光トナーFt層と記録シートSとの間に透明トナーTt層(紫外線吸収層)を配置するように画像を形成している。このため、記録シートSで反射される紫外線が再度蛍光トナーFt層へ進入する際の紫外線量を、透明トナーTt層の配置位置をコントロールすることで変化させて、Y色蛍光トナーFt層へ進入する紫外線量を変化させる構成となっている。
ここで、「透明トナーTt層の配置位置をコントロールする」とは、「透明トナーTt有り」の箇所と「透明トナーTt無し」の箇所を形成することを意味し、この2箇所間で、紫外線を照射した場合に蛍光トナーが発する可視光の発光量をコントロールし、反射光のコントラスト生じることを利用して隠し文字を顕在化させる。
つまり、例4でも、例3の構成ほどは大きな可視光放射のコントラストは得られないものの、知覚できる程度の可視光放射のコントラストが得ることが可能であり、隠し文字を知覚できるようになる。
例4では透明トナーTtの上側にY色蛍光トナーFtが配置される構成であるため、透明トナーTtの配置が例3の構成に比べて更に知覚され難いという特徴を有する。図6に示したように、隠し文字部においても、また、隠し文字部の周辺部においても、トナー像の表面は何れもY色蛍光トナーFtであるので、特性が同一のトナーにより全てのトナー像表面を形成できている。
透明トナーTtを完全に透明に作成することが困難であるとか、透明トナーTtやY色蛍光トナーFtの熱特性を完全に一致させることが困難であるという技術的な事情のもとで、例3のように透明トナーTtを上部に配置する構成の場合には、透明トナーTtの存在が、色のわずかな違いや光沢のわずかな違いとして知覚されやすくなる。この点、例4の発明では、透明トナーTtについて透明性や熱特性について厳しい制約を課す必要がなくなり、その上で一般照明下では隠し文字の内容が知覚されることがないという格別の特徴を有する。
このように、例4では例1、例2における利点に加えて、透明トナーTtの配置を知覚され難く、ひいては透明トナーTtに課される透明性や熱特性についての厳しい品質条件を要求しなくとも、隠し文字の形成を実現することができる点で有利である。
[第3実施形態](例5:トナーの重ね順に係る発明:請求項3、関連):
例5では、蛍光トナーと透明トナーとを重ねた、記録媒体たる記録シート上のトナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも2色については蛍光トナーであって、かつ、最下層(記録シートに近い側)および最上層(記録シートに遠い側)に形成され、透明トナーが中間層(最上層と最下層の中間)となるように形成される。
例5における画像形成装置の構成は、大部分は第1実施形態の構成と同じである。第1実施形態との相違点は、イエロー(Y)トナーのほかに、マゼンタ(M)トナーも蛍光トナーであること、および、色重ね順がイエロー(Y)トナーとマゼンタ(M)トナーとの間に透明(T)トナーが配置される点になる。
例5では、蛍光トナーであるマゼンタ(M)トナーをM色蛍光トナーFt’と表し、蛍光トナーであるイエロー(Y)についてはこれまで通りY色蛍光トナーFtで表す。
M色蛍光トナーFt’は紫外線を吸収してシアン色の光を放射する特性を示すように作製してある。例5におけるM色蛍光トナーFt’は、マゼンタ蛍光顔料(シンロイヒ株式会社、FZ-6037)をトナー中に含有させることによって製造したものである。マゼンタ蛍光顔料としては、これ以外のものを使用することも勿論可能である。製品として市販されているマゼンタ蛍光顔料を使用することで本願発明の目的を達成することが可能なトナーを作製することが可能である。
例5の画像形成装置におけるカラープリント部を図7に示す。例5のカラープリント部4−3では、TYCMKの5種類のトナーを使用する点は第1実施形態と同じであるが、イエロー(Y)、シアン(C)、透明(T)、マゼンタ(M)、ブラック(K)、の作像順に中間転写ベルト上で重ね合わせて画像を形成できるような構成となっている。
カラープリント部4―3には、T、Y、C、M、Kの各色やトナー成分に対応して、5つの画像形成ユニットが矢印で示す反時計回りの向きに沿って上流側から下流側に向けて9Y、9C、9T、9M、9Kの順に配置されている。各画像形成ユニット9Y、9C、9T、9M、9Kで形成された各色成分トナー像は、これら5つの画像形成ユニット9Y、9C、9T、9M、9Kの各感光体ドラムに当接して配置されている中間転写ベルト8に順次転写されて色重ねトナー像となり、該中間転写ベルト8上に担持される。
中間転写ベルト8上での各色トナーの重ね順は、該中間転写ベルト8の表面に近い方から、Y、C、T、M、Kの順になる。このため、例5では、記録シートS上のトナー像の重ね順は、(記録シートSから遠い)Y→C→T→M→K(記録シートに近い)となる。
例5では、図8に示すように、透明トナーTtを使用する隠し文字「ABC」において、透明トナーTtとY色蛍光トナーFt、M色蛍光トナーFt’との重ね順が、透明トナーTtをY色蛍光トナーFtとM色蛍光トナーFt’とではさみ込むような形で、トナー像を形成するようになっている。
<隠し文字の作成プロセス>
図8のように形成される隠し文字の作成プロセスを、図7を参照しつつ説明する。画像形成ユニット9Yの感光体ドラム11にはY色蛍光トナーFtによるトナー像(矩形輪郭線26内を埋めるベタ像)が担持されている。先ず、回転する中間転写ベルト8に、Y色蛍光トナーFtによるトナー像(矩形輪郭線26内を埋めるベタ像)が転写される。
次に、中間転写ベルト8上の該Y色蛍光トナーFtによるトナー像が画像形成ユニット9Tまで移動した際に、画像形成ユニット9Tの感光体ドラム11に予め担持されている透明トナーTtによる隠し文字「ABC」が、中間転写ベルト8上に既に転写されているY色蛍光トナーFtによる、矩形輪郭線26内を埋めるベタ像の範囲に収まる位置に転写される。
さらに、これらY色蛍光トナーFtによるトナー像および透明トナーTtによる隠し文字「ABC」のトナー像が画像形成ユニット9Mまで移動した際に、画像形成ユニット9Mの感光体ドラム11に予め担持されているM色蛍光トナーFt’によるトナー像(矩形輪郭線26内を埋めるベタ像)が、中間転写ベルト8上に既に転写されている透明トナーTtによる隠し文字部「ABC」を覆うようにして転写される。
こうして、中間転写ベルト8上には、下層にY色蛍光トナーFtによるベタトナー像、その上には透明トナーTtによる隠し文字「ABC」、さらに該透明トナーTtを覆うようにM色蛍光トナーFt’が積層された状態となる。結句、隠し文字部そのものについては、Y色蛍光トナーFtとM色蛍光トナーFt’とにサンドイッチ状に挟まれた状態となる。
これらのトナー像は、転写器(2次転写器)17の部位で記録シートSに転写される。これにより、各トナー像は上下位置を逆転し、記録シートSの上面にM色蛍光トナーFt’が載り、その上に透明トナーTtによる隠し文字「ABC」が載り、さらにこの隠し文字「ABC」を覆うようにしてベタ状のY色蛍光トナーFtが積層される。これは図8に示した積層状態と同じである。かかるトナー像は定着器5を経て記録シートSに定着される。
図8では、隠し文字「ABC」そのものについては記録シートSの上面に近い側から、M色蛍光トナーFt’透明トナーTt、その上にY色蛍光トナーFtの合計3層による重ねトナー像の構成である。また、隠し文字の周辺領域については、Y色蛍光トナーFtおよびM色蛍光トナーFt’による2層によるトナー像の構成である。
なお、記録シートS上には、かかる隠し文字「ABC」形成領域の外側にほかの文字や画像も並行して形成されるが、それは通常のカラー画像の形成プロセスと変わることなく画像形成ユニット9Y、9C、9M、9Kなどにより適宜形成なされるものとする。
例5と例3との差異は、例3における蛍光トナーがY色蛍光トナーFtの1色であるとの構成に加えて、さらに有色トナーのもう一色についても蛍光トナーとし、具体的には、M色蛍光トナーFt’としている点である。よって、蛍光トナー2色、透明トナー1色から構成される。さらに加えて、記録シートS上に形成されたトナー像が、蛍光トナーが最上層(記録シートSに近い側)および最上層(記録シートSから遠い側)に形成され、透明トナーが中間層(最上層と最下層との中間)となるように形成されている点にある。
例5においても例3と同じように、蛍光トナーと透明トナーとを使用して隠し文字を作成する。このことによって、透明トナーを形成した部分と形成しない部分とで、紫外線を照射した場合に異なる色のコントラストが生じることになる。こうした色のコントラストを利用して、紫外線照射下において知覚することが可能となる隠し文字を形成することができるようになる。
そして例3と同様に、図8に示すように、隠し文字「ABC」そのものの部分と隠し文字「ABC」の周辺部分とのどちらの部分も樹脂を主成分としたトナーによって表面を形成することができるようになる。つまり2つの領域を表面反射の状態をほぼ一致させることができるようになる。
このことにより、例5においても例3と同じように、隠し文字の内容が容易には知覚することができない(一般照明下では知覚することができない)画像形成を実現することができる。
背景技術の場合には、隠し文字そのものの部分と隠し文字の周辺部分との表面反射の状態が完全に一致していないため、一般照明下であって隠し文字の内容が知覚できてしまう。そしてこのことが隠し文字の秘匿性が求められる用途においては課題となっていた。本例では、こうした課題を解決することができる。
例5では図8に示したように、透明トナーTtが2種類の蛍光トナー、Y色蛍光トナーFtとM色蛍光トナーFt’の中間に配置された構成である。こうして形成した画像に紫外線を照射した際には、上層として配置してあるY色蛍光トナーFtによって紫外線は吸収されて可視光を放射することになるが、すべて上層のY色蛍光トナーFtによって吸収されるわけではなく下層に配置してある別の色の蛍光トナー、M色蛍光トナーFt’へも到達する。これにより、下層のM色蛍光トナーFt’でも上層と同じように紫外線は吸収され可視光を放射することになる。
従って、透明トナーTtが配置されていない隠し文字の周辺部では、上層のY色蛍光トナーFtからの放射光と下層のM色蛍光トナーFt’からの放射光とが重ね合わさった色の光(グリーン)、として観察されることになる。中間層として透明トナーFtが配置されている隠し文字部では、下層のM色蛍光トナーFt’へは紫外線は到達しない(透明トナー層Ttで紫外線は吸収されてしまう)ため、上層のY色蛍光トナーFtからのY色放射光のみが知覚されることになる。つまり、透明トナーTtの有無に応じて、グリーンやイエローなど異なる色の放射光を知覚するようになる。
例3の構成では、透明トナーの有無による変化は、放射光の有無(強弱)であるため、色の変化とはならず、単にコントラストを実現できるにすぎない。これに対して例5では隠し文字を色の変化(上層の放射光と下層の放射光とを混色して実現される色)として知覚できるような隠し文字の画像形成を可能とする。
このように、例5では例1や例2における利点に加えて、隠し文字の内容を色の変化として知覚することが可能な画像形成を行うことができるようになる。これによって、使用者の多種多様な画像出力要望に応えることができる。
[参考例](例6:隠し画像形成方法)
例6は、複数色のトナー像を記録媒体たる記録シート上に重ねて形成することにより所望の画像を提供する画像形成方法であって、トナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも1色については蛍光トナー、別の1色のトナー像を形成するトナーについては透明トナーを用い、記録シート上に蛍光トナーにより隠し情報(隠し文字)の周辺部領域を構成し、この周辺部領域内に前記蛍光トナー層に重ねて隠し情報(隠し文字)を前記透明トナーにより作成し、定着器で定着して記録シート上に隠し情報を含む記録画像を得る。
6は、例3、例4、例5でそれぞれ述べた<隠し文字の作成プロセス>内容に係る。何れも画像形成装置10を使用して実施する形態を含み、画像形成ユニットの配置により、異なる態様、特徴をもつ隠し情報を記録することができる。
[第実施形態](例7:配置位置入力手段:請求項関連):
例7は、例1乃至例5の何れかに記載の発明に係る画像形成装置に適用される画像形成システムであって、蛍光トナーおよび透明トナーで形成される隠し文字、隠し画像などの情報の記録媒体上における配置位置の指定を可能とする配置位置入力手段を有することとしたものである。
記録シートS上の隠し文字を形成するいわゆる画像形成装置の部分は実施形態1で述べた内容と同じである。例7の発明と第1実施形態との差異は、例7の発明においては、透明トナーと蛍光トナーとで形成する隠し文字の配置位置の指定を可能とする配置位置入力手段を有する点にある。
第1実施形態に係る図3に示した画像処理装置19では、画像形成装置10がパーソナルコンピューターと接続されてプリンタとして機能する場合であり、入力画像データには、
蛍光トナーおよび透明トナーで形成される隠し文字、隠し画像などの情報の記録媒体上における配置位置が指定されているので、記録媒体上における配置位置の指定を可能とする配置位置入力手段の必要性は乏しい。
これに対して、スキャナで読み込まれた画像データを画像処理装置19’への入力画像データとする場合などでは、透明トナーと蛍光トナーとで形成する隠し文字の配置位置の指定を希望する場合であっても、記録媒体上における配置位置の指定を可能とする配置位置入力手段が無ければ、隠し文字の配置位置ができない。
そこで、例7では、画像処理装置19’のフローにおいて、MTFフィルタ処理部20の上流にT版処理部31を接続し、入力画像データ(8bit)R/G/Bに、記録媒体上における隠し文字の配置位置のデータを組み込む機能を与えた。
さらに、T版処理部31にはディスプレイ32を接続し、隠し文字を含まない画像(いわゆる通常の画像)がディスプレイ32上に表示されるようにした。ディスプレイ32には記録媒体上における配置位置の指定を行う手段としてマウス33やキーボード等を必要に応じて接続している。
使用者は、隠し文字の内容(隠し文字でつくる文章)を決定したのちに、ディスプレイ32上に表示されたスキャナデータなど、通常の画像の配置位置を確認しながら、ディスプレイ32上で隠し文字の配置位置を動かしながら、隠し文字の配置位置を確認し、問題が発生しないようであればその配置位置の決定をマウス33やキーボード等の操作で実行する。
例7では、このように、通常の画像の配置位置での隠し文字の配置位置を、使用者がバランスをとりながら決定することができるため、もっとも効果が期待できる配置位置に隠し文字を配置することができるようになる。
T版処理部31、ディスプレイ32、マウス33、キーボードなどは、配置位置入力手段の一例である。
例7では、例1乃至例5の何れかの画像形成装置を前提にしているので、例1乃至例5の何れにおける利点についても全て包含する。かつ、それに加え、透明トナーと蛍光トナーとの配置位置を指定することが可能となる。つまり、使用者が所望の位置に隠し文字を配置することが可能となる。これにより、使用者が最も効果的な配置位置に隠し文字を配置することができるため、付加価値の大きな隠し文字を実現することができるようになる。
[第実施形態](例8:照明装置:請求項関連):
例8は、例1乃至5に記載の画像形成装置または例7に記載の画像形成システムであって、記録媒体上に形成された蛍光トナーおよび透明トナーによる画像を視覚可能とする紫外線照射の照明装置を備えたものである。
例8は、記録シート上の隠し文字を形成するいわゆる画像形成装置の部分は第1実施形態と同じである。例8と第1実施形態との差異は、例8では隠し文字を含む画像を作成する画像形成装置の部分の他に、紫外線を照射する照明装置を有する点にある。
例8では、図10に示す画像形成装置10の排紙部7に排出される記録シートSにおける画像面に向けて紫外線を照射する照明装置32を有する構成にしている。使用者は作成した隠し文字を含んだ画像に対してこの照明装置32によっては紫外線照射を行うことで、隠し文字の状態や(出来栄え)を目視で確認することができるようにする。これにより、作成した隠し文字の状態を速やかに確認することができるようになる。隠し文字の形成位置を変更するのに、例7の配置位置入力手段を使用することもできる。
照明装置32は、従来から一般的に使用されているいわゆるブラックライトを適用することが可能である。また、画像の視認性を向上させるため、および、部外者からの視線を避けるため、記録シートSを簡単に覆う設備として簡易遮蔽板33を収納、引き出し可能に設ける。簡易遮蔽板33は形状記憶のある樹脂製を用いて軽量化を図り、収納部34に収納可能にする。
1、2 給紙カセット
3 搬送ベルト
4−1、4−2、4−3 カラープリント部
5 定着器
5a 定着ローラ
5b 加圧ローラ
6 排出ローラ
7 排紙部
8 中間転写ベルト
9T、9Y、9C、9M、9K 画像形成ユニット
10 画像形成装置
11 感光体ドラム
12 帯電器
13レーザ光学ユニット
14 現像器
15 転写器(1次転写器)
16 クリーナー
17 転写器(2次転写器)
18 レジストローラ
19、19’ 画像処理装置
20 MTFフィルタ処理部
21 色変換処理部
21a カラープロファイル
22 色分解処理部
23 階調補正処理部(γ変換部)
23a 階調補正テーブル
24 擬似中間調処理部
25 ビデオ信号処理部
26 矩形輪郭線
27 PWM制御部
28 LDドライバ
29 LD素子
30 ポリゴンミラー
31 T版処理部
32 証明装置
S 記録シート
Tt 透明トナー
Ft Y色蛍光トナー
Ft’ M色蛍光トナー
1 シート
特開2009−210667号公報

Claims (7)

  1. 複数色のトナー像を記録媒体上に重ねて画像を形成する画像形成装置であって、
    前記トナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも1色は蛍光色のトナー(以下、蛍光トナーという。)であり、別の1色のトナー像を形成するトナーは、可視光域において透明かつ光非吸収、紫外域において光吸収特性を示すトナー(以下、透明トナーという。 )であり、前記蛍光トナーと前記透明トナーとを重ねて前記記録媒体上に形成したトナー像の光沢度(60度光沢度)が40%以下であることを特徴とする画像形成装置。
  2. 請求項1に記載の画像形成装置において、
    前記蛍光トナーと前記透明トナーとを重ね前記記録媒体上のトナー像は、前記蛍光トナーを上層(記録媒体から遠い側)、透明トナーを下層(記録媒体に近い側)となるように形成されることを特徴とする画像形成装置。
  3. 請求項1に記載の画像形成装置において、
    前記蛍光トナーと前記透明トナーとを重ねた前記記録媒体上のトナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも2色については前記蛍光トナーであって、かつ、最下層(記録媒体に近い側)および最上層(記録媒体に遠い側)に形成され、前記透明トナーが中間層(最上層と最下層の中間)となるように形成されることを特徴とする画像形成装置。
  4. 複数色のトナー像を記録媒体上に重ねて画像を形成する画像形成装置であって、
    前記トナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも1色は蛍光色のトナー(以下、蛍光トナーという。 )であり、別の1色のトナー像を形成するトナーは、可視光域において透明かつ光非吸収、紫外域において光吸収特性を示すトナー(以下、透明トナーという。 )であり
    前記蛍光トナーと前記透明トナーとを重ねた前記記録媒体上のトナー像は、前記蛍光トナーを上層(記録媒体から遠い側)、透明トナーを下層(記録媒体に近い側)となるように形成されることを特徴とする画像形成装置。
  5. 複数色のトナー像を記録媒体上に重ねて画像を形成する画像形成装置であって、
    前記トナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも1色は蛍光色のトナー(以下、蛍光トナーという。 )であり、別の1色のトナー像を形成するトナーは、可視光域において透明かつ光非吸収、紫外域において光吸収特性を示すトナー(以下、透明トナーという。 )であり
    前記蛍光トナーと前記透明トナーとを重ねた前記記録媒体上のトナー像を形成する有色トナーのうち少なくとも2色については前記蛍光トナーであって、かつ、最下層(記録媒体に近い側)および最上層(記録媒体に遠い側)に形成され、前記透明トナーが中間層(最上層と最下層の中間)となるように形成されることを特徴とする画像形成装置。
  6. 請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置を有する画像形成システムであって、
    前記蛍光トナーおよび前記透明トナーの記録媒体上における配置位置の指定を可能とする配置位置入力手段を有することを特徴とする画像形成システム
  7. 請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置を有する画像形成システムまたは請求項6に記載の画像形成システムであって、
    記録媒体上に形成された蛍光トナーおよび透明トナーによる画像を視覚可能とする紫外線照射の照明装置を備えたことを特徴とする画像形成システム
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